特許第5670757号(P5670757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5670757
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20150129BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20150129BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20150129BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20150129BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20150129BHJP
   H01M 10/04 20060101ALN20150129BHJP
【FI】
   H01M10/058
   H01M10/052
   H01M4/13
   H01M2/02 A
   H01M2/16 P
   !H01M10/04 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-69(P2011-69)
(22)【出願日】2011年1月4日
(65)【公開番号】特開2012-142206(P2012-142206A)
(43)【公開日】2012年7月26日
【審査請求日】2013年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩史
【審査官】 塩▲崎▼ 義晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−040875(JP,A)
【文献】 特開2006−234423(JP,A)
【文献】 特開2009−110937(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/121787(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/00− 2/08
2/14− 2/34
4/00− 4/84
10/00− 10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、セパレータを含む電極体と、電解質と、を外装体内に備えたリチウムイオン二次電池であって、
外装体はX線を透過する材料で構成され、
電極体のX線を透過する部材上に、識別表示を備え、
識別表示は少なくともX線吸収性のフィラーと、バインダとで構成されるリチウムイオン二次電池。
【請求項2】
正極、負極、セパレータを含む電極体と、電極体の上部及び/または下部に設置される絶縁体と、電解質と、を外装体内に備えたリチウムイオン二次電池であって、
外装体はX線を透過する材料で構成され、
絶縁体は樹脂製であって、
電極体のX線を透過する部材上又は絶縁体に、識別表示を備え、
識別表示は少なくともX線吸収性のフィラーと、バインダとで構成されるリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
電極体は少なくとも、金属箔の片面または両面に正極合剤層を備えた正極と、金属箔の片面または両面に負極合剤層を備えた負極と、セパレータと、を備える請求項1または2記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
フィラーが、周期律表の第3周期から第6周期までの金属化合物から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれかのリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記バインダが光硬化型樹脂である請求項1〜4のいずれかのリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
識別表示はアルミニウムまたはアルミニウムを主体とした合金で形成された部材上に設けられ、
フィラーに含まれる周期律表の第3周期から第6周期までの金属化合物から選ばれる少なくとも1種の金属化合物は、MgO、Al、CaO、TiO、BaTiO、ZrO、BaSO、CaSO、MgCO、BaCO、AlOOH、およびNiOOHから選ばれる少なくとも一つの金属化合物である請求項4または5に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊で電池の製造ラインなどの識別が可能なリチウムイオン二次電池に関し、簡易な方法で識別表示を付与させることが可能な電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池などの電気化学素子は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの携帯機器の電源として広く用いられている。例えば、リチウム二次電池では、携帯機器の高性能化に伴って高容量化が更に進む傾向にあり、安全性や、品質の管理による信頼性の確保が重要となっている。
【0003】
電池の安全性を確保するために、正極、負極の活物質材料や、電解液、セパレータなどの各構成部材について工夫がされている。一方、品質の管理については、万が一の生産工程上の諸問題が生じた場合に、いずれの生産ライン(生産設備など)で不具合が生じたかを追跡することが、原因究明を確実に行うために重要な手段となっている。
【0004】
生産ラインなどの追跡は、トレーサビリティー・コードと言われる識別番号や、簡易的に判別する記号や図形などの識別表示を付与することで可能となる。これら識別番号や識別表示から、生産設備、生産ライン、生産日などの履歴を追跡することができる。電池の場合については、例えば、電極タブや金属箔に番号や記号を、レーザーや打孔などにより表示する手法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−040875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の電池においては、レーザーや打孔により識別表示をしているために、電池を解体して直接目視をしなければ表示番号や記号を判別することが困難である。そのため、非破壊でもトレーサビリティーを確認できる電池や、その目的を達成するための手法が要望されている。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、非破壊でトレーサビリティーを確認できる電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成し得える本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極、セパレータを含む電極体と、電解質と、を外装体内に備えたリチウムイオン二次電池であって、外装体はX線を透過する材料で構成され、電極体のX線を透過する部材上に、識別表示を備え、識別表示は少なくともX線吸収性のフィラーと、バインダとで構成される。
【0009】
更に、電極体の上部および/または下部に絶縁体が設置されている二次電池であって、絶縁体が識別表示を備える場合も、目的を達成し得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非破壊でトレーサビリティーを確認できる電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一例の正極を表す概略図である。
図2図1の正極と負極とを組み合わせた概略図である。
図3】本発明の一例の電池の概略的な構成を示す分解斜視図である。
図4】本発明の一例である実施例3を示す斜視図である。
図5】本発明の一例である実施例4を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のリチウムイオン二次電池は、電極体或いは電池内の樹脂製絶縁体などX線を透過する部材上に識別表示を設ける。例えば電極体に識別表示を設ける場合は正極合剤層が塗布されていない正極の金属(例えばアルミニウム)箔が露出した部分に設けることができる。
前記識別表示は、少なくともX線吸収性のフィラーと、バインダを含有した識別表示用インキを用い、番号、記号などを電極体或いは樹脂製絶縁体上に印刷することで形成される。
【0013】
リチウムイオン二次電池は、正極と負極とを、セパレータを介して積層した積層型の電極体や、更にこれを渦巻状に巻回した巻回型の電極体を作製し、このような電極体と、電解質(例えば非水電解液)とを、外装体内に封入して構成される。そして、場合によっては電極体の上部および/または下部に樹脂製の絶縁体を備えることもある。本発明でいう「電極体」とは、電池内の正極・負極・セパレータを含んだ一体型の部材を差し、正極は金属箔の片面または両面に正極合剤層を備え、負極は金属箔の片面または両面に負極合剤層を備え、正極・負極にはそれぞれ正極集電タブと負極集電タブを備える。例えば巻回型の電極体の場合は、正極・負極・セパレータを巻回後、巻戻りを防ぐ巻止めテープや、電極体の、外装缶の内底に対面する部分に貼る缶底テープ等を含んでいても良い。
【0014】
こういった電池の形態としては、筒形(円筒形や角筒形)の外装缶を使用した筒形電池や、扁平形(平面視で円形や角形の扁平形)の外装缶を使用した扁平形電池、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装フィルムとしたソフトパッケージ電池などがあげられる。これら外装缶や外装フィルムといった外装体には、特に軽量で安価であるなどの理由から、モバイル機器向けの電池には、アルミニウム製を用いる場合が多い。
【0015】
前記リチウムイオン二次電池を、分解・解体することなく、非破壊で電池内部を観察する手法としてX線CTによる方法が広く用いられる。そこで、X線吸収性のフィラーと、バインダを加えて識別表示用インキを作製し、この識別表示用インキを用いて、X線を透過する部材、例えば正極の合剤層のない金属箔(例えばアルミニウム)露出部に、識別表示を印刷すれば、X線を吸収する識別表示を読み取ることができるので、X線を用いた非破壊検査で電池の生産履歴を追跡することが可能となる。
【0016】
この時、外装体はX線を透過する材料で構成されていることが前提である。X線を透過する外装缶の材料としては、具体的にはアルミニウム、アルミニウムを主体とした合金(アルミニウムを85重量%以上含む)等が挙げられる。X線を透過する外装フィルムとしては、具体的にはアルミニウム蒸着膜と熱融着性樹脂層とを積層した構成のもの等が挙げられる。
【0017】
外装体はX線を透過する材料で構成され、外装体内のX線を透過する部材上に、識別表示を印刷し、識別表示はX線吸収性のフィラーと、バインダとで構成されていると、例えばX線CT装置やX線透過観察装置でモノクロ写真を撮影した時に、X線吸収性のフィラーで印刷された部分はX線を吸収するので白色、X線を透過する部材はそれよりも色が濃いため、モノクロ写真のコントラストにより非破壊でも識別表示を確認することができる。この時X線を吸収する(または透過する)度合いがモノクロ写真のコントラストの差として反映されるので、識別表示のX線吸収性のフィラーと、識別表示を印刷する対象となるX線を透過する部材とで、X線の吸収度合いの差が大きければ大きいほど、識別表示を読み取りやすく、好ましい。
【0018】
識別表示は番号や図形や二次元バーコードといった、他のデータベースに照らし合わせることで意味をなす表示であってもよいし、それ自体が意味なす文字列であっても良い。識別表示が示すものとしては、例えば製造日、製造ライン、加工機番号、製造者などが挙げられる。
【0019】
識別表示が加工についての情報を示す場合、識別表示を印刷する直前または直後に行う加工についての情報を示していると、加工する時と識別表示を印刷する時との間隔が短いため、実際の加工情報と異なることなく識別表示が印刷されるので製造履歴の追跡性が高まり、より好ましい。
【0020】
例えば、リチウムイオン二次電池の製造工程で、正極と負極とセパレータを巻回する加工機(巻回機)で巻回を行った直後に、加工機の番号(識別表示)を電極体に印刷する。すると、実際に使用した加工機の番号を間違うことなく、二次電池の一部に印刷することが出来る。
【0021】
X線吸収性のフィラーは、X線を吸収する性質を持ち、また電解質に対して化学的に安定であれば制限はなく、具体的には周期律表の第3周期から第6周期までの金属の酸化物、硫酸化物、炭酸化物、水酸化酸化物、水酸化物等があげられる。これらは、フィラーの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもかまわない。
【0022】
前記フィラーの平均粒径は、例えば、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、好ましくは15μm以下、より好ましくは5μm以下である。なお、本明細書でいうフィラーの平均粒子径は、例えば、レーザー散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA−920」)を用い、フィラーを溶解しない媒体に、これら微粒子を分散させて測定した平均粒子径D50%である。
【0023】
識別表示用インキに含有されるバインダとしては、印刷対象物に結着して脱落しないものであり、さらに後述する電解液と副反応をほとんどおこさないものであれば特に制限はなく、例えば後述する正極や負極の合剤層を形成するための有機バインダが好適に用いられる。しかし、前記有機バインダは水や有機溶剤などの媒体に分散させるか、または溶解して用いることが多いので、媒体を乾燥除去する工程が必要であり、除去するための時間も必要である。そこで、光硬化型樹脂や熱硬化型の樹脂をバインダとすれば、比較的短時間で樹脂が硬化するので印面が乱れることが少なくなり、望ましい。特に光硬化型樹脂は、簡易な工程で硬化が可能であり特に望ましい。
【0024】
光硬化型樹脂としては、ポリオールアクリレート、エポキシアクリレートなどのオリゴマー、メタクリル酸−2−ヒドロキシルエチルなどの単官能モノマー、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートなどの二官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレートなどの三官能モノマーがあげられ、これらを複数種混合して用いても良い。さらに、必要に応じて、2−ヒドロキシ−2メチルプロピオフェノンや、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどの光重合開始剤を加えることもできる。さらに、光重合促進剤や安定剤も適量加えても良い。
【0025】
前記識別表示用インキを構成する際の、X線吸収性フィラーの含有割合であるが、識別表示が目視で判別できる程度のX線吸収度を確保するために、識別表示用インキ中、30体積%以上であることが好ましく、50体積%以上がより好ましい。金属箔等、印刷対象物への結着性を確保するために、前記バインダの含有割合は、識別表示用インキ中、3体積%以上であることが好ましく、5体積%以上がより好ましく、15体積%以下であることが好ましい。
【0026】
前記識別表示用インキの製造方法は、通常の液状インキやペースト状インキなどの製造方法が好適に採用される。例えばバインダとしてバインダ樹脂を水、有機溶剤などに分散した分散体を用いる場合、ボールミルやサンドミルなどで予備分散をしたのち、タンクミキサー、ディゾルバーなどで本分散して作製する方法があげられる。また、光硬化型樹脂をバインダとして用いる場合、ニーダー、ロールミルなどで練肉した後、プラネタリーミキサーで混練して作製する方法があげられる。
【0027】
以上の通り作製した識別表示用インキを、外装体内の電極体のX線を透過する部材上や樹脂製の絶縁体に所定の番号などによるトレーサビリティー・コード、あるいは記号、文字列などを印刷して、識別表示を付与させる。印刷方法は特に制限はないが、例えば識別表示用インキが液状インキである場合、インクジェット方式などが簡易に、かつ迅速に印刷できるので望ましい。また、識別表示用インキがペースト状である場合、特にバインダとして光硬化型樹脂を用いた場合は、スタンプ等で印字し、特定波長の光を照射して硬化させる方法が、簡易であり、かつ迅速に印刷できるので望ましい。
【0028】
識別表示は、X線を透過する部材上であればリチウムイオン二次電池内のさまざまな箇所に1か所または複数個所に印刷することが出来る。例えば前述したが、電極体に印刷する一例として、正極の集電体にアルミニウム箔を用い、正極合剤が塗布されていない正極集電体(アルミニウム箔)が露出した部分に印刷することが出来る。他にも、正極タブ上や、電極体の外表面のセパレータ上に印刷することや、電極体の巻止めテープや缶底側のテープにも印刷することが可能である。電極体以外にも、電極体の上部及び/又は下部に設置された樹脂製の絶縁体に印刷することも可能である。
【0029】
識別表示を印刷する対象となる部材は、X線吸収性のフィラーに対して、X線の吸収度合いの違う材料で形成されていると好ましく、例えば、樹脂、X線透過性の金属等が挙げられる。金属の場合、アルミニウム、アルミニウムを主体とした合金(アルミニウムを85重量%以上含む)等が好ましい。
【0030】
識別表示を印刷する部材がアルミニウム又はアルミニウムを主体とした合金の場合、フィラーに含まれる周期律表の第3周期から第6周期までの金属化合物から選ばれる少なくとも一つの金属化合物の真密度、識別表示が設けられる部材の真密度に対する比が、1.1以上3.5以下であると好ましい。真密度の比がこの範囲内の場合、識別表示のX線吸収性のフィラーと、識別表示を印刷する対象となるX線を透過する部材とで、X線の吸収度合いの差が大きくなり、識別表示を読み取りやすくなる。
【0031】
識別表示を印刷するアルミニウム又はアルミニウムを主体とした合金の真密度は、2.7〜3.1g/cmが好ましく、フィラーに含まれる周期律表の第3周期から第6周期までの金属化合物から選ばれる少なくとも一つの金属化合物の真密度は3.0〜10.9g/cmが好ましい。各々がこの範囲であると、真密度の比を所定の範囲に設定しやすく、X線CT装置やX線透過観察装置でモノクロ写真を撮影した時にコントラストの差がはっきりして識別表示を目視で認識しやすくなる。
【0032】
フィラーに含まれる周期律表の第3周期から第6周期までの金属化合物から金属化合物は、真密度の観点から、MgO(真密度:3.65g/cm)、Al(真密度:3.9g/cm)、CaO(真密度:3.35g/cm)、TiO(真密度:3.9〜4.27g/cm)、BaTiO(真密度:6.02g/cm)、ZrO(真密度:5.8g/cm)などの酸化物;BaSO(真密度:4.5g/cm)、CaSO(真密度:2.96g/cm)などの硫酸化物;MgCO(真密度:3.03g/cm)、BaCO(真密度:4.43g/cm)などの炭酸化物;AlOOH(真密度:3.0g/cm)、NiOOH(3.8〜4.7g/cm)などの水酸化酸化物が挙げられる。
【0033】
フィラーに、周期律表の第3周期から第6周期までの金属化合物から選ばれる2つ以上の金属化合物を含む場合は、少なくとも一つの金属化合物の真密度の比と、識別表示が設けられるの部材の真密度の比が1.1以上3.5以下であると好ましい。
【0034】
真密度は、液相置換法(ピクノメーター法)で測定した値、具体的には、例えばセイシン企業社製「MAT−7000」を使用し、置換媒体にエタノールを用いて測定温度25±5℃で測定した値、または定容積膨張法で測定した値、具体的には、例えば島津−マイクロメリティック社製の乾式自動密度計「アキュピック1330−01」を用い、置換ガスにHeを使用し、測定温度を25℃とし、サンプル仕込み容積を見かけで10cm3として測定した値である。
【0035】
樹脂製の絶縁体の具体例であるが、前記樹脂製の絶縁体が電極体の上部に設置される場合は、図3にあるような、負極タブが正極缶4と接触、短絡するのを防止する絶縁体2があげられる。また、特開2004−31263号の図1に記載されているように、絶縁体が電極体の下部に設置される場合は、外装缶4の内底と電極体との間に設置され、落下時の衝撃吸収や外装缶と電極との短絡を防止する。絶縁体は上部のみ、或いは下部のみ、或いは上部および下部の両方に設置しても良い。
【0036】
万が一の生産工程上や使用時のトラブルで、作製した電池が異常加熱する場合もある。このように電池が高温にさらされた場合は、前記樹脂製の絶縁体や電極体に貼りつけるテープが溶融あるいは著しく変形してしまうと、印刷した識別表示を読み取ることが困難にある。そこで、識別表示を印刷する対象となる部材が樹脂製の場合は、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上でも溶融あるいは著しい変形をしない、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなど、耐熱性の高い樹脂で構成することが望ましい。(ただし、セパレータ以外。)
【0037】
正極としては、従来から知られているリチウム二次電池に用いられている正極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する正極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、Li1+xMO(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど。なお、元素MはLi以外の他の金属元素で10原子%まで置換されていてもよい。)で表される層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMnやその元素の一部を他元素で置換したスピネル構造のリチウムマンガン酸化物、LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化合物などを用いることが可能である。前記層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、LiCoOやLiNi1−xCox−yAl(0.1≦x≦0.3、0.01≦y≦0.2)などのほか、少なくともCo、NiおよびMnを含む酸化物(LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiMn5/12Ni5/12Co1/6、LiNi3/5Mn1/5Co1/5など)などを例示することができる。特に、Niを40%以上含む活物質の場合には、電池が高容量となるので好ましく、また、O(酸素原子)はフッ素、イオウ原子で1原子%まで置換されていてもよい。
【0038】
前記正極には、導電性を付与する等の目的で導電助剤を併用しても良い。導電助剤は、電池内で化学的に安定なものであればよく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などのグラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(商品名)、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;アルミニウム粉などの金属粉末;フッ化炭素;酸化亜鉛;チタン酸カリウムなどからなる導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料;などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、導電性の高い黒鉛と、吸液性に優れたカーボンブラックが好ましい。また、導電助剤の形態としては、一次粒子に限定されず、二次凝集体や、チェーンストラクチャーなど、集合形態のものも用いることができる。このような集合体の方が、取り扱いが容易であり、正極の生産性が良好となる。
【0039】
さらに正極には、前記活物資や、導電助剤同士の結着性や、後述する集電体との結着性を確保するために、バインダを加えてもよい。使用するバインダは、電池内で化学的に安定なものであれば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、または、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体およびそれら共重合体のNaイオン架橋体などが挙げられ、これらを1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、電池内での安定性や電池の特性などを考慮すると、PVDF、PTFE、PHFPが好ましく、また、これらを併用したり、これらのモノマーにより形成される共重合体を用いたりしてもよい。
【0040】
正極は常法に従い、前記正極活物質と、導電助剤と、バインダとを混合し、この混合物を集電体片面または両面に塗布して作製することができる。ここで、前記正極混合物の組成としては、正極活物質の量を80〜99質量%とし、導電助剤を0.5〜10質量%とし、バインダを0.5〜10質量%とすることが好ましい。また、集電体との塗布性や生産性をあげるために、前記正極混合物には、必要に応じて水やN−メチルピロリドン(NMP)といった有機溶剤などの媒体を前記混合物に加えて、スラリー状として集電体に塗布してもよい。
【0041】
前記正極集電体の材質は、電池内において化学的に安定な電子伝導体であれば特に限定されない。例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、アルミニウム、アルミニウム合金またはステンレス鋼の表面に炭素層またはチタン層を形成した複合材などを用いることができる。これらの中でも、アルミニウムまたはアルミニウム合金が特に好ましい。これらは、軽量で電子伝導性が高いからである。正極の集電体には、例えば、前記材質からなるフォイル、フィルム、シート、ネット、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体などが使用される。また、集電体の表面に、表面処理を施して凹凸を付けることもできる。集電体の厚みは特に限定されないが、通常1〜500μmである。
【0042】
正極集電体表面に正極混合物を塗布する際の塗工方法としては、例えば、ドクターブレードを用いた基材引き上げ方式;ダイコータ、コンマコータ、ナイフコータなどを用いたコータ方式;スクリーン印刷、凸版印刷などの印刷方式:などを採用することができ、塗布後、常法に従って乾燥を行い、媒体を除去して正極合剤層を形成する。
ここで、正極に識別表示を設ける場合、正極集電体の一部に正極合剤層を形成せずに集電体の露出部を残し、その露出部の一部に、前記識別表示用インキを用いて識別表示を印刷することが出来る。さらに、露出部には、アルミニウム製の金属タブを溶接してリード部を設けることができる。
【0043】
負極には、従来から知られているリチウム二次電池に用いられている負極、すなわち、Li(リチウム)イオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する負極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si、Sn、Ge、Bi、Sb、Inなどの元素およびその合金、リチウム含有窒化物、または酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどの結着剤などを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極合剤層)に仕上げたものや、前記の各種合金やリチウム金属の箔を単独で用いたり、前記合金やリチウム金属の層を集電体に形成したものなどの負極剤層を有するものが用いられる。
【0044】
負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、また、下限は5μmであることが望ましい。
負極側のリード部は、通常、負極作製時に、集電体の一部に負極合剤層を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、リード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体に銅製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
【0045】
セパレータは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエステルなどのポリエステル;などで構成された多孔質膜であることが好ましい。なお、セパレータは、100〜140℃において、その孔が閉塞する性質(すなわちシャットダウン機能)を有していることが好ましい。そのため、セパレータは、融点、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が、100〜140℃の熱可塑性樹脂を成分とするものがより好ましく、ポリエチレンを主成分とする単層の多孔質膜であるか、ポリエチレンとポリプロピレンとを2〜5層積層した積層多孔質膜などの多孔質膜を構成要素とする積層多孔質膜であることが好ましい。ポリエチレンとポリプロピレンなどのポリエチレンより融点の高い樹脂を混合または積層して用いる場合には、多孔質膜を構成する樹脂としてポリエチレンが30質量%以上であることが望ましく、50質量%以上であることがより望ましい。
【0046】
このような樹脂多孔質膜としては、例えば、従来から知られているリチウムイオン二次電池などで使用されている前記例示の熱可塑性樹脂で構成された多孔質膜、すなわち、溶剤抽出法、乾式または湿式延伸法などにより作製されたイオン透過性の多孔質膜を用いることができる。
【0047】
セパレータの平均孔径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上であって、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。
また、セパレータの特性としては、JIS P 8117に準拠した方法で行われ、0.879g/mmの圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値が、10〜500secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、他方、小さすぎると、セパレータの強度が小さくなることがある。更に、セパレータの強度としては、直径1mmのニードルを用いた突き刺し強度で50g以上であることが望ましい。かかる突き刺し強度が小さすぎると、リチウムのデンドライト結晶が発生した場合に、セパレータの突き破れによる短絡が発生する場合がある。
【0048】
非水電解液には、電解質塩を有機溶媒に溶解させた溶液を使用することができる。溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、燐酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトンなどの非プロトン性有機溶媒が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、これらの2種以上を併用してもよい。また、アミンイミド系有機溶媒や、含イオウまたは含フッ素系有機溶媒なども用いることができる。これらの中でも、ECとMECとDECとの混合溶媒が好ましく、この場合、混合溶媒の全容量に対して、DECを15容量%以上80容量%以下の量で含むことがより好ましい。このような混合溶媒であれば、電池の低温特性や充放電サイクル特性を高く維持しつつ、高電圧充電時における溶媒の安定性を高めることができるからである。
【0049】
非水電解液に係る電解質塩としては、リチウムの過塩素酸塩、有機ホウ素リチウム塩、トリフロロメタンスルホン酸塩などの含フッ素化合物の塩、またはイミド塩などが好適に用いられる。このような電解質塩の具体例としては、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO〔ここで、Rfはフルオロアルキル基を表す。〕などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、これらの2種以上を併用してもよい。これらの中でも、LiPFやLiBFなどが、充放電特性が良好なことからより好ましい。これらの含フッ素有機リチウム塩はアニオン性が大きく、かつイオン分離しやすいので前記溶媒に溶解しやすいからである。溶媒中における電解質塩の濃度は特に限定されないが、通常0.5〜1.7mol/Lである。
【0050】
また、前記の非水電解液に安全性や充放電サイクル性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を適宜加えることもできる。なお、電池を構成する正極に係る正極活物質(リチウム含有複合酸化物)がMnを含んでいる場合には、硫黄元素を含む添加剤を非水電解液に加えておくことが特に好ましく、これにより、正極活物質の表面活性を安定にすることができる。
【0051】
本発明のリチウムイオン二次電池は、携帯電話、ノート型パソコンなどのポータブル電子機器などの各種電子機器の電源用途を始めとして、例えば安全性が重視される電動工具、自動車、自転車、電力貯蔵用などの用途にも適用することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0053】
実施例1
<識別表示用インキの作製>
X線吸収性のフィラーである平均粒子径D50%が0.3μmであるTiO:42質量部、バインダである重合性オリゴマーのエポキシアクリレート:27質量部、重合性モノマーであるトリメチロールプロパントリアクリレート:27質量部、光重合開始剤である2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン:4質量部を、ロールミルで予備分散し、さらに3本ロールで本練してペースト状の識別表示用インキを作製した。フィラーに使用したTiOの真密度を後述する方法で測定すると、真密度は4.2g/cmであった。
【0054】
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO:70質量部およびLiNi0.8Co0.2:15質量部、導電助剤であるアセチレンブラック:10質量部、並びにバインダであるPVDF:5質量部を、NMPを溶剤として均一になるように混合して、正極合剤含有ペーストを調製した。
【0055】
前記正極合剤含有ペーストを、集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に、間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って、全厚が150μmになるように正極合剤層の厚みを調整し、幅43mmになるように切断して、正極(図1)を作製した。図1の(a)は正極外面を示し、(b)は正極内面を示す。図1に示すように、正極10は両面に対して正極合剤層11と合剤層を塗布していないアルミニウム箔の露出部12を設け、更にこの正極のアルミニウム箔の露出部12に、図1に示す配置でアルミニウム製の正極タブ13を溶接してリード部を形成した。
【0056】
なお、集電体の真密度を、後述する方法で測定すると、真密度は2.7g/cm3であった。また、識別表示用インキのフィラーに使用したTiO2の真密度の、正極のアルミニウム集電体の真密度に対する比は、1.6であった。
【0057】
<負極の作製>
平均粒子径D50%が16μm、d002が0.3360nmである黒鉛:98質量部、粘度が1500〜5000mPa・sの範囲に調整された1質量%の濃度のカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液:1.0質量部、およびスチレンブタジエンゴム(SBR):1.0質量部を、比伝導度が2.0×105/cm以上のイオン交換水を溶剤として混合して、水系の負極合剤含有ペーストを調製した。
【0058】
前記の負極合剤含有ペーストを、銅箔からなる厚さ10μmの集電体の両面に間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って全厚が142μmになるように負極合剤層の厚みを調整して負極を得た。また、前記負極を幅45mmになるように切断し、更に銅箔の露出部にニッケル製のタブを溶接してリード部を形成した。
【0059】
<識別表示の印刷>
前述の通り作製した識別表示用インキを平版に盛り、ゴム版から転写ロールにインキを転写させ、さらに転写ロールを、前記の通り作製した正極アルミニウム箔の露出部(正極タブ溶接面側)に押し付け、図1に示す配置で識別表示「●●●■■」を印刷した。印刷後、UVランプを3秒間照射して重合硬化させて、識別表示を得た。
【0060】
<電池の組み立て>
前記のようにして得た正極10と負極20と、電池用PE製微多孔質セパレータ30(厚み12μm、空孔率40%、平均孔径0.02μm)とを介在させつつ重ね(図2)、最内周側を巻回機の巻回軸に固定し、渦巻状に巻回して巻回型の電極体1を作製した。図2の正極10の最外周側に描かれている図形は、先述した識別表示の裏面側に当たる部分であることを示している。その後、図3のように得られた巻回型の電極体1を押しつぶして扁平状にし、厚み6mm、高さ50mm、幅34mmでのアルミニウム製外装缶4に入れ、その上に樹脂製の絶縁体2(上部絶縁体)を設置し、蓋5を外装缶4に溶接した。蓋5に設けた注入孔51から電解液(エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比で1:2に混合した溶媒にLiPFを濃度1.2mol/lで溶解させ、更にビニレンカーボネートを3質量%添加したもの)を注入した後に封止を行って、リチウムイオン二次電池を作製した。
【0061】
実施例2
X線吸収性のフィラーである平均粒子径D50%が0.3μmであるBaSO:42質量部、バインダである重合性オリゴマーのエポキシアクリレート:27質量部、重合性モノマーであるトリメチロールプロパントリアクリレート:27質量部、光重合開始剤である2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン:4質量部を、ロールミルで予備分散し、さらに3本ロールで本練してペースト状の識別表示用インキを作製した。フィラーに使用したBaSOの真密度を後述する方法で測定すると、真密度は4.5g/cmであった。
【0062】
以上、作製した識別表示用インキを使用した以外は、すべて実施例1と同様にして正極の露出部に識別表示を設け、リチウムイオン二次電池を作製した。識別表示用インキのフィラーに使用したBaSO4の真密度の、正極のアルミニウム集電体の真密度に対する比は、1.7であった。
【0063】
実施例3
幅40mm、厚さ0.03mmのポリプロピレン製テープ(片面に粘着層を設けたもの)に、実施例1で作製したものと同様の識別表示用インキを用いて、実施例1と同様にして識別表示の印刷をした。印刷は粘着層の存在しない反対面に施した。前記テープを、識別表示印刷を施した箇所を含めて長さ35mmに切断した。
【0064】
次に正極アルミニウム箔露出部に、識別表示を印刷していないこと以外はすべて実施例1と同様にして巻回型の電極体1を作製した。図4に示すように、電極体1の最外周部に存在するセパレータの最外周側巻き終わり部16に、長さ35mmに切断した識別表示「●●●■■」を含むテープ17を貼付した。以下、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
【0065】
実施例4
図5のように、正極アルミニウム箔露出部に識別表示を印刷しないで、あらかじめ識別表示「●●●■■」を印刷した上部絶縁体を使用したこと以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池を作成した。
【0066】
<真密度の測定>
真密度は島津−マイクロメリティック社製の乾式自動密度計「アキュピック1330−01」を用い、置換ガスにHeを使用し、測定温度を25℃とし、サンプル仕込み容積を見かけで10cmとして測定した。
【0067】
<X線透過観察装置による電池非破壊検査>
実施例1〜3で作製したリチウムイオン二次電池について、X線透過観察装置マイクロフォーカスX線透視装置 SMX-1000にて、管電圧を150±5kV、管電流を150±5μAでコントラストを調整し、電池内部の観察を非破壊で実施した。
【0068】
実施例1〜4のリチウムイオン二次電池から、識別表示「●●●■■」を読み取ることができた。図形の形状、特定図形の数などで、生産ラインや装置等のトレーサビリティーをとることにより、履歴の追跡が可能となることが確認された。
【符号の説明】
【0069】
1 電極体
10 正極
13 正極タブ
20 負極
30 セパレータ
2 絶縁体
4 外装缶
5 蓋
17 テープ
図1
図2
図3
図4
図5