特許第5671183号(P5671183)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ユニバーサルビューの特許一覧

<>
  • 特許5671183-眼瞼内装用具 図000002
  • 特許5671183-眼瞼内装用具 図000003
  • 特許5671183-眼瞼内装用具 図000004
  • 特許5671183-眼瞼内装用具 図000005
  • 特許5671183-眼瞼内装用具 図000006
  • 特許5671183-眼瞼内装用具 図000007
  • 特許5671183-眼瞼内装用具 図000008
  • 特許5671183-眼瞼内装用具 図000009
  • 特許5671183-眼瞼内装用具 図000010
  • 特許5671183-眼瞼内装用具 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5671183
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】眼瞼内装用具
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
   A61F9/007 170
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-174518(P2014-174518)
(22)【出願日】2014年8月28日
【審査請求日】2014年8月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301061492
【氏名又は名称】株式会社ユニバーサルビュー
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】見川 素脩
(72)【発明者】
【氏名】上村 英一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芳雄
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2010/092735(JP,A1)
【文献】 特開平07−067910(JP,A)
【文献】 特表2007−503265(JP,A)
【文献】 特開2007−167358(JP,A)
【文献】 米国特許第03995635(US,A)
【文献】 米国特許第03416530(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61M 31/00
A61M 35/00
A61K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼瞼内に装用可能な所定の幅を有し、かつ、眼瞼結膜と眼球結膜とが繋がっている部分に沿うような形状を有して、薬剤を供給できるようにした弧状片からなる収納本体を備え、
前記収納本体は、
眼瞼側に接する面保持される被保持部を有し、
前記眼瞼側に接する面よりも摩擦係数が小さくなされた眼球側に接する面を有する眼瞼内装用具。
【請求項2】
前記被保持部は、
前記収納本体の外縁部に沿った膨出形状を成して瞼板によって保持される請求項1に記載の眼瞼内装用具。
【請求項3】
前記被保持部は、
前記眼瞼側に接する面が多数の凹凸形状を成す請求項1に記載の眼瞼内装用具。
【請求項4】
前記収納本体には、中空部が設けられ、
前記中空部は、
所定の容量を成す包袋状となされると共に、所定の位置に薬剤を滲出する1以上の開孔部を有する請求項1から3の何れかに記載の眼瞼内装用具。
【請求項5】
前記収納本体は、
含浸構造を成して当該収納本体自身に薬剤を浸み込ませてなる
請求項1から3の何れかに記載の眼瞼内装用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼球及び結膜等を含む部位に薬剤を自動滲出する眼科用ドラッグ・デリバリー・システム(Drug Delivery System:以下DDSという)に適用して好適な眼瞼内装用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、国内外で「涙点プラグ型DDS」や、「コンタクトレンズ型DDS」等の開発が進められている。涙点プラグ型DDSは、左右の眼の上下にある涙点に、薬剤を収容したDDSプラグ(以下涙点プラグという)が装用され、当該涙点プラグから薬剤をしみ出させるという方法である(特許文献1から3参照)。
【0003】
なお、特許文献1から3に開示されるような涙点プラグには、活性剤(薬剤)を収容したものもある。この活性剤を眼内に徐放することで、緑内障などの治療にも利用することが可能になる。
【0004】
また、特許文献4に記載されるように、コンタクトレンズ型DDSは、コンタクトレンズ本体に薬剤を含浸させて眼内に薬剤を徐放するという方法である。
【0005】
特許文献5には円弧状の眼科用のDDSデバイスが記載され、当該デバイスを下瞼嚢に装用し、眼球及び結膜等に薬剤を滲出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−049129号公報
【特許文献2】特開2008−018234号公報
【特許文献3】特開2008−006287号公報
【特許文献4】特表2012−511395号公報
【特許文献5】US特許 第3916899号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来例に係る涙点プラグ型DDSやコンタクトレンズ型DDS等の眼瞼内装用具によれば、次のような問題がある。
(i)特許文献1から3に見られるような涙点プラグ型DDSによれば、本来、涙液が鼻涙管を通って鼻に抜けるための最初の出口である涙点をふさいでいるので、正常な涙液の流れを妨げてしまう。
【0008】
(ii)涙点プラグ型DDSの場合、眼球を動かした際に鼻側でプラグ器具の頭部が角膜と接触することがあるため、異物挿入感を与えることが懸念される。
【0009】
(iii)特許文献4に見られるようなコンタクトレンズ型DDSの場合、涙が多く出る人、出ない人によって安定した濃度の薬剤を徐放することが難しい。また、薬剤によっては光が直接、コンタクトレンズ型DDS本体の薬剤に照射されることで、薬剤そのものが変質を起こすことも考えられる。
【0010】
(iv)特許文献5に見られるようなDDSデバイスによれば、何らの工夫無しに当該デバイスを上瞼嚢に装用しようとした場合、デバイス本体の装着姿勢が眼瞼内で不安定となるばかりか、究極、デバイス本体が下眼瞼側にずれ落ちるという問題が懸念される。
【0011】
そこで、本発明は上述の課題に鑑み創作されたものであり、装用者に対して異物挿入感を与えることなく、眼瞼内に安定して装着できるようにすると共に、従来方式と比べて大容量の薬剤を収納できるようにした眼瞼内装用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するために、請求項1に係る眼瞼内装用具は、眼瞼内に装用可能な所定の幅を有し、かつ、眼瞼結膜と眼球結膜とが繋がっている部分に沿うような形状を有して、薬剤を供給できるようにした弧状片からなる収納本体を備え、前記収納本体は、眼瞼側に接する面保持される被保持部を有し、前記眼瞼側に接する面よりも摩擦係数が小さくなされた眼球側に接する面を有するものである。
【0013】
請求項1に係る眼瞼内装用具によれば、装用後、被保持部の眼瞼側に接する面が瞼板によって押接されるので、当該被保持部によって収納本体のずれ落ちを防止できるようになる。収納本体の眼球側に接する面は、眼瞼側に接する面よりも摩擦係数を小さくなされるので、装用者に与える異物挿入感を低減することができる。
【0014】
請求項2に記載の眼瞼内装用具は、請求項1において、被保持部は、収納本体の外縁部に沿った膨出形状を成して瞼板によって保持されるものである。
【0015】
請求項3に記載の眼瞼内装用具は、請求項1において、被保持部は、瞼側に接する面が多数の凹凸形状を成すものである。
【0016】
請求項4に記載の眼瞼内装用具は、請求項1から3の何れかにおいて、収納本体には中空部が設けられ、当該中空部は、所定の容量を成す包袋状となされると共に、所定の位置に薬剤を滲出する1以上の開孔部を有するものである。
【0017】
請求項5に記載の眼瞼内装用具は、請求項1から3の何れかにおいて、収納本体が含浸構造を成し、当該収納本体自体に薬剤を浸み込ませてなるものである。
【0018】
請求項6に記載の眼瞼内装用具は、請求項1から5の何れかにおいて、収納本体の一端に弧状部が延設され、弧状部が下眼瞼側の結膜嚢に装用可能となされるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る眼瞼内装用具によれば、収納本体自体を眼瞼内に安定して装着できるようになる。しかも、装用者に対して異物挿入感を与えることなく、従来方式と比べて大容量の薬剤を収納できるようになる。部品点数の削減にも繋がる。これにより、高信頼度の汎用型の眼科用のドラック・デリバリー・システム(DDS)を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】AからCは本発明に係る第1の実施形態としての眼瞼内装用具100の構成例を示す平面図、X1−X1矢視断面図及び底面図である。
図2】眼瞼内装用具100の装用例を示す断面図である。
図3】AからCは装着補助具400の構成例を示す正面図、平面図及び側面図である。
図4】AおよびBは眼瞼内装用具100’の構成例を示す平面図及び正面図である。
図5】装着補助具400による眼瞼内装用具100’の装用例を示す平面図である。
図6】AからEは第2の実施形態としての眼瞼内装用具201の構成例を示す正面図、側面図、平面図、X2−X2矢視断面図及び底面図である。
図7】AからDは眼瞼内装用具202の構成例を示す正面図、側面図、平面図及び底面図である。
図8】A及びBは眼瞼内装用具203の構成例を示す平面図及び底面図である。
図9】眼瞼内装用具201の装用例を示す断面図である。
図10】A及びBは第3の実施形態としての眼瞼内装用具300の構成例及び装用例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、図面を参照しながら本発明に係る眼瞼内装用具について説明をする。
<第1の実施形態>
図1において、眼瞼内装用具100は、眼瞼内に装用可能な半孤状かつシート状の収納本体1を有しており、収納本体1には中空部2が設けられる。眼瞼内装用具100は、眼球及び結膜等を含む部位に目薬剤を長時間に渡って自動供給するものである。眼瞼内装用具100は、本件出願人が別途出願中の眼瞼内装用具のようなC形状の基幹本体への装着に依存することなく、収納本体自身を眼瞼結膜嚢深くに装着するものである。
【0022】
ヒトの結膜は、眼瞼結膜と眼球結膜とに別けられるが、いずれも眼瞼深くで折り返され繋がっている。この部分に沿うような形状が種子状であり、本発明では、収納本体1を種子状に整形している点がその特徴となっている。収納本体1の外観形状としては、目頭側から中空部2が露出しないような形状が好ましい。そこで、本発明では所定の幅の弧状片の一例となる種子状の収納本体1の構造を採っている。中空部2には、所定量の眼科用の薬剤が収容される。
【0023】
収納本体1は、眼瞼側に接する面が瞼板によって保持される被保持部1aを有している。例えば図1Aに示すように、被保持部1aは、収納本体1の外縁部に沿って設けられた膨出形状を成している。断面は、図1Bに示すように例えば、楔形状を成している。この楔形状の懐部位1bを眼瞼板で押さえ込むようになされる。この被保持部1aによって、当該眼瞼内装用具100を眼瞼内に装用した後、収納本体自体のずれ落ちを防止できるようになる。図1Cに示す収納本体1の裏面側は異物挿入感を低減するために、眼瞼側に接する面よりも摩擦係数を小さくする鏡面仕上げ(処理)がなされている。
【0024】
この例では、図1Bに示したように収納本体1の内部を空洞化させて、中空部2を形成することで、薬剤を封入させることが可能となる。例えば、中空部2は、所定の容量を成す包袋状を有し、かつ、所定の位置に薬剤を自動滲出する1以上の開孔部3を有している。開孔部3の口径は、数μm〜数100μm程度であり、長時間に渡って薬剤を滲出させるためである。
【0025】
薬剤の自動滲出については、浸透現象を利用する。浸透現象とは、溶質は通さないが溶媒は通す性質をもつ半透膜を隔てて、濃度の異なる溶液が接した場合、低濃度溶液の溶媒が、高濃度溶液の方に拡散しようとする現象をいう。浸透現象を起こす際の圧力を浸透圧という。例えば、細胞膜で隔てられた濃度の異なる2液間で、濃度の低い方から高い方へ水が移動する力を浸透圧という。
【0026】
収納本体1の素材としては、例えば、紫外線吸収剤・ブタコラーゲン含有HEMA、架橋アクリルエステル共重合体、紫外線吸収剤含有アクリル−メタクリル架橋共重合体、紫外線吸収性黄色軟質アクリル樹脂、紫外線吸収性高屈折率シリコーン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、青色光吸収剤:エチルメタクリルアミド系、紫外線・青色光吸収剤含有アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等を用いることができる。
【0027】
[製造方法]
例えば、包袋状の眼瞼内装用具100を製造する場合、図示しないが、まず、種子状、かつ、膨出形状(被保持部)に象ったキャビティとコアで金型を作成する。次に、無菌状態でシリコーン樹脂の終端エンドレスチューブを金型にセットして、他端からエアーを吹き込んで種子状にバルーン成形する。その後、エアー吹き込み口を閉塞する。薬剤を中空部2に導入する際には、一旦、中空部2内を真空状態に保持し、または、非真空状態の中空部2にその後、薬剤注入用の開口部を形成する。
【0028】
当該開口部を介して所定量の薬剤を注入し、その後、開口部を栓部材で閉塞する。薬剤は液状、粉末状、ゼリー状等を問わない。そして、所定の位置から薬剤を滲出させための1以上の開孔部3を形成する。栓部材には、収納本体1の素材と同じものが使用できる。これにより、薬剤内包型の眼瞼内装用具100を形成できるようになる。
【0029】
収納本体1には、多孔質の素材を用いてもよい。例えば、中空部2に代わって収納本体1が含浸構造を成し、収納本体1に、薬剤を浸み込ませてなるものであってもよい。収納本体1そのものの素材に薬剤を練り込む場合は、空洞化の必要もなく、収納本体1をシート状のまま使用できるため、眼瞼内装用具100を結膜嚢内に挿入した際に、違和感をより軽減することが可能となる。
【0030】
[取り扱い方法]
ここで、図2図5を参照して、眼瞼内装用具100の取り扱い方法について説明する。本発明に係る眼瞼内装用具100の挿入箇所としては、図2に示す装用者の眼の上眼瞼55側の上瞼嚢51a又は下眼瞼56側の下瞼嚢51bのいずれに挿入しても良く、治療によっては高い濃度の薬剤が必要な場合、その両方の眼瞼嚢内に挿入することで、薬剤濃度をコントロールすることも可能となる。
【0031】
図2において、瞼板52は上眼瞼55の側で目を閉じたとき、角膜53の上部を覆う位置に存在している。目を開けたとき、上瞼嚢51aの奥の側で、瞼板52の上端部が収納本体1の懐部位1bを止めるように機能する。この機能を利用することで、眼瞼内装用具100を上瞼嚢51a内に装着できるようになり、眼瞼内装用具100の収納本体1を瞼板52で押下できるようにした。
【0032】
本発明に係る眼瞼内装用具100には、収納本体1の眼内への装用を容易に行うために、図3Aに示すピンセット機能を有したT型の装着補助具400が備えられる。装着補助具400は、例えば全体が樹脂製又はステンレス製の支持部41a,41b及び、ピンセット構造の保持部42を有している。図3Bに示すように支持部41a,41bは、種子状を有して収納本体1を挟持し支えるものである。支持部41bには断面R状の返し部41cが設けられ、当該返し部41cで収納本体1の内側周縁部を受け止めるようになされる。
【0033】
保持部42はピンセット機構を成す支点部43及び挟み板状の把持部42a,42bを有しており、支持部41a,41bを保持するようになされる。把持部42aには長方形状の開口部42cが設けられ、他方の把持部42bが開口部42cに通されて左右の位置が入れ換えられる。上述の把持部42aの先端部位は、返し部41cを有する種子状の支持部41bを成し、把持部42bの先端部位が種子状の支持部41aを成している。
【0034】
図3Cに示す装着補助具400の側面図において、把持部42a,42bの他端は接合されてピンセット構造の支点部43を成している。把持部42a,42bを左右の外側から内側へ力を入れることで、支持部41a,41bが左右の外側へ開き、眼瞼内装用具100を挟持できる状態となる。力を除くことで、眼瞼内装用具100が支持部41a,41bで挟持できるようになる。
【0035】
例えば、図4Aの平面図で示すような細長い種子状で、図4Bの正面図で示すようなシート状の眼瞼内装用具100’を図5の平面図に示す眼瞼内に装用する場合である。この場合医師は、図5に示す装着補助具400の支持部41a,41bで眼瞼内装用具100’を挟持し、患者の上眼瞼55内の上瞼嚢51a奥に装着する。その後医師は、把持部42a,42bに力を入れて、装着補助具400から眼瞼内装用具100’を外し、装着補助具400を上瞼嚢51aから抜き去る。これにより、眼瞼内装用具100’を上瞼嚢51a内に装着できるようになる。
【0036】
このように図1から図5に示した第1の実施形態としての眼瞼内装用具100,100’によれば、眼瞼内に装用可能な種子状を有して薬剤を収容する収納本体1を備え、収納本体1は眼瞼側に接する面が瞼板52によって保持される被保持部1aを有するものである。
【0037】
この構造によって、図10Bに示すような小帯57を回避する凹部の機能に依存することなく、収納本体1自体を眼瞼内に安定して装着できるようになる。小帯57を回避する部材が不要なので、眼瞼内装用具自体の部品点数の削減にも繋がる。しかも、装用者に対して異物挿入感を与えることなく、従来方式と比べて大容量の薬剤を収納できるようになる。既に市販されている涙点プラグ型に比べ薬剤の量が増やせる。
【0038】
なお、収納本体1が外部に露出しないため、光による薬剤の変質を防止できる。また、乾燥により薬剤の濃度が変化することがない。更に収納本体1を空洞化させて中空部2を設けたので、既存の液体の薬剤をそのまま使用することができる。これにより、高信頼度の汎用型の眼科用のドラック・デリバリー・システム(DDS)を提供できるようになる。
【0039】
<第2の実施形態>
続いて、図6から図9を参照して、第2の実施形態としての眼瞼内装用具201〜203について説明をする。この実施形態においては、収納本体1を保持するための構造として、膨出形状に限られることなく、滑り止め機能を利用して安定させる方法を採っている
【0040】
なお、収納本体20の角膜53(図2参照)の表面側の滑り止め機能において、異物挿入感を問題とするのであれば、収納本体20の眼瞼側に比べて、角膜53側の面の滑り止め機能を極々弱くする。また、収納本体20を薄くする。例えば、図6Aの正面図に示す眼瞼内装用具201はシート状の収納本体20を有しており、装用者の眼瞼側に接する面に滑り止め処理がなされるものである。
【0041】
図6Bに示す側面図において、眼瞼内装用具201を側面から見たとき、翼形状を有している。すなわち、図6DのX2−X2矢視断面図のように翼形状を有しており、その切断面は翼形状に限らず、落ち難い構造であれば、円形状、楕円形状、長丸形状又は巴形状を有していてもよい。滑り止め処理は、図6C図6Dに示すように例えば、収納本体20の一方の面が多数の斜線、波線、直線、幾何学模様、梨地、又はこれらを組み合わせた凹凸(粗面)形状に加工されてなる。この例では、正方形の格子状内に5本の波線が設けられた格子波模様の粗面部21を有している。粗面部21は格子点にドットが施されている。滑り難い模様であれば格子点は省略してもよい。なお、図6Eに示す収納本体20の他方の面は、角膜53(図2参照)の側に接する面となるので鏡面処理がなされている。
【0042】
眼瞼内装用具201によれば、滑り止め加工を施した面と鏡面処理側の面との間の摩擦係数を高め、滑り止め加工を施さない場合に比べて、当該収納本体20を滑り難くすることができる。従って、角膜53の外周縁部位と瞼裏側付け根部位の間(眼瞼嚢内)に安定して収納本体20を装着できるようになる。
【0043】
また、図7Aに示す眼瞼内装用具202は、収納本体20を有し、図7Bの側面図に示す収納本体20の側面も翼形状を有している。図7Cの平面図に示す収納本体20の表面の粗面部22には、梨地やななこ地等が施されている。粗面部22は、摩擦係数を高くするために設けられる。図7Dに示す収納本体20の裏面側は、眼瞼内装用具201と同様にして鏡面処理がなされている。
【0044】
図8Aに示す眼瞼内装用具203は収納本体20を有し、この収納本体20の表面の粗面部23には、拡散状にグループ化されたなみ線模様が施されている。なみ線の長さは、瞼との摩擦係数を高くするために下方の側が長くなされる。図8Bに示すように収納本体20の裏面側は、図6、7に示した眼瞼内装用具201,202と同様にして鏡面処理がなされている。
【0045】
ここで、図9を参照しながら眼瞼内装用具201から203の装着例について説明する。例えば、眼瞼内装用具201の挿入箇所としては、上眼瞼55内の上瞼嚢51a又は下眼瞼56内の下瞼嚢51bのいずれに挿入しても良く、治療によっては高い濃度の薬剤が必要な場合、その両方の眼瞼嚢内に挿入することで、薬剤濃度をコントロールすることも可能となる。眼瞼内装用具201の装着には、上述したように装着補助具400を用いることができる。
【0046】
上眼瞼55の側で目を開けたり閉じたりするとき、上瞼嚢51aの奥の側で、上眼瞼55が収納本体20の粗面部21を保持するので、収納本体20を滑り落ちないように機能する。また、収納本体20の眼側は、鏡面処理がなされているため、眼を傷つけることはない。これにより、眼瞼内装用具201を結膜嚢51内に装着できるようになる。なお、眼瞼内装用具201は下瞼嚢51bの側に装着してもよい。
【0047】
このように第2の実施形態としての眼瞼内装用具201〜203によれば、眼瞼内に装用可能な種子状を有して薬剤を収容する収納本体20を備え、装用者の眼瞼側に接する面に滑り止め処理がなされるものである。
【0048】
この構造によって、図10Bに示すような小帯57を回避する凹部の機能に依存することなく、収納本体1自体を眼瞼内に安定して装着できるようになる。しかも、装用者に対して異物挿入感を与えることなく、従来方式と比べて大容量の薬剤を収納できるようになる。第1の実施形態と同様にして、涙点プラグ型に比べ薬剤の量が増やせるため、効能期間を長く延ばせる。小帯57を回避する部材が不要なので、眼瞼内装用具自体の部品点数の削減にも繋がる。これにより、第1の実施形態と同様にして高信頼度の汎用型の眼科用のドラック・デリバリー・システム(DDS)を提供できるようになる。
【0049】
なお、図4、5で説明した眼瞼内装用具100’には、第1の実施形態に係る眼瞼内装用具100の他、第2の実施形態で説明した眼瞼内装用具201〜203を含むものである。
【0050】
<第3の実施形態>
続いて、図10を参照して、第3の実施形態としての眼瞼内装用具300の構成例について説明をする。眼瞼内装用具300は、収納本体31を有する。収納本体31には、その外縁部に沿って設けられた被保持部31a及び中空部32が設けられる。被保持部31aは、上瞼嚢51a内に装着した際に瞼板(これらの図に示さない)により保持される膨出形状を成している。中空部32には、開孔部33が設けられ、薬剤が滲出可能となされている。この収納本体31の一端には、弧状部34が延設され、弧状部34が下眼瞼56の側の下瞼嚢51bに装用可能となされている。この弧状部34の円弧形状は、収納本体31が結膜嚢51内で回転することを防ぐ役割も兼ねているため、被保持部31aと協働して、より安定した位置で、装用姿勢を維持できるようになる。
【0051】
眼瞼内装用具300では、図10Bに示す眼瞼内への装用後、下瞼嚢51bの側から上瞼嚢51aの側へある程度のテンションに依存して収納本体31を支えるようになる。また、テンションの支点部を成す位置であって、弧状部34の始点部位には凹部35が設けられ、小帯57を回避するようになされる。なお、弧状部34の一端は、眼内を傷付けないように丸み加工処理が施されている。
【0052】
また、図10Bの二点鎖線に示すように、上述の弧状部34の端部を収納本体31の端部と対峙する位置まで延在すれば、眼瞼内で収納本体31の装着姿勢を最も安定させることができる。好ましくは、収納本体31と中空部32と弧状部34と凹部35とを一体整形するとよい。これにより、第1の実施形態で説明したような被保持部1a(図1参照)や、第2の実施形態で説明した滑り止め機能等を省略することができる。
【0053】
このように、第3の実施形態としての眼瞼内装用具300によれば、収納本体31の一端に略半円弧の弧状部34が延設され、眼瞼内への装用後、下瞼嚢51bの側から上瞼嚢51aの側へある程度のテンションに依存して収納本体31を支えるようになされる。
【0054】
この構成によって、第1の実施形態と比較して、収納本体31が上眼瞼55の上瞼嚢51a内の深い位置において、滑り止め機能に依存することなく、収納本体31を結膜嚢51内に安定させることができる。もちろん、眼瞼内装用具300は上下を反転して使用してもよい。
【0055】
また、第1及び第2の実施形態と同様にして中空部32で露出する箇所が無いため、光による薬剤の変質を防止できるようになる。また、眼瞼内装用具300が結膜嚢51の奥深く内に装用され、中空部32が直接乾燥することも防げるため、安定した濃度の薬剤を送達することが可能となる。これにより、第1及び第2の実施形態と同様にして大容量の眼科用のDDSを提供できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、眼球及び結膜等を含む部位に目薬液を自動供給する眼科用のDDSデバイスに適用して極めて好適である。
【符号の説明】
【0057】
1,20,31 収納本体
1a,31a 被保持部
2,32 中空部
3,33 開孔部
21,22,23 粗面部
34 弧状部
100,201〜203,300 眼瞼内装用具
【要約】
【課題】装用者に対して異物挿入感を与えることなく、眼瞼内に安定して装着できるようにすると共に、従来方式と比べて、大容量の薬剤を収納できるようにする。
【解決手段】眼瞼内装用具100は、眼瞼内に装用可能な所定の幅の種子状片を成して、薬剤を収容する収納本体1を備える。収納本体1は、眼瞼側に接する面が瞼板52によって保持可能な被保持部1aを有するものである。
【選択図】 図2
図1
図2
図4
図5
図9
図10
図3
図6
図7
図8