(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671010
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】各種疾患の治療に最適なN,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の医薬用溶融物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/145 20060101AFI20150129BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20150129BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20150129BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20150129BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20150129BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20150129BHJP
A61P 31/08 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
A61K31/145
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/22
A61P9/10
A61P7/04
A61P31/08
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-508413(P2012-508413)
(86)(22)【出願日】2009年10月5日
(65)【公表番号】特表2012-525379(P2012-525379A)
(43)【公表日】2012年10月22日
(86)【国際出願番号】MX2009000105
(87)【国際公開番号】WO2010126349
(87)【国際公開日】20101104
【審査請求日】2012年10月2日
(31)【優先権主張番号】MX/A/2009/004635
(32)【優先日】2009年4月29日
(33)【優先権主張国】MX
(73)【特許権者】
【識別番号】511263127
【氏名又は名称】ウニベルシダド アウトノマ メトロポリタナ
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173587
【弁理士】
【氏名又は名称】西口 克
(74)【代理人】
【識別番号】100173602
【弁理士】
【氏名又は名称】赤津 悌二
(74)【代理人】
【識別番号】100177080
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 涼子
(72)【発明者】
【氏名】アルタグラシア マルティネス,マリナ
(72)【発明者】
【氏名】リオス カスタネダ,ルイス カミロ
(72)【発明者】
【氏名】クラブソブ ヒニチェ,ハイメ
(72)【発明者】
【氏名】ダイス ルイス,マリア デ ロス アンゲレス アラセリ
【審査官】
平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】
LEPROSY REVIEW,1968,Vol.39,No.3,p.171
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00〜31/80
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 25%のエタノール、
b) 58%のプロピレングリコール、
c) 1%のベンジルアルコール、
d) 5%のグリコフロール、および
e) 11%の水の混合物における、治療用のN,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の溶液であって、
該溶液は、0.2mg/Kgから12mg/Kgまでの投与量を含有する治療用のN,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の溶液。
【請求項2】
脳梗塞、癲癇、脊髄の外傷性傷害、頭蓋内損傷、脳内出血、ハンセン病、およびニューモシスティスカリニによる感染症から成る群から選択される、疾患の治療用の、いずれの身体組織から投与するかにかかわりなく投与される、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
1日当たり用量5から300mgの範囲で投与される、請求項2に記載の治療用の溶液。
【請求項4】
24時間ごとに投与が反復される請求項2または3に記載の治療用の溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬品製造、さらに具体的にはある特定の状況にある各種疾患用医薬の製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハンセン病およびニューモシスティスカリニ(Pneumocystis carinii)の化学療法はN,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の錠剤投与により行なわれる。N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の溶媒への溶融性が低いため、薬剤として使用する溶液中にスルフォン酸塩が形成するという問題が発生するが、このため本件発明では人体に医薬品として安全に利用可能な併用溶剤を使い200mg/3mLまで溶融可能な新たな処方を提示する。
【0003】
90%の比率で活性Tween−80の溶液を使用したN,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩溶液は、Tween−80がスルフォン酸の溶融に必要な濃度の溶液にとって有毒な化合物であるため人体への投与を妨げることが報告されている[Helton DR, Osborne DW, Pierson SK, Buonarati MH, Bethem RA、「
ダプソンの静脈注射、経口または経皮投与後のマウスの薬物反応様相」、薬物代謝と伝達 28: 925−929(2000)]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は活性分子のより迅速な吸収を可能にするN,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の水溶液組成、意識不明者への適用および経口、非経口を問わずすべての人体組織を通じた溶液形態による治療投与薬として安全に使用できる可能性の実現を目的とする。
【0005】
N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩は現在ハンセン病に対する化学療法およびニューモシスティスカリニに起因する肺炎の予防に使用される薬剤である。最近ではN,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩は頻繁に意識不明となり固形薬剤の投与が不可能な患者が必要とする神経プロテクターおよび抗癲癇薬として新たな用途が明らかとなった。ダプソンへのこの新たな用途は特許取得済であり(メキシコ国特許第246,892号明細書、メキシコ国特許第264,912号明細書)、治療には固形形態と比較してさらに速やかな薬剤吸収が必要であるため、溶液形態での適用が最適である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は人体への医学的使用に適合する溶剤の混合物中に溶融したN,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩に基づく治療用製品の発見を目的とする。N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩は頻繁に意識不明となり、したがって現在使用されている固形薬が適切でない患者
のニーズに対応する新たな用途に使用される。
【0007】
N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の溶剤候補を求めて、経口または非経口の投与に完全に適合する安定的な製品を得る可能性があるさまざまなエタノール/プロピレングリコール/グリコフロール/ベンジルアルコール/水と種々の加重剤、安定剤、芳香剤の混合物を検討した。溶融物として下記の組成を有する化合物N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩を合成により取得した。
【0008】
【化1】
【0009】
すべての場合に発熱性がないUSPグレードの溶剤と反応剤を用いた。
【0010】
溶融実験は容量10mLから5Lのガラスまたはステンレス鋼製の容器を使用し、200mg/3mLのN,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩を含む併用溶剤の混合物を注いで行なった。N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の溶融は強く攪拌した後で容器を目視検査して判定した。
【0011】
N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の溶融に必要なエタノール/プロピレングリコール/グリコフロール/ベンジルアルコール/水の最適混合比率の決定にはシンプレックス法アルゴリズムを使用した。
【0012】
N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の安定性を研究するためにはガスバーナーで封じたアンプルを使用した。
【0013】
溶剤処方に対するアンプルの殺菌は110℃の加圧減菌器で行った。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】横座標軸に日数で表示した時間経過、縦座標軸にDDSの凝縮を示すグラフである。
【
図2】発生した脳梗塞に一般薬のみを適用したマウスの脳の断面推移を示す。
【
図3】発生した脳梗塞に静脈注射を適用したマウスの脳の断面推移を示す。
【
図4】発生した脳梗塞に経口薬を適用したマウスの脳の断面推移を示す。
【
図5】経口薬の組合せを適用した場合の血漿凝縮の断面を示す。
【
図6】静脈注射の組合せを適用した場合の血漿凝縮の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(事例)
(N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の合成剤)
N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩は種々な形態に合成可能であるが、たとえば、下記の合成方法がある。
【0017】
1. エーレンマイヤーフラスコにアセトアニリド60gを入れ固体が完全に融けるまでゆっくりと炎で熱した。得られた粘性の液体を氷が入った容器で冷却し、固体化した物質が底に沈殿するようにした。氷の入った容器から入れたままで一度にクロロスルフォン酸165mlを添加した。このあと氷からフラスコを移して慎重に撹拌し、さらに10分間反応させた。これが完了したところで反応混合物をもう一度加熱したところ残余のアセトアニリドは完全に溶融したが、さらに10分間反応を継続させた。生成物を冷まし氷と水を入れた容器に慎重に注ぎ入れ、沈殿物を濾過し冷水で洗浄した。沈殿物を収集してクロロホルム中に溶かし、水で3回抽出しクロロホルム相を収集し、これを氷容器に入れ、高純度チオニル塩化物を沈殿させた(媒介物質の溶融温度:149℃)。
【0018】
2. 無水ニトロベンゼン123.6mlを反応容器に入れ、塩化アルミニウム89.2gを加え緩慢に加熱した。熱した混合物にチオニル塩化物41.3gを加え反応混合物を温度140−145℃に加熱し、さらにアセトアニリド13gを加え、2時間にわたりこの反応温度を維持した。この時間が経過後反応凝縮物を塩化水素で酸化した水104ml中に入れると暗色の結晶体が沈殿し、これは希釈した酢酸により再結晶した。この結晶は5N塩酸により30分間で逆戻りして反応混合物を事後的に中和し、これによって白色の結晶(粗DDS)が沈殿し、これはまたエタノールによって新たに再結晶した。
【0019】
(合成化合物の化学的特性)
これらの合成化合物の真正さを定めるため求めた溶融点は、チオニル塩化物反応の平均が151−153℃、DDSが172−175°Cであった。
【0020】
これらの化合物の溶融点は
、媒介物質とDDSについてそれぞれ149℃および175−176℃である。
【0021】
(本発明について推奨する実施例)
N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩を溶融するために種々の比率でエタノール/プロピレングリコール/グリコフロール/ベンジルアルコール/水の混合物を使用することは脳梗塞、癲癇、脊髄の外傷、頭骸骨と脳髄の外傷、脳溢血、動脈瘤によるくも膜下出血、ハンセン病、ニューモシスティスカリニによる感染症およびいずれの身体組織から投与するかにかかわりなく化合物の迅速かつ完全な吸収が必要なあらゆる症状のごとき多種の疾患に対する薬剤処方に有用である。
【0022】
本薬剤の投与は0.2mg/Kgから12mg/Kgの用量で行い1日から7日間必要に応じて反復することができる。
【0023】
(例1. 経口、非経口のいずれかを問わず投与用溶液としてのN,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の溶融)
N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩50mgから500gを計量し試験管に入れる。量目で2.9倍のプロピレングリコール、1.25倍のエタノール、0.85倍の水から成る5倍の混合物を加える。N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩が完全に溶融するまで攪拌する。
【0024】
溶融したところでガラス製の小アンプルに移して封入し加圧減菌器で殺菌する。
【0025】
N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の溶融が完全に行なわれたか否か、ならびに殺菌処理によるN,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の目立った劣化の有無を判定する目的で、N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の溶液を紫外線検査による高分解能液体クロマトグラフィーを用いて分析する。
【0026】
(溶融形態のN,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の神経プロテクター効果の評価)
溶液形態のダプソン神経プロテクター効果を評価するため、脳梗塞マウスのモデルで効果を研究した。このモデルでは脳中動脈を永続的に閉鎖して永続的な脳梗塞を発生させた。
【0027】
頚動脈を通じて発光体を飽和させた糸を導入することにより選択的に永続的な脳梗塞を発生させた。すべてのマウスに対し外科的処置中顔面マスクにより1.5%ハロタノによる麻酔を継続した。マウスは平臥させ頚部前面の毛を剃り胸骨湾曲部から頚部の筋肉への中心線、さらに側面の縁まで切り、この個所に頚部筋肉の側面中心部を、さらにメスの深部で脳腱膜表面を見出し、また切開により腹腔下部および内部の循環系を露出させた。
【0028】
舌下神経の端まで切開解剖を執刀した。頚動脈分岐点、頚動脈外部および後頭部と甲状腺への分岐を見出したが、後者2個所は後部断面に対するのと同様に8−0の単フィラメントで結合した。頚動脈内面は約5mmの長さを切開したがこのとき翼突口蓋動脈を発見した。この中にマイクロチップを設置したが欠陥があったため6−0の単フィラメントを接続した。これらの流量豊富な動脈からいったん溶液を回収した後で、頚動脈外部の切開部を通じて頚動脈の内部に向かって分岐個所から17mm先まで3−0のナイロン製単フィラメントの導入を進めた。さらに傷口を閉じマウスの求めに応じて水と食物を与え回復させた。つねに梗塞の顕微鏡観察と糸の位置把握を確実に行なった。
【0029】
(溶融形態でのN,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩のマウスにおける神経プロテクター効果の評価)
これらマウスの脳について一連の組織研究がきめ細かく行なわれ、傷害部分を判定するために血液毒素とエオジンの染色が行なわれた。この新しい形態の薬品を使ったマウスに対する神経プロテクター効果および媒介物の効果に関する主な成果を
図2に示す。
【0030】
図2は媒介物を処置されたコントロールマウスと比較して、N,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の新しい溶液形態で処置したマウスの傷害が著しく小さいことを示している。
【0031】
(健康なボランティアに対する薬剤用溶液形態でのN,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の薬物効果の特色)
健康なボランティア18人を対象に溶液形態でのN.Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩(DDS)溶液を経口投与(
図3)のみならず静脈注射(
図4)も行い、時間を変えてN,Nジアミノジフェニールスルフォン酸塩の血中濃度を判定した。
図3および
図4はこの分析の結果を示す。
【0032】
各マウスに対する薬物効果の曲線の下方部分を計算すると、静脈注射方式の生体利用可能性を表す曲線下方部分を100%とした場合、経口方式の生体利用可能性である曲線下方部分は平均92%強であった。この結果は経口方式では溶液が消化器官を通じてきわめて良く吸収されることを示している。経口方式では平均半時間で最大濃度を得られるのに対して、文献が示すところでは固形薬では血漿中の濃度が最大になるのは2から3時間後である(Breen GA, Brocavich JM, Etzel JV, Shah V, Schaefer P, Forlenza S.
「健康なボランティアにおける
ダプソン吸収による胃内pH変化の効果評価
」、抗菌薬と化学療法
、1994年9月; 38(9):2227−2229)。