(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ノズル出口部で流れを調整するステップを更に含み、該ステップが、流れを前記出口ノズル部から出るときに略平行な流線を有する略層流に変換するステップを含む請求項1に記載の方法。
【発明の概要】
【0005】
[0005]本発明は、薬剤における放出速度をより良く制御するとともに、キャリア溶媒と薬剤高分子マトリクスとの間の望ましくない相互作用を少なくする薬剤溶出コーティングを形成するための装置および方法を提供することにより当分野を改良する。実施形態によれば、スプレーノズルは、コーティング材料を塗布するために使用される。また、コーティングのパス間乾燥を適用するためにドライヤが使用される。用語「パス間乾燥」は、1、2、3またはそれ以上の数のスプレー通過間での乾燥または溶媒除去を意味する。コーティングごとの材料の重量は、非常に軽く、一実施形態によれば全コーティング重量の約5%である。このことは、この特定の実施形態においては、コーティング重量の100%に達するために20回のコーティングが必要とされることを意味する。
【0006】
[0006]より一貫した安定な薬剤放出プロファイルをもたらすための以前の取り組みは、完全に満足のいくものではなかった。より正確で制御可能な/予測可能な放出速度が求められる。薬剤の放出速度の制御可能性および一貫性を向上させるための取り組みは、高分子の構造、高分子のタイプまたは構造、および、使用される溶媒のタイプに焦点が合わされてきた。しかしながら、これらの改良は、特定の臨床用途におけるニーズを満たすことができず、あるいは、幅広く使用できる形態を提供することができなかった。
【0007】
[0007]本開示は、医療デバイスのコーティング中に噴霧ステップおよび乾燥ステップの両方の態様を含む。乾燥態様について最初に説明する。
【0008】
[0008]「薬剤放出プロファイル」または「放出プロファイル」は、体内に配置された後に予期される治療的挙動をなす薬剤溶出マトリクスの形態または特性を意味する。したがって、薬剤放出プロファイルまたは放出プロファイルは、放出速度の予測可能性、もしあるとすれば薬剤溶出表面にわたる放出速度の経時的な、あるいは単位面積当たりの変化などを人に知らせる。
【0009】
[0009]特定の放出速度、薬剤溶出表面上にわたる放出速度の均一性、および/または、製造設定における均一性(高スループット)をもたらすなどの特定の目的に適合するように薬剤放出プロファイルを調整できる能力のかなりの向上は、存在する溶媒の量または溶媒除去速度のより正確な制御を得ることにあることが見出された。溶媒除去、分布などの臨界は、一般に、薬剤-高分子-溶媒の処方および求められる特定の目的に依存する。薬剤-高分子マトリクスの形態が溶媒の存在によって影響されることは知られているが、この相互作用が以前から考えられていたよりも重大な役目を果たすことが見い出された。この結論に基づき、溶媒-高分子-薬剤相互作用の大きさを制御するためのより有効なプロセスが求められた。1スプレーサイクル当たりのコーティング重量と溶媒が除去される方法とがコーティング厚に関連して重要な検討材料であることが分かった。
【0010】
[0010]従来においては、1スプレーサイクル当たり比較的高いコーティング重量が求められた。これがプロセス時間を最小限に抑えてスループットを高めるからである。しかしながら、溶媒除去の量または速度の制御を維持することは、塗布されるコーティング層が比較的薄くなければ困難である。塗布される層が非常に厚い場合には、除去に対する溶媒の抵抗が直ちに非直線状になり、したがって、制御または予測することが更に困難になる。そのため、溶媒が厚い層から除去されると、溶媒、高分子、および、薬剤の間の望ましくない相互作用の可能性および関連する問題が、放出プロファイルの制御を保持できる能力を低下させる。
【0011】
[0011]薬剤溶出医療デバイス、例えばステントのために使用される高分子の生体適合性は絶対不可欠である。高分子は、非炎症性でなければならず、ステントから剥がれ落ち、あるいは剥離することなく拡張できなければならないとともに、予測可能な速度での薬剤放出を制御できなければならない。非常に僅かな高分子系が要件を満たすことができる。EVALは、薬剤注出ステントのための薬剤マトリクス材料として選択されるのが好ましい。EVALは有益な生物学的反応を示した。EVALは、半結晶性のランダム共重合体であり、その水酸基に起因して吸湿性である。ステント上のEVALコーティングの結晶化度パーセンテージは、プロセス条件(プロセス温度、湿度、または、残存溶媒)によって決まる。EVALを溶解するために使用される溶媒(DMAcまたはDMSO)は高い沸点を有する。したがって、溶媒は、例えば加熱によってコーティングから積極的に除去されなければならない。
【0012】
[0012]プロセス条件は望ましい形態に影響を及ぼす可能性がある。例えば、過剰な残存溶媒が存在する場合、すなわち、溶媒がスプレーサイクル間で、あるいはスプレーサイクル後に除去されない場合、溶媒は、放出速度を大きく変え得る可塑化効果を含む可能性がある。したがって、一貫した特性−結晶化度、%溶媒残留、%含水率など−を伴うコーティングを生成するプロセスを有することが非常に重要となり得る。これらのパラメータの1つ以上が薬剤溶出デバイスの厚さにわたって、あるいは表面にわたって変化するように適切に制御されなければ、放出プロファイルが影響を受ける。これらの検討材料の1つ以上は、他の処方に関してよりも幾つかの薬剤-高分子-溶媒処方に関しての方が重要となり得る。
【0013】
[0013]ステント上の薬剤の組み込みを容易にするため、固体の割合が低い高分子/薬剤溶液をステント上にわたって噴霧した後に溶媒を除去することが、ステント上に堆積される薬剤の量(マイクログラム範囲)および放出プロファイルを制御するに際して実現可能となった。ここで、良好なコーティング品質がこのスプレー技術の使用によって利益を得ること、すなわち、結晶化度、%溶媒残留、および、%含水率などの特性が、幾つかの塗布されたコーティングにわたってコーティング重量が増大されるように更に制御可能であることが見出された。しかしながら、(クリンプされたステントのODサイズを最小にするために)厳格な形状を有するステントは、この方法に対して重要な技術的課題を加える。スプレーサイクル間(スプレーサイクルは、1回以上のスプレーパス、例えば回転するステント上にわたって長手方向にスプレーノズルを通過させることを含むことができる)において効率的な予測できる方法で溶媒の少なくとも一部を除去する必要がある。好ましい実施形態では、スプレーサイクルで5%コーティング重量を得るために、スプレーサイクルが1、2、3回、または、それ以上のパスを含む。理想的には、それぞれのコーティング後に全ての溶媒を除去したい。しかしながら、言うまでもなく、これは実用的な解決策ではない。実際に、それはDMAcなどの比較的高い沸点を有する溶媒においては不可能な場合さえある。したがって、それぞれのスプレーサイクル間で全ての、あるいはほぼ全ての溶媒を除去できると仮定した場合でも、この乾燥段階が非常に時間を要するため、当分野における必要性は満たされない。
【0014】
[0014]薬剤放出(EVAL薬剤システム)に対する乾燥の効果に関する以前の研究は、それぞれのスプレーサイクル後にコーティング済みステント上の溶媒を除去するためのプロセス間乾燥技術の必要性を示唆した。これは、高いスループットを保ちつつ、より安定した製品を製造する際に重要なステップである。
【0015】
[0015]高分子を溶解させるのに使用される溶媒の特性、例えば表面張力、蒸気圧または沸点、粘性、および、誘電率は、コーティング品質、コーティングプロセススループット、薬剤安定性、および、薬剤を処理するために必要とされる器具に対して支配的な影響を及ぼす。無論、ステント上にわたって加熱ガスを加えることによって溶媒を除去することができる。しかしながら、驚くべきことに、また、予想外に、所望の最終結果を得るためにこの乾燥ステップが注意深く制御されなければならないことが分かった。ガスからコーティング表面への均一で効率的な熱伝達も行なわれなければならない。
【0016】
[0016]適した溶媒の蒸発速度は、薄膜コーティングにおいてはコーティング厚と逆の関係をもつ(厚さにほぼ反比例する)。また、抵抗は、コーティング厚が増大するにつれて非直線的に増大する。前述したように、この非直線性は回避されるべきである。厚さが直線範囲内であるときには、溶媒の除去時に、より高い効率、均一性、および、更なる制御が達成される。結果として、薬剤-溶媒-高分子相互作用、溶媒可塑化、および、薬剤の抽出が最小になるため、より一貫した薬剤放出プロファイルが得られる。したがって、厚さにわたる特性の均一性だけでなく、溶媒を除去できる能力の更なる制御を達成することが望ましい。これは、薬剤溶出ステント上の残留溶媒が、不都合な生物学的反応を含み、コーティング特性を損ない、薬剤劣化を引き起こし、放出プロファイルを変える場合があるからである。それぞれのスプレーサイクル中に塗布される高分子と薬剤との比率は、1:1、2:1、3:1、4:1、または、5:1であってもよい。
【0017】
[0017]したがって、それぞれのスプレーサイクル間の乾燥ステップと共に、低いパーセンテージの溶液、例えば5%の最終コーティング重量の多くのコーティングを塗布することによって放出速度をより良く制御できることが分かった。そのため、この例では、目標コーティング重量をもたらすために20回のコーティングが必要とされる。前述したように溶媒および溶媒-薬剤-高分子相互作用の制御を維持しつつ、このコーティングプロセスを製造レベル方法として更に実現可能にするため、効率的なプロセス間乾燥ステップが必要とされた。
ドライヤ
【0018】
[0018]初期の実験は、フレア状のあるいは口広がりの開口に通じる管状の導管を有する市販のエアーヒータを使用する乾燥ステップを含むようにプロセスを構成した。例えば、フレア状の開口を有するエアーヒータは、Osram Sylvania(登録商標)、131 Portsmouth Ave、Exter NH 03833により提供された。これらのタイプのヒータは、一般に、金属構造を成しており、ガス流をチューブの下方に方向付けてチューブと一直線をなすフレア状の開口に向ける。流れ加速・再形成部がフレア状の開口によって与えられる。平均流れ方向は、ガスがヒータを通じて移動するときに変化しない。
【0019】
[0019]ガスにおける流れプロファイル、すなわち、ノズルからのガス出口速度およびガス温度は、急速な乾燥時間をもたらすように選択された。いずれかのノズルを使用したガスからステント表面への適切な平均熱伝達により、すなわち、適切な乾燥ガス速度および温度を選択することにより、効率的なプロセス間乾燥段階をコーティングプロセスに組み入れることができ、それにより、薬剤高分子形態に対する溶媒の影響の制御を維持しつつ多くの低重量コーティングを塗布するプロセスを実現可能にできると期待された。しかしながら、溶媒除去のための発散チャンネルまたは円筒ノズルタイプの使用に起因して結果として得られる薬剤放出プロファイルは、所望の特性を呈さなかった。熱伝達の更なる制御が必要とされる場合があると仮説が立てられた。
【0020】
[0020]驚くべきことに、また、予想外に、ノズル出口でのガスの熱伝達能力およびプロファイルが変更されると、すなわち、より均一にされると、最終目的に適するように薬剤放出プロファイルを制御し、あるいは調整することができる能力がかなり高まることが分かった。したがって、結論として、薬剤放出プロファイルの向上をもたらすために必要とされる効率的なプロセス間乾燥ステップだけでなく、幾つかの塗布されたコーティングのそれぞれの間でガスからコーティング面へのより均一な熱伝達が得られた。
【0021】
[0021]ドライヤを使用して溶媒を除去するために費やされる電力または資源も重要な検討材料である。サイクル期間中、ステントなどの医療デバイスがコーティングされているときには、流れ状態を維持することが望ましい。しかしながら、これは、ガスにおける定常状態を維持するために窒素などの高価なガスが費やされているため、資源を浪費し得る。これらのコストを低減するため、異なる流量でガス源の温度を監視する閉ループ制御が考え出された。ドライヤが使用されていないときには、ヘッドまたは入口の流量が減少され、それにより、質量流量が減少される(ガスを節約するため)。結果として、出ていくガスの温度が高まる。ドライヤへの入口に配置される熱電対および圧力モニタが、流量が減少されるとき加熱コイルを連続的に調整して入力で同じ温度を維持するために制御パラメータとして入力されてもよい。ガス流量が減少されるとき、あるいはドライヤがアイドリング状態のときに同じ作動温度を維持することにより、定常状態流れに達するために必要とされる起動時間が減少される。これにより、材料および電力引き出しの両方においてコストがかなり節減される。
【0022】
[0022]溶媒を除去するためのドライヤの効率、すなわち、除去される溶媒の体積または重量ごとに必要とされるガスまたはエネルギの量も考慮された。好ましい実施形態では、窒素ガスが乾燥ガスのために使用される。資源を節約し、プロセスセイクルを減らすとともに、ステント表面上にわたる単位面積当たりの蒸発速度の均一性または一貫性を向上させるために、ステント周囲の流れ特性が解析された。最初に、ステントをマンドレル上に配置して、比較的高速でドライヤの出口ノズルの近傍で回転させることにより、ステントの表面全体が高温ガス内に連続的に包まれて、蒸発される溶媒が急速に除去されると考えられた。しかしながら、比較的高速でノズルから出るガス流と周囲の外気との間の圧力差が大きな熱損失をもたらしてステント周囲の流れを妨げるほど十分に高いことが見出された。高温ガスの圧力がステントの近傍で増大されれば、高温ガスの熱伝達の均一性および熱損失の両方に関して支障が殆どなくなることが分かった。
【0023】
[0023]効率を高めてステントを取り囲むガス特性の均一性を維持するようになっている構造の2つの実施形態が開発された。第1の実施形態は、ステントの背後に配置されるリフレクタであり、該リフレクタは、ガスがステント表面を通り過ぎる際にガスがステントの近傍内に集まって保持されるように配置される。結果としてステントの背後で得られる圧力増大は、ステント近傍の冷たい外気によって引き起こされる熱損失の量を減らす傾向がある。
【0024】
[0024]第2の実施形態は、ドライヤの出口ノズルを覆って位置されるガスエキスパンダまたはスカートである。ガスエキスパンダは、ノズルから出る低圧ガスを冷たい外気から断熱するように機能する放物線型または円錐型の構造であってもよい。ガスが拡張チャンバを通過するにつれて、ガスが外気から隔離される。ガス圧が増大する場合もある。好ましい実施形態において、ガスエキスパンダは、高温ガスを周囲の冷たい空気から隔離するようになっている。しかしながら、言うまでもなく、本発明に係るガスエキスパンダの使用においては他の利点が存在する。
【0025】
[0025]以上を考慮して、本発明は、当分野における以下の更なる改良のうちの1つ以上を提供する。
【0026】
[0026]本発明の他の態様によれば、ステントをコーティングするための方法は、(a)重量で7%のコーティングと重量で93%の溶媒とを備える溶液をステントに噴霧するステップと、(b)ドライヤを使用してコーティング済みのステントから溶媒を除去して、溶媒除去ステップ後に重量でコーティングの約8%の溶媒だけがコーティング中に残存するようにするステップと、所望のコーティング重量の100%に達するまでステップ(a)(b)を繰り返すステップとを含む。更なるステップは、溶液のコーティングが塗布されるそれぞれのステップ間で、あるいは該ステップの後に、強制ガス塊をステントへ向けて方向付けることにより、ステントから溶媒を除去することを含んでもよく、その場合、ガスはステントの長さにわたって均一な速度・温度プロファイルを有し、強制ガス塊を加えた後に実質的に重量でコーティングの約8%だけが残る。
【0027】
[0027]本発明の他の態様は、溶媒を均一に除去するための強制ガス乾燥段階を含む所望の放出プロファイルをもたらすための方法である。好ましい実施形態において、溶媒は、20mm、100mm、150mm、および、200mmの長さを有するステントに関して均一に除去される。
【0028】
[0028]本発明の他の態様は、流入するガス流を供給する入口導管と、乾燥ガスをもたらす出口領域とを有するドライヤである。ドライヤは、ガス源により供給されてノズル出口で排出されるガスの調整のための閉空間を共同して形成する第1のガス調整チャンバおよび第2のガス調整チャンバを含み、ガスは、定常流れ状態中にガス源によって供給される質量流量と同じ質量流量をノズル出口で有し、第1のガス調整チャンバは、ガス源に結合される円形入口と、円形入口の下流側にある開口の直線配列とを含み、第2のガス調整チャンバは、開口の直線配列と、開口の直線配列の下流側のノズル出口チャンネルの配列とを含み、ドライヤは、ノズル出口チャンネルの直線配列から略均一な乾燥空気塊をもたらすようになっている。
【0029】
[0029]ノズル出口チャンネルは、チャンネルへの入口にベーンを形成することにより、チャンネルを通過してノズルから出るガスのノイズが減少されるように構成されてもよく、これにより、ノズル出口での流体振動の振幅または周波数を減少させることができる。
【0030】
[0030]ドライヤは、ノズル出口のノズルチャンネルの直線配列の周囲に配置されるガスエキスパンダを更に含んでもよい。ガスエキスパンダは、ノズル出口から外側に広がる放物線状または円錐状のスカートによって形成されてもよく、それにより、ガス圧は、ガスが放物線状または円錐状のスカートを通じて移動する際に減少し得る。ドライヤは、これに加えて、あるいはこれに代えて、ノズル出口チャンネルの直線配列と対向して配置されるガスリフレクタを有してもよい。
【0031】
[0031]本発明の他の態様は、軽い層を塗布するステップと、該層を乾燥させるステップと、その後に全コーティング重量に達するまでこれらのステップを数回繰り返すステップとによってコーティング重量をもたらすことに関する。層の数は、19を超えてもよく、30を超えてもよく、40を超えてもよく、また、20〜50個の層であってもよい。それぞれの塗布層間に断続的な乾燥ステップ、あるいはプロセス間乾燥ステップを含めることができる。層の塗布は、噴霧される医療デバイスを計量した後に所望の重量が測定されるまで層を連続的に塗布することによって予め決定することができ、あるいは決定することができる。
【0032】
[0032]本発明の他の態様は、薬剤溶出ステントをコーティングするためにプロセス間乾燥ステップ中に用いるヒートノズルに関する。このヒートノズルは、均一な速度および温度分布を伴うガスカーテンを形成してもよく、それにより、溶媒乾燥の均一性が向上し、コーティングからの薬剤放出の変動性が減少する。
【0033】
[0033]本発明の他の態様によれば、ガス流量が変化し得る場合に定常流温度を維持するために閉ループコントローラが使用される。このコントローラを使用して、ドライヤのガス流量が、ドライヤが使用されていないときのアイドル流量と、乾燥段階中の作動流量との間で切り換えられてもよい。前述したように、コーティング間での溶媒除去の速度または量をある程度予測できることは絶対不可欠である。ステントが乾燥されているときには常に略定常状態の流れを維持することにより、すなわち、過渡的な流れ状態を回避することにより、溶媒除去の量または速度を予測することが容易になる。また、不使用期間中に一定のガス温度を維持しつつ流量を減少できることにより、ガス資源が節約される。
【0034】
[0034]本発明の他の態様によれば、今しがたコーティングされたステントを乾燥させる方法は、ドライヤのノズル出口部よりも上側でステントを回転させることにより、ドライヤによりもたらされるガスがステントからの溶媒の除去速度に影響を及ぼすようにするステップを含む。ガスは、ガスをドライヤに対して供給するステップであって、ガスがドライヤ内への入力平均流れ方向を有するように円形導管を通じて供給されるステップと、ガスをそれがドライヤの第1のチャンバと直面するように減速させるステップであって、第1のチャンバが、入力平均流れ方向に対して垂直な方向でガスが広げられるように配置される第1の拡張空間によってガスを与えるステップと、ガスが入力平均流れ方向に対して垂直な方向で広げられた後、平均流れ方向に対して垂直な方向に配置される開口の直線配列を通じてガスを押し進めることによって、広げられたガスを加速させるステップであって、ガスが第2のチャンバに入るステップと、ガスが第2のチャンバを満たすようにガスを減速させた後に加速させるステップであって、第2のチャンバが、第2の拡張空間によってガスを与えた後に、第2の拡張空間よりも下流側の狭い空間と該狭い空間よりも下流側のノズル出口とによってガスを与えるステップと、によってもたらされる。この方法によれば、ガスは、ガスからステントへの均一な熱伝達を回転するステントの全面にわたってもたらす。例えば、100℃〜120℃の範囲の100リットル/分の均一な流量の乾燥ガスがもたらされてもよい。
【0035】
[0035]本発明の他の態様によれば、ステントをコーティングするための装置は、ステントの表面にコーティングを塗布するための噴霧器と、ガス供給源により供給されるガス流を使用してステントの表面から制御された割合の溶媒を除去するように構成されるドライヤとを含む。ドライヤはコーティング間で乾燥するプロセス間ドライヤである。
【0036】
[0036]ドライヤは、ガス源から受けられてノズルヘッドで排出されるガスの調整のためのシール空間を共同して形成する第1のガス調整チャンバおよび第2のガス調整チャンバを含んでもよく、ガス源によって供給される質量流量が定常流れ状態中のノズルヘッドでの質量流量と同じであり、第1のガス調整チャンバが、ガス源に結合される円形入口と、円形入口の下流側に配置される開口の直線配列とを含み、第2のガス調整チャンバが、開口の直線配列と、開口の直線配列の下流側のノズル出口チャンネルのラインとを含み、第1のガス調整チャンバおよび第2のガス調整チャンバが、円形入口で受けられるガスをノズル出口で均一な速度および温度を有するガス流に変換するために協働する。
【0037】
[0037]装置は、ガスがドライヤへ供給される速度と、ドライヤから出るガスの温度とを制御して、可変ガス流量に対してガス温度が一定の温度に維持されるようにするための制御システムを更に含んでもよい。
【0038】
[0038]本発明の他の態様によれば、噴霧器とドライヤとの間で移動できるステントをコーティングするための方法は、ドライヤのノズル出口からの乾燥ガスの定常状態の第1の質量流量を生み出すステップであって、バルブを開放し、ガス温度の検出された変化に応じてガスを加熱するためのヒータを調整するステップを含む、ステップと、定常状態の第1の質量流量がノズル出口に存在する間に薬剤-高分子-溶媒をステントの表面に噴射するステップと、ステントに対する薬剤-高分子-溶媒の第1のコーティングの塗布の完了前または完了直後に、同じ温度を維持しつつドライヤへの質量流量を増大させるステップであって、ガス温度の検出された変化に応じてヒータを調整するステップを含み、ドライヤが定常状態の第2の質量流量を生み出すステップと、ステントをドライヤへ移動させ、あるいは、ドライヤをステントへ移動させて、定常状態の第2の質量流量でドライヤから出るガスを使用してステントを乾燥させるステップとを含み、第2の質量流量は、ガスからステント表面への均一な直線的熱伝達により特徴付けられ、それにより、対応して均一な溶媒除去速度がステント表面で生じ、また、第1の質量流量におけるガスの定常温度は、第2の質量流量におけるガスの定常温度とほぼ同じである。
【0039】
[0039]本発明の他の態様によれば、ドライヤは、開口の配列における全流束面積とノズル出口チャンネルとの比率が約4:1であってもよく、あるいは、開口の配列における全流束面積と入口との比率が約1.75:1または2:1であってもよく、あるいは、ノズル出口チャンネルにおける全流束面積と入口の流束面積との比率が約2:1である。
【0040】
[0040]本発明の他の態様によれば、ノズル出口チャンネルの配列が長さLを有し、入口と出口との間の複合チャンバの奥行きがDであり、入口と出口との間の複合チャンバの高さがHであり、入口の直径のサイズが2Rであり、この場合、LとDとHと2Rとの比率(L:D:H:2R)が約1:(1/10):(1/3):(1/8)、L:2Rの比率が約1:8;L:Dの比率が約1:1/10、L:Hの比率が約1:1/3であり、ドライヤは、100〜120℃の範囲の温度で約100リットル/分の流量においてステントを乾燥させるのに適した均一な温度および速度をもたらすことができる。
【0041】
[0041]本発明の他の態様において、ドライヤの出口ノズル長さは、ステントのエッジで変化を最小限に抑えるように寸法付けられる。ノズルチャンネルの配列の長さは、ステントの長さの約125%である長さを有し、または、ステント長さの1.5倍の長さを有していてもよく、そのため、ドライヤは、ガスからステント表面への均一な熱伝達をもたらすべく乾燥させるように構成される。
【0042】
[0042]本発明の他の態様によれば、ガスエキスパンダは、ステント表面近傍で均一な熱伝達を維持するように構成され、ステントは直径Dを有し、エキスパンダの高さがDの約4倍であり、上記直径の口部がDの2倍〜4倍であり、ステントは、口部から約Dの距離に配置される。幾つかの実施形態では、ガスエキスパンダの高さと口部との比率が1:1である。幾つかの実施形態において、ドライヤと噴霧器との間でステントを移動させるための機構を有するステント乾燥装置は、ステントをガスエキスパンダ内にほぼステント1つ分の直径内で配置するように構成されてもよく、あるいは、他の実施形態では、エキスパンダの口部からガスエキスパンダの高さの約25%の距離にステントを配置するように構成されてもよい。ステントはノズル出口に近接して配置されてもよい。今しがたコーティングされたステントを使用して行なわれた試験では、最適な距離がノズル口部からこの約25%(好ましくは、4D×4Dガスエキスパンダにおいては直径距離)であり、この距離が2つの変数、ステントの安定性および乾燥効率に基づいて最適な状態を与えることが分かった。したがって、実施形態によれば、最適な距離または範囲が見出された。ステントの最適な位置は、3つの変数、すなわち、(1)ステント支持体のタイプ、(2)ガスエキスパンダのタイプ、(3)ガスからステントへの熱伝達の性質、の制約を受けることが最適化によって分かった。パラメータ(2)については前述した。
【0043】
[0043]パラメータ(1)は、ステントのために使用される支持体に関し、特に、空気を速く移動させることによってステントが影響を受けるときに許容される動きの大きさに関する。好ましい実施形態において、ステントは、緩い嵌合を行なう、実際には疑似不安定を与えるマンドレルに支持され、それにより、マンドレルと接触するステント表面のコーティング欠陥を最小にすることが好ましい。この緩い嵌合を行なうマンドレルの例は、米国特許第7,572,336号明細書および米国特許出願第12/554,671号明細書において与えられる。これらの構造により、ステントが回転されるにつれて接触点が絶えず変化し、それにより、コーティング欠陥が最小限に抑えられる。このように、ステントは、マンドレルに緩く保持され、そのため、高いモーメント、振動、周期的なあるいはランダムなステントのガス押し退けに大きく影響される。代わりにステントがしっかりと保持される場合には、ステントがノズルに近接して配置され、溶媒が更に急速に除去されてもよい(そのため、ガス乾燥効率が向上する)。しかしながら、この場合、例えばステントとマンドレル表面との間にブリッジの形状の許容できないコーティング欠陥が生じ始める。したがって、最適な距離は、少なくとも2つの変数、ガスエキスパンダのサイズ、および、ステントマンドレルおよびステントが出口ガスによって引き起こされるランダムな、あるいは周期的な負荷を支えることができる程度を制約することによって見出される。パラメータ(3)は熱伝達環境に関する。一実施形態では、100〜120℃の範囲内において100リットル/分の速度で出る窒素ガスが、2009年9月4日に出願された米国特許出願第12/554,671号明細書に記載されるマンドレル(例えば、ここでは遊嵌接触型または瞬間接触型のマンドレル支持体と称される、
図4または
図7に示される装置およびこれらの図を参照する説明、マンドレルが回転されるときにステントとマンドレルとの間に揺れあるいは相対的な動きを意図的に引き起こすマンドレル支持体)、および、口部内に1直径の距離を生み出すように
図6に描かれるエキスパンダ寸法と組み合わせて選択される。他の実施形態において、ステントは、口部内で少なくとも1直径であってもよく、あるいは、口部からエキスパンダ高さの25%であってもよい。また、ガスエキスパンダ側が断熱PEEK材料から形成される。
【0044】
[0044]本発明の他の態様によれば、流入するガス流を供給する入口導管と、乾燥ガスをもたらす出口領域とを有するドライヤのステップを備える、ステントを乾燥させる方法は、ノズル出口チャンネルの配列の近傍にステントを配置するステップと、ステントがエキスパンダの口部とノズル出口チャンネルの配列との間にあるようにステントをガスエキスパンダ内に配置するステップとを備え、ドライヤは、ノズル出口チャンネルの直線配列から略均一な乾燥空気塊をもたらすようになっている。1つの特定の実施形態において、ステントは、ノズル出口チャンネルから最適な距離に配置され、最適な距離は、ステントのためのガスエキスパンダの選択された寸法の制約、出口ガスにおける熱損失率を含むガスの熱伝達特性、および、ステントが緩く嵌合するマンドレル支持体によって支持されているときにステントの許容できない押し退け、あるいは動き、または、マンドレルにより回転されるときのステントの揺動を避けるためのノズル出口からの最小距離にしたがって選択される。一実施形態において、距離は、4D×4Dの寸法を有してPEEK材料から形成されるガスエキスパンダに関しては口部内の1ステント直径であり、流量は100〜120℃で100リットル/分であり、また、マンドレルは、ステントが回転するときに一定でない接触点でステントを支持する、すなわち、揺動ステント型マンドレルである。
【0045】
スプレーノズル
[0045]より一貫した予測可能な薬剤放出プロファイルをステントの長さにわたって得ることを目的として、また、効率を向上させて資源の浪費を少なくするために、薬剤高分子溶媒の一貫したパターンを堆積させることができるスプレーノズルの能力も考慮された。本発明の他の態様は、前述の必要性にしたがった噴霧ステップ中のスプレーパターンの均一性または一貫性に関する。本発明のこの態様によれば、スプレーノズルを形成する方法が存在し、該方法は、第1の硬度を有する第1の金属からハウジングを形成するステップであって、ハウジングが、噴霧ガスの通過のための第1の孔と、カニューレを受けるための第2の孔とを含み、第2の孔が第1および第2の直径を有し、第1の直径がその上端に出っ張りを形成する、ステップと、第2の金属からカニューレを形成するステップであって、第2の金属が第1の硬度よりも小さい第2の硬度を有し、カニューレが、内部に配置される流体における圧力降下を減少させるように流体を受けるためのテーパ状の孔と、段付きの外径と、研磨された下端とを含む、ステップと、ノズルオリフィス付近の内外面に引っ掻き部または摩減部を欠く研磨されたノズルキャップを形成するステップと、段付きの外径がハウジングの孔の出っ張りに当接して配置されるように第2の孔にカニューレを圧入するステップと、オリフィスがカニューレの出口開口と位置合わせされるようにノズル出口にノズルを取り付けるステップとを備える。
【0046】
[0046]本発明の他の態様によれば、薬剤高分子溶液でステントをコーティングするための方法は、スプレーノズルを使用してステントに噴霧するステップであって、ノズルオリフィスと流体連通する第1の孔を通じて第1の定量の噴霧ガスを供給するとともに、ノズルオリフィスと流体連通する第2の孔を通じて薬剤高分子溶媒流体を供給するステップを含む、ステップと、ステントに噴霧した後、ステントを乾燥するためのドライヤへステントを移動させるステップと、ステントが乾燥されている間、第1の定量とは異なる第2の定量のガスをノズルへ加えるステップとを備え、第2の定量は、ステントが乾燥されているときにノズルオリフィスよりも基端側での薬剤高分子溶媒の目詰まり、あるいは蓄積の事例を減少させるようになっている。ステントが乾燥されている間、第1の定量とは異なる第2の定量のガスをノズルへ加えるステップは、ノズルの外部にノズルに隣接してノズルの方へ向けて第2の加圧ガス源を配置するステップと、第2の加圧ガス源によって第3の定量のガスがノズルに加えられる間に第2の定量のガスをノズルに対して加えるステップとを更に含んでもよい。ノズルの外部にノズルに隣接してノズルの方へ向けて第2の加圧ガス源を配置するステップは、ガス流をノズルの下面に対して20〜40°の角度でノズルのオリフィスの方へ向けるように方向付けられるオリフィスを有する第2のノズルを配置するステップを更に含んでもよい。ステントに塗布されるコーティングは、約93%の溶媒と、約7%の薬剤高分子溶液との溶液であってもよい。溶媒がDMAcであってもよい。
【0047】
参照により本願への組み込み
[0047]本明細書中で言及された全ての刊行物および特許出願は、参照することにより、それぞれの個々の刊行物または特許出願が参照によって本願に組み入れられるように具体的に且つ個別に示唆されたかのように、また、それぞれの前記個々の刊行物または特許出願が任意の図を本明細書中に含んで十分に記載されたかのように同じ程度まで本願に組み入れられる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
[0062]本発明の好ましい実施によれば、スプレー・ヒートノズルは、ステントの表面上に薬剤溶出コーティングを形成するために使用される。ステントは、バルーン拡張型ステントにおいてはバルーンカテーテルによって、および自己拡張型ステントにおいては外側ステント拘束シースを有するカテーテルによって患者の脈管構造内または他の体腔および内腔に送出されて埋め込まれる血管内プロテーゼである。ステントの構造は、一般に、足場と、当分野ではしばしば支柱またはバーアームと称される構造要素を相互接続するパターンまたは網目を含む基材またはベース材料とからなる。ステントは、一般に、径方向剛性を有する複数の円筒要素と、円筒要素を接続する支柱とを有する。長手方向では、ステントは、主に、長手方向の可撓性をステントに与える細長い梁状の結合要素の曲げ剛性のみによって支持される。ステントおよびカテーテルなどの医療デバイスの構造および表面トポロジーの例は、米国特許第4,733,665号明細書、第4,800,882号明細書、第4,886,062号明細書、第5,514,154号明細書、第5,569,295号明細書、第5,507,768号明細書に開示されている。
【0050】
[0063]前述したように、本開示に係るドライヤの結果として簡略化され、あるいは改善されたステントコーティングプロセスの一態様は、溶媒除去速度およびステントの長さにわたる溶媒除去速度の変化をより一貫して予測できることである。塗布されたコーティング中の溶媒の存在、または、最終重量を決定するときに残っている溶媒の存在の予測可能性を高めると、薬剤における予測できる放出速度を塗布コーティングの形状で医療デバイスにおいて与えることができる能力および/または効率が高まる。
【0051】
[0064]また、ステントに対する高分子薬剤の設計装填または所望の装填は測定された重量から決定されるため、言うまでもなく、ステントの長さにわたって残存する溶媒の量および分布を決定できるように正確で信頼できる再現可能なプロセスである必要がある。これは、より揮発性のある溶媒アセトンとは対照的に、より揮発性が低い溶媒、例えばDMAcが使用されるときに特に当てはまる。沸点が高い溶媒においては乾燥後に多くの割合の溶媒が残存することが予期されるため、コーティングは、ステント表面上にわたるおよび/またはコーティング厚さにわたる溶媒の存在の変化の影響を更に受けやすい。
【0052】
[0065]本開示は、溶媒中に溶解される薬剤高分子によって塗布される薬剤溶出コーティングに関連する当分野における前述した欠点および制限を扱うのに適した噴霧/乾燥要素の例を提供する。
【0053】
ドライヤアセンブリ
[0066]
図1は、本開示の一態様に係るドライヤ1の斜視図を示している。ドライヤ1は、ステントコーティングプロセスで使用される構成要素として含まれてもよい。プロセスを実施するそのようなステントコーティングステーションは、噴霧器、ドライヤ1、および、噴霧ステップおよび乾燥ステップのそれぞれの間で噴霧器およびドライヤをステント上に選択的に配置するためのアクチュエータを含んでもよい。本開示の原理を採用してもよいステントコーティングシステムの例は米国特許出願第12/497,133号明細書、第12/027,947号明細書、および、第11/764,006号明細書に記載されている。これらの例において、記載されるドライヤおよびスプレーノズルは、言うまでもなく、本開示に係るドライヤおよびスプレーノズルを使用してもよい。
【0054】
[0067]コーティングプロセスは、コーティング数、すなわち、乾燥ステップ間での噴霧器による通過数、噴霧および乾燥のサイクル数などのパラメータを調整するように事前にプログラムされ、あるいはオンザフライでプログラミングされてもよい。これらのパラメータおよび関連するパラメータは、使用される高分子薬剤または溶剤、コーティングされるステントまたは医療デバイスのタイプ、例えば表面形状などによって決定されてもよい。特定の実施形態において、ステントをコーティングするためのプロトコルは、解析的に決定される最終コーティング重量に基づく所定数のコーティングサイクル、すなわち、噴霧およびその後の乾燥によって、あるいは、目標コーティング重量に達するために必要とされるサイクルの数を決定するためのステントの断続的な計量によって決定される。
【0055】
[0068]ステントは、溶媒中に溶解された薬剤高分子、例えばDMAcを噴霧器がステントの表面に塗布するときにマンドレルに保持されて回転されてもよい。噴霧器によるステントの本体上の1回、2回、あるいは、それ以上の通過の後、ドライヤ1がステント上の所定位置へ移動される。プロセスのこの段階で、ノズル出口3がステントの真下に配置され(あるいは、ステントがノズル出口3よりも上側の乾燥位置へ移動され)、それにより、ステントの長さが、ノズル3上で長手方向に、すなわち、
図1で長さLを測定する方向と平行に延びる。所定位置にくると、コーティングされたステント表面からの溶媒の蒸発即ちボイルオフを加速させるために所定量の加熱ガスがノズル出口3から出る。好ましい実施形態において、この噴霧器-ドライヤコーティングプロセスは、薬剤高分子および残存溶媒の最終コーティング重量が測定されるまで繰り返される。好ましい実施形態のそれぞれの乾燥段階中、ガスは、100mm、150mm、および、200mmステントの表面にわたって均一な熱伝達をもたらす。最終コーティング重量に達した後、ステントは、更なる溶媒を除去するために長期間にわたって炉内に配置されてもよい。
【0056】
[0069]図示のように、ドライヤの出口ノズル3は、乾燥のために位置決めされるコーティングされたステントの長さに対応してもよい直線長さLにわたって加熱ガス塊(
図1では、ノズル出口3から上方へ延びるベクトルM
gの配列によって表わされる)を生み出すように構成される。
図2Aの断面2B−2Bに沿うドライヤ1の部分側断面図である
図2Bは、ノズル出口3と対向して位置するステントSを示している。乾燥ガス、例えば加熱窒素が、ヒータアセンブリ2に接続されるガス供給源2bを通じて供給される。ヒータアセンブリ2は、ガス流がプレナム10の方へ移動する(
図2BにベクトルV
∞により表わされる)ときにガス流に晒される加熱コイル(図示せず)を有する管状の導管を含む。コイルは、電力接続部2aを介して電源に接続される。
【0057】
[0070] ヒータアセンブリ2の長さにわたって移動するガスは所望の温度まで加熱され、また、ガス圧は公知である。したがって、プレナム10に入るガスは所定の速度および温度を有する(ガス温度を測定するために入口の近傍に熱電対が配置されてもよい)。ガスは、ドライヤ1の入口12と出口3との間で非圧縮性流体として処理されてもよい。したがって、任意の断面を通過するガスの速度は、ドライヤの壁を通じた大きな熱損失がないと仮定すると、断面のサイズに反比例すると見なされてもよい(質量保存)。好ましい実施形態において、ドライヤのプレナム、拡散器、および、ノズルの部分は、ドライヤの内部と外部環境との間での熱の流れを最小限に抑えるためにPEEKプラスチックから形成される。PEEKは、200℃までの最大温度において使用されてもよい。
【0058】
[0071]
図4は、ドライヤ1の構成部品、すなわち、プレナム10、拡散プレート50、および、ノズル30を示すドライヤ1の後方から見た分解図である。
図3Aは、これらの同じ構成要素を示すドライヤ1の前方から見た分解図である。噴霧器-ドライヤアセンブリ、例えば
図7Bのスプレー-ドライヤアセンブリ350の支持体に対してドライヤ1を装着するために装着ブロック11a、11bが使用され、また、カップリングまたはねじ付きスリーブ15がヒータアセンブリ2をドライヤ1の入口12に接続する。
【0059】
[0072]プレナム10とノズル30との間に配置される拡散器50は、流入ガスを調整するための2つの別個の機能的に異なるチャンバ間の仕切りとして作用する。これらのチャンバは、流れを調整するための、プレナム容積、空間、または、チャンバ14、および、ノズル容積、空間、または、チャンバ34である。構成要素のアセンブリは、プレナム10部分と拡散器50部分とが互いにプレナムチャンバ14を形成し、且つノズル30部分と拡散器50部分とが互いにドライヤ1のためのノズルチャンバ34を形成すると見なされてもよい。拡散器50は、ガスが最初にプレナムチャンバ14によって調整(後述する)された後にプレナムチャンバ14からノズルチャンバ34へガスが通過できるように、同じ直径を有するとともに長さにわたって均等に離間される(
図4では7つ)開口52を含む。その後、ガス塊M
gがノズルチャンバ34内で数秒間調整された後、該ガスはノズルチャンバ34から出てノズル出口3から抜け出る。
【0060】
[0073]
図2B、
図4、
図4A、
図4Bを参照して、プレナムチャンバ14の特徴について説明する。プレナムチャンバ14は、プレナム10のキャビティ16と拡散プレート50の後面56とによって略T形状に形成される。このチャンバは、上流側の円筒状の入口通路12(ヒータアセンブリ12からガスが流入する)およびプレナムチャンバ14とノズルチャンバ34との間に流体通路を形成する下流側の開口52の配列を除いてシールされる。
【0061】
[0074]
図4Aの左から右に延びて好ましくは長さL(
図1も参照)を有する領域により形成される上部16bは、開口52の配列を有する拡散プレート56の部分56bと向かい合う。入口12を含む領域により形成される下部16aは、ノズル34チャンバへの開口または穴を欠く拡散器の部分56aと向かい合う。したがって、ガスが円筒状の開口12からプレナムチャンバ14の下部に入ると、ガスが直ちに減速されて、ガス圧が増大する。これにより、ガスがプレナムチャンバ14の幅広い空間内に上方へ押し進められる。この圧力下で上部16b内に蓄積されたガスは、その後、出口ノズル3とほぼ同じ長さLにわたって配置されるがノズル3の出口40よりも大きい開放部(または、全流束面積)を有する開口52の配列を介してプレナムチャンバ14から出てノズルチャンバ34に入る。
【0062】
[0075]一実施形態において、開口を通じたガス流における全流束面積は、ノズル出口3における0.0864平方インチと比べて、約0.344平方インチである。入口における全流束面積は約0.196平方インチである。入口と拡散器との全流束面積の比率は、約1:1.75であってもよく、あるいは、約1.5:1〜2:1であってもよい。拡散器と出口との全流束面積の比率は約4:1であってもよい。一実施形態において、出口の全流束面積(E)と拡散器の全流束面積(D)と入口の全流束面積(I)との比率、すなわち、量E:D:Iは、約1:4:2〜1:4:2.5である。他の実施形態では、拡散器の全流束面積が入口の全流束面積よりも大きく、また、入口の全流束面積がノズル出口チャンネルの全流束面積よりも大きい。
【0063】
[0076]
図2B、
図3、
図3A、
図4を参照して、ノズルチャンバ34の特徴について説明する。
図3および
図3Aにおいて最も良く分かるように、チャンバ34は、ノズル30の表面35、45が拡散器50の面と当接する(
図2B)ように拡散器50の前面とノズル30とを向かい合わせることによって形成される。拡散器30内には、表面35、45によって境界付けられるキャビティ36が形成される。上端(ノズル出口3の近傍)では、ノズル出口チャンネル40の直線配列がキャビティ36の長さLにわたって長方形の切り欠き42を形成する。キャビティ36が拡散器50の平坦な対向する面と向かい合わされると、チャンネル40は、乱流が少ない流れパターンと、長さLに沿ってノズル出口3を通じてノズルチャンネル34から流れ出るより均一なガス流とをもたらす長方形の通路の配列を与える。
【0064】
[0077]
図2B、
図3、
図3Aを参照すると、チャンバ34の下端には、比較的幅広いベース部が存在するとともに、その後にテーパ部分が続いている。チャンバは、テーパ部分の上端にその最も狭いポイントを有しており、このポイントは、ノズル出口3での乱流、したがってノイズを減少させるために下側テーパ端43が形成される場所である(以下で更に詳しく説明する)。したがって、チャンバ34は、開口52を通じた平均的なガス流方向に対して直角で
図2Bの上方へ延びる収束チャンネルとして構成される。すなわち、ガス流は、それがノズルチャンバ34に達すると90°上方へ曲がる。その結果、圧力は、チャンバ34の下部で増大した後、圧力が大気圧へ急に減少するノズル出口3からガスが出るまで(断面が狭くなるにつれて)徐々に減少する。
【0065】
[0078]
図3Bを参照すると、各チャンネル45の下端には、合流ポイントを形成する傾斜面が存在する。テーパ状端部43を有し並んで配置されるチャンネル40は、ガス流がチャンバ34の下部から上方へ移動するための収束チャンネルを形成する。出口3に通じるテーパ状端部43あるいは収束チャンネルを形成することにより、出口で流れが層流になりやすいことが分かった。また、出口40から発散する振動ガス流によって恐らく引き起こされる振動は、チャンネル40の端部がテーパ状になっている場合にかなり減少された。その結果、抜け出るガス塊M
gにより引き起こされる振動音響ノイズがかなり減少した。これにより、スプレーステーションの作業者が作業中に直面するノイズが減少した。
【0066】
[0079]好ましい実施形態において、出力長さ(L)、すなわち、出口3のチャンネル開口40の配列の長さと、入口12の入力直径(D)と、プレナムチャンバ14の下面から出口3までの内部空間の高さ(H)と、
図2Bにおけるノズルチャンバ34の最も左側の壁からプレナムチャンバ14の最も右側の壁までの奥行き(2R)との比率、すなわち、比率L:D:H:2Rは、約1:(1/10):(1/3):(1/8)である。したがって、100mmの長さ(L)に関しては、ガス調整チャンバの奥行きが約10mmであり、ガス調整チャンバの高さが約33mmであり、入口の直径が約10mmである。
【0067】
[0080]200mmの長さを有するステントを乾燥するように構成されるドライヤ1の一実施形態によれば、ノズル出口の長さは、ステントの端部がノズルの端部で外気による影響または流れの変化、いわゆる末端効果に晒されないようにするために約250mmであることが好ましい。以下で詳しく説明するように、これらの値は、エッジ近傍での一貫性のない、あるいは不規則な溶媒除去比率を生み出さないステント長さに対するノズル出口の長さを示す結果から得られた。この最小長さの検証は、試験(放出率に対する残存溶媒の影響の高感度性が懸案事項でなかった場合には、無論、ガス資源を節約して乾燥効率を高めるためにノズルガス出口をステント長さに更に近づけることが好まれる)によってのみ決定された。幾つかの実施形態では、ノズルの長さがドライヤに適する最も長いステント長さよりも約25%幅広くてもよく、それにより、末端効果を無視できる。他の実施形態では、ノズルの全長がドライヤに適する最も長いステントの全長の1.5倍であってもよく、それにより、末端効果、すなわち、溶媒不規則性への影響、したがって放出速度への影響を無視できる。
【0068】
[0081]好ましい実施形態によれば、ドライヤ流量設定は、標準的な100リットル/分ガス流、および、約100〜120℃の温度設定である。
【0069】
閉ループ制御
[0082]
図1のヒータアセンブリ2を通じたガス流量は、市販のマスフローレギュレータ(図示せず)によって監視され/制御されてもよい。例えば、そのようなマスフローレギュレータは、所望の流量を生み出すためにガス供給ライン2bをガス源に結合する調整可能なバルブを作動させるために使用されてもよい。適したマスフローレギュレータの一例は、Aalborg GFCSシリーズのプログラマブルマスフローレギュレータである。本開示の態様と共に使用するのに適したマスフローレギュレータおよび関連する制御システムの使用は、米国特許出願第12/540,302号明細書に記載されている。
【0070】
[0083]コーティングプロセス中、ドライヤは、ステントがコーティングされているときは使用されない。ドライヤが停止され、あるいは流量減少される場合には、ドライヤ1のプレナム10への入口のガスの温度が低下する。ステントが乾燥のためにノズル出口3よりも上側の位置へ移動されて、バルブが流量を増大するために開放される場合には、過渡的な流れの期間が存在する。過渡的なガス流による溶媒除去の期間を回避することが望ましい。これは、過渡的な流れによる溶媒除去の速度または量を予測することが困難となり得るからである。したがって、ステントは、定常流れ状態中にのみ乾燥されるのが好ましい。
【0071】
[0084]代わりにドライヤでのガス流が一定の速度に維持される場合には、温度が維持されてもよい。しかしながら、これはガス資源を浪費する。ドライヤが使用されていないときにガス温度を一定の値に保持しつつガス流量を減少できれば望ましい。
【0072】
[0085]この必要性を満たすため、本開示に係るステントドライヤシステムで閉ループ制御が実施され、それにより、可変流量でガス温度を維持できるようにするのが好ましい。
図7Aを参照すると、この閉ループ制御の概略が示されている。コントローラ300は、プレナムの入口の入力温度を熱電対302から連続的に受けるとともに、プレナムの入口の上流側のガス流量を流量センサ304から連続的に受ける。コントローラ300は、ドライヤが使用されていないときにガス流量を減少させるとともに、ステントがいつでもノズル出口3よりも上側の位置へ移動され得る状態にあるときにガス流量を増大させるようにプログラミングされてもよい。
【0073】
[0086]調整可能バルブ308を開閉することにより流量が調整されると、コントローラは、熱電対302で受けられる入力から温度の変化を検出し、検出した時点で、実際の流量にかかわらず温度が一定のままとなるように電力用の制御器306に作用することにより加熱コイルへ供給される電力を増大/減少させる。このように、本開示のこの態様によれば、ドライヤシステムは、コーティングプロセス中は可変流量で動作することができる一方で、乾燥段階中はほぼ定常のガス流を維持することができる。すなわち、定常状態に達するまでの過渡的な流れ状態の期間を最小限に抑えることができる。これにより、乾燥中の溶媒除去の予測可能性が向上され/維持され、ダウンタイムが最小限に抑えられるとともに、ガス資源を節約することができる。コーティングされたステントは、ほぼ即座に乾燥ステップに晒され、溶媒除去の予測を向上させることができる方法で乾燥される。前述したように、これは、薬剤溶出ステントにおける予測可能な放出速度をもたらすプロセスにおいて、また、所望の薬剤高分子コーティング重量に達したかどうかの正確な評価において重大なステップである。
【0074】
[0087]前述の閉ループ制御は、米国特許出願第12/540,302号明細書に記載されるタイプのスプレー-ドライヤアセンブリに組み入れられてもよい。
図7Bはこの出願の
図3Aの複製である。このアセンブリ350では、マンドレル(図示せず)上の一対のステントが、スプレーアイソレータ筐体352の左右側にそれぞれ配置される右側スピンドルアセンブリ360(スピンドル362)によって支持される。この構成によれば、スプレーアイソレータ筐体352の一方側で支持される一対のステントが乾燥され、その間に、スプレーチャンバ352の反対側で支持される一対のステントが噴霧される。スピンドルアセンブリ360は乾燥中および噴霧中にステントを回転させる。スプレーノズル400がチャンバ内に配置されて示されている。マンドレル上のステントは、スプレーアイソレータ筐体352へ移動される際またはスプレーアイソレータ筐体352から移動される際に開口364に通される。左右一対のドライヤノズル(それぞれがドライヤ1のノズル30である)が、
図7Bの左側および右側のそれぞれのスピンドルアセンブリ360とスプレーアイソレータ筐体352との間に配置されて示されている(この図では、ノズル30のこれらのそれぞれの左右対のうちの一方だけが見える)。ステントは領域363で乾燥される。
【0075】
[0088]一対の左右のステントのうちの一方は、以下のステップにしたがってコントローラ300アセンブリ350を使用して噴霧されて乾燥されてもよい。最初に、ステントが噴霧のためにスプレーアイソレータ筐体352内に配置される。噴霧中または噴霧前に、ノズル30へのガス流がアイドル設定にセットされる。この場合、コントローラは、必要に応じて(熱電対302から受けられる入力に基づいて)、ガス流の温度が定常状態に達するまで加熱コイルへの電力を増大させる。スピンドルアセンブリ360に装着されるトランスデューサ354は、ノズルよりも上側の出口温度を測定するために使用されてもよい。
【0076】
[0089]ノズル400を使用したステントに対するコーティング材料の塗布が完了した後または完了直前に、コントローラ300は、乾燥ガス流量に合わせてガス流温度を高める。ガス流量が増大されている間、コントローラ300は、熱電対302から受けられる入力によってプレナムの入口12の温度を監視し、また、出ていくガス流の温度を維持するために必要に応じて加熱コイルへの電力が減少される。ガス流が作動流量および温度に達したら、ステントが乾燥領域363へ移動される。ステントは、スピンドルアセンブリ360に組み込まれる回転機構によって回転される。乾燥が完了した後、ガス流が再びアイドル位置へ戻され、同じガス流温度を維持するために加熱コイルへの電力が必要に応じて(熱電対302から受けられる入力に基づいて)増大される。プロセスは、所望のコーティング重量が得られるまで繰り返される。
【0077】
リフレクタおよびエキスパンダの実施形態
[0090]本開示の他の態様によれば、ドライヤは、外気とドライヤから出てステントを取り囲むガスとの間の相互作用を制御する、あるいはもたらすための構造をドライヤのノズル出口3の外部に含む。言うまでもなく、ガスが高速でノズルから出ると、対応する圧力降下が存在し、それにより、外気がノズル出口およびステント表面の方へ引き込まれて高温ガスと混合する。その結果、冷たい方の外気が、ノズルから出る高温ガスから熱を奪って、溶媒を除去する高温ガスの効率を低下させる。
【0078】
[0091]一実施形態において、ドライヤは、ステント表面から溶媒を蒸発させ、あるいは気化させる高温ガスの効率を高めるためにステントSを通り過ぎるガスを元のステントの方へ変向させ、あるいは合焦させるリフレクタと組み合わせて構成される。
図5は、例えば放物状または半円状の湾曲リフレクタ120とドライヤ1との間に配置されるステントSと、反射面122によって反射されるステント周囲の高温ガスの循環とを示している。リフレクタ120とステントSとの間の領域ではガス圧が増大される。その結果、冷たい外気は、高温ガスと殆ど混合せず、ステントを通り過ぎるガスから熱を殆ど奪わない。
【0079】
[0092]他の実施形態では、
図6に描かれるようにドライヤから出る高温ガスを冷たい外気から遮断する、あるいは分離するためにガスエキスパンダ140がノズル出口を覆って取り付けられる。ガスは、ノズルから出ると、それがエキスパンダ140によって形成される拡張空間を通じて移動するにつれて広がる。これがステントを取り囲むガスの圧力を増大させ、それにより、ガスがステント表面に達する前に熱損失を殆ど引き起こさない。また、より高い圧力は、ステント近傍のガスの均一性を維持する役目も果たす。これが、ステント表面から離れた領域に形成する外気と高温ガスとの乱流混合によって
図6に描かれている。ステントは、エキスパンダ140の近傍に、一部がエキスパンダ140の内部に、あるいは、完全にエキスパンダ140の内部に配置されてもよい。
【0080】
[0093]幾つかの実施形態では、
図6に描かれるように、ガスエキスパンダがステントの直径に基づいて寸法付けられてもよい。ステントの直径Dが示されている。エキスパンダ断面の高さおよび口部の幅はいずれも、4D、あるいは、ステント直径の約4倍である。また、ステントは、図示のように、約1Dだけ拡張チャンバ内に引き込まれている。他の実施形態では、口部が4D未満であってもよく、一方、高さは同じである。一実施形態では、口部が2Dであり、一方、高さが4Dである。この実施形態に係る更に狭い口部は、大量コーティング/乾燥プロセス中のエキスパンダ内の配置の実施を容易にしつつ、あるいは、更に狭い口部に起因する他の欠点を伴うことなく、ステント周囲のガス温度および速度を更に均一にすると考えられるが、言うまでもなく、口部直径は4Dであることが好ましい。
【0081】
[0094]幾つかの実施形態では、ステントがノズル出口3の更に近くに、あるいは更に遠くに配置されてもよい。ステントがノズル出口3に非常に近接して配置される場合には、ステントの前縁と出口との間の距離が不均一な流れ状態をもたらし、それにより、ステントを押し退ける可能性がある。他の実施形態において、ステントは、ノズルから3Dよりも遠く離れてもよいが、口部内である。口部の外側に配置されるステントは、ガスエキスパンダによって与えられる環境から十分な利益を享受しない場合がある。それらのケースでは、外気がステント表面付近の速度および温度に支障を来す場合があり、それにより、乾燥効率の更に予測できない結果または損失がもたらされる。ステントが口部内に1Dだけ入ってノズルから3Dの距離に配置されるとともにガスエキスパンダの口部および高さがそれぞれ4Dおよび4Dであるときに最適な効率および均一性を達成できると考えられる。幾つかの実施形態では、ステントがノズルから口部距離の75%に配置され、高さに対する幅の比率が1:1である。この条件により、溶媒除去の均一性が維持され、あるいは確かに向上されるとともに、溶媒除去の効率が向上されることが分かった。また、前述したように、幾つかの実施形態において、最適な距離は、3つの変量、すなわち、(1)エキスパンダ構造、(2)ガスおよび周囲環境と関連付けられる熱伝達、(3)使用されるステント支持体のタイプによって制約される最適化の解決策から見出されてもよい。
【0082】
スプレーノズル
[0095]本開示の他の態様によれば、スプレーノズルは、目詰まりを減らして溶媒中に溶解される薬剤高分子の濃度を高めるように製造される。
【0083】
[0096]
図9を参照すると、従来技術のスプレーノズル200が示されている。ノズル200は、流体の噴霧溶液の円錐状のスプレーパターンを生み出すために使用されてもよい噴霧スプレーノズルである。ノズルは、噴霧スプレーパターンを生み出すためにパルス供給と共に一定の気流を使用してもよい。この使用に適する従来技術のノズルは、10 Fairbanks Rd.North Springfield、VT 05150 USAにあるIVEK社(登録商標)から入手できるSonicair(登録商標)ノズルである。
【0084】
[0097]ノズル200は、ノズル先端203へ流体を運ぶカニューレ220を受けるように形成される第1の孔と、先端203で流体を噴霧するために使用される加圧ガスのための導管を形成する第3および第4の孔210、214とを有するハウジング201を含む。液体供給ライン220Aおよびガス供給ライン210Aを接続するためにねじが反対側の端部に設けられている。
【0085】
[0098]出口203には、スプレーパターンの所望の液滴サイズにしたがって寸法付けられる中心に配置されるオリフィスを有するノズルキャップ213が、カニューレ220の出口穴202を覆って配置され、この出口穴202は、加圧ガス導管210、214と流体連通するチャンバ215と流体連通している。
【0086】
[0099]ノズル200を使用して塗布される薬剤高分子コーティングがスプレーパターンの許容できない変化をもたらすとともに目詰まりを頻繁に引き起こすことが見い出された。これらの問題を排除できることを期待して、特定の改良(後述する)がノズルに対してなされた。
【0087】
[00100]驚くべきことに、また、予想外に、これらの改良が実施されると、スプレーパターンにかなりの改善が生じ、目詰まりが頻繁に生じなくなることが分かった。
【0088】
[00101]ノズルを改良することによってコーティングプロセスを全体的にかなり改善できることが見出されると、ノズルオリフィスよりも基端側の内面および外面を研磨することによって既存の従来技術のノズルを改良しようとする試みがなされた。特定の高分子-薬剤-溶媒溶液、例えば93%溶媒および7%薬剤高分子と所望の円錐スプレーパターンとを使用する試験中、既存の従来技術のノズルが幾つかの欠点を含むことが見出された。要するに、本発明の一態様にしたがった薬剤高分子コーティングの特定の塗布において、その例が本明細書中で与えられる市販のノズルは、医療デバイス、特にステントに対して薬剤溶出コーティングを塗布するために正確で一貫性のあるスプレーパターンを生み出すようになっているが、前述したような本開示の目的を達成するために必要とされるコーティング重量および分布における所要の許容範囲を有する薬剤溶出コーティングのための要件には及ばないことが見出された。
【0089】
[00102]一貫性のない結果をもたらすことが分かったノズルの2つの態様は、EDMプロセスによって製造されたものであり、製造中の部品公差に起因するノズル間の変動が非常に大きい。例えばノズルオリフィスよりも基端側の内側および外側の領域の研磨は、それだけで問題を解決するのに十分ではない。異なる構造の噴霧器に切り換えても十分ではない。例えば、超音波型のノズルが検査された。この代替物は、超音波型ノズルを使用して噴霧されるステント上に不均一で一貫性がないコーティングが見出されたため、結果を改善しなかった。
【0090】
[00103]
図8Aは、本開示に係る改良されたスプレーノズル400の斜視図を示している。
図8Cは、このノズルの側面図を示し、
図8Bは、
図8Cの断面8B−8Bに沿うノズル400の断面図を示している。ノズルはハウジング401を有し、該ハウジングは、改変されたカニューレ420を受けるための改変された孔と、加圧空気の通過のための孔410、412と、出口端403とを有する。ノズルキャップ413がノズル端403に配置される。噴霧される薬剤-高分子-溶媒溶液が改変されたオリフィス401aから出る。
【0091】
[00104]
図9の従来技術のノズルとは異なる
図8のノズルの重要な特徴の一部は、流体表面の仕上げ、材料、オリフィス穴の平滑度および一貫性、および、ノズル通路で強制される厳しい公差である。
【0092】
[00105]第1の改良は異なる材料の使用にあった。ハウジング401は17−4 PH900調質鋼から形成され、これに対し、カニューレ420は316ステンレス鋼から形成される。一方、ノズル200は全体にわたって316ステンレス鋼から形成される。異なる硬度を有する異なる材料をノズル400に使用することにより、カニューレ420とハウジング401との間の圧入の制御が更に厳しくなる。また、異なる材料に起因して、すなわち、316鋼は、17−4 PH900調質鋼よりも軟らかい金属であるため、ハウジング401とカニューレ420との間の摩耗も排除される。
【0093】
[00106]第2の改良は、端部キャップのオリフィスの形成にあった。ノズル200の端部キャップ213は、テーパ状のオリフィスの内縁および外縁の標準的なエッジ破断によって形成される。これは、一貫性のないスプレーパターン(EDM製造プロセスの結果)の一因となる機械加工マークおよび変化をオリフィスの周囲にもたらした。その代わり、ノズル400のための端部キャップ413がより正確な公差制御により形成された。また、オリフィスを通じた噴霧流体の通過のためのより均一な表面をもたらすためにオリフィスの内側および外側の表面が研磨された(オリフィスと対向するカニューレの端部も研磨された)。ノズルキャップ413におけるこれらの改良は、目詰まりの事例を減らし、ノズル200の端部キャップ213と比べて更に均一なスプレーパターンをもたらした。
【0094】
[00107]第3の改良はカニューレになされた。第1に、カニューレは、ハウジングの受け入れ孔に形成される出っ張り420Aに対する正確な配置のために段付きの外径を有して形成された。段付き直径の孔との嵌合により、流体供給取付具が接続部420Aに固定される際にカニューレ420が端部キャップ413内に押し込まれることも防止される。これに対し、カニューレ220は、一定の直径の円筒体として形成され、対応する一定の直径の孔内に受けられる。この組み付けは、孔内でのカニューレ220の配置を不正確にしてあまり緊密な嵌合をもたらさない。
【0095】
[00108]第2に、カニューレ420の孔は、大径孔から小径孔へ段階的に小さく形成され、そのため、カニューレ420の長さに沿う圧力降下が減少する。これに対し、ノズル200のカニューレ220は一定の孔を有する。圧力降下を減らすことにより、所望の圧力での流体のより一貫性のある供給がなされ、そのため、より一貫性のあるスプレーパターンに寄与する。
【0096】
[00109]ノズル性能における第4の改良は、特に噴霧間隔同士の間での目詰まり、すなわち、ステントがドライヤへ移動される際の目詰まりの事例を減らす方法に関する。ノズルのための蓄積防止方法は、そのノズルがノズルキャップ413の下面の方へ該下面に対して約20〜40°の角度で方向付けられる第2のノズルを含む。このノズルは、それぞれの噴霧ステップ間でガス、例えば窒素ガスの定常流をオリフィス401aへ向けて供給する。ガスのこの定常流を印加することにより、ノズルがスプレーサイクル間で休止しているときに薬剤高分子溶液の蓄積物がスプレーノズルのオリフィスから強制的に吹き飛ばされる。この印加ガスと同時に、十分に高い圧力が噴霧ガス圧源によって維持される。これにより、第2のノズルの乾燥ガスに起因して、薬剤高分子溶液の任意の蓄積物がカニューレ422の孔内に吹き込まれることが防止されるはずである。一実施形態では、20〜40°で方向付けられる乾燥ガスが約1〜3秒間にわたって5〜20psiの出口圧で供給された。噴霧ガスの平衡圧力は、作動圧、例えばSonicair(登録商標)ノズルに関する推奨作動圧と同じであってもよい。本開示のこの態様によれば、ステント乾燥・噴霧プロセスは、スプレーノズルの乾燥ステップと噴霧ステップとを間欠的に含む。
【0097】
[00110]上記実施形態をステントに関連して説明してきたが、本発明をステント以外のデバイスに適用できることは言うまでもない。この発明が使用されるようになっていてもよい医療デバイスとしては、バルーン拡張型ステント、自己拡張型ステント、グラフト、ステント-グラフト、バルーン、および、カテーテルが挙げられる。
【0098】
[00111]本発明の特定の実施形態を図示して説明してきたが、当業者であれば明らかなように、本発明から逸脱することなく本発明の広範な態様で変更および修正を行なうことができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の思想および範囲内に入るそのような変更および修正の全てをそれらの範囲内に包含するものである。