(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671197
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】貨物運搬用の船舶
(51)【国際特許分類】
B63B 29/00 20060101AFI20150129BHJP
B63B 3/00 20060101ALI20150129BHJP
B63B 11/04 20060101ALI20150129BHJP
B63B 25/00 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
B63B29/00 A
B63B3/00 Z
B63B11/04 A
B63B11/04 Z
B63B25/00 101K
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2007-173709(P2007-173709)
(22)【出願日】2007年7月2日
(65)【公開番号】特開2009-12512(P2009-12512A)
(43)【公開日】2009年1月22日
【審査請求日】2010年7月1日
【審判番号】不服2013-12387(P2013-12387/J1)
【審判請求日】2013年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】507223683
【氏名又は名称】海工物流株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074675
【弁理士】
【氏名又は名称】柳川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】藤國 眞
(72)【発明者】
【氏名】森 博樹
【合議体】
【審判長】
大熊 雄治
【審判官】
平田 信勝
【審判官】
鳥居 稔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−50814(JP,A)
【文献】
特公昭39−28805(JP,B1)
【文献】
特開昭57−44591(JP,A)
【文献】
特開昭62−55291(JP,A)
【文献】
実開平5−20994(JP,U)
【文献】
特公昭59−29475(JP,B2)
【文献】
実公平4−5434(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 29/00
B63B 3/00
B63B 11/04
B63B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉構造に構成され、少なくともエンジン駆動部及び燃料タンクを収容する連続空間を内部に有する船殻の該連続空間の上面に貨物積載用デッキと船首以外の位置に配置された操舵室とが備えられた貨物運搬用の船舶であって、該操舵室と該連続空間とを開閉可能な乗務員通行用出入口を介して連結させ、さらに船首側のデッキにも上記連続空間への出入を可能にする開閉可能な乗務員通行用出入口を設けることによって、上記連続空間を通っての両乗務員通行用出入口の間での通行そして前者の乗務員通行用出入口を通っての操舵室とエンジン駆動部との間の通行がそれぞれ可能なようにされていることを特徴とする船舶。
【請求項2】
密閉構造に構成され、少なくともエンジン駆動部及び燃料タンクを収容する連続空間を内部に有する船殻の該連続空間の上面に貨物積載用デッキと船首に配置された操舵室とが備えられた貨物運搬用の船舶であって、該操舵室と該連続空間とを開閉可能な乗務員通行用出入口を介して連結させることにより、該乗務員通行用出入口を通っての操舵室とエンジン駆動部との間の通行が可能なようにされていることを特徴とする船舶。
【請求項3】
上記連続空間に居住室が設けられている請求項1もしくは2に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物をそのまま、あるいはコンテナに収容した状態で運搬するのに適した貨物運搬用の船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、貨物の輸送はトラックによる陸上輸送が主流である。トラックによる陸上輸送は、輸送可能な地域が広く、機動性が高いという利点がある。しかし、近年の環境問題に対する意識の高まり、特に二酸化炭素ガスの排出削減の意識の高まりから、一括大量輸送が可能で、エネルギー効率の高い貨物の輸送方法として、コンテナ船などの貨物運搬船による海上輸送が注目されている。
【0003】
コンテナ船としては、船殻内に船倉部を設けて、船倉部とデッキ上面とにコンテナを積載するコンテナ船が広く利用されている。この船倉部を有するコンテナ船は、コンテナの積載能力は高いものの、満載喫水線が深いため、水深の浅い港湾施設には接岸させるのが難しいという問題がある。
【0004】
満載喫水線の浅いコンテナ船として、特許文献1には、船殻内に船倉部を設けずに、コンテナをデッキ上面のみに積載することによって、船本体の深さを小さくしたコンテナ船が開示されている。なお、この特許文献1において、船倉部を有しないコンテナ船の例として図示されている船舶では、船舶の左右両舷のデッキの上面に、復原性能を改善するための水密トランクと、その水密トランクに閉囲された通路とが設けられている。
【特許文献1】特開2007−50814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示されているような船殻内に船倉部を有しない、すなわち船殻が密閉構造となっていて、デッキ上面にのみにコンテナを積載するように構成されているコンテナ船は、船倉部を有するコンテナ船と比べて、満載喫水線が浅いため、水深の浅い港湾施設であっても容易に接岸させることが可能であり、コンテナの輸送可能な港湾施設が多いという利点がある。但し、操舵室から船舶の運航に重要なエンジン駆動部や燃料タンクに移動する際に、デッキ上面の通路を利用しなければならないとすると、エンジン駆動部や燃料タンクに異常が発生して緊急な措置が必要となった場合にそれらのエンジン駆動部や燃料タンクへのアクセスに手間取るおそれがある。また、デッキ上面に通路を設けることは、その分だけデッキ上面にコンテナを積載するためのスペースが狭くなるので好ましくはない。
従って、本発明の目的は、船殻が密閉構造となっていて、デッキ上面にのみにコンテナなどの貨物を積載するように構成されている貨物運搬用の船舶であって、操舵室からエンジン駆動部や燃料タンクへのアクセスが容易で、かつデッキ上面に通路を特には必要としない船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、船殻上面に操舵室と貨物積載用デッキとを備えた貨物運搬用の船舶であって、船殻が開閉可能な出入口を備えた密閉構造となるように構成されており、そして船殻内に、少なくともエンジン駆動部及び燃料タンクを収容する空間部が設けられていて、操舵室と空間部とが上記の開閉可能な出入口を介して連結していることを特徴とする船舶にある。
【0007】
本発明の貨物運搬用船舶の好ましい態様は、次の通りである。
(1)貨物積載用デッキがコンテナ積載用デッキである。
(2)操舵室が船尾に備えられ、一方、デッキの船首には開閉可能な出入口が設けられていて、この開閉可能な出入口と操舵室と空間部とを連結している開閉可能な出入口とが空間部を介して通行可能にされている。
(3)操舵室が船首に備えられていて、操舵室と空間部とを連結している開閉可能な出入口とエンジン駆動部とが空間部を介して通行可能とされている。
(4)貨物積載用デッキに貨物運搬用クレーンが搭載されている。
(5)燃料タンクが空間部の左舷側及び右舷側の両側の対向する位置のそれぞれに設けられている。
(6)燃料タンクが、空間部の左舷側及び右舷側の一方に設けられていて、その燃料タンクが設けられている位置と対向する位置にバラストタンクが設けられている。
(7)空間部の左舷側及び右舷側の両側の対向する位置のそれぞれにバラストタンクが設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の貨物運搬用船舶では、操舵室とエンジン駆動部及び燃料タンクが収容された船殻内の空間部とが開閉可能な出入口を介して連結しているので、船殻外に出ることなく操舵室とエンジン駆動部及び燃料タンクとの間を移動することができる。すなわち、本発明の貨物運搬用船舶では、操舵室からエンジン駆動部や燃料タンクへのアクセスが容易で、かつコンテナ積載スペースを狭くする要因の一つとなる通路をデッキ上面に設けることを特には必要とはしない。また、荒天時における乗務員の船舶中の安全な移動が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の貨物運搬用船舶を、添付図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明に従う貨物運搬用船舶の一例の外観図であって、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
図2は、
図1の部分線断面図であって、(a)は
図1(b)中のI−I線断面図であり、(b)は
図1(a)中のII−II線断面図であり、(c)は
図1(b)中のIII−III線断面図である。
【0011】
図1及び
図2に示すように、本発明の貨物運搬用船舶は、船殻11の上面に操舵室12と貨物積載用デッキ13とを備えている。船殻11は、密閉構造となるように構成されている。船殻11の内部には、船倉部は設けられておらず、エンジン駆動部22及び燃料タンク23を収容する空間部21のみが設けられている。操舵室12は、その内に設けられた開閉可能な出入口14を介して空間部21に連結しており、梯子29を使用して空間部21内を昇降できるようになっている。貨物積載用デッキ13の上には、コンテナ16が積載されている。但し、本発明の貨物運搬用船舶において、貨物積載用デッキ13の上に積載する貨物に特には制限はない。例えば、コンテナに収容されていない、橋梁ブロックなどの大型構造物を積載してもよい。
【0012】
図1及び
図2に示す貨物運搬用船舶では、さらにデッキ13の船首に開閉可能な船首出入口15が設けられている。船首出入口15からは梯子29aを使用して空間部21内に昇降できるようになっている。すなわち、船首出入口15と操舵室内の出入口14とは、空間部21を介して通行可能となっている。船首出入口15を設けることによって、貨物運搬用船舶を接岸させる際など、船殻外に出ずに、操舵室から船首にまで空間部21を通って移動することができる。
【0013】
船殻内の空間部21の左右両舷の両側には、燃料タンク23及びバラストタンク24を対向する位置のそれぞれに設けることが好ましい。
図2においては、(b)に示すように、燃料タンク23を左舷船尾に設けて、対向する右舷船尾にはバラストタンク24を設けている。ここで、燃料タンク23及びバラストタンク24の配置位置は、一例を示したに過ぎず、燃料タンク及びバラストタンクがそれぞれ左舷側及び右舷側の両側に対向する位置関係で配置されていれば、これらの配置位置に特には制限はない。例えば燃料タンクを左舷側及び右舷側の両側の対向する位置のそれぞれに設けてもよいし、燃料タンクを右舷側に設けて、バラストタンクを左舷側に設けてもよい。また、燃料タンクを中央に設けて、バラストタンクを左右両舷の両側の対向する位置のそれぞれに設けてもよい。
【0014】
エンジン駆動部22は、
図2に示す例では、左右中央の船尾側に配置されているが、エンジン駆動部の配置場所に特には制限はない。
【0015】
船殻内の空間部21には、船殻の強度を向上させるため、補強板を設けることが好ましい。
図2においては、(b)及び(c)に示すように、燃料タンク23及びバラストタンク24の空間部21側の面に、船舶の長手方向に沿って配置された空間部の床と天井とをつなぐ長手方向補強用綱板25、そして燃料タンク23とバラストタンク24及びバラストタンク24とバラストタンク24との間に配置された船殻内壁と長手方向補強用綱板25とをつなぐ横手方向補強用綱板26を設けている。
【0016】
空間部21は、
図2(a)及び(b)に示すように、通行可能な間仕切り27を設けて幾つかの部屋に仕切って、その区切られた一つの空間を居住室28として利用することが好ましい。また、空間部21には、乗務員の日常生活に必要な飲料や食料を貯蔵しておくことが好ましい。
【0017】
空間部21には、船舶の復原性能を向上させるため、船舶の前後方向及び左右方向の傾斜をそれぞれ検出し、その検出された傾斜の度合いに応じてバラストタンク24内に海水を注水あるいは排水して、バラストタンク24内の海水の量を調整することによって、船舶の傾斜を減少させる傾斜調整装置(図示せず)が設けられていることが好ましい。
【0018】
図1及び
図2に示した本発明の貨物運搬用船舶においては、操舵室が船尾に備えられている例を示したが、操舵室の設置場所には特に制限はなく、操舵室を船首に設けることも可能である。操舵室が船首に備えられている本発明に従う貨物運搬用船舶の一例を、添付図面の
図3と
図4に示す。
図3は、貨物運搬用船舶の外観図であって、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
図4は、
図3の部分線断面図であって、(a)は
図3(b)中のIV−IV線断面図であり、(b)は
図3(a)中のV−V線断面図であり、(c)は
図3(b)中のVI−VI線断面図である。
【0019】
図3及び
図4に示す貨物運搬用船舶においては、船首に操舵室32が設けられていること、貨物積載用デッキ33にコンテナ運搬用クレーン35が搭載されていて、船殻内の空間部41にクレーン用支柱42が設けられていること以外は、
図1及び
図2に示した貨物運搬用船舶と同一の構成であるので、同一部分には、同一符号を付して説明は省略する。
【0020】
図3及び
図4に示す貨物運搬用船舶は、操舵室32が船首に備えられていて、操舵室32と空間部41とを連結している開閉可能な出入口34とエンジン駆動部22とが空間部を介して通行可能とされている。操舵室を船首に設けることによって、デッキ部に操舵室の高さを超える高さにコンテナを積載することが可能となる。また、操舵室の出入口とエンジン駆動部とが空間部を介して通行可能とされていることによって、運航中に、エンジン駆動部22に異常が起きた場合でも、船殻外に出ることなく、空間部41を通って迅速にエンジン駆動部にまで移動することができる。
【0021】
さらに、
図3及び
図4に示す貨物運搬用船舶は、デッキにコンテナ運搬用クレーン35を搭載しているので、ガントリークレーンなどのコンテナ運搬用クレーンを有しない小規模の港湾施設においても、コンテナの荷積みや荷卸しを容易に行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に従う貨物運搬用船舶の一例の外観図であって、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【
図2】
図1の部分線断面図であって、(a)は
図1(b)中のI−I線断面図であり、(b)は
図1(a)中のII−II線断面図であり、(c)は
図1(b)中のIII−III線断面図である。
【
図3】本発明に従う貨物運搬用船舶の別の一例の外観図であって、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【
図4】
図3の部分線断面図であって、(a)は
図3(b)中のIV−IV線断面図であり、(b)は
図3(a)中のV−V線断面図であり、(c)は
図3(b)中のVI−VI線断面図である。
【0023】
11 船殻
12 操舵室
13 貨物積載用デッキ
14 出入口
15 船首出入口
16 コンテナ
21 空間部
22 エンジン駆動部
23 燃料タンク
24 バラストタンク
25 長手方向補強用綱板
26 横手方向補強用綱板
27 間仕切り
28 居住室
29、29a 梯子
31 船殻
32 操舵室
33 貨物積載用デッキ
34 出入口
35 コンテナ運搬用クレーン
41 空間部
42 クレーン用支柱