特許第5671153号(P5671153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5671153表示手段の連続的な動きを得るための方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671153
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】表示手段の連続的な動きを得るための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G04C 3/00 20060101AFI20150129BHJP
   G04C 3/14 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   G04C3/00 B
   G04C3/14 S
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-543636(P2013-543636)
(86)(22)【出願日】2011年12月5日
(65)【公表番号】特表2014-503814(P2014-503814A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】EP2011071752
(87)【国際公開番号】WO2012080020
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2013年6月14日
(31)【優先権主張番号】10195413.9
(32)【優先日】2010年12月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】フーヴァー,デイヴィッド
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−156868(JP,A)
【文献】 特表2007−526467(JP,A)
【文献】 特開昭56−143045(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0361015(EP,A2)
【文献】 スイス国特許発明第641630(CH,A)
【文献】 英国特許出願公開第2019049(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示手段(2)に対して速度が連続的かつ可変的な動きを算出する方法であって、センサ(4、4')によって測定した値から、少なくとも1つのシミュレートした機械力値および/または機械トルク値(401';451')のモデルを確立するステップと、前記シミュレートした機械力値および/または機械トルク値(401'、451')からニュートンの運動方程式(700、700')を解く第2のステップ(5001、5004)とを含む方法において、前記第2のステップ(5001、5004)は、シミュレートした速度(703)を前記表示手段(2)用に計算する、方法。
【請求項2】
物理的規模は、速度、磁場、高度、深さ、周波数または幾何学的角度である、請求項1に記載の表示手段(2)に対して速度が連続的な動きを算出する方法。
【請求項3】
前記表示手段(2)の前記第2ステップで計算されてシミュレートされた加速度(703')は、物理的規模に相当する値(401、451)に比例する、請求項2に記載の表示手段(2)に対して速度が連続的で可変的な動きを算出する方法。
【請求項4】
第2の機械力値および/または機械トルク値(703")は、前記表示手段(2)の動きを算出するのに使用され、前記第2の機械力値および/または機械トルク値(703")は、流体摩擦を基にモデル化される、請求項3に記載の表示手段(2)に対して速度が連続的で可変的な動きを算出する方法。
【請求項5】
竜頭(11)の角速度(111)から計算されるインパルス周波数を決定するステップ(4001)をさらに含む、請求項4に記載の表示手段(2)に対して速度が連続的で可変的な動きを算出する方法。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の方法に従って計算した表示手段(2)に速度が可変的かつ連続的な動きを与えるように適応した、計算部(5)、記憶部(7)およびモータ手段(61、62、63)を備えることを特徴とする、表示機構の制御装置(3)。
【請求項7】
前記装置は、第1の物理的規模を測定する少なくとも1つの第1のセンサおよび/または第2のセンサ(4、4')を備え、前記第1の物理的規模は、第2の物理的規模(401、451)に変換され、前記第2の物理的規模を基に、前記機械力値および/または機械トルク値(401、451')は、計算部(5)の上流にある予備処理回路によって計算されることを特徴とする、請求項6に記載の制御装置(3)。
【請求項8】
前記装置は、前記表示手段(2)を駆動する少なくとも1つの第1のモータ(61)を作動させ、前記第1のモータ(61)はさらに、前記表示手段(2)に対する最大のスクロール速度(611')を算出することを特徴とする、請求項7に記載の制御装置(3)。
【請求項9】
前記装置は、各々が異なる機械的表示手段(2)に対応する複数のモータ(61、62)を同時に作動させることを特徴とする、請求項8に記載の制御装置(3)。
【請求項10】
前記表示手段(2)の加速および/または減速は、前記第1のセンサ(4)が測定するインパルス周波数(401)に応じて、または前記表示手段(2)と前記第2のセンサ(4')が算出する北方向との間の相対角度(451)に応じて計算されることを特徴とする、請求項9に記載の制御装置(3)。
【請求項11】
前記表示手段(2)は、針(21、22、23)である、請求項10に記載の制御装置(3)であって、前記針(21、22、23)のうちの少なくとも1つのシミュレートした角加速度(703')は、前記インパルス周波数(401)または前記相対角度(451)に比例する第1のトルク値(401'、451')に応じて、かつ前記針(21、23)のシミュレートした角速度(703)に比例する第2のトルク値(703")に応じて形成される、制御装置(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置の分野に関し、特に、アナログ表示を備えた電気機械式時計の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式時計のなかでも特に、針の付いた腕時計において、時間設定装置は、竜頭によって作動することが知られており、この竜頭は、時間設定モードに対応する竜頭の軸沿いの位置で、腕時計が動く動作に運動学的に連結し、竜頭を長い間または頻繁に回転させる必要なしに単純かつ迅速に分針を動かすための所定の歯車比を備えている。
【0003】
デジタル表示、特に液晶ディスプレイを備える電子時計では、時計が特定の調節モードまたは設定モードにあるときに、センサを長時間または繰り返し作動させることによって、デジタルシンボルがスクロールするスピードを加速させることが知られている。例えば、プッシュボタンに長時間圧力を印加することで、補正する表示値に対してスクロールを最大速度値まで加速させる。すると、それぞれの表示設定に対して順次調節が行われる。
【0004】
センサを備えた竜頭を作動素子として使用し、例えば、特許文献1に開示されている電子回路など、竜頭の回転速度に比例する速度で補正するための電子制御装置を使用することによって、デジタル表示を補正することも知られている。この場合、補正スピードは、竜頭の回転スピードに対応する種々のプレート間で一定だが、増大させる度に突然変化することがある。その上、竜頭を動かしてから連続して2回目に動かすまでの間は補正されず、補正に使用されるカウンタのスクロールを遅らせる機構は備わっていない。そのため、細かな調節には、使用者が繰り返し小幅で作動させて、できる限り小さい補正速度を起こす必要がある。これは不便であるとともに、針のぎこちない動きを克服してはいない。
【0005】
特許文献2は、センサの作動(タッチセンサ上で指を動かす、プッシュボタンを押す)に応答して、可変的な速度でシンボルをスクロールする電子機器を開示している。センサの作動回数およびこれらの作動の継続時間は、レジスタに含まれる値を増大または減少させる作用を有し、このレジスタが、今度は比例してスクロール速度を算出する。センサが長時間作動しなかった後に、レジスタ内の値を減少させると、スクロールスピードが徐々に低下する。しかしながら、スクロールスピードをこのように遅らせる方法は、依然として滑らかさに欠けている。なぜなら、スクロール速度の相対的変化は、レジスタの値がゼロに近づくにつれて増大するからである。この対策は、一切の機械部品なしにセンサを使用するという利点を有する。欠点は、センサが、従来の竜頭よりも使用上の直感性が少ないという点である。その上、この対策は、デジタル表示のみに係り、アナログ表示部材を備えた腕時計には適用されない。
【0006】
特に電気機械式腕時計では、針を用いて磁北方向を表示することも知られている。しかしながら、北を指す針の動きは、ぎこちないことが多く、その結果、腕時計の使用者には直感的なものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】英国特許第2019049号明細書
【特許文献2】スイス国特許第641630号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、前述の先行技術の欠点のない対策を提供することが本発明の目的である。
【0009】
特に、使用者にとってより直感的で、より滑らかな表示装置を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、表示手段に対して速度が連続的かつ可変的な動きを算出する方法であって、センサによって測定した値から、少なくとも1つのシミュレートした機械トルク値および/または機械力値のモデルを確立するステップと、これらのシミュレートした機械トルク値および/または機械力値からニュートンの運動方程式を解く第2のステップとを含む方法において、第2のステップは、シミュレートした速度を表示手段用に計算することができる、方法によって達成される。
【0011】
これらの目的は、表示手段を制御する装置であって、特許請求の範囲に記載の方法に従って計算した表示手段に速度が連続的かつ可変的な動きを与えるように適応した、計算部、記憶部およびモータ手段を備えることを特徴とする、装置によっても達成される。
【0012】
提供する対策の1つの利点は、ニュートン式運動を表示手段にエミュレートすることによって、調節操作をより効率的で視覚的により直感的にすること、すなわち、速度は、加速および減速が適用される力またはトルクに比例した状態で連続的なことである。したがって、まず粗い調節を行った後、所望の値に近づいたときに常に連続的な速度で細かい調節を行うことにより、スクロールスピードを補正する規模に適応させることができる。
【0013】
提供する対策のさらに別の利点は、表示値を増大するのに特別なセンサによる対策は必要ない点である。滑らかな調節は、特に、制御部材の動きから導き出される、またはセンサによって検出されるのが表示部材の加速度であって補正速度ではないという事実によって確実に行われる。このようにして、物理学のニュートンの法則に従った機械部材の動きに応じて、表示部材の連続的な速度が生じる。この速度は、様々な制御部材を作動させる期間と期間の間にわずかな変化しかなく、その結果、提供する対策は、表示部材の動きをぎこちなくするセンサへの閾値効果の影響を一切受けない。
【0014】
提供する対策のもう1つの利点は、調節に必要な動作も最小に抑える点である。なぜなら、制御部材を2、3回散発的に作動させることのみが、表示部材の位置を調節するのに必要なことだからである。その上、補正速度を加速するだけでなく、速度を減速することも可能なため、調節操作の制御は改善される。
【0015】
提供する対策のさらに別の利点は、電子式腕時計で通常のように順次調節するのとは異なり、複数の表示設定を同時に調節できる点である。作動手段を作動させる期間と期間の間に表示手段を連続的に動かすことで、補正中に本発明によって節約される時間は、例えば時針と分針を同時に動かすという選択肢を提供し、従来の機械式腕時計の直感的手法だが、使用者の時間を取りすぎる大規模な補正をすることはない。
【0016】
最後に、提供する対策は、時間表示の調節への適用に限定されず、例えばコンパス、高度計または電子式深さゲージなど、腕時計の使用者との相互作用を必要としない表示用途にも用いることができ、デジタル表示にもアナログ表示にも等しく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
その他の特徴および利点は、様々な実施形態の詳細説明および添付の図面からさらに明瞭に明らかになるであろう。
【0018】
図1A】時間設定を調整するための本発明の好適な実施形態による制御装置の概略図である。
図1B図1Aに示した好適な実施形態による制御装置の種々の素子が使用する様々なパラメータおよび同素子が実行する様々な計算ステップを示す図である。
図2A】本発明の好適な実施形態によるセンサ構造の図である。
図2B図2Aに示した好適な実施形態によるセンサの動作を示す図である。
図3】本発明の好適な実施形態による様々な一連の調節動作に対する状態図である。
図4A】電子コンパスに対する本発明の好適な実施形態による制御装置の概略図である。
図4B図4Aに示した好適な実施形態による制御装置の種々の素子が使用する様々なパラメータおよび同素子が実行する様々な計算ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の制御装置の好適な実施形態は、時計を対象とし、図1Aおよび図1Bに示したものであり、図はそれぞれ、制御装置3の論理構造、ならびに、従来の機械的輪列とは異なり、作動手段1の動きを比例しない表示手段の動きに変換するための、制御装置3の様々な素子が使用する様々なパラメータおよび同素子が実行する様々な計算ステップを示す。図1Aは、逆の2方向S1およびS2に作動させることができる竜頭11の形態をした作動手段1の好適な構造、ならびに時針22および分針21の形態をした表示手段2の好適な構造を示す。しかしながら、本発明による制御装置3は、例えばリングやドラムなど、他のタイプの機械的表示部材2に適用されてもよい。したがって、本発明は、第1の角速度111、すなわち竜頭11を特定の回転方向、例えばS1へ駆動する速度を、分針21の別の角速度211に変換することができる。後述するニュートンの運動方程式700に従って分針211は、竜頭11のS1方向への作動に伴い徐々に加速するため、この2つの角速度111および211は比例せず、この方程式は、針の動きを連続的にするものでもある。
【0020】
図1Aに示した本発明の好適な変形例による制御装置3は、電子回路31を備え、この電子回路は、例えばマイクロコントローラなどを含む処理部5とモータ制御回路6とを備える集積回路の形態であることが好ましい。マイクロコントローラは、作動手段1(すなわち例えば竜頭11の回転など)の任意の動きを検出する第1のセンサ4の出力部でカウンタモジュール44が供給するデジタル入力パラメータを、例えばモータステップ数などのモータ制御回路6に対する命令データに変換する。カウンタモジュール44は、第1のセンサ4が生成した電気信号を離散的な数値に変換し、この数値は、マイクロコントローラなどのソフトウェア処理部が処理できる。しかし、このマイクロコントローラは当業者に公知のものであるため、これについては詳述しない。図示した好適な変形例によれば、制御回路6は、2つの異なるモータを制御し、第1のモータ61は分針21の動きを制御するためのものであり、第2のモータ62は時針22を制御するためのものである。このように、制御装置3は、複数のモータ61、62を同時に作動させ、それぞれのモータが、別々の機械的表示手段に対して働く。モータ同士が連動していないことにより、例えばアラーム時間または地上磁場の方向を示すなど、表示モードを迅速に変更することができる。
【0021】
計算を実行するために、マイクロコントローラは、記憶部7に保存した種々のパラメータを使用して、モータステップ数、またはモータステップ611、622の周波数を、ステップが分または時間などの時間単位に関連している場合に算出するようにする。モータステップの周波数611、622はそれぞれ、後述する第1のニュートンの運動方程式700に従って第1のモータ61および第2のモータ62が作動する周波数に相当する。図1Bは、竜頭11の回転角速度111をモータステップ数に変換する種々のステップ、および計算パラメータを示す。
【0022】
− ステップ4001は、処理部5のマイクロコントローラがカウンタモジュール44の出力部で使用するインパルス周波数401を算出してモータステップ数を計算し、そこからモータステップ周波数611、622を導き出すことからなる。ステップ4001を実行するのに使用する第1のセンサ4の好適な構造を、図2Aおよび図2Bを参照してこれ以降に詳述する。
【0023】
− ステップ5000では、比例係数701にインパルス周波数401を乗算して仮想トルク値401'を算出し、この仮想トルク値を、本発明の範囲内で選択したモデルに従って、回転軸周りを回転する分針21に適用すると仮定する。
【0024】
− ステップ5001は、マイクロコントローラが実行する主要計算ステップである。このステップの目的は、インパルス周波数401に応じて第1のモータ61のモータステップ周波数611を算出し、そこから分針の実際の角速度211を導き出すことである。これを達成するため、マイクロコントローラは、回転体の角加速度がこの回転体に適用される機械トルクの和に比例することを条件とする運動学の基本原理に従って、ここでは分針21の動きを回転システムの動きを基にモデル化することによって、第1のニュートンの運動方程式700を解く。本発明の好適な実施形態で選択したシミュレーションパラメータを用いると、第1のニュートンの運動方程式は、次式のようになる:
704×703'=401'−703"
式中、方程式左部分の係数704は、シミュレートした回転システムの慣性モーメント(物理学の方程式では通常Jの文字で表現される)であり、符号703'は、この場合は例えば回転軸周りを回転する分針21など、本発明で使用する表示手段の加速である。分針21の動きに最大の慣性を与えるため、すなわち制御部材を1回作動させてから次に作動させるまでの間に分針ができるだけ長く回転し続けるようにするため、シミュレートした回転システムの慣性モーメントの係数704は、分針21の実際の慣性モーメントよりも遙かに大きくなるように選択されることが好ましく、これによって、例えば針が金属ディスクと一体化して回転しているかのように、針がさらに重量感のあるシステムのように挙動するという点に注意されたい。上記の第1のニュートンの運動方程式700の右部分では、値401'は、分針21に対してシミュレートされる回転システムに適用される仮想の機械トルクである。インパルス周波数401に依存する仮想トルク401'は、竜頭11が回転している間はゼロとは異なる。もう1つの仮想トルク703"は、シミュレートした表示手段の角速度703、この場合は分針21の角速度に比例し、分針21の動きを徐々に遅らせる流体摩擦をシミュレートする。この機械トルクは、竜頭11がもう作動していないときに適用される唯一のトルクである。仮想トルク値401'と同じく、仮想トルク値703"は、シミュレートした角速度703に、流体摩擦係数という比例係数702を乗算することで得られる。この場合、流体摩擦モデルは、第1のニュートンの運動方程式700に、シミュレートした針21の角速度703に対する微分方程式の形態を与え、これをマイクロコントローラが解く。記載した好適な実施形態によれば、このニュートンの運動方程式700の解は、針の滑らかで連続的な動きをエミュレートする。なぜなら、針の角速度は、竜頭が作動しているときの機械トルク、および滑らかに減速するトルクに供された回転システムであるかのように算出されるからである。本明細書に記載した好適な実施形態によれば、この方程式に対して選択される入力パラメータは、竜頭11の回転速度に比例する仮想トルク401'であり、出力結果としては、シミュレートした分針21の回転速度703である。
【0025】
その後、シミュレートした回転速度703によって、1秒あたりのモータステップ数、すなわちモータステップ周波数611を比例的に導き出すことができる。分針211の実際の角速度は、このように確立されたモータステップ周波数611にそれぞれ比例する。本発明の好適な実施形態によれば、それぞれのモータステップは、時間が1分未満の表示に相当する扇形区画にわたって針21を動かす。針の動きをできる限り滑らかにするために、各ステップで増大される角度の角度値は、2度であることが好ましい。換言すれば、各モータステップは、1分に相当する値の3分の1の角度値にわたって分針21を回転させる。さらに細かい分解能を検討してもよいが、モータ61の使用回数を増やす必要があり、これによって、ステップをさらに増やさなければならなくなり、その場合、それに伴って使用するエネルギー量が増大することになる。
【0026】
− ステップ5002では、ステップ5001の最後で算出した第1のモータ611の周波数値に応じて、第2のモータ622の周波数値622を導き出す。分針21と時針22との回転速度の比率は、分針21の完全な1回転が時針22の1時間の前進に相当する、すなわち文字盤の12分の1が1から12までの時間規模である標準のアナログ表示の場合、12である。したがって、固有の計算も除算も実行する必要なく、単純に第1のモータ61の12番目のステップが終わる度に1つのステップを前進させるための第2のモータ62への命令をモータ制御回路6に実装することで、第2のモータ62の周波数値622を導き出すことは比較的容易である。そのため、計算上の要件が最小限に抑えられる一方で、いくつかの表示部材、すなわち分針21および時針22で調整したムーブメントの直感的な視覚効果が、部材を調節する際に生じる。前述した好適な実施形態で、この追加の計算ステップ5002を前の計算ステップ5001の後に置くことによって、2つの針21、22の動きを単純に調整できる。
【0027】
上記の好適な実施形態によれば、作動手段1は、機械的なものであることが好ましいが、例えばタッチ画面などの静電容量センサの形態であってもよい。同じように、表示手段2は、必ずしも本発明によるアナログ式でなくてもよく、デジタル式であってもよい。
【0028】
作動手段1を作動させると、表示手段2、特に分針21に可変的で連続的な動きが与えられるが、これは、第1のセンサ4の出力部で算出されたトルク値401'に比例し、カウンタモジュール44の値に比例して加速度703を計算した結果であり、これによって、作動手段1、好ましくは竜頭11が、数値すなわちインパルス数で特徴付けられる。インパルス周波数を算出するこのステップ4001は、電子回路31が処理できる入力パラメータを供給するために必要なデジタル処理であり、この電子回路は、その後、機械的表示手段の動きを、インパルス周波数401に比例するトルク401'を適用することで算出されたかのようにシミュレートできる。針の実際の動きは、力学の基本法則に供された固体の回転運動と一致するため、ニュートン式であるとみなされ、この基本法則では、回転体の加速は、この回転体に適用されるトルクの和に比例するとされている。本発明の範囲内では、力学の基本方程式を回転式ではなく線形の表示手段2に適用することを検討することもでき、この場合、この加速度は、このシステムに適用された力の和に比例する。分針21の動きは、第1のニュートンの運動方程式700を解くことで算出され、この方程式は、システムに適用されるトルク401'をインパルス周波数401から算出する第1の係数701を使用して、好適な実施形態では、「流体摩擦」トルク(このトルクにより針の回転速度がこの同じ速度に比例して減速するためにこう呼ばれる)を算出する第2の係数702を使用して、固体についてのこの力学の基本方程式をモデル化するものである。針の実際の動きも、竜頭11が作動しなくなると、自身の実際の回転速度に比例する流体摩擦トルクのみに従って針を徐々に減速させる回転体の動きと一致するため、慣性であるとみなされる。しかしながら、本明細書に記載した好適な実施形態によれば、この流体摩擦トルク703"は、仮想のものであり、前述のニュートンの運動方程式700に従ってマイクロコントローラ5がシミュレートするものである。しかしながら、このトルクは、分針21には直接適用されずに、シミュレートした分針703の速度に適用され、この速度は、上記のニュートンの運動方程式700を解くのにも使用される。
【0029】
したがって、本発明による表示手段2の速度を算出する方法は、トルク値および/または力値を、方程式を解くための入力パラメータとして使用することで、ニュートンの運動方程式を解くものである。これらのパラメータ自体は、物理的規模、ここでは竜頭11の角速度111に対して算出され、この物理的規模は、第1のセンサ4およびカウンタモジュール44を介してインパルス周波数401に変換される。しかしながら、その他の物理的規模、例えば線形速度または角速度、磁場または幾何学的角度などを、本発明の範囲内で使用してよい。以下で見ていくように、図4Aおよび図4Bを参照して説明した電子コンパスに関する実施形態では、幾何学的角度を処理部に配信する入力パラメータとして使用して、磁北を指す針23に適用するトルクを算出する。
【0030】
「物理的な現実性」と比較して、本発明が提供するモデル化に特有の特徴の1つは、針の角速度、および選択した好適な実施形態によれば分針211の角速度が、処理能力面でシステムに制約があるために必然的に限定される点である。実際、第1のモータおよび第2のモータ61、62は、1秒あたり所定の最大ステップ数しか実施できず、その結果、最大モータステップ周波数がまだ存在しても、角加速度は必然的にゼロになるため、その後はニュートンの運動方程式700をもはや適用できなくなる。分針21を制御する第1のモータ61の最大モータステップ周波数611'は、200から1000Hzの間であることが好ましく、これは、文字盤の完全な1回転が180モータステップであるときに1秒あたり約1から5回転する分針21の最大回転速度に等しい。電子回路31の使用を含むどのような実施形態を本発明に選択したとしても、機械的表示手段2に対する最大スクロール速度は、常にモータ制御回路6の処理能力に応じて規定されなければならないことに注意されたい。
【0031】
図2Aは、本発明の第1のセンサ4の好適な実施形態を示し、この実施形態では、電子回路31が使用するインパルス周波数401を比較的単純に算出して、この入力パラメータに適用する第1のニュートン方程式700を解くことによって、表示手段1の加速値または減速値を計算する。第1のセンサ4は、心棒41に取り付けられ、この心棒は、竜頭11と一体化して回転し、逆の2方向S1およびS2に回転駆動されることができる。心棒41の周縁には、複数の電気接触器41a、41b、41c、41dが取り付けられる。図2Aに示すように、接触器は4つあることが好ましい。第1のセンサ4はさらに、固定構造に取り付けられた2つの電気接点42、43を備える。電気接触器41a、41b、41c、41dに電圧が印加されると、第1の接点42の端部では、出力信号412の値が測定され、第2の接点43の端部では、出力信号413の値が測定される。
【0032】
図2Bは、上部分(a)に、竜頭11が時計回りである回転方向S1に回転すると得られる第1の信号および第2の信号412および413を示す。それぞれの信号412、413が正である時間の第1の期間401a、それぞれの信号412、413がゼロである第2の期間401b、および第1の期間と第2の期間401a、401bの和である第3の合計期間401cは、第1の出力信号および第2の出力信号412、413のそれぞれに対して同じであり、第1の接点42から第2の外部接点43までの電気接点41a、41b、41c、41dのうちの1つの経路に対応する値の分だけ単純に時間的にずれている。この図式は、図の下部分(b)と逆になっており、下部分では、竜頭11は反時計回りS2に回転し、第1の出力信号412の矩形波は、第2の出力信号413の矩形波よりも前に形成される。その後、これらの信号412、413は、カウンタモジュール44に伝送されて、インパルス周波数に変換される。
【0033】
図2Aに示す第1の接触器を使用して、第1のニュートン方程式700に適用されるインパルス周波数401を算出することには、滑らかな補正を行うために第1のセンサ4の分解能が細かい必要がないという利点もある。なぜなら、加速が連続的でなくとも、ニュートン方程式を解くことによって算出される速度は依然として連続的であるからである。そのため、インパルス周波数401に比例するトルク値の分解能の粒度がそれほど細かくなくても、表示手段2の前進がぎこちなくなることはなく、単純に新たなインパルスをその都度検出してより明確な加速度が生成される。その結果、3つ、2つあるいは単一の接触器を備えるセンサを使用し、接触器の数がこのように少ない分を、例えば表示手段2に適用する所定のシミュレートしたトルク値を得るための係数を同じように増大させることで補償することも可能である。
【0034】
代替実施形態によれば、1つまたは複数のプッシュボタン(図示せず)に関連付けられた1つまたは複数の接触器を使用することを検討し、第1のプッシュボタンに圧力を印加する度にインパルス周波数401を増やし、それに応じて第2のプッシュボタンに圧力を印加する度にインパルス周波数401を減らすことも可能である。この代替実施形態によれば、2つのセンサはこのように使用され、それぞれがインパルス周波数401の増加と減少に対して働き、これはつまり、本発明によるモデル化の場合、仮想の機械トルクを一方向または逆方向に適用して、針21、22の動きをそれぞれ加速・減速させるということである。
【0035】
図3は、時計に適用する本発明の好適な実施形態による、針を使用した種々の一連の時間調節操作の状態図を示す。しかし当業者は、必ずしも時間とは関係のない他のタイプのパラメータ(すなわち任意のタイプのシンボル)を調節することが可能であること、また、針を他のアナログ表示部材で代替してもよいことがわかるであろう。
【0036】
ステップ1001は、竜頭11の第1の作動であり、分針21の動きを起こすものである。竜頭が所定の回転方向、例えば方向S1に作動すると、センサ4は、竜頭11に対する正の角速度111に相当するインパルス401の「正」の数を検出し、同一方向に針に適用されるトルクの適用をシミュレートする。このように、竜頭11を時計回りの方向S1に回転させることで、分針21が文字盤を前進する。同一方向S1に竜頭11を繰り返し回転させると、カウンタモジュール44が使用する連続的なサンプリング期間の間、インパルス周波数401は正に保たれ、それによって、第1のニュートン方程式700または修正したニュートン方程式700'に従って、滑らかで連続的な動きが得られるまで針21の動きがさらに加速し、その時点で、ステップ毎に針がジャンプするのを視覚的に感知できなくなる。しかしながら、分針21の動きは、最大モータステップ周波数611'に達すればみられる最大角速度を超えられないため、この最大速度に達した時点で、竜頭11の回転は何の作用も及ぼさなくなる。好適な実施形態によれば、シミュレートした最大角速度7031は、最大モータステップ周波数611'に応じて算出される。ニュートン方程式を解くアルゴリズムがこの最大速度の限界に到達すると、アルゴリズムがそれよりも高い値の結果を出したはずだとしても、アルゴリズムは直ちに飽和する、すなわちシミュレートした角速度703を増大するのを止める。
【0037】
図3の図は、速度が飽和しているかどうかを判断するためにマイクロコントローラ5が実行する比較ステップ5003を示し、飽和している場合、シミュレートした角速度703は最大値7031に限定され、角加速度703'は、計算が実行されるサンプリング期間の間ゼロである。比較ステップ5003から始まって正の加速度値703'に向かうフィードバックループは、最大のシミュレートした角速度7031に達していない限り飽和が起こらないことを示す。
【0038】
ステップ1001については、時計回りの回転方向S1に竜頭11を作動させ、好ましくは分針21を同一方向に前進させるものとして説明した。しかしながら、竜頭11を逆方向S2に作動させ、同じように分針21および時針22を逆方向に回転させるアレンジも可能であり、この場合、インパルス数401は、各サンプリング期間に対して同じように計算されるが、センサ4が判断した回転方向に関する情報は、第1のモータおよび第2のモータ61、62によって針に適用される回転方向を選択する。
【0039】
その上、機械的表示手段に適用される動きが竜頭の速度に依存する加速度の結果になるという、本明細書で提供する対策は、分解能の低い竜頭には極めて揺るぎないものである。その上、使用者が竜頭を断続的に前進させても、この動きは滑らかなままである。使用者が竜頭を連続的に動くように回転させれば、その動きと動きの間で補正が続く。これによって、機械的表示手段があまり効率的でない場合は、時間が大幅に節約される。そのため、1時間変更する度に分針が完全に1回転するという完全に機械的な手法で時針22と分針21とを同時に調節することが、比較的緩やかなシステムに対しても使用者に許容されるスピードで可能になる。実際、使用者にとって極めて直感的なこの手法を維持するため、アナログ表示を備えた電子時計を数時間補正するには、分針のモータステップ数を上げる必要があり、これは、モータが非効率である場合に、使用者にとっては実行時間が長くなりすぎるおそれがある。竜頭11を作動させる期間と期間の間で針の動きを連続的にすることで生じる、本発明が提供する大幅な時間の節約によって、これらの調節を電子回路およびモータの効率とは無関係に同時に実行できるということである。
【0040】
したがって、竜頭11の回転方向がS1であるかS2であるかに関わらず、作動ステップ1001は、時針22と分針21とを同時に調節し、これは、それぞれのパラメータが効率の理由から一般に順次調節される電子腕時計に対して、特に有利なことである。
【0041】
ステップ1001'は、ステップ1001に従属するステップ、またはさらに一般的にはステップ1001'が直後に続く任意の作動ステップである。これは、竜頭11、またはさらに一般的には制御手段1が作動を停止している間のステップである。このステップの間、本発明によるモデル化によって、検出されたインパルス周波数401がゼロになれば、システムに適用される外側のトルクはなくなるということであり、これはとりわけ、インパルス周波数401を算出するためにカウンタモジュール44で選択されたサンプリング期間によって異なる。値401がゼロになると直ちに、角加速度703'は、モデル化した流体摩擦のみによって、すなわち以下の第1のニュートン方程式700に従って算出される:
703'=−703"/704
このニュートン方程式700の解は、表示部材、例えば前述の実施形態では分針21の慣性減速を算出する。なぜなら、減速度はシミュレートした角速度703のみに比例するからである。この慣性減速の間、システムは、図3に示すように、第1の減速段階B1にある。
【0042】
しかしながら、例えば方向S1に回転した後、追加の作動ステップ1002で竜頭11が逆方向S2に回転した場合、角加速度703'は、依然として負であるが、図3に示す減速B2は、仮想トルク401'の符号が負になって角加速度703'に作用してさらに迅速にシステムの速度を遅らせるため、さらに顕著である。
【0043】
竜頭11を逆方向に作動させると、所望の値が近いときに追加の作動ステップ1002を使用してさらに細かく調節されるが、角速度は、この特定の瞬間に比較的高くなる。なぜなら、発生する第2の減速段階B2は、竜頭11が長時間作動しているときのみ発生する第1の減速段階B1よりも顕著だからである。
【0044】
図3に見られるように、第1の作動ステップ1001の後には、このように常に、機械的表示手段2の加速段階Aが続き、まず加速が最も著しい分針21の加速段階が続く。この加速段階Aは最大周波数、この場合は第1のモータ61のステップ周波数611'に達したことをモータ制御回路6が検出すると終了し、この場合、シミュレートした角速度703が最大角速度値7031に限定される段階Cが後に続く。そのため、この段階Cでは、分針21は一定であり、第1のモータ61の最大ステップ周波数611'に限定される。つまり、アルゴリズムが飽和する。そのため、同じ回転方向S1に竜頭11をさらに作動させても、分針の実際の角速度211は影響されない。しかしながら、このように作動させることで実際の角速度211をこの一定レベルに保ち、これによって、あまりにも長時間にわたって作動しなかった後に角加速度値703'が負になるのを防止し、作動しなかったこの時間は、記載した好適な実施形態では、サンプリング期間に相当し、例えば秒に合わせて校正することができる。その上、第1のニュートンの運動方程式700でシステムに適用されるモーメントを規定する比例係数、すなわちインパルス周波数401に対する比例係数701および流体摩擦の比例係数702は、少なくとも1つのインパルス401が1秒ごとに検出された時点で角加速度値703が常に正になるように、好ましくは第1のモータ61の最大モータステップ値611'と一緒に選択されることができ、あるいは同じように、最大角速度21に達した時点で竜頭11が少なくとも1秒に1回作動すれば、実際の角速度211が常に一定のままになるように、上記の期間に選択される値とすることができる。
【0045】
このように、前述の内容を読んで明らかなことは、本発明の範囲内でどのような作動手段(好ましくは機械的手段1および機械的表示手段2)を使用しても、表示手段1の加速段階Aの後には通常段階Cが続き、この段階Cでは、表示手段2のスクロール速度は、調節が行われたときに表示される表示値と、達成するのに必要な値との間に大きな差があれば、直ちに一定になるということである。制御手段が所定期間にわたって作動しなければ、このように長期間の作動しなかった後に表示手段2の第1の減速段階B1が発生し、そうでなければ、より顕著な第2の減速段階B2を制御手段の追加の作動ステップ1002で、最初の作動ステップ1001で使用した方向とは逆方向に作動させることができる。竜頭11の場合、S1が第1の回転方向であればS2が逆方向であり、S2が第1の回転方向であればS1が逆方向である。第2の作動ステップ1002の使用は、表示装置の使用者がアナログ表示素子をさらに細かく調節したいときのスクロールスピードおよび時間の点で、使用者の好みに左右される。
【0046】
そのため、本発明による制御方法および制御装置によって、いつでも機械的表示素子のムーブメントを加速および/または減速できる状態で、調節操作の制御を向上させることができる。さらに、速度変化は、速度がセンサ値から直接導き出される先行技術の対策よりも、遙かに緩やかである。センサの規模から速度ではなく加速度を算出することで、機械的表示素子の動きが滑らかになる。記載した好適な対策は、物理的規模を同じ種類の物理的規模に変換する、すなわち角速度(竜頭11の速度)を別の角速度(分針21と時針22の角速度)に変換することだが、他の任意のタイプの表示手段2を備える制御装置3を複製することを検討することも可能である。時計の場合、表示手段2が回転する動きを生じさせることが好ましいであろう。この手段は、どのような作動方式を使用するにしても(竜頭を回す、プッシュボタンを押す、タッチスクリーン上で指を動かすなど)、機械式腕時計に最も多く使用される。しかしながら、線形に表示する動きを検討してもよく、この場合、基本的な運動方程式では、トルクを角加速度に結びつけることはなく、力を線形加速度に結びつける。同じように、この場合、慣性の動きが緩やかになる現象は、流体摩擦をモデルにしたトルクからは生じず、摩擦力によって生じる。
【0047】
図4Aおよび図4Bはそれぞれ、本発明の好適な実施形態による制御装置3の概略図、ならびに電子コンパスを形成するために用いる計算パラメータおよび計算ステップである。前述した実施形態とは異なり、このコンパスは、使用者が北を指す針23の位置を調節する必要は一切ない。なぜなら、この位置は、計算によって自動的に算出されるからである。作動手段1は、操作手段または表示手段を作動させるのに使用されるだけであるため、図示していない。
【0048】
図4Aは、図1Aと同じく、好ましくはマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラで形成される計算部5、記憶部7、およびモータ制御回路6を備える電子回路31を示す。ただし、コンパスの針23の動きを制御するため、もう1つのモータ63が搭載されている。第2のセンサ4'は、異なるタイプの物理的規模、すなわち磁場を測定する点が第1のセンサ4とは異なる。このセンサは、例えば、フラックスゲート磁気センサまたはその他の任意の適切な磁気センサとすることができる。「位置決め」回路45は、第2のセンサ4'が算出する北方向と実際の針23の位置との間の相対角度451を算出する。この相対角度451は、図4Bの新たなニュートンタイプの運動方程式700"を解くために、マイクロプロセッサに配信される入力パラメータであり、これについては以下に説明する。図4Aを吟味すると、第1の物理的規模、すなわち第2のセンサ4'が測定した磁場は、位置決め回路45を介して第2の物理的規模、すなわち相対角度451によって変換され、これによって位置決め回路は、予備位置決め回路として作用して、モデル化した装置に適用される機械トルク値および/または機械力値を算出することがわかる。この位置決め回路45は、前述した図1Aおよび図1Bの実施形態のカウンタモジュール44に全体的に匹敵し、回転速度111をインパルス周波数401にも変換し、これによって予備処理回路も形成する。
【0049】
図4Bは、電子コンパスおよび計算パラメータに対して働くモータ63のモータステップ数633を算出する様々なステップを示す。
【0050】
− ステップ5000'では、比例係数705に相対角度451のサインを乗算して仮想トルク値451'を算出し、この値を、本発明の範囲内のモデル化によれば、回転軸周りに回転して北を指すコンパスの針23に適用されるトルクに相当すると仮定する。できる限り直感的に物理的現実性に合った動きで、第2の磁気センサ4'が算出した北方向に針23を安定させようとするため、トルク値451'は、相対角度451に応じて正の値と負の値との間で揺れ動き、一方向またはもう一方の方向に針23にかかる戻り力が具体的に現れる。
【0051】
− ステップ5004の目的は、第3のモータ63のモータステップ周波数633を算出することである。このステップは、表示手段703'をシミュレートした角加速度を計算する第1のサブステップを含み、この角速度はこの場合、固体物理学に適用される運動の基本原則に従って、コンパス21の針23の角加速度であり、以下の第2のニュートン方程式700'で表される。
703'=(451'−703")/704
式中、係数704は、システムをシミュレートした慣性モーメント(通常Jの文字で表現される)で、この場合、回転軸周りに回転してコンパスの北を指す針23と関連する回転システムの慣性をモデル化したものであり、451'は、仮想トルクであり、これは、コンパス21の針23と北方向とによって形成される角度のサインである。分針21の動きを算出する上記のニュートンの運動方程式700と同じく、シミュレートした回転システムの係数704は、ここでも第2のニュートン方程式700'で選択され、好ましくはコンパスの針23の実際の慣性モーメントよりも遙かに大きいため、針は、より重量感のあるシステムの挙動になる。図示した好適な実施形態によれば、また、時間表示を補正する場合の上記の好適な実施形態と同じく、シミュレートした角速度703に比例する仮想トルク703"は、今度はコンパスの針23の角速度233を算出するためのものであり、針23の動きを徐々に緩やかにする流体摩擦モデルを確立するために導入されている。トルク値401'と同じく、トルク値703"は、シミュレートした角速度703に流体摩擦係数と呼ばれる比例係数702を乗算することで得られる。本発明の好適な変形例によれば、それぞれのモータステップは、コンパスの針23を限られた扇形区画内で動くようにして、針をできる限り滑らかに動かす。針の動きをできる限り滑らかにするため、それぞれのステップの角度増大値は、1度以下であることが好ましい。換言すれば、モータ63のそれぞれのモータステップは、1分の6分の1に等しい角度値にわたってコンパスの針23を回転させるため、モータステップは、仮想的には裸眼では見えない。
【0052】
分針21または時針22の動きに使用される他のモータのよりも粗いまたはこれと同等の対策を検討することができる。例えば、モータ63をコンパスの針23の動きと関連付け、モータ61を分針21と関連付けてもよく、特殊な目的の動作モードでは、同時に分針21をコンパスの針23として使用してもよい。
【0053】
計算を簡易化するため、コンパス21の針23の動きを算出するのに使用する第2のニュートン方程式700'は、除算を必要としない同等のものに書き換えて簡易化してもよい。
【0054】
コンパスの針23の動きを算出する本方法は、電気機械式の腕時計ではぎこちないことの多い動きをさらに著しく滑らかにする。上記の好適な実施形態に記載した電子コンパスは、機械的表示部材2、すなわち針を備え、それによって、例えば腕時計に容易に搭載することができる。この場合、分針21は、コンパスの針23として使用されることが有利である。しかしながら、表示部材の連続的な動きを算出する本方法は、例えば携帯電話などの携帯型多機能装置などのデジタル表示に全体的に適用されてもよいことは、当業者には明らかであろう。
【0055】
上記の方法は、当業者が電気機械式腕時計と互換性のある他のタイプの同様の用途に使用してもよく、この場合、針の動きは、高度計用の高度または深さゲージ用の深さなど、他のタイプの情報を提供するのに使用される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B