(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671085
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】支持プレートを有する調節性眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
A61F2/16
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-61673(P2013-61673)
(22)【出願日】2013年3月25日
(62)【分割の表示】特願2010-510488(P2010-510488)の分割
【原出願日】2008年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-144146(P2013-144146A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2013年3月27日
(31)【優先権主張番号】60/932,079
(32)【優先日】2007年5月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509329637
【氏名又は名称】デル,スティーヴン ジェイ
【氏名又は名称原語表記】DELL,Steven J.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】デル,スティーヴン ジェイ
【審査官】
沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0064161(US,A1)
【文献】
特表2001−525220(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0021550(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0020339(US,A1)
【文献】
米国特許第04872876(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アコモダティブ眼内レンズ(AIOL)であって、
光学機器と、
少なくとも1つのコネクタによって前記光学機器に連結した少なくとも1つの支持プレートと、
を備え、
前記コネクタが前記支持プレートよりも剛性が低く、
前記少なくとも1つの支持プレートが前記光学機器を取り囲み、
前記光学機器および支持プレートが、80mm2〜100mm2の合計前面表面積を有し、
ここで、前記少なくとも1つのコネクタが、前記少なくとも1つのコネクタの屈伸によって前記光学機器の変形が可能になるように構成され、少なくとも1つのフィラメントが前記支持プレートに連結して該支持プレートの外周から延在し、前記少なくとも1つのフィラメントが前記支持プレートから間隔をあけた自由端を有し、前記少なくとも1つの支持プレートが、該少なくとも1つの支持プレートと異なる材料を含む少なくとも1つのリブを有する、
アコモダティブ眼内レンズ(AIOL)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの支持プレートが、前記光学機器の周辺に360°の連続境界を形成することを特徴とする請求項1記載のAIOL。
【請求項3】
前記少なくとも1つの支持プレートが、2つの支持プレートを含むことを特徴とする請求項1記載のAIOL。
【請求項4】
前記少なくとも1つの支持プレートが、少なくとも60mm2の前面表面積を有することを特徴とする請求項1記載のAIOL。
【請求項5】
前記少なくとも1つの支持プレートの各々が、光軸の周りの半径方向に測定された角度の全範囲にわたり、1.0〜3.5mmの半径寸法における幅を有することを特徴とする請求項1記載のAIOL。
【請求項6】
前記少なくとも1つのコネクタが、2つのコネクタを含むことを特徴とする請求項1記載のAIOL。
【請求項7】
前記少なくとも1つの支持プレートが、前記少なくとも1つのコネクタの任意の部分より大きい厚さを有することを特徴とする請求項1記載のAIOL。
【請求項8】
前記少なくとも1つの支持プレートが円錐形を有することを特徴とする請求項1記載のAIOL。
【請求項9】
前記AIOLが、前記光学機器と前記少なくとも1つの支持プレートの間にヒンジを有しないことを特徴とする請求項1記載のAIOL。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調節性眼内レンズ(AIOLs)に関し、さらに詳細には、眼を取り囲む支持プレートを有するAIOLsに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、虹彩30によって隔てられる、前房12および後眼房14を有するヒトの眼10の断面図を示している。後眼房14の内側には、眼における天然の水晶体17を支える水晶体嚢16が存在する。水晶体嚢は、嚢縁16cで交わる水晶体前嚢16aおよび後嚢16bを備えている。光は角膜18を通過して眼に入る。角膜および水晶体は、一緒に作用して光を網膜20の方へ導き、焦点に合わせる。網膜は、網膜が受容するイメージを読影するために脳に伝える視神経22に結合している。眼10は視軸VAを有する。
【0003】
天然の水晶体が損傷した眼(例えば、白内障による混濁)では、水晶体はもはや、入射光を適切に焦点に合わせ、および/または網膜へと導くことができない。その結果、イメージがぼやけるようになる。この状態を治療するための周知の外科技術として、嚢切開(capsularhexis)(単に切開(rhexis)とも称される)として知られる水晶体嚢の円孔を通じて、損傷した水晶体を摘出することが挙げられる。その後、切開部を通じて、眼内レンズ(IOL)として知られる人工水晶体を、空の水晶体嚢に挿入する。
【0004】
従来のIOLsは、典型的には固定焦点レンズである。このようなレンズの屈折力は、通常、患者が遠視力用の固定焦点を有するように選択され、患者は、近見視力を得るためには、眼鏡またはコンタクトレンズを必要とする。昨今では、可変焦点能力を有するIOLsを開発するため、広範囲の研究が行われている。このようなIOLsは、アコモダティブIOLs(AIOLS)として知られている。「AIOLs」という用語は、単一元素系および多元素系の両方のことを指す。
【0005】
単一元素AIOLsは、典型的には2つ以上の支持部を有し、それぞれが水晶体嚢内にレンズを配置するためのプレートを備え、水晶体嚢と機械的に相互作用して調節性の運動を達成する。例えば、支持部は、一般的には光学機器(optic)の側面から半径方向外向きに延在し、光学機器に対して前方および後方に動かすことができる。
【0006】
一部の従来レンズの実施の形態では、プレート支持部は、隣接した光学機器にヒンジで連結され、光学機器および支持体の前方/後方の運動を可能にする。調節性の運動には、それらの対応するヒンジにおける支持部の回転運動、および眼に対する光学機器の変形(translation)が含まれ、したがって、光学機器および支持部は、調節性の運動を受ける。他の従来の実施の形態では、プレート支持部は弾性的に可撓であり、光学機器に対する支持部の前方/後方の運動には、支持部の全長にわたり、弾性的に可撓するか、または屈曲することが含まれる。
【0007】
プレート支持部を有する従来のレンズは、脳によって制御される眼の毛様体筋の作用と共に、嚢縁の圧縮、水晶体の後嚢の弾力性および硝子体腔19における圧力を利用して構成および配置され、手術後の近見視力の調節をもたらす。したがって、一部の眼のモデルによれば、近接物体を見るときには、脳が毛様体筋を収縮し、それによって線維化した前縁を弛緩し、レンズの前方への運動を生じさせるような方法で、すなわち、視軸に沿った、近見視力位置へのレンズ光学機器の調節運動によって、硝子体腔の圧力を増大させる。調節の量に応じて、レンズのたわみ調節は、筋肉が収縮し、それによって硝子体を水晶体嚢との境界において前方へと膨らませるにつれて、最初は、硝子体への毛様体筋の後方への運動に起因する硝子体の圧力の増大、引き伸ばされた水晶体の後嚢の前方への偏力(bias force)、および最終的にはレンズの前方への運動によって、生じる。その後、脳によって活性化された毛様体筋の緩和が、水晶体嚢および線維化した前嚢縁をその遠視位置の方へ後方にレンズを戻させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の態様は、硝子体の運動が、実質的に、水晶体嚢の近くにある硝子体の境界全体にわたって生じることを本出願人が観察した結果である。本出願人は、水晶体の後嚢の一部(例えば、2つの正反対に向かい合う支持部)にのみ沿って水晶体の後嚢と接触する従来のAIOLに関する、硝子体の圧力が増大すると、水晶体嚢がレンズの周囲に脱出してしまい、それによって、AIOLの調節性運動に寄与する能力のある硝子体のすべての運動が利用できなくなるという課題を解決した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明のある態様は、支持部が実質的に水晶体の後嚢全体と接触するように、支持プレートが光学機器の側面のすべて(すなわち、360°)を取り囲む、AIOLの構造を対象とする。
【0010】
本発明のある態様は、光学機器と、少なくとも1つのコネクタによって光学機器に連結した少なくとも1つの支持プレートと、を備えた、アコモダティブ眼内レンズ(AIOL)を対象とする。コネクタは支持プレートよりも剛性が低く、少なくとも1つの支持プレートは光学機器を取り囲む。光学機器および支持プレートは、70mm〜100mm
2の合計表面積を有する。
【0011】
一部の実施の形態では、少なくとも1つの支持プレートは光学機器の周辺に360°の連続境界を形成する。少なくとも1つの支持プレートは少なくとも2つの支持プレートを含みうる。一部の実施の形態では、少なくとも1つの支持プレートは少なくとも60mm
2の面積を有する。
【0012】
一部の実施の形態では、少なくとも1つの支持プレートは、その角度の全範囲にわたり、1.0〜3.5mmの半径寸法における幅を有する。少なくとも1つのコネクタは、少なくとも2つのコネクタを含みうる。
【0013】
一部の実施の形態では、少なくとも1つの支持プレートは、少なくとも1つのコネクタの任意の部分より大きい厚さを有する。一部の実施の形態では、少なくとも1つの支持プレートは、円錐形を形成する。一部の実施の形態では、AIOLは、光学機器と少なくとも1つの支持プレートの間にヒンジを有しない。
【0014】
一部の実施の形態では、合計表面積は75mm
2〜100mm
2である。合計表面積は、80mm
2〜100mm
2であってもよい。
【0015】
本発明の別の態様は、アコモダティブ眼内レンズ(AIOL)を適用する方法を対象とし、本方法は、
(A)AIOLを提供する工程であって、
(i)光学機器と
(ii)少なくとも1つのコネクタによって前記光学機器に連結した少なくとも1つの支持プレートと、
を備え、
前記コネクタが前記支持プレートよりも剛性が低く、
前記少なくとも1つの支持プレートが前記光学機器を取り囲む、
AIOLを提供する工程と、
(B)前記レンズを眼内に移植する工程であって、
前記少なくとも1つの支持プレートおよび前記光学機器が前記眼の水晶体の後嚢の65%〜95%を覆うことを特徴とする工程と、
を有してなる。典型的には、水晶体の後嚢の寸法は10〜13mmの範囲である。
【0016】
一部の実施の形態では、少なくとも1つの支持プレートおよび光学機器は、眼の水晶体の後嚢の70%〜95%を覆う。一部の実施の形態では、少なくとも1つの支持プレートおよび光学機器は、眼の水晶体の後嚢の75%〜95%を覆う。少なくとも1つの支持プレートおよび光学機器は、眼の水晶体の後嚢の80%〜95%を覆う。一部の実施の形態では、少なくとも1つの支持プレートは、光学機器の周辺に360°の連続境界を形成する。一部の実施の形態では、少なくとも1つの支持プレートは、その角度の全範囲にわたり、1.0〜3.5mmの半径寸法における幅を有する。一部の実施の形態では、少なくとも1つのコネクタは少なくとも2つのコネクタを含む。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、光学機器と、少なくとも1つのコネクタによって光学機器に連結した少なくとも1つの支持プレートと、を備えた、アコモダティブ眼内レンズ(AIOL)を対象とする。コネクタは支持プレートよりも剛性が低く、少なくとも1つの支持プレートが光学機器を取り囲む。少なくとも1つの支持プレートは、その角度の全範囲にわたり、1.0〜3.5mmの半径寸法における幅を有する。
【0018】
一部の実施の形態では、少なくとも1つの支持プレートは光学機器の周辺に360°の連続境界を形成する。少なくとも1つの支持プレートは、少なくとも2つの支持プレートを含みうる。少なくとも1つの支持プレートは少なくとも60mm
2の面積を有しうる。
【0019】
一部の実施の形態では、光学機器および支持プレートは、70mm
2〜100mm
2の合計表面積を有する。少なくとも1つのコネクタは、少なくとも2つのコネクタを含みうる。
【0020】
一部の実施の形態では、少なくとも1つの支持プレートは、少なくとも1つのコネクタの任意の部分より大きい厚さを有する。一部の実施の形態では、少なくとも1つの支持プレートは円錐形を形成する。一部の実施の形態では、AIOLは、光学機器と少なくとも1つの支持プレートの間にヒンジを有しない。
【0021】
一部の実施の形態では、合計表面積は75mm
2〜100mm
2である。合計表面積は、80mm
2〜100mm
2であってもよい。支持プレートには、ヒンジが存在しなくてもよい。
【0022】
実例となる、本発明の非限定的な実施の形態について、例示の目的で、付属する図面を引用しながら説明する。同一の参照番号は、異なる形状における同一または同様の構成要素を指定するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】本発明の態様に従ったレンズの実施の形態の一例の前面図。
【
図6】別のコネクタ構造を有する角レンズの別の実施の形態の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図2は、本発明の態様に従った、アコモダティブ眼内レンズ100の実施の形態の一例の前面図である。レンズ100は、光学機器110および支持プレート120を備えている。支持プレートは、少なくとも1つのコネクタ130a〜130dによって光学機器に連結している。
【0025】
本発明のある態様は、光学機器を取り囲む支持プレートを有するレンズを対象とする。加えて、以下に詳細に説明するように、支持プレートおよび光学機器は、調節の際に従来のレンズの周辺に生じる脱漏を低減または排除するのに十分な合計表面積を有する。
【0026】
下記のように、プレートと接触する硝子体部分に沿った膨張が制限され、それによって、光学機器において生じる膨張が増大する。典型的には、レンズは、光学機器および支持プレートが、それらを合わせると、実質的に、眼の水晶体の後嚢を覆うような大きさになるように選択される。コネクタ130a〜130dは、典型的には、このような硝子体の膨らみに応じて、支持プレートに対して光学機器を変形させるように構成される。
【0027】
本明細書では、光学機器に対する支持プレートの関係を説明するための「取り囲む」という用語は、
図2に示す面において360°隣接していることをいう。プレートが連続平面を形成して、光軸OAに関するすべての角度(θ)で光学機器と隣接し、設置されるべき水晶体嚢の直径と略等しい直径にわたり延在する(すなわち、プレートが水晶体の後嚢を覆う)ことは、典型的には有利であることが認識されよう。しかしながら、下記に論じるように、このような構成からの多少の逸脱は許容され、または、望ましい場合がある。
【0028】
一部の実施の形態では、
図2に示すように、プレートは360°の連続境界を形成し、プレートに隣接した位置における硝子体の膨張を制限する能力を増大させる。一部のこのような実施の形態では、プレートは、360°にわたって剛体であるように構成される。このような実施の形態では、プレートにおけるヒンジの使用を避けることが、典型的には有利である(すなわち、プレートにはヒンジが存在しない)。
【0029】
図示した実施の形態では、プレートは360°の連続境界を形成しているが、プレートに隣接した位置における硝子体の膨張を制限する能力、およびそれによる光学機器における膨張の増大は、プレートが連続境界を形成しなくても達成することができる。例えば、プレート120の内縁からプレート120の外縁まで、またはその寸法の一部の長さで延在する1つ以上の隙間122(破線で示す)が備わっている可能性もありうる。したがって、レンズの一部の実施の形態は、一緒に光学機器110を360°取り囲む、2つ、3つ、またはそれ以上の支持プレートを有していてもよい。
【0030】
上述のように、支持プレートの直径は、光学機器によって覆われていない水晶体の後嚢の一部を覆うか、実質的に覆うように選択され、レンズの周りの脱漏を抑制する。しかしながら、プレートおよび光学機器による水晶体の後嚢の完全な被覆からの多少の逸脱は許容され、または、望ましい場合がある。例えば、例示された実施の形態では、外側境界はホタテガイの縁のように波を打っており(すなわち、プレートは凹面170a〜17Ohを有し、直径が縮小された領域を提供する)、これは、本発明者が、異なる大きさの水晶体嚢を有する患者の眼内への所定の大きさのレンズの設置を容易にするために望ましいことを見出したものである。このような実施の形態では、レンズは、線C−Dに沿うよりも線A−Bに沿うほうが、水晶体の後嚢のより大きい部分を覆う。
【0031】
典型的な水晶体嚢の直径は、10〜13mmの範囲であり、平均約11.5ミリメートルである(すなわち、約104mm
2の面積)。光学機器が5mmの直径を有すると仮定すると(すなわち、約20mm
2の面積)、約84mm
2の水晶体の後嚢は光学機器によって被覆されない。本出願人は、光学機器を取り囲む1つ以上の支持プレートの面積が少なくとも60mm
2の合計面積を有する(面積の約70%が光学機器によって被覆されない)ことを提案し、一部の実施の形態では、少なくとも65mm
2を有する(面積の約80%が光学機器によって被覆されない)。
【0032】
一部の実施の形態では、光学機器および支持プレートを合わせて、平均的な眼の水晶体の後嚢の少なくとも65%を覆い(すなわち、光学機器および支持プレートは約70mm
2の合計表面積を有する)、一部の実施の形態では、光学機器および支持プレートは、平均的な眼の水晶体の後嚢の少なくとも70%を覆い(すなわち、光学機器および支持プレートは約75mm
2の合計表面積を有する)、一部の実施の形態では、光学機器および支持プレートは、平均的な眼の水晶体の後嚢の少なくとも75%を覆い(すなわち、光学機器および支持プレートは、約80mm
2の合計表面積を有する)、一部の実施の形態では、光学機器および支持プレートは、平均的な眼の水晶体の後嚢の少なくとも80%を覆う(すなわち、光学機器および支持プレートは約85mm
2の合計表面積を有する)ことが理解されよう。典型的には、光学機器および支持プレートの合計表面積は、平均的な眼の水晶体の後嚢の95%未満であり(すなわち、光学機器および支持プレートは、約100mm
2の合計表面積を有する)、異なる大きさの水晶体嚢を有する眼への適合を可能にする。したがって、光学機器および支持プレートは、70mm
2〜100mm
2の合計表面積を有する。一部の実施の形態では、光学機器および支持プレートは、75mm
2〜100mm
2の合計表面積を有する。一部の実施の形態では、光学機器および支持プレートは、80mm
2〜100mm
2の合計表面積を有する。一部の実施の形態では、光学機器および支持プレートは、90mm
2〜100mm
2の合計表面積を有する。
【0033】
水晶体の後嚢を覆う点で有効なプレートは、半径寸法における(すなわち、光軸OAから垂直に延在する方向に測定して)実在する幅を有することが典型的には有利であることが理解されよう。一部の実施の形態では、支持プレートまたは各支持プレートは、支持プレートの角度の全範囲に(θの方向に)わたり、1mm〜3.5mmの半径寸法における幅を有するように選択され、一部の実施の形態では、幅は、その角度の全範囲に(θの方向に)わたり、少なくとも1.5〜3.5mmである。一部の実施の形態では、幅は、その角度の全範囲に(θの方向に)わたり、少なくとも2.0〜3.5mmである。一部の実施の形態では、幅は、その角度の全範囲に(θの方向に)わたり、少なくとも2.5〜3.5mmである。1つまたはそれ以上の支持プレートの幅は、ある程度、光学機器の直径に依存しうる。
【0034】
図示する実施の形態では、レンズは、光学機器を支持プレートに連結するためのコネクタ130a〜130dを有する。それらは、支持プレートと比べて比較的可撓性であり、それによって、プレートのたわみに応じて、光学機器の大きいたわみを可能にすることが理解されよう。図示した実施の形態では4つのコネクタが存在するが、1つ以上のコネクタを用いて光学機器を支持プレートに結合して差し支えない。
【0035】
図示する実施の形態では、支持プレートは、設置する水晶体嚢(例えば、周縁)における支持プレートの固定を補助するための、外周から延在するフィラメント140a〜140を有する。このような固定は、フィラメント全体に線維形成が生じた後に特に有効でありうる。さらには、比較的剛性の支持プレートの存在により、フィラメントは水晶体嚢拡張リングとして機能し、したがって嚢と小帯の構造に完全性が加わり、小帯の損傷を補う。例えば、フィラメントは、ポリイミドを含みうる。図示する実施の形態では、互いに90°離れて配置された4つのフィラメントが存在する。典型的には、4つ以上のフィラメントがレンズの周辺に等間隔に配置される。
【0036】
光学機器および支持プレートは、折り畳み可能で、調節性運動を達成するように収縮するための弾性を有し、その原形に戻る、任意の適切な生体適合性の材料から作られうる。例えば、光学機器および支持プレートは、シリコーンまたはCollamer(登録商標)(コラーゲンおよびポリHEMA系共重合体)でできていてもよい。
【0037】
一部の実施の形態では、支持プレート120がコネクタ130よりも剛性である場合に有利である(すなわち、所定のモーメントアームにわたり支持プレートに印加される所定の力は、支持プレートに特有のたわみを生じ、同一のモーメントアームにわたる同一の力がコネクタのいずれか1つに印加される場合、コネクタのたわみは支持プレートのたわみよりも大きい)。調節過程の間に特定の硝子体圧力に晒される際には、このような実施の形態では、プレートは相対的に静止し(嚢縁に隣接して延在するプレートに起因して)、光学機器は動かされることが理解されよう。フィラメントを有する実施の形態では、フィラメント全体にわたり線維形成が生じた後、フィラメントおよび支持プレートは水晶体嚢内に剛性の構造を形成し、それによって調節の間に生じる硝子体の運動を促進し、主として光学機器の運動を生じさせることが認識されよう。このような結果は、少なくとも一部には、コネクタが比較的低剛性であることに起因する。
【0038】
毛様体筋の収縮によって所定量の硝子体液が失われることもまた理解されよう。プレートとコネクタの相対的剛性を適切に調節することによって、硝子体の前述の変位量の大部分を光学機器の裏側で生じさせ、それによって光学機器の調節性運動を促進することが可能である。一部の実施の形態では、レンズは比較的薄く(すなわち、光学機器の縁部は50〜150μmである)、それにより、コネクタが延在する際の光学機器の調節性の変形に加えて、光学機器は光学機器の屈折力を変えるために変形することができる。
【0039】
一部の実施の形態では、プレートの剛性を増大させるために埋没物を加えてもよい。図示する実施の形態では、プレートの剛性を増大させるために、リブ180a〜180hが加えられている。典型的には、リブ埋没物は、レンズ本体の残りの部分とは異なる材料のものである。例えば、図示する実施の形態では、リブは、支持フィラメントを形成するのに用いられるものと同一材料であるポリイミド材料でできている。リブ180a〜180dの4つは対応するフィラメント140に取り付けられており、リブ180e〜180hの4つはフィラメントとは別になっている。一部の実施の形態では、リブはノッチで互いに接続するように延在して差し支えなく、それによって1つのリブ骨格からレンズの周囲全体に延在する。
【0040】
一部の実施の形態では、プレートの剛性は、プレートの寸法を適切に選択することにより強化されうる。例えば、プレートはコネクタの少なくとも一部と比べて比較的大きい厚みを有していてもよい。一部の実施の形態では、支持プレートは、少なくとも1つのコネクタの任意の部分より大きい厚さを有する。厚みの増大は、プレート全体に生じても、プレートの選択された部分に生じてもよい。例えば、プレートは1つ以上のリッジ150a、150bを有していて構わない(
図3Aに示す)。一部の実施の形態では、リッジは高さ0.1mm、幅0.1mmである(リッジを半径方向に横断して測定)。リッジはレンズの後面に配置された鋭いエッジを備えて、後嚢混濁(PCO)を防止してもよい。一部の実施の形態では、1つ以上のリッジは支持プレートの周囲に360°延在し、それによってPCOからの360°の保護を提供する。一部の実施の形態では、従来の抗PCO構造(例えば、光学機器状の鋭いエッジ)が後面に備わっていて差し支えない。
【0041】
リッジの代替として、PCOから保護するために、鋭いエッジを備えた1つ以上のトラフが支持プレートの後面に備わっていてもよい。このような実施の形態では、支持プレートは、そのほかにプレートに適切な剛性を提供するように(例えば、上述のリブを用いて)構成されることが有利であろう。一部の実施の形態では、レンズが水晶体嚢に位置する場合には、レンズが湾曲した後部(posterior vault)を有することにより、光学機器を硝子体のほうに偏らせると有利である。一部の実施の形態では、支持プレートは、光学機器を後方に配置することによって光学機器の運動をさらに促進するため、より小さい直径を有する円錐端に位置する光学機器を備えて、円錐形に成形される。
【0042】
プレートは比較的剛性になるように構成されうるが、プレートと光学機器は折り畳み可能であって、それにより眼内へのレンズの挿入を容易にすることもまた、望ましい。ノッチ160a〜160fをレンズ本体に提供し、ノッチの間の軸に沿って折り畳みやすくする。例えば、図示するレンズは、3重に折り畳み可能なように構成される。各側面は折り畳むことができ(すなわち、ノッチ160aと160bの間の軸、およびノッチ160eと160fの間の軸に沿って)、レンズを軸に対して半分に折り畳むことができ(すなわち、ノッチ160cと160dの間の軸に沿って)、各折り畳みは向かい側にあるノッチを通って延在する軸に対して生じる。このような折り畳みを使用してIOL挿入器または他の挿入器内へのレンズの装填を容易にして差し支えない。本発明の態様に従ったレンズの一部の実施の形態では、光学機器を支持プレートに接続するヒンジを有さないことが理解されよう(すなわち、レンズには、支持プレートと光学機器の間にヒンジが存在しない)。このような構成は、眼の水晶体嚢内に支持プレートが比較的固定されて配置される状態を維持すると同時に、光学機器の調節運動を増強する。コネクタは、コネクタの屈伸によって生じる光学機器の変形を可能にする、繋ぎ止めるロープ(すなわち、ストラップ)を形成する。コネクタを適切に構成することにより、硝子体の圧力に応じてコネクタの屈伸が生じるように、張力に応じ、支持プレートと比べて、比較的低いバネ定数を有するコネクタを作ることができる。本明細書では「ヒンジ」という用語は、単にヒンジ軸の周りを回転可能な構造のことをいう。一部の実施の形態は、ストラップを備え、ヒンジを有しないが、本発明に従ったレンズの一部の実施の形態では、1つ以上のコネクタは1つ以上のストラップおよび/またはヒンジを含んでいてもよいものと理解されたい。
【0043】
図示したレンズは4つのコネクタを有するが、1つ以上のコネクタが用いられうる。例えば、単一のコネクタ(スカートとも称される)は、光学機器の周囲に360°延在して差し支えなく、あるいはその一部分にだけ広がっていてもよい。他の実施の形態では、
図2に示すように、コネクタはストラップとして構成され、各ストラップは、光学機器の周囲に、限られた距離で延在する幅を有する。一部の実施の形態では、レンズの非光学的部分、例えばプレートおよびコネクタは、光の分散によって生じるグレアを防ぐために、つや消しされる。
【0044】
図3Bは、別のフィラメント構造の図であり、隣接するフィラメント380cおよび380fは、凹面370cを横断して互いの方へ延在する。フィラメントは任意の適切な形状を有しうる。隣接するフィラメントのリブは、互いに接続していてもよい。例えば、リブ380c
1および380f
1は、互いに連結して差し支えなく、リブ380c
2および380f
2は互いに接続して差し支えない。
【0045】
上記説明は眼の水晶体嚢内に適合するサイズおよび形状で提供されているが、一部の実施の形態では、レンズは眼窩溝に適合するサイズおよび形状であって構わない。眼窩溝に設置されたレンズの調節能力は、一部には眼の寸法(すなわち、そのように配置されたレンズと硝子体表面の間のスペース)に依存するであろうことが理解されよう。レンズ100の寸法の例を、
図4および5に関連して提供する。
T
1 = 0.45mm
T
2 = 0.65mm
T
3 = 0.55mm
T
4 = 0.25mm
T
5 = 0.35mm
T
6 = 0.25mm
T
7 = 0.45mm
T
8 = 0.25mm
T
9 = 0.10mm
D
1 =10.75mm
D
2 = 9.75mm
D
3 = 5.0mm
L
1 = 0.3mm
L
2 = 0.5mm
【0046】
図6A〜6Cは、異なるコネクタの構成を有するIOLのさらなる例の上面図である。
図6Aでは、開口部632a〜632dの間に長方形のコネクタ630a〜630dを有するレンズ600が示されている。
図6Bでは開口部の間に先細のコネクタ640a〜640dを有するレンズ602が示されている。
図6Cでは、開口部の間に正接したコネクタ650a〜65Odを有するレンズ604が示されている。各レンズは、上述のように、4つのコネクタを有するように示されているが、任意の適切な数のコネクタを使用して差し支えない。しかしながら、
図6A〜6Cに示すようなコネクタの形状を有するレンズは少なくとも2つのコネクタを有するであろう。
【0047】
本発明の態様に従ったレンズは、適切な技術を用いて眼内に挿入されて差し支えない。例えば、手術用鉗子を用いてもよい。あるいは、作動要素(例えばプランジャ)を備えた挿入器を用いてもよい。レンズは半分に折り畳まれるか、あるいは、上述のように3つ折り、または任意の他の適切な方法で折り畳まれて差し支えない。レンズが眼内に挿入される際にさらに折り畳まれるか圧縮されるように、挿入器のルーメンを傾斜させてもよい。
【0048】
本発明のある態様は、上記のように構成されたアコモダティブ眼内レンズ(AIOL)の適用方法を対象とする。レンズは患者の眼内に移植される。レンズ、少なくとも1つの支持プレートと光学機器が、患者の眼の水晶体の後嚢の65%〜95%を覆うように選択される。典型的には、水晶体の後嚢の直径は、10〜13mmの範囲であるが、被験者はどのような大きさの眼であってもよい。一部の適用では、少なくとも1つの支持プレートと光学機器が、患者の眼の水晶体の後嚢の70%〜95%を覆って差し支えない。一部の適用では、少なくとも1つの支持プレートおよび光学機器は、患者の眼の水晶体の後嚢の75%〜95%を覆っていて構わない。一部の適用では、少なくとも1つの支持プレートおよび光学機器は、患者の眼の水晶体の後嚢の80%〜95%を覆っていてもよい。
【0049】
したがって、本発明の概念および多くの典型的な実施の形態について説明してきたが、本発明は、さまざまな方法により実現されうることは当業者にとって明白であろう。また、そのような人々にとって、変更および改善は容易に想起されるであろうことも明白であろう。よって、実施の形態は、限定されることを意図しておらず、単に例証として提示されるものである。本発明は、添付の特許請求の範囲およびその等価物に必要とされるようにのみ、限定される。