(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671502
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】発光モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20150129BHJP
G09F 13/20 20060101ALI20150129BHJP
F21S 4/00 20060101ALI20150129BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20150129BHJP
F21Y 101/02 20060101ALN20150129BHJP
【FI】
H01L33/00 400
G09F13/20 G
F21S4/00 100
F21V23/00 160
F21Y101:02
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-159962(P2012-159962)
(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-22571(P2014-22571A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2013年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】504010062
【氏名又は名称】株式会社エフェクトメイジ
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須 徹
【審査官】
北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−104419(JP,U)
【文献】
特開平07−296614(JP,A)
【文献】
特開2007−305578(JP,A)
【文献】
実開平03−065945(JP,U)
【文献】
特開2007−166998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
F21V 19/00 − 19/06
F21S 2/00 − 19/00
G09F 13/00 − 13/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部(10)の後方に2本の電極(12,14)を延出させた発光体(16)と、この発光体(16)の電極(12,14)に夫々接続した2本の導線(18,20)とからなり、前記発光体(16)の本体部(22)および前記各電極(12,14)の導線(18,20)の接続部位を保護体(24)で包被してなる発光モジュールにおいて、
前記発光体(16)の電極(12,14)に夫々接続した2本の導線(18,20)を指叉状に相互に離反する方向へ延在させると共に、
前記発光体(16)の本体部(22)と、前記2本の導線(18,20)の接続部位と、前記2本の導線(18,20)における指叉状の延在部分とを熱可塑性樹脂により一体成形して前記保護体(24)を構成した
ことを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
前記発光部(10)は、発光ダイオード(LED)である請求項1記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、ポリ塩化ビニル化合物である請求項1または2記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記導線(18,20)の被覆もポリ塩化ビニル化合物とすることで、前記一体成形によって夫々のポリ塩化ビニル化合物の一体的な融合が促進される請求項3記載の発光モジュール。
【請求項5】
前記一体成形は、熱可塑性樹脂を加熱して圧力下に成形型へ鋳込む射出成形によりなされる請求項1〜4の何れか一項に記載の発光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリスマスの照明や店舗・樹木等のディスプレイ照明等に広く使用される多灯イルミネーション用の発光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリスマスシーズンに家屋や樹木等に巻き付けて夜間に点灯させたり、店舗、看板、庭園等の発光ディスプレイに供されたりする多灯イルミネーションが、民生用や業務用として広く普及している。この多灯イルミネーションは、多数の発光体を2本の電源コードに並列または直列接続して、同時発光や時間差発光により、多様な光の演出を楽しませるものである。しかし従前は、発光体としてバイメタル式のフィラメント球や小型電球が使用されていたが、多数を点灯させると電気使用量が嵩み、また球の寿命も比較的に短かったりする欠点がある。更に、発光体としての電球は発熱するため、これを樹木に巻き付けて使用するような場合は、樹木の育成に好ましくない影響を与えることが懸念される。加えてネオン管の場合は、輝度が充分でなく、しかも低電圧での点滅駆動に適さない難点がある。
【0003】
従って現在は、電気代が安くて寿命が長く、また発熱も少ない発光ダイオード(LED)が、多灯イルミネーションにおける発光体の主流になっている。この発光ダイオードを発光体として使用する多灯イルミネーションとしては、例えば次の特許公報が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−187603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記発光ダイオードを発光体とする多灯イルミネーションは、当該発光ダイオードと、このダイオードの2本の電極(アノードとカソード)に接続する所定長の導線とを基本単位とする発光モジュールを多数有している。前記導線は所要長の2本の電線であって、これに必要数だけ発光モジュールが並列または直列に接続される。なお、2本の導線は、交流100Vを低圧の直流に変換するコントローラに接続され、各発光モジュールに指定容量の直流を供給してコンピュータ制御による点滅等の演出発光を行わせる。
【0006】
本発明は、前記発光モジュールの改良に関するものであるので、発光ダイオード(LED)を使用した発光モジュールの従来例を以下に説明する。
図3に示す従来の発光モジュール26において発光体(LED)16は、発光部10と、その後方に延出するアノード電極12およびカソード電極14とからなる。前記電極12,14は所要長の導線18,20にハンダ付け接続され、また前記発光体16の本体部22と各電極12,14および導線18,20の接続部位とをビニールチューブ24により包被することにより前記発光モジュール26を得ている。このビニールチューブ24の保護体は、所要温度まで加熱すると収縮して、前記本体部22と接続部位とを密着的に包被する熱収縮性のシュリンクチューブが使用される。このシュリンクチューブによる発光モジュール26は、強度は小さいが製造コストを低廉になし得る利点がある。
【0007】
なお、アノード電極12およびカソード電極14は、極く近接して平行に延在しているので、製造時や使用時の過大な応力負荷により両電極が接触することがないよう、両電極間に電気絶縁性に優れた隔離体28を介在させてある。
【0008】
図4に示す発光モジュール26は、基本的に
図3に示した構造と同じであるが、保護体24としてシュリンクチューブでなく、熱可塑性樹脂、例えばポリ塩化ビニル化合物の成形体が採用されている。すなわち発光体16の本体部22と、アノード電極12およびカソード電極14の各導線18,20への接続部位とを、成形型(図示せず)の円筒状キャビティにセットし、加熱したポリ塩化ビニル化合物を圧力下に前記成形型へ射出することで、円筒状の保護体24が成形される。この場合は、保護体24を射出成型する際に加わる大きな圧力により2本の電極12,14が接触してしまうのを防止するため、前記隔離体28が両電極間に介在させられる。
【0009】
図3および
図4に示す発光モジュール26は、何れも多灯イルミネーションに多数設けられ、該多灯イルミネーションは家屋、商品展示施設、樹木等に巻付けや湾曲等の形態で設営される。また発光展示が終了すると、多灯イルミネーションは再使用のため撤去されるが、これら設営や撤去の際に、当該モジュール26の保護体24から導出された2本の導線18,20には往々にして過大な引張り応力が加わる。すなわち、多灯イルミネーションの設営や撤去の工事に際し2本の電線には、
図3および
図4に矢印で示すように、左右への引張り方向の力が加わり易く、その応力負荷が大きい場合は、図中に2点鎖線で円形に示す部位に縦の亀裂や開裂を生じることがある。
【0010】
前記開裂にまで到らない初期の亀裂であっても、当該亀裂に雨水や空気中の湿分が毛細管現象により侵入すると、発光体(LED)16の2本の電極間に微漏電を発生させる。この微漏電は、電気的には電気絶縁性能の低下を意味するので、複数の発光モジュール26に前記微漏電を生じると経時的に絶縁性能の低下が累積的に大きくなり、遂には漏電ブレーカを短絡遮断させる事態を生じる。これは多灯イルミネーションによる演出・展示等のイベントを中断させる重大な事故に発展するので、事故発生を未然に防止する必要性が認識されていた。勿論、多灯イルミネーションの設営や撤去時に、発光モジュールと2本の導線との付け根に大きな引張り力が加わらないように、2本の電気導線とは別に補強用ケーブルをパラレルに絡めて、機械的な応力を該補強ケーブルに負担させるような手段が採られている。しかし補強ケーブルがあっても、2本の導線が左右に無理に引張られて発光モジュールの基部に前述した亀裂や開裂を生じる事故は起き得るため、個々の発光モジュールで解決する必要性は依然として存在している。
【0011】
そこで本発明は、従来の技術に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、発光モジュールに過大な応力負荷が加わっても開裂や亀裂の発生が抑えられ、微漏電によるブレーカーの短絡を未然に防止し得る手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願請求項1に係る発光モジュールは、
発光部の後方に2本の電極を延出させた発光体と、この発光体の電極に夫々接続した2本の導線とからなり、前記発光体の本体部および前記各電極の導線の接続部位を保護体で包被してなる発光モジュールにおいて、
前記発光体の電極に夫々接続した2本の導線を指叉状に相互に離反する方向へ延在させると共に、
前記発光体の本体部と、前記2本の導線の接続部位と、前記2本の導線における指叉状の延在部分とを熱可塑性樹脂により一体成形して前記保護体を構成したことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、発光体の電極に接続した2本の導線が指叉状に相互に離反する方向へ延在するので、2本の導線に相互に離反する方向へ引張り力が加わっても保護体に過大な力が掛かり難く、保護体に亀裂等が生じる可能性を減少させることができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記発光部は、発光ダイオードであることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、発光部が発光ダイオードであるため、電気代が安くて寿命が長く、また発熱が少ない。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記熱可塑性樹脂は、ポリ塩化ビニル化合物であることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、強度および電気絶縁性に優れた保護体を形成でき、また発光モジュールを安価に製造し得る。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記導線の被覆もポリ塩化ビニル化合物とすることで、前記一体成形によって夫々のポリ塩化ビニル化合物の一体的な融合が促進されることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、導線の被覆と保護体を形成する樹脂化合物とをポリ塩化ビニル化合物とすることで、一体成形により夫々のポリ塩化ビニル化合物の融合が促進され、これらをより強固に一体化できる。
【0016】
請求項5に係る発明は、前記一体成形は、熱可塑性樹脂を加熱して圧力下に成形型へ鋳込む射出成形によりなされることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、発光体の本体部と、2本の導線の接続部位と、2本の導線における指叉状の延在部分とを射出成形により強固に一体化し得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る発光モジュールによれば、発光モジュールに生ずる開裂や亀裂を抑えることができ、従って微漏電に起因するブレーカーの短絡遮断という事故を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例に係る発光モジュールの縦断面図である。
【
図2】実施例に係る発光モジュールの正面図である。
【
図3】保護体をビニールチューブとする従来技術に係る発光モジュールの縦断面図である。
【
図4】保護体をポリ塩化ビニル化合物の成形体とする従来技術に係る発光モジュールの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る発光モジュールにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下に説明する。なお、発光モジュールの基本的な構成は、既に
図3および
図4に関して説明したところである。従って、本実施例では、前記課題を解決する具体的な構成に焦点を絞って説明する。また既出の部材については、同じ参照符号で指示するものとする。
【実施例】
【0020】
実施例に係る発明では、前記発光ダイオードからなる発光体16のアノード電極12およびカソード電極14にハンダ付け接続される2本の導線18,20が、指叉状に相互に離反する方向に延在させてある。ここで「指叉状」とは、前記2本の導線18,20を人間の足に見立てた場合に、その両脚を左右に大きく開いた形状を称するものであり、「人」形または「逆V字状」と称することもできる。この2本の導線18,20が指叉状に開く角度は、それが余り小さい場合は従来技術で指摘した欠点を解消し得ない可能性がある。また、その角度を余り大きく設定すると、発光モジュール26が横方向に広がり過ぎて、多灯イルミネーションに組み込んだ場合に立体的な展示の設営を難しくする難点がある。要は、発光モジュール26における2本の導線18,20に左右方向への引張り力が加わっても、指叉状に開いていることで、後述の保護体24に過大な力が掛かり難く、亀裂等を生じる可能性を減少させる範囲であれば良い。
【0021】
このように2本の導線18,20を指叉状に相互に離反する方向に延在させた下で、樹脂化合物により保護体24を成形することで前記発光モジュール26が得られる。すなわち、前記発光体16の本体部22と、該本体部22から指叉状に延在している2本の導線18,20とを金型のキャビティ(何れも図示せず)にセットし、型締めを行った後に、加熱した熱可塑性樹脂、例えばポリ塩化ビニル化合物(PVC)を圧力下に前記金型中へ射出することで、
図2に示す発光モジュール26が完成する。これをより具体的に説明すると、前記導線18,20の絶縁被覆として、前記保護体24の材質であるポリ塩化ビニルと同じポリ塩化ビニルを使用するが、前者の被覆用ポリ塩化ビニルの熱可塑温度が後者の保護体用ポリ塩化ビニルの熱可塑温度より若干低い特性を選択しておく。これにより、発光モジュール26における本体部22および導線18,20を金型のキャビティにセットして、ポリ塩化ビニルを高温高圧下に射出すれば、導線18,20における絶縁被覆のポリ塩化ビニルは、射出されたポリ塩化ビニルの熱により溶融する。従って脱型後の発光モジュール26では、保護体24のポリ塩化ビニルと両導線18,20のポリ塩化ビニルとが一体的に溶融固化した状態となり(
図1)、耐引張り特性や防水特性が格段に優れたものとなる。
【0022】
この場合に、従来の発光モジュール26では、前述したように2つの電極12,14間に電気絶縁性に優れた隔離体28をセットする必要があった。しかし、本発明の実施例では、2本の導線18,20を相互に離反する方向へ延在するよう設定してあるので、これを金型にセットして高圧下に前記射出成形を行っても、両導線18,20が電気的に接触する畏れがない。従って本発明では、前記隔離体28を両導線18,20の間に設ける必要はない。
【0023】
得られた発光モジュール26は、発光体16の本体部22と、2本の導線18,20が電極12,14に接続する部位と、該電極12,14が指叉状に開いて延在する部分とがポリ塩化ビニル化合物により一体成形された保護体24でカバーされている。
【0024】
次に、実施例に係る発光モジュール26の作用および効果を説明する。実施例に係る発光モジュール26は、発光体16の両電極12,14にハンダ付け接続された2本の導線18,20が指叉状に相互に離反する方向に延在するので、発光モジュール26が組込まれた多灯イルミネーションを設営したり撤去する際に、2本の導線18,20に左右への引張り力が加わったとしても、保護体24に過大な力が掛かり難く、保護体24に亀裂や開裂が生じる可能性を減少させることができる。このように、保護体24に亀裂等を生じ難いため、2本の電極18,20間に微漏電を生じる可能性が極めて低く、前述した電気絶縁性に優れた隔離体28を両電極間に設ける必要がなく、コストの削減を達成し得る。また、発光体16が発光ダイオードであるため、電気代が安くて寿命が長く発熱も少ない、という利点がある。更に、シュリンクチューブを保護体とする場合は手作業に頼っていたが、本発明は保護体を熱可塑性樹脂の射出成形等により製造し得るため、工程の自動化が図られて効率的である。
【0025】
(変更例)
本発明は、前述の実施例に限定されず、以下の如く変更することも可能である。
(1) 実施例では、発光体として発光ダイオードを採用する例に挙げて説明したが、発光体は電球であってもよい。
(2) 実施例では、樹脂化合物としてポリ塩化ビニル化合物を例に挙げて説明したが、これに限定されず、ABSやエラストマー等の樹脂化合物であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 発光部,12 アノード電極(電極),
14 カソード電極(電極),16 発光体,
18 導線,20 導線,22 本体部,
24 保護体,26 発光モジュール