(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光取出し部材及び配光変換部材の少なくともいずれかがレンズであり、前記レンズの高さが0.05mm〜2mmであり、前記レンズの直径が0.1mm〜2mmである請求項1に記載の有機電界発光装置。
光取出し部材及び配光変換部材の少なくともいずれかが微粒子とポリマーとを含有する微粒子層であり、前記微粒子層の厚みが1μm〜50μmである請求項1に記載の有機電界発光装置。
光取出し部材及び配光変換部材の少なくともいずれかが微粒子とポリマーとを含有する微粒子層であり、前記微粒子層における前記微粒子の平均粒径が0.5μm〜10μmである請求項1に記載の有機電界発光装置。
光取出し部材及び配光変換部材の少なくともいずれかが微粒子とポリマーとを含有する微粒子層であり、前記微粒子層における前記微粒子の屈折率が1.4〜2.6である請求項1に記載の有機電界発光装置。
光取出し部材及び配光変換部材の少なくともいずれかが微粒子とポリマーとを含有する微粒子層であり、前記微粒子層における前記微粒子の体積充填率が10%〜50%である請求項1に記載の有機電界発光装置。
光取出し部材及び配光変換部材の少なくともいずれかが微粒子とポリマーとを含有する微粒子層であり、前記微粒子層における前記微粒子が、ポリメチルメタクリレートビーズ、アクリル−スチレン共重合体ビーズ、メラミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリスチレンビーズ、架橋ポリスチレンビーズ、ポリ塩化ビニルビーズ、及びベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒドビーズから選択されるいずれかの有機微粒子である請求項1に記載の有機電界発光装置。
光取出し部材及び配光変換部材の少なくともいずれかが微細凹凸構造であり、前記微細凹凸構造の高さ、すなわち凹部の底部と凸部の頂部との間の凹凸高さが0.3μm〜3μmであり、隣接する凹凸幅が0.5μm〜3μmである請求項1に記載の有機電界発光装置。
光取出し部材及び配光変換部材の少なくともいずれかがプリズムであり、前記プリズムの高さが0.05mm〜1mmであり、プリズムの幅が0.05mm〜4mmである請求項1に記載の有機電界発光装置。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光装置は、自発光型の表示装置であり、ディスプレイや照明の用途に期待されている。例えば、有機電界発光ディスプレイは、従来のCRTやLCDと比較して視認性が高く、視野角依存性がない等の表示性能上の利点を有している。また、ディスプレイを軽量化、薄層化できる利点もある。その一方、有機電界発光照明は、軽量化、薄層化が可能であるとの利点に加え、フレキシブルな基板を用いることでこれまで実現できなかった形状の照明を実現できる可能性を有している。
【0003】
有機電界発光装置における有機電界発光層は、発光層、透明電極、その他の層などを含む積層構造で構成されている。このため、有機電界発光層の屈折率と出射媒質との屈折率により決まる臨界角以上の発光光は空気まで取り出せず、全反射され、有機電界発光層内部に閉じ込められ、損失になる。古典論的な屈折のスネルの法則による計算では、仮に有機電界発光層の屈折率nが1.8(非特許文献1によると、有機電界発光層の屈折率nは1.7〜1.85)で、有機電界発光層から発光される光の配光分布がランバーシアンである場合には、有機電界発光層の屈折率と空気の屈折率の差によって、空気までの光取出し効率は約30%しかないので、残りの約70%の光は、この屈折率差により有機電界発光層の内部に閉じ込められ、空気まで放射できないという問題がある。
【0004】
前記問題を解決し、光取出し効率を向上させるため、前記した全反射を破壊しなければならない。有機電界発光層から発光される光が空気まで伝播する際、空気の屈折率が最も小さく、有機電界発光層と空気の屈折率差により最終的に出射する光の角度が決定され、最終的に放射される光取出し効率が決められる、しかし、素子内に全反射される光は有機電界発光装置の各積層の屈折率によりエネルギー分配される。例えば、
図1Aから
図1Dに示すように、有機電界発光装置における各層の屈折率と有機電界発光層の屈折率との関係によって、光が空気まで伝播する際に全反射する場所が変化する。
【0005】
図1Aから
図1Dに示す有機電界発光装置において、第1光透過層105は透明基板であり、第2光透過層104は接着剤などからなる層であり、保護層であっても構わない。
図1Aに示すように、有機電界発光層102の屈折率(nel)は1.8であり、ITO等の透明電極103の屈折率(n3)は約2.0であり、有機電界発光層102と透明電極103の間では全反射が存在しない。また、第1光透過層105の屈折率(n1)と第2光透過層104の屈折率(n2)とは有機電界発光層102の屈折率(nel)よりも小さい。このように外側層が内部の層より小さい場合には、第1光透過層104及び第2光透過層105に隣接する層のすべての界面に全反射が発生する。
また、
図1B及び
図1Cに示すように、第1光透過層105及び第2光透過層104のうちの1つの層の屈折率が有機電界発光層102の屈折率より小さいと、有機電界発光装置は2つ以上の全反射界面を有する。
従って、
図1A、
図1B及び
図1Cでは、光取出し効率を向上させるため、各全反射界面に光取出し手段を配置しなければならず、前記各全反射界面のうち1箇所のみに光取出し手段を配置しても全反射光を取出すには不十分である。また、光取出し手段を多く配置することで、光取出し手段と有機電界発光装置の最適な設計、及び製造が複雑になり、コストが高くなることが予想される。また、異なる場所に光取出し手段を配置する場合、光取出し手段の総効率は各々の光取出し手段の効率の積となる。一方、光取出し手段は全反射光を含む入射してくるすべての光を取り出して、光取出し効率が100%又は100%以上となる可能性がないので、光取出し手段が多ければ多いほど、素子の光取出し効率は低くなることが予想される。また、光取出し手段を配置する際に、光取出し手段と有機電界発光層の屈折率の相対関係を考慮しないと、新たな全反射界面が増加してしまうこともある。
図1Dでは、第1光透過層105及び第2光透過層104の屈折率が有機電界発光層102の屈折率より高い場合には、有機電界発光層102から発光される光がすべて空気と隣接する第1光透過層105に入射し、第1光透過層と空気の間に光取出し手段を配置することにより光取出し効率を向上させることができる、また、光取出し手段を最適化すれば、高い光取出し効率が得られることが期待できる。
一方、有機電界発光層と空気の間の屈折率差による光全反射を破壊し、光取出し効率を向上させるため、レンズ、レンズアレイ、プリズム、プリズムアレイ、微細凹凸構造、微粒子層等の各種光取出し手段が提案されている。しかし、これらの光取出し手段だけでは、光取出し効率を向上させる効果が十分ではない。
【0006】
図2A〜
図2Dでは、有機電界発光層から発光された光が、光取出し手段に入射し、外部に取り出されることを示す。ここでは、有機電界発光層の屈折率が光取出し手段の屈折率と同等又はそれ以上であると仮定する。
図2Aは、光取出し手段が微細凹凸構造106である場合を示す。有機電界発光層102から発光された光が、微細凹凸構造106の構造と微細凹凸構造への入射光の波長や角度によってそれぞれの回折効率に依存して、元々空気まで出られない光が空気へ放射できるようになる、同時に、元々空気に出られる光も一定の割合で出られない光に変換される。変換しても空気まで出られない光が有機電界発光層内に戻って、反射電極に当たって、再び微細凹凸構造に入射するが、有機電界発光層の各層、反射電極などの吸収や、有機電界発光層のサイズの有限性に基づいて損失する光が存在する。
図2Bは、光取出し手段がレンズ(レンズアレイ)107の場合を示す。レンズに入射してきた光がレンズ構造によりある確率で角度が変換され、空気に進むか、又は素子に反射されるかに分かれる。例えば、半球レンズの場合、有機電界発光層102からレンズ107の中心付近を通る光はほぼ全角度の光が空気まで放射できるが、レンズの縁側付近を通る光がレンズ内に閉じ込められ、有機電界発光装置の反射電極で反射され、再びレンズ107に入射し、ある部分が放射される。レンズは一度で全反射を破壊し空気に放射する光が微細凹凸構造より多いと考えられるが、微細凹凸構造の場合と同じ吸収の問題があるから、100%の効率が得られない。また、光取出し効率はレンズの構造と入射光の配光分布により決められる。
図2Cは、光取出し手段がプリズム(プリズムアレイ)108の場合を示す、有機電界発光層102から発光した光がプリズム108に入射し、プリズムの斜面の傾斜角度や頂角の角度などの特性により光の放射角度が変換され、空気まで放射するか素子に戻るかが決められる。レンズと同様に、プリズムから出られない角度の光が存在し、有機電界発光装置の反射電極により反射され、吸収されない光が再びプリズム108に入射するたびに、ある効率に従って空気へ放射するが、同様に100%の光取出し効率は得られない。
図2Dは、光取出し手段が微粒子層109の場合を示す。微粒子層109は微粒子とポリマーの屈折率差によって、ポリマーに入射してきた光は微粒子で散乱され、入射光の配光分布、微粒子とポリマーの特性に従って、光の散乱パターンと散乱効率が決められる。これにより、元々空気に放射できない全反射光が放射できる光に変換され、空気へ放射するが、変換しても放射できない光は有機電界発光層102に戻って、反射電極で反射され、再び微粒子層へ入射し、散乱され、ある散乱効率に従って空気へ放射する。同様に光の損失が避けられない。
従って、レンズ、レンズアレイ、プリズム、プリズムアレイ、微細凹凸構造、微粒子層等の各種光取出し手段だけでは十分な光取出し効率の向上が図れない。また、以上の検討からわかるように、光取出し手段に入射する光の配光分布も素子の光取出し効率に影響を与えることが分かった。極端に言うと、光取出し手段に入射してきた光のエネルギーがその光取出し手段の最適な一つの角度に集中すれば、その光取出し手段による光取出し効率が最大になる。勿論、有機電界発光装置から発光してきた光は極端な配光にはなれないが、光取出し手段に入射する光の配光分布は最適化する必要がある。
一方、前記レンズ、レンズアレイ、プリズム、プリズムアレイ、微細凹凸構造、微粒子層等と光の相互作用の解析から、有機電界発光層から入射してきた光がこれらの構造に入射し再放射される際には、次の媒質に放射する光の配光分布は入射光の配光分布と異なり、入射光の配光分布はこれらの構造により変換される。従って、これらの構造は光の配光分布変換手段としても利用できる。
【0007】
ここで、前記微粒子層における他の光配光分布変換手段との違いについて注意しなければならない。微細凹凸構造、レンズ、及びプリズムは界面の屈折率差を利用しているので、入射側媒質の屈折率と出射側媒質の屈折率は同じになることはできない、また、単純に配光分布を変換し、全反射をさせないために、微細凹凸構造、レンズ、及びプリズムなどの入射側の屈折率は有機電界発光層の屈折率と同等又はそれ以上であること、及び出射側媒質の屈折率は入射側媒質の屈折率より高いことが必要である。
【0008】
微粒子層では、微粒子とポリマーの屈折率差を利用するので、上記の制限はなく、出射側としてのポリマーと入射側媒質の屈折率は同様でもよいし、微粒子はポリマーの屈折率より大きくてもよいので、無理に有機電界発光層より高屈折率材料を用いる必要はなく、微粒子の種類も豊富なので、実現する自由度が大きい。したがって、
図2Aから
図2Dで議論したように、有機電界発光層から発光される光の配光分布を適切に変換すると、更に光取出し効率が期待できるので、微粒子層は有機電界発光層から発光した光の配光変換部材として、プリズム等の微細構造は光取出し部材として用いることが好ましく、これらを組み合わせることにより、更に光取出し効率を向上させることが期待できる。
また、前記したように、いかなる光取出し手段であっても、光放射角度が変化され有機電界発光装置内に戻る光が存在する。この光を取り出すために、有機電界発光装置の反射電極を利用し、この光を反射して光取出し手段に再入射させる。従って、有機電界発光装置の反射電極の反射率はこの光取出しに決定的な影響を与えるので、有機電界発光層に対して高反射率の反射電極が必要である。
【0009】
ここで、関連する先行技術文献として、例えば、特許文献1から3には、具体的には明示されていないが、層構成、層材料などからみて、空気との界面にしか全反射界面が存在しない有機電界発光装置が開示されている。前記特許文献1から3には、光取出し手段として微粒子層、レンズ、プリズムなどが挙げられているが、十分な光取出し効果を得るために、配光変換手段の利用や、各手段の特性、特に微粒子散乱(配光変換手段として)と他手段による光取出し効率の相乗効果について何ら検討されていない。また、反射電極についての検討も不十分である。
また、特許文献4には、体積拡散器(微粒子層)とマイクロ構造(プリズム層)とを組み合わせた有機電界発光装置が提案されている。しかし、この提案では、微粒子層とプリズム層とが隣接して配置されておらず、両方とも光取出し手段として利用している。そのため、前記したように、光取出し効率が低いという問題がある。
【0010】
したがって、現在までのところ、発光光の外部取り出し効率に優れ、低消費電力化と長寿命化を図れる有機電界発光装置は提供されていないのが現状である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の有機電界発光装置は、反射電極と、有機電界発光層と、透明基板と、光取出し手段とをこの順に少なくとも有してなり、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0019】
前記有機電界発光装置は、前記有機電界発光層からの発光を前記透明基板から出射するボトムエミッション型が好ましい。トップエミッション型の場合には有機電界発光層からの発光を透過しなければならないので、可視領域(波長域400nm〜700nm)で透明であることが必要である。ボトムエミッション型の場合には特に透明である必要は無いが、有機化合物としてシリコーン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー等;無機化合物としてSiNx、SiON、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2層等を幅広く採用でき、素子形成する際の材料の選択性、コスト的にはボトムエミッション型の方が好ましい。
【0020】
<光取出し手段>
前記光取出し手段としては、光取出し部材と、配光変換部材とを有する。
【0021】
<<配向変換部材>>
前記配向変換部材とは、光の配向変換機能を備えていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、プリズム、プリズムアレイ(プリズム層)、レンズ、レンズアレイ(レンズ層)、微細凹凸構造、及び微粒子層のいずれかが好ましい。これらの中でも、前記したように、配光変換部材として、製造の簡易性と自由度の点で、微粒子とポリマーとを含有する微粒子層であることが特に好ましい。
【0022】
−プリズム、プリズムアレイ−
前記プリズムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、一の方向に稜線が伸び、該一の方向と直交する他の方向に所定の間隔で、各稜線が平行となるように列形成された単位プリズムや、格子状に配設された四角錐形状の単位プリズムなどが挙げられる。
前記プリズムアレイ(プリズム層)は、インプリント法で作製することができる。例えば、UVインプリント樹脂中に、超微粒子としてTiO
2超微粒子と、ポリスチレン散乱粒子とを分散させてインプリント材料とし、表面に離型剤を付与したシリカモールドでUVインプリントを行い、プリズムアレイを作製することができる。
前記プリズムの高さDは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05mm〜1mmが好ましい。
前記プリズムの幅Wは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05mm〜4mmが好ましい。
【0023】
−レンズ、レンズアレイ−
前記レンズアレイ(レンズ層)は、インプリント法で作製することができる。例えば、UVインプリント樹脂中に、超微粒子としてTiO
2超微粒子と、ポリスチレン散乱粒子を分散させてインプリント材料とし、表面に離型剤を付与したシリカモールドでUVインプリントを行い、レンズアレイを作製することができる。
前記レンズの高さTは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05mm〜2mmが好ましい。
前記レンズの直径2Rは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1mm〜2mmが好ましい。
【0024】
−微細凹凸構造−
前記微細凹凸構造は、インプリント法で作製することができる。例えば、UVインプリント樹脂中に、超微粒子としてTiO
2超微粒子と、ポリスチレン散乱粒子を分散させてインプリント材料とし、表面に離型剤を付与したシリカモールドでUVインプリントを行う。次に、微細凹凸構造を形成した後、UVインプリント樹脂で平坦化を行い、微細凹凸構造を作製することができる。
前記凹凸の高さhは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.3mm〜3mmが好ましい。
前記凹凸の幅dは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5mm〜3mmが好ましい。
【0025】
−微粒子層−
前記微粒子層は、ポリマーと、微粒子とを少なくとも含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0026】
前記微粒子層におけるポリマーの屈折率は、前記微粒子の屈折率と異なることが好ましい。
有機電界発光層の屈折率と同等又はそれ以上である屈折率を持つポリマーに、ポリマーの屈折率と異なる屈折率を持つ微粒子が存在する場合、有機電界発光層からポリマーに放射してきた光が微粒子に当たるたびに、ポリマーと微粒子間の屈折率差による、光が散乱され、光の放射角度が変換されるので、元々全反射される高放射角度の光が低放射角度に変換されると、光が透明基板から空気に放射される。また、高放射角度になる光は反射電極方向に散乱され、反射電極に反射されると、再び、微粒子層に放射し、放射角度が変換されるので、ポリマーにポリマーの屈折率と異なる微粒子が存在することによる、有機電界発光装置の光取出し効率を向上させることができる点で好ましい。
【0027】
−微粒子−
前記微粒子としては、屈折率が微粒子層のポリマーの屈折率と異なり、光を散乱可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、有機微粒子であっても、無機微粒子であってもよく、2種以上の微粒子を含有することが好ましい。
【0028】
前記有機微粒子としては、例えばポリメチルメタクリレートビーズ、アクリル−スチレン共重合体ビーズ、メラミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリスチレンビーズ、架橋ポリスチレンビーズ、ポリ塩化ビニルビーズ、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒドビーズ、などが挙げられる。
前記無機微粒子としては、例えばZrO
2、TiO
2、Al
2O
3、In
2O
3、ZnO、SnO
2、Sb
2O
3、などが挙げられる。これらの中でも、TiO
2、ZrO
2、ZnO、SnO
2が特に好ましい。
【0029】
前記微粒子の屈折率は、前記微粒子層のポリマーの屈折率と異なるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.55〜2.6が好ましく、1.58〜2.1がより好ましい。
前記微粒子の屈折率は、例えば自動屈折率測定器(KPR−2000、株式会社島津製作所製)を用い、屈折液の屈折率を測定してから、精密分光計(GMR−1DA、株式会社島津製作所製)で、シュリブスキー法により測定することができる。
前記微粒子の平均粒径は、0.5μm〜10μmが好ましく、0.5μm〜6μmがより好ましい。前記微粒子の平均粒径が、10μmを超えると、光の殆どが前方散乱になり、散乱微粒子による光の角度を変換する能力が低下してしまうことがある。また、上述したとおり、高放射角度の光が有機電界発光層に戻り、反射電極に反射され、再び微粒子層に再放射するが、有機電界発光装置のサイズの有限性と有機電界発光層や反射電極の吸収があるため、光取出し効率が低下することがある。一方、前記微粒子の平均粒径が、0.5μm未満であると、可視光の波長より小さくなり、ミー散乱がレーリー散乱の領域に変化し、微粒子の散乱効率の波長依存性が大きくなり、発光素子の色度が大きく変わってしまったり、光取出し効率が低下することが予想される。
前記微粒子の平均粒径は、例えば日機装株式会社製ナノトラックUPA−EX150等の動的光散乱法を利用した装置や、電子顕微鏡写真の画像処理により測定することができる。
【0030】
前記微粒子層における微粒子の体積充填率は、20%〜70%が好ましく、30%〜65%がより好ましい。前記体積充填率が、20%未満であると、微粒子層に入射してきた光が微粒子に散乱される確率が小さく、微粒子層の光角度を変換する能力が小さいので、微粒子層の厚みを充分に厚くしないと光取出し効率が低下することがある。また、前記微粒子層の厚みを厚くすることはコストの増加に繋がるおそれがある。更に、後方散乱が増えることにより光取出し効率が低下することがある。一方、前記体積充填率が、70%を超えると、最密充填に近くなり、微粒子層の特性を制御しにくくなることがある。
前記微粒子層における微粒子の体積充填率は、例えば重量測定法により測定することができる。まず、粒子比重測定装置(MARK3、株式会社ユニオン・エンジニアリング製)で粒子の比重を測定して、電子天秤(FZ−3000i、エー・アンド・デイ社製)で微粒子の重量を測定する。次に、作製した微粒子層の一部を切り取って、走査型電子顕微鏡(S−3400N、日立ハイテク株式会社製)で微粒子層の厚みを測定し、微粒子層における微粒子の体積充填率を求めることができる。
【0031】
<<ポリマー>>
前記微粒子層におけるポリマーの屈折率は、有機電界発光層の屈折率と同等又はそれ以上であり、1.55〜1.95が好ましい。
このような高屈折率のポリマーとしては、該ポリマーを小粒径の高屈折率微粒子で高屈折に調整した高屈折率組成物が好適に用いられる。
前記高屈折率組成物は、前記微粒子と、小粒径の高屈折率微粒子と、マトリックスとを含有し、分散剤、溶媒、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0032】
−高屈折率微粒子−
前記高屈折率微粒子としては、屈折率が1.8〜2.8、更には1.9〜2.8が好ましい。;一次粒子の平均粒径が3nm〜100nm、更には5nm〜100nm、特には10nm〜80nmが好ましい。
前記高屈折率微粒子の屈折率が1.8以上であれば、微粒子層の屈折率を効果的に高めることができ、前記屈折率が2.8以下であれば粒子が着色するなどの不都合がないので好ましい。また高屈折率微粒子の一次粒子の平均粒径が100nm以下であれば、形成される微粒子層のヘイズ値が高くなって層の透明性を損なうなどの不都合が生じないので好ましく、3nm以上であれば高い屈折率が保持されるので好ましい。
前記高屈折率微粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真による平均一次粒子径で表す。平均一次粒子径はそれぞれの微粒子の最大径の平均値で表し、長軸径と短軸径を有する場合、各微粒子の長軸径の平均値を平均一次粒子径とする。
【0033】
前記高屈折率微粒子としては、例えばTi、Zr、Ta、In、Nd、Sn、Sb、Zn,La、W、Ce、Nb、V、Sm、Y等の酸化物又は複合酸化物、硫化物を主成分とする粒子が挙げられる。ここで、主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。より好ましい高屈折率微粒子としては、Ti、Zr、Ta、In、及びSnから選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む酸化物もしくは複合酸化物を主成分とする粒子である。
【0034】
前記高屈折率微粒子には、粒子の中に種々の元素が含有されていても構わない(以下、このような元素を「含有元素」と称することがある)。
前記含有元素としては、例えば、Li、Si、Al、B、Ba、Co、Fe、Hg、Ag、Pt、Au、Cr、Bi、P、Sなどが挙げられる。酸化錫、酸化インジウムにおいては粒子の導電性を高めるために、Sb、Nb、P、B、In、V、ハロゲンなどの含有元素を含有させることが好ましく、特に、酸化アンチモンを5質量%〜20質量%含有させたものが最も好ましい。
【0035】
前記高屈折率微粒子は、含有元素としてCo、Zr、及びAlから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子(以下、「特定の酸化物」と称することもある)が挙げられる。これらの中でも、Coが特に好ましい。
Co、Al、及びZrの総含有量は、Tiに対し0.05質量%〜30質量%が好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましく、0.2質量%〜7質量%が更に好ましく、0.3質量%〜5質量%が特に好ましく、0.5質量%〜3質量%が最も好ましい。
前記含有元素Co、Al、及びZrは、二酸化チタンを主成分とする高屈折率微粒子の内部又は表面に存在する。二酸化チタンを主成分とする高屈折率微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが更に好ましい。これらの含有元素のうち金属元素は、酸化物として存在してもよい。
【0036】
他の好ましい高屈折率微粒子としては、チタン元素と、酸化物が屈折率1.95以上となる金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Met」とも略称する)との複合酸化物の粒子で、かつ該複合酸化物はCoイオン、Zrイオン及びAlイオンから選ばれる金属イオンの少なくとも1種がドープされてなる無機微粒子(「特定の複酸化物」と称することもある)が挙げられる。ここで、前記酸化物の屈折率が1.95以上となる金属元素としては、例えばTa、Zr、In、Nd、Sb、Sn、Biなどが挙げられる。これらの中でも、Ta、Zr、Sn、Biが特に好ましい。
前記特定の複合酸化物にドープされる金属イオンの含有量は、複合酸化物を構成する全金属[Ti+Met]量に対して、25質量%を超えない範囲で含有することが屈折率維持の観点から好ましく、0.05質量%〜10質量%がより好ましく、0.1質量%〜5質量%が更に好ましく、0.3質量%〜3質量%が特に好ましい。
【0037】
ドープされた金属イオンは、金属イオンとして、又は金属原子のいずれの形態で存在してもよく、前記複合酸化物の表面から内部まで適宜に存在することができる。複合酸化物の表面と内部との両方に存在することが好ましい。
【0038】
前記高屈折率微粒子は結晶構造を有することが好ましい。前記結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼが主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。このことにより、前記特定の酸化物又は特定の複酸化物の高屈折率微粒子は、屈折率が1.9〜2.8を有することになり、好ましい。前記屈折率は、2.1〜2.8がより好ましく、2.2〜2.8が更に好ましい。このことにより、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑えることができ、微粒子層自身並びに微粒子層と接する上/下の両層のそれぞれの耐候性を著しく改良することができる。
【0039】
上記した特定の金属元素又は金属イオンをドープする方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、特開平5−330825号公報、特開平11−263620号公報、特表平11−512336号公報、ヨーロッパ公開特許第0335773号公報等に記載の方法;イオン注入法[例えば、権田俊一、石川順三、上条栄治編「イオンビーム応用技術」株式会社シ−エムシー、1989年刊行、青木康、「表面科学」18巻(5)、262頁、1998、安保正一等、「表面科学」20巻(2)、60頁、1999等記載]等に従って製造できる。
【0040】
前記高屈折率微粒子は表面処理してもよい。前記表面処理とは、無機化合物及び/又は有機化合物を用いて該粒子表面の改質を実施するもので、これにより、高屈折率微粒子表面の濡れ性が調整され有機溶媒中での微粒子化、高屈折率組成物中での分散性や分散安定性が向上する。粒子表面に物理化学的に吸着させる無機化合物としては、例えば、ケイ素を含有する無機化合物(SiO
2等)、アルミニウムを含有する無機化合物[Al
2O
3、Al(OH)
3等]、コバルトを含有する無機化合物(CoO
2、Co
2O
3,Co
3O
4等)、ジルコニウムを含有する無機化合物[ZrO
2、Zr(OH)
4等]、鉄を含有する無機化合物(Fe
2O
3等)、などが挙げられる。
【0041】
前記表面処理に用いる有機化合物としては、従来公知の金属酸化物や無機顔料等の無機フィラー類の表面改質剤を用いることができる。例えば、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」第一章(技術情報協会、2001年刊行)等に記載されている。
【0042】
具体的には、高屈折率微粒子表面と親和性を有する極性基を有する有機化合物、カップリング化合物が挙げられる。前記高屈折率微粒子表面と親和性を有する極性基としては、例えばカルボキシ基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、環状酸無水物基、アミノ基等が挙げられ、これらを分子中に少なくとも1種を含有する化合物が好ましい。例えば、長鎖脂肪族カルボン酸(例えばステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等)、ポリオール化合物{例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ECH(エピクロルヒドリン)変性グリセロールトリアクリレート等}、ホスホノ基含有化合物{例えばEO(エチレンオキシド)変性リン酸トリアクリレート等}、アルカノールアミン{エチレンジアミンEO付加体(5モル)等}が挙げられる。
【0043】
前記カップリング化合物としては、従来公知の有機金属化合物が挙げられ、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等が含まれる。これらの中でも、シランカップリング剤が特に好ましい。具体的には、例えば特開2002−9908号公報、特開2001−310423号公報の段落番号〔0011〕〜〔0015〕に記載の化合物等が挙げられる。これらの表面処理に用いる化合物は、2種類以上を併用することもできる。
【0044】
前記高屈折率微粒子は、これをコアとして他の無機化合物からなるシェルを形成したコア/シェル構造の微粒子であることも好ましい。前記シェルとしては、Al、Si、及びZrから選ばれる少なくとも1種の元素からなる酸化物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−166104号公報に記載の内容が挙げられる。
【0045】
前記高屈折率微粒子の形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状又は不定形状が好ましい。前記高屈折率微粒子は単独で用いてもよいが、2種類以上を併用して用いることもできる。
前記高屈折率微粒子の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、ポリマーの屈折率を1.55〜1.95とすることができる範囲が好ましい。
【0046】
前記マトリックスとしては、(A)有機バインダー、並びに(B)加水分解性官能基を含有する有機金属化合物及びこの有機金属化合物の部分縮合物、の少なくともいずれかが好ましい。
【0047】
−(A)有機バインダー−
前記(A)の有機バインダーとしては、(1)従来公知の熱可塑性樹脂、
(2)従来公知の反応性硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせ、又は
(3)バインダー前駆体(後述する硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)と重合開始剤との組み合わせ、から形成されるバインダーが挙げられる。
【0048】
前記(1)、(2)又は(3)の有機バインダーと、微粒子と分散剤を含有する分散液から高屈折率組成物が調製されることが好ましい。この組成物は、支持体上に塗布され、塗膜が形成された後、バインダー形成用成分に応じた方法で硬化されて微粒子層が形成される。硬化方法は、バインダー成分の種類に応じて適宜選択され、例えば加熱及び光照射の少なくともいずれかの手段により、硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応を生起させる方法が挙げられる。なかでも、前記(3)の組み合わせを用いて光照射することにより硬化性化合物を架橋反応又は重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法が好ましい。
【0049】
更に、高屈折率組成物を塗布と同時又は塗布後に、微粒子の分散液に含有される分散剤を架橋反応又は重合反応させることが好ましい。
【0050】
このようにして作製した硬化膜中のバインダーは、例えば、前記分散剤とバインダーの前駆体である硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。更に、硬化膜中のバインダーは、アニオン性基が高屈折率微粒子の分散状態を維持する機能を有するので、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、高屈折率微粒子を含有する硬化膜中の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良することができる。
【0051】
{熱可塑性樹脂(A−1)}
前記(1)の熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩ビ−酸ビ共重合体樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、イミド樹脂、などが挙げられる。
【0052】
{反応性硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせ(A−2)}
前記(2)の反応性硬化性樹脂としては、熱硬化型樹脂及び/又は電離放射線硬化型樹脂を使用することが好ましい。
前記熱硬化型樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂などが挙げられる。
前記電離放射線硬化型樹脂には、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラジカル重合性不飽和基{(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、スチリル基、ビニル基等}及び/又はカチオン重合性基(エポキシ基、チオエポキシ基、ビニルオキシ基、オキセタニル基等)の官能基を有する樹脂で、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂などが挙げられる。
【0053】
これらの反応性硬化性樹脂に必要に応じて、架橋剤(エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、ポリアミン化合物、メラミン化合物等)、重合開始剤(アゾビス化合物、有機過酸化化合物、有機ハロゲン化合物、オニウム塩化合物、ケトン化合物等のUV光開始剤等)等の硬化剤、重合促進剤(有機金属化合物、酸化合物、塩基性化合物等)等の従来公知の化合物を加えて使用する。具体的には、例えば、山下普三、金子東助「架橋剤ハンドブック」(大成社、1981年刊行)記載の化合物が挙げられる。
【0054】
{バインダー前駆体と重合開始剤との組み合わせ(A−3)}
以下、硬化したバインダーの好ましい形成方法である前記(3)の組み合わせを用いて、光照射により硬化性化合物を架橋又は重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法について、主に説明する。
【0055】
前記バインダーの前駆体である光硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、ラジカル重合性官能基、及びカチオン重合性官能基のいずれでもよい。
【0056】
前記ラジカル重合性官能基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、スチリル基、アリル基等のエチレン性不飽和基などが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましく、分子内に2個以上のラジカル重合性基を含有する多官能モノマーを含有することが特に好ましい。
【0057】
前記ラジカル重合性多官能モノマーとしては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。これらの中でも、分子中に2〜6個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物が特に好ましい。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体及びオリゴマー)又はそれらの混合物、及びそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。
【0058】
前記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類などが挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が特に好ましい。
【0059】
また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類やアミド類と、単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との反応物も好適である。更に別の例として、前記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0060】
脂肪族多価アルコール化合物としては、例えばアルカンジオール、アルカントリオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサントリオール、イノシットール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン等が挙げられる。これら脂肪族多価アルコール化合物と、不飽和カルボン酸との重合性エステル化合物(モノエステル又はポリエステル)としては、例えば、特開2001−139663号公報の段落番号[0026]〜[0027]記載の化合物が挙げられる。
【0061】
その他の重合性エステルとしては、例えば、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報等に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開平2−226149号公報等に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を有するものなども好適に用いられる。
【0062】
更に脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とから形成される重合性アミドの具体例としては、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、特公昭54−21726号公報記載のシクロヘキシレン構造を有するものなどが挙げられる。
【0063】
更にまた、1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物(特公昭48−41708号公報等)、ウレタンアクリレート類(特公平2−16765号公報等)、エチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物(特公昭62−39418号公報等)、ポリエステルアクリレート類(特公昭52−30490号公報等)、更に、日本接着協会誌20巻7号300〜308頁(1984年)に記載の光硬化性モノマー及びオリゴマーも使用することができる。これらラジカル重合性の多官能モノマーは、2種類以上を併用してもよい。
【0064】
次に、微粒子層のポリマーの形成に用いることができるカチオン重合性基含有の化合物(以下、「カチオン重合性化合物」又は「カチオン重合性有機化合物」とも称する)について説明する。
【0065】
前記カチオン重合性化合物は、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応及び/又は架橋反応を生ずる化合物のいずれもが使用でき、代表例としては、エポキシ化合物、環状チオエーテル化合物、環状エーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニル炭化水素化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。前記カチオン重合性有機化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
前記カチオン重合性基含有化合物としては、1分子中のカチオン重合性基の数は2個〜10個が好ましく、2個〜5個がより好ましい。前記化合物の平均分子量は3,000以下が好ましく、200〜2,000がより好ましく、400〜1,500が更に好ましい。前記平均分子量が該下限値以上であれば、皮膜形成過程での揮発が問題となるなどの不都合が生じることがなく、前記上限値以下であれば、高屈折率組成物との相溶性が悪くなるなどの問題を生じないので好ましい。
【0067】
前記エポキシ化合物としては、例えば脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物などが挙げられる。
【0068】
前記脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。更に、前記のエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチルエポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどを挙げることができる。また、脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、又は不飽和脂環族環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、ジシクロオクテン、トリシクロデセン等)含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物などが挙げられる。
【0069】
前記芳香族エポキシ化合物としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価もしくは多価のフェノール、又はそのアルキレンオキサイド付加体のモノもしくはポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。前記エポキシ化合物としては、例えば、特開平11−242101号公報中の段落番号〔0084〕〜〔0086〕に記載の化合物、特開平10−158385号公報中の段落番号〔0044〕〜〔0046〕に記載の化合物等が挙げられる。
【0070】
これらのエポキシ化合物のうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、脂環式エポキシドがより好ましい。前記エポキシ化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
環状チオエーテル化合物としては、前記エポキシ化合物のエポキシ環の代わりに、チオエポキシ環を有する化合物が挙げられる。
【0072】
環状エーテルとしてのオキセタニル基を含有する化合物としては、具体的には、例えば特開2000−239309号公報中の段落番号[0024]〜[0025]に記載の化合物等が挙げられる。これらの化合物は、エポキシ基含有化合物と併用することが好ましい。
【0073】
スピロオルソエステル化合物としては、例えば特表2000−506908号公報等に記載の化合物などが挙げられる。
【0074】
ビニル炭化水素化合物としては、スチレン化合物、ビニル基置換脂環炭化水素化合物(ビニルシクロヘキサン、ビニルビシクロヘプテン等)、前記ラジカル重合性モノマーで記載の化合物、プロペニル化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",32巻2895頁(1994年)記載等}、アルコキシアレン化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",33巻2493頁(1995年)記載等}、ビニル化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",34巻1015頁(1996年)、特開2002−29162号公報等}、イソプロペニル化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",34巻2051頁(1996年)記載等}等を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
また、前記多官能性化合物は、前記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも各1種を少なくとも分子内に含有する化合物を用いることが好ましい。例えば、特開平8−277320号公報中の段落番号〔0031〕〜〔0052〕に記載の化合物、特開2000−191737号公報中の段落番号〔0015〕に記載の化合物等が挙げられる。本発明に供される化合物は、これらに限定されるものではない。
【0076】
以上述べたラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを、質量比率(ラジカル重合性化合物:カチオン重合性化合物)が、90:10〜20:80の割合で含有していることが好ましく、80:20〜30:70の割合で含有していることがより好ましい。
【0077】
次に、前記(3)の組み合わせにおいて、バインダー前駆体と組み合わせて用いられる重合開始剤について詳述する。
【0078】
前記重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
前記重合開始剤は、光及び/又は熱照射により、ラジカルもしくは酸を発生する化合物が好ましい。前記光重合開始剤は、極大吸収波長が400nm以下が好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、取り扱いを白灯下で実施することができる。また、近赤外線領域に極大吸収波長を持つ化合物を用いることもできる。
【0079】
前記ラジカルを発生する化合物は、光及び/又は熱照射によりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることができる。前記ラジカルを発生する化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
前記ラジカルを発生する化合物としては、例えば、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤等の熱ラジカル重合開始剤、有機過酸化化合物(特開2001−139663号公報等)、アミン化合物(特公昭44−20189号公報)、メタロセン化合物(特開平5−83588号公報、特開平1−304453号公報等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物(米国特許第3,479,185号明細書等)、ジスルホン化合物(特開平5−239015号公報、特開昭61−166544号公報等)、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機ホウ酸化合物等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0081】
前記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等の"Bull.Chem.Soc Japan",42巻2924頁(1969年)、米国特許第3,905,815号明細書、特開平5−27830号公報、M.P.Hutt,"J.Heterocyclic Chemistry",1巻(3号)、(1970年)」等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:s−トリアジン化合物が挙げられる。より好適には、少なくとも1つのモノ、ジ又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0082】
前記カルボニル化合物としては、例えば、「最新UV硬化技術」60〜62ページ[株式会社技術情報協会刊、1991年]、特開平8−134404号公報の段落番号〔0015〕〜〔0016〕、特開平11−217518号公報の段落番号〔0029〕〜〔0031〕に記載の化合物等が挙げられ、アセトフェノン系、ヒドロキシアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサン系、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、ベンジルジメチルケタール、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0083】
前記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martin,"Rad.Tech'98.Proceeding April 19〜22,1998,Chicago"等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物が挙げられる。例えば、前記特開2002−116539号公報の段落番号〔0022〕〜〔0027〕に記載の化合物が挙げられる。またその他の有機ホウ素化合物としては、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0084】
前記ラジカル発生化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ラジカル発生化合物の添加量としては、ラジカル重合性モノマー全量に対し、0.1質量%〜30質量%が好ましく、0.5質量%〜25質量%がより好ましく、1質量%〜20質量%が更に好ましい。前記添加量の範囲において、高屈折率組成物の経時安定性が問題なく高い重合性となる。
【0085】
次に、光重合開始剤として用いることができる光酸発生剤について詳述する。
前記光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、又はマイクロレジスト等に使用されている公知の光酸発生剤等、公知の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。また、前記光酸発生剤としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物、オニウム化合物などが挙げられる。これらの中でも、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物が特に好ましい。前記有機ハロゲン化合物、ジスルホン化合物の具体例は、前記ラジカルを発生する化合物の記載と同様のものが挙げられる。
【0086】
前記オニウム化合物としては、例えばジアゾニウム塩、アンモニウム塩、イミニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アルソニウム塩、セレノニウム塩等が挙げられ、例えば特開2002−29162号公報の段落番号〔0058〕〜〔0059〕に記載の化合物、などが挙げられる。
【0087】
前記酸発生剤としては、オニウム塩が好適に用いられる。これらの中でも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が、光重合開始の光感度、化合物の素材安定性等の点から特に好ましい。
【0088】
前記オニウム塩としては、例えば、特開平9−268205号公報の段落番号〔0035〕に記載のアミル化されたスルホニウム塩、特開2000−71366号明細書の段落番号〔0010〕〜〔0011〕に記載のジアリールヨードニウム塩又はトリアリールスルホニウム塩、特開2001−288205号公報の段落番号〔0017〕に記載のチオ安息香酸S−フェニルエステルのスルホニウム塩、特開2001−133696号公報の段落番号〔0030〕〜〔0033〕に記載のオニウム塩などが挙げられる。
【0089】
前記光酸発生剤の他の例としては、特開2002−29162号公報の段落番号〔0059〕〜〔0062〕に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、光分解してスルホン酸を発生する化合物(イミノスルフォネート等)等の化合物が挙げられる。
【0090】
前記酸発生剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記酸発生剤の添加量は、全カチオン重合性モノマーの全質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜15質量%がより好ましく、1質量%〜10質量%が更に好ましい。前記添加量が、前記範囲において、高屈折率組成物の安定性、重合反応性等から好ましい。
【0091】
前記高屈折率組成物は、ラジカル重合性化合物又はカチオン重合性化合物の合計質量に対して、ラジカル重合開始剤を0.5質量%〜10質量%又はカチオン重合開始剤を1質量%〜10質量%の割合で含有していることが好ましく、ラジカル重合開始剤を1質量%〜5質量%、又はカチオン重合開始剤を2質量%〜6質量%の割合で含有することがより好ましい。
【0092】
前記高屈折率組成物には、紫外線照射により重合反応を行う場合、従来公知の紫外線分光増感剤、化学増感剤を併用してもよい。これらの増感剤としては、例えばミヒラーズケトン、アミノ酸(グリシン等)、有機アミン(ブチルアミン、ジブチルアミン等)などが挙げられる。
【0093】
また、近赤外線照射により重合反応を行う場合には、近赤外線分光増感剤を併用することが好ましい。併用する近赤外線分光増感剤は、700nm以上の波長域の少なくとも一部に吸収帯を有する光吸収物質であればよく、分子吸光係数が10,000以上の値を有する化合物が好ましい。更には、750nm〜1,400nmの領域に吸収を有し、かつ分子吸光係数が20,000以上の値が好ましい。また、420nm〜700nmの可視光波長域に吸収の谷があり、光学的に透明であることがより好ましい。
【0094】
前記近赤外線分光増感剤は、近赤外線吸収顔料及び近赤外線吸収染料として知られる種々の顔料及び染料を用いることができる。これらの中でも、従来公知の近赤外線吸収剤を用いることが好ましい。市販の染料並びに、文献{例えば、「化学工業」1986年5月号45〜51頁の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990年)シーエムシー、「特殊機能色素」[池森・柱谷編集、1986年、株式会社シーエムシー発行]、J.FABIAN,"Chem.Rev.",92巻1197〜1226頁(1992年)}、日本感光色素研究所が1995年に発行したカタログ、並びにExciton Inc.が1989年に発行したレーザー色素カタログ及び特許に記載されている公知の染料が利用できる。
【0095】
−(B)加水分解性官能基を含有する有機金属化合物及びこの有機金属化合物の部分縮合物−
前記マトッリクスとして、加水分解可能な官能基を含有する有機金属化合物を用いて、ゾル/ゲル反応により塗布膜形成後に硬化された膜を形成することも好ましい。
【0096】
前記有機金属化合物としては、例えばSi、Ti、Zr、Al等からなる化合物が挙げられる。
前記加水分解可能な官能基な基としては、例えばアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基が特に好ましい。好ましい有機金属化合物は、下記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物及びその部分加水分解物(部分縮合物)である。なお、下記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物は、容易に加水分解し、引き続いて脱水縮合反応が生じることはよく知られた事実である。
【0097】
一般式(2):(R
21)
β−Si(Y
21)
4−β
ただし、前記一般式(2)中、R
21は、置換もしくは無置換の炭素数1〜30脂肪族基又は炭素数6〜14のアリール基を表す。Y
21は、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子等)、OH基、OR
22基、OCOR
22基を表す。ここで、R
22は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。βは0〜3の整数を表し、好ましくは0、1又は2、特に好ましくは1である。ただし、βが0の場合は、Y
21はOR
22基又はOCOR
22基を表す。
【0098】
前記一般式(2)において、R
21の脂肪族基としては、好ましくは炭素数1〜18(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル、ヘキセニル基、デセニル基、ドデセニル基等)が挙げられる。より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは1〜8のものである。R
21のアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラニル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0099】
置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アルコキシシリル基(トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アシルオキシ基{アセトキシ、(メタ)アクリロイル等}、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)などが好ましい。
【0100】
これらの置換基のうちで、更に好ましくは水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基であり、特に好ましくはエポキシ基、重合性のアシルオキシ基{(メタ)アクリロイル}、重合性のアシルアミノ基(アクリルアミノ、メタクリルアミノ)である。またこれら置換基は更に置換されていてもよい。
【0101】
前記のようにR
22は置換もしくは無置換のアルキル基を表し、アルキル基は特に限定はないが、例えばR
21の脂肪族基と同じものが挙げられ、アルキル基中の置換基の説明はR
21と同じである。
【0102】
前記一般式(2)の化合物の含有量は、前記高屈折率組成物の全固形分の10質量%〜80質量%が好ましく、20質量%〜70質量%がより好ましく、30質量%〜50質量%が更に好ましい。
【0103】
前記一般式(2)の化合物としては、例えば特開2001−166104号公報の段落番号〔0054〕〜〔0056〕に記載の化合物が挙げられる。
【0104】
前記高屈折率組成物において、有機バインダーは、シラノール基を有するものが好ましい。バインダーがシラノール基を有することで、微粒子層の物理強度、耐薬品性、耐候性が更に改良され、好ましい。前記シラノール基は、例えば、高屈折率組成物を構成するバインダー形成成分として、バインダー前駆体(硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)や重合開始剤、高屈折率微粒子の分散液に含有される分散剤と共に、架橋又は重合性官能基を有する一般式(2)で表される有機ケイ素化合物を該高屈折率組成物に配合し、この高屈折率組成物を透明支持体上に塗布して、前記の分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマー、一般式(2)で表される有機ケイ素化合物を架橋反応又は重合反応させることによりバインダーに導入することができる。
【0105】
前記の有機金属化合物を硬化させるための加水分解・縮合反応は、触媒存在下で行われることが好ましい。前記触媒としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタネート等の金属アルコキシド類;β−ジケトン類又はβ−ケトエステル類の金属キレート化合物類などが挙げられる。具体的には、例えば特開2000−275403号公報中の段落番号〔0071〕〜〔0083〕に記載の化合物などが挙げられる。
【0106】
前記触媒化合物の組成物中での割合は、有機金属化合物に対し、0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜50質量%がより好ましく、0.5質量%〜10質量%が更に好ましい。なお、反応条件は有機金属化合物の反応性により適宜調節されることが好ましい。
【0107】
前記高屈折率組成物において、マトリックスは特定の極性基を有することも好ましい。前記特定の極性基としては、例えばアニオン性基、アミノ基、四級アンモニウム基などが挙げられる。前記アニオン性基、アミノ基及び四級アンモニウム基の具体例としては、前記分散剤について述べたものと同様のものが挙げられる。
【0108】
−溶媒−
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアルコール類、ケトン類、エステル類、アミド類、エーテル類、エーテルエステル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。具体的には、アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エステル(例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル等)、脂肪族炭化水素(例えばヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例えばメチルクロロホルム等)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレン等)、アミド(例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等)、エーテル(例えばジオキサン、テトラハイドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、エーテルアルコール(例えば1−メトキシ−2−プロパノール、エチルセルソルブ、メチルカルビノール等)が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ブタノールが特に好ましい。なお、ケトン溶媒(例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)を主にした塗布溶媒系も好ましく用いられる。
前記ケトン系溶媒の含有量は、前記高屈折率組成物に含まれる全溶媒の10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。
【0109】
特定の極性基を有するマトリックスは、例えば、高屈折率組成物に、高屈折率微粒子と分散剤を含む分散液を配合し、硬化膜形成成分として、特定の極性基を有するバインダー前駆体(特定の極性基を有する硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)と重合開始剤の組み合わせ、及び特定の極性基を有し、かつ架橋又は重合性官能基を有する前記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物の少なくともいずれかを配合し、更に所望により、特定の極性基、及び架橋又は重合性の官能基を有する単官能性モノマーを配合し、該塗布組成物を透明支持体上に塗布して前記の分散剤、単官能性モノマー、多官能モノマーや多官能オリゴマー及び/又は前記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物を架橋又は重合反応させることにより得られる。
【0110】
前記特定の極性基を有する単官能性モノマーは、高屈折率組成物の中で高屈折率微粒子の分散助剤として機能することができ、好ましい。更に、塗布後、分散剤、多官能モノマーや多官能オリオリゴマーと架橋反応、又は、重合反応させてバインダーとすることで微粒子層における高屈折率微粒子の良好な均一な分散性を維持し、物理強度、耐薬品性、耐候性に優れた微粒子層を作製することができる。
【0111】
前記高屈折率組成物中に前記微粒子を添加した塗布液を、前記透明基板上に、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、エクストルージョンコート法等の公知の薄膜形成方法で塗布し、乾燥、光及び/又は熱照射することにより作製することができる。好ましくは、光照射による硬化が、迅速硬化から有利である。更には、光硬化処理の後半で加熱処理することも好ましい。
【0112】
光照射の光源は、紫外線光域又は近赤外線光のものであればいずれでもよく、紫外線光の光源として、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド灯、キセノン灯、太陽光等が挙げられる。波長350nm〜420nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。また、近赤外光光源としてはハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプが挙げられ、波長750nm〜1,400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。
【0113】
光照射による光ラジカル重合の場合は、空気又は不活性気体中で行うことができるが、ラジカル重合性モノマーの重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。照射する紫外線の照射強度は、0.1mW/cm
2〜100mW/cm
2が好ましく、塗布膜表面上での光照射量は100mJ/cm
2〜1,000mJ/cm
2が好ましい。また、光照射工程での塗布膜の温度分布は、均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、塗布膜の面内及び層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
【0114】
前記微粒子層の平均厚みは、5μm〜200μmが好ましく、5μm〜50μmがより好ましい。前記平均厚みが、5μm未満であると、微粒子層による十分な光角度変換がなく、最大な光取出し効率が得られないことがあり、200μmを超えると、光が散乱されすぎて、後方散乱の光が増え、有機電界発光素子内部に戻る光が多くなり、光取出し効率が低下する、また、微粒子層が厚いことは高コストに繋がることがある。
前記平均厚みは、例えば微粒子層の一部を切り取り、走査型電子顕微鏡(S−3400N、日立ハイテク株式会社製)で測定し、微粒子層の厚みを求めることができる。
【0115】
<<光取出し部材>>
前記光取出し部材とは、光取出し機能を備えていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、プリズム、プリズムアレイ、レンズ、レンズアレイ、微細凹凸構造、及び微粒子層のいずれかが好ましい。これらの中でも、前記したように、プリズムは面発光に対して、発光点とプリズムの中心の相対位置に関係なく、プリズムの構成を最適化すれば、プリズムに入射するある角度範囲の光は空気まで放射できるので、有機電界発光装置において光取出し効率を向上する効果が高い点で、プリズム、プリズムアレイであることが特に好ましい。
【0116】
前記光取出し部材における、プリズム、プリズムアレイ、レンズ、レンズアレイ、微細凹凸構造、及び微粒子層のいずれかは、前記配向変換部材における、プリズム、プリズムアレイ、レンズ、レンズアレイ、微細凹凸構造、及び微粒子層のいずれかと同様であるため、その説明を省略する。
【0117】
前記光取出し手段としては、(1)前記配光変換部材と前記光取出し部材とが別体である態様、(2)前記光取出し部材と前記配光変換部材とが一体化している態様、とがある。
前記(1)の前記配光変換部材と前記光取出し部材とが別体である態様としては、例えば、プリズム層と微粒子層を積層した態様、レンズ層と微粒子層を積層した態様、微細凹凸構造と微粒子層を積層した態様などが挙げられる。
これらの中でも、光取出し部材が、プリズム及びプリズムアレイのいずれかからなるプリズム層であり、配光変換部材が、微粒子とポリマーとを含有する微粒子層であり、透明基板上に微粒子層とプリズム層とをこの順に有する態様が、有機電界発光層から発光した光がまず、配光変換部材により、光取出し部材に対して最適な配光分布に変換されて、光取出し部材に入射すると、高い光取出し効率が得られる。また、透明基板の両側に有機電界発光装置と光取出し手段を配置することで、光取出し手段を配置することによる有機電界発光装置の特性に悪影響を与えない点で特に好ましい。
【0118】
前記(2)の前記光取出し部材と前記配光変換部材とが一体化(光取出し部材兼配光変換部材)している態様としては、例えば、プリズム層と微粒子層を一体化した態様、レンズ層と微粒子層を一体化した態様、微細凹凸構造と微粒子層を一体化した態様などが挙げられる。
これらの中でも、プリズム層と微粒子層を一体化した態様であるプリズム層の内部に微粒子とポリマーを含有する態様が、配光変換部は光取出し部の入射側として利用し、製造上にも、単独プリズムと微粒子層を別々に用意する必要がなく、両部分を張り合わせる工程も必要ないので、製造が簡易化でき、コストも減少することができる点で特に好ましい。
【0119】
前記光取出し部材と前記配光変換部材とを一体化する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばプリズム層と微粒子層を一体化する場合には、微粒子と有機電界発光層と同じあるいは大きい屈折率を持つポリマーをプリズムの素材として用い、インプリント等の方法でプリズムを形成する方法などが挙げられる。
【0120】
ここで、前記光取出し手段の具体的な態様について、図面を参照して説明する。
図11A〜
図11Dは、光取出し部材がプリズム、レンズ、微細凹凸構造、又は微粒子層であり、配光変換部材がレンズである有機電界発光装置を示す概略図である。有機電界発光層の屈折率はnである。
配光変換部材としてのレンズの屈折率n1は、n1≧有機電界発光層の屈折率n、かつ配光変換部材の出射側の媒質の屈折率n2>n1であり、必要に応じて、有機電界発光層から発光した光の配光分布に対して、レンズ高さT、レンズ直径2Rを最適化する。具体的には、レンズ高さTは0.05mm〜1mm、レンズ直径2Rは0.1mm〜2mmが好ましい。
配光変換部材であるレンズの存在は、有機電界発光層から発光する光が屈折率差により全反射されない光を透過させるため、(1)配光変換部材を構成するレンズの材質の屈折率n1は有機電界発光層の屈折率nと同じであるか、又は大きいことが好ましい。したがって、レンズの屈折率n1≧有機電界発光層の屈折率nである。
(2)配光変換部材の出射側の媒質の屈折率n2は、配光変換部材を構成するレンズの材質の屈折率n1より大きいことが好ましい。従って、n2>n1である。
光取出し部材の屈折率n3は、n3≧n2であり、製造やコストを考慮すると、n3=n2であってもよい。
前記光取出し部材がプリズムの場合には、必要に応じて、有機電界発光層から発光した光の配光分布に対して、プリズム高さDとプリズム幅Wを最適化する。具体的には、プリズム高さDは0.05mm〜1mm、プリズム幅Wは0.05mm〜2mmが好ましい。入射側の媒質の屈折率はn2、プリズムを構成する材質の屈折率はn3である。
前記光取出し部材がレンズの場合には、必要に応じて、有機電界発光層から発光した光の配光分布に対して、レンズ高さT1とレンズ直径2R1を最適化する。具体的には、レンズ高さTは0.05mm〜2mm、レンズ直径2Rは0.1mm〜2mmが好ましい。入射側の媒質の屈折率はn2、レンズを構成する材質の屈折率はn3である。
前記光取出し部材が微細凹凸構造の場合には、必要に応じて、有機電界発光層から発光した光の配光分布に対して、凹凸の高さhと凹凸の幅dを最適化する。具体的には、凹凸高さhは0.3μm〜3μm、凹凸幅dは0.5μm〜3μmが好ましい。入射側の媒質の屈折率はn2、凹凸を構成する材質の屈折率はn3である。
前記光取出し部材が微粒子層の場合には、必要に応じて、有機電界発光層から発光した光の配光分布に対して、微粒子層の厚みL、微粒子層のポリマーの屈折率nb、微粒子の平均粒径φ、微粒子の屈折率np、np≠nb、微粒子の体積充填率ηを最適化する。具体的には、微粒子層の厚みLは1μm〜50μm、微粒子層のポリマーの屈折率nbは有機電界発光層の屈折率nと同等又はそれ以上、微粒子の平均粒径φは0.5μm〜10μm、微粒子の屈折率npは1.4〜2.6、微粒子の体積充填率ηは10%〜50%が好ましい。入射側の媒質の屈折率はn2、微粒子層のポリマーの屈折率はnb(ここではn3で表示する)である。
【0121】
図12A〜
図12Dは、光取出し部材はプリズム、レンズ、微細凹凸構造、又は微粒子層であり、配光変換部材がプリズムである有機電界発光装置を示す概略図である。なお、有機電界発光層の屈折率はnである。
前記配光変換部材としてのプリズムの屈折率は、n1≧n、かつn2>n1、必要に応じて、有機電界発光層から発光した光の配光分布に対して、プリズム高さD、プリズム幅Wを最適化する。具体的には、プリズム高さDは0.05mm〜1mm、プリズム幅Wは0.05mm〜4mmが好ましい。
前記配光変換部材であるプリズムの存在は、有機電界発光層から発光する光が屈折率差により全反射されなく光を透過させるため、(1)配光変換部材であるプリズムを構成する材質の屈折率n1は有機電界発光層の屈折率nと同じであるか、又は大きいことが好ましい。したがって、n1≧nである。
(2)配光変換部材であるプリズムの出射側の媒質の屈折率n2は、配光変換部材であるプリズムを構成する材質の屈折率n1より大きいことが好ましい。したがって、n2>n1である。
前記光取出し部材の屈折率n3は、n3≧n2であり、製造やコストを考慮すると、n3=n2であってもよい。
前記光取出し部材がプリズムの場合には、必要に応じて、プリズム高さD1とプリズム幅W1を最適化する。具体的には、プリズム高さDは0.05mm〜1mm、プリズム幅Wは0.05mm〜2mmが好ましい。入射側の媒質の屈折率はn2、プリズムを構成する材質の屈折率はn3である。
前記光取出し部材がレンズの場合には、必要に応じて、レンズ高さT、レンズ直径2Rを最適化する。具体的には、レンズ高さTは0.05mm〜2mm、レンズ直径2Rは0.1mm〜2mmが好ましい。入射側の媒質の屈折率はn2、レンズを構成する材質の屈折率はn3である。
前記光取出し部材が微細凹凸構造の場合には、必要に応じて、凹凸の高さhと凹凸の幅dを最適化する。具体的には、凹凸高さhは0.3μm〜3μm、凹凸幅dは0.5μm〜3μmが好ましい。入射側の媒質の屈折率はn2、凹凸を構成する材質の屈折率はn3である。
前記光取出し部材が微粒子層の場合には、必要に応じて、微粒子層の厚みL、微粒子層のポリマーの屈折率nb、微粒子の平均粒径φ、微粒子の屈折率np、np≠nb、微粒子の体積充填率ηを最適化する。具体的には、微粒子層の厚みLは1μm〜50μm、微粒子層のポリマーの屈折率nbは有機電界発光層の屈折率nと同等又はそれ以上、微粒子の平均粒径φは0.5μm〜10μm、微粒子の屈折率npは1.4〜2.6、微粒子の体積充填率ηは10%〜50%が好ましい。入射側の媒質の屈折率はn2、微粒子層のポリマーの屈折率はnb(ここではn3で表示する)である。
【0122】
図13A〜
図13Dは、光取出し部材はプリズム、レンズ、微細凹凸構造、又は微粒子層であり、配光変換部材が微細凹凸構造である有機電界発光装置を示す概略図である。なお、有機電界発光層の屈折率はnである。
前記配光変換部材としての微細凹凸構造の屈折率は、n1≧n、かつn2>n1、必要に応じて、凹凸の高さh、凹凸の幅dを最適化する。具体的には、凹凸高さhは0.3μm〜3μmが好ましく、凹凸幅dは0.5μm〜3μmが好ましい。
前記配光変換部材である微細凹凸構造の存在は、有機電界発光層から発光する光が屈折率差により全反射されず光を透過させるため、(1)配光変換部材である微細凹凸構造を構成する材質の屈折率n1は有機電界発光層の屈折率nと同じであるか、又は大きいことが好ましい。従って、n1≧nである。
(2)配光変換部材である微細凹凸構造の出射側の媒質の屈折率n2は、配光変換部である微細凹凸構造を構成する材質の屈折率n1より大きいことが好ましい。従って、n2>n1である。
前記光取出し部材の屈折率n3は、n3≧n2であり、製造やコストを考慮すると、n3=n2であってもよい。
前記光取出し部材がプリズムの場合には、必要に応じて、プリズム高さDとプリズム幅Wを最適化する。具体的には、プリズム高さDは0.05mm〜1mmが好ましく、プリズム幅Wは0.05mm〜2mmが好ましい。入射側の媒質の屈折率はn2、プリズムを構成する材質の屈折率はn3である。
前記光取出し部材がレンズの場合には、必要に応じて、レンズ高さT、レンズ直径2Rを最適化する。具体的には、レンズ高さTは0.05mm〜2mmが好ましく、レンズ直径2Rは0.1mm〜2mmが好ましい。入射側の媒質の屈折率はn2、レンズを構成する材質の屈折率はn3である。
前記光取出し部材が微細凹凸構造の場合には、必要に応じて、凹凸の高さh1と凹凸の幅d1を最適化する。具体的には、凹凸高さhは0.3μm〜3μm、凹凸幅dは0.5μm〜3μmが好ましい。入射側の媒質の屈折率はn2、凹凸を構成する材質の屈折率はn3である。
前記光取出し部材が微粒子層の場合には、必要に応じて、微粒子層の厚みL、微粒子層のポリマーの屈折率nb、微粒子の平均粒径φ、微粒子の屈折率np、np≠nb、微粒子の体積充填率ηを最適化する。具体的には、微粒子層の厚みLは1μm〜50μm、微粒子層のポリマーの屈折率nbは有機電界発光層の屈折率nと同等又はそれ以上、微粒子の平均粒径φは0.5μm〜10μm、微粒子の屈折率npは1.4〜2.6、微粒子の体積充填率ηは10%〜50%が好ましい。入射側の媒質の屈折率はn2、微粒子層のポリマーの屈折率はnb(ここではn3で表示する)である。
【0123】
図14A〜
図14Dは、光取出し部材はプリズム、レンズ、微細凹凸構造、又は微粒子層であり、配光変換部材が微粒子層である有機電界発光装置を示す概略図である。なお、有機電界発光層の屈折率はnである。
前記配光変換部材としての微粒子層の屈折率は、n1≧n、又はn2=n1でもよい。必要に応じて、微粒子層の厚みL、微粒子層のポリマーの屈折率nb、微粒子の屈折率np、np≠nb、微粒子の平均粒径φ、体積充填率ηを最適化する。具体的には、微粒子層の厚みLは1μm〜50μm、微粒子層のポリマーの屈折率nbは有機電界発光層の屈折率nと同等又はそれ以上、微粒子の平均粒径φは0.5μm〜10μm、微粒子の屈折率npは1.4〜2.6、微粒子の体積充填率ηは10%〜50%が好ましい。
前記配光変換部材である微粒子層の存在は、有機電界発光層から発光する光が屈折率差により全反射されず、光を透過させるため、(1)配光変換部材である微粒子層を構成する材質の屈折率n1は有機電界発光層の屈折率nと同じであるか、又は大きいことが好ましい。したがって、n1≧nである。
(2)製造やコストを考慮すると、入射側の媒質の屈折率n2=n1が好ましい。
(3)光取出し部材は、プリズム、レンズ、微細凹凸構造、及び微粒子層のいずれも、n3=n2=n1でもよいので、配光変換部として微粒子層を利用するのが最も好ましい。
光取出し部材の屈折率n3は、n3≧n2であり、製造やコストを考慮すると、n3=n2であってもよい。
前記光取出し部材がプリズムの場合には、必要に応じて、プリズム高さDとプリズム幅Wを最適化する。具体的には、プリズム高さDは0.05mm〜1mm、プリズム幅Wは0.05mm〜2mmが好ましい。入射側の媒質の屈折率n2、プリズムを構成する材質の屈折率n3である。
前記光取出し部材がレンズの場合には、必要に応じて、レンズ高さT、レンズ直径2Rを最適化する。具体的には、レンズ高さTは0.05mm〜2mm、レンズ直径2Rは0.1〜2mmが好ましい。入射側の媒質の屈折率はn2、レンズを構成する材質の屈折率はn3である。
前記光取出し部材が微細凹凸構造の場合には、必要に応じて、凹凸の高さhと凹凸の幅dを最適化する。具体的には、凹凸高さhは0.3μm〜3μm、凹凸幅dは0.5μm〜3μmが好ましい。入射側の媒質の屈折率はn2、微細凹凸構造を構成する材質の屈折率はn3である。
前記光取出し部材が微粒子層の場合には、必要に応じて、微粒子層の厚みL1、微粒子層のポリマーの屈折率nb1、微粒子の平均粒径φ1、微粒子の屈折率np1、np1≠nb1、微粒子の体積充填率η1を最適化する。具体的には微粒子層の厚みL1は1μm〜50μm、微粒子層のポリマーの屈折率nb1は有機電界発光層の屈折率nと同等又はそれ以上、微粒子の平均粒径φ1は0.5μm〜10μm、微粒子の屈折率np1は1.4〜2.6、微粒子の体積充填率η1は10%〜50%が好ましい。入射側の媒質の屈折率n2、微粒子層のポリマーの屈折率nb(ここではn3で表示する)。
【0124】
図15A〜
図15Cは、光取出し部材はプリズム、レンズ、又は微細凹凸構造であり、配光変換部材が微粒子層であり、光取出し部材と配光変換部材とが一体化している有機電界発光装置を示す概略図である。なお、有機電界発光層の屈折率はnである。
この光取出し部材と配光変換部材とが一体化している態様では、光取出し部材に入射する光が全反射されないように、微粒子層のポリマーの屈折率nbは有機電界発光層の屈折率nと同等又はそれ以上が好ましい。したがって、nb≧nである。
必要に応じて、微粒子層のポリマーの屈折率nb、微粒子の屈折率np、np≠nb、微粒子の平均粒径φ、微粒子の体積充填率ηを最適化する。具体的には、微粒子層の厚みLは1μm〜50μm、微粒子層のポリマーの屈折率nbは有機電界発光層の屈折率nと同等又はそれ以上、微粒子の平均粒径φは0.5μm〜10μm、微粒子の屈折率npは1.4〜2.6、微粒子の体積充填率ηは10%〜50%が好ましい。
光取出し部材としてのプリズム、レンズ、又は微細凹凸構造のサイズを最適化する。
前記光取出し部材がプリズムの場合には、プリズム高さD、プリズム幅Wを最適化する。具体的には、プリズム高さDは0.05mm〜1mm、プリズム幅Wは0.05mm〜2mmが好ましい。
前記光取出し部材がレンズの場合には、レンズ高さT、レンズ直径2Rを最適化する。具体的には、レンズ高さTは0.05mm〜2mm、レンズ直径2Rは0.1mm〜2mmが好ましい。
前記光取出し部材が微細凹凸構造の場合には、凹凸の高さh、凹凸の幅dを最適化する。具体的には、凹凸高さhは0.3μm〜3μm、凹凸幅dは0.5μm〜3μmが好ましい。
【0125】
<反射電極>
前記反射電極は、光取出し側の反対側に配置される電極であり、該反射電極は、有機電界発光層からの発光を反射する作用を有する。
前記反射電極の材料としては、反射率の点から、銀(Ag)が好適に用いられる。銀(Ag)以外の金属、例えばMgAg、Alなどを反射電極に用いると、光取出し効率の向上を図れないことがある。なお、前記反射電極を銀(Ag)とする場合は、電子輸送層間には電気特性を改善するために光学的に無視できる程度(10nm以下)のAlやLiF層を追加したものも含まれる。
前記反射電極の形成には、例えば真空蒸着法、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、コーティング法などの方法が用いられる。
前記反射電極の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm〜5μmが好ましく、50nm〜1μmがより好ましく、100nm〜1μmが更に好ましい。
【0126】
<透明基板>
前記透明基板の屈折率は、有機電界発光層の屈折率以上が好ましい。前記透明基板の屈折率が有機電界発光層の屈折率より高いと、有機電界発光層に発光される光が透明基板に放射する際、光の層間反射が発生し、反射電極と透明基板の間を往復するうちに、有機電界発光層や反射電極に吸収される成分は損失になり、光取出し効率が低下する原因になる。また、前記透明基板の屈折率が高くなると、前記微粒子層のポリマーの屈折率を同等に高くしないと、透明基板と微粒子層間に全反射が発生し、光が取り出せなくなる。微粒子層のポリマーの屈折率を高屈折率にすると、透明基板と空気間、又は微粒子層と空気間の屈折率の差が大きくなり、後方散乱される光が増え、光が微粒子層と反射電極間を往復する間に吸収される成分が多くなり、光取出し効率が低下する原因なる。また、屈折率が1.95以上の透明基板や微粒子層のポリマーは高価であり、製作も複雑になる点から、有機電界発光層の屈折率と同じであることがより好ましい。
前記透明基板の屈折率は、前記微粒子層におけるポリマーの屈折率と同等であることが、層間反射や全反射をなくす点から好ましい。
前記透明基板の屈折率は、用いる材質に応じて異なり一概には規定できないが、例えばガラスの場合には、1.55〜1.95が好ましい。
【0127】
前記透明基板としては、その形状、構造、大きさ等を適宜選択すればよく、一般的には、前記透明基板の形状としては、板状が好ましい。前記透明基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。前記透明基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、有機電界発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明が好ましい。
【0128】
前記透明基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)樹脂等の有機材料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0129】
前記透明基板としてガラスを用いる場合には、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカ等のバリアコートを施したもの(例えば、バリアフィルム基板)を使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0130】
前記熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
これらの中でも、透明なガラス、石英、サファイア、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン等の透明な合成樹脂が特に好ましい。
【0131】
前記透明基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ガラスを用いる場合には、0.2mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましい。
【0132】
<有機電界発光層>
前記有機電界発光層は、少なくとも発光層を有し、透明電極、必要に応じて正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層などを有してもよく、またこれらの各層はそれぞれ他の機能を備えたものであってもよい。各層の形成にはそれぞれ種々の材料を用いることができる。
【0133】
−発光層−
前記発光層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、電界印加時に陽極又は正孔注入層、正孔輸送層から正孔を注入することができると共に、陰極又は電子注入層、電子輸送層から電子を注入することができる機能や、注入された電荷を移動させる機能、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層を形成することができるものなどを用いることができる。
【0134】
前記発光層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体;ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記発光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
前記発光層の形成方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば抵抗加熱蒸着、電子ビーム、スパッタリング、分子積層法、コーティング法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)、LB法などの方法が挙げられる。これらの中でも、抵抗加熱蒸着、コーティング法が特に好ましい。
【0135】
−透明電極−
前記透明電極の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば錫ドープ酸化インジウム(ITO)(屈折率(n)=2.0)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、ZnO(屈折率(n)=1.95)、SnO
2(屈折率(n)=2.0)、In
2O
3(屈折率(n)=1.9〜2.0)、TiO
2(屈折率(n)=1.90)などが挙げられる。これらの中でも、ITO、IZOが特に好ましい。
前記透明電極の屈折率は、1.65〜2.2が好ましい。
前記透明電極の平均厚みは、20nm〜200nmが好ましく、40nm〜100nmがより好ましい。
【0136】
−正孔注入層、正孔輸送層−
前記正孔注入層、又は正孔輸送層の材料としては、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記正孔注入層、又は正孔輸送層の材料としては、例えばカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0137】
前記正孔注入層、又は正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記正孔注入層、又は正孔輸送層の形成方法としては、例えば真空蒸着法、LB法、前記正孔注入輸送剤を溶媒に溶解又は分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)が用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解乃至分散することができる。
前記樹脂成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリブチルメタクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)樹脂、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記正孔注入層、又は正孔輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
【0138】
−電子注入層、電子輸送層−
前記電子注入層、又は電子輸送層の材料としては、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記電子注入層、又は電子輸送層の材料としては、例えばトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0139】
前記電子注入層、又は電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記電子注入層、又は電子輸送層の形成方法としては、例えば真空蒸着法やLB法、前記電子注入輸送剤を溶媒に溶解乃至分散させてコーティングする方法(スピンコート法、キャスト法、ディップコート法など)などが用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解乃至分散することができ、前記樹脂成分としては、例えば、正孔注入輸送層の場合に例示したものが適用できる。
前記電子注入層、又は電子輸送層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
【0140】
−その他の部材−
前記その他の部材としては、バリア層、保護層、封止層、TFT基板などが挙げられる。
前記バリア層としては、大気中の酸素、水分、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等の透過を防ぐという機能を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記バリア層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、SiN、SiON、などが挙げられる。
前記バリア層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜1,000nmが好ましく、7nm〜750nmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
前記バリア層の厚みが、5nm未満であると、大気中の酸素及び水分の透過を防ぐバリア機能が不充分となることがあり、1,000nmを超えると、光線透過率が低下し透明性を損なうことがある。
また、前記バリア層の光学的性質のうち、光線透過率は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。
前記バリア層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CVD法などが挙げられる。
【0141】
本発明の有機電界発光装置は、フルカラーで表示し得る装置として構成されてもよい。
本発明の有機電界発光装置をフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する層構造を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の層構造による白色発光をカラーフィルタを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の層構造による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。
【0142】
また、前記方法により得られる異なる発光色の層構造を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色の平面型光源を得ることができる。例えば、青色及び黄色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、青色、緑色、赤色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、等である。
【0143】
ここで、
図9は、本発明の有機電界発光装置20の一例を示す概略図である。
この
図9の有機電界発光装置20は、透明電極5の光出射面上に、透明基板4と、プリズム層兼微粒子層9を有している。
一方、透明電極3上に、有機電界発光層2と、反射電極11とを有しており、これらが封止缶12で封止されたものである。
【0144】
また、
図10は、本発明の有機電界発光装置30の他の一例を示す概略図である。
この
図10の有機電界発光装置30は、透明電極5の光出射面上に、透明基板4と、微粒子層3と、プリズム層8とを有している。
一方、透明電極3上に、有機電界発光層2と、反射電極11とを有しており、これらが封止缶12で封止されたものである。
【0145】
本発明の有機電界発光装置は、例えば、各種照明、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができる。
【実施例】
【0146】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0147】
(実施例1)
下記モデルを用い、市販の光線追跡ソフト(ZEMAX Development Corporationの製品ZEMAX−EE)で、以下のようにして、シミュレーションを行った。
【0148】
<シミュレーションモデル1>
図3Aは、基本の有機電界発光装置の構成であり、光取出し効率の増加倍数を計算する場合の標準モデルである。
空気/透明基板4(BK7、オハラ社製、屈折率n=1.5、減衰係数k=0、厚みd=1mm)/有機電界発光層2(屈折率n=1.8、減衰係数k=0、厚み2μm、有効発光領域5mm四角)/複合反射層6(反射電極Al、反射率0.86×0.9=0.77とした、厚み100nm)
この
図3Aのシミュレーションモデル1の光取出し効率は約30%であった。
【0149】
<シミュレーションモデル2>
図3Bは、光取出し手段として微粒子層を有する有機電界発光装置のシミュレーションモデルである。
空気/微粒子層3(ポリマー:屈折率nb=1.8、減衰係数k=0、微粒子の平均粒径φ6μm、微粒子層の厚みL、体積充填率η)/透明基板4(屈折率ns、減衰係数k=0、厚み1mm)/有機電界発光層2(屈折率n=1.8、減衰係数k=0、厚み2μm、有効発光領域5mm四角)/複合反射層6(反射電極Ag、0.97×0.9=0.87とした、厚み100nm)
微粒子としてはポリスチレン球(屈折率n=1.59、減衰係数k=0)を用いた。微粒子層のポリマーとしてはウレタン(屈折率n=1.5)に高屈折率ナノ粒子(TiO
2、屈折率n=2.6、平均粒径100nm以下)を適切に分散させたものを用いた。
微粒子層の厚みL、微粒子の体積充填率ηについて検討した結果、微粒子層の厚みLが30μm、微粒子の体積充填率ηが50%の時、光取出し効率が最大となり、
図3Aのシミュレーションモデル1に対する光取出し効率の増加倍数は約2.05であった。
【0150】
<シミュレーションモデル3>
図3Cは、光取出し手段としてプリズム層を有する有機電界発光装置のシミュレーションモデルである。
空気/プリズム層8(充填物はポリマー:屈折率nb=1.8、減衰係数k=0、底辺は2mm四角、頂角90度)/透明基板4(屈折率ns、減衰係数k=0、厚み1mm)/有機電界発光層2(屈折率n=1.8、減衰係数k=0、厚み2μm、有効発光領域5mm四角)/複合反射層6(反射電極Ag、0.97×0.9=0.87とした、厚み100nm)
図3Cにおける
図3Aのシミュレーションモデル1に対する光取出し効率の最大増加倍数は2.03であった。
【0151】
<シミュレーションモデル4>
図3Dは、光取出し手段としてプリズム層兼微粒子層を有する有機電界発光装置のシミュレーションモデルである。
空気/プリズム層兼微粒子層9(底辺は2mm四角、頂角90度、充填物は微粒子を含有するポリマー:屈折率nb=1.8、減衰係数k=0、微粒子の平均粒径φ=6μm又は10μm、体積充填率η)/透明基板4(屈折率ns=1.8、減衰係数k=0、厚み1mm)/有機電界発光層2(屈折率n=1.8、減衰係数k=0、厚み2μm、有効発光領域5mm四角)/複合反射層6(反射電極Ag、0.97×0.9=0.87とした、厚み100nm)
微粒子としてはポリスチレン球(屈折率n=1.59、減衰係数k=0)を用いた。微粒子層のポリマーとしてはウレタン(屈折率n=1.5)に高屈折率ナノ粒子(TiO
2、屈折率n=2.6、平均粒径100nm以下)を適切に分散させたものを用いた。
【0152】
<シミュレーション結果>
図4及び
図5に、微粒子の体積充填率と光取出し効率の最大増加倍数との関係を示す。
図4及び
図5の結果から、シミュレーションモデル4(
図3D;プリズム層兼微粒子層)は、シミュレーションモデル2(
図3B;微粒子層)及びシミュレーションモデル3(
図3C;プリズム層)に比べて光取出し効率が増大することが分かった。
また、
図4及び
図5の結果から、微粒子の平均粒径φは0.5μm〜10μm、微粒子の体積充填率ηは0.1%〜50%が好ましい。また、微粒子の平均粒径φが0.5μm〜7μmでは、微粒子の体積充填率ηは0.1%〜10%が更に好ましい。
この範囲では、微粒子の体積充填率ηが10%以内、或いは、より低い微粒子の体積充填率で、最適な配光変換部材が形成できる。微粒子の体積充填率が高くなると、微粒子が凝集しやすくなり、設計通りの配光変換部材が得られないことが分かった。
以上の結果から、配光変換部材と光取出し部材が一体化した時の最適な条件としては、微粒子の平均粒径φが1μm、微粒子の体積充填率ηが0.5%、プリズム高さDが0.1mm、プリズム幅Wが0.2mmであることが分かった。
【0153】
(実施例2)
下記モデルを用い、市販の光線追跡ソフト(ZEMAX Development Corporationの製品ZEMAX−EE)で、以下のようにして、シミュレーションを行った。
【0154】
<シミュレーションモデル5>
図3Eは、光取出し手段としてプリズム層と微粒子層を有する有機電界発光装置のシミュレーションモデルである。
空気/プリズム層8(充填物はポリマー:屈折率nb=1.8、減衰係数k=0、底辺は2mm四角、頂角90度)/微粒子層3(ポリマー:屈折率nb=1.8、減衰係数k=0、微粒子の平均粒径φ6μm、微粒子層の厚みL、体積充填率η)/透明基板4(屈折率ns、減衰係数k=0、厚み1mm)/有機電界発光層2(屈折率n=1.8、減衰係数k=0、厚み2μm、有効発光領域5mm四角)/複合反射層6(反射電極Ag、0.97×0.9=0.87とした、厚み100nm)
微粒子としてはポリスチレン球(屈折率n=1.59、減衰係数k=0)を用いた。微粒子層のポリマーとしてはウレタン(屈折率n=1.5)に高屈折率ナノ粒子(TiO
2、屈折率n=2.6、平均粒径100nm以下)を適切に分散させたものを用いた。
【0155】
<シミュレーション結果>
図6〜
図8の結果から、微粒子の平均粒径φが0.5μm〜10μm、微粒子の体積充填率ηが10%〜50%、微粒子層の厚みLが1μm〜50μmが好ましく、微粒子の平均粒径φが0.5μm〜5μm、微粒子の体積充填率ηが10%〜50%、微粒子層の厚みLが1μm〜30μmがより好ましい。この範囲内において、低い微粒子の体積充填率、薄い微粒子層の厚みの最適な配光変換部材が構成でき、低い微粒子の体積充填率、薄い微粒子層の厚みでは、微粒子の凝集が少なく、コストも低いことが分かった。
以上の結果から、配光変換部材と光取出し部材が別々の層である時の最適な条件としては、微粒子の平均粒径φが1μm、微粒子の体積充填率が10%、微粒子層の厚みLが15μm、プリズム高さDが0.1mm、プリズム幅Wが0.2mmであることが分かった。
【0156】
(実施例3)
−有機電界発光装置の作製−
以下のようにして、
図9に示す実施例3の有機電界発光装置を作製した。
まず、ガラス基板(コーニング社製、Eagle XG、屈折率1.51)を洗浄容器に入れ、中性洗剤中で超音波洗浄した後、純水中で超音波洗浄し、120℃で120分間加熱乾燥を行った。
次に、ガラス基板上に、スパッタ法によりITO(Indium Tin Oxide)を厚みが100nmとなるように成膜した。
次に、ITO上に、下記構造式で表される4,4’,4”−トリス(N,N−(2−ナフチル)−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)に、下記構造式で表されるF4−TCNQを0.3質量%ドープした正孔注入層を厚みが150nmになるように共蒸着した。
【化1】
【化2】
【0157】
次に、前記正孔注入層上に、正孔輸送層としてα−NPD(Bis[N−(1−naphthyl)−N−phenyl]benzidine)を厚みが7nmとなるように真空蒸着法にて形成した。
次に、前記正孔輸送層上に、下記構造式で表される有機材料Aを真空蒸着して、厚み3nmの第2の正孔輸送層を形成した。
【化3】
【0158】
次に、第2の正孔輸送層上に、ホスト材料として下記構造式で表される有機材料Bと、該有機材料Bに対して40質量%の燐光発光材料である下記構造式で表される発光材料Aをドープした発光層を30nmの厚みに真空蒸着した。
【化4】
【化5】
【0159】
次に、白色発光層上に電子輸送層として下記構造式で表されるBAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium(III))を厚みが39nmとなるように真空蒸着した。
【化6】
【0160】
次に、電子輸送層上に、下記構造式で表されるBCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)を電子注入層として、厚みが1nmとなるように蒸着した。
【化7】
次に、電子注入層上にバッファ層としてLiFを厚みが1nmとなるように蒸着し、該バッファ層上にアルミニウムを電極層として厚みが100nmとなるように蒸着し、積層体を作製した。
作製した積層体を、真空から窒素雰囲気下の部屋に移し、封止缶にて封止した。なお、封止缶の内側には予め吸湿材を貼っておいた。
【0161】
次に、ガラス基板の発光層等を有さない側の面に、以下のようにして、プリズム層兼微粒子層を形成した。以上により、
図9に示す実施例3の有機電界発光装置を作製した。
<プリズム層兼微粒子層の形成>
プリズムアレイはインプリント法で作製した。まず、UVインプリント樹脂(東洋合成社製、PAC−02)中に、超微粒子としてTiO
2超微粒子(石原産業社製、TTO−51(A)、平均粒径15nm)と、ポリスチレン散乱粒子(JSR社製、STADEX SC−200−S、平均粒径2μm)を分散させてインプリント材料とし、表面に離型剤(ダイキン工業社製、Optool−DSX)を付与したシリカモールドで、UVインプリントを行った。以上により、プリズム層兼微粒子層を作製した。
プリズム高さDは0.05mm、プリズム幅Wは0.1mmであった。なお、シリカモールド表面にはプリズム高さD、プリズム幅Wに対応した凹凸が形成されている。
【0162】
(実施例4)
−有機電界発光装置の作製−
実施例3において、ガラス基板の発光層等を有さない側の面に、以下のようにして、微粒子層と、プリズム層を形成した以外は、実施例3と同様にして、
図10に示す実施例4の有機電界発光装置を作製した。
<微粒子層の形成>
UVインプリント樹脂(東洋合成社製、PAC−02)中に、超微粒子としてTiO
2超微粒子(石原産業社製、TTO−51(A)、平均粒径15nm)と、ポリスチレン散乱粒子(JSR社製、STADEX SC−200−S、平均粒径2μm)を分散させて、ガラス基板上にスリットコートを行った。以上により、厚み15μmの微粒子層を形成した。
【0163】
<プリズム層の形成>
プリズムアレイはインプリント法で作製した。UVインプリント樹脂(東洋合成社製、PAC−02)中に、超微粒子としてTiO
2超微粒子(石原産業社製、TTO−51(A)、平均粒径15nm)を分散させてインプリント材料とし、表面に離型剤(ダイキン工業社製、Optool−DSX)で付与したシリカモールドでUVインプリントを行った。以上により、プリズム層を作製した。
プリズム高さDは0.05mm、プリズム幅Wは0.1mmであった。なお、シリカモールド表面にはプリズム高さD、プリズム幅Wに対応した凹凸が形成されている。