(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に沿って具体的に説明する。本発明の実施形態では、傾斜磁場発生コイルを部分的に窪ませることにより、磁場発生効率を低下させることなく、RFコイルと傾斜磁場コイルを合計した厚さを薄くする。すなわち、磁場発生効率を低下させることなく、RFコイルを傾斜磁場コイル側によせて配置することが可能になり、カバーから磁石までの距離を従来よりも短縮するものである。
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の実施形態のMRI装置は、
図1に示したように、静磁場発生用磁石4と、傾斜磁場発生系21と、被検体7を搭載して撮像空間に配置する寝台31と、被検体7に高周波磁場を印加するための送信系3と、被検体
7が発生するNMR信号を受信する受信系5と、シーケンサ2と、信号処理系6と、中央処理装置(CPU)1とを有している。
【0017】
静磁場発生用磁石4は、撮像空間に、被検体7の体軸方向または体軸と直交する方向の均一な静磁場を発生する。例えば、永久磁石方式、常電導方式および超電導方式のうちのいずれかの磁場発生装置を用いることができる。送信系3は、高周波発振器8と、変調器9と、高周波増幅器10と、高周波(RF)コイル11とを含み、シーケンサ2が変調器9を制御することにより、所定の高周波磁場を被検体7に照射する。
【0018】
傾斜磁場発生系21は、X、Y、Zの3方向に傾斜磁場Gx、Gy、Gzをそれぞれ発生する傾斜磁場コイル13およびそれらを駆動する傾斜磁場電源12を含み、シーケンサ2による所定のパルスシーケンス制御に応じた所定の方向の傾斜磁場を発生する。傾斜磁場Gx、Gy、Gzは、被検体
7に対するスライス面を決定し、またNMR信号に位置情報を付与するために、シーケンサ2の制御により所定の強度およびタイミングで印加される。位置情報を付与する傾斜磁場のうち、位相エンコード用傾斜磁場は、通常は磁場強度を変えながら所定の周期でパルス状に繰り返し印加される。
【0019】
受信系5は、受信コイル14と増幅器15と直交位相検波器16とA/D変換器17とを含み、受信コイル14が受信したNMR信号を増幅後検出し、CPU1に受け渡す。信号処理系6は、CPU1とディスプレイ18と記録装置19と入力部20とを含む、CPU1は、内蔵する画像再構成プログラムを実行することにより、受信系5から受け取ったNMR信号に基づき、画像再構成を行う。再構成した画像は、ディスプレイ18に表示される。また、必要に応じて、記録装置19に格納する。入力部20は、画像再構成の条件等の設定をユーザから受け付ける。
【0020】
シーケンサ2は、CPU1から受け渡されるパルスシーケンス情報に従って、送信系3、傾斜磁場発生系21、および、受信系5を制御し、所定のパルスシーケンスを実行させることにより、スピンエコー法、グラジエントエコー法等の種々撮像方法を実現する。パルスシーケンス情報は、高周波パルス及び傾斜磁場パルスの磁場強度、磁場パルス照射及びNMR信号検出のタイミング、繰返し時間などの情報であり、入力部20を介してユーザが設定した条件または予め定められた条件が用いられる。いずれの撮像方法の場合もRFコイル11及び傾斜磁場コイル13は、シーケンサ2からの制御信号により所定の繰返し時間で、高速でパルス状に繰返し駆動される。
【0021】
以下、磁石4、傾斜磁場コイル13およびRFコイル11の構造について、
図2を用いて具体的に説明する。
【0022】
静磁場発生用磁石4は、円筒形状であり、その軸方向は被検体7の体軸方向と一致するように配置されている。よって、磁石4は、被検体7の体軸方向の静磁場を発生する。
【0023】
傾斜磁場コイル13は、
図2に示すように、メインコイル52、シールドコイル51を備えたアクティブシールド型傾斜磁場コイル(ASGC)である。シールドコイル51は、メインコイル52と静磁場発生用磁石4との間に配置されている。
【0024】
メインコイル52およびシールドコイル51は、
図2には示していないが、それぞれ3つのコイルを積層配置した構成である。メインコイル52は、XYZ方向の傾斜磁場をそれぞれ発生するX方向メインコイル、Y方向メインコイル、Z方向メインコイルを積層配置した構成である。3つのメインコイルの積層順は、例えば、撮像空間54側から順にX方向メインコイル、Y方向メインコイル、Z方向メインコイルの順にすることができる。シールドコイル51は、X方向、Y方向およびZ方向メインコイルの静磁場発生用磁石4側への漏洩磁場と逆向きの磁場をそれぞれ発生するX方向、Y方向およびZ方向シールドコイルを積層した構成である。これにより、シールドコイル51は、静磁場発生用磁石4への漏洩磁場を打ち消し、静磁場発生用磁石4の容器に漏洩磁場に起因する渦電流が発生するのを抑制する。X方向、Y方向およびZ方向シールドコイルの積層順は、例えば、撮像空間54側からZ方向シールドコイル、X方向シールドコイル、Y方向シールドコイルの順にすることができる。
【0025】
X方向、Y方向、Z方向シールドコイルは、いずれも円筒形状であり、これらを積層したシールドコイル51の全体形状は、円筒形状である。一方、X方向、Y方向およびZ方向メインコイルを積層したメインコイル52の外形は、
図2に示したように、撮像空間54の中央部(Z=0)における半径(内径)r1が、メインコイル52の両端部(Z=L1、Z=-L1)の半径(内径)r2よりも大きくなる(r2<r1)ように構成された筒型である。
【0026】
つまり、傾斜磁場発生コイルであるメインコイル52は、撮像空間54の中心点を通過する水平軸(Z軸)に対する垂直方向に撮像空間54と対向する中央部52-2と、この中央部から延びる側方部52-1とを備え、中央部52-2と水平軸との垂直方向距離r1は、側方部52-1と水平軸との垂直方向距離より大であり、中央部52-2から側方部52-1の端部に向かうにつれて減少し、端部でr2となっている。
【0027】
Z=0とZ=L1との間、ならびに、Z=0とZ=-L1との間の半径は、メインコイル52の両端部(Z=L1、-L1)に近づくにつれて小さくなっている。よって、メインコイル52は、2つの部分円錐(円錐の側面の一部)を、Z=0において接続した形状となっており、撮像空間54側から見ると、中央部(Z=0)において窪んだ形状となっている。X方向、Y方向およびZ方向メインコイルは、それぞれが
図2に示した中央部が窪んだ同形状に構成されており、これらを積層することにより、メインコイル52の全体形状を
図2の形状にしている。
【0028】
なお、
図2に示した例においては、中央部52-2は2つの平面が交差する形状(断面では2つの直線が交差する形状)としたが、この中央部52-2は、なだらかに変化する形状、例えば曲面状としてもよい。
【0029】
図3にメインコイル52のX方向メインコイルおよびシールドコイル51のX方向シールドコイルの切り欠き斜視図を示す。
【0030】
図3のコイルは、所定の筒型の導体(例えば2〜4mm厚さ)に所望の流線に沿った絶縁溝32、33を切ることにより、メインコイル(X方向)52およびシールドコイル(X方向)を形成したものである。絶縁溝32、33は、ウォータージェット加工や機械加工等により形成することができ、板状導体を筒型にする前または筒型にした後に形成することができる。
【0031】
図3にはX方向メインコイルおよびX方向シールドコイルのみ示したが、YおよびZ方向メインコイル、ならびに、YおよびZ方向シールドコイルについても絶縁溝の流線形状が異なるのみで、外形は同様である。すなわち、X方向メインコイルおよびX方向シールドコイルについてZ軸を軸として90°回転させた形状の絶縁溝を導体に形成することにより、Y方向メインコイルおよびY方向シールドコイルを得ることができる。また、Z軸を中心とする同心円状の絶縁溝を導体に形成することによりZ方向メインコイルおよびZ方向シールドコイルを形成することができる。
【0032】
RFシールド53は、メインコイル52と同様の形状であって、メインコイル52のすぐ内側に配置されている。RFシールド53の材質は、銅やステンレス等の非磁性金属であり、薄い箔や細線を編んだメッシュにより形成されている。RFシールド53は、傾斜磁場コイル13から放出される傾斜磁場電源のノイズを抑制し、また、傾斜磁場コイル13とRFコイル11との電磁結合を遮蔽して誘導損失を減らすことによりRFコイル11のQを高くする作用をする。
【0033】
RFシールド53の内側には、半径r3の円筒形状のRFコイル11が配置されている。RFコイル11の端部は、Z=L2、-L2(ただし、L2<L1)に位置している。RFコイル11は、線材を所望のパターンに巻いた構成のものや、筒状の導体板に絶縁溝を切った構成のもの等を用いることができる。
【0034】
図2ででは図示していないが、さらに、RFコイル11から磁石4までを樹脂製のカバーで覆うことにより、患者の入る空間であるボアが構成されている。
【0035】
このように、本発明の実施形態では、撮像中央部(Z=0)の位置に対応する部分で撮像空間54側からみるとメインコイル52が中央で窪んでいる。このため、メインコイル52が窪んでいない場合よりも大きな径のRFコイル11を配置することが可能になり、ボア径を大きくすることができる。なお、RFコイル11の半径r3は、メインコイル52の端部の半径r2より大きくても良いし、小さくても良い。
【0036】
メインコイル52とシールドコイル51との間の空間は、撮像空間54に傾斜磁場の磁束を発生させるためにも、静磁場発生用磁石4への漏洩磁束を低減するためにも、多くの磁束を流す必要がある。そのため、この空間を狭くするとメインコイル52傾斜磁場の発生効率が悪くなる。すなわち、メインコイル52とシールドコイル51の間の空間を狭くして、同じ電流で同じ傾斜磁場を発生させようとしたならば、コイルの巻き数を増加させる必要があり、巻き数の2乗でインダクタンスが増大する。
【0037】
しかしながら、本発明の実施形態では、シールドコイル51に対してメインコイル52を傾斜させているため、中央部(Z=0)においてはメインコイル52とシールドコイル51が接近するが、端部(Z=L1、-L1)に近い部分では、逆にメインコイル52とシールドコイル51の間隔が広がるため、全体として見ると傾斜磁場の発生効率は低下せず、コイル巻き数を増加させる必要がなく、インダクタンスも増大しない。よって、本発明の実施形態では、傾斜磁場コイル13のインダクタンスを増加させることなく、大きな径のRFコイル11を配置することが可能になる。
【0038】
また、RFコイル11とRFシールド53との間には、ある程度以上の空間を確保する必要がある。その理由は、RFコイル11とRFシールド53とを接近させると、高周波渦電流が増えるために高周波磁場の発生効率が悪くなり、同じRF磁場を照射するためにより強力な高周波増幅器10が必要となるためである。また、RFコイル11近傍での磁場分布が急激に変化することになり、撮影領域におけるRFパワーの不均一性が大きくなるという問題も生じる。
【0039】
しかしながら、本発明の実施形態では、RFシールド53がメインコイル52と同形状に傾斜しているため、RFコイル11の両端部(Z=L2、Z=-L2)においてRFシールド53をメインコイル52に接近させても、Z=0においては、両端部より間隔が開く。よって、全体としては、RFコイル11の高周波磁場の発生効率は低下しないため、RFコイル11の両端部(Z=L2、Z=-L2)においてはRFシールド53をメインコイル52に接近させることができ、大きな半径のRFコイル11を配置することが可能になる。
【0040】
例えば、メインコイル52の中心軸方向長さの半分(L1)=500mm、中央部おける内径(r1)=400mm、両端部における内径(r2)=350mmとし、メインコイル52にRFシールド53を密着させ、中心軸方向長さの半分(L2)=250mm、内径(r3)=350mmのRFコイル11の両端部をRFシールド53からおよそ25mm離して配置することが可能になる。
【0041】
本発明の実施形態の構造により、同じ磁場発生効率およびインダクタンスの条件であれば、RFコイル11から磁石4までの厚さを20mm程度低減することが可能になる。すなわち、円筒型のメインコイルを用いた場合よりも、RFコイル11の内径r3を20mm程度大きくし、メインコイル52の内径r2はr3よりも小さくならない範囲に設定しても、ほぼ同等の磁場発生効率およびインダクタンス性能が得られることを意味する。また、RFコイル11から磁石4までの厚さを同じにした場合には、インダクタンスを2割程度低減することができる。
【0042】
このように、本発明の実施形態では、メインコイル52をZ=0で径が最大値をとり端部に向かうにつれて傾斜した形状にすることにより、傾斜磁場コイル13およびRFコイル11の磁場発生効率をいずれも低下させることなく、RFコイル11の径を大きくすることができる。
【0043】
また、本発明の実施形態のメインコイル52は、内側から見るとZ=0で窪んだ形状であるが、中心から端部に向かって傾斜する直線をZ軸を軸に360度回転した軌跡で描かれる部分円錐を2つ合わせた形状であるため、一つのコイル(例えばX方向メインコイル)は、片側の部分円錐毎に1枚の展開図から製造可能であり、容易に製造することができる。なお、部分円錐を周方向に2つに分割することにより、さらに容易に製造でき、ここでは分割して製造する方法について以下説明する。
【0044】
この部分円錐を構成する為の導体板の一部形状を
図4に示す。例えば、L1=500mm、r1=400mm、r2=350mmとすると、幾何計算からθ=18°、曲率半径Lo=4000mm、長い弧が((2πr1)/2)、短い弧が((2πr2)/2)の扇型となる。この導体板を部分円錐の形状に曲げるとメインコイル52の周方向の2分の1が形成される。絶縁溝33は、導体板の状態で形成することも可能であるし、部分円錐の形状に曲げてから形成することも可能である。全部で4ピースのメインコイル52の部品を形成した後、これらを接続して、X方向メインコイルを製造する。同様に、Y方向およびZ方向メインコイルの部品を形成し、3つのコイルを積層するように組み立てていく。
【0045】
このとき、本発明の実施形態では、それぞれの導体板(部分円錐の周方向の2分の1)ごとに閉じた(独立した)コイルを構成するように絶縁溝33を形成する。よって、同様に構成したもう片側の部分円錐の端部と接続する際に、接合部を電気的に接続する必要はなく、それぞれの部分円錐のコイルの端部にリード線等を接続してそれを直列に接続するのみでよい。なお、片側の部分円錐を一つの導体板で形成する場合も、それぞれの導体板ごとに閉じたコイルを構成するように絶縁溝を形成する。
【0046】
メインコイル52を組み立てたならば、シールドコイル51と位置合わせをしながら組み合わせ、樹脂モールド等で固化させて傾斜磁場コイルとする。部分円錐の形状のRFシールド53は、製作時にメインコイル52の内側に積層して積み上げても良いし、傾斜磁場コイルを製作した後に、内側に貼付けても良い。
【0047】
RFシールド53とRFコイル11の間は、RFコイル11にとって誘導性の物質が埋まっていなければ、空間として空いていても良いし、樹脂等でモールドしても構わない。
【0048】
また、RFコイル11の径r3は、メインコイル52の狭い部分の径r2より大きくても小さくても良いが、r3がr2より大きい場合には、傾斜磁場コイル13を組み立てるときに予めRFコイル11を配置するか、もしくは、RFコイル11を分割できる構造とし、傾斜磁場コイル13を組み立てた後に、分割した状態でメインコイル52の内側に挿入してから組み立てることができる。
【0049】
上述のように、本発明の第1の実施形態では、部分円錐を2つ組み合わせることにより、傾斜面により構成された構造でありながら、メインコイル52の中央部を窪ませた構造である。このため、上述したように、メインコイル52を構成する2つの部分円錐ごと、または、それを構成する部品ごとに独立したコイルを成すように絶縁溝33を形成することができる。
【0050】
比較例として、
図13のように、段差を設けてメインコイル352を窪ませた場合について説明する。段差を設けたメインコイル352は、段差部分で多数の導体を接続する必要が生じ、製造上の間題から容易には製作できない。
【0051】
具体的には、
図13のような段差を有するメインコイル352は、切り欠き斜視図を
図14に示すように、絶縁溝333を段差部分で連続させて設ける必要がある。このため、製造時には、
図15に示したように、部分A、B、Cの3つの板状部材に分割して、それぞれに絶縁溝333を設ける必要がある。その後、部分A、Cを円筒状に曲げた後、部分Bと接続して
図14の形状にする手順になる。部分Aと部分Bと部分Cとを接続する際、
図15中の○と△の部分を電気的に接続することにより
図14のコイルが得られる。通常のコイルパターンでは、
図14の傾斜磁場コイル213を作る場合、接続すべき点(○と△の部分)は数百にも及ぶ。このため、これらを接続しながら傾斜磁場コイル213を製造することは容易ではない。
【0052】
この比較例と対比すると、本発明の実施形態のメインコイル52は、比較例と同様に中央部を窪ませた構造でありながら、容易に製造することができるというメリットがある。
【0053】
なお、本発明の実施形態では、RFコイル11を円筒形状にした場合を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、他の形状にすることも可能である。
【0054】
なお、第1の実施形態においては、照射用のRFコイル11と受信コイル14とが別々の場合について説明したが、本発明の実施形態のRFコイル11に受信コイル14を兼用させることも可能である。
【0055】
また、第1の実施形態においては、導体板に絶縁溝を形成することにより、メインコイルおよびシールドコイルを構成する各方向のコイルを製造する構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、外形が上記形状であれば、銅の線材や、板、パイプを巻き廻すことによりメインコイルおよびシールドコイルを形成することも可能である。
【0056】
上述した傾斜磁場発生コイル52は、磁気共鳴イメージング装置に組み込まれた状態で説明したが、傾斜磁場発生コイル52単体としても、磁気共鳴イメージング装置の部品として、成立できる。
【0057】
本発明による傾斜磁場発生コイルは、中央空間領域を形成する中央部と、この中央部から延び、側方空間領域(上記中央空間領域の両側に位置する空間領域)を形成する側方部とを備え、中央空間領域の中心を通過する中心軸(
図2の例ではZ軸)に対して直交する方向の中央空間領域の寸法(r1)は、中心軸(Z軸)に対して直交する方向の側方空間領域の寸法(r2)より大であり、中央部の中心から側方部の外側端部に向かうにつれて連続的に減少する。
【0058】
(第2の実施の形態)
図5〜
図8を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、メインコイル52の中央部52-2(Z=0)を窪ませ、中央部52-2の半径r2が端部の半径r1よりも大きいという点では第1の実施形態と同じであるが、
図5のように、メインコイル52が半径r1の円筒部材52-1(側方部)と半径r2の円筒部材52-2(中央部)とに分割されている点が第1の実施形態と異なっている。よって、メインコイル52の半径は、中心部Z=0から端部Z=L1に近づくにつれて、段階的(階段状)に小さくなっている。
【0059】
つまり、撮像空間に傾斜磁場を発生するメインコイル52と、メインコイル52から撮像空間の反対側への漏洩磁場を打ち消す磁場を発生するシールドコイル51とを備えて成る傾斜磁場コイルにおいて、メインコイル52は、中央部52-2と、中央部52-2の端部側にこの中央部52-2と分離して配置された側方部52-1とを備え、中央部52-2の端部の少なくとも一部と、側方部52-1の中央部52-2側の端部の少なくとも一部とは重なり合い、メインコイル52と撮像空間の中心点を通過する水平軸との鉛直方向距離は、中央部52-2から側方部52-1に階段状に滅少する。
【0060】
RFシールド53は、
図5のようにメインコイル52の中央部52-2の凹部の内壁に沿うように配置する。
図5では示していないが、RFコイル11は、メインコイル52の窪んだ部分(中央部52-2の部分)に配置する。他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0061】
メインコイル52の構造を具体的に説明する。
図5のように、メインコイル52の中央部52-2の端部はZ=-L5、L5に位置している。その両外側にそれぞれ側方部52-1が配置されている。Zが正の側に配置されている側方部52-1の端部はZ=L6とZ=L1に位置している。Zが負の側に配置されている側方部52-1の端部は、その対称な位置にある。このとき、|L5|>|L6|となるように設定され、中央部52-2は、両側の側方部52-1とL6〜L5(-L6〜-L5)の間で重なり合っている。つまり、中央部の端部と側方部の中央部側の端部とは、垂直方向に一部分重なり合っている。
【0062】
2つの側方部52-1および1つの中央部52-2は、
図6および
図7に示したように、それぞれ独立した(閉じた)コイルを形成するように絶縁溝33が形成されている。よって、側方部52-1および中央部52-2のコイルの端部にリード線等を接続し、それを直列に接続するのみでよい。
【0063】
側方部52-1および中央部52-2は、
図7のような形状の導体板を湾曲させて製造することができる(ただし、
図7では、導体板の一部分のみを示している)。
【0064】
図5のような構成のメインコイル52に流れる電流と磁束について
図8Bを用いて説明する。なお、
図8Aは、比較例として中央を窪ませていない形状のメインコイル215の断面を表しており、X印は、紙面の手前から奥へ、黒丸印は紙面の奥から手前にコイル電流が流れていることを示している。本実施形態の
図5のメインコイル52は、側方部52-1および中央部52-2に分割されているため、電流を流すと、
図8Bのようになり、分割されたZ=L5、L6付近の分割された部分近傍で電流が増えるが、中央部52-2の紙面の手前から奥へ流れる電流が形成する磁束と、側方部52-1の紙面の奥から手前に流れる電流が形成する磁束が相殺するので、
図8Aのメインコイル215に近い磁場分布を得ることができる。ただし、
図8Bからわかるように、本実施形態の構成の場合は、Z=L5、L6付近の電流密度が、分割しないメインコイル215より増加するので、Z=L5〜L6付近の側方部52-1、中央部52-2の間に水冷等の冷却管55を配置し、電流による発熱を冷却することが望ましい。
【0065】
この実施例の場含、L5-L6の付近において、側方部52-1、中央部52-2の双方の電流密度が増す。電流密度の増大に対しては冷却能力の向上が必要であるが、併せて単位断面積当たりの電磁力が増大するのでより強固な導体固定構造も必要である。ただし、一般的に使用可能な範囲のエポキシ接着剤を使用する限りは極端な接着力向上は期待できないので、接着力の面から電流密度の上限は定められる。こうして定めた電流密度の上限を満たすように、L5-L6の幅を設定するのが良い。
【0066】
例えば、100A/mmを電流密度の上限とし、500A/ターン、10ターンとすると、L5-L6の幅は少なくとも50mm+絶縁溝幅だけの幅が必要となる。
【0067】
また、L5-L6付近に流れる電流は、元の電流パターンの何処で分断するかによって電流総量が変わる。つまり、分断線をまたぐ電流については、側方部52-1、中央部52-2のL5、L6付近の電流とする必要がある。よって、
図14における渦巻きの中心付近で分断しようとした場合は、多くの電流をL5、L6付近に流す必要があり、逆に中心から離れた場所で分断しようとすれば、それぞれの領域で閉じている電流は分断によっても変わらないので、L5-L6付近の電流はあまり増加しない。
【0068】
側方部52-1、中央部52-2との半径の差、すなわち、r1とr2の差は、そこへRFコイルとRFシールドを配置することを考えると、30mm程度あることが望ましい。しかし、この間隔が広いと、
図8BにおけるL5付近の電流とL6付近の電流が完全にキャンセルしない。この影響を低減する為には、r1とr2を小さくするか、L5、L6付近の電流を少なくする必要がある。
【0069】
また、
図5の構成において、
図8Cに示すように、中央部52-2が、側方部52-1を覆う延長部を有し、|L5|>|L1|に設定することにより、円筒部材(中央部)52-2の端部(Z=L5、-L5)が、円筒部材(側方部)52-1の外側端部(Z=|L1|)よりもさらに外側に位置するように構成することもできる。これにより、半径r2の円筒部材中央部52-2が、半径r1の側方部52-1の外側全体を覆う構成となる。
【0070】
このような構成のメインコイル52に流れる電流と磁束について
図8Cを用いて説明する。
図8Cの場合には、
図8Bとは異なり、側方部52-1と中央部52-2とで近接して逆向きに流れる電流が生じない。よって、電流密度は減り、発熱が減少するというメリットがある。
【0071】
第2の実施形態では、メインコイル52を複数の部材52-1、52-2に分割することにより中央部を窪ませた構成である。よって、第1の実施形態と同様に、磁場発生効率を低下させることなく、RFコイル11を傾斜磁場コイル側によせて配置することが可能になり、RFコイル11から磁石4までの距離を従来よりも短縮することができる。
【0072】
また、第2の実施形態では、メインコイル52を複数の円筒に分割したことにより、第1の実施形態では必要とされる部分円錐を形成するためのテーパー形状の曲げを行う必要がないという利点がある。その一方で、
図8Bの様に電流密度が増大する場合もあり得るため、この付近での冷却能力を増大させる必要がある。例えば、
図5に示すようにメインコイル52-1、52-2の間に冷却水を流す冷却管55を重点的に配置し近傍を冷却する、つまり、重なり合う中央部52-2の端部と側方部52-1の中央部52-2側の端部との間に、傾斜磁場発生部であるメインコイル52を冷却する冷却管(冷却手段)55を配置する。もしくは、Z方向傾斜磁場コイルの線材として中に水を通すことのできるホローコンダクターで構成し、冷却管55の代わりに配置することで冷却を行うことができる。
【0073】
上記の実施例では、メインコイルを3つ、すなわち、1つの中央部と2つの側方部に分割する例を説明した。さらに、公知の技術を組み合わせて分割数を増やすと別の効果を生じさせる。参考として、
特許文献2を引用する。
【0074】
上記公報によれば、傾斜磁場コイル端部からの漏洩磁場を低減する為に、メインコイル、シールドコイルの間に第3のコイルを設置する効果が開示してある。アクティブシールド型の傾斜磁場コイルでは、距離の2乗に反比例する磁束密度がシールドしたい面で互いに打ち消されるように、メインコイルとシールドコイルの電流密度が決定される。しかし、実際には傾斜磁場コイルの電流は単位素線毎に離散化するので、傾斜磁場コイルの端部において消しきれない漏洩磁場が生じる。特に本実施例では、中央部におけるメインコイルとシールドコイルの間隔を狭くする一方で、側方部でのメインコイルとシールドコイルの間隔は大きくなっているので、その影響は端部の漏洩磁場に大きく反映される。
【0075】
上記公報記載の技術では、垂直型MRI装置用の円盤型傾斜磁場コイルを対象としているが、本実施例のような円筒型の傾斜磁場コイルであっても同様な考えは成り立つ。上記公報記載の技術を本実施例に適用する場合、メインコイル52は、側方部52-1の中央部52-2と反対側の端部側に、上述した水平軸との鉛直方向距離が側方部52-1より小さいコイル部をさらに有する。例えば、メインコイル側方部52-1よりもさらにZ方向端部側に2つの分割されたコイルを配置し、メインコイル52を合計5つに分割する。最端部のコイルは数ターンであり、コイル全体のインダクタンスを増加させてしまうデメリットを小さくすることが出来る。
【0076】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施形態として、磁石4、傾斜磁場コイル13およびRFコイル11を撮像空間54を挟んでそれぞれ一対配置する垂直(または水平)磁場方式のMRI装置について
図9を用いて説明する。なお、
図9において、第1の実施形態の
図2の構成の部材と同じ作用をする部材には、同じ符号を付している。
【0077】
本発明の第3の実施形態では、
図9に示すように、磁石4、シールドコイル51、RFコイル11は、それぞれ一対の円板形状である。また、一対のメインコイル52は、撮像空間を間にして互いに対向し、それぞれ円錐面(円錐の側面)形状である。よつて、一対のメインコイル52の互いの間隔は、撮像空間の中央部52-2(Z=0)において最も広く、メインコイル52の側方部52-1の端部(Z=L1、-L1)に近づくにつれて連続的に狭くなっている。RFシールド53は、メインコイル52と同形状であり、メインコイル52のすぐ内側に配置されている。メインコイル52およびシールドコイル51がそれぞれ、各方向の3つのコイルの積層構造である点については第1の実施形態と同じである。
【0078】
このような構成であるため、一対のメインコイル52は傾斜して中央部が窪んでおり、第1の実施形態と同様に、磁場発生効率を低下させることなく、RFコイル11を傾斜磁場コイル13側によせて配置することが可能になり、RFコイル11から磁石4までの距離を従来よりも短縮することができる。
【0079】
図9のようなメインコイル52は、
図10に示したような扇形の導体板を曲げて製作することができる(ただし、
図10は、扇形の導体板の一部のみを示している)。各部の寸法関係は次のようになる。
【0080】
r4
2=L1
2+dZ
2
θ=360・L1/r4
ただし、dZは、メインコイル52の窪み量であり、θは扇形の中心角である。そして、L1=400mm、dZ=50mmの場合、扇形の中心角θは89.3°程度になる。
【0081】
なお、メインコイル52およびRFシールド53は、円錐の頂点において曲げ半径が無限小になってしまうので、これを回避するために、頂点部分には穴100を設けた構成にすることができる。他の構成については、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0082】
(第4の実施の形態)
上述した第3の実施の形態では、垂直(または水平)磁場方式のMRI装置のメインコイル52を円錐面形状にした場合について説明したが、本発明の第4の実施形態では、メインコイル52を第2の実施形態のように複数の部材に分割する。具体的には、
図11に示したように、メインコイル52を半径L5の円板状部材52-3と、内径L6、外径L1のリング状部材52-4に分割する。ただし、第2の実施形態と同様に|L5|>|L6|に設定し、円板状部材52-3とリング状部材52-4は一部重なっている。重なる部分には、第2の実施形態のように冷却管を配置することができる。
【0083】
また、
図12に示したように、円板状部材52-3に設けられた絶縁溝33により円板状部材52-3が形成するコイルと、リング状部材52-4に設けられた絶縁溝33により部材52-4が形成するコイルとは相互に独立している。
【0084】
また、|L5|>|L1|に設定し、円板状部材52-3がリング状部材52-4の外側全体を覆うように構成することも可能である。
【0085】
第4の実施形態のメインコイル52は、第3の実施形態のメインコイル52のように曲げる必要がないので比較的容易に製造することが可能である。また、第3の実施形態と同様に、磁場発生効率を低下させることなく、RFコイル11を傾斜磁場コイル側によせて配置することが可能になり、RFコイル11から磁石4までの距離を従来よりも短縮することができる。
【0086】
以上では、X又はY傾斜磁場コイルについて説明してきたが、傾斜磁場コイルを構成するもう一つのチャンネル、つまり、Z傾斜磁場コイルにおいても、本発明を実施可能である。以下、
図16、
図17を参照してZ傾斜磁場コイルについて説明する。
図16はZ傾斜磁場コイルの概略構成説明図、
図17はZ傾斜磁場コイルの概略断面斜視図である。
【0087】
図16、
図17において、Z傾斜磁場コイルを構成するメインコイル、シールドコイルは、X、Y傾斜磁場コイルと異なり、指紋状のパターンではなく、同心円状の導体から構成される。一般的には、矩形断面を有する銅条、銅のワイヤを用いたり、冷却水を流して傾斜磁場コイルを冷却する手段も兼ねた穴あき導体を巻いてコイルを構成する。
【0088】
X、Y傾斜磁場コイルと比べると、Z傾斜磁場コイルは、磁場発生効率が高いため、Z傾斜磁場コイルのメインコイル57とシールドコイル58との間隔は、相対的に狭くとも成立し、多くの場合は、X、Yのメインコイル52、シールドコイル51の内側に配置される。図示はしていないが、導体の位置を決める治具若しくはスペーサを用いて規定の位置に導体を配置する。
【0089】
なお、上述したZ傾斜磁場コイルは、円筒状であっても、円錐状であっても、大きな変更を施すことなく実施可能である。
【0090】
(第5の実施形態)
上述した例は、傾斜磁場コイルを中央部から端部方向に向かって直線的に傾斜する又は階段状に構成する例であるが、本発明の第5の実施形態は、傾斜磁場コイルを曲線的に傾斜させる例である。
【0091】
傾斜磁場コイル導体については、曲げることは可能であっても、伸び縮みしない非伸縮性の薄板を使用することが前提となっている。しかし、今日製造されている工作機械を用いれば、傾斜磁場コイルを構成する数mmの導体を伸縮させて曲面を形成するように加工することは困難ではない。
【0092】
このため、数mmの導体を伸縮させて曲面を形成し、
図18、
図19に示すような曲面状の傾斜磁場コイルを構成する。
図18、
図19において、直線状のシールドコイル60と直線状のRFコイル11との間に、曲面状のメインコイル59とRFシールド61が構成される。曲面状のメインコイル59は、中央部から端部に向かって、シールドコイル60からの距離が次第に大となっている。
【0093】
傾斜磁場コイルのメインコイルを上述した形状にすることにより、RFシールド61とRFコイル11との間隔若しくはメインコイル59とシールドコイル60との間隔について、上述した第1〜第4の実施形態に比較して自由度が増し、双方の効率を劣化させない適正な値とすることができる。