(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
<1 インジウムを含有するパーティクルの発生原因>
図12は、MOCVD法によりエピタキシャル成長させたInAlN膜及びその表面に付着したパーティクルの断面を透過電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)で観察することにより得られた像を示す図である。
図12に示すように、InAlN膜の表面に付着したパーティクルは、略半球形状を有している。また、表面へのパーティクルの付着にもかかわらず、InAlN膜は略均一であってその表面も略平坦であり、InAlN膜に顕著な窪み等は見られない。
【0015】
図13は、エネルギー分散型X線分光装置(EDX;Energy Dispersive X-ray Spectrometer)でパーティクルを組成分析することにより得られたエネルギースペクトルを示す図である。組成分析を行った場所は、
図12に示す像の中の「×」の部分である。
図13には、エネルギースペクトルにあらわれたピークの起源となる元素も示されている。
図13に示すように、エネルギースペクトルには、インジウム(In)を起源とするピークが強くあらわれている。
【0016】
上述した機器分析の結果を総合的に考察すると、パーティクルは、インジウムを主成分とし、InAlN膜を形成した後に付着したものであると考えられる。
【0017】
本願発明者は、これらの事実から、MOCVD装置の配管等にインジウムを含有する原料が残存し、InAlN膜をエピタキシャル成長させた後に当該原料又は当該原料に由来する物質がリアクタの内部に移動し、基板の温度を下げたときに当該原料又は当該原料に由来する物質が凝集してInAlN膜の表面に付着することが、パーティクルの発生原因であると考え、下述するインジウムを含有するパーティクルが付着することを抑制する処理(以下では、「パーティクル抑制処理」という)に想到するに至った。
【0018】
<2 第1参考形態>
<2−1 半導体装置100の構成>
図1は、本発明の第1参考形態に係る半導体装置100の概略構成を示す模式図である。
図1は、半導体装置100の断面図となっている。半導体装置100は、高電子移動度トランジスタ(HEMT;High Electron Mobility Transistor)である。なお、下述する半導体装置100の構成、気相成長装置130の構成及びエピタキシャル基板101の製造方法を高電子移動度トランジスタ以外の半導体装置において採用してもよい。
【0019】
図1に示すように、半導体装置100は、III族窒化物の膜で構成されるバッファ層104、チャネル層106、スペーサ層108及び障壁層110を基板102の表面にこの順序で積層した半導体積層構造を有する。障壁層110の上面には、ゲート電極112、ドレイン電極114及びソース電極116が形成されている。
【0020】
{基板102}
基板102を構成する材料並びに基板102の方位及び極性は、III族窒化物の膜をエピタキシャル成長させることができるものから選択する。例えば、基板102を構成する材料は、炭化シリコン(SiC)・サファイア(Al
2O
3)・シリコン(Si)・スピネル(MgAl
2O
4)・ガリウムヒ素(GaAs)・フェライト(MnO−ZnO−Fe
2O
3)等の単結晶から選択する。中でも、基板102を構成する材料として6H−SiC又はサファイアの単結晶を選択し、III族窒化物の膜を(0001)面にエピタキシャル成長させれば、結晶品質が良好なIII族窒化物の膜を得ることができる。
【0021】
基板102の板厚、平面形状及び平面寸法も制限されないが、例えば、直径又は一辺が1〜5インチ程度、板厚が0.1〜1mm程度の円形基板又は正方形基板を基板102として採用することが望ましい。
【0022】
{バッファ層104}
バッファ層104は、基板102とチャネル層106との格子不整合によるチャネル層106の結晶品質の低下を抑制する。バッファ層104は、結晶性が低いIII族窒化物の膜であることが望ましい。バッファ層104を構成するIII族窒化物は、例えば、窒化ガリウム(GaN)・窒化アルミニウム(AlN)等から選択する。
【0023】
バッファ層104の膜厚は、10〜1000nmであることが望ましい。
【0024】
{チャネル層106}
チャネル層106の内部のスペーサ層108との界面118の近傍には、界面118と略平行に広がる2次元電子ガス120が生成している。これにより、チャネル層106は、電子が移動するチャネルとなる。
【0025】
チャネル層106を構成するIII族窒化物は、一般式Al
y1Ga
z1N(y1+z1=1,0≦y1≦0.3)であらわされる組成を有することが望ましい。アルミニウム量y1を0≦y1≦0.3としたのは、この範囲を上回るとIII族窒化物の膜の表面の平坦性が悪化する傾向があるからである。ただし、このことは、この範囲外の組成を選択することを妨げない。
【0026】
{障壁層110}
障壁層110としてInAlN膜を用いた場合、障壁層110は、主として自発分極効果により、チャネル層106の内部に2次元電子ガス120を生成させる。
【0027】
障壁層110の膜厚は、1〜35nmであることが望ましい。この範囲を下回ると2次元電子ガス120が生成しにくくなる傾向があり、この範囲を上回ると半導体装置100の製造が困難になる傾向があるからである。
【0028】
障壁層110を構成するIII族窒化物は、チャネル層106の内部に生成する2次元電子ガス120の濃度が高くなり、チャネル層106との格子不整合が小さくなるように選択することが望ましい。これらの観点から、障壁層110を構成するIII族窒化物は、少なくともインジウム及びアルミニウムを含有し、一般式In
x2Al
y2Ga
z2N(x2+y2+z2=1,{y2−(0.45+y1)}/4.56≦x2≦{y2−(0.27+0.51y1)}/1.78,0≦z2≦0.4)であらわされる組成を有することが望ましい。ただし、このことは、この範囲外の組成を選択することを妨げない。
【0029】
{スペーサ層108}
スペーサ層108は、チャネル層106の内部のスペーサ層108との界面118の近傍に2次元電子ガス120を閉じ込めることにより、2次元電子ガス120の濃度及びチャネル層106における移動度を向上する。ただし、スペーサ層108は必ずしも必須ではなく、省略してもよい。
【0030】
スペーサ層108を設ける場合、その膜厚は、0.5〜1.5nmであることが望ましい。この範囲を下回ると2次元電子ガス120を閉じ込める効果が低下する傾向があり、この範囲を上回ると内部応力によりスペーサ層108の結晶品質が低下する傾向があるからである。
【0031】
スペーサ層108を構成するIII族窒化物は、スペーサ層108のバンドギャップエネルギーEg3が障壁層110のバンドギャップエネルギーEg2よりも大きくなる(Eg3>Eg2)ように選択することが望ましい。この観点から、スペーサ層108を構成するIII族窒化物は、一般式In
x3Al
y3Ga
z3N(x3+y3+z3=1,0≦z3≦0.05)であらわされる組成を有することが望ましい。
【0032】
{ゲート電極112、ドレイン電極114及びソース電極116}
ゲート電極112を構成する材料は、障壁層110とショットキー接合する金属から選択する。例えば、パラジウム(Pd)及び金(Au)の膜を積層したPd/Au電極をゲート電極112として好適に使用することができる。
【0033】
ドレイン電極114及びソース電極116は、障壁層110とオーミック接合する金属から選択する。例えば、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)及び金(Au)の膜を積層したTi/Al/Ni/Au電極をドレイン電極114及びソース電極116として好適に使用することができる。
【0034】
<2−2 気相成長装置130>
図2は、上述した半導体積層構造を有するエピタキシャル基板101の製造に使用する気相成長装置130の概略構成を示す模式図である。気相成長装置130は、MOCVD法によりIII族窒化物の膜を基板の表面にエピタキシャル成長させるMOCVD装置である。
【0035】
図2に示すように、気相成長装置130は、リアクタ132、原料供給部134及び制御部136を備える。
【0036】
リアクタ132は、III族窒化物の膜をエピタキシャル成長させる基板198を収容する。リアクタ132の内部には、サセプタ138及びヒータ140が設けられている。サセプタ138は、基板198を保持する。ヒータ140は、サセプタ138を加熱することにより、サセプタ138が保持している基板198を加熱する。
【0037】
以下では、文字通り、発熱したヒータ140から基板102に熱を加えることを意味する語として「加熱」を使用する。したがって、基板198の「加熱」は、基板198の温度を上げる場合だけでなく、基板198の温度を一定に保つ場合、自然放冷を行う場合よりも遅い速度で基板198の温度を下げる場合にも行われる。すなわち、以下では、「加熱」と「昇温」とを概念的に使い分けている。
【0038】
原料供給部134は、III族窒化物を構成するIII族元素を含有する原料、すなわち、インジウム(In)を含有するトリメチルインジウム(In(CH
3)
3;以下では、「TMI」という)、アルミニウム(Al)を含有するトリメチルアルミニウム(Al(CH
3)
3;以下では、「TMA」という)及びGaを含有するトリメチルガリウム(Ga(CH
3)
3;以下では、「TMG」という)の全部又は一部の蒸気をキャリアガスとともにリアクタ132の内部に供給するとともに、III族窒化物を構成する窒素(N)を含有する原料、すなわち、アンモニア(NH
3)ガスをリアクタ132の内部に供給する。もちろんIII族元素を含有する原料として他の種類の有機金属化合物を選択してもよいし、窒素を含有する原料として他の種類の窒素化合物を選択してもよい。また、原料供給部134が、さらにドナー元素やアクセプタ元素の原料をリアクタ132の内部に供給するようにしてもよい。
【0039】
図2に示すように、原料供給部134は、リアクタ132の内部に各々独立して原料ガスを供給する原料供給系統142,144,146を備える。
【0040】
原料供給系統142は、TMIを窒素ガスでバブリングするバブリング部148、TMAを窒素ガスでバブリングするバブリング部150及びTMGを窒素ガスでバブリングするバブリング部152を窒素ガスの供給源154からリアクタ132の内部に至る配管156に設けて構成されている。バブリング部148,150,152は、各々、TMI、TMA及びTMGの供給源となり、これらの原料の蒸気をキャリアガスである窒素ガスに混合する。配管156は、バブリング部148,150,152を経由せずに窒素ガスの供給源154からリアクタ132の内部に至る1561と、配管1561から分岐してバブリング部148,150,152を経由して配管1561へ戻る配管1562とを備える。
【0041】
原料供給系統144は、TMIを水素ガスでバブリングするバブリング部158、TMAを水素ガスでバブリングするバブリング部160及びTMGを水素ガスでバブリングするバブリング部162を水素ガスの供給源164からリアクタ132の内部に至る配管166に設けて構成されている。バブリング部158,160,162は、各々、TMI、TMA及びTMGの供給源となり、これらの原料の蒸気をキャリアガスである水素ガスに混合する。配管166は、バブリング部158,160,162を経由せずに窒素ガスの供給源164からリアクタ132の内部に至る1661と、配管1661から分岐してバブリング部158,160,162を経由して配管1661へ戻る配管1662とを備える。
【0042】
原料供給系統146は、アンモニアガスの供給源166からリアクタ132の内部に至る配管168により構成される。
【0043】
原料供給系統142,144のいずれにおいても、バブリング部148,150,152,158,160,162において実際にバブリングを行うか否かは、マスフローコントローラにより切り替えることができる。
【0044】
なお、バッファ層104、チャネル層106、スペーサ層108及び障壁層110を構成するIII族窒化物の組成やこれらの層を形成するときに使用するキャリアガスによっては、バブリング部150,152,158,160,162の中に不要なものが出てくる場合があるが、そのような場合は不要なバブリング部を設けることを省略してもよい。
【0045】
制御部136は、サセプタ138による基板198の加熱、供給源154からの窒素ガスの供給、供給源164からの水素ガスの供給、供給源166からのアンモニアガスの供給、バブリング部148,150,152,158,160,162におけるバブリング等を制御する。
【0046】
<2−3 エピタキシャル基板101の製造方法>
図3は、上述した半導体積層構造を有するエピタキシャル基板101の製造方法を説明するフローチャートである。また、
図4は、第1参考形態に係るパーティクル抑制処理を説明するタイムチャートである。
図4は、障壁層110を形成し(タイミングt1〜t2)、パーティクル抑制処理を行う(タイミングt2〜t3)ときの気相成長装置130の状態、すなわち、制御部136の制御により行われる、窒素ガスの供給の有無(
図4(a))、窒素ガスによりバブリングしたTMIの供給の有無(
図4(b))、窒素ガスによりバブリングしたTMI以外の原料の供給の有無(
図4(c))、アンモニアガスの供給の有無(
図4(d))、水素ガスの供給の有無(
図4(e))、基板198の温度(
図4(f))を示している。
【0047】
{基板102のサーマルクリーニング}
エピタキシャル基板101の製造にあたっては、まず、
図3に示すように、リアクタ132の内部に基板102を収容し、基板102の表面をサーマルクリーニングする(ステップS101)。サーマルクリーニングは、サセプタ138に基板102を保持させ、リアクタ132の内部に水素ガスを供給してリアクタ132の内部を水素雰囲気にするとともに、基板102の温度を1000〜1300℃まで上げて5〜30分維持することにより行う。なお、入手した基板102の表面が十分に清浄かつ平坦であれば、サーマルクリーニングを省略してもよい。また、サーマルクリーニングと他のクリーニング方法とを併用してもよいし、サーマルクリーニングに代えて他のクリーニング方法を採用してもよい。
【0048】
{バッファ層104の形成}
続いて、バッファ層104を形成する(ステップS102)。バッファ層104の形成は、基板102の温度を500〜700℃まで下げて、必要なIII族元素の原料を水素ガスでバブリングしてから当該水素ガスをリアクタ132の内部に供給するとともに、水素ガス及びアンモニアガスをリアクタ132の内部に供給することにより行う。これにより、バッファ層104を構成するIII族窒化物を構成する全ての元素の原料が水素ガスとともにリアクタ132の内部に供給され、リアクタ132の内部に供給された原料が反応して基板102の表面にIII族窒化物の膜がエピタキシャル成長する。
【0049】
{チャネル層106の形成}
さらに続いて、チャネル層106を形成する(ステップS103)。チャネル層106の形成は、基板102の温度を1050〜1150℃まで上げて、必要なIII族元素の原料を水素ガスでバブリングしてから当該水素ガスをリアクタ132の内部に供給するとともに、窒素ガス、水素ガス及びアンモニアガスをリアクタ132の内部に供給することにより行う。これにより、チャネル層106を構成するIII族窒化物を構成する全ての元素の原料が窒素ガス及び水素ガスとともにリアクタ132の内部に供給され、リアクタ132の内部に供給された原料が反応してバッファ層104の表面にIII族窒化物の膜がエピタキシャル成長する。
【0050】
{スペーサ層108の形成}
次に、スペーサ層108を形成する(ステップS104)。スペーサ層108の形成は、基板102の温度を維持したまま、必要なIII族元素の原料を水素ガスでバブリングしてから当該水素ガスをリアクタ132の内部に供給するとともに、水素ガス及びアンモニアガスをリアクタ132の内部に供給することにより行う。これにより、スペーサ層108を構成するIII族窒化物を構成する全ての元素の原料が水素ガスとともにリアクタ132の内部に供給され、リアクタ132の内部に供給された原料が反応してチャネル層106の表面にIII族窒化物の膜がエピタキシャル成長する。
【0051】
{障壁層110の形成}
続いて、インジウムを含有する障壁層110を形成する(ステップS105)。障壁層110の形成にあたっては、まず、水素ガスの供給を停止し、窒素ガスの供給を開始し、アンモニアガスの供給を継続しながら、基板102の温度を600〜900℃まで下げる。しかる後に、窒素ガス及びアンモニアガスの供給を継続しながら、必要なIII族元素の原料(TMI及びTMI以外のIII族元素の原料)を窒素ガスでバブリングしてから当該窒素ガスをリアクタ132の内部に供給する。これにより、障壁層110を構成するIII族窒化物を構成する全ての元素の原料が窒素ガスとともにリアクタ132の内部に供給され、リアクタ132の内部に供給された原料が反応してスペーサ層108の表面にIII族窒化物の膜がエピタキシャル成長する。
【0052】
このように、障壁層110を形成するときに使用するキャリアガスを窒素ガスのみとすれば、障壁層110を構成するIII族窒化物のダングリングボンドを窒素終端とすることができるので、III族窒化物の理想的な電子構造を維持することができ、2次元電子ガス120の濃度を高くすることができる。
【0053】
上述した気相成長装置130は、障壁層110を形成するときに使用する窒素ガスを供給源154からリアクタ132の内部へ導く配管156に障壁層110を形成するときに使用するバブリング部148,150,152を設け、それとは独立して、スペーサ層108を形成するときに使用する水素ガスを供給源144からリアクタ132の内部へ導く配管166にスペーサ層108を形成するときに使用するバブリング部158,160,162を設けている。このため、キャリアガスを水素ガスから窒素ガスへ短時間で切り替えることができ、障壁層110を形成するときの雰囲気に水素ガスが混入することを抑制することができる。
【0054】
ただし、これらのことは、
図2に示す気相成長装置130とは異なる構成を有する気相成長装置を用いてエピタキシャル基板101を製造することを妨げない。
【0055】
また、上述した気相成長装置130は、障壁層110を形成するときに使用する窒素ガスの流路に沿って、その上流、中流及び下流に、それぞれ、障壁層110を形成するときに使用するバブリング部148,150,152を設けている。このため、TMIだけが配管に残存することを抑制することができるので、障壁層110の表面にインジウムを含有するパーティクルが付着することを抑制することができる。もちろん、バブリング部148,150,152の各々を上流、中流及び下流のいずれに設けるのかは変更することができる。
【0056】
{パーティクル抑制処理}
障壁層110を形成した後に、パーティクル抑制処理を行う(ステップS106)。第1参考形態に係るパーティクル抑制処理は、
図4(b)に示すように、窒素ガスによりバブリングしたTMIの供給をタイミングt2で停止する一方で、
図4(a)、
図4(c)及び
図4(d)に示すように、窒素ガス及びアンモニアガスの供給、窒素ガスによりバブリングしたTMI以外の原料の供給をタイミングt2の後も継続することにより行う。すなわち、第1参考形態に係るパーティクル抑制処理は、TMIの供給を停止した後に、TMI以外の原料(TMI以外のIII族元素の原料及びアンモニアガス)及び窒素ガスの供給を継続することにより行う。これにより、TMIが気相でTMI以外のIII族元素の原料と反応して除去され飽和蒸気圧に達しにくくなるので、障壁層110の表面にインジウムを含有するパーティクルが付着することを抑制することができる。また、TMI以外の原料の供給を継続することは、障壁層110の表面に欠陥が発生することを抑制し、障壁層110の表面の平坦性を損なわないようにすることにも寄与している。
【0057】
第1参考形態に係るパーティクル抑制処理を行う時間は、10〜60秒であることが望ましい。この範囲を下回るとインジウムを含有するパーティクルの除去が不十分になる傾向があり、この範囲を上回ると障壁層110の表面に別のIII族窒化物の膜が形成されやすくなるからである。
【0058】
第1参考形態に係るパーティクル抑制処理では、障壁層110の形成及びパーティクル抑制処理を行う間、
図4(e)に示すように、水素ガスの供給は行わず、
図4(f)に示すように、基板102の加熱を継続して、障壁層110を形成したときの基板102の温度を維持する。これにより、基板102を自然放冷した場合よりもTMIが反応しやすくなるので、インジウムを含有するパーティクルの付着をより効果的に抑制することができる。ただし、インジウムを含有するパーティクルの除去を妨げない範囲内で基板102の温度を変更することやパーティクル抑制処理の間に基板102の加熱を停止して自然放冷を開始することも許される。
【0059】
なお、障壁層110の形成及びパーティクル抑制処理を行う間、窒素ガス及びアンモニアガスの流量は一定にしておけばよいが、インジウムを含有するパーティクルの除去を妨げない範囲内で窒素ガス及びアンモニアガスの両方又は一方の流量を変更してもよい。
【0060】
第1参考形態に係るパーティクル抑制処理の終了後は、TMI以外の原料の供給も停止し、基板102の加熱を停止した後でアンモニアガスの供給も停止し、基板102の温度を室温の近傍まで下げ、エピタキシャル基板101をリアクタ132の内部から回収する。
【0061】
<3 第2参考形態>
第2参考形態は、第1参考形態に係るパーティクル抑制処理に代えて採用することができるパーティクル抑制処理に関する。
図5は、第2参考形態に係るパーティクル抑制処理を説明するタイムチャートである。
図5は、障壁層110を形成し(タイミングt1〜t2)、パーティクル抑制処理を行う(タイミングt2〜t3)ときの気相成長装置130の状態、すなわち、制御部136の制御により行われる、窒素ガスの供給の有無(
図5(a))、窒素ガスによりバブリングしたTMIの供給の有無(
図5(b))、窒素ガスによりバブリングしたTMI以外の原料の供給の有無(
図5(c))、アンモニアガスの供給の有無(
図5(d))、水素ガスの供給の有無(
図5(e))及び基板の温度(
図5(f))を示している。
【0062】
第2参考形態に係るパーティクル抑制処理は、
図5(b)及び
図5(c)に示すように、窒素ガスによりバブリングしたTMI及びTMI以外の原料の供給をタイミングt2で停止する一方で、
図5(a)及び
図5(d)に示すように、窒素ガス及びアンモニアガスの供給をタイミングt2の後も継続することにより行う。すなわち、第2参考形態に係るパーティクル抑制処理は、TMI及びTMI以外のIII族元素の原料の供給を停止した後に、アンモニアガス及び窒素ガスの供給を継続することにより行う。これにより、TMIがキャリアガスによって希薄化されるので、障壁層110の表面にインジウムを含有するパーティクルが付着することを抑制することができる。また、アンモニアガス及び窒素ガスの供給を継続することは、障壁層110の表面に欠陥が発生することを抑制し、障壁層110の表面の平坦性を損なわないようにすることにも寄与している。
【0063】
第2参考形態に係るパーティクル抑制処理を行う時間は、10分以上であることが望ましく、30分以上であることがさらに望ましい。この範囲を下回ると、インジウムを含有するパーティクルの除去が不十分になる傾向があるからである。
【0064】
第2参考形態に係るパーティクル抑制処理では、障壁層110の形成及びパーティクル抑制処理を行う間、
図5(e)に示すように、水素ガスの供給は行わず、
図5(f)に示すように、基板102の加熱を継続して、障壁層110を形成したときの基板102の温度を維持する。なお、障壁層110の形成及びパーティクル抑制処理を行う間、窒素ガス及びアンモニアガスの流量を一定にしておけば、流量の変化に起因する温度の変化やリアクタ132の内壁からのインジウムを含有するパーティクルの離脱を防ぐことができる。ただし、このことは、パーティクル抑制処理を行うときに窒素ガス及びアンモニアガスの両方又は一方の流量を変更することを妨げない。窒素ガス及びアンモニアガスの両方又は一方の流量を変更する場合、窒素ガスの供給量及びアンモニアガスの供給量の合計に対するアンモニアガスの供給量の比が10%以上となるようにすることが望ましい。この範囲内であれば、リアクタ132の内部に窒素の原料が十分に供給されるので、障壁層110の表面に欠陥が発生することを効果的に抑制することができるからである。
【0065】
第2参考形態に係るパーティクル抑制処理の終了後は、基板102の加熱を中止した後でアンモニアガスの供給も停止し、基板102の温度を室温の近傍まで下げ、得られたエピタキシャル基板101をリアクタ132の内部から回収する。
【0066】
<4 本発明実施形態>
本発明実施形態は、第1参考形態に係るパーティクル抑制処理に代えて採用することができるパーティクル抑制処理に関する。
図6は、本発明実施形態に係るパーティクル抑制処理を説明するタイムチャートである。
図6は、障壁層110を形成し(タイミングt1〜t2)、パーティクル抑制処理を行う(タイミングt2〜t3)ときの気相成長装置130の状態、すなわち、制御部136の制御により行われる、窒素ガスの供給の有無(
図6(a))、窒素ガスによりバブリングしたTMIの供給の有無(
図6(b))、窒素ガスによりバブリングしたTMI以外の原料の供給の有無(
図6(c))、アンモニアガスの供給の有無(
図6(d))、水素ガスの供給の有無(
図6(e))及び基板の温度(
図6(f))を示している。
【0067】
本発明実施形態に係るパーティクル抑制処理では、
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)、
図6(d)及び
図6(e)に示すように、窒素ガスの供給、窒素ガスによりバブリングしたTMIの供給、窒素ガスによりバブリングしたTMI以外の原料の供給、アンモニアガスの供給及び水素ガスの供給は、第2参考形態の場合と同様に行う。したがって、リアクタ132の内部への原料及びキャリアガスの供給は第2参考形態の場合と同様に行われる。
【0068】
ただし、本発明実施形態に係るパーティクル抑制処理では、
図6(f)に示すように、パーティクル抑制処理に入ってからより強く基板102を加熱し、障壁層110を形成したときの基板102の温度(以下では、「障壁層形成時温度」という)よりも基板102の温度を上げる。
【0069】
本発明実施形態に係るパーティクル抑制処理を行うときの基板102の最高温度は、障壁層形成時温度よりも100℃以上高いことが望ましく、300℃以上高いことがさらに望ましい。また、パーティクル抑制処理を開始してから基板102の温度が最高温度に到達するまでの時間は、5分以下であることが望ましく、2分以下であることがさらに望ましい。この範囲内であれば、障壁層110の表面に欠陥が発生することを抑制しつつ、インジウムを含有するパーティクルを効率的に除去することができるからである。
【0070】
このように、障壁層110を形成したときよりも基板102の温度を高くした状態でアンモニアガス及び窒素ガスを供給すると、TMIが分解しやすくなるので、パーティクル抑制処理に要する時間が短くなる。
【0071】
なお、基板102の温度が最高温度に達してから、その温度を一定時間維持するようにしてもよい。
【0072】
本発明実施形態に係るパーティクル抑制処理の終了後は、基板102の加熱を中止した後でアンモニアガスの供給も停止し、基板102の温度を室温の近傍まで下げ、得られたエピタキシャル基板101をリアクタ132の内部から回収する。
【0073】
<5 第3参考形態>
第3参考形態は、第1参考形態に係るパーティクル抑制処理に代えて採用することができるパーティクル抑制処理に関する。
図7は、第3参考形態に係るパーティクル抑制処理を説明するタイムチャートである。
図7は、障壁層110を形成し(タイミングt1〜t2)、パーティクル抑制処理を行う(タイミングt2〜t3)ときの気相成長装置130の状態、すなわち、制御部136の制御により行われる、窒素ガスの供給の有無(
図7(a))、窒素ガスによりバブリングしたTMIの供給の有無(
図7(b))、窒素ガスによりバブリングしたTMI以外の原料の供給の有無(
図7(c))、アンモニアガスの供給の有無(
図7(d))、水素ガスの供給の有無(
図7(e))、及び基板の温度(
図7(f))を示している。
【0074】
第3参考形態に係るパーティクル抑制処理では、
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)、
図7(d)及び
図7(e)に示すように、窒素ガスの供給、窒素ガスによりバブリングしたTMIの供給、窒素ガスによりバブリングしたTMI以外の原料の供給、アンモニアガスの供給及び水素ガスの供給は、第2参考形態の場合と同様に行う。したがって、リアクタ132の内部への原料及びキャリアガスの供給は第2参考形態の場合と同様に行われる。
【0075】
ただし、第3参考形態に係るパーティクル抑制処理では、
図6(f)に示すように、パーティクル抑制処理に入ってからより弱く基板102を加熱し、障壁層形成時温度よりも基板102の温度を下げてから基板102の温度を一定に維持する。
【0076】
第3参考形態に係るパーティクル抑制処理を行うときの基板102の最低温度と障壁層形成時温度との差は、150℃以下であることが望ましい。この範囲内であれば、パーティクルを除去する効率が顕著に低下しないからである。
【0077】
第3参考形態に係るパーティクル抑制処理の終了後は、基板102の加熱を中止した後にアンモニアガスの供給も停止し、基板102の温度を室温の近傍まで下げ、得られたエピタキシャル基板101をリアクタ132の内部から回収する。
【0078】
このように、障壁層110を形成したときよりも基板102の温度を低くした状態でアンモニアガス及び窒素ガスを供給しても、インジウムを含有するパーティクルを除去することは可能である。また、障壁層110を形成したときよりも基板102の温度を低くした状態でアンモニアガス及び窒素ガスを供給すれば、障壁層110の表面に欠陥が発生することを抑制することができるので、エピタキシャル基板101の表面の平坦性を向上することができる。
【0079】
<6 第4参考形態>
第4参考形態は、第1参考形態に係るパーティクル抑制処理に代えて採用することができるパーティクル抑制処理に関する。
図8は、第4参考形態に係るパーティクル抑制処理を説明するタイムチャートである。
図7は、障壁層110を形成し(タイミングt1〜t2)、パーティクル抑制処理を行う(タイミングt2〜t3)ときの気相成長装置130の状態、すなわち、制御部136の制御により行われる、窒素ガスの供給の有無(
図7(a))、窒素ガスによりバブリングしたTMIの供給の有無(
図7(b))、窒素ガスによりバブリングしたTMI以外の原料の供給の有無(
図7(c))、アンモニアガスの供給の有無(
図7(d))、水素ガスの供給の有無(
図7(e))及び基板の温度(
図7(f))を示している。
【0080】
第4参考形態に係るパーティクル抑制処理は、
図8(a)、
図8(b)及び
図8(c)に示すように、窒素ガスの供給並びに窒素ガスによりバブリングしたTMI及びTMI以外の原料の供給をタイミングt2で停止する一方で、
図8(d)に示すように、アンモニアガスの供給をタイミングt2の後も継続し、
図8(e)に示すように、タイミングt2に水素ガスの供給を開始する。すなわち、第4参考形態に係るパーティクル抑制処理は、TMI、TMI以外のIII族元素の原料及び窒素ガスの供給を停止し水素ガスの供給を開始した後にアンモニアガスの供給を継続することにより行う。これにより、TMIが水素ガスによって速やかに希薄化されるので、障壁層110の表面にインジウムを含有するパーティクルが付着することを抑制することができる。
【0081】
第4参考形態に係るパーティクル抑制処理を行う時間は、60〜300秒であることが望ましい。この範囲を下回るとインジウムを含有するパーティクルの除去が不十分になる傾向があるからであり、この範囲を上回ると障壁層110を構成するIII族窒化物の表面に欠陥が発生しやすくなるからである。
【0082】
第4参考形態に係るパーティクル抑制処理では、パーティクル抑制処理を行う間、基板102の加熱を中止し、基板102を自然放冷する。ただし、障壁層110の表面がエッチングされて損傷してしまうことがない範囲内で基板102を加熱することは許される。基板102を加熱する場合、基板102の最高温度は、障壁層形成時温度を150℃上回る温度を超えないことが望ましい。
【0083】
第4参考形態に係るパーティクル抑制処理の終了後、すなわち、基板102の温度を室温の近傍まで下げた後は、水素ガス及びアンモニアガスの供給も停止し、得られたエピタキシャル基板101をリアクタ132の内部から回収する。
【実施例】
【0084】
以下では、第1参考形態、第2参考形態、本発明実施形態、第3参考形態及び第4参考形態に係るパーティクル抑制処理を経て製造したエピタキシャル基板101に関する参考例1、参考例2、本発明実施例、参考例3及び参考例4とパーティクル抑制処理を経ないで製造したエピタキシャル基板に関する比較例について説明する。
【0085】
{参考例1}
参考例1では、直径2インチのサファイア基板を1150℃で10分かけてサーマルクリーニングし、バッファ層104として膜厚が20nmの窒化ガリウム(GaN)の膜を500℃でエピタキシャル成長させ、チャネル層106として膜厚が2.0μmの窒化ガリウム(GaN)の膜を1100℃でエピタキシャル成長させた。
【0086】
続いて、スペーサ層108として膜厚が1nmの窒化アルミニウム(AlN)の膜を1100℃でエピタキシャル成長させた。
【0087】
さらに続いて、障壁層110として膜厚が15nmの窒化インジウムアルミニウム(In
0.18Al
0.82N)の膜を730℃でエピタキシャル成長させた。このときのアンモニアガスの流量は1500sccm、TMIをバブリングする窒素ガスの流量は100sccm、TMAをバブリングする窒素ガスの流量は10sccmとした。
【0088】
最後に、60秒かけて第1参考形態に係るパーティクル抑制処理を行った。
【0089】
{参考例2}
参考例1の場合と同様に窒化インジウムアルミニウム(In
0.18Al
0.82N)の膜のエピタキシャル成長までを行った後、30分かけて第2参考形態に係るパーティクル抑制処理を行った。
【0090】
{本発明実施例}
参考例1の場合と同様に窒化インジウムアルミニウム(In
0.18Al
0.82N)の膜のエピタキシャル成長までを行った後、本発明実施形態に係るパーティクル抑制処理を行った。このときの基板102の最高温度は1100℃、昇温速度は毎分300℃とした。
【0091】
{参考例3}
参考例1の場合と同様に窒化インジウムアルミニウム(In
0.18Al
0.82N)の膜のエピタキシャル成長までを行った後、第3参考形態に係るパーティクル抑制処理を行った。このときの基板102の最低温度は500℃、降温速度は毎分100℃とした。また、最低温度である500℃を維持する時間は60分とした。
【0092】
{参考例4}
参考例1の場合と同様に窒化インジウムアルミニウム(In
0.18Al
0.82N)の膜のエピタキシャル成長までを行った後、第4参考形態に係るパーティクル抑制処理を行った。
【0093】
{比較例}
参考例1の場合と同様に窒化インジウムアルミニウム(In
0.18Al
0.82N)の膜のエピタキシャル成長までを行った。パーティクル抑制処理は行わなかった。
【0094】
{エピタキシャル基板101の評価}
図9は、参考例1、参考例2、本発明実施例、参考例3、参考例4及び比較例1のエピタキシャル基板101の評価結果を示す図である。
図9には、参考例1、参考例2、本発明実施例、参考例3、参考例4及び比較例1のエピタキシャル基板101の各々について、シートキャリア濃度、移動度、シート抵抗、2次元電子ガスの有無、2次元電子ガスの深さ、構成元素、結晶種、表面粗さ、ゲートリーク電流及びインジウムを含有するパーティクルの密度が示されている。これらのうち、シートキャリア濃度、移動度及びシート抵抗は、ホール測定により測定した。2次元電子ガスの有無及び2次元電子ガスの深さは、C−V測定により測定した。構成元素は、エピタキシャル基板101の表面をX線光電子分光装置(XPS;X-ray Photoelectron Spectrometer)で分析することにより特定し、結晶種は、エピタキシャル基板101の上面をX線回折装置(XRD;X-Ray Diffractometer)で2θ−ω走査して分析することにより特定し、インジウムを含有するパーティクルの密度は、障壁層の上面を原子間力顕微鏡で観察することにより特定した。ゲートリーク電流は、エピタキシャル基板101を加工して作製したゲート幅1nm、ゲート−ソース間隔0.5μm、ゲート−ドレイン間隔7.5μm、ゲート長1.5μmのトランジスタ素子にソース−ドレイン間電圧100V、ゲートバイアス−10Vを印加した状態での測定値である。
【0095】
トランジスタ素子の作製にあたっては、まず、フォトリソグラフィ及び反応性イオンエッチング(RIE;Reactive Ion Etching)を用いて各トランジスタ素子の境界部を400nmの深さまで除去した。続いて、エピタキシャル基板101の表面に膜厚が10nmの二酸化シリコン(SiO
2)の膜を形成し、フォトリソグラフィを用いてソース電極及びドレイン電極が設けられる領域に形成された二酸化シリコンの膜を除去した。さらに続いて、真空蒸着とフォトリソグラフィにより、Ti/Al/Ni/Au(膜厚25/75/15/100nm)電極をドレイン電極及びソース電極として形成し、ドレイン電極及びソース電極のオーミック性を向上するために、窒素雰囲気中で850℃の熱処理を30秒間行った。次に、フォトリソグラフィを用いてゲート電極が設けられる領域に形成された二酸化シリコンの膜を除去した。続いて、真空蒸着とフォトリソグラフィにより、Pd/Au(膜厚30/100nm)電極をゲート電極として形成した。最後に、化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)及びフォトリソグラフィにより、窒化シリコン(Si
3N
4)のパッシベーション膜を形成し、ゲート電極、ドレイン電極及びソース電極の部分にコンタクトホールを形成し、ワイヤボンディングを行った。
【0096】
図10及び
図11は、それぞれ、参考例4及び比較例1のエピタキシャル基板101の表面を原子間力顕微鏡(AFM;Atomic Force Microscope)で観察した結果を示す図である。
図10及び
図11(a)は、エピタキシャル基板101の上面を正面視した場合の5μm四方の領域の像を示しており、
図11(b)は、1μm四方の領域の凹凸を示している。
【0097】
図10に示すように、参考例4のエピタキシャル基板101の上面には、ステップフロー成長が観察され、インジウムを含有するパーティクルを発見することはできなかった。一方、
図11に示すように、比較例1のエピタキシャル基板101の上面には、概ね1.9×10
8個/cm
2のインジウムを含有するパーティクルが散在していた。なお、図示を省略しているが、参考例1、参考例2、本発明実施例及び参考例3のエピタキシャル基板101の表面を原子間力顕微鏡で観察しても、参考例4のエピタキシャル基板101の場合と同様の像が得られる。
【0098】
参考例1、参考例2、本発明実施例、参考例3及び参考例4と比較例1との対比から明らかなように、上述したパーティクル抑制処理を行うことにより、障壁層の表面にインジウムを含有するパーティクルが付着することを抑制することができる。また、参考例1、参考例2、本発明実施例及び参考例3と参考例4との対比から明らかなように、パーティクル抑制処理を行うときの雰囲気を窒素ガスとアンモニアとの混合雰囲気とすることにより、表面粗さを小さくすることができる。これは、窒素ガスとアンモニアとの混合雰囲気が表面の欠陥の発生を抑制することを意味していると考えられる。また、参考例2、本発明実施例及び参考例3の比較から明らかなように、パーティクル抑制処理を行うときの雰囲気が窒素ガスとアンモニアとの混合雰囲気である場合、パーティクル抑制処理を行う温度が低い方が表面粗さが小さくなる。これは、温度が低くなるほど欠陥の発生を抑制しやすいことを意味していると考えられる。
【0099】
図14〜
図18は、それぞれ、チャネル層及び障壁層の組成を変更して参考例1、参考例2、本発明実施例、参考例3及び参考例4のパーティクル抑制処理を行った場合のインジウムを含有するパーティクルの密度を測定した結果を示す図である。また、
図19は、チャネル層及び障壁層の組成を変更して比較例1のようにパーティクル抑制処理を行わなかった場合のインジウムを含有するパーティクルの密度を測定した結果を示す図である。
図14〜
図18に示すように、チャネル層の組成を一般式Al
y1Ga
z1N(y1+z1=1,0≦y1≦0.3)であらわされる範囲内で変更し、障壁層の組成を一般式In
x2Al
y2Ga
z2N(x2+y2+z2=1,{y2−(0.45+y1)}/4.56≦x2≦{y2−(0.27+0.51y1)}/1.78,0≦z2≦0.4)であらわされる範囲内で変更しても、参考例1、参考例2、本発明実施例、参考例3及び参考例4と同様のパーティクル抑制処理を行えば、障壁層の上面にインジウムを含有するパーティクルが付着することを抑制することは可能である。しかし、
図19に示すように、パーティクル抑制処理を行わない場合は、障壁層の上面にインジウムを含有するパーティクルが付着することを抑制することはできず、0.8×10
8〜3.5×10
8個/cm
2のインジウムを含有するパーティクルが障壁層の上面に散在していた。
【0100】
この発明は詳細に説明されたが、上述した説明は、全ての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。特に、インジウムを含有するIII族窒化物の膜がエピタキシャル基板101の最上層にない場合に上述したパーティクル抑制処理を行うことは当然に予定されている。