(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671471
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】接着接合させた複合プラスチック構造部材、それらの製造方法、およびそれから製造した構造部材
(51)【国際特許分類】
B29C 65/48 20060101AFI20150129BHJP
B29K 35/00 20060101ALN20150129BHJP
B29K 69/00 20060101ALN20150129BHJP
【FI】
B29C65/48
B29K35:00
B29K69:00
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-538880(P2011-538880)
(86)(22)【出願日】2009年11月26日
(65)【公表番号】特表2012-510905(P2012-510905A)
(43)【公表日】2012年5月17日
(86)【国際出願番号】EP2009008454
(87)【国際公開番号】WO2010063413
(87)【国際公開日】20100610
【審査請求日】2012年11月20日
(31)【優先権主張番号】08021081.8
(32)【優先日】2008年12月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504037346
【氏名又は名称】バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100126789
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ローラント・ブラムブリンク
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ・グロサー
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・ドリン
【審査官】
鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−1524(JP,A)
【文献】
特開2007−53106(JP,A)
【文献】
米国特許第7037568(US,B1)
【文献】
米国特許第7555873(US,B2)
【文献】
特開2000−229518(JP,A)
【文献】
特開平10−129367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00−65/82
B60J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦なプラスチック基体G及び該基体の少なくとも一方の面上に配設された少なくとも1つのリブまたは少なくとも1対のリブを有するリブ構造体Rを具有するプラスチック構造部材Kを具備する複合プラスチック構造部材であって、
該リブ構造体Rの少なくとも1つのリブ表面を、接着剤により支持異形材Sの少なくとも1つの異形材表面に接合させることによって、該支持異形材Sの狭側面が該プラスチック基体上に接触状態又は離隔状態で配設されており、ここで、支持異形材の幅広側面とプラスチック基体の面は、相互の相対位置が垂直またはおおよそ垂直となるように配置され、
該接着剤の層は1〜5mmの厚さであり、
該プラスチック構造部材Kのプラスチック基体Gおよびリブ構造体Rは、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、コポリカーボネート、コポリエステルカーボネートまたはこれらのプラスチック材料の混合物である、非強化、強化および充填プラスチック材料からなる群から選択される熱可塑性プラスチックであり、
該支持異形材Sは、金属、繊維強化材料またはセラミック材料製である、
複合プラスチック構造部材。
【請求項2】
支持異形材を1つのプラスチック構造部材Kへ正確に接合させるか、または複数の支持異形材Sを1つのプラスチック構造部材Kへ正確に接合させることを特徴とする請求項1に記載の複合プラスチック構造部材。
【請求項3】
プラスチック基体Gの幅bに対するリブ構造体の高さの比が、少なくとも1:10である、請求項1または2に記載の複合プラスチック構造部材。
【請求項4】
支持異形材が、鋼、鉄、チタン、アルミニウム及びマグネシウムから選択される金属、またはこれらの金属の少なくとも1種を含む合金から成る金属シートであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の複合プラスチック構造部材。
【請求項5】
プラスチック構造部材が、非晶質の熱可塑性プラスチックから成ることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の複合プラスチック構造部材。
【請求項6】
プラスチック構造部材が、ポリカーボネート、コポリカーボネート、コポリエステルカーボネート、PC混合物、およびポリメチルメタクリレートから成る群から選択される1種または複数種のプラスチック材料から成ることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の複合プラスチック構造部材。
【請求項7】
前記支持異形材Sの高さhSは、リブの高さhRの2倍以下である、請求項1〜6いずれかに記載の複合プラスチック構造部材。
【請求項8】
前記支持異形材Sは、前記プラスチック構造部材Kのうちの1つと正確に接合する、請求項1〜7いずれかに記載の複合プラスチック構造部材。
【請求項9】
前記支持異形材Sは、I型異形材である、請求項1〜8いずれかに記載の複合プラスチック構造部材。
【請求項10】
前記リブが、相互に隣接して伸びる2つのリブから成り、ここで該リブは相互間の距離を変動させて伸びており、該2つのリブは、前記接着剤が中央部に肉厚部を有するように、相互に凸状に伸びている、請求項1〜9いずれかに記載の複合プラスチック構造部材。
【請求項11】
前記リブが、相互に隣接して伸びる2つのリブから成り、ここで該リブは相互間の距離を変動させて伸びており、該2つのリブは、前記接着剤が中央部に肉薄部を有するように、相互に凹状に伸びている、請求項1〜9いずれかに記載の複合プラスチック構造部材。
【請求項12】
更なる支持部材および保持部材がリブまたは1対のリブに装着されることを特徴とする請求項1〜11いずれかに記載の複合プラスチック構造部材。
【請求項13】
支持異形材が、締結要素として機能する半製品であることを特徴とする請求項1〜12いずれかに記載の複合プラスチック構造部材。
【請求項14】
請求項1〜13いずれかに記載の複合プラスチック構造部材の製造方法であって、
プラスチック基体およびリブ構造体が、1-成分、2-成分または多成分の射出成形法によって製造されるか、または押出法によって製造されることを特徴とする該方法。
【請求項15】
前記複合プラスチック構造部材は、支持異形材を、対応する成形型内に予め配設し、次いで、プラスチック材料と、接着剤として機能する熱可塑性エラストマーとを射出して、前記プラスチック基体およびリブ構造体を形成する、多成分射出成形法によって製造されることを特徴とする、請求項14に記載の複合プラスチック構造部材の製造方法。
【請求項16】
構造部材要素として、請求項1〜13いずれかに記載の少なくとも1つの複合プラスチック構造部材を具有する、自動車用または建築用ガラス窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リブ構造体を具有するプラスチック構造部材と、該リブに接着接合され、その狭側面がプラスチック基体上に配設される支持異形材から構成される複合プラスチック構造部材に関する。さらに、本発明は、このような複合構造部材の製造方法と、構成部品としてこのような複合構造部材を具備する完成品に関する。
【背景技術】
【0002】
金属構造部材とプラスチック構造部材を具備する複合構造部材の製造方法が、独国特許出願公開第10149633号A明細書から既知であり、該明細書によると、少なくとも1つの打ち抜きリムまたは打ち抜きカラーを備える少なくとも1つの面を有する金属構造部材と、プラスチック構造部材が、1または複数の連結工具を用いて相互に圧縮され、該打ち抜きリム/カラーは、確実な(positively)固定方法または不確実な固定方法でプラスチック構造部材へ侵入するか貫通する。
【0003】
既知の複合構造部材または半製品は、例えば、2つの金属薄板を、中間プラスチック材またはプラスチックフォームを用いて接合させてサンドイッチ構造を形成する、積層複合材料から成る(欧州特許出願公開第489320号A明細書、同285974号A1明細書、および同第547664号A2明細書参照)。さらに、外側に金属シートを備えると共に内側にリブ構造体を備える複合シートの製造方法が開示されている(欧州特許出願第775573号A2明細書参照)。さらに、成形機中で、プレスおよび射出成形を併用することにより金属シートを接合させるための方法が開示されている(欧州特許出願公開第721831号A1明細書)。さらに、金属シートがリブ構造体によって支持された、プラスチック/金属の複合構造部材が既知である(欧州特許出願公開第370342号A2明細書)。欧州特許出願公開第1235675号A1明細書において、異なる材料から成る2つの平坦な加工対象物を、一体成形したプラスチック材料を用いて、それらのエッジ領域で共に接合させる複合プラスチック部材が開示されている。
【0004】
上述の先行技術において、金属構造部材(ほとんどの場合金属シート)は、離散点またはより大きな領域全体に亘って、確実な固定方法でプラスチック材料に接合されることにより、系全体の最大剛性が確保されている。そのため、接着または溶着の場合においても、接合部での屈曲を避けるために可能な限り堅固に構造部材を相互に結合させ、また、可能な限りの硬い結合によって、2つの構成要素対へ最大荷重を伝達させる。しかしながら、この方法は、熱が作用する条件下において不利である。何故ならば、ほとんどの場合、異なる熱膨張係数を有する材料を結合させており、その結果、複合材料全体の変形を生じさせるからである。これによって、内部応力が生じ、例えば、構造部材全体に応力亀裂および/または破壊が生じることにより、プラスチック構造部材の性質が低下する。この歪み効果を妨げるための方法が、国際特許出願公開第1997/003855号明細書、欧州特許出願公開第1174299号明細書および米国特許第4881773号明細書に記載されている。
【0005】
米国特許第7037568号B1明細書において、金属箔、例えばアルミニウム表皮を、支持リブ構造体へ接合させる機能を果たす接合部材が開示されている。それによると、該接合部材の1つの面を、金属箔表皮へ接着により結合させ、該接合部材の反対面において、該リブの片面を、刻み目を有する状態で接着により結合させる。この明細書において記載されたリブ構造体は、第3の部材、即ち接合部材を介して接合することにより、金属箔表皮に対する支持基材としての役割も果たす。異なる熱膨張を生じさせないようにして、各部材の材料は選択される。開示された構造部材の重要な要件は、いずれの場合においても、リブを金属箔表皮の周囲に接合させる接合部材の上面および下面の両面に、該リブを配設させることである。この方法によってのみ、効果的な支持機能を果たすことができる。
【0006】
独国特許出願公開第19842456号A1明細書は、プラスチック構造部材の目に見える側面(広い面積)上のひけマークを防ぐ方法を開示する。このことは、二成分射出成形によって施されたリブを用いることによりもたらされる。しかし、支持異形材を用いる接続方法は開示されていない。
【0007】
欧州特許出願公開第1488958号A1明細書は、プラスチック材料製の構造部材と装飾目的の金属を接合させる方法を開示する。しかしながら、本発明において開示されるような支持異形材として、該金属部品を使用することは開示されていない。
【0008】
ガラスまたはプラスチック材料から製造される、可動式の開口ルーフシステムは、剛性または強度要求を充足するために、さらに補強されている。既知のスライド式ガラスルーフの場合、大きな面積を有する異形金属薄板は、スライド式ルーフの下方で接着接合される。異形金属薄板は、プレスおよび/または深絞りによって事前に製造されている。ルーフシステムが透明の場合、その後、金属薄板をシースルー領域において切り抜かなければならない。この方法は、大量の廃棄物を生じる。スライド式ルーフシステムを補強するために、異形金属薄板は、幾何学的慣性モーメントを増加させるためのキャビティを形成させて成形される。使用する金属薄板成形体の大きな面積に起因して、該システムは重くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第10149633号A明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第489320号A明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第285974号A1明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第547664号A2明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第775573号A2明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第721831号A1明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第370342号A2明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1235675号A1明細書
【特許文献9】国際特許出願公開第1997/003855号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第1174299号明細書
【特許文献11】米国特許第4881773号明細書
【特許文献12】米国特許第7037568号B1明細書
【特許文献13】独国特許出願公開第19842456号A1明細書
【特許文献14】欧州特許出願公開第1488958号A1明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明に係る基本的な目的は、プラスチック複合材の製造および使用に際して、該プラスチック構造部材に最大荷重または応力を生じさせないプラスチック複合材を提供することである。構造部材の歪みおよび/または材料の破壊を生じさせる内部応力の発生を妨げることにより、応力亀裂の影響を受けやすい非晶質の熱可塑性物質およびプラスチック材料を使用することができる。強化複合プラスチック構造部材は、材料の効果的な使用の結果として、可能な限り低い重量を示すことができ、また、可能な限り単純な方法を用いて製造することにより安価となる。同時に、本発明に係る強化構造体は、射出成形中に金属シートを装入する場合に生じるような外観の欠陥を、特に「クラスA」表面の場合において、プラスチック構造部材上に生じさせない。
【0011】
新規な方法で強化したプラスチック複合材は、上述の特性を有する、自動車ガラス用途、特に大きなパノラマルーフシステムまたは可動式の開口ルーフシステムにおける使用に適する。
【0012】
本発明の更なる目的は、新規な方法で強化したプラスチック複合材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、強化構造体を特定の形態で一体化させ、金属からプラスチック材料を隔てるための補償層として機能する構造用接着剤を使用することによって、局所的な応力ピークが妨げられる本発明により、これらの目的を達成できた。
【0014】
本発明は、平坦なプラスチック基体G及び該基体の少なくとも一方の面上に配設された少なくとも1つのリブまたは少なくとも1対のリブを有するリブ構造体Rを具有するプラスチック構造部材Kを具備する複合プラスチック構造部材であって、該リブ構造体Rの少なくとも1つのリブ表面を、接着剤により支持異形材Sの少なくとも1つの異形材表面に接合させることによって、該支持異形材Sの狭側面が該プラスチック基体上に接触状態又は離隔状態で配設された該複合プラスチック構造部材を提供する。
【0015】
本発明は、更に、このような複合構造部材の製造方法と、構成要素としてこのような複合構造部材具備する完成部品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1は、熱可塑性の射出成形体によって製造された基体(1)を有する複合構造部材の断面の等角図を示す。
図2は、複合構造部材の断面の上面図である。
図3は、複合構造部材の断面の上面図である。
図4aは、
図1の複合構造部材に関する横断面図である。
図4bは、
図4aと同様の複合構造部材を示す。
図5は、
図4と同様の複合構造部材の横断面図である。
図6は、複合構造部材の横断面図である。
図7は、複合構造部材の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の範囲において、「プラスチック基体上に配設させる」という用語は、異形材の狭側面が該プラスチック基体の表面に対して平行であると共に、I型の異形材を使用する場合、
図4a(該基体上に接触状態で配設される場合)で例示されるように、該異形材を該基体上へ接触状態で配設させるか、または、
図4b(離隔状態で配設される場合)で例示されるようにして、該異形材を、離隔状態で基体上に配設させることを意味する。
【0018】
本発明の範囲に含まれる一組のリブは、相互に隣接して伸びる2つのリブから成り、該リブは相互に平行して伸びていてもよく、または相互間の距離を変動させて伸びていても良い。本発明の範囲において、1以上のリブから成るリブパッケージのリブにも同じことが当てはまる。リブ構造体(R)の全てのリブと同様に、一組のリブにおけるリブは、相互に同一または異なる高さを有してもよい。リブ構造体Rが複数のリブ群から成る場合、リブ群の数および配置は、製造される完成品に関して要求される特性および目的によって、あるいはそこに接着結合させる支持異形材の高さおよび特性によって制御されることが有利である。特に好ましい実施態様においては、強化構造体全域において荷重が分散し、接着剤が可能な限り長い間、好ましくは剪断することにより荷重を受けることができるようにしてリブ群が配置される。
【0019】
好ましい実施態様において、2つ以上のリブが総合に平行して配置され、別の好ましい実施態様において、2つ以上のリブが、節状に相互に凹凸を有して伸びる。
【0020】
更に好ましい実施態様において、リブは、支持異形材(S)の装着を簡単にするため、ガイドまたは支持リブおよび/または更なるガイドまたは保持部材を有する。
【0021】
好ましくは、プラスチック構造部材(K)の基体(G)およびリブ構造体(R)は、射出成形法または押出成形法によって製造され、また、同一の材料または異なる材料から成ることができる。適当な材料は、熱可塑性プラスチックである。特に、以下のものに基づく、非強化、強化および/または充填プラスチック材料が適当である:ポリアミド(PA)、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアクリレート、特にポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、シンジオタクチックポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリオレフィン、特にポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、コポリカーボネート(CoPC)、コポリエステルカーボネート、またはこれらのプラスチック材料の混合物。好ましい実施態様において、プラスチック材料は、非晶質の熱可塑性プラスチック、特にポリカーボネート、コポリカーボネート、コポリエステルカーボネート、PC混合物およびポリメチルメタクリレートである。
【0022】
特に、プラスチック構造部材(K)は、堅固に接着した、あるいは可動式の自動車ルーフモジュール、例えば、幅がbである(
図4a参照)、好ましくは0.5m
2〜1.5m
2の表面積を有するパノラミックルーフなどである。ルーフモジュールの場合における幅bは、少なくとも0.2m、好ましくは0.4mより長い。好ましくは、このようなルーフモジュールは、射出成型法によって製造される。0.5m
2より大きい、好ましくは1m
2より大きい表面積を有する同様のシステムも、建築用ガラス窓として使用できる。このようなガラス窓は、好ましくは押出法によって製造される。
【0023】
リブ構造体内へ装入された支持異形材(S)は、1つの部材から構成されてもよく、複数の部材から構成されてもよい。異形材は、中身を充填したものであってもよく、キャビティ、チャネルなどを設けて製造されてもよい。最も単純で好ましい実施態様において、支持異形材はI型異形材、L型異形材またはT型異形材である。また、例えば、1対のリブを接合させるU型異形材も可能である。閉塞した異形材、例えば矩形管であってもよい。この場合、狭側面および幅広面の形状は同一であってもよい(
図7参照)。適当な形状の場合、支持異形材は、ケーブルおよび管を収容するために使用できる1以上のチャネル、または流体若しくは気体を運ぶために使用できる1以上のチャネルを含んでもよい。
【0024】
図4aにおいて、複合構造部材の寸法は典型的な実施態様で示される。使用される参照番号および参照文字は、以下の意味を有する:
1 プラスチック基体(G)
2 リブ、リブ構造体の部分(R)
3 接着剤層
4 支持異形材(S)
h
S 支持異形材の高さ
h
R リブの高さ
S
W プラスチック基体からみて外方に向く異形材の側面
S
R プラスチック基体に面する支持異形材の側面
b プラスチック基体の幅
【0025】
挿入した異形材がリブ(
図4a、h
R)と同じ高さ(
図4a、h
S)を有するように、支持異形材は、その表面形状をリブと一致させることができる。しかしながら、異形材はリブよりもより低くてもよく、あるいはリブまたはリブ群から突き出るように、高くてもよい。支持異形材(S)の高さh
Sは、リブの高さh
Rの2倍以下であり;別の実施態様においては、支持異形材の高さはリブの高さと厳密に同じである。支持異形材の形状は、更なる機能、例えば、締結要素としての機能を果たすような形状であってもよい。この場合、支持異形材は、強化機能を凌駕する特性を備える半製品である。同様に、少なくとも1種の別の構造部材との非確実および/または確実な係止が支持異形材の構造に及ぶように、支持異形材を配列できる。
【0026】
プラスチック基体(G)の幅bに対するリブの高さh
Rの比は、一般に少なくとも1:10、好ましくは1:15、特に好ましくは1:30である。
【0027】
本発明によると、支持異形材の幅広側面の少なくとも1方が、リブに接着接合される。プラスチック基体からみて外方に向く、該支持部材の狭側面S
wは、リブに組み込まれてもよく、自由であってもよい。プラスチック基体に面する、支持異形材の狭側面S
Rは、該基体上に配設されてもよく、リブの高さh
Rの0.5倍以下の距離で、基体Gから若干の距離を隔てて配設されてもよい。これら2つの実施態様は、I型異形材に関する、
図4a(基体上に接触状態で配設される場合)および
図4b(離隔状態で配設される場合)の例によって説明される。本発明によると、支持異形材Sは、(幅bを有するプラスチック基体Gと、リブ構造体Rを具備する)上述のプラスチック構造部材Kのうちの1つと正確に接合する。従って、異形材の幅広側面とプラスチック基体の面は、相互の相対位置が垂直またはおおよそ垂直となるように配置される(約70〜110°の角度である)。
【0028】
支持異形材Sは、金属、繊維強化材料またはセラミック材料製であってもよい。支持異形材は、押出し成形、加圧成形、深い絞り成形、ロール成形、または他の成型法によって製造できる。
【0029】
好ましくは、支持異形材は金属材料から製造される。特に好ましい実施態様において、支持異形材は、金属シート、好ましくは鋼、鉄、チタン、アルミニウムまたはマグネシウムあるいはこれらの金属の合金製の単純な強化異形材である。特に好ましい実施態様において、支持異形材は、圧延鋼板製または押出しアルミニウム製の異形材である。
【0030】
別の実施態様において、異形材は、セラミック、熱硬化性樹脂(duromer)またはプラスチック複合材料を含有してもよい。
【0031】
接着に関して使用できる構造用接着剤は、商業的に入手可能な接着剤、例えば、フロントガラスまたは金属シート構造体を接着させるための自動車産業用の接着剤を使用できる。湿潤接着剤、コンタクト接着剤、ホットメルト接着剤、または反応性接着剤である。異なる剛性を有する、1成分または2成分系のポリウレタンベースの構造用接着剤が、この技術に関して特に適当である。しかしながら、例えば、アクリル/アクリレート、メチルメタクリレート、シリコーン若しくはエポキシ樹脂に基づく接着剤も使用できる。リブ群の場合、接着剤層は数ミリメーター以下の厚みを有することができる。接着剤層の最小厚さは、接着剤層の柔軟性の観点から生じる要求によってもたらされ、複合構造部材の形状および材料に従いもたらされ、並びに、複合構造部材について生じる要求によってもたらされる。接着剤層の厚さは、接着技術により支持異形材へ接合させる2つのリブ間の間隔差に応じて調整できるので、硬化および遮断の種類および程度は、柔軟な形で調整できる。接着剤は、熱可塑性的に処理できるホットメルト接着剤であってもよい。この場合、多成分射出成形操作で、複合構造部材へプラスチック材料、ホットメルト接着剤および支持異形材を接合させることができる。
【0032】
接着剤層の厚さは、生じる荷重に依存する。構造部材の寸法によって間接的に決定されるか、あるいは該寸法とは関係なく決定される。
【0033】
好ましい実施態様において、接着剤層は0.5〜10mmの厚さであり、特に好ましい実施態様においては、1〜5mmの厚さである。
【0034】
接着剤、または弾力的な結合材は、所望により、また追加的に、確実な係止機能と連結機能の一部となってもよい。複合構造部材間の相対運動が比較的小さな場合、接着剤は、結合素子および遮断素子の機能を果たす。応力ピークおよびそれに関連する欠点が、構造部材において生じないように、高い荷重は、広範囲に亘る接着剤表面を介して伝達すると共に、接着剤表面を正確に伝達しない。
【0035】
本発明は、複合プラスチック構造部材などを製造する方法であって、基体と、少なくとも1つのリブまたは少なくとも1対のリブを備えるリブ構造体とを具備するプラスチック構造部材が、1-、2-または多成分の射出成形法、または押出法によって製造され、さらに、支持異形材の少なくとも1つの面が、接着技術によって、少なくとも1つのリブ表面に結合される該方法を提供する。支持異形材が2つの隣接するリブに結合する場合、該異形材を、まずリブの間に挿入し、次いで結合させてもよく、同様に、まずリブ間へ接着剤を圧入し、次いで支持異形材を挿入してもよい。
【0036】
このような複合プラスチック構造部材を製造する別の可能な方法は、多成分の射出成形法であり、該方法においては、支持異形材を、対応する成形型内に予め配設し、次いで、プラスチック材料と、接着剤として機能する熱可塑性エラストマーとを射出する。
【0037】
本発明による複合構造部材は、支持異形材の形状に関する要求が小さいことを利点とする。単純な強化シートを挿入してもよく、接着剤層の厚さによって許容偏差を補償してもよい。単純な形状に起因して廃棄物が生じず、さらに、支持異形材と、基体の主面とを垂直に配列することに起因して、必要な支持異形材より少なくできる。このことは、支持異形材に関するより少ない材料コストとより少ない製造コストに起因する費用効果をもたらすと共に、最終部品の重量を減少させる。接着剤層を用いることで、生じる荷重を、広範囲に亘りかつ均一にプラスチック材料中へ分配させることができ、応力ピークを生じさせない。本発明に係る新規な技術は、金属異形材で強化される、非晶質の熱可塑性物質から成る構造部材も提供できる。強化及び遮断の性質及び程度は、リブの形状と接着剤層の厚さを設定することにより、極めて柔軟な方法で調整できる。振動および騒音は、接着剤層の減衰特性によって抑制される。
【0038】
本発明による強化プラスチック構造部材は、例えば、自動車、航空機、鉄道、船舶、建築の構造部材または構造部材の構成材に使用でき、あるいは家庭用品、電化製品または電気装置の製造に使用できる。適用例は、建築用ガラスおよび自動車用ガラスであり、特にルーフモジュール、例えばパノラミックルーフなどである。更に可能な用途は、自動車用のサイドパネル、自動車座席の骨組み、並びに家具、例えばイスおよびテーブル用のプラスチック構造部材である。
【0039】
好ましい実施態様において、複合プラスチック構造部材は、自動車用ガラス、特に大きなパノラミックルーフまたは可動式の開口ルーフシステムの製造において使用される。
【0040】
自動車用ガラスの製造に関して、支持異形材は、好ましくは0.5〜5mm、特に好ましくは0.8〜3mmの壁厚を有する。
【0041】
本明細書において記載されるシステムは、ルーフシステムの重量を低減させることに貢献できる。
【0042】
1つの実施態様において、2成分系の射出成形法によって製造される本発明に係る構造部材は、透明プラスチック材料、例えばポリカーボネートから成る透明成分と、別のプラスチック材料、例えばPC混合物から成る第2成分から構成され、強化される領域に一体成形されたリブ対を具備する。該1対のリブは、得られる垂直空間の全てを使用してもよい。射出成形工程に続き、多くの場合、該構造部材はラッカーシステムで被覆される。常套のラッカーシステムは加熱を行うことで硬化する。ラッカー処理の後または前に、支持異形材を、基体上のリブ対の間に挿入し、リブの間に位置する支持リブにより適切な位置に固定する。標準的な接着工程の場合、自動車用窓ガラスまたは車体の構造部材を接着するために使用されるようして、その後支持異形材は基体に接着される。スライド式装置の取り付けは、支持異形材において予め配設した孔を用いてその後行うことができる。この種の方法の場合、荷重は支持異形材内を通過し、熱可塑性の基体内は通過しない。
【0043】
常套の方法によって平行に取り付けられる常套の強化金属シートと比較して、ルーフ表面へ垂直に配設した支持異形材のより軽い重量に起因して、強化材を最大50%減量できる。
【0044】
本発明に係るシステムは、熱の作用条件下において際立った柔軟性を示す。熱可塑性の基体が膨張する場合、固く結合させた強化システムは、構成材群の歪みを生じさせる。本発明において使用される極めて薄い接着剤は、基体と強化異形材の間で相対運動をすることができ、歪みを低減させる。このシステムは全体的に高い剛性を有するにもかかわらず、支持異形材を垂直に配設することにより、極めて長い接着接合がもたらされると共に、望ましい荷重移動が剪断条件下に生じる。該システムの剛性は、接着剤の厚みおよび接着剤の剛性を調節することにより、更に調整できる。
【0045】
本発明による方法を用いることにより、表面断層を示さない複合部品を製造することができ、このことは、特に、「クラスA」要件に対して重要である。
【0046】
附属の図面は、実施例によってより詳細に本発明を説明することを目的とするが、これらの実施態様に限定されるものではない。以下に図面の説明を記載する:
【0047】
図1は、熱可塑性射出成形品によって製造された基体(1)を有する複合構造部材の断面の等角図を示す。2つの平行リブ(2)は、基体(1)に対して垂直に一体成形される。支持異形材(4)は、2つのリブ(2)の間に挿入され、構造用接着剤(3)を用いて該リブ(2)へ接合される。この実施態様において、リブ(2)はそれぞれ同じ高さである。I型の異形材である支持異形材(4)はより高く、リブ(2)の間から突き出ている。
【0048】
図2は、複合構造部材の断面の上面図である。ここで示される形態は、
図1で表されるものと異なっており、リブ(2)は、相互に平行に伸びていない。この実施態様において、構造用接着剤(3)が中央部に肉厚部を有するように、リブ(2)は相互に凸状に伸びている。
【0049】
図3は、複合構造部材の断面の上面図である。ここで示される形態は、
図1で表されるものと異なっており、リブ(2)は、相互に平行に伸びていない。この実施態様において、構造用接着剤(3)が中央部に肉薄部を有するように、リブ(2)は相互に凹状に伸びている。
【0050】
図4aは、
図1の複合構造部材に関する横断面図である。ここで特に注目に値することは、リブ(2)の高さと、この変形例においてはI型の異形材である支持異形材(4)の高さが異なることである。
【0051】
図4bは、
図4aと同様の複合構造部材を示すが、この図において、I型異形材は、プラスチック基体から離隔状態で配設される。
【0052】
図5は、
図4と同様の複合構造部材の横断面図である。この変形例において、支持異形材(4)とリブ(2)は同じ高さである。
【0053】
図6は、複合構造部材の横断面図である。この変形例において、強化目的のために、T型の異形材である支持異形材(4)が、構造用接着剤(3)を用いてリブ(2)へ接着されている。
【0054】
図7は、複合構造部材の横断面図である。この変形例において、矩形断面の中空異形材が、支持異形材(4)として使用されている。側面に近接するチャネルは、ケーブル若しくは管を収容するため、あるいは媒体、例えばガス若しくは流体などを運ぶために使用できる。
【実施例】
【0055】
本発明は、本発明に係る複合構造部材から、本発明に係るルーフモジュールを製造する更なる実施態様例を参照して以下に記載の詳細により説明される。
【0056】
この実施態様例において、2成分系の射出成型法により製造される本発明に係る構造部材は、透明プラスチック材料、本実施例においてはポリカーオネートを含有する透明成分と、以下に記載する第2成分から成る。該第2成分は、別のプラスチック材料から成り、本実施例においてはポリカーボネート混合物から成る。ここに開示される2成分系の射出成形は、回動板手段を備える適当な射出成形機を用いて行われる。
【0057】
第1工程において、低い内部応力を有する構造部材を製造するために、射出成形によって加工するのに適当なポリカーボネート、例えばMakrolon(登録商標)AG2677を、射出圧縮成型法により加工し、600mm×800mmのサイズを有するシートを成形する。5mmの壁厚を有する第1成分の射出成形後、該手段を開き、回転させる。先程射出成形した第1成分は、回動板の空洞中に存在するので、成型された部材も回転する。別の工程において、別の熱可塑性プラスチックを、反対側に位置する第2射出成形装置を用いて、該第1成分上に射出成形する。第2成分のプラスチック材料は黒色であり、PC/ABS混合物、例えばBayblend(登録商標)T95MFから成る。第2成分は、第1成分の全体に亘って射出せず、中央部の透明なシースルー領域を除く、第1成分の周囲を包囲する形態で射出される。そして、200mmの幅と2.5mmの厚さを有する周囲の第2成分および透明なポリカーボネートシートは、共に基体Gを構成する。リブ構造体Rは、第2の黒色の成分を用いて同じ射出成形工程で成形した。
【0058】
反対面のひけマークを防ぐように、リブは、基体G(第2成分)と比べて効果的な厚さ比を有する。該リブは、リブの下部で約2mmの厚みを有し、15mmの高さを有する。この実施態様においては、
図1に示されるような、相互に平行して伸びるリブを製造した。
【0059】
1対のリブは、ルーフの外側にて前後左右に伸びる。この実施態様において、1対のリブは、他のリブに対して直角に配列されるが、相互に接合されない。別の実施態様においては、1対のリブを、コーナー部分で相互に接合させてもよい。本実施態様の場合は、4つの個別の支持異形材が必要であり、1対のリブを相互に接合させる場合、ルーフの周囲を囲むように配設されたリブの間に挿入されるようにして、1つの支持異形材のみを使用できる。
【0060】
前方部および後方部において挿入された支持異形材は、主にルーフを強化する機能を果たす。右側面部および左側面部においては、ルーフ周辺部との接続をもたらすために、ルーフの運動ガイドが、該目的に対して適当な孔(bore)および隙間(aperture)を有する支持異形材に装着される。次いで、支持異形材に予め施した孔を用いることによって、スライド装置の装着を行うことができる。この種の方法の場合、荷重は支持異形材内を通過し、熱可塑性の基体内を通過しない。
【0061】
リブ(
図1、番号3)の間隔は、支持異形材(
図1、番号4)の厚さと、リブ間に配設される接着剤(
図1、番号2)の厚さによってもたらされる。支持異形材(ここでは、鋼板製のI型異形材)の厚さは、この実施態様における可動式ルーフカバーの場合1.5mmであり、接着剤は、該異形材の両側において3mmの厚さを有する。接着剤と支持異形材の厚さは、リブの内面を基準として、7.5mmのリブ間隔をもたらす。リブに対して垂直である小さな支持リブは、射出成形によって成形される。これらは、1対のリブのリブ間隔内に配設されるとともに、リブに対して垂直に配設される。該支持リブの高さは、リブの高さの約1/3であり、壁厚は0.5mmである。支持リブは、リブ間に未だ接着剤を挿入していない場合において、支持異形材を装着する際に、該支持異形材の位置を合わせる機能を果たす。
【0062】
射出成形工程に続き、構造部材は、表面の引っ掻き抵抗性と紫外線抵抗性を増加させるために、ラッカーシステムで被覆される。リブ間の間隙はラッカーを含まないままである。常套のラッカーシステムは加熱を行うことで硬化する。ラッカー処理の後、1.5mmの壁厚を有する鋼板製の支持異形材が、基体上の1対の支持リブの間に挿入され、該1対の支持リブの間で固定される。次いで、自動車用窓ガラスまたは車体の構造部材を接着するために使用されるような標準的な接着接合法によって、支持異形材をリブに対して接着接合させる。この実施態様において、支持異形材は1対のリブの間に配置され、支持リブによって適当な位置に保持され、2成分型ポリウレタン接着剤を、リブと支持異形材の間に生じる間隙内に導入する。別の実施態様においては、まず、接着剤を1対のリブの間に導入してもよい。その後、リブ間へ支持異形材を押圧挿入する。
【0063】
本発明による自動車用ルーフモジュールは、標準的な強化を施したルーフモジュールと比較して、著しく減少した重量を示す。
【符号の説明】
【0064】
1 プラスチック基体(G)
2 リブ、リブ構造体の部分(R)
3 接着剤層
4 支持異形材(S)
h
S 支持異形材の高さ
h
R リブの高さ
S
W プラスチック基体からみて外方に向く異形材の側面
S
R プラスチック基体に面する支持異形材の側面
b プラスチック基体の幅