(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671276
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】小型モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
H02K5/22
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-171369(P2010-171369)
(22)【出願日】2010年7月30日
(65)【公開番号】特開2012-34482(P2012-34482A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2013年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077827
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 弘男
(72)【発明者】
【氏名】宮廻 博志
(72)【発明者】
【氏名】黒田 稔
【審査官】
鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−022593(JP,A)
【文献】
特開2005−204459(JP,A)
【文献】
特開平11−054878(JP,A)
【文献】
特開2006−238666(JP,A)
【文献】
特開平06−292342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00− 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型モータのブラケットに給電端子と底部を形成し、前記給電端子にFPC基板を接続されて成る小型モータ体において、
前記FPC基板は、前記底部に対応する位置に中央貫通孔を形成し、
前記中央貫通孔には、前記FPC基板の半田ランドと近接する位置にて前記中央貫通孔の中心方向に前記FPC基板が突出する突起部が設けられている
ことを特徴とする小型モータ体。
【請求項2】
前記突起部は、前記小型モータと前記FPC基板とを組み合わせた際に起立して、前記給電端子と前記底部との間に介在することを特徴とする請求項1に記載の小型モータ体。
【請求項3】
前記突起部は、前記FPC基板を構成する絶縁層の1層で形成していることを特徴とする請求項2に記載の小型モータ体。
【請求項4】
前記FPC基板は、前記中央貫通孔とは別に、前記給電端子が挿入される端子用貫通孔を前記半田ランド内に形成していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の小型モータ体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型モータに関し、特に、給電端子を接続する基板との接合に特徴を有する小型モータに関する。
【背景技術】
【0002】
小径のDCモータなどの小型モータの場合、回転軸の軸受け精度(軸受け内径や軸受け同士の同軸度)を確保するために、軸受けを固定する部材(底部と呼ぶ)は金属のプレス部品を使用することが一般的である。また、小型のDCモータを内蔵する精密機器においては、当然誤動作を防止するためにノイズ対策が必要であり、モータの底部を金属製にすることで、輻射ノイズ対策(漏洩磁束対策)になる。
【0003】
このため、小型モータとしては、上述の理由からモータの底部を金属製にし、また、配線のし易さ等の理由から、底部のある底面からモータに電気を供給する給電端子を突出させる構造が考えられるが、この小型モータを基板に接続する際、モータの底部や給電端子を基板に貫通させた後、給電端子を基板に半田付けする時、給電端子と底部との間で半田ブリッジが生じてしまう虞があった。この対策としては、基板上の半田ランドの形状を中心よりずらして底部と給電端子間のギャップを大きく取り、半田がブリッジしないような設計をするしかなかった。こうなると基板上のランド配置等の自由度が損なわれてしまうという問題があった。また、底部へ樹脂等のコーティングによって半田ブリッジを避けることも考えられるが、樹脂の選定や工程が複雑になるという問題があった。
【0004】
特許文献1では、リード=リード間の半田ブリッジを避ける方法として、隣接するランドとの間に半田ブリッジ防止部を設けたランド形状を開示している。
【0005】
また、特許文献2には、電子部品の外装樹脂より出ている一体成型された仕切り板を、各リード端子間に設けてリード=リード間の半田ブリッジを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−129767号公報
【特許文献2】特開平9−219487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1の技術では、小型モータのような小さな製品になれば半田ブリッジ防止部を形成することは困難であり、また、特許文献1の隣接するランドを対象としており、小型モータにおける底部と給電端子との半田ブリッジの防止には適用不可能であるという問題があった。
【0008】
また、特許文献2のような仕切り板を設ける構成では、仕切り板用に別部品を用意する必要があり、構成が煩雑化し、大型化、コスト高になってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、安価で部品点数も増やすことなく、給電端子と底部との半田ブリッジを防止することができる小型モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、小型モータのブラケットに給電端子と底部を形成し、前記給電端子にFPC基板を接続されて成る小型モータ体において、前記FPC基板は、前記底部に対応する位置に中央貫通孔を形成し、前記中央貫通孔
には、前記FPC基板の半田ランドと近接する位置に
て前記中央貫通孔の中心方向に前記FPC基板が突出する突起部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記突起部は、前記小型モータと前記FPC基板とを組み合わせた際に起立して、前記給電端子と前記底部との間に介在することを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記突起部は、前記FPC基板を構成する絶縁層の1層で形成していることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記FPC基板は、前記中央貫通孔とは別に、前記給電端子が挿入される端子用貫通孔を前記半田ランド内に形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安価で部品点数も増やすことなく、給電端子と底部との半田ブリッジを防止することができる小型モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態の小型モータ体を構成する小型モータおよびFPC基板を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示した小型モータ2とFPC基板10とを組み合わせた状態を示す斜視図である。
【
図4】給電端子6と半田ランド12を半田付けした後の状態で、小型モータ2の軸方向一端を上にして示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態の小型モータ体を構成する小型モータおよびFPC基板を示す斜視図である。ここでは、小型モータの給電端子にFPC基板を接続されて成る構成を小型モータ体と呼ぶ。
【0017】
小型モータ2は、回転軸であるシャフト3を有し、軸方向一端にブラケット4を有している。ブラケット4からは、小型モータ2に電源を供給する2つの給電端子6が突出し、また、シャフト3の軸方向一端を収容する軸受けを固定する底部5も突出している。本実施の形態では底部5は金属のプレス部品で形成している。小型モータ2は、ここでは、角型のタイプを例に挙げているが、本発明はこれに限られるものではなく、円筒型や小判型の小型モータにも適用可能である。
【0018】
図2は、
図1に示したFPC基板の平面図である。
【0019】
FPC基板(フレキシブルプリント基板)10は、その厚さは例えば約0.1mmであり、そのベースフィルムの厚さは例えば約0.025mmであり、可撓性のあるプリント基板である。
【0020】
FPC基板10には配線11が形成されており、小型モータ2の給電端子6を半田付けする位置には半田ランド12を設けている。給電端子6を半田ランド12に半田付けする際、ブラケット4から突出した底部5が邪魔になるので、FPC基板10には底部5を嵌め込む中央貫通孔13を設けている。
【0021】
中央貫通孔13の周縁には、FPC基板の半田ランドと近接する位置で中央貫通孔13の中心方向に突出する突起部14を2つ設けており、これが、底部5と2つの給電端子6のそれぞれに対する半田ブリッジを防ぐ半田ブリッジ防止部となる。この突起部14は、例えば、FPC基板10を構成する絶縁層の1層であるベースフィルムで形成している。
【0022】
図3は、
図1に示した小型モータ2とFPC基板10とを組み合わせた状態を示す斜視図である。
【0023】
底部5の直径は、中央貫通孔13の中心方向に突出する2つの突起部14同士の距離よりも大きく、中央貫通孔13に底部5を嵌め込むと、底部5の先端が突起部14を押して起立させることになる。このとき、突起部14は底部5の側面にならって起立する。
【0024】
すなわち、本実施例では、突起部14を起立させるための工程は特別に必要ではなく、中央貫通孔13に底部5を嵌め込む工程を実施することにより突起部14も同時に起立される。また、このとき同時に、給電端子6は、半田ランド12の端子用貫通孔16に通す。
【0025】
底部5を中央貫通孔13に嵌め込んで起立した突起部14は、給電端子6と底部5との間に介在する。これにより、半田ランド12に給電端子6を半田付けしても、給電端子6と底部5との間に半田ブリッジを生じさせてしまうことを防止することができる。
【0026】
図4は、給電端子6を半田ランド12に半田付けした後の状態を、小型モータ2の軸方向一端を上にして示す側面図である。
【0027】
図4に示すように、本実施の形態によれば、給電端子6を半田ランド12に半田15で半田付けした後には、半田15と底部5との間に突起部14が介在しているので、給電端子6と底部5との間に半田ブリッジを生じさせてしまうことを防止することができる。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、実施の形態については上記に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更および組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 小型モータ体
2 小型モータ
3 シャフト
4 ブラケット
5 底部
6 給電端子
10 FPC基板(フレキシブルプリント基板)
11 プリント配線
12 半田ランド
13 中央貫通孔
14 突起部
15 半田
16 端子用貫通孔