【課題を解決するための手段】
【0007】
  この目的は、農業、林業、および園芸に適用される移動式、特に手持ち式または持ち運び可能な作業機用の前記駆動機構であって、電動モータと、電気エネルギー貯蔵手段と、前記エネルギー貯蔵手段から供給を受ける前記電動モータ用の制御装置とを備え、前記電動モータが当該電動モータが消費する電流と、当該電動モータの出力シャフトの回転速度との間に特定の、特に線形の特性曲線を有し、前記制御装置が、前記電動モータを過負荷から保護するために、前記電動モータを流れる前記電流を最大値に制限する電流制限手段を有する前記駆動機構において、前記制御装置が低回転速度領域における前記電動モータの電流消費量を、前記電動モータの前記特性曲線がこれらの回転速度に対して与える特性曲線値よりもかなり小さい値に制限することによって達成される。
【0008】
  電動モータは一般に、低回転速度で高い電流消費量を示し、高回転速度で低い電流消費量を示す特性曲線を有している。この場合、電流消費量が高いということはまた一般的に、電動モータが発するトルクも高いということを意味している。
  これに対し、内燃機関は低回転速度で比較的低いトルクを示し、中間回転速度領域で比較的高いトルクを示し、かつ高回転速度領域で比較的低いトルクを示す特性曲線を有している。
【0009】
  一般に、電動モータの低回転速度領域で高いトルクを示す特性は全面的に望ましい。
  しかしながら、本発明は電流消費量を特に低回転速度領域において全体的に、つまり他のパラメータとは無関係に制限することを提案する。換言すると、制御装置は電動モータに新規な特性曲線を付与し、この特性曲線によって低回転速度領域における電流消費量が低減される。
【0010】
  この結果、作業機が低回転速度領域において供給するトルクは、使用される電動モータによって供給可能なトルクよりも一般に低くなる。これは一見不利であるように見えるが、一連の利点を伴う。
  農業、林業、および園芸に適用される作業機において、作業機は大抵の場合、基本回転速度に設定される。次いで電動モータにかかる負荷は、特に例えばユーザの動作の変化や状態の変化(例えば枝の太い/細いなど)に起因して、連続的に変化する。
【0011】
  負荷が大きく増加すると、モータの回転速度が減少する。その結果、電流がかなり大幅に増加し、よって電流消費量がかなり高くなる。これによって持ち運び可能なエネルギー貯蔵手段の動作時間が減少し、モータの効率もまた低減される。
  低回転速度領域における「動的な」電流制限の結果、このような状況下での電流消費量が低減される。これよってエネルギー貯蔵手段の動作時間が長くなる。ユーザもまた、作業機に過大な力をかけると、より良好な「フィードバック」を受ける。従来の電動モータ付駆動機構の場合、電動モータは低回転速度領域においてより高いトルクを発生していたため、このことはユーザにとってそれほど明白ではなかった。これに対し、本発明による駆動機構を備えた作業機のユーザは自身の行った動作に対してより良好な反応を受ける。
【0012】
  概して、これにより電動モータの急速すぎる過熱を防ぐことができる。従来のように電流を最大値に制限する代わりに、電流消費量を全体的に制限することが可能である。しかしながら、例えばヒュージブルリンク等、電動モータの過負荷を防止するために追加の電流制限デバイスが設けられてもよいことは言うまでもない。しかしながら、この種の追加の電流制限デバイスの最大電流は一般に、本発明の全体的な電流制限手段によって許容される最大電流よりも高い。
【0013】
  この場合、本発明によると、電流消費量は低回転速度領域において回転速度に応じて制限される。換言すると、この低回転速度領域内での電流消費量は、単一の固定電流値に制限されない。その代わり、この回転速度領域内での電流制限に、回転速度が異なれば強度が異なるという特性を付与することができる。その結果、この様にして生じた制御特性曲線は低回転速度領域において非ゼロ勾配を有するか、または勾配の異なる複数の部分を有することが可能である。この回転速度領域において非線形制御特性曲線部を実現することも可能である。
【0014】
  さらに本発明は、作業機の電力特性を用途に応じて最適化するよう設定することが可能である。
  前記目的はまた、電動モータの対応する制御方法および本発明による駆動機構を備えた手持ち式作業機によっても達成される。
  上述の通り、低回転速度領域における電流消費量は全体的、つまり前記駆動機構の他の動作パラメータとはほぼ無関係に制限される。
【0015】
  特に、前記電流消費量は、前記電動モータの温度とは無関係に全体的に制限される必要がある。
  さらに好ましい実施形態によると、前記制御装置は前記電動モータの前記特性曲線によってあらかじめ規定される前記回転速度領域を少なくとも3つの複数の回転速度領域に分割し、前記電動モータの前記特性曲線よりも勾配の緩い(浅い)制御特性曲線部が少なくとも中間回転速度領域に形成される。
【0016】
  本実施形態においては、「動的な」電流制限が、中間回転速度領域におけるのと同程度に早く確立される。
  その結果、制御装置の中間回転速度領域における制御特性曲線を、例えば定性的および/または定量的に内燃機関の特性曲線に一致させることが可能となる。これにより特定の種類の作業機を、本発明による駆動機構による駆動または内燃機関を備えた駆動機構による駆動の別にかかわりなく動作させることが可能となる。したがってユーザは、異なった種類の動作に備える必要がなくなる。
【0017】
  ここで、前記中間回転速度領域における前記制御特性曲線部よりも勾配の緩い制御特性曲線部が前記低回転速度領域に形成されると特に有利である。
  これにより、低回転速度において中間回転速度におけるよりもさらに強度の動的な電流制限を実現することができる。
  さらに、電流制限を一つの制御特性曲線部から他の制御特性曲線部へほぼ連続的に変化させることが可能となる。安定した制御曲線プロフィルを形成することができ、その結果作業機の円滑動作が可能となる。
【0018】
  特に好ましい実施形態によると、前記制御曲線部の前記勾配は前記低回転速度領域においてゼロである。
  この様にして電流を超低回転速度領域においてかなり厳密に制限することができ、こうしてモータの過負荷や持ち運び可能なエネルギー貯蔵手段からの過剰電力引き出しに対抗することができる。
【0019】
  制御特性曲線部は通常、任意の所望の形状を取ることが可能であるが、いずれの場合も線形であることが好ましい。一般に、制御特性曲線領域は正の勾配かまたはゼロ勾配を有することが好ましい。しかしながら、超低回転速度領域において負の勾配を有する制御特性曲線部を形成することも一般的に可能である。
  また、概して、電流消費量は高回転速度領域において実質的に制限されないことが好ましい。
【0020】
  この領域で提供されるトルクは、いずれにしても低電流のため、より正確には電動モータの特性曲線のため比較的低いので、この回転速度領域では電流消費量を制限しないことが好ましい。
  概して、前記制御装置は少なくとも前記低回転速度領域における前記電動モータの前記電流消費量を、前記電動モータの前記特性曲線がこれらの回転速度に与える特性曲線値よりも少なくとも20%低い値に全体的に制限することが好ましい。
【0021】
  この結果、エネルギーはこの回転速度領域において効果的に節減される。  
  概して、制御特性曲線は作業機の各用途に合わせ、電動モータが同一でも作業機が異なれば異なった制御特性曲線が与えられるようにすることが好ましい。
  また、電流制限を電圧調整に基づき行うことも好ましい。この場合、制御変数として、計測された回転速度かまたは各電動モータに固有の特性図のいずれかを用いることができる。
【0022】
  本発明による方法において、前記電流は効率最適化のために制限されることが好ましい。換言すればこれは、この種の電流制限によって手持ち式作業機の全体的な効率が改善され、その結果、所定の充電池による充電で概ねより長い動作時間が達成できるということを意味している。
  さらにユーザを、最適効率かまたはそれに近い効率で作業機を操作するように、電流制限およびトルクプロフィルを用いて「制御」することが可能である。
【0023】
  さらに好ましい実施形態によると、電流制限により生じる前記制御特性曲線は、電流が制限される領域にヒステリシス部を包含している。
  言い換えると、ヒステリシス部内の電流は回転速度が増加するか減少するかにより異なる方法で制限される。
  この場合、前記回転速度の増加時に比較的高い電流が消費され、かつ前記回転速度の減少時に比較的低い電流が消費されるよう前記ヒステリシス部が設計されていると特に有利である。
【0024】
  換言すればこの結果、回転速度の減少時に(例えば高負荷などにより)電流消費量をかなり大幅に抑えることができ、相当なエネルギー節減を行うことができる。
  一方、例えば前記電動モータの静止状態からの始動時など回転速度が増加する場合、高始動トルクが望ましい用途(例えば電動鋸または刈り込み鋏)もある。そのため、回転速度の増加時に電流がほんのわずかだけ制限される。
【0025】
  さらに別の実施形態によると、前記電流制限により生じる前記制御特性曲線は、電流が制限される領域に負の勾配を有する部分を包含している。
  この実施形態において制御特性曲線は、一般に中間回転速度領域においてさえ最大トルクを有し、特に低回転速度領域においては低トルクのみを提供することが可能な内燃機関の典型的な特性曲線に、さらにはっきりと近似している。
【0026】
  この措置により、手持ち式作業機の動作を内燃機関による駆動または電動モータによる駆動の別にかかわらず、ユーザにとって概ね同様とすることができる。
  あるいは、前記電流制限により生じる前記制御特性曲線は、電流が制限される領域に、前記電動モータの静止状態からの始動時に極めて高い電流が消費される始動部を包含することも可能である。
【0027】
  前述したように、この様にして発生した始動トルクが用途によっては極めて有利である場合もある。一般に、始動部はかなり狭く設計することが可能であり、その結果高始動トルクが実際には超低回転速度領域においてのみ提供されるが、電流の制限は制御特性曲線部の他のすべての回転速度領域において効率が最適化されるように行われる。
  電流消費量は電動モータの回転速度に応じて制限されるが、電動モータの回転速度は例えば回転速度センサによって計測可能である。
【0028】
  ただし、前記回転速度は電動モータが消費する電圧および/または電流などの前記電動モータの電気的変数から導出されることが好ましい。
  本実施形態においては別体の回転速度センサを必要としない。
  前記特徴および以下に説明する特徴を、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれ記載した組み合せのみならず他の組み合せにおいても、または単独ででも用いることができることは言うまでもない。