(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671213
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】金属ガラス層への導線の接合方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/607 20060101AFI20150129BHJP
H04R 19/00 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
H01L21/607 B
H04R19/00
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2009-44049(P2009-44049)
(22)【出願日】2009年2月26日
(65)【公開番号】特開2010-199387(P2010-199387A)
(43)【公開日】2010年9月9日
【審査請求日】2012年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】503032430
【氏名又は名称】竹本 正
(73)【特許権者】
【識別番号】509057408
【氏名又は名称】西川 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(72)【発明者】
【氏名】佐名川 佳治
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅男
(72)【発明者】
【氏名】酒井 孝昌
(72)【発明者】
【氏名】竹本 正
(72)【発明者】
【氏名】西川 宏
(72)【発明者】
【氏名】福原 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 明久
【審査官】
宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−202350(JP,A)
【文献】
特開2001−330627(JP,A)
【文献】
特開2008−214704(JP,A)
【文献】
特開2004−066294(JP,A)
【文献】
特公平02−032077(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ガラス層に導線を接合する金属ガラス層への導線の接合方法であって、金属ガラス層における接合表面に対して導線を押し付け導線に超音波エネルギを与えることにより金属ガラス層と導線とを接合するようにし、導線としてボンディングワイヤを用い、金属ガラス層と導線との接合を超音波ワイヤボンディングにより行うようにし、金属ガラス層がZrまたはTiを成分として含む金属ガラス層であり、ボンディングワイヤとしてAl系ボンディングワイヤを用いることを特徴とする金属ガラス層への導線の接合方法。
【請求項2】
金属ガラス層に導線を接合する金属ガラス層への導線の接合方法であって、金属ガラス層における接合表面に対して導線を半田により接合するようにし、導線における接合部位を囲んでいる半田に超音波エネルギを与えることにより金属ガラス層と導線とを半田により接合することを特徴とする金属ガラス層への導線の接合方法。
【請求項3】
金属ガラス層と導線とを接合する前に、金属ガラス層における接合表面の酸化物を除去することを特徴とする請求項1または請求項2記載の金属ガラス層への導線の接合方法。
【請求項4】
金属ガラス層と導線とを接合する前に、金属ガラス層における接合表面にアンカー効果促進用の凹凸形状を形成することを特徴とする請求項1または請求項2記載の金属ガラス層への導線の接合方法。
【請求項5】
金属ガラス層と導線との接合を還元雰囲気で行うことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の金属ガラス層への導線の接合方法。
【請求項6】
金属ガラス層に導線を接合する金属ガラス層への導線の接合方法であって、金属ガラス層における接合表面に対してアルミニウム膜を形成してから、当該アルミニウム膜の表面にアルミニウム系ボンディングワイヤもしくは金ボンディングワイヤもしくは銅ボンディングワイヤからなる導線を押し付け導線に超音波エネルギを与えることにより金属ガラス層と導線とを接合することを特徴とする金属ガラス層への導線の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ガラス層への導線の接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、金属ガラス層(金属ガラス薄膜、金属ガラス基板など)を用いた金属ガラス応用デバイスとして、例えば、圧力センサ、MEMS(micro electro mechanical systems)スイッチ、静電アクチュエータ、水素検知素子、キャパシタなどが各所で研究開発され(例えば、特許文献1〜6)、また、金属ガラス基板同士の接合方法が各所で研究開発されている(例えば、特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−45048号公報
【特許文献2】特開2008−155333号公報
【特許文献3】特開2009−10027号公報(段落〔0009〕−〔0025〕)
【特許文献4】特開2005−153110号公報(段落〔0009〕−〔0029〕)
【特許文献5】特開2008−8869号公報
【特許文献6】特開2005−123235号公報(段落〔0016〕−〔0025〕)
【特許文献7】特開2008−214704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金属ガラス層は導電性を有しているので、配線用の導線を金属ガラス層に接合して電気的に接続することが考えられるが、金属ガラスに導線を接合する技術については開発されていなかった。ここにおいて、金属ガラスは強力な表面酸化皮膜を有しており、低温での接合が難しい難低温接合性の材料であり、金属ガラスに導線を半田付けする実験を行ったが、金属ガラスは、Zr,Ti,Alなどの、安定な酸化物を形成する元素が添加されており、良好な濡れ性を得ることが不可能であった。
【0005】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、金属ガラス層に導線を安定して接合することができる金属ガラスへの導線の接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、金属ガラス層に導線を接合する金属ガラス層への導線の接合方法であって、金属ガラス層における接合表面に対して導線を押し付け導線に超音波エネルギを与えることにより金属ガラス層と導線とを接合す
るようにし、導線としてボンディングワイヤを用い、金属ガラス層と導線との接合を超音波ワイヤボンディングにより行うようにし、金属ガラス層がZrまたはTiを成分として含む金属ガラス層であり、ボンディングワイヤとしてAl系ボンディングワイヤを用いることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、導線に超音波エネルギを与えることによって金属ガラス層における接合表面の酸化物が超音波振動により除去され(導線の材料によっては導線における接合表面の酸化物も超音波振動により除去され)、直接結合や、金属ガラス層の接合表面への導線のアンカー効果(機械的嵌合力の増大により密着度を向上させる働き)が促進されるから、金属ガラス層に導線を安定して接合することができる。
【0009】
また、この発明によれば、金属ガラス層において導線との所望の接合強度を確保するために必要な接合面積を小さくすることができる。
【0011】
また、この発明によれば、常温下での超音波振動により金属ガラス層の接合表面の酸化物が容易に除去され、金属ガラス層と導線とが、より強固に接合される。さらに、Al系ボンディングワイヤおよび金属ガラス層の親和力の高い成分間の直接結合、金属間化合物生成による金属接合や、Al系ボンディングワイヤと金属ガラス層の接合表面における金属ガラスの酸化物との反応により生成される複合酸化物による接合も行われる。
【0012】
また、この発明によれば、酸化されやすく安定な酸化皮膜を有する金属ガラス層に対して常温で導線を接合することができるので、金属ガラス層を結晶化させることなく接合できる。
【0013】
請求
項2の発明は、金属ガラス層に導線を接合する金属ガラス層への導線の接合方法であって、金属ガラス層における接合表面に対して導線を半田により接合するようにし、導線における接合部位を囲んでいる半田に超音波エネルギを与えることにより金属ガラス層と導線とを半田により接合することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、半田に超音波エネルギを与えることによって金属ガラス層における接合表面の酸化物が超音波振動により除去され、かつ、金属ガラス層の接合表面への半田のアンカー効果が促進されるから、金属ガラス層に導線を安定して接合することができる。
【0015】
請求
項3の発明は、請求項
1または請求
項2の発明において、金属ガラス層と導線とを接合する前に、金属ガラス層における接合表面の酸化物を除去することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、金属ガラス層と導線との接合前に、金属ガラス層における接合表面の酸化物が除去されるので、金属ガラス層と導線との良好な接合を得ることができるとともに、超音波エネルギを与える時間の短縮を図れる。
【0017】
請求
項4の発明は、請求項
1または請求
項2の発明において、金属ガラス層と導線とを接合する前に、金属ガラス層における接合表面にアンカー効果促進用の凹凸形状を形成することを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、金属ガラス層と導線との接合前に、金属ガラス層における接合表面にアンカー効果促進用の凹凸形状が形成されるので、接合時のアンカー効果が促進され、金属ガラス層と導線との良好な接合を得ることができるとともに、超音波エネルギを与える時間の短縮や超音波のパワーの低減を図れる。
【0019】
請求
項5の発明は、請求項1ないし請求
項4の発明において、金属ガラス層と導線との接合を還元雰囲気で行うことを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、接合時の表面酸化物の形成が抑制され、金属ガラス層と導線との良好な接合を得ることができる。
【0021】
請求
項6の発明は、金属ガラス層に導線を接合する金属ガラス層への導線の接合方法であって、金属ガラス層における接合表面に対してアルミニウム膜を形成してから、当該アルミニウム膜の表面にアルミニウム系ボンディングワイヤもしくは金ボンディングワイヤもしくは銅ボンディングワイヤからなる導線を押し付け導線に超音波エネルギを与えることにより金属ガラス層と導線とを接合することを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、金属ガラス層との親和性が高い材料(金属間化合物を形成しやすい材料、もしくは、金属ガラスの酸化物と反応しやすい材料)により形成され、且つ、導線と接合可能なアルミニウム膜を金属ガラス層の接合表面に形成してから、当該アルミニウム膜の表面にアルミニウム系ボンディングワイヤもしくは金ボンディングワイヤもしくは銅ボンディングワイヤからなる導線を押し付け導線に超音波エネルギを与えることにより金属ガラス層と導線とを接合するので、金属ガラス層に導線を安定して接合することができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項
1,2,6の発明では、金属ガラス層に導線を安定して接合することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態の金属ガラス層への導線の接合方法の説明図である。
【
図2】同上における金属ガラス応用デバイスの一例を示す概略断面図である。
【
図3】同上の金属ガラス層への導線の接合方法の他の例の説明図である。
【
図4】同上の金属ガラス層への導線の接合方法の別の例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本実施形態では、金属ガラス層を備えた金属ガラス応用デバイスの一例として、
図2に示す構成の静電容量型トランスデューサについて説明してから、金属ガラス層への接合方法について説明する。
【0026】
図2に示す構成の静電容量型トランスデューサは、静電容量型のマイクロホンであって、金属ガラス基板1を用いて形成され当該金属ガラス基板1の一表面側(
図2における上面側)に可動電極14を兼ねるダイヤフラム部11が形成されたトランスデューサ用基板Aと、トランスデューサ用基板Aに矩形枠状の絶縁層からなるスペーサ30を介して対向配置されたシリコン窒化膜からなる固定板部20と、固定板部20における可動電極14側に形成された固定電極24とを備え、固定板部20と固定電極24との積層体からなる固定電極部には当該固定電極部と可動電極14との間の空間と当該固定電極部における当該空間側とは反対側の外部空間とを連通させる複数のアコースティックホール(図示せず)が貫設されている。なお、本実施形態では、金属ガラス基板1が金属ガラス層を構成している。
【0027】
上述のトランスデューサ用基板Aは、ダイヤフラム部11の平面形状が矩形状(本実施形態では、正方形状)であり、全周が矩形枠状のフレーム部13に連続一体に連結されている。なお、トランスデューサ用基板Aのダイヤフラム部11は、金属ガラス基板1の他表面に凹所5を設けることにより形成されている。
【0028】
上述の静電容量型トランスデューサでは、可動電極14と固定板部20に設けられた固定電極24とでコンデンサが形成されるから、ダイヤフラム部11が音波の圧力を受けることにより可動電極14と固定電極24との間の距離が変化し、コンデンサの静電容量が変化する。したがって、可動電極14を兼ねるダイヤフラム部11に連続一体のフレーム部13の一部をパッド部として、当該パッド部と固定電極24に配線25を介して電気的に接続されたパッド26との間に直流バイアス電圧を印加しておけば、上記パッド部とパッド26との間には音波の圧力に応じて微小な電圧変化が生じるから、音波を電気信号に変換することができる。また、上述の静電容量型トランスデューサは、上記固定電極部に上記アコースティックホールが形成されているので、例えばダイヤフラム部11が音波の圧力を受けて振動する際に上記空間の媒質である空気により過度に制動を受けないようにすることができ、広い周波数帯域にわたる平坦な周波数特性と広いダイナミックレンジとを得ることが可能となる。
【0029】
また、上述の静電容量型のマイクロホンでは、ダイヤフラム部11が金属ガラス基板1の一部により構成されてい
る。
ここにおいて、金属ガラス層たる金属ガラス基板1の材料である金属ガラスとしては、Cuを主成分とする金属ガラス(Cu
60Zr
30Ti
10またはCu
45Zr
35Al
15Ag
5)やNiを主成分とする金属ガラス(Ni
60Nb
20Ti
10Zr
10)を採用しているが、これに限らず、金属ガラス層の所望の特性に応じて、例えば、Zr、Ti、Fe、Ni、Pdなどのいずれかを主成分とする金属ガラスを採用してもよい。
【0030】
ところで、上述の静電容量型トランスデューサは、例えば、
図1に示すように、ガラスエポキシ樹脂などからなる絶縁性基材41の一表面側に静電容量型トランスデューサに電気的に接続される導体パターン42,43が形成された実装基板40に実装して用いる。
【0031】
ここにおいて、実装基板40は、静電容量型トランスデューサの金属ガラス基板1の凹所5に対応する部位に音波導入用の開口部45が形成されており、静電容量型トランスデューサは、金属ガラス基板1の上記他表面がダイボンド材(例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂など)からなる接合部70を介して絶縁性基材41と接合され、フレーム部13の上記一部からなる上記パッド部がボンディングワイヤからなる導線(第1の導線)2を介して実装基板40の一方の導体パターン42と電気的に接続され、パッド26が図示しないボンディングワイヤからなる第2の導線を介して実装基板40の他方の導体パターン43と電気的に接続される。
【0032】
以下、金属ガラス層たる金属ガラス基板1に導線2を接合する金属ガラス基板1への導線2の接合方法について
図1を参照しながら説明する。
【0033】
本実施形態では、
図1に示すように、金属ガラス基板1における接合表面(上記パッド部の表面)に対して導線2を押し付け導線2に超音波ツール3から超音波エネルギを与えることにより金属ガラス基板1と導線2とを接合するようにしている。
【0034】
ここにおいて、本実施形態では、導線2としてボンディングワイヤを用い、金属ガラス基板1と導線2との接合を超音波ワイヤボンディングにより行うようにしているので、金属ガラス基板1において導線2との所望の接合強度を得るために必要な接合面積(上記パッド部とみなす部分の表面積
)を小さくすることができる。また、導線2たるボンディングワイヤとしては、Al系ボンディングワイヤを用いており、常温下での超音波振動により金属ガラス基板1の接合表面1aの酸化物(酸化皮膜)が容易に除去され、金属ガラス基板1と導線2とが、より強固に接合される。また、本実施形態では、Al系ボンディングワイヤからなる導線2および金属ガラス基板1の親和力の高い成分同士の直接結合、金属間化合物生成による金属接合や、Al系ボンディングワイヤからなる導線2と金属ガラス基板1の接合表面における金属ガラスの酸化物との反応により生成される複合酸化物による接合も行われる。また、酸化されやすく安定な酸化皮膜を有する金属ガラス基板1に対して常温で導線2を接合することができるので、金属ガラス基板1を結晶化させることなく接合できる。ここで、Al系ボンディングワイヤとしては、例えば、1%Si−Al線や、1%Mg−Al線などで、線径が100μm〜300μmのものを用いればよい。このようにAl系ボンディングワイヤを用いる場合には、上述の超音波ツール3として、周知のウェッジツールを用いればよく、超音波ツール3に超音波を水平方向に印加して超音波振動を付加することにより、導線2に超音波エネルギを与えればよい。この場合の接合条件は、例えば、超音波のパワーを2〜4W、超音波の周波数を20〜100kHz、荷重を1.96〜3.92N、超音波の印加時間を100〜500ms、それぞれの範囲で適宜設定し、接合温度を常温とすればよい。ここで、接合強度は、ワイヤプル試験により評価し、2.5〜5.0N程度で導線2は破断するが、導線2と金属ガラス基板1との接合界面での破断は起こらず、強固な接合が得られていることが確認された。なお、Al系ボンディングワイヤは、Alの純度が高くなるほど硬度が小さくなるので、Alの純度が高いAlボンディングワイヤを用いる場合には、アンカー効果が期待され、また、1%Si−Alボンディングワイヤや、1%Mg−Alボンディングワイヤなどの硬度が大きなAl系ボンディングワイヤを用いる場合には、複合酸化物あるいは金属ガラス基板1の接合表面1aの酸化皮膜の除去効果が期待される。
【0035】
以上説明した本実施形態の金属ガラス基板1への導線2の接合方法では、導線2に超音波エネルギを与えることによって金属ガラス基板1における接合表面1aの酸化物が超音波振動により除去(破壊)され(導線2の材料によっては導線2における接合表面の酸化物が超音波振動により除去され)、直接結合や、金属ガラス基板1の接合表面1aへの導線2のアンカー効果が促進されるから、金属ガラス基板1に導線2を安定して接合することができる(強固に接合することができる)。また、導線2としてAl系ボンディングワイヤを用いることにより、難低温接合性の金属ガラス基板1のガラス転移温度未満で当該金属ガラス基板1の特性を損なうことなく、100〜500ms程度の極短時間の接合時間(ここでは、超音波の印加時間と同じ)で強度の高い接合を実現できる。
【0036】
ところで、金属ガラス層たる金属ガラス基板1への導線2の接合方法としては、
図3に示すように、金属ガラス基板1における接合表面1aに対して導線2を半田80により接合するようにし、導線2における金属ガラス基板1との接合部位(導線2における実装基板40側の端部とは反対側の端部であって金属ガラス基板1の厚み方向で金属ガラス基板1の接合表面1aに重なっている部位)を囲んでいる半田80に超音波ツール3から超音波エネルギを与えることにより金属ガラス基板1と導線2とを半田80により接合する方法もある。ここにおいて、接合条件としては、半田80として例えばSn−Zn−Sb系半田を用い、超音波の周波数を20〜100kHz、接合温度を200〜300℃の範囲でそれぞれ適宜設定すればよい。
【0037】
金属ガラス基板1における接合表面1aに対して導線2を半田80により接合する接合方法によれば、半田80に超音波エネルギを与えることによって金属ガラス基板1における接合表面1aの酸化物が超音波振動により除去され、かつ、金属ガラス基板1の接合表面1aへの半田80のアンカー効果が促進されるから、金属ガラス基板1に導線2を安定して接合することができる(この場合、導線2は半田80と接合され、半田80が金属ガラス基板1の接合表面1aと接合されるので、導線2は半田80を介して金属ガラス基板1に接合される)。
【0038】
ところで、上述の接合方法において、金属ガラス層たる金属ガラス基板1と導線2とを接合する前に、金属ガラス基板1における接合表面1aの酸化物(酸化皮膜)を物理的処理(例えば、Arなどのプラズマ照射)や化学的処理(酸洗浄など)により除去するようにすれば、金属ガラス基板1と導線2との接合前に、金属ガラス基板1における接合表面1aの酸化物が除去されるので、金属ガラス基板1と導線2との良好な接合を得ることができるとともに、超音波エネルギを与える時間の短縮や超音波のパワーの低減を図れ、接合工程での静電容量型トランスデューサの破損をより確実に防止することが可能となる。なお、接合表面1aの酸化物を除去する物理的処理は、Arなどのプラズマ照射に限らず、金属ガラス応用デバイスの構造などに応じて適宜方法を採用すればよく、例えば、研削や研磨でもよい。
【0039】
また、上述の接合方法において、金属ガラス基板1と導線2とを接合する前に、金属ガラス基板1における接合表面1aにアンカー効果促進用の凹凸形状をスパッタ法などにより形成するようにすれば、金属ガラス基板1と導線2との接合前に、金属ガラス基板1における接合表面1aにアンカー効果促進用の凹凸形状が形成されるので、接合時のアンカー効果が促進され、金属ガラス基板1と導線2との良好な接合を得ることができるとともに、超音波エネルギを与える時間の短縮を図れ、接合工程での静電容量型トランスデューサの破損をより確実に防止することが可能となる。なお、アンカー効果促進用の凹凸形状を形成する方法はスパッタ法に限らず、金属ガラス応用デバイスの構造などに応じて適宜方法を採用すればよく、例えば、サンドブラストや研磨でもよい。
【0040】
また、以上説明した接合方法において、金属ガラス基板1と導線2との接合を還元雰囲気(例えば、水素雰囲気、窒素雰囲気、真空雰囲気、窒素ブロー状態)で行うようによれば、接合時の表面酸化物(例えば、金属ガラス基板1、導線2、半田80それぞれの表面酸化物)の形成が抑制され、金属ガラス基板1と導線2との良好な接合を得ることができる。
【0041】
ところで、金属ガラス層たる金属ガラス基板1への導線2の接合方法としては、
図4に示すように、金属ガラス基板1における接合表面1aに対してアルミニウム膜90を例えばスパッタ法により形成してから、当該アルミニウム膜90の表面にアルミニウム系ボンディングワイヤもしくは金ボンディングワイヤもしくは銅ボンディングワイヤからなる導線2を押し付け導線2に超音波エネルギを与えることにより金属ガラス基板1と導線2とを接合するようにしてもよい。この場合の接合条件は、上述の
図1の例と同様に、例えば、超音波のパワーを2〜4W、超音波の周波数を20〜100kHz、荷重を1.96〜3.92N、超音波の印加時間を100〜500ms、それぞれの範囲で適宜設定し、接合温度を常温とすればよい。
【0042】
この接合方法によれば、金属ガラス基板1との親和性が高い材料(金属間化合物を形成しやすい材料、もしくは、金属ガラスの酸化物と反応しやすい材料)により形成され、且つ、導線2と接合可能なアルミニウム膜(望ましくは、Siを添加したアルミニウム膜であるAl−Si膜や、Cuを添加したアルミニウム膜であるAl−Cu膜)90を金属ガラス基板1の接合表面1aに形成してから、当該アルミニウム膜90の表面にアルミニウム系ボンディングワイヤもしくは金ボンディングワイヤもしくは銅ボンディングワイヤからなる導線2を押し付け導線2に超音波エネルギを与えることにより金属ガラス基板1と導線2とを接合するので、金属ガラス基板1に導線2を常温で安定して接合することができる。ここで、金属ガラス基板1の接合表面1aにアルミニウム膜を形成する前に、金属ガラス基板1における接合表面1aにアンカー効果促進用の凹凸形状をスパッタ法などにより形成するようにしてもよい。
【0043】
なお、上述の実施形態では、金属ガラス基板1が金属ガラス層を構成しているが、金属ガラス層は、金属ガラス応用デバイスの構造に応じて適宜構成されるものであり、例えば、金属ガラス薄膜により構成されてもよい。また、金属ガラス応用デバイスは、静電容量型トランスデューサに限定するものではなく、例えば、圧力センサ、MEMSスイッチ、静電アクチュエータ、水素検知素子、キャパシタ、温度ヒューズ用抵抗(一定温度以上で結晶化してぼろぼろになる)などでもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 金属ガラス基板(金属ガラス層)
1a 接合表面
2 導線
3 超音波ツール
80 半田
90 アルミニウム膜