(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メソフェーズカーボン小球体の黒鉛化物を基材とし、前記基材の表面の少なくとも一部に、前記基材の表面よりも結晶性の低い炭素質物の付着物を有するリチウムイオン二次電池用負極材料であって、前記黒鉛化物がメソフェーズカーボン小球体を粉砕した後、黒鉛化して得た黒鉛化物であって、
前記基材のX線回折による炭素網面層の格子面間隔d002が0.3365nm以下で、波長514.5nmのアルゴンレーザーを用いたラマンスペクトルにおける1360cm−1のピーク強度と1580cm−1のピーク強度との強度比(RA)が0.05〜0.3であり、かつ、前記負極材料の前記ラマンスペクトルにおける1360cm−1のピーク強度と1580cm−1のピーク強度との強度比(RB)が0.3以上であって、RA<RBであり、前記結晶性の低い炭素質物の付着物が、炭素繊維を含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材料。
メソフェーズカーボン小球体を粉砕する粉砕工程と、前記粉砕工程で得られたメソフェーズカーボン小球体の粉砕品を加熱する黒鉛化工程と、前記黒鉛化工程で得られたメソフェーズカーボン小球体の黒鉛化物の表面の少なくとも一部に炭素質材料および炭素繊維を付着させる付着工程と、前記付着工程で得られた炭素質材料が付着したメソフェーズカーボン小球体の黒鉛化物を加熱し、前記炭素質材料を炭化する炭化工程を有することを特徴とする、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料を製造する、リチウムイオン二次電池用負極材料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をより具体的に説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極材料は、メソフェーズカーボン小球体の粉砕品の黒鉛化物を基材とし、前記基材の表面の少なくとも一部、好ましくは前記基材のエッジ面に、前記基材の表面よりも結晶性の低い炭素質物が付着した負極材料である。
以下、基材、付着物、負極材料、付着方法、負極、正極、非水電解質、セパレータ、リチウムイオン二次電池の順に説明する。
【0016】
〔基材〕
本発明の負極材料の基材として用いられる黒鉛化物は、メソフェーズカーボン小球体(以後、単に小球体とも記す)を粉砕して得た粉砕品を黒鉛化してなる黒鉛化物である。前記黒鉛化物は、通常、表面の少なくとも一部に、黒鉛化物の内部に比べて結晶性の低い、原料ピッチ等に由来する炭素質の極薄層を有する二層構造体である。
【0017】
メソフェーズカーボン小球体は、石油系または石炭系のピッチ類を350〜450℃程度の温度で加熱した際に、ピッチマトリックス中に生成する粒径が数μm〜数十μmの光学的異方性小球体である。前記小球体は、ピッチマトリックスからベンゼン、トルエン、キノリン、タール中油、タール重油などの溶剤を用いて抽出分離される。
【0018】
分離されたメソフェーズカーボン小球体を350℃以上、好ましくは350〜900℃の温度で焼成した後、分級によって粗粒および塊状物を除去し、粉砕して粒度分布を調整した小球体の焼成生成物を得る。
前記焼成はロータリーキルンなどを用いて、不活性雰囲気中で行うことができる。前記焼成時に前記小球体の表面に付着していた微量のピッチ等が炭化される。
【0019】
前記分級は篩、風力分級等の一般に工業的に行われている方法で実施される。例えば、200メッシュ(篩目75μm)の篩を用いて目標とする最大粒子径未満に調整される。粒子径調整後、付着工程に供される小球体の平均粒子径は2〜100μm、特に5〜50μmであることが好ましい。粒子径調整後の前記小球体の平均粒子径が前記範囲内であれば、表面積の増大による初回充放電効率の低下の問題が解消され、かつ負極合剤を調製後、集電体に塗布する際の電極塗装性が良好である。
なお、焼成生成物を粉砕、分級して粒度調整した後、黒鉛化してもよく、粉砕後の焼成生成物の分級による粗粒および塊状物、微粉の除去を前記焼成生成物の黒鉛化後に行うこともできる。
粒子径調整後の前記小球体の窒素ガス吸着BET法による比表面積は5m
2/g以下、特に1m
2/g以下であることが好ましい。
【0020】
前記小球体の粉砕は粒度分布の最適化によるリチウムイオン二次電池用負極材料としての特性向上などに有効な不可欠な工程である。
粉砕手段は特に限定されないが、比較的精密な粒度制御が可能なジェット粉砕などが好適である。前記粉砕条件も格別限定されない。なお、小球体の平均粒子径が100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは3〜20μmになるように条件設定する。
小球体の黒鉛化前に粉砕せずに、小球体を黒鉛化して得た黒鉛化物の粉砕品を、リチウムイオン二次電池用負極材料として用いた場合には初回充放電効率の点で劣るので、小球体の黒鉛化前に粉砕することが重要である。これは、黒鉛化後の粉砕品にはエッジ面が多く存在していることに拠るものと推定される。
【0021】
粒子径調整後の前記メソフェーズカーボン小球体を、さらに2000℃以上、好ましくは2500℃以上の温度で加熱することにより、結晶性が高いメソフェーズカーボン小球体(黒鉛質)の表面に、前記表面に付着していたピッチ等に基く、小球体の内部に比べて低結晶性の炭素質の極薄層が形成され、二層構造の小球体が得られる。
【0022】
前記小球体(基材)の表面の結晶性は、アルゴンレーザーを用いたラマンスペクトルによって評価される。ここで、基材の表面とは、小球体に通常付着している極薄層の表面を意味する。なお、本発明の負極材料の結晶性も同様に評価される。すなわち、黒鉛構造に基く9種の格子振動のうち、網面内格子振動に相当するE2g型振動に対応した1580cm
−1近傍のスペクトル強度(IG)と、主に表層での結晶欠陥、積層不整などの結晶構造の乱れを反映した1360cm
−1近傍のスペクトル強度(ID)を、波長514.5nmのアルゴンレーザーを用いたラマン分光分析器により測定する。そして、ピーク強度比(R
A=ID/IG、R
B=ID/IG)を算出する。
【0023】
強度比R
Aが大きなものほど基材の表面の結晶性が低いと評価される。強度比R
Aは不可逆容量を小さくする観点から、R
Aが0.05〜0.3、特に好ましくは0.08〜0.3である。表面の結晶性が高く、R
Aが0.05未満であると、不可逆容量が大きく、充分な電池特性(放電容量、初回充放電効率、レート特性)が得られない。これは、表面の結晶性が高すぎて非水電解液の分解反応が進行しやすくなるためと推考される。
【0024】
前記基材の平均的な結晶性は、X線広角回折法における炭素網面層の面間隔d
002および結晶子のC軸方向の大きさ(Lc)からも評価することができる。本発明の負極材料の結晶性も同様に評価することができる。すなわち、CuKα線をX線源、高純度シリコンを標準物質に使用して、基材に対し(002)回折ピークを測定し、そのピーク位置およびその半値幅から、それぞれd
002、Lcを算出する。算出方法は学振法(日本学術振興会第117委員会が定めた測定法)に従うものであり、具体的な方法は「炭素繊維」(大谷杉郎著、近代編集社、昭和61年3月発行)の733〜742頁などに記載されている。
【0025】
前記基材の黒鉛構造の発達度合いの指標となるX線回折法によるd
002およびLcは、高い放電容量を発現させる観点から、d
002≦0.3365nm、Lc≧40nmであることが好ましく、d
002≦0.3362nm、Lc≧50nmであることが特に好ましい。d
002>0.3365nm、Lc<40nmであると黒鉛構造の発達の程度が低いため、リチウムイオン二次電池の負極材料として用いたときに、リチウムのドープ量が少なく、高い放電容量が得られないことがある。
【0026】
また、前記基材は、その比表面積が大きすぎると初回充放電効率や安全性が低下するなどの問題があるので、窒素ガス吸着BET法による比表面積が20m
2/g以下、特に5m
2/g以下であることが好ましい。
【0027】
〔付着物〕
前記基材に付着する付着物は、前記基材の表面より結晶性の低い炭素質物である。前記付着物は小球体の黒鉛化物が通常有する炭素質の極薄層とは結晶性が異なり、前記極薄層とは別の層を形成する。
前記炭素質物は、例えば、炭素質材料を600℃以上、好ましくは800℃以上の温度に加熱し炭化してなるものが好ましい。炭素質材料の種類は問わないが、石炭系または石油系のタールピッチ類および/または樹脂類であることが好ましい。具体的には、タールピッチ類としてコールタール、タール軽油、タール中油、タール重油、ナフタリン油、アントラセン油、コールタールピッチ、ピッチ油、メソフェーズピッチ、酸素架橋石油ピッチ、ヘビーオイルなどが挙げられる。特に好ましいのはコールタールピッチ、メソフェーズピッチなどである。樹脂類としては、ポリビニルアルコールなどの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂などが挙げられる。
【0028】
〔負極材料〕
本発明の負極材料は、前記基材(小球体)の表面に、前記表面の炭素質の極薄層より結晶性の低い炭素質物の付着物を、別の層として有する構造体である。
前記基材表面に付着する炭素質物は、基材表面の少なくとも一部を被覆していればよいが、エッジ面を被覆していることが特に好ましい。また、前記付着物は膜状、繊維状、粒状などいかなる形態で付着していてもよく、これら複数の組み合わせであってもよい。
【0029】
本発明の負極材料における前記炭素質物の付着量は、負極材料100質量%に対し、1〜50質量%、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%である。付着量は、炭素質材料を付着させる処理前後における負極材料の質量から計算で求めることができる。
付着物による基材表面の被覆状態は特に限定されないが、全面を均一に被覆していることが好ましい。被覆率は、例えば、ラマン分光法などによって測定することができる。付着物の膜厚は特に限定されないが、100nm以下であることが好ましい。膜厚は、例えば、粒子断面の透過型電子顕微鏡による観察などによって測定することができる。
【0030】
本発明の負極材料のアルゴンレーザーのラマンスペクトルによる1580cm
−1に対する1360cm
−1のピーク強度比(R
B)が0.3以上、より好ましくは0.3〜1.0、特に好ましくは0.4〜1.0である。R
Bが前記範囲であると初回充放電効率やレート特性が向上するので好ましい。
また、負極材料の強度比R
Bが基材の強度比R
Aより大きい(R
A<R
B)と、前記負極材料の最表面に位置する負極材料の結晶性が基材の結晶性(R
Aが0.05以上)より低いことを意味し、初回充放電効率が向上するので好ましい。より好ましいのは0.05≦R
A<R
B≦1.0である。
【0031】
本発明の負極材料の平均粒子径は、体積換算の平均粒子径で1〜100μm、特に1〜50μm、さらに1〜30μmであることが好ましい。1μm以上であれば、負極の充填密度を高められるため体積当りの放電容量が向上し、100μm以下であれば、サイクル特性やレート特性が向上する。体積換算の平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布計により粒度分布の累積度数が体積百分率で50%となる粒子径である。
本発明の負極材料の比表面積は5m
2/g以下、特に3m
2/g以下、さらに2m
2/g以下であることが好ましい。前記範囲内であれば、初回充放電効率が向上する。
本発明の負極材料のタップ密度は1.0g/m
3以上、特に1.3g/m
3以上、さらに1.4g/m
3以上であることが好ましい。最も好ましくは1.45g/m
3以上である。前記範囲内であれば、初回充放電効率が向上する。
なお、タップ密度とは150cm
3の容器に試料を充填し、300回タップした後の密度を言う。
【0032】
本発明の負極材料は、本発明の目的を損なわない範囲で、異種の黒鉛質材料、非晶質ハードカーボンなどの炭素質材料、有機物、金属、金属化合物などを混合しても、内包しても、被覆してもよい。また、本発明の負極材料は、液相、気相、固相における各種化学的処理、熱処理、物理的処理、酸化処理などを施されてもよい。
また、本発明の負極材料における基材と付着物との境界に、組成が傾斜的に変化する界面層が存在してもよい。例えば、付着処理にメカノケミカル処理を用いる場合、付着するピッチの研磨効果で、基材表面の極薄層の最表面の結晶性がやや乱される(結晶性が低下する)ことがあり得る。
【0033】
〔付着方法〕
本発明における炭素質物の基材表面への付着は、いかなる方法によってもよいが、気相法、液相法、固相法によるのが好ましく、特に固相法によるのが好ましい。また、これらの複数の組み合わせであってもよい。本発明の代表的な炭素質物の基材表面への付着方法を以下に示す。
【0034】
固相法としては炭素質材料の粉末と基材を圧縮、剪断、衝突、摩擦などの機械的エネルギーを付与するメカノケミカル処理などによって圧着する方法が挙げられる。このような操作が可能な装置としては、例えば、GRANUREX[フロイント産業(株)製]、ニューグラマシン[(株)セイシン企業製]、アグロマスター[ホソカワミクロン(株)製]などの造粒機、ロールミル、ハイブリダイゼーション[(株)奈良機械製作所製]、メカノマイクロシステム[(株)奈良機械製作所製]、メカノフュージョンシステム[ホソカワミクロン(株)製]などの圧縮剪断式加工装置などを挙げることができる。
炭素質材料については前述したが、特に好ましいのはコールタールピッチ、メソフェーズピッチなどである。
【0035】
気相法としては、基材にベンゼンなどの炭化水素の蒸気を高温で蒸着する方法が挙げられる。
液相法としては炭素質材料の溶液に基材を分散したのち、溶媒を除去する方法が挙げられる。
【0036】
いずれの方法で形成された炭素質物も、不活性雰囲気中、900〜1500℃、好ましくは1000〜1300℃の温度で加熱することによって炭化されるので、電池特性をより向上させることができる。
【0037】
本発明の負極材料を用いた場合に、初回充放電効率、レート特性などが改良されるメカニズムについては明らかではないが、次のように推定される。すなわち、通常は低結晶性の黒鉛質層を有する黒鉛化物(基材)の表面が、さらに低結晶性の炭素質物の薄層で被覆されているため、黒鉛化物のエッジ面での非水電解液の分解が生じにくく、たとえ、炭素質物の薄層が損傷したとしても、黒鉛化物内部の結晶性の最高部は、それ自身が元から有する低結晶性の黒鉛質層に覆われているためエッジ面の露出部分が少なく、非水電解液の分解による初回充放電効率の低下を生じることがない。
【0038】
また、本発明は、基材として光学的異方性を有するメソフェーズカーボン小球体の粉砕品を黒鉛化した黒鉛化物を用いるため、負極内の粒子の配向が小さく、負極内でのリチウムイオンの拡散性が向上する。また、粉砕によって適度な粒子径範囲・粒度分布に調整されているため、負極内において粒子間接点が充分に確保され、電子伝導性が向上する。これらの要因によって良好なレート特性が発現するものと推考される。
【0039】
〔負極〕
本発明は、前記負極材料を含有するリチウムイオン二次電池用負極であり、該負極を用いるリチウムイオン二次電池である。
本発明の負極は、通常の負極の成形方法に準じて作製されるが、本発明の負極材料の電池特性を充分に引き出し、かつ賦型性が高く、化学的、電気化学的に安定な負極を得ることができる成形方法であれば何ら制限されない。
負極の作製時には、本発明の負極材料に結合剤を加えて調製した負極合剤を用いることが好ましい。結合剤としては、非水電解質に対して、化学的および電気化学的に安定なものが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂粉末、ポリエチレン、ポリビニルアルコールなどの樹脂粉末、カルボキシメチルセルロースなどが用いられる。これらを併用することもできる。結合剤は、通常、負極合剤全量中の1〜20質量%程度の割合で用いられる。
【0040】
具体的には、まず、本発明の負極材料を分級などにより所望の粒度に調整し、結合剤と混合して得た混合物を溶剤に分散させ、ペースト状にして負極合剤を調製する。すなわち、本発明の負極材料と結合剤を、水、イソプロピルアルコール、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなどの溶剤と混合して得たスラリーを、公知の攪拌機、混合機、混練機、ニーダーなどを用いて攪拌混合して、負極合剤ペーストを調製する。該ペーストを、集電材の片面または両面に塗布し、乾燥すれば、負極合剤層が均一かつ強固に接着した負極が得られる。負極合剤層の膜厚は10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
【0041】
また、本発明の負極は、本発明の負極材料と、ポリエチレン、ポリビニルアルコールなどの樹脂粉末を乾式混合し、金型内でホットプレス成形して作製することもできる。
【0042】
負極合剤層を形成した後、プレス加圧などの圧着を行うと、負極合剤層と集電材との接
着強度をさらに高めることができる。
負極の作製に用いる集電材の形状は、特に限定されないが、箔状、メッシュ、エキスパンドメタルなどの網状物などが好ましい。集電材の材質としては、銅、ステンレス、ニッケルなどが好ましい。集電材の厚みは、箔状の場合は好ましくは5〜20μmである。
【0043】
なお、本発明の負極は、本発明の目的を損なわない範囲で、異種の黒鉛質材料、非晶質ハードカーボンなどの炭素質材料、有機物、金属、金属化合物などを混合しても、内包しても、被覆しても、積層してもよい。
【0044】
また、本発明の負極は、250MPaでプレスされた状態でのX線回折スペクトルにおける黒鉛の(004)面と(110)面のピーク強度比I(004)/I(110)が4以下であり、一般的な黒鉛の強度比の範囲内にある。前記強度比は、その比の値が小さいほど負極内の粒子配向が小さいことを意味する。
【0045】
[正極]
正極は、例えば正極材料と結合剤および導電剤よりなる正極合剤を集電材の表面に塗布することにより形成される。正極材料(正極活物質)は、充分量のリチウムを吸蔵/脱離し得るものを選択するのが好ましく、リチウム含有遷移金属酸化物、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物およびそのリチウム化合物などのリチウム含有化合物、一般式 M
XMO
6S
8−Y(式中、Mは少なくとも一種の遷移金属元素であり、Xは0≦X≦4、Yは0≦X≦1の範囲の数値である)で表されるシェブレル相化合物、活性炭、活性炭素繊維などである。
【0046】
リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属との複合酸化物であり、リチウムと2種類以上の遷移金属を固溶したものであってもよい。複合酸化物は単独で使用しても、2種類以上を組合せて使用してもよい。
リチウム含有遷移金属酸化物は、LiM
11−XM
2XO
2(式中、M
1、M
2は少なくとも一種の遷移金属元素であり、Xは0≦X≦1の範囲の数値である)、またはLiM
11−YM
2YO
4(式中、M
1、M
2は少なくとも一種の遷移金属元素であり、Yは0≦Y≦1の範囲の数値である)で示される。
【0047】
M
1、M
2で示される遷移金属元素は、Co、Ni、Mn、Cr、Ti、V、Fe、Zn、Al、In、Snなどであり、好ましいのはCo、Mn、Cr、Ti、V、Fe、Alなどである。好ましい遷移金属酸化物は、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2、LiNi
0.9Co
0.1O
2、LiNi
0.5Co
0.5O
2などである。
バナジウム酸化物はV
2O
5、V
6O
13、V
2O
4、V
3O
8で示されるものである。
【0048】
リチウム含有遷移金属酸化物は、例えば、リチウム、遷移金属の酸化物、水酸化物、塩類等を出発原料とし、これら出発原料を所望の金属酸化物の組成に応じて混合し、酸素雰囲気下600〜1000℃の温度で焼成することにより得ることができる。
【0049】
正極活物質は、前記酸化物を単独で使用しても2種類以上併用してもよい。例えば、正極中に炭酸リチウム等の炭素塩を添加することができる。また、正極を形成するに際しては、従来公知の導電剤などの各種添加剤を適宜に使用することができる。
【0050】
正極は、正極材料、結合剤、および正極に導電性を付与するための導電剤よりなる正極合剤を、集電材の両面に塗布して正極合剤層を形成して作製される。結合剤としては、負極の作製に使用されるものと同じものが使用可能である。導電剤としては、黒鉛化物など公知のものが使用される。
集電材の形状は特に限定されないが、箔状またはメッシュ、エキスパンドメタル等の網状等のものが用いられる。集電材の材質は、アルミニウム、ステンレス、ニッケル等である。その厚さは10〜40μmのものが好適である。
【0051】
正極も負極と同様に、正極合剤を溶剤中に分散させペースト状にし、このペースト状の正極合剤を集電材に塗布、乾燥して正極合剤層を形成してもよく、正極合剤層を形成した後、さらにプレス加圧等の圧着を行ってもよい。これにより正極合剤層が均一且つ強固に集電材に接着される。
【0052】
[非水電解質]
本発明に用いられる非水電解質は、通常の非水電解液に使用される電解質の塩である。例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiClO
4、LiB(C
6H
5)、LiCl、LiBr、LiCF
3SO
3、LiCH
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiC(CF
3SO
2)
3、LiN(CF
3CH
2OSO
2)
2、LiN(CF
3CF
2OSO
2)
2、LiN(HCF
2CF
2CH
2OSO
2)
2、LiN[(CF
3)
2CHOSO
2]
2、LiB[C
6H
3(CF
3)
2]
4、LiAlCl
4、LiSiF
6などのリチウム塩を用いることができる。特にLiPF
6、LiBF
4が酸化安定性の点から好ましく用いられる。
非水電解液中の電解質塩濃度は0.1〜5mol/lが好ましく、0.5〜3.0mol/l がより好ましい。
【0053】
非水電解質は液状電解質としてもよく、固体電解質またはゲル電解質などの高分子電解質としてもよい。液状電解質の場合は、非水電解質電池はいわゆるリチウムイオン二次電池として構成され、高分子電解質の場合は、高分子固体電解質電池、高分子ゲル電解質電池などの高分子電解質電池として構成される。
【0054】
非水電解液を調製するための溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどのカーボネート、1,1−または1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソフラン、アニソール、ジエチルエーテルなどのエーテル、スルホラン、メチルスルホランなどのチオエーテル、アセトニトリル、クロロニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル、ホウ酸トリメチル、ケイ酸テトラメチル、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、トリメチルオルトホルメート、ニトロベンゼン、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、3−メチル−2−オキサゾリドン、エチレングリコール、ジメチルサルファイトなどの非プロトン性有機溶媒を用いることができる。
【0055】
非水電解質を高分子電解質とする場合には、マトリックスとして可塑剤(非水電解液)でゲル化された高分子化合物を用いることが好ましい。前記高分子化合物としては、ポリエチレンオキサイドやその架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレート系高分子化合物、ポリアクリレート系高分子化合物、ポリビニリデンフルオライドやビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系高分子化合物などを単独または混合して用いることができる。
これらの中で、酸化還元安定性の観点などから、ポリビニリデンフルオライドやビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系高分子化合物を用いることが好ましい。
【0056】
高分子固体電解質の作製方法は特に限定されないが、例えば、マトリックスを構成する高分子化合物、リチウム塩および非水溶媒(可塑剤)を混合し、加熱して高分子化合物を溶融・溶解する方法、混合用有機溶媒に、高分子化合物、リチウム塩、および非水溶媒(可塑剤)を溶解させた後、混合用有機溶媒を蒸発させる方法、重合性モノマー、リチウム塩および非水溶媒(可塑剤)を混合し、混合物に紫外線、電子線または分子線などを照射して、重合性モノマーを重合させ、ポリマーを得る方法などを挙げることができる。
前記固体電解質中の非水溶媒(可塑剤)の割合は10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。10質量%未満であると導電率が低くなり、90質量%超であると機械的強度が低下し、製膜しにくくなる。
【0057】
〔セパレータ〕
本発明のリチウムイオン二次電池においては、セパレータを使用することもできる。
セパレータは特に限定されるものではないが、例えば織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜などが挙げられる。合成樹脂製微多孔膜が好適であるが、なかでもポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗の面で好適である。具体的には、ポリエチレンおよびポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜等である。
【0058】
[リチウムイオン二次電池]
本発明のリチウムイオン二次電池は、前記の少なくともリチウムと合金化可能な金属と黒鉛化物を含む負極材料において、前記金属と黒鉛化物が、炭素質材料以外の導電性材料で結合または被覆された負極、正極および非水電解質を、例えば、負極、非水電解質、正極の順で積層し、二次電池の外装材内に収容することで構成される。さらに、負極と正極の外側に非水電解質を配するようにしてもよい。
【0059】
また、本発明のリチウムイオン二次電池の構造は特に限定されず、その形状、形態について特に限定されるものではなく、用途、搭載機器、要求される充放電容量などに応じて円筒型、角型、コイン型、ボタン型などの中から任意に選択することができる。より安全性の高い密閉型非水電解液電池を得るためには、過充電などの異常時に電池内圧上昇を感知して電流を遮断させる手段を備えたものであることが好ましい。
高分子固体電解質電池や高分子ゲル電解質電池の場合には、ラミネートフィルムに封入した構造とすることもできる。
【実施例】
【0060】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また以下の実施例、参考例および比較例では、
図1に示すように、少なくとも表面の一部にリチウムと合金化可能な金属が付着した集電体(負極)7bとリチウム箔よりなる対極(正極)4から構成される単極評価用のボタン型二次電池を作製して評価した。実電池は、本発明の概念に基づき、公知の方法に準じて作製することができる。
【0061】
(参考例1)
[負極材料の作製]
フリーカーボン(QI)を0.5質量%含有するコールタールを、350℃で0.5時間加熱した後、さらに450℃で0.2時間加熱してメソフェーズカーボン小球体を生成させた。加熱後のコールタールから、タール重油(沸点:200〜300℃)を用いてピッチを抽出し、ピッチマトリックスから濾過により、メソフェーズカーボン小球体を分離した。得られた小球体をロータリーキルンを用い500℃で焼成し、得られた焼成生成物を200メッシュ(篩目:75μm)の振動篩を用いて、粗粒(凝集体)を除去した。得られた粒度調整品をジェット粉砕機[(株)セイシン企業製;型式コジェットシステムα−mkIV]を用いて粉砕し、平均粒子径が15μmの粉砕品を得た。得られた粉砕品を黒鉛るつぼに入れ、アルゴン雰囲気下、昇温速度1000℃/時間で昇温し、3000℃で3時間懸けて黒鉛化し、小球体の黒鉛化物(基材)を得た。
【0062】
一方、炭素質材料のメソフェーズピッチをジェット粉砕機[(株)セイシン企業製;コジェットシステムα−mkIV]を用いて粉砕し、平均粒子径を10μmに調整した。
前記基材と前記メソフェーズピッチの粉砕品を質量比100:5で混合し、乾式粉体複合化装置[メカノフュージョンシステム、型式AMS、ホソカワミクロン(株)製]を用いて、回転ドラムの周速20m/秒、回転ドラムと内部部材との距離5mmで60分間圧縮力、剪断力を繰返し付与してメカノケミカル処理し、前記基材の表面に前記メソフェーズピッチの粉砕品が付着した基材を得た。得られた基材を1300℃で加熱し、付着した前記メソフェーズピッチの粉砕品を炭化し、負極材料を作製した。得られた負極材料の外観を示す走査型電子顕微鏡写真を
図2に示した。
【0063】
〔負極合剤の作製〕
前記負極材料90質量%とポリフッ化ビニリデン10質量%をN−メチルピロリドンに入れ、ホモミキサーを用いて2000rpmで30分間攪拌混合し、負極合剤のペーストを調製した。
【0064】
〔作用電極(負極)の作製〕
前記負極合剤ペーストを、集電体の銅箔(厚み15μm)上に均一な厚さで塗布した後、真空中90℃でN−メチルピロリドンを揮発させて乾燥した。前記銅箔上に形成された負極合剤層をハンドプレスによって加圧し圧着した。ついで、直径15.5mmの円柱に打抜いて、負極材料が銅箔に密着した作用電極(対極)(厚み70μm)を作製した。
【0065】
[対極の作製]
リチウム金属箔(厚み0.5mm)をニッケルネットに押付け、直径15.5mmの円形に打抜いて、ニッケルネットからなる集電体と、前記集電体に密着したリチウム金属箔からなる対極(正極)を作製した。
【0066】
[電解質・セパレータ]
エチレンカーボネート33vol%−メチルエチルカーボネート67vol%の混合溶媒に、LiPF6を1mol/Lとなる濃度で溶解させ、非水電解液を調製した。得られた非水電解液をポリプロピレン多孔質体(厚み20μm)に含浸させ、電解質液が含浸したセパレータを作製した。
【0067】
[評価電池の作製]
評価電池は、
図1に示す構造のボタン型二次電池であり、下記のように作製した。
外装カップ1と外装缶3は、その周縁部において絶縁ガスケット6を介在させ、両周縁部をかしめて密閉した。その外装缶3に内面から順に、ニッケルネットからなる集電体7a、リチウム箔よりなる円柱状の対極4、電解液が含浸したセパレータ5、作用電極2、銅箔からなる集電体7bが積層された電池である。
電解液を含浸したセパレータ5を、集電体7bと集電体7aに密着した対極4との間に挟んで積層した後、集電体7bを外装カップ1内に、対極4を外装缶3内に収容して、外装カップ1と外装缶3とを合せ、さらに、外装カップ1と外装缶3との周縁部に絶縁ガスケット6を介在させ、両周縁部をかしめて密閉し作製した。
【0068】
基材、負極材料の物性等は以下の方法により測定した。測定結果・評価結果を表1に示した。
〔ラマン分光〕
負極材料等のラマン分光によるR値は、ラマン分光分析器[NR-1100:日本分光(株)製]を用い、励起光は波長514.5nmのアルゴンレーザーで、照射面積は30μmφで分析し、Dバンド1360cm
−1ピークの強度(ID)、Gバンド1580cm
−1のピーク強度(IG)を測定した。そして強度比ID/IGをR値としたことは前述した。
【0069】
[基材のX線回折]
CuKα線をX線源、高純度シリコンを標準物質に使用して、基材等に対し(002)回折ピークを測定し、そのピーク位置およびその半値幅から、それぞれd
002、Lcを算出した。算出方法は学振法(日本学術振興会第117委員会が定めた測定法)に従うものであり、具体的には「炭素繊維」(大谷杉郎著、近代編集社、昭和61年3月発行)の733〜742頁などに記載されている方法に拠ったことは前述した。
【0070】
[負極のX線回折]
負極を250MPaでプレスし、打ち抜いた直径15.5mmの円柱を試料とした。
CuKα線をX線源、高純度シリコンを標準物質に使用して、負極の(004)面のピーク強度(I
004)と(110)面のピーク強度(I
110)を測定し、強度比RをI
004/I
110で算出し、配向度とした。
【0071】
〔粒子径等〕
基材等の平均粒子径はレーザー回折式粒度分布計により測定した粒度分布の累積度数が体積百分率で50%となる粒子径とした。
負極材料等の比表面積は、窒素ガス吸着によるBET法により求めた。
負極材料等のタップ密度は、150cm
3の容器に試料を充填した後、300回タップした後の体積と質量より求めた。
負極材料等の層厚は、マイクロメーターの計測により求めた。
【0072】
〔充放電試験〕
前記のように作製された評価電池について、25℃の温度で下記のような充放電試験を行い、放電容量を測定し初回充放電ロス、2C放電率を計算した。評価結果を表1に示した。
【0073】
回路電圧が0mVに達するまで0.9mAの定電流充電を行った後、回路電圧が0mVに達したら定電圧充電に切替え、さらに電流値が20μAになるまで充電を続けた。その間の通電量から充電容量(第一サイクルの充電容量)を求めた。その後、120分間休止した。次に0.9mAの電流値で、回路電圧が1.5Vに達するまで定電流放電を行い、この間の通電量から放電容量(第一サイクルの放電容量)を求めた。次式(1)から初回充放電ロスを計算した。
次いで、充電電流を0.5C、放電電流を2Cとして前記と同様に充放電を行い、放電容量(2C電流値における放電容量)を求めた。そして、次式(2)から2C放電率を計算した。なお、1Cとは、対象とする負極が満充電状態にあるとき、その電気量を1時間で放出するときの電流値、0.5Cは2時間で放出するときの電流値、2Cは30分で放出するときの電流値を言う。
なお、この試験では、リチウムイオンを負極材料に吸蔵する過程を充電、負極材料からリチウムイオンが脱離する過程を放電とした。
初回充放電ロス=第一サイクルの充電容量−第一サイクルの放電容量 (1)
2C放電率(%)=2C電流値における放電容量/第一サイクルの放電容量
×100 (2)
【0074】
(参考例2)
参考例1において、メカノケミカル処理の代わりに、粉砕し黒鉛化した基材を、コールタールピッチ[JFEケミカル(株)製、残炭率:60%]にタール中油を混合して調整したコールタールピッチ混合液に分散させ、二軸加熱ニーダーを用いて150℃で1時間混練し、混練生成物を得た。その際、固形分比率が基材:コールタールピッチ=92:8になるように調整した。混練生成物を真空にしてタール中油等の溶媒を除去した。得られた混練生成物を1300℃で3時間加熱し、コールタールピッチの炭化物が基材を被覆した負極材料を作製した。
前記負極材料を用い、参考例1と同様な方法と条件で、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0075】
(参考例3)
参考例1において、基材とメソフェーズピッチとの比率を100:3に変えてメカノケミカル処理する以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0076】
(参考例4)
参考例1において、基材とメソフェーズピッチとの比率を100:10に変えてメカノケミカル処理する以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0077】
(参考例5)
参考例1において、粉砕した基材の平均粒子径を10μmに変える以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0078】
(参考例6)
参考例1において、粉砕した基材の平均粒子径を3μmに変える以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0079】
(参考例7)
参考例1において、粉砕した基材の平均粒子径を25μmに変える以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0080】
(比較例1)
参考例1において、メカノケミカル処理を省略する以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0081】
(比較例2)
参考例1において、メソフェーズ小球体の焼成生成物の粉砕を省略する以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。該負極材料の外観を示す走査型電子顕微鏡写真を
図3に示した。
【0082】
(比較例3)
フリーカーボン(QI)を0.5質量%含有するコールタールを、350℃で0.5時間加熱した後、さらに450℃で0.2時間加熱してメソフェーズカーボン小球体を生成させた。加熱後のコールタールから、タール重油(沸点:200〜300℃)を用いてピッチを抽出し、ピッチマトリックスから濾過により、メソフェーズカーボン小球体を分離した。得られた小球体をロータリーキルンを用い500℃で焼成し、得られた焼成生成物を200メッシュ(篩目:75μm)の振動篩を用いて、粗粒(凝集体)を除去した。得られた粒度調整品を粉砕することなく、黒鉛るつぼに入れ、アルゴン雰囲気下、昇温速度1000℃/時間で昇温し、3000℃で3時間懸けて黒鉛化し、基材(平均粒子径25μm)を得た。
前記基材を用い、メカノケミカル処理を省略する以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0083】
(比較例4)
参考例1において、メソフェーズカーボン小球体の焼成後の粉砕品の代わりに、粉砕した鱗片状黒鉛(天然黒鉛、平均粒子径25μm)を用いる以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0084】
(比較例5)
参考例1において、メソフェーズカーボン小球体の焼成後の粉砕品の代わりに、粉砕した鱗片状黒鉛(天然黒鉛、平均粒子径25μm)を用い、メカノケミカル処理を省略する以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0085】
(比較例6)
参考例1において、メソフェーズカーボン小球体の焼成後の粉砕品の代わりに、粉砕した鱗片状黒鉛をさらに球状化加工したもの(平均粒子径15μm)を用いる以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0086】
(比較例7)
参考例1において、メソフェーズカーボン小球体の焼成後の粉砕品の代わりに、粉砕した鱗片状黒鉛をさらに球状化加工したもの(平均粒子径15μm)を用い、メカノケミカル処理を省略する以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0087】
(比較例8)
比較例3と同様に粉砕することなく黒鉛化物を得た。この黒鉛化物を粉砕した基材(平均粒子径15μm)を用いて、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0088】
(参考例8)
参考例2において、粉砕し黒鉛化した基材を、コールタールピッチ[JFEケミカル(株)製、残炭率:60%](基材に対して3質量%)とアセチレンブラック〔電気化学工業(株)製〕(基材に対して2質量%)にタール中油を混合して調整したコールタールピッチ混合液に分散させ、二軸加熱ニーダーを用いて150℃で1時間混練し、混練生成物を得た以外は、参考例2と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例2と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0089】
(実施例9)
参考例2において、粉砕し黒鉛化した基材を、コールタールピッチ[JFEケミカル(株)製、残炭率:60%](基材に対して3質量%)と気相成長炭素繊維〔VGCF、昭和電工(株)製〕(基材に対して2質量%)にタール中油を混合して調整したコールタールピッチ混合液に分散させ、二軸加熱ニーダーを用いて150℃で1時間混練し、混練生成物を得た以外は、参考例2と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例2と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0090】
(参考例10)
参考例1の粉砕し黒鉛化した基材を石英管に封入し、ヒーターで加熱して900℃に保持した。石英管内に窒素ガスでバブリングしたベンゼンを2時間流通して基材にベンゼンを蒸着させた。前記蒸着生成物を用いて、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0091】
(参考例11)
参考例1において、黒鉛化温度を3100℃に変える以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0092】
(参考例12)
参考例1において、黒鉛化温度を2800℃に変える以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0093】
(参考例13)
参考例1において、基材とメソフェーズピッチとの比率を100:1に変えてメカノケミカル処理すること以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0094】
(参考例14)
参考例1において、基材とメソフェーズピッチとの比率を100:15に変えてメカノケミカル処理すること以外は、参考例1と同様な方法と条件で、負極材料、負極合剤、負極、評価電池の作製を行い、参考例1と同様な方法と条件で、測定、評価を行った。結果を表1に示した。
【0095】
参考例1と比較例1との対比から、基材としてメソフェーズカーボン小球体の粉砕品の黒鉛化物を用いた場合、最表層の炭素質の薄層が存在すると、評価電池の充放電ロス、2C放電率が優れることが明らかである。
参考例1と比較例2との対比から、基材としてメソフェーズカーボン小球体の焼成生成物を粉砕して黒鉛化した黒鉛化物を用いた場合、粉砕せずに黒鉛化した黒鉛化物を用いた場合に比べ、評価電池の2C放電率が優れることが明らかである。
【0096】
参考例1と比較例4との対比から、基材としてメソフェーズカーボン小球体の焼成生成物を粉砕して黒鉛化した黒鉛化物を用いた場合、鱗片状黒鉛を用いた場合に比べ、評価電池の初回充放電ロス、2C放電率が優れることが明らかである。
参考例1と比較例6との対比から、基材としてメソフェーズカーボン小球体の焼成生成物を粉砕して黒鉛化した黒鉛化物を用いた場合、鱗片状黒鉛の球状化品を用いた場合に比べ、評価電池の初回充放電ロス、2C放電率が優れることが明らかである。
参考例1と比較例8との対比から、基材としてメソフェーズカーボン小球体の焼成生成物を粉砕して黒鉛化した黒鉛化物を用いた場合、メソフェーズカーボン小球体を黒鉛化した後、粉砕して得た黒鉛化物を用いた場合に比べ、評価電池の初回充放電ロス、2C放電率が優れることが明らかである。
【0097】
【表1】