(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5671186
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】メインミラー及び広角ミラーによる法定視界を表示するための輸送車両用の視認システム
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20150129BHJP
B60R 1/00 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
B60R11/02 C
B60R1/00 A
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-231469(P2014-231469)
(22)【出願日】2014年11月14日
(62)【分割の表示】特願2013-11274(P2013-11274)の分割
【原出願日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年11月14日
(31)【優先権主張番号】10 2012 001 835.5
(32)【優先日】2012年1月31日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500020380
【氏名又は名称】メクラ・ラング・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】MEKRA Lang GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー ラング
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル クンツ
【審査官】
加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−081014(JP,A)
【文献】
特開2007−022176(JP,A)
【文献】
特開2008−015759(JP,A)
【文献】
特開2007−237964(JP,A)
【文献】
特開平10−258682(JP,A)
【文献】
特開2009−284421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
B60R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)の同一側におけるメインミラー及び広角ミラーによる法定視界(51,52,61,62)を運転室内で表示するための輸送車両用の視認システム(10)であって,該視認システム(10)は,
・運転室内の表示ユニット(20)と,
・記録ユニット(40,41,42,43)と,
・前記記録ユニット(40〜43)が記録したイメージを処理し,かつこれらイメージを表示用に前記表示ユニット(20)に供給する算出ユニット(30)とを備え,
・前記記録ユニット(40〜43)は,少なくとも,前記車両(1)の一方の側における前記メインミラーによる視界を含む第1イメージと,前記メインミラーによる視界とは異なる,前記メインミラーと同一側における前記広角ミラーによる視界を含む第2イメージとを記録する構成とし,
・少なくとも前記第2イメージは,車両長手軸線方向に対してほぼ直交し,かつほぼ水平である広角方向において,ヒトの目が自然に知覚するよりも大きな画角を有する広角領域を有しているために歪んでいるのに対して,前記第1イメージは,前記第2イメージの広角方向にほぼ歪みを示すことがなく,更に,
・前記算出ユニット(30)は,前記第1イメージ及び前記第2イメージを互いに隣接する合成イメージ(21)に構成するものとし,この構成において,前記第1イメージ及び前記第2イメージが共通のパースペクティブを有すると共に,少なくとも前記第2イメージが,前記広角方向の少なくとも修正領域(24)で修正され,これによって前記広角方向における前記第2イメージの間引きを実現し,
・前記第1イメージ及び前記第2イメージは,前記広角方向にほぼ直交する前記車両長手軸線方向において,互いに整列するように表示される視認システム。
【請求項2】
請求項1に記載の視認システムであって,前記記録ユニット(40〜43)は,前記車両(1)の前記第1イメージを撮像するための第1撮像ユニット(41)と,前記第2イメージを撮像するための第2撮像ユニットとを有している視認システム。
【請求項3】
請求項1に記載の視認システムであって,前記記録ユニット(40〜43)は,前記第1イメージ及び前記第2イメージを含むイメージを撮像するための共通の撮像ユニット(43)を有し,また前記第1イメージ及び前記第2イメージを,撮像されたイメージから展開する変換ユニット(31)が設けられている視認システム。
【請求項4】
請求項3に記載の視認システムであって,前記変換ユニット(31)は,算出ユニット(30)に内蔵されている視認システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の視認システムであって,前記撮像ユニット(43)は,前記第1イメージ及び前記第2イメージで構成される広角イメージを撮像するものとし,前記第1イメージは,前記広角イメージの中央領域を,また前記第2イメージは,前記広角イメージの中央領域に隣接する側面領域を構成している視認システム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の視認システムであって,前記第1イメージ及び/又は前記第2イメージは輸送車両側面領域(3)を含み,前記算出ユニット(30)は,前前記輸送車両側面領域(3)が前記合成イメージ(21)に示されるよう,前記第1イメージ及び前記第2イメージを合成する視認システム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の視認システムであって,前記算出ユニット(30)は,前記広角方向におけるn列毎の画素列を除外することにより及び/又はk列毎の前記画素列を残留させることにより,前記第2イメージの間引きを実現し,その際に,n列は≧2であり,k列は≧2である視認システム。
【請求項8】
請求項7に記載の視認システムであって,前記画素列におけるn列毎の除外又はk列毎の残留は,前記第2イメージ全体に亘って均等になされる視認システム。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか一項に記載の視認システムであって,前記算出ユニット(30)は,前記広角方向における前記画素列を除外することにより前記第2イメージの間引きを実現し,その際に,除外された前記画素列の個数は,前記車両(1)からの距離が長くなるに従って増加し,好適には均等に増加する視認システム。
【請求項10】
請求項7又は9に記載の視認システムであって,前記画素列の間引きは,前記広角方向における修正領域(24)においてのみなされる視認システム。
【請求項11】
請求項9に記載の視認システムであって,前記画素列の間引き量は,前記広角方向に対応する前記第2イメージ全体に亘り,前記車両(1)からの距離が長くなるに従って均等に増加する視認システム。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の視認システムであって,前記撮像素子(40〜42)は,前記第1イメージを第1解像度で,また前記第2イメージを第2解像度でそれぞれ撮像し,前記第1イメージの解像度は,前記第2イメージの解像度よりも高い視認システム。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか一項に記載の視認システムであって,前記広角方向は,前記車両長手軸線方向にほぼ直交している視認システム。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載の視認システムであって,前記表示ユニット(20)は,前記運転室のAピラーに配置されている視認システム。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか一項に記載の視認システムであって,前記表示ユニット(20)は,車両構造部分に配置したディスプレイ又は射影装置を含んでいる視認システム。
【請求項16】
請求項1〜15の何れか一項に記載の視認システムであって,前記第1イメージは,40°〜50°の円錐角に基づく仮想上の円錐状視認領域を有している視認システム。
【請求項17】
請求項1〜16の何れか一項に記載の視認システムであって,前記第1イメージは9°〜20°の画角を有し,前記第2イメージは50°〜70°の画角を有している視認システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,輸送車両用の視認システムに関するものである。この視認システムを使用することにより,メインミラー及び広角ミラーによる法定視界(視界II又は視界IV。ドイツにおいては例えば欧州経済委員会法規ECE R46に規定)を輸送車両のドライバに対して視認可能に表示することが可能となる。
【背景技術】
【0002】
車両のタイプ,即ちオートバイ,乗用車,貨物車などに応じて,いわゆる視界に関する基準が法的に規定されている。このような視界は,間接視認装置,即ち従来においてはミラーによって映し出す必要があると共に,運転席のドライバにとって間接視認装置で常時視認可能とする必要がある。
【0003】
このような規定を満たすため,トラック又はライトバンなどの輸送車両においては,特にメインミラーが運転席側及び助手席側に設置される。ドライバは,このようなメインミラーを利用することにより,一定幅を有する車道の平坦かつ水平部分を視認することが可能となる。この場合の視認可能な車道部分は,ドライバの視点後方において,法的に規定された距離に亘り地平線まで延在する。更に,ドライバは,上述したミラーを通してより幅狭の車道を視認できなければならない。この車線は,ドライバの視点後方において,より短い間隔に亘って延在するものである。メインミラーを通して視認し,かつ法的に視認可能としなければならない車両近傍領域は,以下において,メインミラーによる視界と称する。
【0004】
輸送車両においては,メインミラーによる視界の他に,通常は広角ミラーが映し出す視界も視認可能でなければならない。このような広角ミラーを通して,ドライバの視点後方において,車両の長手方向に一定の広がりを有する領域が視認される。この領域は,メインミラーで視認可能な領域よりも幅広ではあるが,必ずしも車両の全長に及ぶ必要はない。ここに広角ミラーとは,ヒトの目が自然に知覚する40°〜50°よりも大きな画角を有するミラーのことを指す。
【0005】
一般的に車両の各側には,メインミラー及び広角ミラーが1個ずつ設けられ,多くの場合に互いに上下に配置されている。これら各ミラーは,法定視界を映し出すものである。しかしながら,このことは,ドライバがミラーによる視界を視認して車両周りを確認し,これによって事故につながる状況を回避する際,車両の一側だけを視認する場合であっても,メインミラー及び広角ミラーの両方を確認しなければならないことを意味する。更に,メインミラー及び広角ミラーにおける画角の違いにより,これらミラーによる視界の歪みは互いに異なっている。この歪みの相違は,ミラーに映し出された物体と車両との間における相対的な位置関係の正確な把握を妨げ,不安をもたらすものである。
【0006】
ミラーの代わりとして,他の視認システムが特に輸送車両用に開発され,これら視認システムにおいては,ドライバが車両周り領域を正確かつ簡単に確認できるだけでなく,車両周りの気流による影響を最小化し,これによって燃費低減が図れるものである。このような視認システムは,例えばカメラ又は他のイメージセンサとして実現できる撮像ユニットに加え,運転室内に配置した表示ユニット,例えばディスプレイを含んでいる。撮像ユニットにより撮像されたイメージは,運転室内の表示ユニットに表示される。
【0007】
本願の優先日において未公開のドイツ国特許出願第102011010624.3号明細書(特許文献1)には,上述したような輸送車両用の視認システムが記載されており,この視認システムを使用することにより,法定視界を表示することができる。同文献に記載されているシステムでは,走行時の表示が義務付けられている少なくとも2つの法定視界が,運転室内の表示ユニットに恒久的かつリアルタイムで表示される。この場合にこれら視界は,例えば互いに隣接した状態で同時に表示されるものである。更に,これら視界が互いにオーバーラップする状態で表示ユニットに表示されることも既知である。
【0008】
更に,ドイツ国特許第19900498号明細書(特許文献2)には,車両後方における確認領域を視認する方法及び装置が既知である。この場合に車両後方における確認領域は,ディスプレイに表示され,後方に延在する直線状の領域と死角としての角度領域とを含んでいる。この死角としての角度領域は,後方に延在する直線状の領域に比べて,より大きな角度領域で視認されるものである。これら2つの角度領域は,互いに独立したカメラ素子が撮像する構成とされている。更に,これら2つの角度領域は,反比例する幅比で,分割された又は2つのセグメントで構成されたディスプレイに隣接して表示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ドイツ国特許出願第102011010624.3号明細書
【特許文献2】ドイツ国特許第19900498号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した事情に鑑み,本発明の課題は,車両の同一側におけるメインミラー及び広角ミラーによる法定視界(視界II及びIV)を運転室内で表示するための輸送車両用の視認システムを提供することにある。本発明に係る視認システムにより,ドライバは,車両の走行を妨げ得る障害物に対する車両との相対的な位置関係を簡単に認識できると共に,車両の同一側におけるメインミラー及び広角ミラーによる視界が,(例えばイグニッションの作動時に中断することなく)恒久的かつ信頼性高くリアルタイムで表示される。更に,本発明に係るシステムは,人間工学的に有利な設計とされている。従ってドライバは,可及的短時間内に,車両周りにおいて視認した領域の状況を簡単に把握することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は,請求項1に記載した特徴を備える輸送車両用の視認システムにより解決できる。好適な実施形態は,従属請求項に記載したとおりである。
【0012】
本発明の要点は,通常,車両の一側におけるメインミラー及び広角ミラーによって映し出される視界を合成イメージとして構成することにある。本発明に係る合成イメージは,互いにスムーズに移行すると共に,互いにオーバーラップするか又は直接隣接する態様とした少なくとも2つのイメージで構成することにより,ドライバは,2つの視界を同時に確認する必要なく1つの視界だけを確認しながらも,車両の一側周りにおける全体状況を把握することが可能となる。更に,上述の合成イメージは,ドライバにとって可能な限り人間工学的な構成とするのが好適であり,このことは,合成イメージが可能な限り実情を反映したリアルなものであることを意味する。広角ミラー及びメインミラーによる視界を同時に視認するため,本発明の趣旨においては,異なる画角又は歪みを有し,かつ広角ミラー及びメインミラーによるそれぞれの視界を含む複数のイメージを,互いに隣接する同一パースペクティブ,即ち仮想上の同一視認方向で合成する。この場合,ヒトの目が自然に知覚する画角よりも大きな画角を有するイメージの修正領域で修正が加えられるため,一方では,イメージ間における異なる画角による歪みに基づく急峻な移行ではなく,スムーズかつ緩やかな移行が実現される。また,他方では,合成イメージを構成するより広角のイメージ,換言すれば歪みを有する視界が縮小(間引き)された状態で表示され,その際に合成イメージが示す本質的な情報又は車両周りの状況把握のための人間工学的要素が失われることはない。その結果,広角イメージに,広角ミラー又は広角レンズに基づく歪みが依然として残留していたとしても,合成イメージは実際の状況に近い状態で認識され,従って広角を有するイメージ領域が表示可能となる。
【0013】
合成イメージによる簡単かつ明瞭な状況把握は,第1イメージ及び第2イメージの合成において,これらイメージが長手方向に沿い互いに整列することにも基づくものである。これによって,複数のイメージが単一のイメージとして知覚される。この単一に知覚されるイメージは,イメージ領域に応じて異なる解像度を有するが,合成イメージを構成する広角イメージにおける歪みのない中央領域部分(即ち,第1イメージにも対応する部分)ではほぼ同一である。ただし,イメージ幅方向におけるこの未修正(撮像)部分と比べた場合,広角方向に対応し,かつ車両軸線方向にほぼ直交する部分は,画素列の間引きにより圧縮されている。
【0014】
このように,本発明に係る視認システムの表示により,実質的な歪みを知覚することなく,広角ミラーによる広角視認領域だけでなく,メインミラーによる視認領域も表示することが可能である。
【0015】
なお,「広角」とは通常,ヒトの目が自然に知覚する40°〜50°よりも大きな画角を指す。また,「共通のパースペクティブ」とは,第1イメージ及び第2イメージの視認方向がほぼ同一であることを意味する。従って,これら第1イメージ及び第2イメージは,例えば互いに異なる方位を指向したり,互いに上下に配置されたりすることがない。以下において,「広角方向」とは,基本的に水平かつ地面に平行な方向を指し,この方向に沿い,広角レンズ又はミラーにより広角に亘る表示が行われる。
【0016】
更に,「光学的歪み」とは,光学システムによる物体形状の歪み収差を指し,このような歪み収差は,光学システムで反映した像の局所的変化として認識されるものである。スケーリングは,光軸からの像点距離に従う引き伸ばし変化に基づいている。例えば,撮像用の広角装置の使用ではいわゆる樽型歪みが生じ,このような樽型歪みにおいては,視界端縁に向けて引き伸ばし度が減少する。樽型歪みにおいては,イメージ中央領域の歪みは比較的僅かであり,ほぼ知覚されることがない。即ちこの場合,イメージ中央領域の歪みは,ヒトの目による自然な知覚にほぼ対応して知覚されるものである。
【0017】
本発明に係る第1イメージ及び第2イメージの撮像において,第2イメージは2つの広角方向を有する広角イメージとして撮像することができ,又は少なくとも1つの広角方向を有する広角イメージとして撮像することができる。この場合に広角方向とは,輸送車両長手軸線方向にほぼ直交する水平方向を指す。
【0018】
第1イメージ及び第2イメージは,記録ユニットにより,2つの異なる態様で有利に撮像可能である。
【0019】
好適な実施形態において,記録ユニットは,共通の撮像素子,例えばイメージセンサ又はカメラを含み,この場合にこの共通の撮像素子は,広角方向において,メインミラーによる視界だけでなく広角ミラーによる視界も含むイメージを撮像する。この場合,好適には,メインミラーによる視界は撮像されたイメージの中央領域を構成しているため,ほぼ歪みを呈することがない。好適な一実施形態において,この場合の画角はほぼ180°とすることができるため,例えば魚眼レンズを使用したイメージの撮像が可能とされている。更に,この好適な一実施形態においては,変換ユニットが設けられている。この変換ユニットは,例えば算出ユニット又は撮像ユニットに内蔵することができると共に,撮像ユニットにより合成的に撮像されたイメージを第1及び第2イメージに分離する。
【0020】
好適な代替的実施形態において,各イメージ,即ち第1イメージ及び第2イメージは,個別の撮像ユニットで撮像されるため,少なくとも第1撮像ユニット及び第2撮像ユニットが設けられている。第1イメージ用の第1撮像ユニットは,ヒトの目が自然に知覚する画角を有するものとすることが可能であるのに対して,第2撮像ユニットは,広角装置として構成可能である。この代案としての実施形態においても,撮像ユニットとして,例えばカメラ又はイメージセンサを使用することができる。
【0021】
好適な実施形態において,第1イメージは40°〜50°の仮想的な円錐状視認領域を有し,この視認領域はヒトの目の視認領域に対応している。第1イメージを撮像する実施形態に応じて,上述した仮想上の円錐状視認領域は,撮像された広角イメージのうち,この円錐状視認領域に対応する中央領域を分割して得る構成とすることができ,又は40°〜50°の画角を有するレンズを使用して,円錐状視認領域に対応する第1イメージを個別に撮像して得る構成とすることができる。従って,ドライバは,第1イメージをほぼ歪みなく認識可能である。
【0022】
第1及び第2イメージの撮像は,適切な撮像ユニット,例えばカメラ又はイメージセンサにより実現することができる。本発明においては,例えば個別のイメージセンサで構成される1個以上の部分ユニットを有する単一の撮像ユニットを設けるか,又は互いに分離して車両に配置され,かつ互いに独立している1個以上の撮像ユニットを設けることも可能である。撮像ユニットの少なくとも1個又は部分ユニットは,広角イメージを撮像する構成とされ,この広角イメージは希望に応じて,第1及び第2イメージの両方,又は第2イメージのみを含むものである。
【0023】
第2イメージが好適には1方向においてのみ加工され,かつ好適には輸送車両長手軸線方向にほぼ直交する方向に対応する第1イメージと合成される場合,この合成イメージに対する目の知覚は特に自然で有利であるため,ドライバが合成イメージに慣れ,かつ合成イメージに表示される障害物と車両位置との相対的な位置関係を把握するのに必要な時間は僅かである。即ち,この場合にドライバは,合成イメージに加えられた修正を認識することがない。この点は,輸送車両長手軸線方向に沿い,第1イメージ及び第2イメージが互いに整列していることにも基づくものである。
【0024】
好適な一実施形態において,少なくとも個別に撮像された広角イメージ,即ち第2イメージ,又は合成的に撮像された第1及び第2イメージは,輸送車両の側面領域を含んでいる。イメージが撮像された後,算出ユニット又は変換ユニットにより,第1及び/又は第2イメージに修正を加え又は適合化し,これによって運転室内の表示ユニットに表示される合成イメージに,撮像された車両側面領域が示される構成とすることができる。この側面領域は,個別に撮像された第1イメージに表示されるか,又は合成的に撮像されたイメージから第1イメージを分割する際に,輸送車両側面領域をこの第1イメージに含め,その後,第1イメージ及び第2イメージによる合成イメージへの構成において,第2イメージが第1イメージにおける車両側面領域に隣接して表示される構成とすることが可能である。この場合,第1及び第2イメージ間における移行領域には,算出ユニットにより,修正を加える必要がある。
【0025】
上述した側面領域の表示に関して更に述べると,特に第1イメージ及び第2イメージが個別に撮像される場合,車両側面領域を第2イメージに含め,その後の第1イメージ及び第2イメージの合成において,メインミラーによる視界に対応する第1イメージのほぼ歪んでいない領域,及びこの領域に隣接し,かつ広角ミラーによる視界に対応する第2イメージの歪んでいる領域が実際に合成された後,車両側面領域が表示される構成とすることも可能である。この場合に算出ユニットによる修正は,好適には,第2イメージの歪んでいる領域及び第1イメージ間にのみ必要であり,その際に車両側面領域は,第2イメージに重ね合わせるだけでよい。なぜなら,車両側面領域は,広角イメージにおける好適な位置においては,ほぼ歪みを呈することがないからである。更に,車両側面領域の表示に関して述べると,2つの移行領域を設けることにより,第1イメージが第2イメージのほぼ中央領域に重なり,何れの移行領域の広角方向においても第2イメージが修正される構成とすることも可能である。
【0026】
第1イメージ及び第2イメージは,車両長手方向に沿い,即ち車両長手軸線方向にほぼ平行な視認方向に沿い,互いに整列するよう合成されるため,地平線及び第1イメージ及び第2イメージに共通する視界が共に表示ユニットに表示される。即ち,ヒトの目に対応する画角を有する矩形状の合成イメージが構成されることにより,ドライバは,車両周りの状況を容易に把握することが可能となる。このような合成イメージは,第1イメージ及び第2イメージが共通の撮像ユニットによって合成的に撮像された場合,特に容易に実現することができる。なぜなら,この場合,第1及び第2イメージが既に所望の状態で互いに整列しているからである。
【0027】
修正領域における修正は,好適には,第2イメージにおいてのみなされるものであり,例えば広角方向に沿い,第2イメージでn列毎の画素列が除外されることにより実現する。この場合,n≧2である。修正を加えるための他の好適な選択肢では,k列毎の画素列を残留させる。この場合,k≧2である。これによって,例えば連続する2つの画素列を削除し,3列毎の画素列を残留させることが可能となる。
【0028】
特に簡単な修正法において,n又はkは,広角方向のイメージ幅全体に亘って一定とする。
【0029】
広角方向とは,開口角方向のことを指し,この開口角方向は,第2イメージにおいてほぼイメージ幅方向に対応するものである。
【0030】
更に,一領域においてのみ,即ち第2イメージの修正領域においてのみ,算出ユニットによる修正を加えることも可能である。この場合の修正領域は,好適には,第1イメージに対して広角方向に隣接する第2イメージ部分である。代案として,修正は,第2イメージ幅全体に亘って施してもよい。
【0031】
更なる代案として,n又はkを,第2イメージの修正すべき領域(修正領域)に亘って,可変とすることも可能である。この場合,好適には,車両近傍のnをより大きくし,車両からの距離が長くなるに従ってnも小さくする構成とし,又は車両からの距離が長くなるに従ってk値をより大きくする構成とする。即ち,何れの場合においても車両からの距離が長くなるほど間引き量が増加するものである。この場合にnの減少又はkの増加は,一定に又は漸進的に実現することができる。
【0032】
画素列の除外は,簡単かつ安価な方法であるだけでなく,移行領域及び歪みを有する広角領域において第2イメージを圧縮しながらも,第1イメージの画角に適合させ,従って第1イメージの歪みを維持する上で算出量の比較的少ない方法でもある。
【0033】
第1イメージ及び第2イメージに2個の異なるイメージセンサ,又は2個の異なるカメラ又は撮像ユニットを使用することにより,第1イメージを第1解像度又は第1角度解像度で,また第2イメージを第2解像度又は第2角度解像度でそれぞれ撮像することが可能となり,その際に,好適には,第1イメージの(角度)解像度は,第2イメージの(角度)解像度よりも高くする。このことは,ドライバが一般的なメインミラー及び広角ミラーから受ける印象,即ちメインミラーの視界が広角ミラーの視界よりも鮮明である事実にも対応するものである。更に,これによって車両近傍領域における高精度の撮像も可能となる。これに加え,第2イメージの修正により,修正領域における解像度の低下が実現される。
【0034】
好適な一実施形態において,広角方向は,車両長手軸線方向にほぼ直交すると共に水平である。この広角方向は,通常は広角ミラーが映し出す視界方向に対応している。
【0035】
運転室内の表示ユニットは,人間工学上の観点から,Aピラーに配置するのが有利である。Aピラーは,輸送車両のドライバが法定視界II及びIV用の間接視認システムを必要とする箇所に対応している。表示ユニットは,好適には,例えばAピラー又は他の車両構造部分に直接配置したディスプレイにより又は射影装置により実現することができる。
【0036】
言うまでもなく,視認システムは,ドライバ側領域及び同乗者側領域の両方,又はこれら一方の側にのみ設けることが可能である。視認システムを何れの側においても使用する場合,視認システムを統合することにより,例えば算出ユニットを両側用に使用する構成とすることができ,又は互いに完全に独立した視認システムを使用する構成としてもよい。
【0037】
以下,本発明を添付図面に基づいて例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図2】メインミラー及び広角ミラーによる法定視界を,輸送車両の両側で示す概略平面図である。
【
図3】撮像ユニットにより撮像された仮想上の円錐状視認領域を,輸送車両の一側で具体的に示す平面図である。
【
図4】第1及び第2イメージを撮像する共通の撮像ユニットを有する,
図3に対応する平面図である。
【
図5】表示ユニット上に示す本発明に係る表示態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は,本発明に係る輸送車両用の視認システム10を略図で示している。この視認システム10は,車両の同一側におけるメインミラー及び広角ミラーによる法定視界を運転室内で表示するための表示ユニット20を備える。
図1の略図では,運転室内における表示ユニット20の位置は示されていない。
【0040】
表示ユニット20は,算出ユニット30からデータを受け取り,この算出ユニット30も,記録ユニット40から入力データを受け取る。一実施形態において,カメラなどの2個の撮像ユニット41,42で構成されている記録ユニット40では,この記録ユニット40の撮像素子41,42が異なる画角を有する第1イメージ及び第2イメージを撮像する。
図1の実施形態において,第1カメラ又は撮像素子41は第1イメージを撮像し,この第1イメージは,メインミラーによる視界を含むと共に,好適には,高解像度かつ歪みをほぼ示すことがない。即ち,第1イメージにおける画角は,ヒトの自然な視覚における画角に対応している。これに対して,第2カメラ又は撮像素子42は第2イメージを撮像し,この第2イメージは,少なくとも目が自然に知覚するよりも大きな画角を有する広角方向を示すと共に,広角ミラー(視界IV)による視界を表示する。カメラの代わりとして,撮像ユニット41,42は,種々のイメージセンサなどで実現することも可能である。
【0041】
本発明に係る視認システムを車両の両側に適用した場合,更なるカメラ又は他の撮像ユニット(図示せず)に加え,必要に応じて輸送車両の他側用に更なる表示ユニット(図示せず)が設けられる。算出ユニット30は,必要に応じて,車両の両側用に共用できるが,車両の各側に個別の算出ユニット30を設ける構成としてもよい。
【0042】
更に,
図1は,本発明に係る視認システム10の代替的な実施形態を破線で示している。この場合,記録ユニット40を構成する撮像素子41,42の代わりとして,記録ユニット40が単一かつ共通の撮像素子43で構成される。撮像素子43はこの場合も,カメラ,イメージセンサなどで実現可能である。撮像素子43は,メインミラー及び広角ミラーそれぞれによる視界を含むイメージを撮像し,従ってこの撮像されたイメージは,望ましくは,広画角を有する広角撮像装置によるものである。この場合の画角は,例えば180°までとすることができるため,例えば魚眼レンズの使用が可能とされている。撮像ユニット43で合成的に撮像されたこのイメージは,メインミラー及び広角ミラーそれぞれによる視界を含むと共に,
図1の実施形態の算出ユニット30に内蔵されている変換ユニット30に供給される。代案として,変換ユニット31は,例えば撮像素子43又はディスプレイとして構成した表示ユニット20に内蔵してもよく,又は撮像ユニット43及び算出ユニット30の間に接続された個別の装置として設けてもよい。
【0043】
変換ユニット31は,合成的に撮像されたイメージを第1イメージ及び第2イメージに分割し,その際に,好適には,第1イメージが,撮像素子43で合成的に撮像されたイメージの中央領域で分割される。なぜなら,合成的に撮像されたイメージの中央領域は歪みをほぼ示さないだけでなく,メインミラーによる視界が表示されている領域だからである。これに対して,合成的に撮像されたイメージからの第2イメージの分割においては,第2イメージが,第1イメージに直接隣接する領域(即ち車両に対面する領域)を含むと共に,第1イメージの高さ方向,即ち垂直方向と同一の広がりを有するものとする。
図1に示す代替的な実施形態において,処理ユニット30は,第1及び第2イメージを処理し,この処理したイメージを表示用に合成イメージとして表示ユニット20に供給する。即ち,合成的に撮像されたイメージ全体は,上述したように第1イメージ及び第2イメージに分離した後に合成イメージに構成することができる。代案として,分離した第1及び第2イメージによる合成イメージに比べて,より大きい合成的に撮像されたイメージ全体を供給する構成としてもよい。この場合,合成的に撮像されたイメージの一部が利用されない。
【0044】
図2は,輸送車両1周りにおいて表示すべき視界の一部を示している。この表示すべき視界には,例えば,車両左側のメインミラーによる視界51(視界II),車両左側の広角ミラーによる視界52(視界IV),車両右側のメインミラーによる視界61及び車両右側の広角ミラーによる視界62が含まれる。言うまでもなく,輸送車両1用の視認システム10は輸送車両1の一側にのみ使用してもよく,例えば視認がより困難な車両側に使用することが可能である。即ち,運転席が左側であれば,視認システム10を輸送車両1の右側に使用する。従ってこの場合,右側の視界61,62だけが表示ユニット20に表示され,運転席側においてはミラーなどの間接視界用の手段が使用される。
【0045】
図3及び
図4は,撮像素子41〜43により撮像された画角を概略的に示している。
【0046】
第1又は第2イメージが,個別の撮像ユニット41,42で撮像される実施形態(
図3参照)において,カメラ(撮像ユニット)42は,カメラ(撮像ユニット)41の画角よりも大きな画角を有する第2イメージを撮像するよう構成されている。この点は,
図3において,第2カメラ42による円錐状視認領域45,又は第1カメラ41による円錐状視認領域44で示されている。
図3に明示するように,好適には,カメラ41,42は,車両側面領域3も含めて撮像するよう配置可能である。この車両側面領域3の撮像においては,カメラ41,42の何れかを適切に配置すれば十分である。このことは,車両側面領域3(
図3では,視認システムは例示的に車両左側に示されている)の撮像を可能とし,従って表示ユニット20に表示されている合成イメージに含めて表示させるものである。なお,
図3の平面図における輸送車両側面領域3は,概略的に示されている。
【0047】
図4に示す代替的な実施形態においては,カメラなどの単一の撮像素子43が,円錐状視認領域46を撮像する。この円錐状視認領域46は,(仮想上の)円錐状視認領域44だけでなく(仮想上の)円錐状視認領域45をも含むものである。即ち,円錐状視認領域46は広角に及んでいる。
図4に概略的に示すように,円錐状視認領域46に含まれ,かつメインミラーによる視認領域に対応する(仮想上の)円錐状視認領域44は,イメージのほぼ中央領域(円錐状視認領域の中央領域)に位置している。この場合,輸送車両側面領域3も含めた撮像が行われる。
【0048】
図5は,表示ユニット20に表示される合成イメージ21を,例示的かつ概略的に示している。
【0049】
表示ユニット20に示されている合成イメージ21は,第1イメージ領域22を含み,この第1イメージ領域22は,第1カメラ及びその円錐状視認領域44で撮像されたイメージに基づくものであるか,又は撮像ユニット43で撮像されたイメージのうち,円錐状視認領域44(即ち,好適には,合成的に撮像されたイメージの中央領域における歪みのほぼない部分)に対応して分割したものである。更に,合成イメージ21は,第2イメージ領域23を含み,この第2イメージ領域23は,例えばカメラ42で撮像されたイメージに基づくものであるか,又は合成的に撮像されたイメージのうち,円錐状視認領域45に対応する歪みを示す部分である。換言すれば,第2イメージ領域23は,円錐状視認領域45のうち,車両に対面すると共に,第1イメージよりも大きな画角又は歪みを有する領域に基づくものである。このことは,イメージ領域23がイメージ領域22よりも基本的に歪んでいることを意味する。この点は,
図5において,実際には直線である仮想上のライン28,29で示されている。これらライン28,29の歪みは,イメージ領域22よりもイメージ領域23においてより大きいことがわかる。
【0050】
更に,合成イメージ21は,移行領域24を含んでいる。この移行領域24では,第2イメージ領域23の歪みがイメージ領域22の歪みに近似し,同時にイメージ幅方向(
図5では左右方向)における広がりが間引かれている。このことは,広角方向(即ち,少なくとも
図5では左右方向)において,イメージ領域23(即ち,第2イメージ)におけるn列毎の画素列が除外されることにより生ずるものである。更に,
図5に明示するように,第1イメージ領域22及び第2イメージ領域23の合成において,これらイメージは,左右方向だけでなく上下方向にもほぼ整列している。
【0051】
移行領域24に適切な修正を加え,その結果,第2イメージ領域23の歪みを第1イメージ領域22の歪みに近似した状態に維持することにより,歪みの小さな領域及び歪みの大きな領域間(
図5では左方から右方)において,スムーズな移行を実現することが可能となる。このことは,視認システムの使用だけでなく,ドライバが合成イメージ21に表示される障害物を把握する上でも,人間工学的に極めて有利であることが判明した。このことは,仮に,広角ミラーに対応する視認領域全体を僅かな表示領域に表示し,更に互いに隣接して表示する第1及び第2イメージの合成において,広角方向のイメージ及びこの広角方向にほぼ直交する車両長手軸線方向のイメージが互いにスムーズに移行し,しかも整列する表示とした場合であっても有利である。
【0052】
更に,
図5に明示するように,輸送車両側面領域3が合成イメージ21の一部を構成している。この点も,車両周りの状況把握をより容易にする。
【符号の説明】
【0053】
1 輸送車両
3 車両側面領域
10 視認システム
20 表示ユニット
21 合成イメージ
22 第1イメージ領域
23 第2イメージ領域
24 修正領域
28 ライン
29 ライン
30 算出ユニット
31 変換ユニット
40 記録ユニット
41 撮像ユニット
42 撮像ユニット
43 撮像ユニット
44 円錐状視認領域
45 円錐状視認領域
51 視界
52 視界
61 視界
62 視界
【要約】
【課題】車両の同一側におけるメインミラー及び広角ミラーによる法定視界を運転室で表示する。
【解決手段】運転室内の表示ユニットと,記録ユニットと,記録ユニットが記録したイメージを処理し,かつこれらイメージを表示用に表示ユニットに供給する算出ユニットとを備える。記録ユニットは,少なくとも,車両の一方の側におけるメインミラーによる視界を含む第1イメージと,メインミラーと同一側における広角ミラーによる視界を含む第2イメージとを記録する。少なくとも第2イメージは,広角方向において,ヒトの目が自然に知覚するよりも大きな画角の広角領域を有することにより歪んでいるが,第1イメージは第2イメージの広角方向に殆ど歪みを示さない。算出ユニットは,第1及び第2イメージを互いに隣接する合成イメージに構成する。第1及び第2イメージが共通のパースペクティブを有すると共に,少なくとも第2イメージが,広角方向の少なくとも修正領域で修正されることにより広角方向における第2イメージの間引きを行い,第1及び第2イメージは,車両長手軸線方向において互いに整列するよう表示される。
【選択図】
図1