(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5671167
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】躯体間隙の間仕切り構造及び仕切り部材の支持機構
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-30367(P2014-30367)
(22)【出願日】2014年2月20日
【審査請求日】2014年2月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000127639
【氏名又は名称】株式会社エービーシー商会
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100140615
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100154313
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 忠志
(72)【発明者】
【氏名】松平 光永
(72)【発明者】
【氏名】力丸 真也
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−108326(JP,A)
【文献】
特許第5099735(JP,B2)
【文献】
特許第4960334(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
E04B 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隙Gを隔てて相対した躯体Aの開口部と躯体Bの開口部間に床面カバー材と壁面材を架け渡して両躯体A,Bを接合する躯体間隙の間仕切り構造において、
躯体Aの間隙Gに面した外壁面に間隙奥行き方向に沿ってレール部材が取り付けられているとともに、このレール部材内に当該レール部材に沿って滑動する一つ又は複数のスライド部材が取り付けられ、
床面カバー材が、間隙奥行き方向に伸びた第1の床面カバー部材と第1の床面カバー部材の側部に並置された第2の床面カバー部材とに分割して形成され、両床面カバー部材はともに一側の端部が躯体Bの開口部床面上に載せられ、他側の端部が第1の床面カバー部材の下面に第1のスライド部材が、第2の床面カバー部材の下面に第2のスライド部材がそれぞれ固定されて両躯体間に支持されているとともに、第2の床面カバー部材の上面の少なくとも一側の端部に壁面材が載せられて支持され、
前記壁面材が載せられた第2の床面カバー部材の側端部に隣接させて裏面材が躯体Aの外壁面に沿って平行に配置され、且つ裏面材の下端部にスライド部材が取り付けられているとともに、この裏面材の側端部と前記壁面材の躯体A側の先端部が連結された構成を有することを特徴とする躯体間隙の間仕切り構造。
【請求項2】
スライド部材がレール部材内でその滑動方向を軸として回転可能に取り付けられた構成を有することを特徴とする請求項1に記載の躯体間隙の間仕切り構造。
【請求項3】
間隙Gを隔てて相対した躯体Aの開口部と躯体Bの開口部間に床面カバー材と壁面材を架け渡して両躯体A,Bを接合する躯体間隙の間仕切り構造において、
躯体Aの間隙Gに面した外壁面に間隙奥行き方向に沿ってレール部材が取り付けられ、このレール部材内に当該レール部材に沿って滑動し、且つレール部材内で前記滑動方向を軸として回転可能に設けられた一つ又は複数のスライド部材が取り付けられ、
床面カバー材が、その一側の端部が躯体Bの開口部床面上に載せられ且つ他側の端部がその下面に前記スライド部材が固定されて両躯体間に支持されているとともに、この床面カバー材の上面の少なくとも一側の端部に壁面材が載せられて支持され、
前記壁面材が載せられた床面カバー材の側端部に隣接させて裏面材が躯体Aの外壁面に沿って平行に配置され、且つ裏面材の下端部にスライド部材が取り付けられているとともに、この裏面材の側端部と前記壁面材の躯体A側の先端部が連結板で連結された構成を有することを特徴とする躯体間隙の間仕切り構造。
【請求項4】
間隙Gを隔てて相対した躯体Aの開口部と躯体Bの開口部間に床面カバー材と壁面材を架け渡して両躯体A,Bを接合する躯体間隙の間仕切り構造において、
躯体Aの間隙Gに面した外壁面に間隙奥行き方向に沿ってレール部材が取り付けられているとともに、このレール部材内に当該レール部材に沿って滑動する一つ又は複数のスライド部材が取り付けられ、
床面カバー材が、その一側の端部が躯体Bの開口部床面上に載せられ且つ他側の端部がその下面に前記スライド部材が固定されて両躯体間に支持されているとともに、この床面カバー材の上面の少なくとも一側の端部に壁面材が載せられて支持され、
前記壁面材が載せられた床面カバー材の側端部に隣接させて裏面材が躯体Aの外壁面に沿って平行に配置され、且つ裏面材の下端部にスライド部材が取り付けられているとともに、この裏面材の側端部と前記壁面材の躯体A側の先端部が連結板で連結され、
且つ壁面材と裏面材を連結する前記連結板が、壁面材の端部が接合する側の面内に縦又は横に伸びた長孔を有し、壁面材の外面には連結板の前記長孔と交差するように横又は縦に伸びた長孔を形成され、交差して重ねられた連結板の長孔と壁面材の長孔とに固定ボルトを通して、連結板を介して裏面材を壁面材に取り付けた構成を有することを特徴とする躯体間隙の間仕切り構造。
【請求項5】
床面カバー材と壁面材は、躯体A,Bの間隙Gの幅方向の変動を吸収するために設定された設定可動量の略二倍の長さに設けられたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の躯体間隙の間仕切り構造。
【請求項6】
壁面材の上部に天井カバー材が躯体A,B間に架設して配置された構成を有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の躯体間隙の間仕切り構造。
【請求項7】
間隙Gを隔てた躯体A,B間に架け渡される、間隙奥行き方向に伸びた第1の仕切り部材と第1の仕切り部材の側部に並置された第2の仕切り部材と第2の仕切り部材の上面に直交配置された間隙高さ方向に伸びた第3の仕切り部材とを支持するための機構であって、
躯体Aの間隙Gに面した外壁面に間隙奥行き方向に沿って取り付けられるレール部材と、
レール部材内に取り付けられて当該レール部材に沿って滑動する部材であって一側の端部を躯体Bに載せた第1の仕切り部材の他側の端部に固定される第1のスライド部材と、
レール部材内に取り付けられて当該レール部材に沿って滑動する部材であって一側の端部を躯体Bに載せた第2の仕切り部材の他側の端部に固定される、前記第1のスライド部材とは別体の第2のスライド部材と、
を有して構成されたことを特徴とする仕切り部材の支持機構。
【請求項8】
第1のスライド部材と第2のスライド部材は、レール部材内でその滑動方向を軸として回転自在に取り付けられた構成を有することを特徴とする請求項7に記載の仕切り部材の支持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間隙を隔てて隣接した躯体の開口部間に床パネルと壁パネルを架設して両躯体の床面及び壁面を接合する間仕切り構造と、これに用いられる空間を仕切る仕切り部材の支持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の中に設けられた間隙を挟んで隣接した躯体同士を接合するエキスパンションジョイントとして、例えば
図14に示されるように、躯体Aと躯体Bの間隙Gに床面カバー材100をスライド移動自在に設置し、躯体間隙幅方向(以下、間隙X方向という)の変動を床面カバー材100が躯体Bの床面101に沿って前後にスライド移動することにより吸収し、躯体間隙奥行き方向(以下、間隙Y方向という)の変動を躯体Bとともに床面カバー材100が躯体Aの外壁102に沿って横にスライド移動することにより吸収し、間隙Y方向への躯体の変動量が大きく、躯体Aの外壁102と床面カバー材100の間に欠損部Sが生じる場合に、床面カバー材100の側方に欠損カバー材103を張り出して欠損部Sを塞ぐようにした構成のものが知られている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
また、
図15に示されるように、間隙Gに面した躯体Aの外面に設置されたガイドレール104に、床面カバー材100の固定側端部と袖パネル105を一体にスライド移動可能に取り付け、床面カバー材100の側部外側に、一側が袖パネル105の先端部に固定されていて躯体A,B間のY方向への変位に連動して伸縮可能に設けられた伸縮カバー体106を取り付け、前記床面カバー材100,袖パネル105及び伸縮カバー体106の端部をスライドレール104上で一体に連結しておくことにより、床面カバー材100の側方に欠損部が生じないようにした構成のものが知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−156305号公報
【特許文献2】特開2008−240510号公報
【特許文献3】特開2010−242311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記
図14に示された構成のものは、躯体A,B間が大きく変位したときに生じる欠損部Sを欠損カバー材103で塞ぐことが可能であるが、エキスパンションジョイント全体の設計が煩雑になり、また、欠損部Sを欠損カバー材103で塞いだ状態で、欠損カバー材103と床面カバー材100との間に段差ができてしまう。
欠損部Sが生じるような規模の大きな災害発生時には停電により十分な屋内照明が確保できない事態が発生すると考えられ、そのような状況下では、歩行者が前記段差部に躓き、転んで怪我をするなどの二次的災害を引き起こす虞が大きく、歩行の安全性を確保することができない。
【0006】
前記
図15に示された構成のものは、床面カバー材100がX方向へスライド移動するのに伴って伸縮カバー体106が同方向に沿って伸長又は萎縮し、また、スライドレール104に沿って床面カバー材100,袖パネル105及び伸縮カバー体106がY方向に一体に変位するように設けてあるので、床面カバー材100の周囲に欠損部Sが生じることはない。
しかし、伸縮カバー体106は、例えば
図16に示されるように、複数のカバー材106a,106aをパンタ構造の複数のリンク機構106b,106bで連結し、或いは平行に配置された複数のレール部材106c、106cで連結して構成され、リンク機構106bやレール部材106bの取り付けピッチや、各カバー材106a間で水平方向又は出入り方向の取り付け位置に少しでもバラツキがあると可動に支障を来たすことから高い施工精度が要求され、組み立てに手間を要する。伸縮カバー体106を取り付ける作業に手間を要し、調整工程も多いことにより、エキスパンションジョイント全体の施工コストが高くならざるを得ない。
また、図示した構成のものは、躯体A,Bが躯体間隙高さ方向(以下、間隙Z方向という)に沿って相対変位した場合、これを効果的に吸収することができない。躯体A,Bが間隙Z方向に相対変位した場合、袖パネル105と伸縮カバー体106の連結部分や、床面カバー材100、袖パネル105及び伸縮カバー体106の端部同士の接続部分に応力が集中して破損をきたす虞がある。
【0007】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、間隙を隔てて相対した躯体間に床面カバー材と壁面材を架け渡して両躯体を接合する間仕切り構造において、低廉な施工コストで設置可能であり、地震により躯体同士が何れの方向へ相対変位しても、欠損部を生ずることなく、前記両カバー材で間隙を確実に塞いで歩行の安全を確保することができるように構成すること、及びこの間仕切り構造の設置に用いることのできる仕切り部材の支持機構を構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明は、間隙Gを隔てて相対した躯体Aの開口部と躯体Bの開口部間に床面カバー材と壁面材を架け渡して両躯体A,Bを接合する躯体間隙の間仕切り構造において、
躯体Aの間隙Gに面した外壁面に間隙Y方向に沿ってレール部材が取り付けられているとともに、このレール部材内に当該レール部材に沿って滑動する一つ又は複数のスライド部材が取り付けられ、
床面カバー材が、その一側の端部が躯体Bの開口部床面上に載せられ且つ他側の端部がその下面に前記スライド部材が固定されて両躯体間に支持されているとともに、この床面カバー材の上面の少なくとも一側の端部に壁面材が載せられて支持され、
前記壁面材が載せられた床面カバー材の側端部に隣接させて裏面材が躯体Aの外壁面に沿って平行に配置され、且つ裏面材の下端部にスライド部材が取り付けられているとともに、この裏面材の側端部と前記壁面材の躯体A側の
先端部が連結された構成を有することを特徴とする。
【0009】
これによれば、地震により両躯体A,Bが相対変位し、間隙Gの伸縮やずれが生じた場合、躯体A,Bの間隙X方向の変位は床面カバー材が躯体Bの開口部床面上を同方向にスライド移動して吸収し、間隙Y方向の変位は床面カバー材、壁面材及び裏面材が躯体Aの外壁面に取り付けられたレール部材上をスライド移動して吸収する。
また、壁面材は床面カバー材の側端部上面に載せて取り付けられ、両躯体A,B間を床面カバー材と一体に間隙X,Y両方向にスライド移動するので、壁面材により床面カバー材の側方は常時閉鎖されて欠損部位が発生することはなく、また、裏面材はその端部を壁面材の躯体A側の端部に連結して壁面材と一体に躯体Aの外壁面に沿ってスライド移動するので、躯体Aの開口部に面していた
床面カバー材及び壁面材が間隙Y方向にスライド移動して前記開口部からずれると、そのずれた位置に裏面材が進出して開口部を閉鎖するので、壁面材の外側にも欠損部位が発生することはなく、歩行者が床や壁の欠損部位や段差部位に足を踏み入れたり躓いたりする危険はなく、地震発生時における歩行の安全性が確保される。
前記構成の間仕切り構造は、躯体Aの外壁面に取り付けたレール部材上で床面カバー材、壁面材及び裏面材を支持した簡易且つコンパクトな構成であり、また、実質的な可動部材はレール部材内を滑動するスライド部材のみであるので、高い施工精度は要求されず、低廉な施工コストで設置することが可能である。
【0010】
前記構成の間仕切り構造において、床面カバー材と壁面材は、躯体A,Bの間隙Gの間隙X方向の変動を吸収するために設定された設定可動量の略二倍の長さに設けられていることが好ましい。
【0011】
前記構成の間仕切り構造において、例えば両躯体A,Bの開口部床面がその表面にタイルを埋め込むなどした化粧床面であり、これに対応させて床面カバー材を厚みのある化粧床面とした場合、両躯体A,Bが間隙X方向に沿って間隙Gを縮小するように相対変位し、躯体Bの開口部床面上に床面カバー材が乗り上げたときに、床面カバー材が厚いために床面カバー材の傾きが大きくなり、これに伴い床面カバー材上の壁面材が大きく傾くと、両躯体A,Bの開口部分に衝突するなどして可動に支障を来たすこととなる。
このような場合に、床面カバー材とスライド部材を複数に分割した構造とすること、すなわち、前記構成の間仕切り構造において、床面カバー材を間隙Y方向に伸びた第1の床面カバー部材と、第1の床面カバー部材の側部に並置されていて壁面材が載った第2の床面カバー部材とに分割して形成し、レール部材を滑動する複数のスライド部材のうち、第1のスライド部材を第1の床面カバー部材の端部に固定し、第2のスライド部材を第2の床面カバー部材の端部に固定して構成することが好ましい。
これによれば、床面カバー材は、壁面材が載った部分(第2の床面カバー部材)とその他の部分(第1の床面カバー部材)とに分割しており、それぞれの端部にレール部材内を一体に滑動しつつ独立して回転変位する第1,第2のスライド部材を固定してあるので、前記の如く、間隙Gを縮小する方向に両躯体A,Bが相対変位して躯体Bの開口部床面上に床面カバー材の第1の床面カバー部材が乗り上げて大きく傾いても、壁面材が載った第2の床面カバー部材は単に躯体Bの開口部床面上をスライドするだけで傾くようなことはなく、壁面パネルで両躯体A,Bの開口部壁面を接合した状態が維持される。
【0012】
前記構成の間仕切り構造において、両躯体A,Bの間隙Z方向に沿った相対変位を吸収するため、スライド部材がレール部材内でその滑動方向を軸として回転可能に取り付けられた構成とすることが好ましい。
これによれば、両躯体A,Bが間隙Z方向に沿って相対変位して、床面カバー材を介して水平に連なっていた両躯体A,Bの開口部床面に上下に互い違となる段差が生じた場合に、床面カバー材がその躯体A側の端部に固定されたスライド部材を支点として回転することで、躯体Bの開口部床面が躯体Aの開口部床面に対して上昇又は下降する変位に追随して床面カバー材が傾斜し、床面カバー材の他側の端部が躯体Bの開口部床面上に載って接続した状態が保持される。両躯体A,Bの間隙Z方向に相対変位しても、躯体Bの開口部床面と床面カバー材との間に欠損部位が生ずることはなく、床面カバー材を介して両躯体A,Bの開口部床面を接合した状態を維持して歩行の安全が確保される。
【0013】
前記構成の間仕切り構造において、壁面材と裏面材を連結する連結板は壁面材の端部が接合する側の面内に縦又は横に伸びた長孔を有し、壁面材の外面には連結板の前記長孔と交差するように横又は縦に伸びた長孔を形成され、交差して重ねられた連結板の長孔と壁面材の長孔とに固定ボルトを通して、連結板を介して裏面材を壁面材に取り付けた構成を有することが好ましい。
これによれば、両躯体A,Bが間隙Z方向に沿って相対変位することによりスライド部材が回転して両躯体A,B間に架け渡された床面カバー材が傾斜し、床面カバー材の上面に取り付けられた壁面材が床面カバー材とともに傾斜したときに、連結板で連結された躯体Aの外壁面に沿って配置された裏面材に対して、壁面材の連結板との接続位置が前記連結板と壁面材外面とに形成された長孔に沿ってずれることで、壁面材を裏面材との連結部を破損させることなく連結状態を保持したまま、床面カバー材とともに回転変位させることができる。
【0014】
また、前記構成の間仕切り構造は、壁面材の上部に天井カバー材が躯体A,B間に架設して配置された構成としてもよい。
この場合、天井カバー材は、前記床面カバー材及び壁面材と同様に、両躯体A,Bの相対変位を間隙X,Y両方向にスライドして吸収し、また、間隙Z方向の変位に対して躯体A側で支持された端部を軸に回転可能に設けることが好ましい。
【0015】
また、本発明の仕切り部材の支持機構は、間隙Gを隔てた躯体A,B間に架け渡される、間隙Y方向に伸びた第1の仕切り部材と第1の仕切り部材の側部に並置された第2の仕切り部材と第2の仕切り部材の上面に直交配置された間隙高さ方向に伸びた第3の仕切り部材とを支持するための機構であって、
躯体Aの間隙Gに面した外壁面に間隙Y方向に沿って取り付けられるレール部材と、レール部材内に取り付けられて当該レール部材に沿って滑動する部材であって一側の端部を躯体Bに載せた第1の仕切り部材の他側の端部に固定される第1のスライド部材と、レール部材内に取り付けられて当該レール部材に沿って滑動する部材であって一側の端部を躯体Bに載せた第2の仕切り部材の他側の端部に固定される
、前記第1のスライド部材とは別体の第2のスライド部材と、を有して構成されることを特徴とする。
前記第1のスライド部材と第2のスライド部材は、レール部材内でその滑動方向を軸として回転自在に取り付けることが
できる。
【0016】
前記構成の間仕切り構造に適用される場合、第1の仕切り部材は第1の床面カバー部材、第2の仕切り部材は第2の床面カバー部材、第3の仕切り部材は壁面材に各々相当し、前記構成の支持機構を用いることにより、両躯体A,Bが何れの方向へ相対変位しても欠損部を生ずることのない間仕切り構造を、低廉な施工コストで間隙Gに設置することができる。
なお、仕切り部材の支持機構は、前記構成の間仕切り構造以外の、躯体A,B間の空間を仕切る適宜な構造物に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態の間仕切り構造の概略構成を示した要部断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態の間仕切り構造の概略構成を示した要部断面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態の間仕切り構造の床面部分の要部平面図である。
【
図4】第3実施形態の間仕切り構造の要部側面図である。
【
図5】レール部材で支持された床面カバー材の端部の拡大図である。
【
図6】レール部材とスライド部材の構成を示した要部拡大図である。
【
図7】スライド部材がレール部材内で回転した状態の床面カバー材の端部の拡大図である。
【
図8】壁面材と裏面材の連結部の拡大平面図である。
【
図9】(A),(B)は壁面材と裏面材を連結する連結板の要部拡大外観図である。
【
図11】
図10中のXI−XI線に沿った要部拡大断面図である。
【
図12】(A)〜(C)は第1〜第3実施形態の間仕切り構造における躯体の間隙X方向の相対変位が生じた際の動作を説明するための図である。
【
図13】(A),(B)は第1〜第3実施形態の間仕切り構造における躯体の間隙Y方向の相対変位が生じた際の動作を説明するための図である。
【
図14】欠損カバー材を備えた従来のエキスパンションジョイントの一例の平面図である。
【
図15】従来のエキスパンションジョイントの他の例の平面図である。
【
図16】(A),(B)は
図15のエキスパンションジョイントを構成する伸縮カバー体の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態の間仕切り構造を示しており、これは、建造物の中に設けられた間隙Gを隔てて同じ高さに相対する躯体Aの開口部A1と躯体Bの開口部B1間に、床面カバー材1と壁面材2を架け渡すとともに、間隙Gに面する躯体Aの外壁面A2に沿って裏面材3を配置し、これらカバー材で間隙G内の空間を欠損部位が生じないように仕切って、両躯体A,Bを接合したものである。
【0019】
詳しくは、躯体Aの間隙Gに面した外壁面A2に、開口部A1の下側で間隙Y方向に沿って伸びた適宜な長さのレール部材4を水平に取り付け、このレール部材4に沿って滑動するスライド部材5に床面カバー材1の躯体A側の端部下面を固定するとともに、床面カバー材1の躯体B側の端部を躯体Bの開口部B1の床面に載せてある。また、壁面材2は、床面カバー材1の側端部上面に載せて、床面カバー材1に一体に取り付けてあり、裏面材3はその下端部が前記スライド部材5に固定され、側端部を壁面材2の先端部に一体に連結してある。なお、床面カバー材1と壁面材2は、その間隙X方向に沿った長さWが間隙Gの両躯体A,B間の幅Wgに対して略2倍となる寸法に設けてある。レール部材4とスライド部材5の構成は後述の第3実施形態において説明する。
【0020】
そして、図示した間仕切り構造は、両躯体A,Bが相対変位し、間隙Gの伸縮やずれが生じた場合に、躯体A,Bの間隙X方向の変位は床面カバー材1が躯体Bの開口部B1床面上を同方向にスライド移動して吸収し、間隙Y方向の変位は床面カバー材1、壁面材2及び裏面材3がレール部材4上をスライド移動して吸収し、これらカバー材が間隙X,Y方向へ一体にスライドすることで、両躯体A,Bの開口部A1,B1内に間隙Gに通ずる欠損部位が発生しないように構成してある。
【0021】
図2は本発明の第2実施形態の間仕切り構造を示しており、これは、表面を化粧床面とした厚みのある床面カバー材1を用い、躯体B側でその開口部B1床面に設けられた凹所B11に床面カバー1が没入するように設けるとともに、床面カバー材1を前記凹所B11に没入する部位であり間隙Y方向に伸びた第1の床面カバー部材1aと、第1の床面カバー部材1aの側部に並置されていて壁面材2が載った第2の床面カバー部材1bとに分割して形成し、さらにレール部材4内を滑動するスライド部材5を第1のスライド部材5aと第2のスライド部材5bに分割して形成し、第1のスライド部材5aに第1の床面カバー部材1aを取り付け、第2のスライド部材5bに第2の床面カバー部材1bと裏面材3とを固定して、間隙Gを縮小する方向に両躯体A,Bが相対変位したときに、躯体Bの開口部B1床面上に床面カバー材1の第1の床面カバー部材1aが乗り上げるとともに、第1の床面カバー部材1aの側方で第2の床面カバー部材1bが開口部B1床面上をスライドして、同方向の変位が吸収されるように構成したものである。
【0022】
図3〜
図11は本発明の第3実施形態の間仕切り構造を示しており、これは前記第2実施形態の間仕切り構造に天井カバー材6を躯体A,B間に架設して構成したものである。
【0023】
詳しくは、前記形態と同様に、床面カバー材1は第1の床面カバー部材1aと、壁面材2が取り付けられた帯状の第2の床面カバー部材1bからなり、それぞれ躯体A側の端部下面に第1のスライド部材5aと第2のスライド部材5bを固定して当該側の端部がレール部材4に沿ってスライド自在支持され、躯体B側の端部が躯体Bの開口部B1床面に載せて取り付けてある。床面カバー材1と壁面材2が、間隙Gの両躯体A,B間の幅Wgに対して略2倍の長さ寸法Wに設けてあることも前記形態と同様である。
【0024】
床面カバー材1と裏面材3を躯体Aの外壁面A2に沿ってスライド自在に支持するレール部材4は、
図5及び
図6に示されるように、スライド部材5が係入するスライド支持部材41と、スライド支持部材41を上面で支持するレール受け部材42により形成してある。
【0025】
スライド支持部材41は、その上面をスライド部材5が没入する大きさで断面略逆台形状に凹陥させてあり、その両側上部にスライド部材5をスライド嵌合可能とする断面略半月状の凹陥溝部41a,41aをそれぞれ設けるとともに、凹陥溝部41a,41aの上部に内方に向けて突設した嵌合片41b,41bを設けて形成してある。嵌合片41b,41bは、一方の嵌合片41bが、他方の嵌合片41bよりも上方に食い違い状に位置するよう形成してある。また、レール受け部材42は、断面略矩形状で、その上面にスライド支持部材41が嵌る略逆台形状に凹陥させた受け部42aを形成し、受け部42aの両内壁面42bを下方へ傾斜させつ窄ませ、その傾斜面に長手方向に伸びたに小突起を複数列設して形成してある。
また、スライド部材5は、平面状の
固定面51の下側に
首部52を突出させ、
首部52の下側に断面略半月状の
膨頭部53を一体に設けて形成してある。
【0026】
図5に示されるように、レール部材4は、レール受け部材42内にスライド支持部材41を差し入れ状態で、躯体Aの外壁面A2に取り付けられたアングル板7に固定ボルト8で固定され、固定されたスライド支持部材41内に、床面カバー材1の端部下面に固定されたスライド部材5の
膨頭部53を係入して、床面カバー材1の端部をレール部材4に沿ってスライド自在に支持させてある。
また、スライド部材5はその
膨頭部53がスライド支持部材41の嵌合片41b,41bに係合する範囲で、当該スライド部材5がレール部材4内を滑動する軸方向周りに回転可能に設けられており、これにより、両躯体A,Bが間隙Z方向へ相対変位して開口部A1,B1の高さが段違いになったときに、
図7に示されるように、両躯体A,B間に架け渡された床面カバー材1がスライド部材5を軸に傾斜して、床面カバー材で前記開口部A1,B1の床面を接合した状態を維持し、同方向の変位を吸収するように設けてある。
【0027】
裏面材3は、
図8に示されるように、壁面材2が載せられた床面カバー材1の側端部に隣接させて躯体Aの外壁面A2に沿って平行に配置され、その先端部を断面L字形の連結板9により壁面材2の端部に連結し、その下端部を前記第2のスライド部材5bに固定して、床面カバー材1と壁面材2とともにレール部材4に沿ってスライド移動し得るように取り付けてある。
【0028】
壁面材2と裏面材3を連結する連結板9の壁面材2の端部が接合する側の面内には、
図9に示されるように、縦に伸びた長孔9a(同図(A))、又は横に伸びた長孔9a(同図(B))が形成されており、また、壁面材2の外面には、連結板9の前記長孔9aと交差するように横に伸びた長孔2a(同図(A))、又は縦に伸びた長孔2a(同図(B))を形成してある。
そして、連結板9の他側の面を裏面材3に固定し、長孔9aが形成された側の面を壁面材2の外面に重ねて長孔9aと長孔2aとを交差させ、両長孔9a,2aに固定ボルト8を通して壁面材2と裏面材3を連結することにより、両躯体A,Bの間隙Z方向への相対変位に伴って壁面材2が床面カバー材1とともに傾斜したときに、壁面材2の連結板9との接続位置が長孔9aに沿って縦又は横にずれることで裏面材3との連結部が破損することを防ぎ、鉛直方向に沿って傾斜した壁面材2と水平方向に直交した向きで接続して裏面材3との連結状態を保持するように設けてある。
【0029】
天井カバー材6は、その長さが床面カバー材1及び壁面材2と略同じ間隙Gの幅Wgに対して略2倍となる寸法Wに設けられており、躯体B側に設けられた吊架機構6aに上面を支持されて、両躯体A,B間に取り付けてある。
詳しくは、天井カバー材6は、吊架機構6aにより天井カバー材6の間隙X方向に沿った変位可能及び間隙Z方向に沿った傾斜可能に支持されて、天井カバー材6を壁面材2の上部で吊った状態に保持されているとともに、その躯体A側の端部が、躯体Aの外壁面A2に取り付けられた間隙Y方向に伸びた上部レール部材10を介して、当該上部レール部材10に沿ってスライド自在、且つスライド方向軸として回転自在に取り付けてある。
また、
図11に示されるように、天井カバー6の側端部下面には下向きに開口したチャンネル材6bが取り付けられており、このチャンネル材6b内に壁面材2の上部を挿入して壁面材2が倒れることを防止するように設けてある。なお、壁面材2の間隙Z方向への傾斜が許容されるように、チャンネル材6bの内側上面と壁面材2の上面間には適宜な間隔の隙間Dを設けてある。
【0030】
このように構成された本形態の間仕切り構造によれば、
図12(A)に示された各カバー材の当初の取り付け位置から、間隙Gの両側で躯体A,Bが間隙X方向に沿って、間隙Gが拡がる方向(同図(B))又は狭める方向(同図(C))に相対変位した場合、床面カバー材1と躯体Bの開口部B1床面上を同方向にスライド移動し、同じく壁面材2及び天井カバー材6がスライド移動して、同方向の変位を吸収することができる。両躯体A,B間で床面カバー材1と一体に壁面材2及び天井カバー材6がスライド移動するので、壁面材2により床面カバー材1の側方が、天井カバー材6により床面カバー材1の上方が常時閉鎖されて欠損部位が発生することはない。
【0031】
また、間隙Gの両側で躯体A,Bが間隙Y方向に沿って相対変位した場合、
図13(A)に示されるように、躯体Aの開口部A1が拡がる方向へ変位したときは、同方向へ床面カバー材1,壁面材2,裏面材3及び天井カバー材6が同方向へ一体にスライド移動して変位を吸収し、このとき、当該開口部A1内に裏面材3が進出して開口部A1を閉鎖するため、壁面材2の外側に欠損部位が発生することはなく、これとは反対側へ相対変位したときには(同図(B))、前記各カバー材が同方向へ一体にスライド移動して変位を吸収することができる。
【0032】
さらに、間隙Gの両側で躯体A,Bが間隙Z方向に沿って相対変位したときは、躯体Bの開口部B1床面が躯体Aの開口部A1床面に対して上昇又は下降する変位に追随して,床面カバー材1と壁面材2が躯体A側の端部に固定されたスライド部材5を支点に回転して傾斜し、また、天井カバー材6が上部レール部材10との取付け部を支点として傾斜することで変位を吸収し、各カバー材で両躯体A,Bの開口部A1,B1を接合した状態が保持することができる。両躯体A,Bが間隙Z方向に相対変位しても、躯体Bの開口部B1床面と床面カバー材1との間に欠損部位が生ずることはない。
【0033】
地震発生時に躯体A,B間に生ずる変位は、前記間隙X、Y及びZ方向の各方向を組み合わせた全範囲に生じるが、本形態の間仕切り構造は、床面カバー材1,壁面材2及び天井カバー材6の可動領域をX、Y及びZ方向の全方向に設けてあるので、躯体A,Bが何れの方向に相対変位しても、変位に追従して前記各カバー材がスライドし或いは回転することで変位を吸収し、さらに躯体Aの開口部A1に対する床面カバー材1と壁面材2のずれに対しては裏面材3がずれた空間を閉鎖することで、躯体A,Bの間に欠損部位を生じさせることなく間隙Gを各カバー材で確実に閉鎖することが可能である。
【0034】
なお、図示した間仕切り構造、これを構成する各カバー材などの部材の構成は、本発明の実施形態の一例を示すものであり、本発明はこれに限定されず、他の適宜な形態で構成することが可能である。図示した形態では、床面カバー材1の一側に壁面材2と裏面材3を設けたが、これらは床面カバー材1の両側に設けて構成してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 床面カバー材、2 壁面材、3 裏面材、4 レール部材、5 スライド部材、6 天井カバー材、7 アングル板、8 固定ボルト、9 連結板、10 上部レール部材
【要約】
【課題】躯体間隙の間仕切り構造を、躯体同士が何れの方向へ相対変位しても、欠損部を生ずることなく、カバー材で間隙を確実に塞いで歩行の安全を確保することができように構成する。
【解決手段】躯体Aの間隙Gに面した外壁面に間隙Y方向に沿ってレール部材4を取り付け、このレール部材4内を滑動するスライド部材5で、躯体A,B間に架設した側端部に壁面材2が載った床面カバー材1の端部と、躯体Aの外壁面A2に沿って平行に配置されていて壁面材2の先端部に連結された裏面材3の下端部を支持し、躯体A,B間の相対変位に対して前記各カバー材が一体にスライド移動するように構成する。
【選択図】
図1