特許第5671172号(P5671172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5671172-組み立て品を生産する方法 図000002
  • 特許5671172-組み立て品を生産する方法 図000003
  • 特許5671172-組み立て品を生産する方法 図000004
  • 特許5671172-組み立て品を生産する方法 図000005
  • 特許5671172-組み立て品を生産する方法 図000006
  • 特許5671172-組み立て品を生産する方法 図000007
  • 特許5671172-組み立て品を生産する方法 図000008
  • 特許5671172-組み立て品を生産する方法 図000009
  • 特許5671172-組み立て品を生産する方法 図000010
  • 特許5671172-組み立て品を生産する方法 図000011
  • 特許5671172-組み立て品を生産する方法 図000012
  • 特許5671172-組み立て品を生産する方法 図000013
  • 特許5671172-組み立て品を生産する方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5671172
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】組み立て品を生産する方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/02 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
   B23P19/02 A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-61676(P2014-61676)
(22)【出願日】2014年3月25日
【審査請求日】2014年6月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 信也
(72)【発明者】
【氏名】土屋 幸史
(72)【発明者】
【氏名】山口 良則
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−350095(JP,A)
【文献】 特開平11−349280(JP,A)
【文献】 特開平06−071543(JP,A)
【文献】 特開平04−246089(JP,A)
【文献】 特開2000−176749(JP,A)
【文献】 特開2009−029529(JP,A)
【文献】 特開2002−113621(JP,A)
【文献】 特開2005−177870(JP,A)
【文献】 実開昭62−105992(JP,U)
【文献】 実開平04−016775(JP,U)
【文献】 特開昭64−034621(JP,A)
【文献】 特開平09−001214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00−19/02
B25J 15/00−15/12
B66C 15/00−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 第1の軸の周りを周方向に一周する外周面を有し、前記外周面が円筒面状である第1の構造物を準備する工程と、
(b) 第2の軸の周りを周方向に一周する内周面を有し、前記内周面が円筒面状であり、前記内周面により規定される空間が形成され、前記空間が軸方向の一端に開口を有する第2の構造物を準備する工程と、
(c) 前記第1の軸の曲がりを測定する工程と、
(d) 前記第2の軸の曲がりを測定する工程と、
(e) 前記工程(c)及び前記工程(d)の後であって前記第1の構造物が前記空間に挿入される前に、前記第1の軸の曲がりの方向が前記第2の軸の曲がりの方向に適合するように前記第1の構造物及び前記第2の構造物の両方又は片方を周方向に回転させる工程と、
(f) 前記第1の構造物及び前記第2の構造物の一方を一方の構造物とし、前記第1の構造物及び前記第2の構造物の他方を他方の構造物とした場合に、前記一方の構造物を鉛直方向上方から少なくとも1本の可撓線で吊り下げる工程と、
(g) 前記第1の構造物を前記開口から鉛直方向に離して前記開口に対向させる工程と、
(h) 前記工程(f)及び前記工程(g)の後に、前記少なくとも1本の可撓線と前記他方の構造物とを鉛直方向に近づけ、前記第1の構造物を前記空間に挿入する工程と、
を備える組み立て品を生産する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1本の可撓線が3本以上の可撓線であり、
前記3本以上の可撓線が前記第1の軸から径方向に離れ周方向に分散して配置される
請求項1の組み立て品を生産する方法。
【請求項3】
(i) 前記第1の構造物が前記空間に挿入される前に、通路を有し前記第1の軸が前記第2の軸から径方向に遠ざかることを規制する案内機構を前記開口から鉛直方向に離して設置する工程、
をさらに備え、
前記工程(h)は、
前記第1の構造物に前記通路及び前記開口を順次に通過させる
請求項1又は2の組み立て品を生産する方法。
【請求項4】
前記一方の構造物をつかむチャックが前記少なくとも1本の可撓線の下端に結合され、
(j) 前記チャックが径方向に動くことを規制する工程、
をさらに備え、
前記工程(f)は、
前記工程(j) の後に前記チャックが前記一方の構造物をつかむことにより、前記一方の構造物を鉛直方向上方から前記少なくとも1本の可撓線で吊り下げる
請求項1から3までのいずれかの組み立て品を生産する方法。
【請求項5】
前記第2の構造物が内底面を有し、
前記工程(h)は、
(h-1) 前記第1の構造物の前記空間への挿入が開始された後に、相対的に速い速度で前記少なくとも1本の可撓線と前記他方の構造物とを近づける工程と、
(h-2) 前記工程(h-1)の後に、相対的に遅い速度で前記少なくとも1本の可撓線と前記他方の構造物とを近づける工程と、
(h-3) 前記工程(h-2)の後に、前記相対的に遅い速度を維持したまま前記第1の構造物を前記内底面に着座させる工程と、
を備える請求項1から4までのいずれかの組み立て品を生産する方法。
【請求項6】
(k) 前記工程(h)が実行されている間に、前記少なくとも1本の可撓線のたるみを検出する工程と、
(l) 前記少なくとも1本の可撓線のたるみが検出された場合に前記工程(h)の実行を中断する工程と、
を備える請求項1から5までのいずれかの組み立て品を生産する方法。
【請求項7】
前記一方の構造物が前記第1の構造物であり、
前記他方の構造物が前記第2の構造物であり、
前記工程(h)は、
前記少なくとも1本の可撓線を鉛直方向下方へ下降させることにより前記少なくとも1本の可撓線と前記第2の構造物とを鉛直方向に近づける
請求項1から6までのいずれかの組み立て品を生産する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み立て品を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気、機械等の技術分野において、円筒面状の外周面を有する構造物が円筒面状の内周面により規定される空間に挿入された組み立て品が生産される場合がある。例えば、二重管式熱交換器は、外管に形成された空間に内管を挿入する工程を経て生産される場合がある。また、プランジャーポンプは、シリンダーに形成された空間にプランジャーを挿入する工程を経て生産される場合がある。さらに、断熱容器は、外側容器に形成された空間に内側容器を挿入する工程を経て生産される場合がある。
【0003】
特許文献1に記載された技術はその一例である。特許文献1に記載された技術においては、シリンダーに形成された穴部にプランジャーを挿入する工程を経てディーゼルポンプが生産される。特許文献1は、プランジャーを挿入する場合にプランジャーを弾力的に保持することを提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−176749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
円筒面状の外周面を有する構造物が円筒面状の内周面により規定される空間に挿入された組み立て品が生産される場合に、外周面が内周面を強くこすり、組み立て品が損傷する場合がある。この問題は、挿入物の軸又は被挿入物の軸が曲がっている場合に顕在化しやすい。
【0006】
本発明は、この問題を解決するためになされる。本発明の目的は、円筒面状の外周面を有する構造物が円筒面状の内周面により規定される空間に挿入された組み立て品を生産する場合に組み立て品が損傷しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の構造物は、第1の軸の周りを周方向に一周し円筒面状である外周面を有する。第2の構造物は、第2の軸の周りを周方向に一周し円筒面状である内周面を有する。第2の構造物に形成された空間は、当該内周面により規定される。空間は、軸方向の一端に開口を有する。第1の軸及び第2の軸の曲りが測定される。第1の軸及び第2の軸の曲りが測定された後であって第1の構造物が空間に挿入される前に、第1の軸の曲がりの方向が第2の軸の曲がりの方向に適合するように第1の構造物が周方向に回転させられる。第1の構造物に代えて又は第1の構造物に加えて第2の構造物が周方向に回転させられてもよい。
【0008】
第1の構造物は、鉛直方向上方から可撓線で吊り下げられ、開口から鉛直方向に離して開口に対向させられる。可撓線と第2の構造物とが鉛直方向に近づけられ、第1の構造物が空間に挿入される。
【0009】
第1の構造物に代えて第2の構造物が可撓線に吊り下げられてもよい。
【発明の効果】
【0010】
第1の構造物及び第2の構造物のうちの吊り下げられたものが曲がりに応じて径方向に移動する。第1の構造物の外周面が第2の構造物の内周面に引っ掛かりにくい。組み立て品が損傷しにくい。
【0011】
これらの及びこれら以外の本発明の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面とともに考慮されたときに下記の本発明の詳細な説明によってより明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】組み立て品の斜視図である。
図2】組み立て品の断面図である。
図3】組み立て装置の模式図である。
図4】吊り下げ機構の一部の斜視図である。
図5】軸の曲がりの大きさ及び方向を演算する方法を示す模式図である。
図6】組み立て手順を示すフローチャートである。
図7】内側容器、外側容器、吊り下げ機構及び挿入ガイドを示す模式図である。
図8】内側容器、外側容器、吊り下げ機構及び挿入ガイドを示す模式図である。
図9】内側容器、外側容器、吊り下げ機構及び挿入ガイドを示す模式図である。
図10】内側容器、外側容器、吊り下げ機構及び挿入ガイドを示す模式図である。
図11】内側容器、外側容器、吊り下げ機構及び挿入ガイドを示す模式図である。
図12】内側容器、外側容器、吊り下げ機構及び挿入ガイドを示す模式図である。
図13】異常を検出する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)組み立て品の構造
図1の模式図は、組み立て品の斜視図である。図2の模式図は、組み立て品の断面図である。
【0014】
図1及び図2に示される組み立て品1000は、内側容器1010及び外側容器1011を備える。組み立て品1000が内側容器1010及び外側容器1011以外の構成物を備えてもよい。図1及び図2には、内側容器1010の曲がり及び外側容器1011の曲がりが誇張して描かれている。内側容器1010の曲がり及び外側容器1011の曲がりには個体差がある。図1及び図2においては、内側容器1010の軸1050が外側容器1011の軸1120に一致し、矢印1015で示される方向が内側容器1010及び外側容器1011の軸方向であり、矢印1016で示される方向が内側容器1010及び外側容器1011の径方向であり、矢印1017で示される方向が内側容器1010及び外側容器1011の周方向である。
【0015】
内側容器1010は、管部1020及び底部1021を備える。
【0016】
管部1020の内周面1030及び外周面1040の各々は、円筒面状であり、内側容器1010の軸方向に伸びる軸1050の周りを周方向に一周する。底部1021の内底面1060及び外底面1070の各々は、平面状である。内側容器1010に形成される空間1080は、円柱状であり、内周面1030により規定され、軸方向の一端に開口1090を有し、軸方向の他端において底部1021により塞がれる。
【0017】
内側容器1010が管部1020及び底部1021以外の構成物を備えてもよい。例えば、フランジ、リブ等が内周面1030、外周面1040のうちの外側容器1011からはみ出している部分、内底面1060、外底面1070等に付加されてもよい。
【0018】
外側容器1011は、管部1100及び底部1101を備える。
【0019】
管部1100の内周面1110及び外周面1111の各々は、円筒面状であり、外側容器1011の軸方向に伸びる軸1120の周りを周方向に一周する。底部1101の内底面1130及び外底面1131の各々は、平面状である。外側容器1011に形成される空間1140は、円柱状であり、内周面1110により規定され、軸方向の一端に開口1150を有し、軸方向の他端において底部1101により塞がれる。
【0020】
外側容器1011が管部1100及び底部1101以外の構成物を備えてもよい。例えば、フランジ、リブ等が外周面1111、内底面1130、外底面1131等に付加されてもよい。
【0021】
内側容器1010は、空間1140に収容される。軸1050は、軸1120に一致する。軸1050が軸1120に一致しない場合もある。外周面1040は、内周面1110と間隙1160を挟んで対向する。
【0022】
(2)内側容器の収容
内側容器1010の空間1140への収容時に外周面1040が内周面1110を強くこすって組み立て品1000が損傷する可能性がある。この可能性は、軸1050の曲がりの大きさ又は軸1120の曲がりの大きさが間隙1160の大きさと比較して無視できない場合に高くなる。内側容器1010の空間1140への収容においては、鉛直方向上方から軟質ステンレス鋼線で吊り下げられた内側容器1010が空間1140に挿入される。これにより、内側容器1010が軸1050の曲がり又は軸1120の曲がりに応じて径方向に揺れ動き、外周面1040が内周面1110に引っ掛かりにくくなり、組み立て品1000が損傷しにくくなる。この収容方法は、内側容器1010が容器とは呼び難い構造物に置き換えられた場合、外側容器1011が容器とは呼び難い構造物に置き換えられた場合等にも有用である。例えば、この収容方法は、内側容器1010が棒、管等に置き換えられた場合、外側容器1011が管、丸孔が穿孔された塊状物等に置き換えられた場合等にも有用である。
【0023】
(3)組み立て装置
図3の模式図は、組み立て装置を示す。
【0024】
図3に示される組み立て装置1200は、測定機構1210及び1211、吊り下げ機構1212、搬送機構1213、挿入ガイド1214、コントローラー1215等を備える。
【0025】
測定機構1210は、内側容器1010を支持し、外周面1040の形状を測定する。測定機構1211は、外側容器1011を支持し、外周面1111の形状を測定する。吊り下げ機構1212は、内側容器1010を吊り下げる。搬送機構1213は、吊り下げ機構1212を搬送する。吊り下げ機構1212が内側容器1010を吊り下げている場合は、搬送機構1213は内側容器1010及び吊り下げ機構1212を一体的に搬送する。挿入ガイド1214は、内側容器1010を開口1150へ案内する。コントローラー1215は、測定機構1210及び1211、吊り下げ機構1212、搬送機構1213並びに挿入ガイド1214を制御し、後述する組み立て手順をこれらの構成物に実行させる。また、コントローラー1215は、外周面1040の形状から軸1050の曲がりの大きさ及び方向を演算し、外周面1111の形状から軸1120の曲がりの大きさ及び方向を演算する。
【0026】
組み立て装置1200が組み立て品1000を組み立てる場合は、軸1050及び1120が延在する方向が鉛直方向にされる。測定機構1210及びコントローラー1215が協働して軸1050の曲がりの方向を測定する。測定機構1211及びコントローラー1215が協働して軸1120の曲がりの方向を測定する。測定機構1210が内側容器1010を周方向に回転させ軸1050の曲がりの方向を軸1120の曲がりの方向に適合させる。吊り下げ機構1212が内側容器1010を吊り下げる。搬送機構1213が吊り下げ機構1212を搬送し内側容器1010を空間1140に挿入する。
【0027】
(4)測定機構
測定機構1210は、台1220、回転機構1221並びにレーザー変位計1222,1223及び1224を備える。
【0028】
測定機構1210が外周面1040の形状を測定する場合は、台1220が底部1021を支持し、回転機構1221が管部1020の開口1090寄りを支持し内側容器1010を周方向に回転させる。回転機構1221が内側容器1010を回転させている間に、レーザー変位計1222,1223及び1224が外周面1040の径方向位置を測定する。これにより、軸方向から見た外周面1040の形状が測定される。
【0029】
レーザー変位計1222,1223及び1224は、互いに内側容器1010の軸方向に離して配置される。これにより、軸方向位置1230,1231及び1232の各々において外周面1040の形状が測定される。
【0030】
測定機構1210とは異なる測定機構により外周面1040の形状が測定されてもよい。例えば、汎用の三次元形状測定器により外周面1040の形状が測定されてもよい。
【0031】
測定機構1211は、台1240、回転機構1241並びにレーザー変位計1242,1243及び1244を備える。
【0032】
測定機構1211が外周面1111の形状を測定する場合は、台1240が底部1101を支持し、回転機構1241が管部1100の開口1150寄りを支持し外側容器1011を周方向に回転させる。回転機構1241が外側容器1011を回転させている間に、レーザー変位計1242,1243及び1244が外周面1111の径方向位置を測定する。これにより、軸方向から見た外周面1111の形状が測定される。
【0033】
レーザー変位計1242,1243及び1244は、互いに外側容器1011の軸方向に離して配置される。これにより、軸方向位置1250,1251及び1252の各々において外周面1111の形状が測定される。
【0034】
測定機構1211とは異なる測定機構により外周面1111の形状が測定されてもよい。例えば、汎用の三次元形状測定器により外周面1111の形状が測定されてもよい。
【0035】
(5)吊り下げ機構
図4の模式図は、吊り下げ機構の一部の斜視図である。
【0036】
吊り下げ機構1212は、基体1260、軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264、空気圧式チャック1265、チャック固定機構1266並びにレーザー変位計1267を備える。
【0037】
基体1260は、軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264、チャック固定機構1266並びにレーザー変位計1267を支持する。基体1260が省略され、搬送機構1213が軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264、チャック固定機構1266並びにレーザー変位計1267を直接的に支持してもよい。軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264は、内側容器1010を吊り下げる。空気圧式チャック1265は、内側容器1010をつかむ。チャック固定機構1266は、空気圧式チャック1265を固定する。レーザー変位計1267は、空気圧式チャック1265の鉛直方向位置を測定する。吊り下げ機構1212が内側容器1010を吊り下げる場合は、空気圧式チャック1265が内側容器1010をつかむ。これにより、吊り下げ機構1212は、空気圧式チャック1265を介して軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264で内側容器1010を吊り下げる。
【0038】
軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264の各々は、柔軟な可撓線であり、自在に曲げることができ、曲げられた後においても曲げくせがつきにくい。
【0039】
軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264は、鉛直方向に延在し、鉛直方向上方から内側容器1010を吊り下げる。軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264の各々の上端は、基体1260に結合される。軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264の各々の下端は、空気圧式チャック1265に結合される。軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264は、望ましくは内側容器1010を吊り下げた場合に軸1050から内側容器1010の径方向に離れ内側容器1010の周方向に分散するように配置される。これにより、内側容器1010が吊り下げられた後に内側容器1010が周方向に回転しにくくなり、外周面1040が内周面1110に引っ掛かりにくい状態を維持しやすくなる。
【0040】
軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264が3本以下の軟質ステンレス鋼線又は5本以上の軟質ステンレス鋼線に置き換えられてもよい。望ましくは2本以上の軟質ステンレス鋼線で内側容器1010が吊り下げられ、さらに望ましくは3本以上の軟質ステンレス鋼線で内側容器1010が吊り下げられる。
【0041】
軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264が他の種類の可撓線に置き換えられてもよい。例えば、可撓線の材質は、金属、ステンレス鋼以外の合金、合成樹脂、天然樹脂等でもよい。可撓線は、単線及びより線のいずれでもよい。可撓線は、線、糸、紐、縄、鎖、ワイヤー、コード、ロープ等と称する製品から選択できる。
【0042】
空気圧式チャック1265が内側容器1010をつかむ場合は、空気圧式チャック1265が空間1080の内部においてふくらみ内周面1030を径方向外側に押圧する。空気圧式チャック1265が内側容器1010をつかまない場合は、空気圧式チャック1265がしぼむ。
【0043】
空気圧式チャック1265が他の種類のチャックに置き換えられてもよい。例えば、空気圧式チャック1265がメカニカルチャック、真空チャック、マグネットチャック等に置き換えられてもよい。
【0044】
チャック固定機構1266が空気圧式チャック1265を固定する場合は、チャック固定機構1266が空気圧式チャック1265を把持する。チャック固定機構1266が空気圧式チャック1265を固定しない場合は、チャック固定機構1266が空気圧式チャック1265を把持しない。
【0045】
(6)搬送機構
搬送機構1213は、昇降機構1270及び水平移動機構1271を備える。昇降機構1270は、吊り下げ機構1212を昇降する。水平移動機構1271は、昇降機構1270及び吊り下げ機構1212を一体的に水平移動する。これにより、搬送機構1213は、吊り下げ機構1212を鉛直方向及び水平方向に搬送する。吊り下げ機構1212が内側容器1010を吊り下げている場合は、搬送機構1213は吊り下げ機構1212及び内側容器1010を一体的に搬送する。
【0046】
搬送機構1213が他の種類の搬送機構に置き換えられてもよい。例えば、搬送機構1213が昇降機構及びマニピュレーター(ロボットアーム)を備える搬送機構に置き換えられてもよい。この場合は、吊り下げ機構1212の昇降を昇降機構が担い、昇降機構による昇降にともなって行われる内側容器1010の搬送以外の内側容器1010の搬送をマニピュレーターが担う。搬送機構1213がマニピュレーターからなる搬送機構に置き換えられてもよい。この場合は、吊り下げ機構1212の昇降及び内側容器1010の搬送の両方をマニピュレーターが担う。
【0047】
(7)挿入ガイド
挿入ガイド1214は、開口1150の鉛直方向上方に設置され、通路1280を有する。
【0048】
挿入ガイド1214が内側容器1010を案内する場合は挿入ガイド1214が通路1280を狭める。挿入ガイド1214が内側容器1010を案内しない場合は挿入ガイド1214が通路1280を広げる。通路1280が狭まった場合は、通路1280が開口1150より狭くなっているとともに内側容器1010の断面より広くなっている。これにより、内側容器1010が通路1280を通過することができ、内側容器1010が通路1280を通過する場合に軸1050が軸1120から外側容器1011の径方向に遠ざかることが規制される。
【0049】
(8)コントローラー
図5の模式図は、軸の曲がりの大きさ及び方向を演算する方法を示す。
【0050】
コントローラー1215は、レーザー変位計1222,1223及び1224の測定結果を取得し、軸方向位置1230,1231及び1232の各々における外周面1040の形状から軸1050の曲がりの大きさ及び方向を演算する。軸1050の曲がりの大きさ及び方向が演算される場合は、軸方向位置1230,1231及び1232の各々における外周面1040の形状1285,1286及び1287から外周面1040の中心1290,1291及び1292の位置が演算される。さらに、軸方向位置1230における中心1290及び軸方向位置1231における中心1291を結ぶ直線1294からの軸方向位置1232における中心1292のずれの大きさ及び方向が演算される。これにより、軸1050の曲がりの大きさ及び方向が演算される。コントローラー1215は、同様にして、レーザー変位計1242,1243及び1244の測定結果を取得し、軸方向位置1250,1251及び1252の各々における外周面1111の形状から軸1120の曲がりの方向を演算する。
【0051】
コントローラー1215は、レーザー変位計1267の測定結果を取得し、空気圧式チャック1265の鉛直方向位置が基準より近づいた場合に軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264がたるんでいると判定する。
【0052】
コントローラー1215は、制御プログラムがインストールされたコンピューターである。コントローラー1215の機能の一部又は全部がソフトウエアを伴わないハードウェアにより実現されてもよい。コントローラー1215が2台以上のコンピューターにより構成されてもよい。コントローラー1215の機能の一部又は全部が測定機構1210及び1211、吊り下げ機構1212、搬送機構1213並びに挿入ガイド1214に実装されてもよい。
【0053】
(9)組み立て手順
図6のフローチャートは、組み立て手順を示す。図7から12までの模式図は、内側容器、外側容器、吊り下げ機構及び挿入ガイドを示す。
【0054】
組み立ては自動化され、内側容器1010及び外側容器1011が準備された後の工程は組み立て装置1200により実行される。内側容器1010及び外側容器1011が準備された後の工程の一部又は全部が手作業で実行されてもよい。
【0055】
組み立てにおいては、内側容器1010が準備され(工程1300)、測定機構1210及びコントローラー1215が協働して軸1050の曲がりを測定する(工程1301)。これとは別に、外側容器1011が準備され(工程1302)、測定機構1211及びコントローラー1215が協働して軸1120の曲がりを測定する(工程1303)。
【0056】
軸1050の曲がり及び軸1120の曲がりが測定された後に、挿入ガイド1214及びチャック固定機構1266が初期化される(工程1304)。挿入ガイド1214を初期化することにより、挿入ガイド1214は通路1280を広げた状態になる。チャック固定機構1266を初期化することにより、チャック固定機構1266は空気圧式チャック1265を固定していない状態になる。初期化のタイミングが変更されてもよい。
【0057】
挿入ガイド1214及びチャック固定機構1266が初期化された後に、測定機構1210が内側容器1010を周方向に回転させ軸1050の曲がりの方向を軸1120の曲がりの方向に適合させる(工程1305)。軸1050の曲がりの方向が軸1120の曲がりの方向に適合する状態は、内側容器1010の空間1140への挿入が完了するまで維持される。これにより、内側容器1010が空間1140に挿入される場合に外周面1040が内周面1110に引っ掛かりにくくなる。内側容器1010が吊り下げられる前に内側容器1010を回転させることには、回転による揺れを抑制できるという利点がある。ただし、内側容器1010が空間1140に挿入される前であれば、内側容器1010が吊り下げられた後に内側容器1010が回転させられてもよい。軸1050の曲がりの方向が軸1120の曲がりの方向に適合させられた場合は、軸1050の曲がりの方向と軸1120の曲がりの方向とがなす角度が、基準角度以内にされ、望ましくは0°にされる。
【0058】
内側容器1010に代えて又は内側容器1010に加えて外側容器1011が周方向に回転させられてもよい。測定機構1210以外の機構が内側容器1010を回転させてもよい。測定機構1211以外の機構が外側容器1011を回転させてもよい。軸1050の曲がりの大きさ及び軸1120の曲がりの大きさが基準より小さい場合又は軸1050の曲がりの方向が軸1120の曲がりの方向に偶然に適合している場合は、内側容器1010の回転が省略されてもよい。基準は、間隙1160が小さくなるほど小さく設定される。
【0059】
軸1050の曲がりの方向が軸1120の曲がりの方向に適合させられた後に、チャック固定機構1266が空気圧式チャック1265を固定した状態になり、空気圧式チャック1265が内側容器1010の径方向に動くことが規制される(工程1306)。これにより、空気圧式チャック1265が内側容器1010を安定してつかむことができ、内側容器1010を開口1150に対向する位置に位置決めすることが容易になる。ただし、空気圧式チャック1265の径方向への動きを無視できる場合は、空気圧式チャック1265の固定が省略されてもよい。
【0060】
空気圧式チャック1265が固定された後に、しぼんだ空気圧式チャック1265が空間1080の内部に配置される位置まで搬送機構1213が吊り下げ機構1212を搬送し、空気圧式チャック1265がふくらみ、空気圧式チャック1265が内側容器1010をつかむ(工程1307)。これにより、吊り下げ機構1212は、鉛直方向上方から軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264で内側容器1010を吊り下げる。
【0061】
内側容器1010がつかまれた後に、図7に示されるように内側容器1010が開口1150の鉛直方向上方に配置される位置まで搬送機構1213が吊り下げ機構1212を搬送する(工程1308)。これにより、内側容器1010が開口1150から鉛直方向に離れた状態で開口1150に対向する。このとき、軸1050が軸1120の延長線上に配置される。搬送機構1213が昇降機構及びマニピュレーターを備える搬送機構に置き換えられた場合等においては、内側容器1010が開口1150の鉛直方向上方に配置されるのと同時に又は内側容器1010が開口1150の鉛直方向上方に配置された後に軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264で内側容器1010が吊り下げられる場合もある。
【0062】
内側容器1010が開口1150の鉛直方向上方に配置された後に、図8に示されるように内側容器1010の底部1021寄りが通路1280の内部に配置される位置まで昇降機構1270が吊り下げ機構1212を下降させる(工程1309)。このとき、通路1280は広がっているので、内側容器1010が挿入ガイド1214と干渉することは起こりにくい。
【0063】
内側容器1010の底部1021寄りが通路1280の内部に配置された後に、図9に示されるように挿入ガイド1214が通路1280を狭めた状態になり、チャック固定機構1266が空気圧式チャック1265を固定していない状態になる(工程1310)。チャック固定機構1266が空気圧式チャック1265を固定していない状態になった場合は、内側容器1010が径方向に動くことができる。しかし、挿入ガイド1214が通路1280を狭めた状態になることにより、開口1150を通過できなくなるほどの径方向の動きは挿入ガイド1214により規制される。
【0064】
挿入ガイド1214が通路1280を狭めた状態になった後に、図10に示されるように内側容器1010の底部1021寄りが空間1140の内部に配置される位置まで昇降機構1270が吊り下げ機構1212を下降させる(工程1311)。これにより、内側容器1010の空間1140への挿入が開始され、内側容器1010の底部1021寄りが通路1280及び開口1150を順次に通過する。
【0065】
内側容器1010の底部1021寄りが空間1140の内部に配置された後に、図11に示されるように挿入ガイド1214が通路1280を広げた状態になる(工程1312)。
【0066】
挿入ガイド1214が通路1280を広げた状態になった後に、相対的に早い速度で昇降機構1270が吊り下げ機構1212を下降させる(工程1313)。これにより、速い速度で内側容器1010が空間1140へ挿入される。早い速度で内側容器1010が空間1140に挿入される場合は、空間1140から追い出される空気の流れが速くなり、早い空気の流れにより外周面1040が内周面1110に引っ掛かりにくくなる。
【0067】
相対的に早い速度で吊り下げ機構1212が下降させられた後に、相対的に遅い速度で昇降機構1270が吊り下げ機構1212を下降させ(工程1314)、相対的に遅い速度を維持したまま図12に示されるように内側容器1010が内底面1130に着座させられる(工程1315)。遅い速度で内側容器1010が着座させられた場合は、着座の衝撃が小さくなる。
【0068】
この組み立て手順によれば、外底面1070が開口1150を通過してから内側容器1010が内底面1130に着座させられるまでの間、軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264で内側容器1010が吊り下げられ、内側容器1010が軸1050の曲がり又は軸1120の曲がりに応じて径方向に揺れ動く。このため、外周面1040が内周面1110を強くこすることが起きにくい。
【0069】
この組み立て手順においては、内側容器1010を吊り下げる吊り下げ機構1212を下降させることにより吊り下げ機構1212と外側容器1011とが鉛直方向に近づけられる。しかし、吊り下げ機構1212を下降させることに代えて又は吊り下げ機構1212を下降させることに加えて外側容器1011を上昇させることにより吊り下げ機構1212と外側容器1011とが鉛直方向に近づけられてもよい。
【0070】
また、この組み立て方法においては、内側容器1010が鉛直方向上方に配置され、外側容器1011が鉛直方向下方に配置され、吊り下げ機構1212が内側容器1010を吊り下げ、鉛直方向上方を向く開口1150の鉛直方向上方に内側容器1010が配置される。しかし、内側容器1010が鉛直方向下方に配置され、外側容器1011が鉛直方向上方に配置され、吊り下げ機構1212が外側容器1011を吊り下げ、鉛直方向下方を向く開口1150の鉛直方向下方に外側容器1011が配置されてもよい。この場合は、外側容器1011を吊り下げる吊り下げ機構1212を下降させることにより吊り下げ機構1212と内側容器1010とが鉛直方向に近づけられる。吊り下げ機構1212を下降させることに代えて又は吊り下げ機構1212を下降させることに加えて内側容器1010を上昇させることにより吊り下げ機構1212と内側容器1010とが鉛直方向に近づけられてもよい。
【0071】
(10)異常の検出
図13のフローチャートは、異常を検出する手順を示す。
【0072】
図13に示される異常を検出する手順は、昇降機構1270が吊り下げ機構1212を下降させている間に実行され、内側容器1010の引っ掛かりを検出する。
【0073】
異常の検出においては、レーザー変位計1267及びコントローラー1215が協働して軟質ステンレス鋼線1261,1262,1263及び1264のたるみを検出する(工程1400)。たるみが検出されない場合は、吊り下げ機構1212の下降が継続される(工程1401)。たるみが検出された場合は、吊り下げ機構1212の下降が中断される(工程1402)。これにより、外周面1040が内周面1110に引っ掛かった場合に内側容器1010の挿入が中断され、損傷等のトラブルの拡大が抑制される。
【0074】
本発明は詳細に示され記述されたが、上記の記述は全ての局面において例示であって限定的ではない。したがって、本発明の範囲からはずれることなく無数の修正及び変形が案出されうると解される。
【符号の説明】
【0075】
1000 組み立て品
1010 内側容器
1011 外側容器
【要約】
【課題】円筒面状の外周面を有する構造物が円筒面状の内周面により規定される空間に挿入された組み立て品を生産する場合に組み立て品が損傷しないようにする。
【解決手段】内側容器は、鉛直方向上方から軟質ステンレス鋼線で吊り下げられ、外側容器に形成された空間が有する開口から鉛直方向に離して当該開口に対向させられる。軟質ステンレス鋼線が下降させられ、当該空間に内側容器が挿入される。内側容器に代えて外側容器が吊り下げられてもよい。外側容器が上昇させられてもよい。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13