特許第5671038号(P5671038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5671038かご形回転子と当該かご形回転子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671038
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】かご形回転子と当該かご形回転子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 17/16 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
   H02K17/16 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-529122(P2012-529122)
(86)(22)【出願日】2010年7月15日
(65)【公表番号】特表2013-504997(P2013-504997A)
(43)【公表日】2013年2月7日
(86)【国際出願番号】DE2010050046
(87)【国際公開番号】WO2011032550
(87)【国際公開日】20110324
【審査請求日】2012年5月1日
(31)【優先権主張番号】102009041564.5
(32)【優先日】2009年9月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク・クラインハンス
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・ラウバー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・オルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ロガー・ズーター
【審査官】 河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03517238(US,A)
【文献】 英国特許出願公開第00882513(GB,A)
【文献】 特開昭63−001352(JP,A)
【文献】 特開平05−207714(JP,A)
【文献】 特開平03−261354(JP,A)
【文献】 特開昭58−201552(JP,A)
【文献】 特開平06−245421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 17/16
H02K 3/04−3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータのためのかご形回転子(1)であって、
回転子シャフト(10)であって、前記回転子シャフト(10)の軸方向(AR)に、塊状回転子部分(11)の円周を取り囲んで分散して延伸する複数の貫通路(12)を備える、強磁性の材料から形成される塊状回転子部分(11)を有する回転子シャフト(10)と、
複数の導電性の棒要素(20)であって、それぞれ前記貫通路(12)の1つに受容されており、その結果それぞれの前記棒要素(20)が、前記回転子シャフト(10)の軸方向(AR)に前記塊状回転子部分(11)を貫いて延伸し、前記棒要素(20)は、それぞれ1つの第1長手端部(20a)と、前記第1長手端部(20a)に背向する第2長手端部(20b)とを備える、複数の導電性の棒要素(20)と、
2つの導電性の端部要素(30,40)であって、それらのうち第1端部要素(30)が、前記棒要素(20)の前記第1長手端部(20a)を電気的に互いに接合し、第2端部要素(40)が、前記棒要素(20)の前記第2長手端部(20b)を電気的に互いに接合しており、その結果棒要素(20)と端部要素(30,40)とによって、短絡されたかごが形成されている、2つの導電性の端部要素(30,40)とを備えるかご形回転子(1)において、
前記棒要素(20)および/あるいは前記塊状回転子部分(11)の長さが変化した場合に、前記塊状回転子部分(11)と、その貫通路(12)に受容されているそれぞれの前記棒要素(20)との間で、前記回転子シャフト(10)の軸方向(AR)での相対的運動が可能となるように、それぞれの前記棒要素(20)が前記貫通路(12)に受容されており、
各棒要素(20)の前記第1長手端部及び前記第2長手端部(20a、20b)のうち1つは、それぞれの前記棒要素(20)および/あるいは前記塊状回転子部分(11)の長さが変化した場合に、伝達されるべき電流のために寸法付けられる電気接合を保証しつつ、該当する前記長手端部(20a、20b)と前記端部要素(30,40)との間で、前記回転子シャフト(10)の軸方向(AR)での相対的運動が可能となるように、付属する前記端部要素(30,40)と接合されており、
前記棒要素(20)の前記第1長手端部(20a)は、前記端部要素(30)に形成された貫通孔(31)にはめ込まれており、かつ、前記貫通孔(31)から外れないように守られており、かつ、
前記棒要素(20)の前記第2長手端部(20b)は、前記端部要素(40)に形成された貫通孔(41)にはめ込まれており、かつ、前記貫通孔(41)から外れないように守られてはいないことを特徴とするかご形回転子(1)。
【請求項2】
それぞれの前記棒要素(20)は、挟まれずに前記貫通路(12)に受容されており、その結果、前記塊状回転子部分(11)と、その貫通路(12)に受容されているそれぞれの前記棒要素(20)との間で、前記回転子シャフト(10)の軸方向(AR)での阻害されない相対的運動が可能となることを特徴とする請求項1に記載のかご形回転子(1)。
【請求項3】
それぞれの前記棒要素(20)の外周とそれぞれの前記貫通路(12)の内周との間に、隙間嵌めが形成されていることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のかご形回転子(1)。
【請求項4】
それぞれのずれ可能な前記長手端部(20a、20b)とそれぞれの付属の前記端部要素(30,40)との間に、中間嵌めが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のかご形回転子(1)。
【請求項5】
前記端部要素(30,40)はそれぞれリング状に形成されており、各端部要素(30,40)は、少なくとも2つの部品から形成されており、各端部要素(30,40)の少なくとも2つの部品は、電気的に互いに接合されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のかご形回転子(1)。
【請求項6】
前記塊状回転子部分(11)の前記貫通路(12)はそれぞれ、分割加工によって、前記塊状回転子部分(11)に作られることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のかご形回転子(1)の製造方法。
【請求項7】
前記塊状回転子部分(11)の前記貫通路(12)はそれぞれ、切削加工および/あるいは除去加工によって、前記塊状回転子部分(11)に作られることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記塊状回転子部分(11)の前記貫通路(12)はそれぞれ、穿孔および/あるいは放電加工によって、前記塊状回転子部分(11)に作られることを特徴とする請求項6あるいは7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のおいて書きに記載のかご形回転子と、そのようなかご形回転子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層された、すなわち多くの個々の強磁性の板で構成された、電気モータのためのロータが知られている。
【0003】
しかしながら、非常に高い回転数で、および/あるいは汚染された腐食性のあるいはコントロール不能の環境での使用のためには、積層されたこの構造は、物理的な限界に突き当たるかあるいは許容できなくなりかねない。
【0004】
強磁性の材料から成る、一体型のマッシブロータもしくは回転子(塊状回転子(Massivlaeufer))の使用は、ここでは望ましい解決法を提供する。なぜなら、この構造は、機械的な強度と、ロータの力学的安定性及び単純な構成と、部材の大幅な削減とに関して著しい利点を示すからである。
【0005】
塊状回転子の様々な構造は、従来技術において実現されており、たとえば平滑な塊状回転子、スリットを有する塊状回転子、外部スリーブを有する塊状回転子、短絡されたかごを有する塊状回転子などが使用されている。
【0006】
短絡されたかごを有して形成されている、電気モータのかご形回転子は、典型的に、塊状回転子部分を有する強磁性の回転子シャフトと、複数の導電性の棒状の導体と、導電性の端部リングとを備えてよい。
【0007】
冒頭で述べられたようなかご形回転子は、特許文献1から知られている。このかご形回転子では、複数の円錐状の導体棒(棒要素)が、縮退によって、かご形回転子の塊状回転子部分を貫いて軸方向に延在する円錐状の孔(貫通路)に挿入されている。言い換えれば、導体棒は、塊状回転子部分と堅固に接合されている。それによって、導体棒は通例、塊状回転子部分とは別の材料からなっており、それゆえ別の熱膨張特性を有するので、かご形回転子が加熱された場合にはかご形回転子全体が歪み、それがアンバランスあるいはひびすらもたらしかねない。
【0008】
このことが、かご形回転子の寿命の短縮、ひいては当該かご形回転子が装備された電気モータの早期の故障をもたらしかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国実用新案第7000062号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、駆動中の歪みがより少ないかご形回転子を提供することである。さらに本発明の課題は、そのようなかご形回転子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題は、請求項1に記載のかご形回転子と、請求項7に記載の方法とによって解決される。本発明のさらなる形態は、それぞれの従属請求項において定義されている。
【0012】
本発明に従えば、電気モータのためのかご形回転子は、回転子シャフトであって、回転子シャフトの軸方向に、塊状回転子部分の円周を取り囲んで分散して延伸する複数の貫通路を備える、強磁性の材料から形成される塊状回転子部分を有する回転子シャフトと、複数の導電性の棒要素であって、それぞれ貫通路の1つに受容されており、その結果それぞれの棒要素が、回転子シャフトの軸方向に塊状回転子部分を貫いて延伸し、棒要素は、それぞれ1つの第1長手端部と、当該第1長手端部に背向する第2長手端部とを備える、複数の導電性の棒要素と、2つの導電性の端部要素であって、それらのうち第1端部要素が、棒要素の第1長手端部を電気的に互いに接合し、第2端部要素が、棒要素の第2長手端部を電気的に互いに接合しており、その結果棒要素と端部要素とによって、短絡されたかごが形成されている、2つの導電性の端部要素とを備える。
【0013】
本発明に係るかご形回転子は、棒要素および/あるいは塊状回転子部分の長さが変化した場合に、塊状回転子部分と、その貫通路に受容されているそれぞれの棒要素との間で、回転子シャフトの軸方向での相対的運動が可能となるように、それぞれの棒要素が貫通路に受容されていることで優れている。
【0014】
たとえば加熱に伴って棒要素および/あるいは塊状回転子部分の長さが変化した場合に、塊状回転子部分と棒要素との間で、回転子シャフトの軸方向での相対的運動が可能となることによって、塊状回転子部分ひいてはかご形回転子全体は、駆動中に電気モータで、従来のかご形回転子ほど大きく、あるいはまったく歪まないであろう。
【0015】
それによって、かご形回転子の寿命の短縮、ひいては当該かご形回転子が装備された電気モータの早期の故障をもたらしかねないアンバランスとひびとを回避することができる。
【0016】
好ましくは、塊状回転子部分は、回転子シャフトに一体的に成形されており、その結果回転子シャフトと塊状回転子部分とは、同じ材料から作られている。
【0017】
本発明の形態には、回転子シャフトと塊状回転子部分との間で力接続的および/あるいは形状接続的な接合が行われる必要がなく、これら2つは1つの部品から、たとえば回転によって製造可能であるという利点がある。これによって製造コストと、かご形回転子の考えられ得る問題点とが削減される。
【0018】
本発明に従えば、棒要素が一定の力を克服して、軸方向に、塊状回転子部分に対して相対的に移動可能なように、それぞれの棒要素は貫通路に受容されていてよい。棒要素を貫通路にそのように軸受けすることは、たとえば小さな力での締まり嵌め、中間嵌め、隙間嵌めによって、あるいは、棒要素を貫通路に隙間嵌めにおける力よりも小さな力で受容することによってさえも、実現されていてよい。
【0019】
好ましくは、それぞれの棒要素は、挟まれずに貫通路に受容されており、その結果、塊状回転子部分と、その貫通路に受容されているそれぞれの棒要素との間で、回転子シャフトの軸方向での阻害されない相対的運動が可能となる。好ましくは、それぞれの棒要素の外周とそれぞれの貫通路の内周との間に、隙間嵌めが形成されている。
【0020】
それによって、一方では棒要素が阻害されずに塊状回転子部分に対して相対的にずれ可能であり、他方では交換が必要ならば、容易かつ素早く交換可能である。
【0021】
たとえば非同期モータのような、本発明に係るかご形回転子を装備された電気モータの駆動時には、棒要素は回転数の上昇によって、そのそれぞれの貫通路の径方向外側の部分に対してますます強く圧迫され、その結果棒要素の振動は減少し、磁束が改善される。それによって塊状回転子部分と棒要素との加熱が、減少する。
【0022】
本発明の実施形態に従えば、各棒要素の第1長手端部と第2長手端部の少なくとも1つは、それぞれの棒要素および/あるいは塊状回転子部分の長さが変化した場合に、伝達されるべき電流のために寸法付けられる電気接合を保証しつつ、該当する長手端部と端部要素との間で、回転子シャフトの軸方向での相対的運動が可能となるように、付属する端部要素と接合されている。
【0023】
言い換えれば、一方では、棒要素が、かご形回転子の駆動時に意図せず貫通路から外れることがないように、かつ最大限伝達されるべき誘導電流(渦電流)が常に、この接合を介して伝達可能なように、たとえば挟まれて、あるいはたとえばネジと圧力バネとの組み合わせによって連結されて、該当する長手端部が端部要素に充分に堅固に保持されている。他方で、たとえば加熱に伴って棒要素および/あるいは塊状回転子部分の長さが変化した場合に、長さの変化を補償するために、該当する長手端部は、一定の力を克服して、軸方向に、端部要素に対して相対的に移動することが可能である。
【0024】
それによって、塊状回転子部分もしくはかご形回転子全体が歪むことが、確実に回避される。
【0025】
本発明に従えば、端部要素は、棒要素の長手端部を受容するために、盲凹部および/あるいは貫通凹部を備えてよい。盲凹部では、それぞれの盲凹部の底部とそれぞれの長手端部との間に、遊びが充分あることが保証されるべきであり、その結果棒要素の長手方向の膨張を受容することが可能である。
【0026】
本発明に従えば、両長手端部を、上記のように軸方向に移動可能に、両端部要素に受容することができる。
【0027】
本発明の実施形態に従えば、それぞれのずれ可能な長手端部とそれぞれの付属の端部要素との間に、中間嵌めが形成されている。
【0028】
中間嵌めは一方では、該当する長手端部が端部要素に充分に堅固に保持されていることを保証し、その結果棒要素が、かご形回転子の駆動時に意図せずそれぞれの貫通路から外れることがなく、かつ最大限伝達されるべき誘導電流(渦電流)が常に、この接合を介して伝達可能であり、他方では、たとえば加熱に伴って棒要素および/あるいは塊状回転子部分の長さが変化した場合に、該当する長手端部は、一定の力(ここでは、中間嵌めによって発生するクランプ力)を克服して、軸方向に、端部要素に対して相対的に移動することが可能であることを保証し、その結果長さの変化が補償される。
【0029】
本発明の実施形態に従えば、端部要素はそれぞれリング状に形成されており、各端部要素は、少なくとも2つの部品で形成されており、各端部要素の少なくとも2つの部品は、電気的に互いに接合されている。
【0030】
端部要素を複数部品、たとえば2つの部品あるいはまた3つの部品で実施することによって、その取り付けが容易となる。なぜなら、より少ない数の棒要素が同時にもしくは部品ごとにはめ込まれ得るからである。それによって、製造の精密度(たとえばピッチ角、貫通路の直径)に関しても、公差をより大きく選択することができ、ひいてはコストを削減できる。
【0031】
本発明のさらなる実施形態に従えば、短絡されたかごを備える塊状回転子部分を有するかご形回転子が提供され、かご形回転子は、強磁性の回転子シャフトであって、当該回転子シャフトに一体的に成形された塊状回転子部分を有する強磁性の回転子シャフトと、複数の導電性の棒要素(棒状の導体)と、導電性の一体型のあるいは複数の部品から成る端部要素(好ましくは端部リング)とを備え、かつ棒要素は、穿たれたあるいは削り取られた穴で回転子シャフトの塊状回転子部分に挿入されている。
【0032】
本発明のさらなる実施形態に従えば、棒要素は、円形、楕円形、多角形あるいはその他の各プロフィール断面を備えてよい。
【0033】
本発明のさらなる実施形態に従えば、棒要素は、一体型のあるいは複数の部品から成る端部要素(好ましくは端部リング)と、小さな力であるいは堅固に接合されている。
【0034】
本発明のさらなる実施形態に従えば、棒状要素は、強磁性の回転子シャフトに一体的に成形された塊状回転子部分と、小さな力で接合されている。
【0035】
本発明に従えば、考えられ得る各組み合わせでの、すでに記述された、1つあるいは複数あるいはすべての本発明に係る実施形態に従った、かご形回転子の製造方法において、塊状回転子部分の貫通路がそれぞれ、分割加工によって、塊状回転子部分に作られる。
【0036】
それによって、一方では、それぞれの棒要素とそれぞれの貫通路との間の望ましい嵌めが、かなり精密に保証され得、他方では、棒状要素が端部要素に位置的にかなり精密に確実に移行され得る。
【0037】
好ましくは、塊状回転子部分の貫通路はそれぞれ、切削加工および/あるいは除去加工によって、塊状回転子部分に作られる。さらに好ましくは、塊状回転子部分の貫通路はそれぞれ、穿孔および/あるいは放電加工によって、塊状回転子部分に作られる。
【0038】
言い換えれば、本発明に係る方法の実施形態に従えば、棒要素(棒状導体)の挿入は、円周で塊状回転子部分を貫通する、すなわち、塊状回転子のために備えられた部分を有する、好ましくは隙間のない(vollwandig)もしくはマッシブな回転子シャフトを貫通する、深穴加工および/あるいは成形加工によって実行される。
【0039】
以下に本発明が、好ましい実施形態に基づいて、かつ添付の図に関連してより詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の実施形態に従ったかご形回転子の、部分的に切断された概略図である。
図2図1のかご形回転子の塊状回転子部分を、図1の線A−Aに沿って見た横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1図2とに示されているように、電気モータ(完全には図示されず)のための本発明に係るかご形回転子1は、強磁性の材料で形成される回転子シャフト10であって、当該回転子シャフトに一体的に成形された、円筒状に直径が大きくなった形状の塊状回転子部分11を有する回転子シャフト10と、一定した直径の円形の断面図を有する、複数の導電性の棒要素20と、それぞれ一体型の2つの端部リングの形状をした、2つの導電性の端部要素30と40とを備える。
【0042】
塊状回転子部分11は、回転子シャフト10の軸方向ARに、塊状回転子部分11の円周を取り囲んで分散して延伸する複数の貫通路12を備える。
【0043】
棒要素20はそれぞれ、貫通路12の1つに受容されており、その結果それぞれの棒要素20は、回転子シャフト10の軸方向ARに塊状回転子部分11を貫いて延伸し、棒要素20は、それぞれ1つの第1長手端部20aと、当該第1長手端部20aに背向する第2長手端部20bとを備える。
【0044】
2つの端部要素30,40の第1(図1で左側の)端部要素30は、棒要素20の第1長手端部20aを電気的に互いに接合する。2つの端部要素30,40の第2(図1で右側の)端部要素40は、棒要素20の第2長手端部20bを電気的に互いに接合する。それによって棒要素20と2つの端部要素30,40とが、短絡されたかごを形成する。
【0045】
たとえば加熱に伴って棒要素20および/あるいは塊状回転子部分11の長さが変化した場合に、塊状回転子部分11と、その貫通路12に受容されているそれぞれの棒要素20との間で、回転子シャフト10の軸方向ARでの相対的運動が可能となるように、それぞれの棒要素20が貫通路12に受容されている。
【0046】
示されている実施形態に従えば、それぞれの棒要素20は、挟まれずに貫通路12に受容されており、その結果、塊状回転子部分11と、その貫通路12に受容されているそれぞれの棒要素20との間で、回転子シャフト10の軸方向ARにおいて阻害されない相対的運動が可能となる。すなわち、貫通路12内で棒要素20が移動もしくはずれるために、実質的に、クランプ力を克服する必要はない。
【0047】
この目的のために、それぞれの棒要素20の外周(符号無)とそれぞれの貫通路12の内周(符号無)との間に、隙間嵌め、すなわち、2つの部品が同じ基準寸法を備えるが、貫通路12の最小内径寸法が棒要素20の最大外径寸法より常に大きくなるように、異なる公差領域を備える嵌め合いが形成されている。
【0048】
各端部要素30,40は、端部要素30,40の周囲を取り囲んで分散して設けられている複数の貫通孔31もしくは41を備え、当該貫通孔は、円分割において、貫通路12の各々に対応する。さらに各端部要素30,40は、中心にある受容孔32もしくは42を備える。
【0049】
第1端部要素30は、中心にあるその受容孔32によって、回転子シャフト10の第1長手端部10aに被せられており、ネジ接合(図示しない)を介して塊状回転子部分11と接合されている。棒要素20の第1長手端部20aは、第1端部要素30の貫通孔31にはめ込まれており、それぞれの棒要素20の外周とそれぞれの貫通孔31の内周(符号は付けられず)との間に、小さな力での締まり嵌め、すなわち、2つの部品が同じ基準寸法を備えるが、貫通孔31の最大内径寸法が棒要素20の最小外径寸法より常に小さくなるように、異なる公差領域を備える嵌め合いが形成されている。
【0050】
各棒要素20の第1長手端部20aは、付加的に、端部要素30の径方向外側から端部要素30の径方向内側に向かって貫通孔31に係合する図示しないグラブネジを介して、貫通孔31から外れないように守られている。
【0051】
第2端部要素40は、中心にあるその受容孔42によって、回転子シャフト10の第2長手端部10bに被せられており、ネジ接合(図示されず)を介して塊状回転子部分11と接合されている。棒要素20の第2長手端部20bは、第2端部要素40の貫通孔41にはめ込まれており、それぞれの棒要素20の外周とそれぞれの貫通孔41の内周との間に締まり嵌めの傾向を示す中間嵌め、すなわち、棒要素20の外径が貫通孔41の内径に対して少し寸法が大きな嵌め合いが形成されている。
【0052】
各棒要素20の第2長手端部20bは、第1長手端部20aとは異なり、付加的に、グラブネジを介して、貫通孔41から外れないように守られてはいない。
【0053】
それによって各棒要素20の第2長手端部20bは、たとえば加熱に伴ってそれぞれの棒要素20および/あるいは塊状回転子部分11の長さが変化した場合に、伝達されるべき電流のために寸法付けられる電気接合を保証しつつ、第2長手端部20bと第2端部要素40との間で、回転子シャフト10の軸方向ARでの相対的運動が可能となるように、付属する第2端部要素40と接合されている。
【0054】
言い換えれば、棒要素20の第2長手端部20bは、一定の力(ここでは、中間嵌めによって発生する小さなクランプ力)を克服して、第2端部要素40に対して相対的に軸方向ARに移動できるので、その結果として長さの変化が補償され、かつ、かご形回転子1において応力ひいては歪みが生じない。
【0055】
かご形回転子1の本発明に係る製造方法の実施形態に従えば、塊状回転子部分11の貫通路12はそれぞれ、分割加工によって塊状回転子部分11に作られる。
【0056】
厳密に言えば、塊状回転子部分11の貫通路12はそれぞれ、切削加工および/あるいは除去加工によって、ここでは特に、深穴加工(たとえば横中ぐり盤によって)および/あるいは放電加工によって、塊状回転子部分11に作られる。
【符号の説明】
【0057】
1 かご形回転子
10 回転子シャフト
10a 第1長手端部
10b 第2長手端部
11 塊状回転子部分
12 貫通路
20 棒要素
20a 第1長手端部
20b 第2長手端部
30 端部要素
31 貫通孔
32 受容孔
40 端部要素
41 貫通孔
42 受容孔
AR 軸方向
図1
図2