【0012】
本願明細書で開示される技術の特徴を整理しておく。
(第1特徴)本明細書で開示されるバスバーは、スイッチング素子と外部の回路素子を電気的に接続するために用いられる。スイッチング素子は、電力変換用のパワースイッチング素子であってもよい。特に、炭化ケイ素、窒化ガリウム等の化合物半導体を材料とするパワースイッチング素子は、扱う電流量が大きく発熱量が大きいことから、本明細書で開示されるバスバーの適用が有用である。
(第2特徴)外部の回路素子には様々なものがあり、一例では平滑コンデンサ、スナバコンデンサ、リアクトルである。これらの回路素子は熱に対して弱いものが多い。このような回路素子とスイッチング素子を接続するバスバーには、本明細書で開示される技術の適用が有用である。
(第3特徴)本明細書で開示されるバスバーは、スイッチング素子と様々な手法で接続される。一例では、ワイヤボンディング、テープボンディング、はんだ接合である。特に、縦型のスイッチング素子の表面電極と裏面電極のそれぞれにバスバーを適当な導電材を介して接続し、縦型のスイッチング素子をバスバーによって挟むような形態の場合、スイッチング素子で発生した熱の多くがバスバーを介して伝熱されるので、本明細書で開示されるバスバーの適用が有用である。
(第4特徴)本明細書で開示される往復構造部には、様々な形態を採用することができる。一例では、往復構造部が一対の平板状の導電部位を有し、一方の導電部位が往路を構成し、他方の導電部位が復路を構成してもよい。また、他の一例では、往復構造部が箱状の外側部位と外側部位の内部を伸びている内側部位を有していてもよい。この場合、箱状の外側部位は、円柱状の形態でもよく、直方体状の形態でもよく、その他の形態でもよい。内側部位は、外側部位の形態に合わせた形態であればよい。
【実施例】
【0013】
図1に示されるように、電力変換装置10は、直流電源11と交流モータ13の間に接続されており、直流電源11から供給される直流電圧をスイッチングすることにより、その直流電圧を交流電圧に変換して交流モータ13に供給する。直流電源11と電力変換装置10の間には、整流用の平滑コンデンサ12(外部の回路素子の一例)が接続されている。
【0014】
電力変換装置10は、直流電源11の高圧側及び平滑コンデンサ12の一端に接続可能に構成される高圧側バスバー14Pと、直流電源の低圧側及び平滑コンデンサ12の他端に接続可能に構成される低圧側バスバー14Nと、高圧側バスバー14Pと低圧側バスバー14Nの間で並列に接続されている3つの相アーム10U,10V,10Wを備えている。
【0015】
U相アーム10Uは、直列に接続された第1スイッチング素子SW1と第2スイッチング素子SW2を有しており、第1スイッチング素子SW1には第1還流ダイオードD1が並列に接続されており、第2スイッチング素子SW2には第2還流ダイオードD2が並列に接続されている。第1スイッチング素子SW1と第2スイッチング素子SW2の接続点が交流モータ13に接続されている。V相アーム10Vは、直列に接続された第3スイッチング素子SW3と第4スイッチング素子SW4を有しており、第3スイッチング素子SW3には第3還流ダイオードD3が並列に接続されており、第4スイッチング素子SW4には第4還流ダイオードD4が並列に接続されている。第3スイッチング素子SW3と第4スイッチング素子SW4の接続点が交流モータ13に接続されている。W相アーム10Wは、直列に接続された第5スイッチング素子SW5と第6スイッチング素子SW6を有しており、第5スイッチング素子SW5には第5還流ダイオードD5が並列に接続されており、第6スイッチング素子SW6には第6還流ダイオードD6が並列に接続されている。第5スイッチング素子SW5と第6スイッチング素子SW6の接続点が交流モータ13に接続されている。一例では、スイッチング素子SW1〜6にIGBTが用いられており、還流ダイオードD1〜6にショットキーダイオードが用いられている。
【0016】
図2に示されるように、電力変換装置10は、冷却器16上にロウ付けされている絶縁基板15の表面に設けられている。冷却器16は、アルミニウム製であり、内部に冷却媒体が流動可能に構成されている。絶縁基板15は、セラミック製の絶縁層の表裏面にアルミニウム又はアルミニウム合金製の回路層が被膜された形態を有している。各スイッチング素子SW1〜6及び還流ダイオードD1〜6は、絶縁基板15の表面にはんだ付けによって取り付けられている。絶縁基板15上には、図示しない配線が形成されており、
図1に示す回路が構成されている。
【0017】
図2に示されるように、バスバー14P,14Nは、x軸方向に沿って伸びているメイン部24と、メイン部24から側方に向けて伸びている往復構造部34を有する。バスバー14P,14Nの材料には、銅(Cu)が用いられている。メイン部24のバスバー14P,14Nは、扁平な平板状の形態を有するとともに、平滑コンデンサ12からx軸方向に沿って各相アーム10U,10V,10Wの上方を伸びている。メイン部24では、高圧側バスバー14Pと低圧側バスバー14Nが、z軸方向に対向した状態でx軸方向に沿って直線的に伸びている。往復構造部34は、平滑コンデンサ12と各相アーム10U,10V,10Wの間に設けられており、高圧側バスバー14Pの一部で構成される高圧側往復構造部34Pと、低圧側バスバー14Nの一部で構成される低圧側往復構造部34Nを有している。
【0018】
図3及び
図4に示されるように、高圧側往復構造部34Pは、箱状の形態を有する外側部位31Pと、外側部位31Pの内部を伸びているとともに扁平な平板状の形態を有する内側部位32Pと、外側部位31Pと内側部位32Pの間に充填されている充填部材33Pを有する。
図3に示されるように、外側部位31Pは、紙面右側に開放面を有しており、端部34Paが各相アーム10U,10V,10W側を伸びているメイン部24の高圧側バスバー14Pに接続されている。内側部位32Pは、一端34Pbが平滑コンデンサ12側のメイン部24の高圧側バスバー14Pに接続されており、他端34Pbが外側部位31Pの底面に接続されている。充填部材33Pには、熱伝導率の低い材料が用いられており、一例ではエポキシ樹脂が用いられている。この例に代えて、外側部位31Pの開放面を封止した状態で充填部材33Pを真空としてもよい。高圧側往復構造部34Pでは、外側部位31Pと内側部位32Pが対向するように構成されている。
図3の矢印で示すように、高圧側往復構造部34Pを流れる電流は、外側部位31Pでは図示右向きに流れ、内側部位32Pでは図示左向きに流れる。このように、外側部位31Pと内側部位32Pでは、電流の流れが逆向きとなっており、寄生インダクタンスが低減されている。なお、外側部位31Pの外周面にエポキシ樹脂を介してアルミニウム製の冷却フィンを設けてもよい。
【0019】
低圧側往復構造部34Nも、箱状の形態を有する外側部位31Nと、外側部位31Nの内部を伸びているとともに扁平な平板状の形態を有する内側部位32Nと、外側部位31Nと内側部位32Nの間に充填されている充填部材33Nを有する。
図3に示されるように、外側部位31Nは、紙面左側に開放面を有しており、端部34Naが平滑コンデンサ12側のメイン部24の低圧側バスバー14Nに接続されている。内側部位32Nは、一端34Nbが各相アーム10U,10V,10W側のメイン部24の低圧側バスバー14Nに接続されており、他端34Nbが外側部位31Nの底面に接続されている。充填部材33Nには、熱伝導率の低い材料が用いられており、一例では樹脂が用いられている。この例に代えて、外側部位31Nの開放面を封止した状態で充填部材33Nを真空としてもよい。低圧側往復構造部34Nでは、外側部位31Nと内側部位32Nが対向するように構成されている。
図3の矢印で示すように、低圧側往復構造部34Nを流れる電流は、外側部位31Nでは図示右向きに流れ、内側部位32Nでは図示左向きに流れる。このように、外側部位31Nと内側部位32Nでは、電流の流れが逆向きとなっており、寄生インダクタンスが低減されている。なお、外側部位31Nの外周面にエポキシ樹脂を介してアルミニウム製の冷却フィンを設けてもよい。
【0020】
上記したように、電力変換装置10のバスバー14P,14Nは、往復構造部34を有することを特徴としている。往復構造部34は、外側部位31P,31Nと内側部位32P,32Nが往復する構造であり、これにより、相アーム10U,10V,10Wと平滑コンデンサ12の間に存在するバスバー14P,14Nの長さが長く確保されることになる。この結果、相アーム10U,10V,10Wのスイッチング素子SW1〜6で発生した熱が平滑コンデンサ12に伝熱されることが抑えられている。
【0021】
例えば、往復構造部34に代えて、高圧側バスバー14Pと低圧側バスバー14Nが対向した状態で、相アーム10U,10V,10Wと平滑コンデンサ12の間を伸びていれば、同様に寄生インダクタンスの増加を抑えながら、バスバーを介した伝熱を抑えることができるかもしれない。しかしながら、高圧側バスバー14Pと低圧側バスバー14Nの間には、数百ボルト以上の電位差が加わることがあり、高圧側バスバー14Pと低圧側バスバー14Nを対向させた状態で絶縁性を保証する構造は信頼性が問題となる。一方、本実施例の往復構造部34では、外側部位31Pと内側部位32Pの間、及び外側部位31Nと内側部位32Nの間に略電位差が加わらない。このため、本実施例の往復構造部34は信頼性が高い。
【0022】
さらに、往復構造部34は、絶縁基板15を介して冷却器16上に搭載されている。このため、往復構造部34を伝熱する熱の一部は、絶縁基板15を介して冷却器16に放熱される。この結果、相アーム10U,10V,10Wのスイッチング素子SW1〜6で発生した熱が平滑コンデンサ12に伝熱されることが効果的に抑えられている。
【0023】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。