特許第5671483号(P5671483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671483
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】色素沈着予防又は改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20150129BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20150129BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20150129BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20150129BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   A61K8/44
   A61Q19/02
   A61K31/198
   A61P17/00
   A61P17/16
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2011-549980(P2011-549980)
(86)(22)【出願日】2011年1月12日
(86)【国際出願番号】JP2011050314
(87)【国際公開番号】WO2011087006
(87)【国際公開日】20110721
【審査請求日】2013年12月20日
(31)【優先権主張番号】特願2010-3785(P2010-3785)
(32)【優先日】2010年1月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴史
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 千尋
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−105976(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/058730(WO,A1)
【文献】 特開2006−052152(JP,A)
【文献】 特開平11−343235(JP,A)
【文献】 特開2008−088113(JP,A)
【文献】 国際公開第00/064926(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)に表される化合物、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなる色素沈着予防又は改善剤。
【化1】
(1)
[式中、
は、水素原子、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、
は、水素原子を表し、
は、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基又はビフェニル基を表し、
nは、1又は2の整数、mは、を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、
が、水素原子、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、
が、水素原子を表し、
が、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基又はビフェニル基を表し、
nが1、mが0を表す、
ことを特徴とする、請求項に記載の色素沈着予防又は改善剤。
【請求項3】
前記一般式(1)に表される化合物が、N−(o−トルオイル)システイン酸(化合物
1)、N−(m−トルオイル)システイン酸(化合物2)、N−(p−トルオイル)システイン酸(化合物3)、N−(p−メトキシベンゾイル)システイン酸(化合物4)、N−(4−フェニルベンゾイル)システイン酸(化合物5)、N−(p−トルオイル)ホモシステイン酸(化合物6)、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、請求項に記載の色素沈着予防又は改善剤。
【化2】
N−(o−トルオイル)システイン酸(化合物1)
【化3】
N−(m−トルオイル)システイン酸(化合物2)
【化4】
N−(p−トルオイル)システイン酸(化合物3)
【化5】
N−(p−メトキシベンゾイル)システイン酸(化合物4)
【化6】
N−(4−フェニルベンゾイル)システイン酸(化合物5)
【化7】
N−(p−トルオイル)ホモシステイン酸(化合物6)
【請求項4】
前記一般式(1)に表される化合物が立体異性体である、請求項1〜3の何れか一項に記載の色素沈着予防又は改善剤。
【請求項5】
請求項1〜の何れか一項に記載の色素沈着予防又は改善剤を含有することを特徴とする、色素沈着予防又は改善用の皮膚外用剤。
【請求項6】
皮膚外用剤全量に対し、前記色素沈着予防又は改善剤を、0.0001質量%〜20質量%含有することを特徴とする、請求項に記載の色素沈着予防又は改善用の皮膚外用剤。
【請求項7】
化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、請求項又はに記載の色素沈着予防又は改善用の皮膚外用剤。
【請求項8】
下記一般式(1)に表される化合物、及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を含有することを特徴とする、美白用皮膚外用剤。
【化8】
(1)
[式中、
1は、水素原子、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、
2は、水素原子を表し、
3は、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、メ
トキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基又はビフェニル基を表し、
nは、1又は2の整数、mは、を表す。]
【請求項9】
前記一般式(1)に表される化合物が立体異性体である、請求項8に記載の美白用皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料(但し、医薬部外品を含む)に好適な皮膚外用剤に関し、詳しくは、下記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなる色素沈着予防又は改善剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤に関する。
【0002】
【化1】
(1)
[式中、R1は、水素原子、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R2は、水素原子、若しくは、無置換の若しくは置換基を有する、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基又は炭素数5〜12の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、R3は、無置換の若しくは置換基を有する、炭素数5〜15の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、nは、1又は2の整数、mは、0〜3の整数を表す。]
【背景技術】
【0003】
皮膚における日焼け後の色素沈着、シミ、肝斑、老人性色素斑などは、皮膚内に存在する色素細胞(メラノサイト)の活性化によりメラニン生成が著しく亢進した状態である。これらの皮膚色素トラブルの発生・悪化を防止又は改善する作用を有する成分としては、アスコルビン酸類、過酸化水素、コロイド硫黄、グルタチオン、ハイドロキノン、カテコ−ル等の美白作用を有する化合物(美白剤)がよく知られ(例えば、非特許文献1及び非特許文献2を参照)、前記成分を有効成分として配合した皮膚外用剤が広く使用されている。現在、美白剤として知られる化合物が有する作用機序としては、チロシナ−ゼ酵素阻害作用、チロシナ−ゼ関連蛋白分解、メラノサイトにおけるデンドライト伸長抑制によるメラニン移送阻害などの多様な作用機序が報告されており、それぞれの作用機序に対する標的分子が存する。高い美白効果を発現するためには、標的分子に対し適切に相互作用する有機低分子が有用である。また、それぞれの標的分子に適切に相互作用する有機低分子の構造上の特性は、個々の標的分子により異なっているため、有機低分子が示す薬理作用を最大限に生かすための化学構造最適化に関する研究も盛んに行われている。現在の美白剤の研究は、既存の標的分子に作用し高い有効性及び選択性を有する化合物のほか、同時に複数の美白標的分子に働きかける化合物、更には、新たな作用機序を有する化合物等に広がり、この様な美白剤には、高い美白作用が期待されている。実際、様々な化学構造又は薬理学的な特性を有する有用な化合物を求め、優れた美白作用を有する化合物に関するスクリ−ニングが実施されており、いまなお新規母核を有する美白剤が求められている。
【0004】
生体を構成する蛋白質は、ほとんどの場合、必須アミノ酸と呼ばれる側鎖の異なる20種類のα−アミノ酸により構成されている。前記α−アミノ酸には、生体成分を構成する働きに加え、多様な生物活性が報告されている。また、前記α−アミノ酸の内、その化学構造中に硫黄原子を有するメチオニン及びシステインには、他のα−アミノ酸とは異なる硫黄原子の特性に起因する生物活性が期待され、医薬品、化粧品、食品等の多岐に渡る分野への応用がなされている。特に、化粧品分野においては、メチオニン及びシステインを配合する皮膚外用剤として、毛髪用還元成分(例えば、特許文献1を参照)、保湿成分作用(例えば、特許文献2を参照)等としての使用が報告されている。また、システイン誘導体のN−アセチル−L−システインは、抗酸化剤のグルタチオンへと代謝されるためサプリメントとして使用されている。しかしながら、硫黄原子を分子構造中に含むこの様なα−アミノ酸誘導体を化粧料等に応用した場合には、アミノ酸それ自身、又は、皮膚外用剤等の組成物における安定性、更には、分解物による異臭が発生する等の課題が存する。一方、システイン酸及びその窒素原子上に脂肪族アシル基を有する誘導体には、油溶性基材(例えば、特許文献3を参照)、界面活性剤(例えば、特許文献4を参照)、粘液溶解活性及び抗酸化作用(例えば、特許文献5を参照)等が、また、システイン酸のN−ベンジル誘導体には、抗酸化作用(例えば、特許文献6を参照)が存することが知られている。しかしながら、本願発明者の知る限り、前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に、色素沈着予防又は改善作用が存することは知られていない。さらに、本願発明者の知る限り、当該化合物は、水性又は油性媒体への溶解性がよく、化合物及び製剤形態においても非常に安定であり、皮膚外用剤等の化粧料に配合した場合に異臭がほとんどしないことは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−162699号公報
【特許文献2】特開2004−323401号公報
【特許文献3】特開平05−117295号公報
【特許文献4】特開2002−145736号公報
【特許文献5】特開2005−530883号公報
【特許文献6】特開平11−343235号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】武田克之ら監修、「化粧品の有用性、評価技術と将来展望」、薬事日報社刊(2001年).
【非特許文献2】大森敬之、FRAGRANCE JOURNAL 臨時増刊、No.14、1995、 118−126.
【発明の概要】
【0007】
本発明は、この様な状況下において為されたものであり、色素沈着予防又は改善用に好適な、新規母核を有する色素沈着予防又は改善剤、並びに、当該成分を含有する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【0008】
この様な状況に鑑みて、本発明者等は、化粧料(但し、医薬部外品を含む)に好適な、新規な色素沈着予防又は改善剤を求めて鋭意努力を重ねた結果、前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が、色素沈着予防又は改善作用に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明は、以下に示す通りである。
【0009】
<1>下記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなる色素沈着予防又は改善剤。
【0010】
【化2】
(1)
【0011】
[式中、
1は、水素原子、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、
2は、水素原子、若しくは、無置換の若しくは置換基を有する、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基又は炭素数5〜12の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、
3は、無置換の若しくは置換基を有する、炭素数5〜15の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、
nは、1又は2の整数、mは、0〜3の整数を表す。]
【0012】
<2>前記一般式(1)において、
1が、水素原子、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、
2が、水素原子を表し、
3が、無置換の若しくは置換基を有する、炭素数5〜15の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、
nが、1又は2の整数、mが、0〜3の整数を表す、
ことを特徴とする、<1>に記載の色素沈着予防又は改善剤。
【0013】
<3>前記一般式(1)において、
1が、水素原子、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、
2が、水素原子を表し、
3が、無置換の若しくは置換基を有する、炭素数5〜15の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、
nが、1又は2の整数、mが0を表す、
ことを特徴とする、<1>又は<2>に記載の色素沈着予防又は改善剤。
【0014】
<4>前記一般式(1)において、
1が、水素原子、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、
2が、水素原子を表し、
3が、無置換の若しくは置換基を有する、炭素数5〜15の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、
nが1、mが0を表す、
ことを特徴とする、<1>〜<3>の何れかに記載の色素沈着予防又は改善剤。
【0015】
<5>前記一般式(1)に表される化合物が、N−(o−トルオイル)システイン酸(化合物1)、N−(m−トルオイル)システイン酸(化合物2)、N−(p−トルオイル)システイン酸(化合物3)、N−(p−メトキシベンゾイル)システイン酸(化合物4)、N−(4−フェニルベンゾイル)システイン酸(化合物5)、N−(p−トルオイル)ホモシステイン酸(化合物6)、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であることを特徴とする、<1>〜<3>の何れかに記載の色素沈着予防又は改善剤。
【0016】
【化3】
N−(o−トルオイル)システイン酸(化合物1)
【0017】
【化4】
N−(m−トルオイル)システイン酸(化合物2)
【0018】
【化5】
N−(p−トルオイル)システイン酸(化合物3)
【0019】
【化6】
N−(p−メトキシベンゾイル)システイン酸(化合物4)
【0020】
【化7】
N−(4−フェニルベンゾイル)システイン酸(化合物5)
【0021】
【化8】
N−(p−トルオイル)ホモシステイン酸(化合物6)
【0022】
<6><1>〜<5>の何れかに記載の色素沈着予防又は改善剤を含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
<7>皮膚外用剤全量に対し、前記色素沈着予防又は改善剤を、0.0001質量%〜20質量%含有することを特徴とする、<6>に記載の皮膚外用剤。
<8>化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、<6>又は<7>に記載の皮膚外用剤。
<9>前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を含有することを特徴とする、美白用皮膚外用剤。
【0023】
<10>色素沈着予防又は改善のための、前記一般式(1)に表される化合物、前記<2>〜<5>に定義される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩。
<11>前記一般式(1)に表される化合物、前記<2>〜<5>に定義される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩を、色素沈着に対する予防又は改善が必要な対象に投与することを含む、色素沈着予防又は改善方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<本発明の皮膚外用剤における必須成分の色素沈着予防又は改善剤>
本発明の皮膚外用剤は、前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなる色素沈着予防又は改善剤を含有することを特徴とする。本発明の色素沈着予防又は改善剤の作用には、既に形成された色素沈着を薄くする又は消去する色素沈着抑制作用に加え、これから形成される色素沈着を予防する作用も包含される。本発明の色素沈着予防又は改善剤としては、前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であって、色素沈着を予防又は改善する作用を有する成分であれば、特段の限定なく適応することが出来るが、より好ましくは、後記の「有色モルモットを用いた紫外線照射による色素沈着抑制作用評価」において色素沈着抑制作用を有する成分が好適に例示出来る。前記の色素沈着抑制作用評価において色素沈着抑制作用を有する成分とは、コントロ−ル群(溶媒対照群)に比較し、評価物質投与群に色素沈着抑制作用が認められる成分を意味し、より好ましくは、コントロ−ル群に比較し、評価物質投与群の色素沈着抑制作用に統計的な有意差が認められる成分が好ましい。
【0025】
ここで前記一般式(1)に表される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に関して述べれば、式中、R1は、水素原子、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R2は、水素原子、若しくは、無置換の若しくは置換基を有する、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基又は炭素数5〜12の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、R3は、無置換の若しくは置換基を有する、炭素数5〜15の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、nは、1又は2の整数、mは、0〜3の整数を表す。
【0026】
前記R1は、水素原子、炭素数1〜8、より好ましくは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、具体例を挙げれば、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が好適に例示出来、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基が好適に例示出来る。
【0027】
2は、水素原子、若しくは、無置換の若しくは置換基を有する炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基又は炭素数5〜12の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、置換基としては、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル鎖を有するアルコキシ基、アルコキシアルキル基(好ましくは、炭素数1〜4のアルキル鎖を有するアルコキシ基及び炭素数1〜4のアルキル基からなる)、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を有してもよい芳香族基又は多環縮合芳香族基(芳香族基又は多環縮合芳香族基として好ましくは、フェニル基、ナフチル基である)、ヒドロキシ基などが好適に例示出来る。
【0028】
2が表す基に関し、具体例を挙げれば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、ベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、プロピルベンジル基、メトキシベンジル基、エトキシベンジル基、プロピルオキシベンジル基、フェニルエチル基、メチルフェニルエチル基、エチルフェニルエチル基、プロピルフェニルエチル基、メトキシフェニルエチル基、エトキシフェニルエチル基、プロピルオキシフェニルエチル基、ナフチル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、ナフチルメチル基、メチルナフチルメチル基、エチルナフチルメチル基、メトキシナフチルメチル基、メトキシナフチルメチル基、エトキシナフチルメチル基、ナフチルエチル基、メチルナフチルエチル基、エチルナフチルエチル基、メトキシナフチルエチル基、エトキシナフチルエチル基、ビフェニル基等が好適に例示出来、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ベンジル基が好適に例示出来る。
【0029】
3は、無置換若しくは置換基を有していても良い、炭素数5〜15の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、置換基としては、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル鎖を有するアルコキシ基、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル鎖を有するアルキルアミノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基(好ましくは、炭素数1〜4のアルキル鎖を有する)、ヒドロキシ基、アミノ基などが好適に例示出来る。
【0030】
3が表す基に関し、具体例を挙げれば、ピリジル基、メチルピリジル基、エチルピリジル基、プロピルピリジル基、メトキシピリジル基、エトキシピリジル基、プロピルオキシピリジル基、ヒドロキシピリジル基、アミノピリジル基、N−メチルアミノピリジル基、N−エチルアミノピリジル基、N,N−ジメチルアミノピリジル基、N,N−ジエチルアミノピリジル基、クロロピリジル基、フルオロピリジル基、ジフルオロピリジル基、トリフルオロメチルピリジル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノフェニル基、N−メチルアミノフェニル基、N−エチルアミノフェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基、N,N−ジエチルアミノフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基、プロピルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、プロピルオキシナフチル基、ヒドロキシナフチル基、アミノナフチル基、N−メチルアミノナフチル基、N−エチルアミノナフチル基、N,N−ジメチルアミノナフチル基、N,N−ジエチルアミノナフチル基、クロロナフチル基、フルオロナフチル基、ジフルオロナフチル基、トリフルオロメチルナフチル基、ビフェニル基、メチルビフェニル基、エチルビフェニル基、メトキシビフェニル基、エトキシビフェニル基等が好適に例示出来、より好ましくは、ピリジル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が好適に例示出来る。
【0031】
前記脂肪族炭化水素基、芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基の置換基の数としては、0〜3が好適に例示出来、より好ましくは、0又は1であり、脂肪族炭化水素基、芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基上の置換基は、前記1種又は2種以上の置換基が、それぞれ独立に存在することが出来る。
【0032】
また、前記nは、1又は2の整数、mは、0〜3の整数を表す。
【0033】
前記一般式(1)に表される化合物の内、好ましいものとしては、前記<2>に定義される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、より好ましいものとしては、前記<3>に定義される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が、さらに好ましいものとしては、前記<4>に定義される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。前記一般式(1)に表される化合物及び<2>〜<4>に定義される化合物の内、好ましい化合物を具体的に例示すれば、N−(o−トルオイル)システイン酸(化合物1)、N−(m−トルオイル)システイン酸(化合物2)、N−(p−トルオイル)システイン酸(化合物3)、N−(p−メトキシベンゾイル)システイン酸(化合物4)、N−(4−フェニルベンゾイル)システイン酸(化合物5)、N−(p−トルオイル)ホモシステイン酸(化合物6)、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。かかる化合物は、優れた色素沈着予防又は改善作用を有する。また、親水性又は親油性媒体に対する溶解性に優れ、皮膚外用剤等への製剤化が容易であり、さらに、製剤中における安定性及び皮膚貯留性に優れ、製品化の障害となる臭いが発生せず、色素沈着の予防又は改善に優れた効果を発揮する。
【0034】
ここで前記<2>に定義される化合物に付いて述べれば、式中、R1は、水素原子、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R2は、水素原子を表し、R3は、無置換の若しくは置換基を有する、炭素数5〜15の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、nは、1又は2の整数、mは、0〜3の整数を表す。
【0035】
前記R1は、水素原子、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、具体例を挙げれば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが好適に例示出来、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基が好適に例示出来る。
【0036】
前記R3は、無置換の若しくは置換基をする、炭素数5〜15の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、置換基としては、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル鎖を有するアルコキシ基、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル鎖を有するアルキルアミノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基(好ましくは、炭素数1〜4のアルキル鎖を有する)、ヒドロキシ基、アミノ基などが好適に例示出来る。
【0037】
3が表す基に関し、具体例を挙げれば、ピリジル基、メチルピリジル基、エチルピリジル基、プロピルピリジル基、メトキシピリジル基、エトキシピリジル基、プロピルオキシピリジル基、ヒドロキシピリジル基、アミノピリジル基、N−メチルアミノピリジル基、N−エチルアミノピリジル基、N,N−ジメチルアミノピリジル基、N,N−ジエチルアミノピリジル基、クロロピリジル基、フルオロピリジル基、ジフルオロピリジル基、トリフルオロメチルピリジル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノフェニル基、N−メチルアミノフェニル基、N−エチルアミノフェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基、N,N−ジエチルアミノフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基、プロピルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、プロピルオキシナフチル基、ヒドロキシナフチル基、アミノナフチル基、N−メチルアミノナフチル基、N−エチルアミノナフチル基、N,N−ジメチルアミノナフチル基、N,N−ジエチルアミノナフチル基、クロロナフチル基、フルオロナフチル基、ジフルオロナフチル基、トリフルオロメチルナフチル基、ビフェニル基、メチルビフェニル基、エチルビフェニル基、メトキシビフェニル基、エトキシビフェニル基等が好適に例示出来、より好ましくは、ピリジル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が好適に例示出来る。
【0038】
前記芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基の置換基の数としては、0〜3が好適に例示出来、より好ましくは、0又は1であり、脂肪族炭化水素基、芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基上の置換基は、前記1種又は2種以上の置換基が、それぞれ独立に存在することが出来る。
【0039】
また、前記nは、1又は2の整数、mは、0〜3の整数を表す。
【0040】
前記<2>に定義される化合物の内、前記<3>又は<4>に定義される化合物に含まれない化合物を具体的に例示すれば、N−(フェニルエチルカルボニル)システイン酸、N−(フェニルプロピルカルボニル)システイン酸、N−(ベンジルカルボニル)システイン酸、N−(メチルベンジルカルボニル)システイン酸、N−(エチルベンジルカルボニル)システイン酸、N−(プロピルベンジルカルボニル)システイン酸、N−(ブチルベンジルカルボニル)システイン酸、N−(メトキシベンジルカルボニル)システイン酸、N−(エトキシベンジルカルボニル)システイン酸、N−(プロピルオキシベジルカルボニル)システイン酸、N−(ブチルオキシベンジルカルボニル)システイン酸、N−(ヒドロキシベンジルカルボニル)システイン酸、N−(アミノベンジルカルボニル)システイン酸、N−(N'−メチルアミノベンジルカルボニル)システイン酸、N−(N'−エチルアミノベンジルカルボニル)システイン酸、N−(N',N'−ジメチルアミノベンジルカルボニル)システイン酸、N−(N',N'−ジエチルアミノベンジルカルボニル)システイン酸、N−(クロロベンジルカルボニル)システイン酸、N−(フルオロベンジルカルボニル)システイン酸、N−(ジフルオロベンジルカルボニル)システイン酸、N−(トリフルオロメチルベンジルカルボニル)システイン酸、N−(フェニルエチルカルボニル)システイン酸 エチルエステル、N−(フェニルプロピルカルボニル)システイン酸 エチルエステル、[N−(ベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(メチルベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(エチルベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(プロピルベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(ブチルベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(メトキシベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(エトキシベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(プロピルオキシベジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(ブチルオキシベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(ヒドロキシベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(アミノベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(N'−メチルアミノベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(N'−エチルアミノベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(N',N'−ジメチルアミノベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエスエル、[N−(N',N'−ジエチルアミノベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(クロロベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(フルオロベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(ジフルオロベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、[N−(トリフルオロメチルベンジルカルボニル)システイン酸]エチルエステル、N−(フェニルエチルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(フェニルプロピルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(ベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(メチルベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(エチルベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(プロピルベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(ブチルベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(メトキシベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(エトキシベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(プロピルオキシベジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(ブチルオキシベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(ヒドロキシベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(アミノベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(N'−メチルアミノベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(N'−エチルアミノベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(N',N'−ジメチルアミノベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(N',N'−ジエチルアミノベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(クロロベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(フルオロベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(ジフルオロベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(トリフルオロメチルベンジルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(フェニルエチルカルボニル)ホモシステイン酸 エチルエステル、N−(フェニルプロピルカルボニル)ホモシステイン酸 エチルエステル、[N−(ベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(メチルベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(エチルベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(プロピルベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ブチルベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(メトキシベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(エトキシベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(プロピルオキシベジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ブチルオキシベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ヒドロキシベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(アミノベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N'−メチルアミノベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N'−エチルアミノベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N',N'−ジメチルアミノベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N',N'−ジエチルアミノベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(クロロベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(フルオロベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ジフルオロベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(トリフルオロメチルベンジルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。
【0041】
かかる化合物は、優れた色素沈着予防又は改善作用を有する。また、親水性又は親油性媒体に対する溶解性に優れ、皮膚外用剤等への製剤化が容易であり、さらに、製剤中における安定性及び皮膚貯留性に優れ、色素沈着の予防又は改善に優れた効果を発揮する。
【0042】
ここで前記<3>に定義される化合物に付いて述べれば、式中、R1は、水素原子、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R2は、水素原子を表し、R3は、無置換の若しくは置換基を有する、炭素数5〜15の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、nは、1又は2の整数、mは0を表す。
【0043】
前記R1は、水素原子、炭素数1〜8、より好ましくは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、具体例を挙げれば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが好適に例示出来、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基が好適に例示出来る。
【0044】
前記R3は、無置換の若しくは置換基を有する、炭素数5〜15の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、置換基としては、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル鎖を有するアルコキシ基、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル鎖を有するアルキルアミノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基(好ましくは、炭素数1〜4のアルキル鎖を有する)、ヒドロキシ基、アミノ基などが好適に例示出来る。
【0045】
3が表す基に関し、具体例を挙げれば、ピリジル基、メチルピリジル基、エチルピリジル基、プロピルピリジル基、メトキシピリジル基、エトキシピリジル基、プロピルオキシピリジル基、ヒドロキシピリジル基、アミノピリジル基、N−メチルアミノピリジル基、N−エチルアミノピリジル基、N,N−ジメチルアミノピリジル基、N,N−ジエチルアミノピリジル基、クロロピリジル基、フルオロピリジル基、ジフルオロピリジル基、トリフルオロメチルピリジル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノフェニル基、N−メチルアミノフェニル基、N−エチルアミノフェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基、N,N−ジエチルアミノフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基、プロピルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、プロピルオキシナフチル基、ヒドロキシナフチル基、アミノナフチル基、N−メチルアミノナフチル基、N−エチルアミノナフチル基、N,N−ジメチルアミノナフチル基、N,N−ジエチルアミノナフチル基、クロロナフチル基、フルオロナフチル基、ジフルオロナフチル基、トリフルオロメチルナフチル基、ビフェニル基、メチルビフェニル基、エチルビフェニル基、メトキシビフェニル基、エトキシビフェニル基等が好適に例示出来、より好ましくは、ピリジル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が好適に例示出来る。
【0046】
前記芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基の置換基の数としては、0〜3が好適に例示出来、より好ましくは、0又は1であり、脂肪族炭化水素基、芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基上の置換基は、前記1種又は2種以上の置換基が、それぞれ独立に存在することが出来る。
【0047】
また、前記nは、1又は2の整数、mは0を表す。
【0048】
前記<3>に定義される化合物の内、前記<4>に定義される化合物に含まれない化合物を具体的に例示すれば、N−(ベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(p−トルオイル)ホモシステイン酸(化合物6)、N−(エチルベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(プロピルベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(ブチルベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(メトキシベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(エトキシベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(プロピルオキシベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(ブチルオキシベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(ヒドロキシベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(アミノベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(N'−メチルアミノベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(N'−エチルアミノベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(N',N'−ジメチルアミノベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(N',N'−ジエチルアミノベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(クロロベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(フルオロベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(ジフルオロベンゾイル)ホモシステイン酸、N−(トリフルオロメチルベンゾイル)ホモシステイン酸、[N−(ベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(トルオイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(エチルベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(プロピルベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ブチルベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(メトキシベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(エトキシベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(プロピルオキシベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ブチルオキシベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ヒドロキシベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(アミノベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N'−メチルアミノベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N'−エチルアミノベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N',N'−ジメチルアミノベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N',N'−ジエチルアミノベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(クロロベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(フルオロベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ジフルオロベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(トリフルオロメチルベンゾイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、N−(ナフトイル)ホモシステイン酸、N−(メチルナフトイル)ホモシステイン酸、N−(エチルナフトイル)ホモシステイン酸、N−(プロピルナフトイル)ホモシステイン酸、N−(ブチルナフトイル)ホモシステイン酸、N−(メトキシナフトイル)ホモシステイン酸、N−(エトキシナフトイル)ホモシステイン酸、N−(プロピルオキシナフトイル)ホモシステイン酸、N−(ブチルオキシナフトイル)ホモシステイン酸、N−(ヒドロキシナフトイル)ホモシステイン酸、N−(アミノナフトイル)ホモシステイン酸、N−(N'−メチルアミノナフトイル)ホモシステイン酸、N−(N'−エチルアミノナフトイル)ホモシステイン酸、N−(N',N'−ジメチルアミノナフトイル)ホモシステイン酸、N−(N',N'−ジエチルアミノナフトイル)ホモシステイン酸、N−(クロロナフトイル)ホモシステイン酸、N−(フルオロナフトイル)ホモシステイン酸、N−(ジフルオロナフトイル)ホモシステイン酸、N−(トリフルオロメチルナフトイル)ホモシステイン酸、[N−(ナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(メチルナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(エチルナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(プロピルナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ブチルナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(メトキシナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(エトキシナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(プロピルオキシナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ブチルオキシナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ヒドロキシナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(アミノナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N'−メチルアミノナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N'−エチルアミノナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N',N'−ジメチルアミノナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N',N'−ジエチルアミノナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(クロロナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(フルオロナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ジフルオロナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(トリフルオロメチルナフトイル)ホモシステイン酸]エチルエステル、N−(ビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(メチルビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(エチルビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(プロピルビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(ブチルビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(メトキシビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(エトキシビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(プロピルオキシビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(ブチルオキシビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(ヒドロキシビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(アミノビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(N'−メチルアミノビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(N'−エチルアミノビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(N',N'−ジメチルアミノビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(N',N'−ジエチルアミノビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(クロロビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(フルオロビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(ジフルオロビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、N−(トリフルオロメチルビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸、[N−(ビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(メチルビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(エチルビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(プロピルビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ブチルビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(メトキシビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(エトキシビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(プロピルオキシビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ブチルオキシビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ヒドロキシビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(アミノビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N'−メチルアミノビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N'−エチルアミノビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N',N'−ジメチルアミノビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(N',N'−ジエチルアミノビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(クロロビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(フルオロビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(ジフルオロビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、[N−(トリフルオロメチルビフェニルカルボニル)ホモシステイン酸]エチルエステル、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、より好ましくは、N−(o−トルオイル)ホモシステイン酸、N−(m−トルオイル)ホモシステイン酸、N−(p−トルオイル)ホモシステイン酸(化合物6)、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。
【0049】
かかる化合物は、優れた色素沈着予防又は改善作用を有する。また、親水性又は親油性媒体に対する溶解性に優れ、皮膚外用剤等への製剤化が容易であり、さらに、製剤中における安定性及び皮膚貯留性に優れ、色素沈着の予防又は改善に優れた効果を発揮する。
【0050】
ここで前記<4>に定義される化合物に付いて述べれば、式中、R1は、水素原子、炭素数1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R2は、水素原子を表し、R3は、無置換の若しくは置換基を有する、炭素数5〜15の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、nは1、mは0を表す。
【0051】
前記R1は、水素原子、炭素数1〜8、より好ましくは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、具体例を挙げれば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが好適に例示出来、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基が好適に例示出来る。
【0052】
前記R3は、無置換の若しくは置換基を有する、炭素数5〜15の芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基を表し、置換基としては、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル鎖を有するアルコキシ基、炭素数1〜6、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキル鎖を有するアルキルアミノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基(好ましくは、炭素数1〜4のアルキル鎖を有する)、ヒドロキシ基、アミノ基などが好適に例示出来る。
【0053】
3が表す基に関し、具体例を挙げれば、ピリジル基、メチルピリジル基、エチルピリジル基、プロピルピリジル基、メトキシピリジル基、エトキシピリジル基、プロピルオキシピリジル基、ヒドロキシピリジル基、アミノピリジル基、N−メチルアミノピリジル基、N−エチルアミノピリジル基、N,N−ジメチルアミノピリジル基、N,N−ジエチルアミノピリジル基、クロロピリジル基、フルオロピリジル基、ジフルオロピリジル基、トリフルオロメチルピリジル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノフェニル基、N−メチルアミノフェニル基、N−エチルアミノフェニル基、N,N−ジメチルアミノフェニル基、N,N−ジエチルアミノフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基、プロピルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、プロピルオキシナフチル基、ヒドロキシナフチル基、アミノナフチル基、N−メチルアミノナフチル基、N−エチルアミノナフチル基、N,N−ジメチルアミノナフチル基、N,N−ジエチルアミノナフチル基、クロロナフチル基、フルオロナフチル基、ジフルオロナフチル基、トリフルオロメチルナフチル基、ビフェニル基、メチルビフェニル基、エチルビフェニル基、メトキシビフェニル基、エトキシビフェニル基等が好適に例示出来、より好ましくは、ピリジル基、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が好適に例示出来る。
【0054】
前記芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基の置換基の数としては、0〜3が好適に例示出来、より好ましくは、0又は1であり、脂肪族炭化水素基、芳香族基、多環縮合芳香族基又は複素環基上の置換基は、前記1種又は2種以上の置換基が、それぞれ独立に存在することが出来る。
【0055】
また、前記nは1、mは0を表す。
【0056】
前記<4>に定義される化合物に関し、具体例を挙げれば、N−(ピリジルカルボニル)システイン酸、N−(メチルピリジルカルボニル)システイン酸、N−(エチルピリジルカルボニル)システイン酸、N−(プロピルピリジルカルボニル)システイン酸、N−(メトキシピリジルカルボニル)システイン酸、N−(エトキシピリジルカルボニル)システイン酸、N−(プロピルオキシピリジルカルボニル)システイン酸、N−(ヒドロキシピリジルカルボンニル)システイン酸、N−(アミノピリジルカルボニル)システイン酸、N−(N'−メチルアミノピリジルカルボニル)システイン酸、N−(N'−エチルアミノピリジルカルボニル)システイン酸、N−(N',N'−ジメチルアミノピリジルカルボニル)システイン酸、N−(N',N'−ジエチルアミノピリジルカルボニル)システイン酸、N−(クロロピリジルカルボニル)システイン酸、N−(フルオロピリジルカルボニル)システイン酸、N−(トリフルオロメチルピリジルカルボニル)システイン酸、N−(ベンゾイル)システイン酸、N−(o−トルオイル)システイン酸(化合物1)、N−(m−トルオイル)システイン酸(化合物2)、N−(p−トルオイル)システイン酸(化合物3)、N−(エチルベンゾイル)システイン酸、N−(プロピルベンゾイル)システイン酸、N−(ブチルベンゾイル)システイン酸、N−(o−メトキシベンゾイル)システイン酸、N−(m−メトキシベンゾイル)システイン酸、N−(p−メトキシベンゾイル)システイン酸(化合物4)、N−(エトキシベンゾイル)システイン酸、N−(プロピルオキシベンゾイル)システイン酸、N−(ブチルオキシベンゾイル)システイン酸、N−(ヒドロキシベンゾイル)システイン酸、N−(アミノベンゾイル)システイン酸、N−(N'−メチルアミノベンゾイル)システイン酸、N−(N'−エチルアミノベンゾイル)システイン酸、N−(N',N'−ジメチルアミノベンゾイル)システイン酸、N−(N',N'−ジエチルアミノベンゾイル)システイン酸、N−(クロロベンゾイル)システイン酸、N−(フルオロベンゾイル)システイン酸、N−(ジフルオロベンゾイル)システイン酸、N−(トリフルオロメチルベンゾイル)システイン酸、N−(ナフトイル)システイン酸、N−(メチルナフトイル)システイン酸、N−(エチルナフトイル)システイン酸、N−(プロピルナフトイル)システイン酸、N−(ブチルナフトイル)システイン酸、N−(メトキシナフトイル)システイン酸、N−(エトキシナフトイル)システイン酸、N−(プロピルオキシナフトイル)システイン酸、N−(ブチルオキシナフトイル)システイン酸、N−(ヒドロキシナフトイル)システイン酸、N−(アミノナフトイル)システイン酸、N−(N'−メチルアミノナフトイル)システイン酸、N−(N'−エチルアミノナフトイル)システイン酸、N−(N',N'−ジメチルアミノナフトイル)システイン酸、N−(N',N'−ジエチルアミノナフトイル)システイン酸、N−(クロロナフトイル)システイン酸、N−(フルオロナフトイル)システイン酸、N−(ジフルオロナフトイル)システイン酸、N−(トリフルオロメチルナフトイル)システイン酸、N−(ビフェニルカルボニル)システイン酸(化合物5)、N−(メチルビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(エチルビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(プロピルビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(ブチルビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(メトキシビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(エトキシビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(プロピルオキシビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(ブチルオキシビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(ヒドロキシビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(アミノビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(N'−メチルアミノビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(N'−エチルアミノビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(N',N'−ジメチルアミノビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(N',N'−ジエチルアミノビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(クロロビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(フルオロビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(ジフルオロビフェニルカルボニル)システイン酸、N−(トリフルオロメチルビフェニルカルボニル)システイン酸、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、より好ましくは、N−(o−トルオイル)システイン酸(化合物1)、N−(m−トルオイル)システイン酸(化合物2)、N−(p−トルオイル)システイン酸(化合物3)、N−(o−メトキシベンゾイル)システイン酸、N−(m−メトキシベンゾイル)システイン酸、N−(p−メトキシベンゾイル)システイン酸(化合物4)、N−(2−フェニルベンゾイル)システイン酸、N−(3−フェニルベンゾイル)システイン酸、N−(4−フェニルベンゾイル)システイン酸(化合物5)が好適に例示出来る。
【0057】
かかる化合物は、優れた色素沈着予防又は改善作用を有する。また、親水性又は親油性媒体に対する溶解性に優れ、皮膚外用剤等への製剤化が容易であり、さらに、製剤中における安定性及び皮膚貯留性に優れ、色素沈着の予防又は改善に優れた効果を発揮する。
【0058】
かかる化合物は、その異性体を用いることができ、異性体とは、例えば光学異性体等の立体異性体である。また、前記一般式(1)に表される化合物及び<2>〜<4>に定義される化合物には、ラセミ化合物(DL体)に加え、D体及びL体の光学異性体が存する。これらの異性体は、いずれも優れた色素沈着予防又は改善作用を示すが、生体への安全性及び製剤中における安定性等によりL体が好適に例示出来る。
【0059】
前記一般式(1)に表される化合物及び<2>〜<4>に定義される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、市販されているシステイン酸、ホモシステイン酸、並びに、それらの誘導体を出発原料とし、本明細書下記の製造方法及び、例えば、「ペプチド合成の基礎と実験(丸善)」等に記載の方法に従い、脱保護、カップリング及び保護基の導入反応を行うことにより製造することも出来る。
【0060】
かかる化合物は、そのまま色素沈着予防又は改善剤として使用することも出来るが、薬理学的に許容される酸又は塩基と共に処理し塩の形に変換し、塩として使用することも可能である。例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩などの鉱酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩などの有機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、トリエチルアミン塩、トリエタノ−ルアミン塩、アンモニウム塩、モノエタノ−ルアミン塩、ピペリジン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩などが好適に例示出来る。
【0061】
斯くして得られた一般式(1)に表される化合物及び<2>〜<4>に定義される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、優れた色素沈着予防又は改善作用を有するため、皮膚外用剤の有効成分として有用である。かかる有効成分の薬理作用としては、メラノサイトの活性化抑制作用、チロシナ−ゼ酵素阻害作用、チロシナ−ゼ遺伝子発現抑制作用、チロシナ−ゼ蛋白発現抑制作用、チロシナ−ゼ関連蛋白分解作用などのチロシナ−ゼ活性阻害作用等によりメラニン産生を抑制することが推定され、以って、色素沈着予防又は改善作用を奏することが好ましく例示出来る。
【0062】
なお、後記試験例に示すとおり、前記一般式(1)に表される化合物、前記<2>〜<4>に定義される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、in vitro評価系において、優れたメラノサイトの活性化抑制作用を有することが確認されている。前記一般式(1)に表される化合物、前記<2>〜<4>に定義される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、このようなメラノサイトの活性化抑制作用等に基づいて、メラニン産生を抑制することにより、in vivo評価系において、確認されている色素沈着抑制効果を示すものであると考えられる。すなわち、前記一般式(1)に表される化合物、前記<2>〜<4>に定義される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、色素沈着予防又は改善剤の有効成分として有用である。
【0063】
また、前記一般式(1)に表される化合物に表される化合物及び<2>〜<4>に定義される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩には、色素沈着予防又は改善以外の作用を奏するものも存する。その様な作用の発現を目的として含有する皮膚外用剤であっても、前記一般式(1)に表される化合物及び<2>〜<4>に定義される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩として色素沈着予防又は改善作用を主たる目的とするものであれば、本発明の効果を利用するものであるので、本発明の技術的範囲に属する。また、本発明の皮膚外用剤は、色素沈着予防又は改善用であり、「色素沈着予防又は改善用」の用途には、色素沈着予防又は改善により達成しようとする目的を主とした用途、例えば、「美白用」、「シミ改善用」などの用途も含まれる。
【0064】
<本発明の皮膚外用剤>
本発明の皮膚外用剤は、前記一般式(1)に表される化合物及び<2>〜<4>に定義される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩よりなる色素沈着予防又は改善剤を含有することを特徴とする。
【0065】
一般式(1)に表される化合物及び<2>〜<4>に定義される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩の色素沈着予防又は改善作用を有効に奏するには、一般式(1)に表される化合物及び<2>〜<4>に定義される化合物、その異性体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩から選択される1種乃至は2種以上を、皮膚外用剤全量に対して、総量で0.0001質量%〜20質量%、より好ましくは、0.001質量%〜10質量%、さらに好ましくは、0.005〜5質量%含有することが好ましい。皮膚外用剤全量に対する含有量が0.0001質量%より少ないと、色素沈着予防又は改善作用が低下し、また20質量%を超える量を用いても、効果が頭打ちになるので、皮膚外用剤全量に対する前記の含有量が好ましい。
【0066】
本発明の皮膚外用剤においては、前記必須成分以外に、通常化粧料で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシルなどのエステル類、オリ−ブ油、牛脂、椰子油などのトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、レチノイン酸などの脂肪酸、オレイルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル等の高級アルコ−ル、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、1,3−ブタンジオ−ル等の多価アルコ−ル類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体等を含有することができる。本発明の皮膚外用剤の製造は、本発明の色素沈着予防又は改善剤に加え、常法に従い、これらの成分を処理することにより、困難なく、為しうる。
【0067】
これらの必須成分、任意成分を常法に従って処理し、ロ−ション、乳液、エッセンス、クリ−ム、パック化粧料、洗浄料などに加工することにより、本発明の皮膚外用剤は製造できる。皮膚に適応させることの出来る剤型であれば、いずれの剤型でも可能であるが、有効成分が皮膚に浸透して効果を発揮することから、皮膚への馴染みの良い、ロ−ション、乳液、クリ−ム、エッセンスなどの剤型がより好ましい。
【0068】
以下に、本発明に付いて、実施例を挙げて更に詳しく説明を加えるが、本発明がかかる実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0069】
<製造例1: 化合物1のL異性体の合成>
【0070】
【化9】
N−(o−トルオイル)−L−システイン酸(化合物1のL異性体)
【0071】
L−システイン酸 3(g)(17.7mmol)(東京化成工業株式会社)、テトラヒドロフラン 18(mL)(和光純薬工業株式会社)、水 18(mL)を100(mL)ナス型フラスコに入れた後、氷浴にて冷却した。十分に冷却した後、炭酸カリウム 4.40(g)(31.6mmol)(和光純薬工業株式会社)を添加した。o−トルオイルクロリド 3.28(g)(東京化成工業株式会社)を液温が上昇しないように順次添加した。添加後、氷浴を外し室温にて攪拌した。薄層クロマトグラフィ−で反応の進行を確認した後、テトラヒドロフランを減圧留去した。得られた残渣を酢酸エチルにて洗浄した後、塩酸にてpHを2以下に調整した。濾液を濃縮し、水(20ml)を添加した。析出した結晶を濾取し、結晶をアセトンで懸洗した。濾取した結晶を60℃にて乾燥し、上記構造を有する化合物1 0.78(g)(2.72 mmol)を得た。示性値は以下のとおり。
【0072】
1H−NMR(D2O):δ 2.31(3H,s)、3.42(2H,m)、4.86(1H,m)、7.24(2H、m)、7.35(2H、m).
FAB−MS(negative ion mode):M/z=286([M−H]-
【0073】
<製造例2: 化合物2のL異性体の合成>
【0074】
【化10】
N−(m−トルオイル)−L−システイン酸(化合物2のL異性体)
【0075】
L−システイン酸 3(g)(17.7mmol)(東京化成工業株式会社)、テトラヒドロフラン 18(mL)(和光純薬工業株式会社)、および、水 18(mL)を100(mL)ナス型フラスコに入れた後、氷浴にて冷却した。十分に冷却した後、炭酸カリウム 4.40(g)(31.6mmol)(和光純薬工業株式会社)、m−トルオイルクロリド 2.19(g)(東京化成工業株式会社)を液温が上昇しないように順次添加した。氷浴下1時間反応させた後、m−トルオイルクロリド 1.09(g)(東京化成工業株式会社)を再度添加した。添加後、氷浴を外し室温にて攪拌した。薄層クロマトグラフィ−で反応の進行を確認した後、テトラヒドロフランを減圧留去した。得られた残渣を酢酸エチルにて洗浄した後、塩酸にてpHを2以下に調整した。濾液を濃縮し、水(18ml)を添加した。4℃にて熟成した後、析出した結晶を濾別した。得られた結晶をアセトンで懸洗し、濾取した。濾取した結晶を60℃にて乾燥し、上記構造を有する化合物2 1.65(g)(5.74 mmol)を得た。示性値は以下のとおり。
【0076】
1H−NMR(DMSO−d6):δ 2.36(3H,s)、2.94(2H,m)、4.41(1H,m)、7.36(2H、d)、7.58(2H、t)、8.84(1H,d)、12.5(1H,bs).
FAB−MS(negative ion mode):M/z=286([M−H]-
【0077】
<製造例3: 化合物3のL異性体の合成>
【0078】
【化11】
N−(p−トルオイル)−L−システイン酸(化合物3のL異性体)
【0079】
L−システイン酸1水和物 5(g)(26.7 mmol)(シグマ アルドリッチ社)、1,4−ジオキサン 20(mL)(和光純薬工業株式会社)、および、水10(mL)を100(mL)ナス型フラスコに入れた後、氷浴にて冷却した。十分に冷却した後8(N)水酸化ナトリウム水溶液 10.7(mL)、p−トルオイルクロリド3.36(mL)(シグマ アルドリッチ社)を液温が上昇しないように順次滴下した。滴下終了後、氷浴を外し室温にて攪拌した。薄層クロマトグラフィ−で反応の進行を確認した後、1,4−ジオキサンを減圧留去した。得られた残渣を酢酸エチルにて洗浄した後、塩酸にてpHを2以下に調整した。得られた水溶液を凍結乾燥し、メタノ−ルで目的物を抽出した。メタノ−ルを減圧留去した後、結晶化し、ろ過した。濾取した結晶を乾燥し、上記構造を有する化合物3 5.79(g)(20.2 mmol)を得た。示性値は以下のとおり。
【0080】
1H−NMR(D20):δ 2.32(3H,s)、3.46(2H,m)、4.87(1H、m)、7.25(2H、d)、7.64(2H、d).
FAB−MS(negative ion mode):M/z=286([M−H]-)、308([M+Na−H]-
【0081】
<製造例4: 化合物4のL異性体の合成>
【0082】
【化12】
N−(p−メトキシベンゾイル)−L−システイン酸(化合物4のL異性体)
【0083】
L−システイン酸 2(g)(11.8mmol)(東京化成工業株式会社)、テトラヒドロフラン 12(mL)(和光純薬工業株式会社)、および、水 12(mL)を100(mL)ナス型フラスコに入れた後、氷浴にて冷却した。十分に冷却した後、炭酸カリウム 2.94(g)(21.3mmol)(和光純薬工業株式会社)、4−メトキシベンゾイルクロリド 1.61(g)(東京化成工業株式会社)を液温が上昇しないように順次添加した。氷浴下1時間反応させた後、4−メトキシベンゾイルクロリド 0.81(g)(東京化成工業株式会社)を再度添加した。添加後、氷浴を外し室温にて攪拌した。薄層クロマトグラフィ−で反応の進行を確認した後、テトラヒドロフランを減圧留去した。得られた残渣を酢酸エチルにて洗浄した後、塩酸にてpHを2以下に調整した。析出した結晶をろ過し、水で洗浄した。濾液を濃縮し、再度析出した結晶をろ過した。得られた結晶をあわせた後、アセトンで懸洗した。結晶をろ過した後、濾取した結晶を60℃にて乾燥し、上記構造を有する化合物4 2.47(g)(8.14 mmol)を得た。示性値は以下のとおり。
【0084】
1H−NMR(D2O):δ 3.45(2H,m)、3.81(3H,s)、4.85(1H,m)、7.00(2H、d)、7.72(2H、d).
FAB−MS(negative ion mode):M/z=302([M−H]-
【0085】
<製造例5: 化合物5のL異性体の合成>
【0086】
【化13】
(N−ビフェニルカルボニル)−L−システイン酸(化合物5のL異性体)
【0087】
L−システイン酸 2(g)(11.8mmol)(東京化成工業株式会社)、テトラヒドロフラン 12(mL)(和光純薬工業株式会社)、および、水 12(mL)を100(mL)ナス型フラスコに入れた後、氷浴にて冷却した。十分に冷却した後、炭酸カリウム 2.94(g)(21.3mmol)(和光純薬工業株式会社)、4−フェニルベンゾイルクロリド 2.05(g)(東京化成工業株式会社)を液温が上昇しないように順次添加した。氷浴下1.5時間反応させた後、4−フェニルベンゾイルクロリド 1.02(g)(東京化成工業株式会社)を再度添加した。添加後、氷浴を外し室温にて攪拌した。薄層クロマトグラフィ−で反応の進行を確認した後、テトラヒドロフランを減圧留去した。得られた残渣を酢酸エチルにて洗浄した後、塩酸にてpHを2以下に調整した。析出した結晶をろ過し、水で洗浄した。得られた結晶をアセトンで懸洗した後、ろ過した。濾取した結晶を60℃にて乾燥し、上記構造を有する化合物5 2.37(g)(6.78 mmol)を得た。示性値は以下のとおり。
【0088】
1H−NMR(DMSO−d6):δ 2.96(2H,m)、4.54(1H,q)、7.42(1H,m)、7.51(2H、m)、7.74(2H、d)、7.80(2H、d)、7.90(2H、d)、8.94(1H、d).
FAB−MS(negative ion mode):M/z=348([M−H]-
【0089】
<製造例6: 化合物6の合成>
【0090】
【化14】
N−(p−トルオイル)ホモシステイン酸(化合物6)
【0091】
DL−ホモシステイン酸 2(g)(10.9mmol)(シグマ アルドリッチ社)、テトラヒドロフラン 12(mL)(和光純薬工業株式会社)、および、水 12(mL)を100(mL)ナス型フラスコに入れた後、氷浴にて冷却した。十分に冷却した後、炭酸カリウム 2.71(g)(19.6mmol)(和光純薬工業株式会社)を添加した。p−トルオイルクロリド 1.49(g)(シグマ アルドリッチ社)を液温が上昇しないように順次添加した。氷浴下1時間反応させた後、p−トルオイルクロリド 0.76(g)(シグマ アルドリッチ社)を再度添加した。添加後、氷浴を外し室温にて攪拌した。薄層クロマトグラフィ−で反応の進行を確認した後、テトラヒドロフランを減圧留去した。得られた残渣を酢酸エチルにて洗浄した後、塩酸にてpHを2以下に調整した。溶液をろ過後、濾液を濃縮し、メタノールを添加した。析出した結晶を濾別後、水で懸洗した。結晶をろ過し、濾取した結晶を60℃にて乾燥し、上記構造を有する化合物6 1.95(g)(6.47 mmol)を得た。示性値は以下のとおり。
【0092】
1H−NMR(DMSO−d6):δ 2.12(2H,m)、2.35(3H,s)、2.57(2H,t)、4.37(1H,m)、7.26(2H、d)、7.79(2H、d)、9.02(1H,d).
FAB−MS(negative ion mode):M/z=300([M−H]-
【0093】
<試験例1: B波紫外線によるヒト正常メラノサイトの活性化に対する抑制効果検討>
B波紫外線によってヒト正常ケラチノサイトから産生、放出されるメラノサイト活性化因子によるメラノサイト活性化に対する各化合物の抑制効果を、ヒト正常メラノサイトの細胞増殖作用を指標に検討した。
【0094】
24穴プレートに、ヒト正常ケラチノサイト(クラボウ)を10×104個/ウェルの密度で、Humedia−KG2培地(クラボウ)を用いて播種し、24時間培養した。
【0095】
評価化合物を100mMの濃度でDMSOに溶解し、これをHumedia−KG2培地で1,000倍希釈したものを試料溶液とした。また、陽性対照群用としてトラネキサム酸を100mMの濃度でDMSOに溶解し、これをHumedia−KG2培地で1,000倍希釈したものを陽性対照試料溶液とした。さらに陰性対照群用として、DMSOをHumedia−KG2培地で1,000倍希釈したものを陰性対照試料溶液とした。各化合物ともにヒト正常メラノサイトの細胞増殖に影響を与えない濃度を設定した。
【0096】
ヒト正常ケラチノサイトの培地を所定濃度の化合物を含んだHumedia−KG2培地(試料溶液)に交換し、さらに24時間培養した。その後、培地をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)に交換し、紫外線ランプ(FL20S・E−30/DMR、東芝医療用品)を光源として細胞に5mJ/cm2のB波紫外線を照射した。紫外線照射後、PBSを試料溶液に交換し、さらに24時間培養後、培養上清を回収した。
ヒト正常メラノサイトを3×104個/ウェルの密度になるように、Medium254培地(クラボウ)を用いて96穴プレートに播種し、24時間培養した。その後、培地をヒト正常ケラチノサイトから回収した培養上清に交換し、さらに24時間培養した。24時間培養後、0.5mg/mLの3−(4,5−ジメチル−2−チアゾイル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド(MTT)を含有するHumedia−KG2培地に交換し、3時間培養した。
【0097】
ホルマザン量は、2−プロパノールを用いて溶解した細胞溶解物の570nm及び690nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダー(Benchmark Plus、バイオラッド)にて測定し、570nmの吸光度から690nmの吸光度を差し引くことにより求めた。
【0098】
各化合物のメラノサイト増殖に対する抑制効果は、B波紫外線照射DMSO添加群(陰性対照群)の吸光度を100とした際のホルマザン生成率として百分率(%)であらわした。
【0099】
ホルマザン生成率が低いほど、メラノサイト増殖率が低いと判断することができ、よって、ヒト正常ケラチノサイトから産生、放出されるメラノサイト活性化因子によるメラノサイトの活性化に対して、評価化合物の抑制力価が大きいと判断することができる。
【0100】
【表1】
【0101】
メラノサイト増殖率は、3例の平均及び標準偏差を示した。
【0102】
表1の結果より、化合物によりメラノサイト活性化抑制力価に差はあるものの、全ての化合物において優れた抑制効果を示した。従って、全ての化合物ともにヒト正常ケラチノサイトから産生、放出されるメラノサイト活性化因子によるメラノサイトの活性化に対し、優れた抑制作用を有することが分かった。
【0103】
<試験例2: 有色モルモットを用いた化合物3の紫外線照射による色素沈着抑制作用評価>
有色モルモット8匹の背部皮膚を電気バリカンとシェ−バ−で除毛及び剃毛し、この部位を2×2cmの照射窓を上下左右2ヶ所ずつの計4個有する黒布で覆った後に、FL20S・E30ランプを光源として300mJ/cm2の紫外線を照射した。この操作を試験1、3、5、8日に繰り返し行い、4ヶ所の試験部位に色素沈着を誘導した。評価化合物(化合物3)を0.5%(w/v)となるようにエタノ−ルに溶解し、調製した。また、溶媒対照群としてエタノ−ルを塗布した。試験1日目の紫外線照射終了時より、各評価化合物の塗布を開始した。各評価化合物は、所定の試験部位に1日1回、30μLずつ塗布し、これを6週間(試験42日目まで)継続して実施した。塗布開始日(試験1日目)の紫外線照射前及び6週間後(試験43日目)に、色彩色差計(CR-200、コニカミノルタ株式会社)を用いて各試験部位の皮膚明度(L*値)を測定し、試験43日目のL*値から紫外線照射前のL*値を差し引いたΔL*値を求めた。結果を表2に示す。L*値は色素沈着の程度が強いほど低い値となるため、ΔL*値が大きい程、色素沈着が抑制されたと判断することができる。これにより、化合物3は、皮膚に塗布した場合、0.5%濃度で紫外線により誘導された色素沈着を明らかに抑制したことが判る。
【0104】
【表2】
【0105】
<実施例1: 本発明の皮膚外用剤の製造例1>
表3に記載の処方に従って、本発明の皮膚外用剤である化粧料(ロ−ション)を作製した。即ち、処方成分を80℃に加熱し、攪拌し、溶解させ、攪拌冷却し、化粧料(ロ−ション1)を得た。同様にして、「本発明の一般式(1)に表される化合物(化合物3)」を水に置換した比較例1も作製した。
【0106】
【表3】
【0107】
<試験例3: ヒトにおける化粧料(ロ−ション)の紫外線照射による色素沈着抑制効果>
ロ−ション1及び比較例1の化粧料を用いて、化合物3の色素沈着抑制効果を調べた。自由意思で参加したパネラ−25名の上腕内側部に、試験初日(1日目)に1.5cm×1.5cmの試験部位を2ヶ所設け、試験部位の皮膚明度(L*値)を色彩色差計(CR-300、コニカミノルタ株式会社)にて測定した。試験初日に皮膚明度を測定した後、試験部位に最少紅斑量の2倍量(2MED)の紫外線を1回照射した。紫外線照射終了直後より1日3回、14日連続して、各試験部位に各検体(ロ−ション1または比較例1の化粧料)を50μL塗布した。塗布終了24時間後(15日目)に色彩色差計(CR-300、コニカミノルタ株式会社)にて各試験部位の皮膚明度(L*値)を測定し、試験初日のL値に対するΔL*値を算出した。結果を表4に示す。ΔL*値は色素沈着の程度が強いほど低い値となるため、ΔL*値が大きい程、色素沈着が抑制されたと判断することができる。これにより、本発明の皮膚外用剤である化粧料は優れた色素沈着抑制効果を有することが分かる。これは、前記一般式(1)に表される化合物(化合物3)のメラニン産生抑制作用によるものと考えられる。
【0108】
【表4】
【0109】
<実施例2; 本発明の皮膚外用剤の製造例2>
表5に記載の処方に従って、油中水クリ−ムを作成した。即ち、イ、ロの成分をそれぞれ80℃に加熱し、イにロを徐々に加え、乳化し、ホモジナイザ−で粒子を均一化した後、撹拌冷却して化粧料(クリ−ム1)を得た。同様にして、「本発明の前記一般式(1)に表される化合物(化合物3)」を水に置換した比較例2のクリ−ム、「本発明の前記一般式(1)に表される化合物(化合物3)」をアルブチンに置換した比較例3も作製した。
【0110】
【表5】
【0111】
<試験例4: ヒトにおける化粧料(クリ−ム)の紫外線照射による色素沈着抑制効果>
クリ−ム1、比較例2及び比較例3の化粧料を用いて、色素沈着抑制効果を調べた。自由意思で参加したパネラ−10名の上腕内側部に1.5cm×1.5cmの部位を上下2段に分け、2ヶ所ずつ合計4ヶ所設け、最少紅斑量(1MED)の紫外線照射を1日1回、3日連続して3回照射した。3回目の紫外線照射直後より、1日3回、28日連続して、各試験部位に各検体(クリ−ム1、比較例または比較例3の化粧料)50μLを塗布した。1部位は無処置部位とした。塗布終了24時間後(29日目)に色彩色差計(CR-300、コニカミノルタ株式会社)にて各試験部位の皮膚明度(L*値)を測定し、無処置部位のL値に対するΔL*値を算出した。L*値は、色素沈着の程度が強いほど低い値となる。従って、ΔL*値が大きい程、色素沈着が抑制されたと判断することができる。結果を表6に示す。これにより、本発明の皮膚外用剤である化粧料(クリ−ム1)は優れた色素沈着抑制効果を有することが分かる。これは、クリ−ム1に含有される前記一般式(1)に表される化合物(化合物3)の色素沈着抑制作用によると考えられる。
【0112】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、美白用の化粧料などの皮膚外用剤に応用出来る。