(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、
図1乃至
図9Cを参照して説明する。なお、各図で同じ構成要素には同一の符号を付している。以下、図面を参照して順次本発明の実施形態を説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、
図1乃至
図8を参照して説明する。
【0019】
(構成)
図1は、本発明の第1の実施形態における画像表示モジュール1の全体を示す外観斜視図である。画像表示モジュール1は、半導体チップ用の実装基板2(例えば、チップオンボード:COB)を有している。実装基板2は、シリコン基板、ガラスエポキシ基板、アルミナ基板、窒化アルミニウム(AlN)基板、メタル基板、メタルコア基板等で構成され、表面には図示しない配線パターンなどが形成されている。
【0020】
実装基板2の表面には、複数の薄膜半導体発光素子(例えば、LED)等により形成された発光素子アレイチップ3、この発光素子アレイチップ3を駆動するための駆動回路であるアノードドライバ集積回路4(以下「アノードドライバIC4」という。)及びカソードソードドライバIC51、52が固定されている。
【0021】
発光素子アレイチップ3とアノードドライバIC4との接続、及び、発光素子アレイチップ3とカソードドライバIC51、52との接続は、それぞれ、実装基板2上の図示しない配線パターンにより相互に接続されている。なお、発光素子アレイチップ3とアノードドライバIC4及びカソードドライバIC51、52とは、金属ワイヤで互いに電気的に接続する場合は、発光素子アレイチップ3とアノードドライバIC4及びカソードドライバIC51、52を、銀ペーストや樹脂を用いて実装基板2上に接着する。
【0022】
実装基板2は、その表面に枠状のスペーサ6を介して、発光素子アレイチップ3とアノードドライバIC4及びカソードドライバIC51、52を保護するカバー7を取り付けている。スペーサ6の厚みは、実装基板2の実装表面から金属ワイヤの最上部までの高さよりも厚く設計されている。カバー7において、発光素子アレイチップ3内の発光素子アレイ8が形成されている表示部分は、透過率80%以上の材質(例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等)であることが望ましい。また、このカバー7の前記表示部以外の外周部分は、不透明の材質を利用、又は塗装することで、可視光の透過率を0.1%以下にすることが望ましい。カバー7の外周部分の透過率を0.1%にすることで、発光素子アレイチップ3から出射された光が金属ワイヤやその他のアノードドライバIC4及びカソードドライバIC51、52等に反射して像が映りこむ現象を軽減することができる。
【0023】
実装基板2は、その裏側に、図示しないヒートシンクや金属筐体を取り付けている。実装基板2の裏側とヒートシンクや金属筐体との間には、図示しない絶縁性の放熱ペーストや放熱シートが設けられ、発光素子アレイチップ3からの熱を効率よく放熱するようになっている。なお、実装基板2とスペーサ6、そして、スペーサ6とカバー7とは、それぞれ樹脂等で接着してもよいし、あるいは、実装基板2、スペーサ6およびカバー7に螺子穴を形成し、裏側のヒートシンクや金属筐体と螺子で固定してもよい。スペーサ6とカバー7とは、一体型でもよいし、また、実装基板2とスペーサ6とは、一体型でもよい。
【0024】
また、画像表示モジュール1内のカソードドライバICを2個設けているが、回路構成によってはカソードドライバICが1個または3個以上でもよく、更に、発光素子アレイチップ3とアノードドライバICおよびカソードドライバICとを図示以外の配置で設けてもよい。また、アノードドライバICとカソードドライバおよびコントローラとが1チップに集積されたICを用いてもよい。
【0025】
図2は、
図1の画像表示モジュール1の等価回路を示す回路図である。簡略化のため、アノードドライバIC4及びカソードドライバIC51、52を各々1つずつ用いた場合の構成を説明する。画像表示モジュール1における発光素子アレイチップ3は、例えば、パッシブ型のm行k列のLEDドットマトリクスにより構成されている。
【0026】
行方向(横方向)Xは、複数のアノードチャンネルAchを構成するk本のアノード配線9を並列に配置している。また、これらと交差する列方向(縦方向)Yは、複数のカソードチャンネルCchを構成するm本のカソード配線10を平行に配置している。これらの交差箇所は、k×m個のLED(1,1)〜LED(k,m)を接続している。なお、各LEDに付された添え字(k,m)は、行方向のk番目、列方向のm番目の発光素子11であるLEDを表している。
【0027】
列方向Yは、m個のアノード区間AL1〜ALmが存在する。各アノード配線9は、アノードドライバIC4に接続されている。行方向Xには、k個のカソード区間CL1〜CLkが存在する。各カソード配線10は、カソードドライバIC51または52に接続されている。カソードドライバを、例えば2個用いる場合には、奇数行のCchをカソードドライバIC51、偶数行のCchを他のカソードドライバIC52に接続する。
【0028】
図3は、
図2中のアノードドライバIC4及びカソードドライバIC51、52の構成を示す概略の構成図である。
【0029】
アノードドライバIC4は、図示しない制御装置から出力される表示データ(例えば、発光するまたは発光しないを意味する図示しない発光データDA)に応じて、発光素子アレイチップ3の各アノード配線9に接続されている発光素子11の列に、電流を流す機能を有している。アノードドライバIC4は、例えば、図示しない制御装置から出力されるシリアルな発光データSDAを入力してパラレルな発光データPDAを出力するシフトレジスタ回路42を有し、この出力側に、ラッチ回路43が接続されている。ラッチ回路43は、シフトレジスタ回路42から出力されたパラレルな発光データPDAをラッチする回路であり、この出力側に、駆動回路44が接続されている。駆動回路44は、ラッチ回路43の出力を増幅する回路であり、この出力側に、複数のアノード配線9が接続されている。
【0030】
カソードドライバIC51、52は、図示しない制御装置から出力されるクロック信号45およびフレーム信号46に基づき、発光素子アレイチップ3の各カソード配線10に接続されている発光素子11の行を走査する機能を有し、セレクター機能を有するセレクト回路SL等で構成されている。
【0031】
ついで、
図4は、
図1中の発光素子アレイチップ3の平面外形図である。
発光素子アレイチップ3は、基板12(
図5B参照)を有し、この基板12上に発光素子アレイ8が形成されている。
【0032】
複数のアノード配線9及び複数のカソード配線10は、基板12の外延部まで延設され、複数のワイヤボンディングパッド等のパッド部13に接続されている。複数のアノード配線9は、パッド部13を介してアノードドライバIC4と電気的に接続され、更に、複数のカソード配線10も、他のパッド部13を介してカソードドライバIC51、52と電気的に接続されている。
【0033】
発光素子アレイチップ3側の発光素子ピッチとドライバIC側のパッドピッチとが異なる場合は、ドライバIC側のピッチと同一のピッチのパッド部13を発光素子アレイチップ3内に形成し、
図4に示すように傾斜する配線により接続を行う。これにより、パッドピッチを同一に揃えることができる。発光素子ピッチとドライバIC側のパッドピッチとが同一の場合には、接続配線を傾斜させなくてもよい。
【0034】
ついで、
図5Aは、
図4の発光素子アレイ8の部分的な要素を示す4×4マトリックス画素の平面図である.
【0035】
図5Aにおいて、列方向(縦方向)Yに配置された複数(4本)のアノード配線9と、このアノード配線9に対して直交する行方向(横方向)Xに配置された複数(4本)のカソード配線10とは、図示しない層間絶縁膜により電気的に絶縁されている。アノード配線9及びカソード配線10の配線材料は、例えば、Au、Ti/Pt/Au、Ti/Au、AuGeNi/Au、AuGe/Ni/Au等のAu系メタル配線材料、あるいは、Al、Ni/Al、Ni/AlNi、Ni/AlSiCu、Ti/Al等のAl系メタル配線材料を使用することができる。なお、これらの配線材料は、層間絶縁膜や薄膜半導体層17への放熱よりも金属による伝導熱量の方が大きい程度の厚さである。
【0036】
そして、これらの交差箇所に接続された複数(4×4=16個)の発光素子11が2次元マトリクス状に配置されている。図中において、マトリクスの単位画素は、発光素子11を囲む破線A1で示されている。マトリクス状に配置された発光素子11上には、各々にマイクロレンズ14が形成されている。マイクロレンズ14は、単位画素内に発光素子11と等ピッチで並んでおり、その中心は発光素子11の中心(央部)と同位置に配置されている。マイクロレンズ14は、発光素子11から放射された光が効率良く収束するように設計されている。なお、
図5Aに示したマイクロレンズ14の平面形状は、各々が分離された円形状が好ましいが、隅の丸い方形状でもよい。
【0037】
図5Bは、
図5A中の単位画素である破線枠A1中の行方向(横方向X−11線による断面)の断面図であり、
図5Cは、
図5A中の単位画素である破線枠A1中の列方向(縦方向Y−11線による断面)の断面図である。
【0038】
図5Bにおいて、基板12は、その表面に絶縁膜層15を形成している。基板12としては、例えば、Si、GaAs、GaP、InP、GaN、ZnO等の半導体基板、AlN、Al
2O
3等のセラミック基板、ガラスエポキシ基板、Cu、Al等の金属基板、プラスチック基板を使用できる。絶縁膜層15は、酸化シリコン、窒化シリコン等の無機系絶縁膜や、ポリイミド等の有機絶縁膜を使用することができる。なお、基板12に絶縁基板を用いた場合は、絶縁膜層15は必要としない。
【0039】
絶縁膜層15上には、カソード配線10が形成されており、その上に平滑化層16が形成されている。平滑化層16は、塗布型のレジストなどの有機絶縁膜により形成され、後記する薄膜半導体層17との接合のために、平坦性を付加する絶縁膜である。
【0040】
平滑化層16は、その表面に薄膜半導体層17を接合している。薄膜半導体層17は、表面から順次、P型半導体層19と発光層を含む半導体層18とN型半導体層20とで構成されている。最下層のN型半導体層20は、平滑化層16との接合部分となる。発光層を含む半導体層18は、多重量子井戸(MQW:Multi Quantum Well)活性層等を含む層である。P型半導体層19は、アノード配線9と接合する部分である。P型半導体層19と発光層を含む半導体層18およびN型半導体層20の一部は、エッチングによりメサ型に形成されている。
【0041】
P型半導体層19の最表面は、発光領域24及びアノード配線9との接続領域21から構成され、発光層を含む半導体層18からの放射光は、発光領域24から出射される。また、P型半導体層19の最表面は、アノード配線9と、接続領域21で接しておりオーミック接合している。そして、接続領域21は、アノード配線9の一部で形成されている。
【0042】
アノード配線9は、隣接するアノード配線9と、分離領域22、23によって電気的に分離されている。そして、アノード配線9は、マイクロレンズ14の外周を超えるまで延在し、分離領域22、23および発光領域24以外の部分に広く形成されている。
【0043】
アノード配線9とN型半導体層20との間、及び、薄膜半導体層17の周囲には、層間絶縁膜25が形成されている。層間絶縁膜25は、酸化シリコン、窒化シリコン等の無機系絶縁膜や、ポリイミド等の有機系絶縁膜で構成することができる。
【0044】
アノード配線9及び発光領域24の最表面であるP型半導体層19の表面上には1つのマイクロレンズ14が形成され、隣接する発光素子11上のマイクロレンズ14は、互いに離間して形成されている。このマイクロレンズ14の形状は、円柱状体であり、その先端の形状は半球状の凸形状に形成されている。マイクロレンズ14の構成材料は、エポキシ系やアクリル樹脂等の有機系樹脂等を使用することができる。なお、円柱状体でなくても、例えば、断面四角の四角柱状体であってもよい。
【0045】
そして、マイクロレンズ14の焦点位置は、発光領域24の最表面から上下にずらした範囲に設計されている。これにより、アノード配線9とP型半導体層19の最表面との接する接続領域21の幅は、発光領域24の幅が単位画素A1の幅の60%以下である範囲とすることが望ましい。
【0046】
図5Cにおいても、
図5Bと同様に、基板12上に絶縁膜層15が形成されている。
絶縁膜層15上には、カソード配線10が形成されているが、隣接するカソード配線10とは分離領域27、28によって電気的に分離されている。
【0047】
カソード配線10上には、
図5Bと同様に、平滑化層16が形成されているが、所定領域30が除去され、カソード配線10が露出されている。
【0048】
そして、平滑化層16は、その表面に薄膜半導体層17を接合している。薄膜半導体層17は、表面から順次、P型半導体層19と発光層を含む半導体層18とN型半導体層20とで構成されている。最下層のN型半導体層20は、平滑化層16との接合部分である。発光層を含む半導体層18は、多重量子井戸(MQW)活性層等を含む層である。P型半導体層19は、アノード配線9と接合する部分である。P型半導体層19と発光層を含む半導体層18及びN型半導体層20の一部は、エッチングによりメサ型に形成されている。
【0049】
N型半導体層20とカソード配線10とは、Nコンタクトメタル26を介して、接続部29においてオーミック接合している。Nコンタクトメタル26は、その下層に、層間絶縁膜31がNコンタクトメタル26の段切れ防止のために形成されている。層間絶縁膜31は、酸化シリコン、窒化シリコン等の無機系絶縁膜や、ポリイミド等の有機系絶縁膜を使用することができる。なお、Nコンタクトメタルが段切れしない場合は、層間絶縁膜31は形成しなくてもよい。
【0050】
P型半導体層19の最表面は、アノード配線9と接続領域21で接しており、オーミック接合している。
【0051】
アノード配線9とN型半導体層20との間、及び薄膜半導体層17の周囲には、層間絶縁膜25が形成されている。層間絶縁膜25は、酸化シリコン、窒化シリコン等の無機系絶縁膜や、ポリイミド等の有機系絶縁膜を使用することができる。
【0052】
そして、マイクロレンズ14は、各々のアノード配線9及びP型半導体層19の表面上に形成されている。
【0053】
つぎに、発光素子アレイ8及びマイクロレンズ14の形成工程である、(1)剥離工程、(2)接合工程、(3)発光素子11形成工程、(4)パシベーション工程、(5)マイクロレンズ14形成工程、及び、(6)間引き工程について、適宜図面を参照して説明する。
【0054】
図6A(a)〜
図6A(c)は、剥離工程の概略図である。
図6A(a)は、
図5Aの発光素子11を薄膜半導体層17で形成する場合の半導体エピタキシャルウエハEPWの概略の構成例を示す断面図である。
図6A(b)は、
図6A(a)に示された発光素子11を形成する薄膜半導体層17がエピタキシャル成長用基板e−12から剥離されるエッチング工程の途中の概略の構成例を示す断面図である。更に、
図6A(c)は、
図6A(b)のエッチング工程の終了時の概略の構成例を示す断面図である。
【0055】
図6A(a)乃至
図6(c)において、エピタキシャル半導体層を成長させるためのエピタキシャル成長用基板e−12上には、バッファ層32と、剥離層33と、発光素子11が形成される薄膜半導体層17とが順次積層されている。剥離層33は、薄膜半導体層17をエピタキシャル成長用基板e−12から剥離するために設けられた言わば犠牲層である。薄膜半導体層17は、剥離層33と接している
図5Bおよび
図5Cを参照して説明した、N型半導体層20と、発光層を含む半導体層18と、最上層のP型半導体層19との積層構造となっている。
【0056】
すなわち、
図5A乃至
図5Cの発光素子11は、エピタキシャル成長用基板e−12を含まないエピタキシャル半導体層(エピタキシャルフィルム)のみを備えた薄膜半導体層17によって構成される。
【0057】
(1)剥離工程
図6A(a)の剥離層33は、エッチング液等によるエッチング速度が、薄膜半導体層17やエピタキシャル成長用基板e−12のエッチング速度と比較して、エッチング速度が速い層であり、逆に、薄膜半導体層17内のN型半導体層20と発光層を含む半導体層18及び最上層のP型半導体層19は、剥離層33を剥離させるためのエッチング液等によるエッチング速度と比較して、エッチング速度が遅く、剥離層33のエッチング工程ではエッチングされない半導体層である。
【0058】
したがって、薄膜半導体層17の製造方法としては、例えば、
図6A(a)の半導体エピタキシャルウエハEPWの剥離層33を、
図6A(b)に示すように前記エッチング液等を使用して、そのエッチング速度の差により選択的にエッチングする。そして、
図6A(c)に示すように剥離層33よりも上層の半導体層17がエピタキシャル成長用基板e−12から剥離する。
【0059】
(2)接合工程
剥離された薄膜半導体層17は、エピタキシャル成長用基板e−12とは異なる、
図5B及び
図5Cを参照して説明した基板12上に、分子間力によって接合される。この接合工程では、薄膜半導体層17の接合面を適宜活性化処理した後に、基板12上の所定の位置に密着させ加圧する。接合工程後は、必要に応じて、接合力を向上させるために加熱処理を実施してもよい。また、基板12上の薄膜半導体層17が接合される領域には、その表面を平滑化するための
図5Bおよび
図5Cの平滑化層16を予め施してもよい。あるいは、薄膜半導体層17は、接着性を有する材料を用いた接着層を介して基板12上に接合してもよい。
【0060】
なお、薄膜半導体層17を基板e−12から剥離し、基板12に接合する場合には、転写用基板ないし
図6A(c)の破線で示す保持体RLSで薄膜半導体層17を保持してもよい。この場合、薄膜半導体層17は、保持する転写用基板ないし保持体RLSにおいて上側の面を基板12に接合してもよい。後者の場合、接合後に転写用基板ないし保持体RLSを除去する。
【0061】
(3)発光素子11の形成工程
薄膜半導体層17を基板12に接合した後、発光素子11の形成工程を行う。反応ガス等を用いたドライエッチングないしエッチング液等のウェットエッチング作用により選択的にメサ型にエッチングを行い、各画素単位に薄膜半導体層17を電気的に分離する前駆状態の発光素子11を形成する。
【0062】
その後、
図5Cに示すように、N型半導体層20とカソード配線10とをオーミック接合させるためのNコンタクトメタル26形成工程、P型半導体層19とのオーミック接合やアノード配線9を形成するためのメタル形成およびカソード配線10とアノード配線9等がショートすることを防ぐ(短絡防止用の)層間絶縁膜25の形成等を適宜行うことで、発光素子11が形成される。
【0063】
(4)パシベーション工程
そして、アノード配線9及びP型半導体19の最表面上には、素子の保護の目的で、図示しないパシベーション膜を成膜する。また、このパシベーション膜は、発光素子11からの発光波長光に対して透過率の高い窒化膜等の材料を選択して使用する。
【0064】
(5)マイクロレンズ14の形成(
図5A乃至
図5C参照)
アノード配線9及びP型半導体19の最表面上には、各々の発光素子11上にマイクロレンズ14を形成する。マイクロレンズ14の形成方法は、例えば、金型を用いた形成方法や、フォトリソグラフィ工程によりパターニングを行い、熱リフロー作用等を用いて形成してもよい。非発光領域(
図4のパッド13等)は、フォトリソグラフィ工程によりマイクロレンズ14材料を取り除く。
【0065】
(LEDの具体的構成)
図6Bは、
図6Aの発光素子11の具体的構成の一例を説明するための断面図である。
図6Bに示される発光素子11は、たとえば、黄緑色〜赤色の発光波長光を発光する発光素子11を構成するものである。
【0066】
図5A、
図5B及び
図5Cの発光素子11における薄膜半導体層17の構成を、
図6Bを参照して具体的に説明する。
【0067】
薄膜半導体層17を構成する最下層のN型半導体層20は、N型GaAs接合層35と、N型GaAsコンタクト層36とで構成されている。そして、N型半導体層20の上層の活性層を含む半導体層18は、Al
yIn
1-yPエッチングストップ層37と、N型Al
yIn
1-yPクラッド層38と、活性層としてのGa
yIn
1-yP井戸層および(Al
xGa
1-x)
yIn
1-yP障壁層の対層が多重積層形成された非ドープの多重量子井戸(MQW)活性層39と、P型Al
yIn
1-yPクラッド層40とにより構成されている。そして、最上層のP型半導体層19は、P型GaPコンタクト層41により構成されている。したがって、発光素子11において、アノード配線9と接続されるP型半導体層19は、P型GaPコンタクト層41となる。なお、
図6Bにおいては、混晶の元素記号(上記Al
yIn
1-yPなど)の記載を省略してある。
【0068】
N型GaAsコンタクト層36は、発光素子11の形成工程において、上側(表面側)に位置する層がエッチング等で除去された場合に、露出されて表面上にN側コンタクトが形成される。また、Al
yIn
1-yPエッチングストップ層37は、発光素子11の形成工程で上側に位置する層がエッチング等で除去される場合にエッチングを停止またはエッチング速度を減少させる。そして、多重量子井戸(MQW)活性層39は、N型Al
yIn
1-yPクラッド層38とP型Al
yIn
1-yPクラッド層40とに挟まれて発光層を構成する。
【0069】
なお、これらの半導体層における混晶比である、Al組成比、In組成比及びGa組成比を示す、x及びyの値は、格子定数が整合するように0.5、実効的な組成比の値で0.48〜0.52の範囲内の値であることが望ましい。そして、多重量子井戸(MQW)活性層39からの発光波長は、エピタキシャル結晶成長工程において、x及びyの値を上記範囲内で設定することで、波長580nm〜660nmの範囲で所望の発光波長(黄緑色〜赤色)を得ることができる。本実施例では多重量子井戸(MQW)構造としたが、単一量子井戸(SQW:Single Quantum Well)構造としてもよい。
【0070】
なお、従来の発光素子アレイは、アレイ上にオンチップマイクロレンズアレイを形成するため、発光素子アレイのボンディングパッド上のレンズ材料を除去する必要がある。この発光素子アレイ上のオンチップマイクロレンズアレイの作製方法は、例えば、ガラス上面をドライエッチング法等により、お椀型(レンズ形状を上下反転させた形状)に形成し、塗布型のレンズ材料をフォトリソグラフィによるパターニングを行い、発光素子アレイ上にオンチップマイクロレンズアレイとして張り合わせる方法などが知られている。
【0071】
(動作、作用)
つぎに、本実施形態の画像表示モジュール1およびそれを備えたヘッドアップディスプレイ装置100の動作および作用について適宜図面を参照して説明する。
【0072】
図1の画像表示モジュール1において、発光素子11から構成されるドットマトリクスの駆動は、カソードドライバIC51、52により、
図2のカソードチャネルCchを下から上方向へ走査するパッシブ型で行う。即ち、ある時刻において発光する発光素子11は、あるカソードチャネルCchにおけるカソード配線10上の発光素子11のみである。
【0073】
そのため、アノードドライバIC4における
図3の各アノードチャネルAchからの注入電流は、各アノード配線9を介して各発光素子11に流れる。その後、あるカソード配線10、及び、カソードドライバIC51、52における、あるカソードチャネルCchを経てカソードドライバIC51、52に引き込まれる。
【0074】
更に、画像表示モジュール1の詳細な動作を説明する。
図3において、表示すべき情報が図示しない制御装置に入力されると、この制御装置が、その表示すべき情報に応じて、シリアルな発光データSDAをアノードドライバIC4に出力する。
【0075】
すると、発光素子アレイ8の第1行目に含まれる発光素子11の各々について、シリアル発光データSDAが、アノードドライバIC4内のシフトレジスタ42に順次格納される。シフトレジスタ42に格納されたシリアル発光データSDAは、このシフトレジスタ42によりパラレル発光データPDAに変換された後、ラッチ回路43に格納される。駆動回路44は、ラッチ回路43からの出力信号に基づいて駆動し、この駆動回路44から定電流がアノード配線9を経由して各発光素子11のアノード端子に流れる。
【0076】
このとき、図示しない制御装置から出力されたクロック信号45及びフレーム信号46が、カソードドライバIC51、52に出力されると、このカソードドライバIC51、52内のセレクト回路SLにより、発光素子アレイ8の第1行目のカソード配線10が選択される。そのため、駆動回路44は、発光素子アレイ8の第1行目のアノード配線9から第1行目に含まれる発光素子11に駆動電流を流し、第1行目に含まれる発光素子11の各々がシリアルな発光データSDAに応じて発光動作し、発光光が放射される。
【0077】
このような発光動作がカソード配線10の数(即ち、発光素子アレイ8の行数分)だけ複数回繰り返され、表示すべき情報を含む1画面分の画像の光が出射される。
【0078】
これらの各発光素子11から放射された光は、
図5A、
図5B及び
図5Cにおける各マイクロレンズ14で収束され、画像表示モジュール1から出射し、
図7(a)に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置100内の平面鏡51及び凹面鏡50により反射され、虚像48Aができる。また、この虚像48Aは、ヘッドアップディスプレイ装置100外の、例えば、運転者の前方のウィンドウシールド47に成膜されたハーフミラーを介して、ウィンドウシールド47前方に、「80km/h」の画像を虚像48Bとして、運転者の「眼」により視認される。
【0079】
一方、
図7(b)に示すように、太陽光等の外光49がヘッドアップディスプレイ装置100に入射すると、凹面鏡50および平面鏡51により導光され、画像表示モジュール1の発光素子アレイ8へと至る。そして、
図8に示すように、斜線太矢印で表記された外光49は、発光素子アレイ8上の各マイクロレンズ14により、発光素子11に集光され局所的に熱が発生する。
【0080】
発光素子11に集光され局所的に発生した熱は、発光素子11に密着して形成されたアノード配線9を有することにより、層間絶縁膜11及び薄膜半導体層25よりもアノード配線9を形成する金属の方が熱伝導率が高いため、
図8に示すように、太矢印H1に示す方向に導熱し、発光素子11全体へ拡散する。また、この拡散した熱は、互いに離間しているマイクロレンズ14の外部のアノード配線9表面から大気(空気)へと太矢印H2に示す方向に導熱する。これにより、発光素子アレイ8は、発光素子11の熱による素子性能劣化を防ぐことができる。
【0081】
以上のように、本実施形態によれば、太陽光等の外光49がヘッドアップディスプレイ装置100へ入射したときに、画像表示モジュール1を構成する発光素子アレイ8上の各マイクロレンズ14を経由して発光素子11に集光されることで、局所的に発生した熱の導熱を、発光素子11に密着するように形成されたアノード配線9を介して、発光素子11領域外に拡散し導熱することが可能となる。これにより、発光素子11の熱による素子性能劣化を防ぐことができる。
【0082】
本実施形態では、複数マイクロレンズ14は互いに離間している円柱状の形態について説明したが、マイクロレンズの機能として、先端が球面レンズ形状であれば角柱形態でも同様の効果を奏する。
【0083】
また、複数のマイクロレンズの底面は、薄く連結した形態であってもよい。この場合、マイクロレンズ同士を連結する連結部の熱伝導率を考慮した厚み以下、すなわち、
図8を参照して説明した太矢印H2の導熱効果が大気の場合と同等となる範囲の厚みであればよい。
【0084】
(第2の実施形態)
(構成)
前記した第1の実施形態では、発光素子11を接するようにアノード配線9を形成し熱拡散性を高めることによって、太陽光等の外光49がヘッドアップディスプレイ装置100に入射し、凹面鏡50及び平面鏡51により導光され、発光素子アレイ8へと至り、発光素子アレイ8上の各マイクロレンズ14によって集光され、発光素子11内で局所的に発生した熱を素子全体へと拡散させ、発光素子11の素子性能の劣化を防止する実施形態を示した。
【0085】
しかしながら、集光した外光49が、アノード配線9で反射して、例えばマイクロレンズ14等に吸収されることにより、素子間において温度環境が変化し、素子劣化を招く可能性がある。
【0086】
そこで、本実施形態では、第1の実施形態の構成の発光素子アレイにおいて、さらに、発光素子11を接するように形成されたアノード配線9の上層に、ブラックレジスト52を塗布した形態である。なお、第1の実施形態と同様の構成の部位に関しては、同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0087】
図9A乃至
図9Cを参照して、ブラックレジスト52を適用した第2の実施形態における発光素子11と発光素子アレイ8の4×4マトリクスを説明する。
【0088】
ブラックレジスト52は、例えばスピンコート法により塗布される。また、ブラックレジスト52は、フォトリソグラフィ工程によりパターニングが可能である。ブラックレジスト52の成分の一例として、ポリイミド樹脂からなるバインダー樹脂と黒色着色剤としてチタンブラック成分とを含むものがある。さらに、ブラックレジスト52は、光を吸収する光学特性のみならず絶縁性を有する電気的特性を持つ材料である。なお、表面には、第1の実施形態と同様に表面保護のためのパシベーション膜が形成されている。
【0089】
(動作・作用)
第1の実施形態と同様に、太陽光等の外光49が集光された場合、アノード配線9上に形成されたブラックレジスト52により反射が抑制され熱を吸収することにより、周囲の温度環境を一定に保つことができる。このブラックレジスト52により吸収された熱は、アノード配線9により周囲へ拡散する。
【0090】
以上のように、第2の実施形態によれば、太陽光等の外光49が、ヘッドアップディスプレイ装置100内に入射し、凹面鏡50および平面鏡51によって導光され、発光素子11に接するように形成されたアノード配線9に到達した光は、発光素子11を接するように形成されたアノード配線9上にパターニングしたブラックレジスト52により吸収され、アノード配線を通じて周囲へ拡散する。これにより、周囲の温度環境を一定に保ち、発光素子11の劣化を防ぐことができる。
【0091】
また、ブラックレジスト52は、発光領域24以外の領域からの光を吸収するので、発光部24から出射される光のコントラストを鮮明にすることができる効果を有する。
【0092】
またさらに、ブラックレジスト52は、絶縁性を有することから、アノード配線9上にパターニングする制限を拡張し、発光領域24を除く領域全面に形成することも可能である。
【0093】
以上説明したように、本発明の発光パネル、及びそれを備えたヘッドアップディスプレイによれば、太陽光等の外光による発光素子の局所的な発熱を有効に放熱させ、発光素子の温度上昇による特性劣化を防止することが可能となる。