(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671187
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
B60N2/07
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-506642(P2014-506642)
(86)(22)【出願日】2012年12月25日
(86)【国際出願番号】JP2012083470
(87)【国際公開番号】WO2014102900
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2014年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000158736
【氏名又は名称】岐阜車体工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】白木 晋
【審査官】
望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−220752(JP,A)
【文献】
特開2005−112319(JP,A)
【文献】
特開平10−315816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアに固定されるロアレールと、
シートに固定されて前記ロアレールに移動可能に支持されるアッパレールとを備え、
前記アッパレールは、前記ロアレール内に挿入されてアッパレールの移動方向に沿って移動し得る移動台と、その移動台から上方へ延設されて移動台とともに移動し得る取付部とを有し、
前記ロアレールは、前記アッパレールの取付部が上方へ突出する開口と、アッパレールの移動方向に対して交叉する幅方向の両側において前記開口を閉塞し得る一対のカバーとを有し、
前記一対のカバーは、前記ロアレールにそれぞれ取着された一対の固定部と、各固定部から幅方向に延設され、前記開口の上方において互いに分離された一対の舌片部とを有し、かつ、前記アッパレールの取付部が移動する際に各舌片部が幅方向に沿って互いに対向して前記開口を閉塞する倒伏状態と、各舌片部が前記アッパレールの取付部を挟んで起き上がる起立状態とに切り替え可能であり、
各舌片部は、各舌片部の基端側及び先端側に位置する第1及び第2折曲可能部と、それらの第1及び第2折曲可能部を介して上方への折曲を可能にされ、かつ、幅方向に沿って互いに連結された基端側及び先端側の第1及び第2帯部とを有し、前記各第1帯部は各固定部に隣接するとともに各固定部に各第1折曲可能部を介して連結され、前記各第2帯部は前記各第1帯部に前記各第2折曲可能部を介して連結され、
各第1帯部は、各舌片部の倒伏状態において前記ロアレールに支持される載置部を有し、
前記各舌片部が倒伏状態に配置されたとき、各舌片部の各第2帯部が互いに対向して突き合わされ、かつ、各第1帯部と各第2帯部との間において、各第2折曲可能部の下方にギャップが形成され、異物が倒伏状態の各舌片部上に落下したとき、前記ギャップを解消するように各第2帯部が下方に変位する
ことを特徴とするシートスライド装置。
【請求項2】
前記各舌片部の各第1及び第2折曲可能部は、各舌片部の各第1及び第2帯部より折れ曲がり易いように薄肉状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシートスライド装置。
【請求項3】
前記各舌片部の各第1及び第2折曲可能部は、各舌片部の各第1及び第2帯部とは異なる材質の材料により成形され、各舌片部の各第1及び第2帯部より折れ曲がり易い性質を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記各舌片部において、各第2折曲可能部は、各第2帯部と同じ材質の材料により成形され、各第2帯部より折れ曲がり易いように薄肉状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシートスライド装置。
【請求項5】
前記各舌片部において、各第1及び第2帯部は前記開口に対向する本体と、その本体の下側に設けた下壁とを有し、各第1及び第2帯部の本体と各第1及び第2折曲可能部とは、同じ材質の材料により成形されて各第1及び第2帯部の下壁より折れ曲がり易い性質を有し、各第1及び第2折曲可能部は各第1及び第2帯部の本体より折れ曲がり易いように薄肉状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートスライド装置に関する。詳しくは、ロアレールの開口にアッ
パレールが移動可能に支持されるとともに、その開口からアッパレールが上方へ突出するシートスライド装置において、ロアレールの開口を閉塞してその開口からの異物の侵入を防止するカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のシートスライド装置では、ロアレールの開口にアッ
パレールが移動可能に支持されるとともに、その開口からアッパレールが上方へ突出している。そのシートスライド装置は、ロアレールの開口を閉塞する一対のカバーを有している。両カバーは硬質の固定部と軟質の遮蔽部とから一体に成形されている。各カバーの固定部は開口の内側縁にそれぞれ装着され、開口の中央へ向かって突出し、かつ、互いに対向している。各カバーの遮蔽部は各固定部の上方にて互いに対向して突き合わされ、開口を閉塞することができる。アッパレールが移動するとき、各遮蔽部の間を拡げながら、各カバーの固定部の間及び遮蔽部の間を通過する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−186104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の各カバーの遮蔽部の全体は、軟質材料により成形され、アッパレールが通過するたびに、その基端部において上方または下方へ約90度の範囲内で撓む。そのため、頻繁に使用されると、その基端部に折れ癖が付き易くなって、開口を十分に閉塞することができず、異物の侵入防止機能を十分に発揮することができないおそれがあった。
【0005】
この発明は、シートスライド装置において、カバーの折れ癖の発生を少なくしてロアレールの開口の閉塞機能を高め、異物の侵入を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、後述する実施形態の図面中の符号を参照して、本発明を説明する。
本願の第1の態様にかかるシートスライド装置(1)は、フロア(3)に固定されるロアレール(4)と、シート(6)に固定されて前記ロアレール(4)に移動可能に支持されるアッパレール(5)とを備えている。前記アッパレール(5)は、前記ロアレール(4)内に挿入されてアッパレール(5)の移動方向(X)に沿って移動し得る移動台(15)と、その移動台(15)から上方へ延設されて移動台(15)とともに移動し得る取付部(16)とを有している。前記ロアレール(4)は、前記アッパレール(5)の取付部(16)が上方へ突出する開口(13a)と、アッパレール(5)の移動方向(X)に対して交叉する幅方向(Y)の両側において前記開口(13a)を閉塞し得る一対のカバー(23)とを有している。一対のカバー(23)は、前記ロアレール(4)にそれぞれ取着された一対の固定部(24)と、各固定部(24)から幅方向(Y)に延設され、前記開口の上方において互いに分離された一対の舌片部(25)とを有している。一対のカバー(23)は、前記アッパレール(5)の取付部(16)が移動する際に、各舌片部(25)が幅方向(Y)に沿って互いに対向して前記開口(13a)を閉塞する倒伏状態(P)と、各舌片部(25)が前記アッ
パレール(5)の取付部(16)を挟んで起き上がる起立状態(Q)とに切り替え可能である。各舌片部(25)は、各舌片部(25)の基端側及び先端側に位置する第1及び第2折曲可能部(29)と、それらの第1及び第2折曲可能部を介して上方への折曲を可能とされ、かつ、幅方向(Y)に沿って互いに連結された第1及び第2帯部(28,30)とを有し、前記各第1帯部(28)は各固定部(24)に隣接するとともに各固定部(24)に各第1折曲可能部(27)を介して連結されている。各第2帯部(32)は前記各第1帯部(28)に前記各第2折曲可能部(30)を介して連結され、各第1帯部(28)は、各舌片部(25)の倒伏状態において前記ロアレール(4)に支持される載置部(31)を有している。各舌片部(25)が倒伏状態に配置されたとき、各舌片部(25)の各第2帯部(32)が互いに対向して突き合わされ、かつ、各第1帯部(28)と各第2帯部(30)との間において、各第2折曲可能部(30)の下方にギャップ(29a)が形成され、異物が倒伏状態の各舌片部(25)上に落下したとき、前記ギャップ(29a)を解消するように各第2帯部(32)が下方に変位する。
【0007】
第1の態様では、アッパレール(5)の通過に伴い、各第1及び第2帯部(28,30)が第1及び第2折曲可能部(27,29)にて個々に折れ曲がって、各舌片部(25)の全体が折れ曲がる。そのため、個々の第1及び第2帯部(28,30)における撓み度を軽減して第1及び第2帯部(28,30)に折れ癖が付き難くすることができる。また、折れ曲がり易い舌片部(25)を、固定部(24)によってロアレール(4)に堅固に取着することができる。さらに、基端側の第1帯部(28)を固定部(24)に、第1折曲可能部(27)を介して折れ曲がり易く連結することができる。前記各舌片部(25)の帯部(28)は、倒伏状態(P)において前記ロアレール(4)に支持される載置部(28a)を有している。従って、前記載置部(28a)により、各舌片部(25)の倒伏状態(P)を安定させることができる。
【0008】
第2の態様において、前記各舌片部(25)の第1及び第2折曲可能部(27,29)は、各舌片部(25)の第1及び第2帯部(28,30)より折れ曲がり易いように薄肉状に形成されている。従って、第1及び第2折曲可能部(27,29)を第1及び第2帯部(28,30)より折れ曲がり易くすることができる。
【0009】
第3の態様において、前記各舌片部(25)の第1及び第2折曲可能部(27,29)は、各舌片部(25)の第1帯部(28)とは異なる材質の材料により成形されて、各舌片部(25)の第1帯部(28)より折れ曲がり易い性質を有している。例えば、各第1帯部(28)及び各固定部(24)は硬質樹脂などの硬質材料により形成され、第1及び第2折曲可能部(27,29)は各第1帯部(28)及び各固定部(24)より折れ曲がり易い軟質樹脂などの軟質材料により形成されている。従って、第1及び第2折曲可能部(27,29)を各第1帯部(28)より折れ曲がり易くすることができる。
【0010】
第4の態様において、各舌片部(25)における先端側の第2帯部(30)に隣接する第2折曲可能部(29)は、先端側の第2帯部(30)と同じ材質の材料、例えば軟質樹脂などの軟質材料により成形され、先端側の第2帯部(30)より折れ曲がり易いように薄肉状に形成されている。従って、各第2折曲可能部(29)を各第2帯部(30)より折れ曲がり易くすることができる。
【0011】
第5の態様において、各舌片部(25)における第1及び第2帯部(28,30)は開口(13a)に対向する本体(28a,30a)と、その本体の下側に設けた下壁(28b,30b)とを有する。下壁(28b,30b)は例えば硬質樹脂などの硬質材料により成形されている。第1及び第2帯部(28,30)の本体(28a,30a)と第1及び第2折曲可能部(27,29)とは互いに同じ材質の材料、例えば軟質樹脂などの軟質材料により成形されて、第1及び第2帯部(28,30)の下壁(28b,30b)より折れ曲がり易い性質を有し、第1及び第2折曲可能部(27,29)は第1及び第2帯部(28,30)の本体(28a,30a)より折れ曲がり易いように薄肉状に形成されている。従って、各本体(28a,30a)と第1及び第2折曲可能部(27,29)とをアッパレール(5)に追従して容易に変形させることができるとともに、舌片部(25)の起立状態(Q)で各下壁(28b,30b)がアッパレール(5)に対して摺接する際に滑り易くすることができる。また、第1及び第2折曲可能部(27,29)を第1及び第2帯部(28,30)より折れ曲がり易くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、シートスライド装置(1)において、カバー(23)の折れ癖の発生を少なくしてロアレール(4)の開口(13a)の閉塞機能を高め、異物の侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)はシートスライド装置の全体を示す側面図であり、(b)は同じく平面図である。
【
図2】(a)はアッ
パレールのロック状態を示し、
図1(b)のA−A線に沿った部分横断面図であり、
図2(b)はアッ
パレールのロック解除状態を示す部分横断面図である。
【
図3】(a)はアッ
パレールのロック状態において、異物落下前のアッパレールの占有範囲外で、
図1(b)のB−B線に沿ってロアレールを切断して示す部分横断面図であり、
図3(b)はアッ
パレールのロック状態において、異物落下後にアッパレールの占有範囲外でロアレールを切断して示す部分横断面図である。
【
図4】(a)は
図3(a)に示すカバーの部分拡大断面図であり、
図4(b)は
図5(a)に示すカバーの部分拡大断面図である。
【
図5】(a)はアッ
パレールのロック状態において、アッパレールの占有範囲内で、
図1(b)のC−C線に沿ってロアレールを切断して示す部分横断面図であり、
図5(b)はロック解除状態において、アッパレールの占有範囲内でロアレールを切断して示す部分横断面図である。
【
図6】(a)(b)はそれぞれカバーの別例を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を
図1〜
図4に基づいて詳細に説明する。
図1(a)(b)に示すシートスライド装置1は、ワンボックスカー等の車両に設けられるセカンドシート装置2またはサードシート装置2に採用され、車両のフロア3に固定されたロアレール4と、ロアレール4に対して前後方向Xへ移動可能に取り付けられたアッパレール5とを備えている。アッパレール5にはシート6が固定されている。
【0015】
図2(a)(b)に示すロアレール4は、
図1(a)(b)に示す前端部4aと後端部4bとの間で前後方向Xに沿って延設されている。そのロアレール4は底板部9と、底板部9の左端部及び右端部からそれぞれ上方へ屈曲された一対の側板部10と、左側板部10及び右側板部10の上端部から左右方向Yに沿い、内側へ向かって互いに対向するように屈曲された一対の上板部11と、左上板部11及び右上板部11からそれぞれ下方へ屈曲された一対の口板部12とを有している。左右方向Yは、アッパレール5の移動方向、すなわち、前後方向Xに対して直交している。
【0016】
底板部9、左右の側板部10、左右の上板部11及び左右の口板部12によって収容室13が形成されている。その収容室13は、左右の口板部12の間に形成されて前後方向Xへ延びる開口13aと、側板部10と口板部12との間に形成されて前後方向Xへ延びる溝13bとを有し、開口13aによって収容室13が上方へ開放されている。
【0017】
図1(a)(b)に示すように、ロアレール4に対するアッパレール5の移動領域は、前後方向Xに沿い、後半の領域と前半の領域とに区分されている。
図1(a)(b)及び
図2(a)(b)に示すように、ロアレール4において、後半の領域にはアッパレール5の移動方向(前後方向X)に沿って一列に並ぶ複数のロック孔14(ロック部)が形成され、前半の領域には二つのグループを構成する複数のロック孔14が形成されている。
【0018】
図2(a)(b)に示すように、アッパレール5は、ロアレール4の収容室13に挿入されてアッパレール5の移動方向Xへ移動し得る移動台15と、その移動台15から上方へ延設されて移動台15とともに移動し得る取付部16とを有している。移動台15は、ロアレール4の左右の溝13b内にて底板部9に支持された一対の車輪15aを有している。取付部16はロアレール4の開口13aから上方へ突出している。
【0019】
アッパレール5の取付部16にはロックレバー17(ロック部材)が支軸18を中心に上下方向へ回動可能に支持されている。ロックレバー17は、ロアレール4の各ロック孔14に係脱し得るロック腕19と、ロック腕19から延設されてハンドル21と連動するハンドル腕20とを有している。
【0020】
図3(a)(b)及び
図2(a)(b)に示すように、ロックばね22の両端部22a,22bのうち、第1の端部22aはアッパレール5に引掛けられ、第2の端部22bはロックレバー17に引掛けられている。ロックレバー17は、
図2(a)に示すロック位置Rと、
図2(b)に示すロック解除位置URとに切り替え可能である。
図2(a)に示すロック位置Rでは、ロックばね22の力により、ロック腕19の爪19aがロック孔14に係入され、ロックレバー17がロアレール4に対するアッパレール5の移動を規制し、アッ
パレール5のロック状態を設定する。
図2(b)に示すロック解除位置URでは、ロックばね22の力に抗してロック腕19の爪19aがロック孔14から離脱し、ロックレバー17がロアレール4に対するアッパレール5の移動を可能にし、アッ
パレール5のロック解除状態を設定する。
【0021】
図1(a)(b)に示すように、ロアレール4は、前端部4aと後端部4bとの間で前後方向Xへ延設された左右一対のカバー23を有している。
図3(a)(b)及び
図4(a)に示すように、各カバー23は、ロアレール4に取着された固定部24と、固定部24から開口13aへ向かって延設された舌片部25とを有している。各固定部24は、各上板部11に載置された横板部24aと、各横板部24aから下方へ突設されて各側板部10に当接された係止板部24bとを有している。
図1(a)(b)に示すように、ロアレール4には前端部4aの近傍、後端部4bの近傍、及びそれらの中間部の三箇所に、係止部材26が嵌め込まれている。各係止部材26は、ロアレール4の底板部9に当接された底板部26aと、ロアレール4の左右の側板部10にそれぞれ当接された一対の側板部26bとを有している。各カバー23の各係止板部24bが各係止部材26の各側板部26bに係止されて、各カバー23の固定部24が上方へ抜けないように規制されている。
【0022】
一方、
図4(a)に示すように、各舌片部25は、各固定部24の横板部24aに対し、幅方向Yに沿い、折曲可能部27を介して連結された基端側の帯部28と、基端側の帯部28に対し、幅方向Yに沿い、折曲可能部29を介して連結された先端側の帯部30とを有している。各固定部24と基端側の帯部28とは、例えばポリプロピレンなどの、同じ材質の硬質樹脂により成形されている。各折曲可能部27、各折曲可能部29、及び、先端側の帯部30は、例えばポリオレフィン系の熱可塑性エラストマーなどの、同じ材質の軟質樹脂により成形されている。各固定部24の横板部24aと基端側の帯部28との間の折曲可能部27は、その横板部24aや帯部28より薄肉状に形成されたくびれ部分を備えている。基端側の帯部28と先端側の帯部30との間の折曲可能部29は、その帯部28,30より薄肉状に形成されたくびれ部分を備えている。基端側の帯部28の下側には載置突条31(載置部)が前後方向Xに沿って形成されている。先端側の帯部30の下側には押圧突条32が前後方向Xに沿って形成されている。
【0023】
次に、ロアレール4に対するカバー23の作用を説明する。
図3(a)及び
図4(a)に示すように、アッ
パレール5のロアレール4に対するロック状態において、ロアレール4上にてアッパレール5の占有範囲外に位置する左右のカバー23は、異物落下前の倒伏状態Pに配置されている。左右のカバー23においては、ロアレール4の上板部11の上方で、各固定部24の横板部24aの一部が各上板部11に載置されている。また、各横板部24aに折曲可能部27を介して連結された基端側の帯部28が、載置突条31を介して上板部11に載置されて各上板部11から開口13aへ向かって突出し、基端側の各帯部28に折曲可能部29を介して連結された先端側の各帯部30が若干上向きに突出し、2つの帯部30が互いに対向して突き合わされている。
【0024】
図3(b)に示すように、左右のカバー23上に異物が落下して先端側の帯部30にその異物が載った後には、先端側の各帯部30が異物の重量により若干下向きに変位した状態で、2つの帯部30が互いに対向して突き合わされた状態となる。
【0025】
異物落下前におけるカバー23の倒伏状態Pでは、
図3(a)及び
図4(a)に示すように、各帯部28と各帯部30との間において、折曲可能部29の下方にギャップ29aが形成される。一方、異物がカバー23に落下すると、
図3(b)に示すように、前記ギャップ29aを解消するように、各帯部30が下方に変位する。
【0026】
図2(a)(b)、
図5(a)(b)及び
図4(b)に示すように、ロアレール4上にてアッパレール5が移動すると、
図4(a)に示す左右のカバー23において、倒伏状態Pで突き合わされた先端側の2つの帯部30の間に、アッパレール5の取付部16が入り込み、先端側の各帯部30が押圧突条32を介して取付部16に接触しながら、取付部16を挟んで起き上がり、
図4(b)に示す起立状態Qに変化する。その場合、左右のカバー23においては、基端側の帯部28と先端側の帯部30とがアッパレール5の取付部16の形態に合わせて、折曲可能部27,29で折れ曲がりながら変形する。その後、起立状態Qにある左右のカバー23は、アッパレール5の取付部16の離間に伴い、異物落下前の倒伏状態Pに戻る。
【0027】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 左右のカバー23の舌片部25は、上方への折曲げを可能にする折曲可能部29を介して幅方向Yに沿って互いに連結された基端側の帯部28と先端側の帯部30とを有している。そのため、アッパレール5の取付部16の通過に伴い、各帯部28,30が折曲可能部29で個々に折れ曲がって舌片部25の全体が折れ曲がり、個々の帯部28,30における撓み度を軽減して帯部28,30に折れ癖が付き難くすることができる。従って、ロアレール4の開口13aの閉塞機能を高め、異物の侵入を防止することができる。
【0028】
(2) 左右のカバー23において、ロアレール4に取着された各固定部24から各舌片部25が延設されているので、折れ曲がり易い各舌片部25を各固定部24によりロアレール4に対して堅固に取着することができる。
【0029】
(3) 左右のカバー23の舌片部25において、基端側の帯部28が各固定部24に、折曲可能部27を介して連結されているので、基端側の帯部28を固定部24から折れ曲げ易くすることができる。
【0030】
(4) 左右のカバー23の舌片部25において、各折曲可能部27,29は基端側の帯部28及び先端側の帯部30より折れ曲がり易いように薄肉状に形成されているので、各折曲可能部27,29を各帯部28,30より折れ曲げ易くすることができる。
【0031】
(5) 先端側の帯部30及び折曲可能部29は軟質樹脂により成形されているので、舌片部25を起立状態Qのまま、アッパレール5の取付部16に追従して容易に変形させることができる。また、先端側の帯部30において、押圧突条32が軟質樹脂により成形されているので、その帯部30がアッパレール5の取付部16に摺接する際に摺接音を発生しにくい。
【0032】
(6) 左右のカバー23の各舌片部25において、基端側の各帯部28は倒伏状態Pでロアレール4に支持される載置突条31を有しているので、各舌片部25の倒伏状態Pを安定させることができる。
【0033】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
前記実施形態では、
図4(a)に示すように、カバー23の各舌片部25において、折曲可能部29と先端側の帯部30とを軟質樹脂により一体に成形しているが、
図6(a)に示すように、折曲可能部29と帯部30とを別体で形成するとともに、帯部30の押圧突条32と本体33とを別体で形成してもよい。その場合、帯部30の本体33を硬質樹脂により成形し、折曲可能部29と帯部30の押圧突条32とを軟質樹脂により成形する。
【0034】
また、
図6(b)に示すように、カバー23の各舌片部25において、基端側の帯部28及び先端側の帯部30は、開口13aに対向する本体28a,30aの下側に、薄い下壁28b,30bを有している。各帯部28,30の下壁28b,30bは同じ材質の硬質樹脂により成形されているので、舌片部25の起立状態Qで各下壁28b,30bがアッパレール5に摺接する際に、滑り易くすることができる。また、各帯部28,30の本体28a,30aと各折曲可能部27,29とは同じ材質の軟質樹脂により成形されて、各下壁28b,30bより折れ曲がり易い性質を有しているので、各本体28a,30aと各折曲可能部27,29とをアッパレール5に追従して容易に変形させることができる。さらに、各折曲可能部27,29は各本体28a,30aより折れ曲がり易いように薄肉状のくびれ部分を備えているので、各折曲可能部27,29を各帯部28,30より折れ曲がり易くすることができる。
【0035】
カバー23の各舌片部25において、折曲可能部27、基端側の帯部28、折曲可能部29、及び、先端部側の帯部30を軟質樹脂により一体に成形してもよい。
前記実施形態では、カバー23の各舌片部25において、基端側の帯部28と先端側の帯部30とを折曲可能部27,29を介して幅方向Yに沿って互いに連結しているが、基端側の帯部28と先端側の帯部30との間で、複数の帯部を折曲可能部を介して幅方向Yに沿って互いに連結してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…シートスライド装置、3…フロア、4…ロアレール、6…シート、5…アッパレール、15…アッパレールの移動台、16…アッパレールの取付部、13a…ロアレールの開口、23…ロアレールのカバー、24…カバーの固定部、25…カバーの舌片部、27…舌片部の折曲可能部、28…舌片部の帯部、28a…本体、28b…下壁、29…舌片部の折曲可能部、30…舌片部の帯部、30a…本体、30b…下壁、31…帯部の載置部、P…カバーの倒伏状態、Q…カバーの起立状態、X…アッパレールの移動方向(前後方向)、Y…幅方向(左右方向)。