(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671321
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】昇降機の保守装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20150129BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20150129BHJP
B66B 31/00 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B3/00 F
B66B31/00 D
B66B31/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-275822(P2010-275822)
(22)【出願日】2010年12月10日
(65)【公開番号】特開2012-121721(P2012-121721A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2013年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間部 志のぶ
(72)【発明者】
【氏名】五嶋 匡
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 芳治
【審査官】
藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−294000(JP,A)
【文献】
特開平06−219663(JP,A)
【文献】
特開平11−130355(JP,A)
【文献】
特開2009−149382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
B66B 3/00
B66B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機を駆動する駆動装置の作動と停止を選択的に指令可能な運転指令手段と、この運転指令手段からの指令に基づき、保守作業時の動作速度として予め設定された低速度で前記駆動装置を動作させたり、その動作を停止させたりする駆動制御手段と、この駆動制御手段を起動させたり停止させたりする保守用スイッチと、保守作業場所に設けられたスピーカと、このスピーカに注意喚起のためのアナウンスを出力させるスピーカ制御手段とを備える昇降機の保守装置であって、
前記保守用スイッチにより前記駆動制御手段が起動されてからの前記駆動装置の作動と停止の繰返し回数が所定回数に達したかどうかを判定する作業判定手段を備え、
前記スピーカ制御手段は、前記作業判定手段による判定の結果として前記繰返し回数が所定回数に達したという結果を得た場合に、注意喚起のためのアナウンスを前記スピーカに出力させ、
前記作業判定手段は、前記繰返し回数が所定回数に達したという結果を得た後に、再び前記繰返し回数が所定回数に達したかどうかを判定し、
前記駆動制御手段は、前記作業判定手段による再度の判定の結果として前記繰返し回数が所定回数に達したという結果を得た場合に、前記運転指令手段からの前記駆動装置の作動の指令を一時的にキャンセルする
ことを特徴とする昇降機の保守装置。
【請求項2】
請求項1に記載の昇降機の保守装置において、
前記保守用スイッチにより前記駆動制御手段が起動されてからの経過時間が、所定時間
に達したかどうかを判定する経過時間判定手段を備え、
前記スピーカ制御手段は、前記作業判定手段による判定の結果として前記繰返し回数が
所定回数に達していないという結果を得た場合であって、かつ、前記経過時間判定手段に
よる判定の結果として前記経過時間が所定時間に達したという結果を得た場合に、注意喚
起のためのアナウンスを前記スピーカに出力させる
ことを特徴とする昇降機の保守装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の昇降機の保守装置において、
前記スピーカ制御手段は、前記保守用スイッチにより駆動制御手段が停止されたことに基づき、注意喚起のためのアナウンスをスピーカに出力させる
ことを特徴とする昇降機の保守装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業場所に設置されたスイッチの操作により、その作業現場に適した注意喚起のためのアナウンスを行う昇降機の保守装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータやエスカレータなどの昇降機には、保守作業時に作業場所に適した注意喚起のためのアナウンスを行う装置が設置されている。この種の装置としては特許文献1に開示された保守安全装置がある。この保守安全装置はエレベータの機械室、かごの天井、および、昇降路の底部のピット等の保守作業場所のそれぞれに設けられ、保守作業の開始時に操作される保守用スイッチと、音声情報を出力する音声発信装置と、保守作業場所に応じた安全事項および技術事項の音声情報を格納した記憶装置と、保守スイッチの操作状態の組み合わせの判定を行い、その判定の結果に基づき音声情報を記憶装置から読み出して音声発信装置に音声情報を出力させる演算処理装置とを備える。これにより、エレベータの保守作業に関する安全事項および技術事項の情報を保守作業員に事前に知らせることができ、保守作業員の安全および作業能率の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−219663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された保守安全装置は、注意喚起のためのアナウンスを保守作業前に行うが、保守作業中には行わない。保守作業者は保守作業において作業に対する慣れに起因して、または長時間の作業による疲労に起因して集中力を低下させてしまう場合があるため、保守作業中に注意喚起を行うことが必要である。
【0005】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、保守作業中に保守作業者に対して注意喚起のためのアナウンスを行うことができる昇降機の保守装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の目的を達成するために本発明は次のように構成されている。
【0007】
〔1〕 本発明に係る昇降機の保守装置は、昇降機を駆動する駆動装置の作動と停止を選択的に指令可能な運転指令手段と、この運転指令手段からの指令に基づき、保守作業時の動作速度として予め設定された低速度で前記駆動装置を動作させたり、その動作を停止させたりする駆動制御手段と、この駆動制御手段を起動させたり停止させたりする保守用スイッチと、保守作業場所に設けられたスピーカと、このスピーカに注意喚起のためのアナウンスを出力させるスピーカ制御手段とを備える昇降機の保守装置であって、前記保守用スイッチにより前記駆動制御手段が起動されてからの前記駆動装置の作動と停止の繰返し回数が所定回数に達したかどうかを判定する作業判定手段を備え、前記スピーカ制御手段は、前記作業判定手段による判定の結果として前記繰返し回数が所定回数に達したという結果を得た場合に、注意喚起のためのアナウンスを前記スピーカに出力させ、
前記作業判定手段は、前記繰返し回数が所定回数に達したという結果を得た後に、再び前記繰返し回数が所定回数に達したかどうかを判定し、前記駆動制御手段は、前記作業判定手段による再度の判定の結果として前記繰返し回数が所定回数に達したという結果を得た場合に、前記運転指令手段からの前記駆動装置の作動の指令を一時的にキャンセルすることを特徴とする。
【0008】
この「〔1〕」に記載の昇降機の保守装置において、保守作業の開始時に保守用スイッチは保守作業者により操作され、これによって駆動制御手段が起動する。保守作業が開始されると、運転指令手段は保守作業者により操作され、駆動装置の作動や停止を駆動制御手段に指令する。駆動制御手段は、それらの指令に基づき、駆動装置を低速度で動作させたり、その動作を停止させたりする。この間、作業判定手段は、駆動装置の作動と停止の繰返し回数をカウントし、そのカウント数が所定回数に達したかどうかを判定する。スピーカ制御手段は、作業判定手段による判定の結果として繰返し回数が所定回数に達したという結果を得た場合、注意喚起のためのアナウンスをスピーカに出力させる。駆動装置の作動と停止の繰返しは保守作業中に行われることであるので、繰返し回数が所定回数を達したときに注意喚起のためのアナウンスを行うことによって保守作業中に保守作業者に注意喚起のためのアナウンスを行うことができる。
【0010】
また、「〔
1〕」に記載の昇降機の保守装置においては、所定回数の繰返しを2度以上続ける作業を強制的に中断でき、これにより、集中力が低下した状態で作業が継続されることを防止できる。
【0011】
〔
2〕 本発明に係る昇降機の保守装置は、「〔1〕
」に記載の昇降機の保守装置において、前記保守用スイッチにより前記駆動制御手段が起動されてからの経過時間が、所定時間に達したかどうかを判定する経過時間判定手段を備え、前記スピーカ制御手段は、前記作業判定手段による判定の結果として前記繰返し回数が所定回数に達していないという結果を得た場合であって、かつ、前記経過時間判定手段による判定の結果として前記経過時間が所定時間に達したという結果を得た場合に、注意喚起のためのアナウンスを前記スピーカに出力させることを特徴とする。なお、所定時間とは、作業に対する慣れ、および作業による疲れが生じ始める時間として予め設定されたものである。
【0013】
「〔
2〕
」に記載の昇降機の保守装置においては、保守用スイッチにより駆動制御手段が起動されてから、すなわち保守作業が開始されてから所定時間経過後の保守作業中に、注意喚起のためのアナウンスを行うことができる。
【0014】
〔
3〕 本発明に係る昇降機の保守装置は、「〔1〕」
または「〔
2〕
」に記載の昇降機の保守装置において、前記スピーカ制御手段は、前記保守用スイッチにより駆動制御手段が停止されたことに基づき、注意喚起のためのアナウンスをスピーカに出力させることを特徴とする。
【0015】
この「〔
3〕」に記載の昇降機の保守装置においては、保守用スイッチにより駆動制御
手段が停止されたことに基づき、すなわち保守作業終了したことに基づき、注意喚起のためのアナウンスを行うことができる。これにより、保守作業場所の後片付けなど、保守作業に付随する作業の確実性の確保に貢献できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る昇降機の保守装置は、前述のように、保守作業中に保守作業者に対して注意喚起のためのアナウンスを行うことができる。これにより、同じ作業内容の繰返しに対する慣れに起因して、または長時間の作業による疲労に起因して保守作業者の集中力が低下するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明が適用される昇降機であるエスカレータに対し保守作業を行っている様子を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る保守装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示した制御装置により行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る昇降機の保守装置の構成について
図1,
図2を用いて説明する。
【0019】
図1に示すエスカレータ1は、無端状に連結された複数の踏段2と、この踏段2を駆動する駆動装置3とを備える。この駆動装置3は、上階側の乗降場10の床下に設けられた電動機4と、この電動機4に伝動可能に結合した減速機5と、この減速機5の出力を伝達されるターミナルギア6と、このターミナルギア6の回転を踏段2に伝達するステップチェーン7とを備える。また、ターミナルギア6の回転はハンドレール駆動装置8に伝達されて、ハンドレール9が踏段2に同期して走行するようになっている。電動機4には制御装置30が電気的に接続されている。この制御装置30は、CPU、ROM、RAMおよび補助記憶装置を備え、これらによって情報処理を行うことで電動機4を制御するものである。
【0020】
図2に示すように、本実施形態に係る保守装置20は、制御装置30に設けられていて保守作業の開始時に操作される保守用スイッチ21と、エスカレータ1の上階側の乗降場10付近に設けられた上階側作動スイッチ22および上階側停止スイッチ23と、エスカレータ1の下階側の乗降場11付近に設けられた下階側作動スイッチ24および下階側停止スイッチ25とを備えている。上階側作動スイッチ22および下階側作動スイッチ24は制御装置30に電動機4の起動を指令するものであり、上階側停止スイッチ23および下階側停止スイッチ25は制御装置30に電動機4の停止を指令するものである。保守装置20は更に、上階側の乗降場10付近に設けられたスピーカ26を備えている。
【0021】
保守装置20は更に、制御装置30に駆動制御手段31、経過時間判定手段33、作業判定手段32、アナウンス選択手段34およびスピーカ制御手段35を備える。これらの手段31〜35は、制御装置30のROMに書き込まれたコンピュータプログラムによって設定された手段である。
【0022】
駆動制御手段31は、保守用スイッチ21がオンすると起動しオフすると停止するものである。また、前出の上階側作動スイッチ22、下階側作動スイッチ24、上階側停止スイッチ23および下階側停止スイッチ25は、駆動装置3の電動機4の作動および停止を指令する運転指令手段とするものである。駆動制御手段31は起動した状態において、上階側作動スイッチ22および下階側作動スイッチ24からの指令に基づき、保守作業時の動作速度として予め設定された低速度、すなわち乗客を搬送する速度として予め設定された速度よりも遅い速度で駆動装置3の電動機4を動作させ、また、上階側停止スイッチ23および下階側停止スイッチ25からの指令に基づき駆動装置3の電動機4を停止させる。
【0023】
作業判定手段32は、保守用スイッチ21により駆動制御手段31が起動されてからの駆動装置3の作動と停止の繰返し回数が所定回数N回Nに達したかどうかを判定するものである。この所定回数N回は、作業に対する慣れ、および作業による疲労の少なくとも一方が生じ始める回数として予め設定されたものである。
【0024】
経過時間判定手段33は、保守用スイッチ21により駆動制御手段31が起動されてからの経過時間が、すなわち保守作業開始からの経過時間が所定時間Tに達したかどうかを判定するものである。所定時間Tは、作業に対する慣れ、および作業による疲労の少なくとも一方が生じ始める時間として予め設定されたものである。
【0025】
アナウンス選択手段34は、制御装置30の補助記憶装置に予め記憶されている複数種類のアナウンスのうちの1つを、経過時間判定手段33による判定の結果、作業判定手段32による判定の結果、保守用スイッチ21の状態に基づき選択するものである。本実施形態において、アナウンスの種類はアナウンス1〜アナウンス4の4種類ある。アナウンス1は「周囲に注意しましょう」であり、アナウンス2は「作動と停止との繰返し回数が所定回数2N回を超えましたので、注意喚起のため作動スイッチの操作をキャンセルしました」であり、アナウンス3は「集中力の低下に注意しましょう」であり、アナウンス4は「工具の置き忘れはありませんか?」である。
【0026】
スピーカ制御手段35は、アナウンス選択手段34により選択されたアナウンスに基づきスピーカ26を制御するものである。
【0027】
このように構成された保守装置20の動作について次に説明する。
【0028】
上階側の保守作業者Aは、制御装置30に設けられた保守用スイッチ21をオンさせる(ステップS1)。これによって制御装置30の駆動制御手段31は起動する。つまり、制御装置30は上階側作動スイッチ22、下階側作動スイッチ24、上階側停止スイッチ23および下階側停止スイッチ25のそれぞれからの指令に基づき駆動装置3の電動機4を制御する状態となる。
【0029】
保守作業において、上階側の保守作業者Aが上階側作動スイッチ22および上階側停止スイッチ23を操作して、または、下階側の保守作業者Bが下階側作動スイッチ24および下階側停止スイッチ25を操作して、駆動装置3の作動と停止が繰り返される。この間、制御装置30の作業判定手段32は、駆動装置3の作動と停止の繰返しを、上階側作動スイッチ22、上階側停止スイッチ23、下階側作動スイッチ24、下階側停止スイッチ25からの指令に基づきカウントする。
【0030】
作業判定手段32はカウントしながら、そのカウント数が所定回数N回に達したかどうかを判定する(ステップS2)。そして、カウント数が所定回数N回に達したと作業判定手段32により判定された場合(ステップS2でYES)、アナウンス選択手段34はアナウンス1を選択し、これに基づきスピーカ制御手段35はスピーカ26を制御する。これにより、スピーカ26は「周囲に注意しましょう」と、保守作業者の集中力の低下を防ぐためのアナウンス1を出力する(ステップS3)。
【0031】
アナウンス1の終了後、作業判定手段32はカウントを再開する。そして再びカウント数が所定回数N回の達したと作業判定手段32により判定された場合(ステップS4でYES)、駆動制御手段31は、上階側作動スイッチ22または下階側作動スイッチ24からの指令をキャンセルする状態となる(ステップS5)。次に、アナウンス選択手段34はアナウンスとしてアナウンス2とアナウンス1をこの順番で選択し、これらの選択に基づきスピーカ制御手段35はスピーカ26を制御する。これにより、スピーカ26は「作動と停止との繰返し回数が所定回数2N回を超えましたので、注意喚起のため作動スイッチの操作をキャンセルしました」と、保守作業が長時間に亘っている旨、および、駆動装置3が作動しない理由を述べるアナウンス2を出力し、次に「周囲に注意しましょう」とアナウンス1を出力する。
【0032】
その後、保守作業者Aが保守用スイッチ21をオフすると(ステップS10でYES)、駆動制御手段31は停止するとともに、アナウンス選択手段34はアナウンス4を選択する。そして、スピーカ制御手段35はスピーカ26を制御して、スピーカ26に「工具の置き忘れはありませんか?」、と作業終了時のチャック項目を保守作業者に気付かせるアナウンス4を出力させ(ステップS11)、保守装置20の動作は終了する。
【0033】
また、保守用スイッチ21がオンして駆動制御手段31が起動してからは、作業判定手段32が作動と停止の繰返しをカウントするのと並行して、制御装置30の経過時間判定手段33は、保守用スイッチ21のオン状態での経過時間を計測している。そして、ステップS2の判定でカウント数が所定回数N回に達していないと作業判定手段32により判定された場合(ステップS2でNO)、経過時間判定手段33は、経過時間が所定時間Tに達したかどうかを判定する(ステップS8)。そして、経過時間が所定時間Tに達したと経過時間判定手段33により判定された場合(ステップS8でYES)、アナウンス選択手段34はアナウンス3を選択し、これに基づきスピーカ制御手段35はスピーカ26を制御する。これにより、スピーカ26は「集中力の低下に注意しましょう」と、慣れや疲れに起因する保守作業者の集中力の低下を防止するためのアナウンス3を出力する(ステップS9)。その後、制御装置30では処理は、ステップS10からのルーチンに進む。
【0034】
なお、ステップS8で経過時間が所定時間Tに達していないと判定された場合(ステップS8でNO)、制御装置30での処理はステップS1からのルーチンに戻る。
【0035】
本実施形態に係る保守装置20によれば、次の効果を得られる。
【0036】
本実施形態に係る保守装置20において、作業判定手段32は、保守用スイッチ21により駆動制御手段31が起動されてからの駆動装置3の作動と停止の繰返し回数をカウントし、そのカウント数が所定回数N回に達したかどうかを判定する。スピーカ制御手段35は、作業判定手段による判定の結果として繰返し回数が所定回数N回に達したという結果を得た場合、注意喚起のためのアナウンスをスピーカ26に出力させる。駆動装置3の作動と停止の繰返しは保守作業中に行われることであるので、その繰返し回数が所定回数N回を達したときに注意喚起のためのアナウンスを行うことによって保守作業中に保守作業者に注意喚起のためのアナウンスを行うことができる。これにより、同じ作業内容の繰返しに対する慣れに起因して、または長時間の作業による疲労に起因して保守作業者の集中力が低下するのを防止できる。
【0037】
本実施形態に係る保守装置20において、作業判定手段32は、駆動装置3の作動と停止の繰返し回数が所定回数N回に達したという結果を得た後に、再びその繰返し回数が所定回数N回に達したかどうかを判定し、駆動制御手段31は、作業判定手段32による再度の判定の結果として繰返し回数が所定回数N回に達したという結果を得た場合に、運転指令手段である上階側作動スイッチ22または下階側作動スイッチ24からの駆動装置3の作動の指令を一時的にキャンセルする。これにより、駆動装置3の作動と停止の所定回数N回の繰返しを2度以上続ける作業を強制的に中断でき、これにより、集中力が低下した状態で作業が継続されることを防止できる。
【0038】
本実施形態に係る保守装置20において、経過時間判定手段33は、保守用スイッチ21により駆動制御手段31が起動されてからの経過時間が所定時間Tに達したかどうかを判定し、スピーカ制御手段35は、経過時間判定手段33による判定の結果として経過時間が所定時間Tに達したという結果を得た場合に、注意喚起のためのアナウンスをスピーカ26に出力させる。これにより、保守用スイッチにより駆動制御手段31が起動されてから、すなわち保守作業が開始されてから所定時間T経過後の保守作業中に、注意喚起のためのアナウンスを行うことができる。
【0039】
本実施形態に係る保守装置20において、スピーカ制御手段35は、保守用スイッチ21により駆動制御手段31が停止されたことに基づき、注意喚起のためのアナウンスをスピーカ26に出力させる。これにより、保守用スイッチ21により駆動制御手段31が停止されたことに基づき、すなわち保守作業終了したことに基づき、注意喚起のためのアナウンスを行うことができる。したがって、保守作業場所の後片付けなど、保守作業に付随する作業の確実性の確保に貢献できる。
【0040】
なお、前述の実施形態に係る保守装置20は、エスカレータに適用されたものであるが、エレベータの保守作業においても乗りかごの駆動装置の低速度での動作と、その動作の停止とを繰り返すので、エレベータに適用してもよい。
【0041】
前述の実施形態に係る保守装置20は、エスカレータ1に備えられる制御装置30に、駆動制御手段31、経過時間判定手段33、作業判定手段32、アナウンス選択手段34およびスピーカ制御手段35を備えるものであるが、これらの手段31〜35は、エスカレータ1の遠隔監視を行う保守制御装置に備えられてもよい。保守制御装置はエスカレータ1の制御装置30とは別電源であるのが一般的であり、これによって、エスカレータ1の電源を遮断してもその別電源により保守装置20を使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 エスカレータ(昇降機)
2 踏段
3 駆動装置
4 電動機
5 減速機
6 ターミナルギア
7 ステップチェーン
8 ハンドレール駆動装置
9 ハンドレール
10 上階側の乗降場
11 下階側の乗降場
20 保守装置
21 保守用スイッチ
22 上階側作動スイッチ(運転指令手段)
23 上階側停止スイッチ(運転指令手段)
24 下階側作動スイッチ(運転指令手段)
25 下階側停止スイッチ(運転指令手段)
26 スピーカ
30 制御装置
31 駆動制御手段
32 作業判定手段
33 経過時間判定手段
34 アナウンス選択手段
35 スピーカ制御手段