【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題は、請求項1に記載のかご形回転子と、請求項7に記載の方法とによって解決される。本発明のさらなる形態は、それぞれの従属請求項において定義されている。
【0012】
本発明に従えば、電気モータのためのかご形回転子は、回転子シャフトであって、回転子シャフトの軸方向に、塊状回転子部分の円周を取り囲んで分散して延伸する複数の貫通路を備える、強磁性の材料から形成される塊状回転子部分を有する回転子シャフトと、複数の導電性の棒要素であって、それぞれ貫通路の1つに受容されており、その結果それぞれの棒要素が、回転子シャフトの軸方向に塊状回転子部分を貫いて延伸し、棒要素は、それぞれ1つの第1長手端部と、当該第1長手端部に背向する第2長手端部とを備える、複数の導電性の棒要素と、2つの導電性の端部要素であって、それらのうち第1端部要素が、棒要素の第1長手端部を電気的に互いに接合し、第2端部要素が、棒要素の第2長手端部を電気的に互いに接合しており、その結果棒要素と端部要素とによって、短絡されたかごが形成されている、2つの導電性の端部要素とを備える。
【0013】
本発明に係るかご形回転子は、棒要素および/あるいは塊状回転子部分の長さが変化した場合に、塊状回転子部分と、その貫通路に受容されているそれぞれの棒要素との間で、回転子シャフトの軸方向での相対的運動が可能となるように、それぞれの棒要素が貫通路に受容されていることで優れている。
【0014】
たとえば加熱に伴って棒要素および/あるいは塊状回転子部分の長さが変化した場合に、塊状回転子部分と棒要素との間で、回転子シャフトの軸方向での相対的運動が可能となることによって、塊状回転子部分ひいてはかご形回転子全体は、駆動中に電気モータで、従来のかご形回転子ほど大きく、あるいはまったく歪まないであろう。
【0015】
それによって、かご形回転子の寿命の短縮、ひいては当該かご形回転子が装備された電気モータの早期の故障をもたらしかねないアンバランスとひびとを回避することができる。
【0016】
好ましくは、塊状回転子部分は、回転子シャフトに一体的に成形されており、その結果回転子シャフトと塊状回転子部分とは、同じ材料から作られている。
【0017】
本発明の形態には、回転子シャフトと塊状回転子部分との間で力接続的および/あるいは形状接続的な接合が行われる必要がなく、これら2つは1つの部品から、たとえば回転によって製造可能であるという利点がある。これによって製造コストと、かご形回転子の考えられ得る問題点とが削減される。
【0018】
本発明に従えば、棒要素が一定の力を克服して、軸方向に、塊状回転子部分に対して相対的に移動可能なように、それぞれの棒要素は貫通路に受容されていてよい。棒要素を貫通路にそのように軸受けすることは、たとえば小さな力での締まり嵌め、中間嵌め、隙間嵌めによって、あるいは、棒要素を貫通路に隙間嵌めにおける力よりも小さな力で受容することによってさえも、実現されていてよい。
【0019】
好ましくは、それぞれの棒要素は、挟まれずに貫通路に受容されており、その結果、塊状回転子部分と、その貫通路に受容されているそれぞれの棒要素との間で、回転子シャフトの軸方向での阻害されない相対的運動が可能となる。好ましくは、それぞれの棒要素の外周とそれぞれの貫通路の内周との間に、隙間嵌めが形成されている。
【0020】
それによって、一方では棒要素が阻害されずに塊状回転子部分に対して相対的にずれ可能であり、他方では交換が必要ならば、容易かつ素早く交換可能である。
【0021】
たとえば非同期モータのような、本発明に係るかご形回転子を装備された電気モータの駆動時には、棒要素は回転数の上昇によって、そのそれぞれの貫通路の径方向外側の部分に対してますます強く圧迫され、その結果棒要素の振動は減少し、磁束が改善される。それによって塊状回転子部分と棒要素との加熱が、減少する。
【0022】
本発明の実施形態に従えば、各棒要素の第1長手端部と第2長手端部の少なくとも1つは、それぞれの棒要素および/あるいは塊状回転子部分の長さが変化した場合に、伝達されるべき電流のために寸法付けられる電気接合を保証しつつ、該当する長手端部と端部要素との間で、回転子シャフトの軸方向での相対的運動が可能となるように、付属する端部要素と接合されている。
【0023】
言い換えれば、一方では、棒要素が、かご形回転子の駆動時に意図せず貫通路から外れることがないように、かつ最大限伝達されるべき誘導電流(渦電流)が常に、この接合を介して伝達可能なように、たとえば挟まれて、あるいはたとえばネジと圧力バネとの組み合わせによって連結されて、該当する長手端部が端部要素に充分に堅固に保持されている。他方で、たとえば加熱に伴って棒要素および/あるいは塊状回転子部分の長さが変化した場合に、長さの変化を補償するために、該当する長手端部は、一定の力を克服して、軸方向に、端部要素に対して相対的に移動することが可能である。
【0024】
それによって、塊状回転子部分もしくはかご形回転子全体が歪むことが、確実に回避される。
【0025】
本発明に従えば、端部要素は、棒要素の長手端部を受容するために、盲凹部および/あるいは貫通凹部を備えてよい。盲凹部では、それぞれの盲凹部の底部とそれぞれの長手端部との間に、遊びが充分あることが保証されるべきであり、その結果棒要素の長手方向の膨張を受容することが可能である。
【0026】
本発明に従えば、両長手端部を、上記のように軸方向に移動可能に、両端部要素に受容することができる。
【0027】
本発明の実施形態に従えば、それぞれのずれ可能な長手端部とそれぞれの付属の端部要素との間に、中間嵌めが形成されている。
【0028】
中間嵌めは一方では、該当する長手端部が端部要素に充分に堅固に保持されていることを保証し、その結果棒要素が、かご形回転子の駆動時に意図せずそれぞれの貫通路から外れることがなく、かつ最大限伝達されるべき誘導電流(渦電流)が常に、この接合を介して伝達可能であり、他方では、たとえば加熱に伴って棒要素および/あるいは塊状回転子部分の長さが変化した場合に、該当する長手端部は、一定の力(ここでは、中間嵌めによって発生するクランプ力)を克服して、軸方向に、端部要素に対して相対的に移動することが可能であることを保証し、その結果長さの変化が補償される。
【0029】
本発明の実施形態に従えば、端部要素はそれぞれリング状に形成されており、各端部要素は、少なくとも2つの部品で形成されており、各端部要素の少なくとも2つの部品は、電気的に互いに接合されている。
【0030】
端部要素を複数部品、たとえば2つの部品あるいはまた3つの部品で実施することによって、その取り付けが容易となる。なぜなら、より少ない数の棒要素が同時にもしくは部品ごとにはめ込まれ得るからである。それによって、製造の精密度(たとえばピッチ角、貫通路の直径)に関しても、公差をより大きく選択することができ、ひいてはコストを削減できる。
【0031】
本発明のさらなる実施形態に従えば、短絡されたかごを備える塊状回転子部分を有するかご形回転子が提供され、かご形回転子は、強磁性の回転子シャフトであって、当該回転子シャフトに一体的に成形された塊状回転子部分を有する強磁性の回転子シャフトと、複数の導電性の棒要素(棒状の導体)と、導電性の一体型のあるいは複数の部品から成る端部要素(好ましくは端部リング)とを備え、かつ棒要素は、穿たれたあるいは削り取られた穴で回転子シャフトの塊状回転子部分に挿入されている。
【0032】
本発明のさらなる実施形態に従えば、棒要素は、円形、楕円形、多角形あるいはその他の各プロフィール断面を備えてよい。
【0033】
本発明のさらなる実施形態に従えば、棒要素は、一体型のあるいは複数の部品から成る端部要素(好ましくは端部リング)と、小さな力であるいは堅固に接合されている。
【0034】
本発明のさらなる実施形態に従えば、棒状要素は、強磁性の回転子シャフトに一体的に成形された塊状回転子部分と、小さな力で接合されている。
【0035】
本発明に従えば、考えられ得る各組み合わせでの、すでに記述された、1つあるいは複数あるいはすべての本発明に係る実施形態に従った、かご形回転子の製造方法において、塊状回転子部分の貫通路がそれぞれ、分割加工によって、塊状回転子部分に作られる。
【0036】
それによって、一方では、それぞれの棒要素とそれぞれの貫通路との間の望ましい嵌めが、かなり精密に保証され得、他方では、棒状要素が端部要素に位置的にかなり精密に確実に移行され得る。
【0037】
好ましくは、塊状回転子部分の貫通路はそれぞれ、切削加工および/あるいは除去加工によって、塊状回転子部分に作られる。さらに好ましくは、塊状回転子部分の貫通路はそれぞれ、穿孔および/あるいは放電加工によって、塊状回転子部分に作られる。
【0038】
言い換えれば、本発明に係る方法の実施形態に従えば、棒要素(棒状導体)の挿入は、円周で塊状回転子部分を貫通する、すなわち、塊状回転子のために備えられた部分を有する、好ましくは隙間のない(vollwandig)もしくはマッシブな回転子シャフトを貫通する、深穴加工および/あるいは成形加工によって実行される。
【0039】
以下に本発明が、好ましい実施形態に基づいて、かつ添付の図に関連してより詳細に記述される。