特許第5671215号(P5671215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671215
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】引き戸の自動閉扉装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 1/16 20060101AFI20150129BHJP
   E05F 3/14 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   E05F1/16 C
   E05F3/14
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2009-106919(P2009-106919)
(22)【出願日】2009年4月24日
(65)【公開番号】特開2010-255314(P2010-255314A)
(43)【公開日】2010年11月11日
【審査請求日】2012年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】風間 保夫
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−82922(JP,A)
【文献】 特開平11−152955(JP,A)
【文献】 特開2008−63764(JP,A)
【文献】 特開2003−301657(JP,A)
【文献】 実開昭62−131077(JP,U)
【文献】 特開平10−37592(JP,A)
【文献】 特開2009−228405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D15/00−15/58
E05F 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き戸の自動閉扉装置であって、
実質的に長さ方向へは伸びず、且つ、巻回が可能に柔軟とされた閉扉駆動用コードであって、当該閉扉駆動用コードを引き戸の開閉方向に延びるようにして、戸枠の上部枠部に沿って配置される閉扉駆動用コードであって、開扉位置側端部と閉扉位置側端部とを有する閉扉駆動用コードと、
該引き戸に固定される閉扉駆動装置であって、該引き戸に対する固定位置で引き戸の開閉方向に対して直交し水平に延びる軸線の周りで回転可能に取り付けられた回転部材と、該閉扉駆動用コードを該回転部材の周面に係合させ、該引き戸が開閉されるのに伴い該回転部材が該閉扉駆動用コード上で転動するようにする係合保持部材と、引き戸が閉扉位置から開扉位置に向けて動かされるときの該閉扉駆動用コードと該閉扉駆動装置との相対的動きに伴う該回転部材の該閉扉駆動用コード上での転動によって動かされ、該回転部材を該転動と反対方向に転動させるバネ付勢力を蓄勢するバネ部材を備えるバネ装置と、を有する閉扉駆動装置と
を有し、
引き戸が、その上縁面の該開閉方向における両端部近くにおいて該上縁面上に取り付けられた被ガイド部材を有し、該被ガイド部材が、引き戸の上縁面に対向して水平に延びるように戸枠の上部枠部に設けられたガイド部材に係合して、引き戸が開閉されるときに該ガイド部材によって開閉方向に案内されるようにされており、
該閉扉駆動装置が、該引き戸の上縁面に形成された設定用凹部に嵌合設定されるようになされ、該閉扉駆動用コードが該戸枠の上部枠部に該ガイド部材に沿って配置され該開扉位置側端部及び閉扉位置側端部が該戸枠の上部枠部に取り付けるようになされ、
当該引き戸の自動閉扉装置が、更に、引き戸の該上縁面に設けられた各被ガイド部材に対応して該各被ガイド部材よりも該開閉方向における内側において該引き戸の該上縁面上に取り付けられ、該閉扉駆動装置から該開扉位置側端部及び該閉扉位置側端部に延びる閉扉駆動用コードにその下側から係合して上方へ持ち上げるコード持ち上げ部材を有する引き戸の自動閉扉装置。
【請求項2】
該コード持ち上げ部材が、引戸の上縁面に固定される支持部材と、該支持部材に支持され、引戸の開閉方向に対して直交する方向で水平に延びる軸線の周りに回転可能とされたローラを備え、該ローラが該閉扉駆動用コードにその下側から係合して上方へ持ち上げるようになされた請求項1に記載の引戸の自動閉扉装置。
【請求項3】
該閉扉駆動用コードがその長さ方向に沿って一定ピッチで設けられたラック歯を有し、該ローラの周面が該ラック歯に噛合するピッチで設けられた歯を有する請求項2に記載の引き戸の自動閉扉装置。
【請求項4】
該閉扉駆動装置が、ケーシングを有し、該ケーシングが該回転部材、該係合保持部材、及び該バネ装置を保持するようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の引き戸の自動閉扉装置。
【請求項5】
被ガイド部材が、該開閉方向における引戸の上部両端の隅部に形成された設定凹部に嵌合固定される基部と、該基部に支持されて該ガイド部材によって案内される上方位置と、該上方位置よりも下方の下方位置との間で変位可能な被ガイドバーとを有し、該コード持ち上げ部材の支持部材が該被ガイド部材の基部に固定されており、該基部を該引戸の設定凹部に嵌合固定することにより当該コード持ち上げ部材を設定するようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の自動閉扉装置。
【請求項6】
被ガイド部材が、該開閉方向における引戸の上部両端の隅部に形成された設定凹部に嵌合固定される基部と、該基部に固定された支持部材と、該支持部材に支持され、引戸の開閉方向に対して直交する方向で水平に延びる軸線の周りに回転可能とされ、該ガイド部材によって開閉方向に案内される戸車とを有し、該コード持ち上げ部材の支持部材が該被ガイド部材の基部に固定されており、該基部を該引戸の設定凹部に嵌合固定することにより当該コード持ち上げ部材を設定するようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の自動閉扉装置。
【請求項7】
該コード持ち上げ部材が、当該持ち上げ部材の支持部材に設定されて該ローラを回転可能に支持するリンク機構を有し、該リンク機構が、該コード持ち上げ部材が該引戸に取り付けられたときに引戸の上縁面の端部から引戸の開閉方向における外方に延出する設定部材を有し、該設定部材を該上縁面に沿って引戸の開閉方向における内方に押し込むことにより該リンク機構が立ち上がり、該ローラを所定の設定位置とするようにした請求項又はに記載の自動閉扉装置。
【請求項8】
該閉扉駆動用コードの該開扉位置側端部に連結されて引き戸の開閉方向で伸縮可能な部材を有し、該開扉位置端部が該伸縮可能な部材を介して該戸枠に取り付けられるようにした請求項1乃至7に記載の引き戸の自動閉扉装置。
【請求項9】
該伸縮可能な部材がコイルバネとされている請求項8に記載の引き戸の自動閉扉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は引き戸の自動閉扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
開扉した引き戸を自動的に閉扉する装置には、いくつかの形式があるが、その一つの形式としては、戸枠の上部水平枠部に水平に設定された直線状のラックと、引き戸に固定され、上記ラックと作用的に連結されて引き戸が開扉されたときに、該引き戸を閉扉するよう駆動する閉扉駆動装置とからなるものがある。具体的には、閉扉駆動装置は、引き戸に固定されるケーシングと、該ケーシングに回転自在に取り付けられ上記ラックと噛合されて引き戸を開閉することに伴ってラックに沿って転動する歯車と、該歯車との間に上記ラックを通して該ラックと上記歯車との噛合を維持するホルダーと、引き戸を開扉するときに上記歯車がラックに沿って転動することに伴い該引き戸を閉扉させるバネ付勢力を蓄勢するバネ装置と、開扉されて人の手が離された引き戸が上記バネ装置によって閉扉されるときに制動をかける制動装置を有する。
【0003】
この形式の自動閉扉装置では、通常、金属若しくは硬質プラスチックにより形成されるラックの可撓性を利用し、引き戸が開閉時に上下したとしても、それに応じて該ラックが撓んで歯車との噛合を維持し、引き戸の開閉に支障がないようにしている。
【0004】
しかし、この自動閉扉装置の円滑な作動を行うためには、直線状のラックを水平に設定することが基本的に必要であり、更に、歯車とホルダーとの間に該ラックを水平に通すように、歯車とホルダーとの間に形成されるラックを通すためのラック挿通路を水平になるようにして自動閉扉装置を引き戸に固定する必要がある。このため、その設定作業は難しい。
【0005】
これに対し、例えば、特開平11−152955には、閉扉駆動装置を既設の引き戸の外表面に取り付けるようにした自動閉扉装置であって、ラックの両端を上下動自在に取り付けるようにすることにより、ラックを厳密に水平に設定する必要のないようにした装置が開示されている。しかし、この種の装置においても、その作動を円滑なものにするためには、ラックとホルダーとの間に画定されるラック通路を水平にすることが必要とされ、その取り付けには熟練を要する。
【0006】
【特許文献1】特開平11−152955
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような点に鑑み、上記ラックに相当する部材(本発明では閉扉駆動用コードとしている)や閉扉駆動装置が水平に設定されなくとも、円滑な引き戸の開閉を行うことができるようにした引き戸の自動閉扉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
引き戸の自動閉扉装置であって、
実質的に長さ方向へは伸びず、且つ、巻回が可能に柔軟とされた閉扉駆動用コードであって、当該閉扉駆動用コードを引き戸の開閉方向に延びるようにして、戸枠の上部枠部に沿って配置される閉扉駆動用コードであって、開扉位置側端部と閉扉位置側端部とを有する閉扉駆動用コードと、
該引き戸に固定される閉扉駆動装置であって、該引き戸及に対する固定位置で引き戸の開閉方向に対して直交し水平に延びる軸線の周りで回転可能に取り付けられた回転部材と、該閉扉駆動用コードを該回転部材の周面に係合させ、該引き戸が開閉されるのに伴い該回転部材が該閉扉駆動用コード上で転動するようにする係合保持部材と、引き戸が閉扉位置から開扉位置に向けて動かされるときの該閉扉駆動用コードと該閉扉駆動装置との相対的動きに伴う該回転部材の該閉扉駆動用コード上での転動によって動かされ、該回転部材を該転動と反対方向に転動させるバネ付勢力を蓄勢するバネ部材を備えるバネ装置と、を有する閉扉駆動装置と
を有し、
引き戸が、その上縁面の該開閉方向における両端部近くにおいて該上縁面上に取り付けられた被ガイド部材を有し、該被ガイド部材が、引き戸の上縁面に対向して水平に延びるように戸枠の上部枠部に設けられたガイド部材に係合して、引き戸が開閉されるときに該ガイド部材によって開閉方向に案内されるようにされており、
該閉扉駆動装置が、該引き戸の上縁面に形成された設定用凹部に嵌合設定されるようになされ、該閉扉駆動用コードが該戸枠の上部枠部に該ガイド部材に沿って配置され該開扉位置側端部及び閉扉位置側端部が該戸枠の上部枠部に取り付けるようになされ、
当該引き戸の自動閉扉装置が、更に、引き戸の該上縁面に設けられた各被ガイド部材に対応して該各被ガイド部材よりも該開閉方向における内側において該引き戸の該上縁面上に取り付けられ、該閉扉駆動装置から該開扉位置側端部及び該閉扉位置側端部に延びる閉扉駆動用コードにその下側から係合して上方へ持ち上げるコード持ち上げ部材を有する引き戸の自動閉扉装置を提供する。
【0009】
この自動閉扉装置においては、閉扉駆動用コードがその長さ方向には実質的には伸びず、且つ、巻回が可能に柔軟とされているので、コードが水平に設定された状態で回転部材と係合されなくとも、該回転部材に係合されるコードに無理な力がかからず、また、回転部材のコード上での回転に支障となることもない。
【0010】
また、駆動用コードは、戸車のような被ガイド部材の引戸の閉扉方向での内側位置に隣接して設けられるコード持ち上げ部材によって持ち上げられるので、該コードと被ガイド部材とが係合しないようにすることが可能であり、引戸の閉扉操作を円滑に行うことを可能とする。
【0011】
コード持ち上げ部材は、引戸の上縁面に固定される支持部材と、該支持部材に支持され、引戸の開閉方向に対して直交する方向で水平に延びる軸線の周りに回転可能とされたローラを備え、該ローラが該閉扉駆動用コードにその下側から係合して上方へ持ち上げるようにすることができる。ローラを用いることにより、コードとコード持ち上げ部材との間の摩擦を少なくし、円滑で静かな開閉を可能とする。
【0012】
閉扉駆動用コードがその長さ方向に沿って一定ピッチで設けられたラック歯を有し、該ローラの周面が該ラック歯に噛合するピッチで設けられた歯を有するようにすることもできる。コードにラック歯を設けた場合には、ローラにこのような歯を設けることにより円滑で静かな開閉を可能とする。
【0013】
該閉扉駆動装置が、ケーシングを有し、該ケーシングが該回転部材、該係合保持部材、及び該バネ装置を保持するようにすることができる。これにより、当該閉扉駆動装置の取り付け取り外しが容易になる。
【0014】
被ガイド部材が、該開閉方向における引戸の上部両端の隅部に形成された設定凹部に嵌合固定される基部と、該基部に支持されて該ガイド部材によって案内される上方位置と、該上方位置よりも下方の下方位置との間で変位可能な被ガイドバーとを有し、該コード持ち上げ部材の支持部材が該被ガイド部材の基部に固定されており、該基部を該引戸の設定凹部に嵌合固定することにより当該コード持ち上げ部材を設定するようにすることができる。被ガイド部材とコード持ち上げ部材とを一体として、それらの取り付けをより簡単にすることができる。
【0015】
この場合、被ガイド部材は、該開閉方向における引戸の上部両端の隅部に形成された設定凹部に嵌合固定される基部と、該基部に固定された支持部材と、該支持部材に支持され、引戸の開閉方向に対して直交する方向で水平に延びる軸線の周りに回転可能とされ、該ガイド部材によって開閉方向に案内される戸車とを有するものとすることができる。
【0016】
コード持ち上げ部材は、当該持ち上げ部材の支持部材に設定されて該ローラを回転可能に支持するリンク機構を有し、該リンク機構が、コード持ち上げ部材が引戸に取り付けられたときに引戸の上縁面の端部から引戸の開閉方向における外方に延出する設定部材を有し、該設定部材を上縁面に沿って引戸の開閉方向における内方に押し込むことによりリンク機構が立ち上がり、ローラが所定の設定位置となるようにすることができる。引戸を戸枠内に設置する場合、引戸の上縁面と上部枠部との間にはわずかな隙間しかないので、このようにすることにより、コード持ち上げ部材の取り付けをしやすくすることができる。
【0017】
この場合、閉扉駆動用コードの開扉位置側端部に連結されて引き戸の開閉方向で伸縮可能な部材を有し、開扉位置端部が伸縮可能な部材を介して戸枠に取り付けられるようにすることができる。閉扉駆動用コードを取り付けやすくするものである。伸縮可能な部材はコイルバネとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る自動閉扉装置を取り付けた引き戸装置の概要を示す図であり、一部を切欠いて示してある。
図2】同自動閉扉装置の要部を示す図で、(A),(B),(C)はそれぞれ、図1におけるA,B,Cを示す。
図3】同自動閉扉装置の主に開閉駆動装置の内部を示す図である。
図4図3の閉扉駆動装置の平面図である。
図5】同自動閉扉装置のガイド部材及び被ガイド部材の関係を示す図である。
図6】同自動閉扉装置の第10の実施形態を示すものであり、(a)は巻き過ぎ防止部材の他の態様を示す図であり、(b)はそのB−B断面図である。
図7図3に示す開閉駆動装置の一部を示す部分断面図である。
図8図7のIIXで示す部分の拡大図である。
図9】開閉駆動装置の他の実施形態を示す断面図である。
図10】引戸に設置する前のコード持ち上げ部材の他の変形例を示す。
図11図10の持ち上げ部材を引戸に設置した状態を示す。
図12】コード持ち上げ部材の更に別の変形例を示し、引戸に取り付けた状態ではあるが、最終的設置状態になる前の状態を示している。
図13図12のコード持ち上げ部材であって、最終的設置状態を示している。
図14】コード持ち上げ部材の他の変形例を示し、引戸に取り付けた状態ではあるが、最終的設置状態になる前の状態を示しており、(a)はその平面図、(b)は断面側面図である。
図15図14の持ち上げ部材を引戸に設置した状態を示し、(a)はその平面図、(b)は断面側面図である。
図16図14及び図15の摺動部材を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は右端面図である。
図17図14及び図15のコード持ち上げ部材の支持部材を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は右端面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る引き戸の自動閉扉装置10を取り付けた引き戸装置12を示す。
【0021】
図示のように、この自動閉扉装置10は、戸枠14の上部枠部16に固定された閉扉位置側端部24と開扉位置側端部26とを有する閉扉駆動用コード18と、引き戸20の上縁面20−1の略中央位置に設けた凹部20−2内に嵌合設定され、閉扉駆動用コード18に作用的に連結されている閉扉駆動装置22とを有する。
【0022】
引き戸20は、その上縁面の引き戸の開閉方向における両端部近くにおいて該上縁面20−1上に取り付けられた被ガイド部材23(図示の例では、図2に示す如く上縁面20−1から突出した支持部材23−1の前後に回転可能に取り付けられ、且つ、図5に示すごとく前後それぞれ、左右に一対ずつ配置された戸車23−2)を有し、該被ガイド部材23が、戸枠14の上部枠部16に沿って設けられたガイド部材25(図5)に係合して、引き戸20が開閉されるときにガイド部材25によって開閉方向に案内されるようにされている。
【0023】
閉扉駆動用コード18は、実質的にその長さ方向へは伸びず、且つ、巻回が可能な程度に柔軟とされ、引き戸20の開閉方向(図示の例では水平方向)に延びるようにして、両端にある閉扉位置側端部24及び開扉位置側端部26が上部枠部16に取り付けられている。巻回が可能な程度に柔軟とは、前述の特開平11−152955に開示されているような、合成樹脂や金属でできているラックのように、細長く作られているために、開閉される引き戸が上下動するのに対応するような程度に可撓性を有するというのではなく、例えば、直径数十センチ程度に巻き取ることができる程度に柔軟なことを意味する。本願発明者が行った試作品では、直径30cm程度に巻取りが可能な程度に柔軟なラックを用いることにより、取付けがきわめて容易で、しかも、円滑な開閉操作が可能な自動閉扉装置とすることができた。
【0024】
この閉扉駆動用コード18は、具体的には、鋼などの芯線の周りに設けられた硬質の樹脂層とからなり、図2に示すように、該樹脂層に当該閉扉駆動用コードの長さ方向に沿って一定ピッチでラック歯28を形成したものとすることができる。閉扉位置側端部24及び開扉位置側端部26には、ハトメなどを取り付け、上部枠部16にネジなどにより取り付けることができる。
【0025】
閉扉駆動装置22は、引き戸20の上縁面20−1の凹部20−2内に嵌合固定されるケーシング30と、該ケーシングに回転可能に取り付けられた回転部材としての歯車32と、閉扉駆動用コード18のラック歯28を歯車32の歯34に係合させ、該引き戸20が開閉されるのに伴い該歯車32が閉扉駆動用コード18に沿って転動するようにする係合保持部材36と、歯車32の内側に該歯車と同心状に設けられたゼンマイバネ37を有し、引き戸20が閉扉位置から開扉位置に向けて動かされるときの歯車32の転動に伴い、該歯車32を該転動と反対方向に転動させるバネ付勢力をゼンマイバネ37が蓄勢するようにしたバネ装置とを有する。
【0026】
バネ装置は、具体的には、ゼンマイバネ37の一端が歯車32と同軸状に設けられた軸体39に連結され、他端が歯車32の内壁面に連結されている。該軸体39は、図2で見て、その手前側の端部に固定されたバネ付勢力調整部材52の外周面に設けられた係止凹部52−2の1つに係止部材42を係合させることにより、所要の角度位置に保持されるようになっている。具体的には、バネ付勢力調整部材52は、その中央部分に設けられた直線状の溝52−1にドライバの先端を係合させて回転することにより当該軸体39を回転し、該軸体の周りでのゼンマイバネの巻き込みの程度を調節するようになっており、係止部材42は、細長いバネ部材を折り曲げて形成したものであり、ケーシング30に固定された水平部分42−1から立ち上げられ丸められた先端係止部42−2を、所要量だけ回転されたバネ調整部材52の凹部52−2に係合させることにより、当該バネ調整部材52をその回転位置に係止するようになっている。
【0027】
係合保持部材36は、ケーシング30の頂壁30−1上に固定されており、閉扉駆動用コード18を通す水平のコード挿通路36−1を画定する上部壁36−2及び下部壁36−3を有し、コード挿通路36−1を通された閉扉駆動用コード18が、当該係合保持部材36の下部壁36−3を通してコード挿通路36−1内に臨む歯車32とケーシング30の頂壁30−1との間に挟まれ、閉扉駆動用コードと歯車の歯28,34が噛合され外れないようにしている。
【0028】
図示の例では、閉扉駆動装置22は、歯車32に噛合された歯車38を有し、引き戸32の閉扉位置に向けての動きに伴い歯車32が回動されるときに、該回動を制動し引き戸に制動をかけるための制動装置40が設けられている。この制動装置は、例えば上述した特開平11−152955などに開示されており当業者には周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0029】
また、図示の例では、上述のバネ装置におけるゼンマイバネ37の巻き過ぎを防止するための巻き過ぎ防止部材58が設けられている。該巻き過ぎ防止部材58は、図6にその詳細が示されており、全体としては円環状に形成されている。該巻き過ぎ防止部材の外周面は大径部58−1及び小径部58−2を有し、小径部58-2には、周方向で等間隔を開けて複数の凹部62が設けられている。内周面58−3は全体として円形とされており、図7に示すように第2の軸体としてケーシング30から突出する軸部30−1に嵌合され、当該巻き過ぎ防止部材58が、該軸部30-1の周りで回転可能としている。該内周面58−3には、軸部30−1の外周面に押圧係合して、該軸部の周りでの当該巻き過ぎ防止部材58の回転に対する抵抗力を付与する回転力抵抗部材84が、等間隔で設けられている。各回転力抵抗部材84は、内周面58−3に設けられた凹部84−2の底面から半径方向内側に突出して、その先端部分が該内周面58−3の内側位置となり、軸部30−1に押圧係合するようにした凸部84−1により構成されている。この回転力抵抗部材を有することで、摩擦力による巻き過ぎ防止部材の回転方向における抵抗力を付与している。
【0030】
上記のごとき巻き過ぎ防止部材58に対して、バネ付勢力調整部材52には、その外周面に1つの凸部64が設けられ、バネ付勢力調整部材が一回転される毎に、該凸部64が凹部62と係合して、巻き過ぎ防止部材58を所定角度だけ回動するようになっている。
【0031】
バネ付勢力調整部材52が回転されて、凸部64が凹部62の無い大径部58−1と係合するようになると、該バネ付勢力調整部材が更に回転しようとしても、その回転が該巻き過ぎ防止部材58により阻止されて、ゼンマイバネの巻き過ぎが防止されるようになっている。
【0032】
図8に示すように、バネ付勢力調整部材52の凸部64は、その幅方向中央部分に半円形状の凹部68が形成されている。これは、該凸部64が係止部材42の先端係止部42−2のところを通るときに、該凹部68が先端係止部42−2を跨ぐようにして通過できるようにするものである。
【0033】
図1及び図2に示すように、自動閉扉装置10では更に、各被ガイド部材23に対応して各被ガイド部材よりも開閉方向における内側において上部枠部16に取り付けられたコード持ち上げ部材27が設けられており、該コード持ち上げ部材27が閉扉駆動装置22のケーシング30から開扉位置側端部26及び該閉扉位置側端部24に延びる閉扉駆動用コード18にその下側から係合して上方へ持ち上げるようになっており、閉扉駆動用コード18が被ガイド部材23に直に係合しないようにしている。この実施形態においては、コード持ち上げ部材27は、引戸の上縁面に固定された支持部材27−1に対して回転可能に支持されたローラ27−2を備えている。ローラ27−2には、閉扉駆動用コード18に設けられているラック歯と同じピッチをもった歯を設けるようにすることができる。
【0034】
図10及び図11は、被ガイド部材23及びコード持ち上げ部材27を1つのユニットにて引戸20に取り付けるようにした例を示している。すなわち、コード持ち上げ部材27は、支持部材27−1が固定された逆L字状の取付部材27−10が、被ガイド部材23の支持部材23−1の矩形状とされた基部23−3にビスにより固定されており、該基部23−3を引戸20の上部角部分に形成された矩形状の設定凹部20−1にその側方から嵌合し適宜の固定手段によって固定することにより引戸20に対するこれら被ガイド部材23及びコード持ち上げ部材27の取り付けを行うようになっている。
【0035】
図12及び図13は、被ガイド部材23及びコード持ち上げ部材27の他の実施形体及びその取り付け方法が示されている。被ガイド部材23は、図10及び図11に示したものと同様の矩形の基部23−3を有し、該基部から上下方向で変位可能とされ、バネ23-5により図示の上方位置に付勢された被ガイドバー23−4を有する。この被ガイドバー23−4は、上述の実施形態における戸車23−2に代わるものであり、ガイド部材25によって引戸の開閉方向に案内される。コード持ち上げ部材27は、基部23−3の上面に固定されて(図で見て)右方に延び、引戸の上縁面20−1に固着された支持部材27−1と、基部23-3の上面に(図で見て)左右の方向に摺動可能に取り付けられた摺動部材27−3と、一端がそれぞれ支持部材27−1と摺動部材27−3に枢着されたリンク27−4,27−5と、該リンク27−4,27−5相互間の枢着軸線の周りで回動可能に取り付けられた歯付きローラ27−2とから構成されている。このように1つのユニットとして構成された被ガイド部材23及びコード持ち上げ部材27を引戸に設置する場合は、先ず、図10及び図11の場合と同様に、引戸20の上隅部に形成された凹部20−1に基部23−3を嵌合し、適宜の手段で、該基部23−3及び支持部材27−1を引戸に固定し、図12に示す状態とする。次に、摺動部材27−3を(図で見て)右方に押し込み、リンク27−4,27−5を折り畳むようにして歯付きローラ27−2を図13に示すごとく上昇させ、当該持ち上げ部材27を図13に示す如き設置位置とする。引戸を戸枠内に設置する場合、被ガイド部材23はバネ23−5に抗して押し下げた状態とし、戸枠の上縁部部分にあたらないようにする。
【0036】
図14及び図15は、被ガイド部材23及びコード持ち上げ部材27の更に別の実施形体を示している。この実施形態は、基本的には、図12及び図13に示したものと実質的には同じであり、歯付きローラ27−2がリンク27−4,27−5の枢着軸線の周りで回転可能に取り付けられており、摺動部材27−3を図14の(b)の位置から図15の(b)の位置まで押し込むことにより、歯付きローラ27−2を図15の(b)の設置位置とするようになっている。この実施形態では、図12及び図13の実施形態と異なり、歯付きローラ27-2の回転軸の両端に該ローラを挟むように設定された一対のガイドディスク27−6が設けられており、歯付きローラ27−2に係合され持ち上げられる閉扉駆動用コード18が歯付きローラ27−2から外れないようにしている。更に、リンク27−5は、その一端に設けられ水平に延びる連結ロッド27−8が、摺動部材27-3の右端に設けられ戸車の第2の凹部20-2内を摺動可能とされた支持部27−7に形成された上下方向に延びるスロット27−13内に上下動可能に支持されており、摺動部材27−3が押し込まれて、支持部27−7が第2の凹部20−2内を右方へ摺動されるときに、第2の凹部20-2内に設定されているカム部材27−9によって図15の(b)の位置まで案内されるようになっている。図中27−11は、被ガイド部材23を通すために摺動部材27-3に形成されたスロットであり、27−12はリンク27−4の一端を支持部材27−1に枢支するための枢支部である。
【0037】
すなわち、この実施形態に係る閉扉駆動装置22においては、巻き過ぎ防止部材58は設けられていない。また、バネ付勢力調整部材52は六角形とされており、係止部材42は、細長いバネ部材を折り曲げてC字状にされており、その平行な部分が係止部材の対向する側面52−3と係合することにより、該バネ付勢力調整部材52の角度位置を固定するようになっている。
【0038】
この実施形態において特に特徴とするところは、閉扉駆動用コード18の開扉位置側端部26にコイルバネ44が取り付けられ、当該開扉位置側端部26が該コイルバネを介して上部枠部16に取り付けられているということである。
【0039】
このようにすることにより、コイルバネを僅かに伸びるような状態で該閉扉駆動用コードを上部枠部に取り付けることにより、当該コードをたるみのない状態で設定することができる。また、その取付位置も、コイルバネにより限定されたものとならず、容易に設置できる。
【0040】
本発明の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば、回転体としての歯車をV形プーリのようなものとし、閉扉駆動用コードをVベルトとすることも可能である。
【符号の説明】
【0041】
自動閉扉装置10;引き戸装置12;戸枠14;上部枠部16;閉扉駆動用コード18;引き戸20;上縁面20−1;凹部20−2;閉扉駆動装置22;被ガイド部材23;支持部材23−1;戸車23−2;基部23−3;被ガイドバー23−4;バネ23-5;閉扉位置側端部24;ガイド部材25;開扉位置側端部26;コード持ち上げ部材27;支持部材27−1;ローラ27−2;摺動部材27−3;リンク27−4,27−5;ガイドディスク27−6;支持部27−7;連結ロッド27−8;カム部材27−9;取付部材27−10;スロット27−11;枢支部27−12;スロット27−13;ラック歯28;ケーシング30;歯車32;歯34;係合保持部材36;37ゼンマイバネ;歯車38;軸体39;制動装置40;コイルバネ44;バネ付勢力調整部材52;溝52−1;係止凹部52−2;巻き過ぎ防止部材58;凸部64;凹部68
図1
図2
図3
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図10
図11
図12
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図15
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図17