特許第5671514号(P5671514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5671514発揮性アルキル化剤の安定化組成物およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671514
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】発揮性アルキル化剤の安定化組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/131 20060101AFI20150129BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20150129BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   A61K31/131
   A61K47/10
   A61P17/00
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2012-253174(P2012-253174)
(22)【出願日】2012年11月19日
(62)【分割の表示】特願2008-501950(P2008-501950)の分割
【原出願日】2006年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-91643(P2013-91643A)
(43)【公開日】2013年5月16日
【審査請求日】2012年12月18日
(31)【優先権主張番号】60/661,356
(32)【優先日】2005年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/751,128
(32)【優先日】2005年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11/369,305
(32)【優先日】2006年3月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507020440
【氏名又は名称】アクテリオン・ファーマシューティカルス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Actelion Pharmaceuticals Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロックス,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ピンレイ,マーク,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】アロンソ,ロバート
【審査官】 安藤 公祐
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第3904766(US,A)
【文献】 TAYLOR, R.J,ARCHIVES OF DERMATOLOGY,1980年 7月,V116 N7,P783-785
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/131
A61K 47/08
A61K 47/10
A61K 47/18
A61K 47/20
A61K 47/34
A61K 47/38
A61P 17/02
A61P 17/04
A61P 17/06
A61P 17/14
A61P 17/16
A61P 35/00
A61P 35/02
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.0001〜2.0重量%の窒素マスタードまたはその薬剤的に許容される塩を含み、前記窒素マスタードまたはその薬剤的に許容される塩は、非水性媒体または担体中にあり、
前記窒素マスタードは、ビス−(2−クロロエチル)エチルアミン、ビス−(2−クロロエチル)メチルアミンおよびトリス−(2−クロロエチル)アミン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記非水性媒体または担体は、HOCHCHOCHCHOR79(R79は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基である。)を含み、且つワセリンまたはエタノールを含有せず、
乾せん、湿疹、紫外線角化症脱毛症、皮膚T細胞リンパ腫菌状息肉症皮膚B細胞リンパ腫、皮膚の偽リンパ腫、扁平上皮癌、基底細胞癌悪性メラノーマリンパ腫様丘疹症およびムッハ・ハーベルマン症(PLEVA)、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、疾患治療の局所用薬剤組成物。
【請求項2】
ヒドロキシプロピルセルロース、緩衝ゲル、メントール石英ブチル化ヒドロキシトルエングリセリンエデト酸2ナトリウム、デシルメチルスルホキシド、Kris−エステル236、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール(EG)、ポリプロピレングリコール(PPG)およびプロピレングリコール、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の成分をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、0.015〜0.030重量%の窒素マスタードまたはその薬剤的に許容される塩を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
15から60重量%のプロピレングリコールまたはジメチコンまたはシクロメチコンをさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
エトキシジグリコール剤、ヒドロキシプロピルセルロース、メントール石英ブチル化ヒドロキシトルエングリセリンエデト酸2ナトリウム、デシルメチルスルホキシド、およびKris−エステル236からなる群から選択される少なくとも一種の成分をさらに含有する、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記窒素マスタードの薬剤的に許容される塩は、窒素マスタード・HCl、窒素マスタード・HSO、窒素マスタード・HNO、窒素マスタード・HSO、窒素マスタード・HBrおよび窒素マスタード・HI並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記窒素マスタードは、ビス−(2−クロロエチル)エチルアミン、ビス−(2−クロロエチル)メチルアミンおよびトリス−(2−クロロエチル)アミン、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記窒素マスタードまたはその薬剤的に許容される塩は、ビス−(2−クロロエチル)メチルアミンまたはその薬剤的に許容される塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記疾患は、皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉症、乾せん、紫外線角化症、皮膚B細胞リンパ腫および脱毛症、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記疾患は、皮膚T細胞リンパ腫または菌状息肉症である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、皮膚疾患の局所的治療に対する組成物および方法に関するが、より特定的には、皮膚疾患を局所的に治療する安定化窒素マスタード組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)は、免疫システムのTヘルパー(CD4+)細胞の悪性腫瘍である。CTCLは菌状息肉症(MF)として知られるが、主に皮膚を侵し、二次的にのみ他の部位を侵す、白血球の癌である。この疾患は、免疫反応における役割のためそう呼ばれるのだが、Tヘルパー細胞として知られるTリンパ球の制御不能な増殖に関与する。Tヘルパー細胞は、CD4と呼ばれるTヘルパー細胞の表面上のタンパク受容体の存在により特徴づけられる。従って、Tヘルパー細胞はCD4+と呼ばれる。
【0003】
Tヘルパー細胞の増殖は、これらの異常細胞の皮膚の表皮層への浸透または浸潤をもたらす。皮膚は、最大浸潤部位が病変部位と必ずしも一致しないが、かゆいわずかなスケーリング病変と反応する。病変は、たいてい体幹部に位置するが、体のあらゆる部分に現れうる。疾患の最も一般的な経過においては、分断的な病変は、紅色でより明確な縁をもつ明白な斑点に進展する。疾患が悪化すると、しばしばマッシュルーム形の皮膚腫瘍が生じるため、菌状息肉症と呼ばれる。最後に、癌は、皮膚外へ関与、しばしばリンパ節または内臓へ進展する。
【0004】
CTCLは、米国において、年間発症率100,000人に約0.29のケースのまれな疾患である。東欧の約半分である。しかし、この相違は、発生における本来の差というよりむしろ医師の疾患に対する意識の差に起因するかもしれない。米国において、一年に約500〜600の新しい症例、および約100〜200の死亡が確認されている。CTCLは、通常、高齢者に見られ、診断時の年齢中央値は、55〜60歳である。女性より2倍多く男性に起こる。診断時の平均余命は、治療をしなくても7〜10年である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
皮膚に施される治療の一般的な副作用は、薬剤の皮膚過敏である。薬剤に対する皮膚過敏を避けるまたは最小限にする皮膚疾患治療の組成物および方法の改善が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の側面は皮膚疾患の治療における組成物を提供することであり、それは、窒素マスタードまたは窒素マスタードのHX塩を含有し、ここで、窒素マスタードまたは窒素マスタードのHX塩は非水性媒体または担体中に存在し、非水性媒体または担体はワセリンまたはエタノールを含有せず、窒素マスタードは以下の構造により表されるものである。
【0007】
【化5】
【0008】
式中、各R、R、R...R34(R−R34)は、水素原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、2〜12個の炭素原子を有する分岐鎖アルキル基、3〜17個の炭素原子を有するシクロアルキル基、2〜12個の炭素原子を有するフッ素化直鎖アルキル基、2〜12個の炭素原子を有するフッ素化分岐鎖アルキル基、3〜17個の炭素原子を有するフッ素化シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、バイシクロアルキル基、アルケニル基、アルカルケニル基、アルケニルアルキル基、アルキニル基、アルカルキニル基、アルキニルアルキル基、トリフルオロプロピル基、シアノプロピル基、アクリロイル基、アリールアクリロイル基、アクリロイルアリール基、アルキルアシル基、アリールアシル基、アルキレニルアシル基、およびアルキニルアシル基からなる群から独立して選択され、ここで、nは1、2または3、pは0、1または2、n+p≦3であり、同一分子中のR−R34のいずれか2つが3から8員の環状基を形成するように連結されてよい。
【0009】
本発明の第二の側面は、皮膚疾患をもつ患者の治療方法を提供することであり、それは、窒素マスタードまたは窒素マスタードのHX塩を侵された皮膚に局所的に施すことを含み、ここで、窒素マスタードまたは窒素マスタードのHX塩は非水性媒体または担体中に存在し、非水性媒体または担体はワセリンまたはエタノールを含有せず、窒素マスタードは以下の構造により表されるものである。
【0010】
【化6】
【0011】
式中、各R、R、R...R34(R−R34)は、水素原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、2〜12個の炭素原子を有する分岐鎖アルキル基、3〜17個の炭素原子を有するシクロアルキル基、2〜12個の炭素原子を有するフッ素化直鎖アルキル基、2〜12個の炭素原子を有するフッ素化分岐鎖アルキル基、3〜17個の炭素原子を有するフッ素化シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、バイシクロアルキル基、アルケニル基、アルカルケニル基、アルケニルアルキル基、アルキニル基、アルカルキニル基、アルキニルアルキル基、トリフルオロプロピル基、シアノプロピル基、アクリロイル基、アリールアクリロイル基、アクリロイルアリール基、アルキルアシル基、アリールアシル基、アルキレニルアシル基、およびアルキニルアシル基からなる群から独立して選択され、ここで、nは1、2または3、pは0、1または2、n+p≦3であり、同一分子中のR−R34のいずれか2つが3から8員の環状基を形成するように連結されてよい。
【0012】
本発明の第三の側面は、発揮性アルキル化剤の安定化方法を提供することであり、それは、非水性流動可能軟膏またはクリームであって、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性流動可能軟膏またはクリームを提供することと、無水溶媒中で発揮性アルキル化剤のHX塩を再構成することと、混合された非水性流動可能軟膏またはクリームと発揮性アルキル化剤のHX塩を併用することを含む。
【0013】
本発明の第四の側面は、室の周りに壁を有する装置を提供し、ここで、壁は、薬剤的に許容される窒素マスタード・HClとワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体の混合物に対して不透過性の材料で作成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
一つの実施形態において、ポリプロピレングリコール(PPG、分子重量は約300から約2500)、プロピレングリコール(PG)、ポリエチレングリコール(PEG、分子重量は約100から約1000)またはエチレングリコール軟膏またはクリームに配合された窒素マスタードで局所的に治療を受けたMFの患者は、いかなる全身毒性の徴候を示さなかった。
【0015】
下の表1は、反応率および毒性を含む、プロピレングリコール(PG)に配合された窒素マスタードを用いたMFの患者の局所的治療の要約を提供する。
【0016】
【表1】
【0017】
*全身毒性は、病歴および身体および研究試験により監視された。
【0018】
略語:PTS=患者研究;F/U=フォローアップ;CR=完全反応;PG=プロピレングリコール、PCR=部分反応;NR=報告なし
全身吸収
局所的に施された窒素マスタードの臨床的に有意な全身吸収の証拠はない。経皮吸収からの全身毒性は、MFでの長期局所的窒素マスタード使用において認められなかった。
【0019】
遺伝毒性 遺伝毒性は、局所的窒素マスタード塗布(application)の使用において認められなかった。これは、局所的窒素マスタード治療の前後に分析されたCTCL−MF患者の末梢血リンパ球の姉妹染色体交換に作用がないことを証明する研究で詳しく記録されている。
【0020】
骨髄の抑制 全血球算定の連続監視によると、骨髄の抑制(貧血、白血球減少または血小板減少)は、局所的窒素マスタードの長期使用において報告されていない。
【0021】
肝毒性 末梢血肝機能検査の連続監視によると、肝毒性の徴候は局所的NMの長期使用において報告されていない。
【0022】
腎毒性 末梢血腎機能検査の連続監視によると、腎毒性の徴候は局所的窒素マスタードの長期使用において報告されていない。
【0023】
環境汚染
環境汚染の徴候も局所的窒素マスタードにおいてごくわずかしか示されていない。
【0024】
皮膚における副作用
窒素マスタードの直接メラニン形成作用により生じる色素沈着過剰が、治療を受けた多くの患者において報告されている。色素沈着過剰は、回復可能であり、局所的治療が継続したとしても、ほとんどの患者において徐々に減少する。
【0025】
接触性皮膚炎は、局所的窒素マスタード塗布においてよく起こる合併症である。刺激性接触性皮膚炎は最も多く、特に顔や皮膚皺襞などの敏感な部分に使用されると、局所的窒素マスタード軟膏を使用する個人の最大25%において見られる。アレルギー性接触性皮膚炎も局所的窒素マスタード使用において認められている。
【0026】
即時型(蕁麻疹)反応はまれである。
【0027】
遅延型過敏(DTH)反応からのアレルギー性接触性皮膚炎は、より一般的で、用量に依存するようである。高濃度の水性調製液は、10〜67%の頻度でDTHに関係する。窒素マスタードの低濃度における脱感受性は、窒素マスタードにDTH反応する患者において良好に用いられている。低濃度の軟膏調製の使用は、劇的にDTH反応の発生率を減少させる。Stanford大学は、一連の窒素マスタード軟膏調製の使用において、初めて窒素マスタード軟膏を使用した患者において0%のDTH反応、およびHN過敏の前歴のある患者において8%のDTH頻度を報告した。
【0028】
小児への使用
局所的窒素マスタードが、成人より毒性において大きな差異がなく子供および青年(<18歳)に使用されると報告されている。
【0029】
妊娠中の使用
局所的窒素マスタードの経皮吸収の証拠は無いが、局所的窒素マスタードの使用は、従来、妊娠中および授乳中の女性において避けられている。
【0030】
皮膚癌
局所的な窒素マスタードの長期使用において、皮膚の扁平上皮癌(SCC)の発生率の有意な増加は報告されていない。いくつかのグループが、局所的な窒素マスタードを使用したCTCL−MF患者におけるSCCの10%(4%〜14%)の頻度を報告しており、表皮癌のリスクの可能性を示唆している。しかし、これらの遡及的な研究は、二次悪性腫瘍、治療歴(例えば、皮膚への放射線治療)のCTCL−MFに関連するリスクなどの交絡変数を説明せず、適切な対照群がない。
【0031】
正常なDNA鎖複写において、各デオキシリボヌクレオチドがアデニン塩基(A)、チミン(T)、シトシン(C)およびグアニン(G)を含有してよいデオキシリボヌクレオチドを有するDNA鎖は、鎖上の各デオキシリボヌクレオチドを他のデオキシリボヌクレオチドと連結することにより複写するが、ここで、通常の連結は、改変前のDNA鎖と複写されたDNA鎖間において、アデニン(A)とチミン(T)間で生じてA−T連結を形成し、シトシン(C)とグアニン(G)間で生じてC−G連結を形成する。
【0032】
窒素マスタードアルキル化剤は、特定の窒素マスタードアルキル化剤が二官能アルキル化剤である場合、グアニン(G)塩基が他のグアニン(G)塩基に連結するような非天然の塩基−塩基連結を可能にして、癌細胞の自然なDNA鎖複写を損傷することにより抗癌剤として作用することができる。以下、二官能アルキル化剤は、以下の反応1の構造Iのような、例えばビス−(2−クロロエチル)メチルアミンなど、少なくとも2つの2−クロロエチル側鎖を有する窒素マスタードである。
【0033】
以下の反応1は、反応1における順反応1aと逆反応1bにより表される可逆可能な反応を示し、ここで、以下の構造Iにより表される、例えばビス−(2−クロロエチル)メチルアミンなど、2−クロロエチル側鎖を有する窒素マスタードアルキル化剤は、分子内環化を起こしてよく、以下の構造IIにより表される、高い反応性エチレンイミニウム中間物(アジリジニウムカチオン)の形成をもたらす。以下のIIのアジリジニウムの濃度は、以下のIの窒素マスタードの濃度と平衡であってよく、ここで、平衡定数Keq(1a,1b)は、順反応1aの割合k1aの逆反応1bの割合k1bに対する比率により表される。
反応1:以下の構造IIにより表されるアジリジニウムカチオンの形成
【0034】
【化7】
【0035】
構造Iにおいて、塩素に結合した炭素原子は、最初に部分的な正電荷δ+を有してよく、塩素原子は、最初に部分的な負電荷δ−を有してよい。反応Iにおいて、窒素の非共用電子対は、δ+を有する炭素への共有結合を形成してよく、塩化物として塩素原子を放出し、構造IIを形成する。
【0036】
上の構造IIは、電子供与、つまり求核試薬、による求核性攻撃を起こしてよく、結果として求核試薬をアルキル化する。グアニン(G)のN−7位で、上の反応2で示される構造IIIの求核試薬グアニン(G)との反応は、より広い範囲で生じる。グアニン(G)の他の位置およびアデニン(A)、シトシン(C)およびチミン(T)およびリン酸酸素などの他のDNA塩基もアルキル化されてよい。以下、構造IIIは、いかなるDNA塩基を有するデオキシリボヌクレオチドの全ての立体異性体およびラセミ体を表す。
【0037】
反応2:上の反応1に示す分子内環化により生じる、構造IIの不安定なアジリジニウム環上のグアニンによる求核性攻撃
【0038】
【化8】
【0039】
上の反応2は、アルキル化されたデオキシリボヌクレオチドの形成、構造IVを生じる。上の反応2において、構造IIIで表されるデオキシリボヌクレオチドのグアニン(G)塩基のN−7位は、上の反応1により表される分子内環化により形成されてよいアジリジニウム環、構造IIを求核的に攻撃してよく、結果として構造IIIのグアニン(G)塩基のN−7位をアルキル化する。以下、構造IVは、いかなるDNA塩基を有する全てのデオキシリボヌクレオチドの立体異性体およびラセミ体を表す。
【0040】
アルキル化剤は、核酸上で4つの作用を有する。最初に、アルキル化剤は、DNAおよびRNA合成と干渉するDNA鎖の架橋を生じる可能性がある。これは、アルキル化剤の細胞障害作用における最も重要な理由と考えられる。第二に、アルキル化剤は、合成されたDNAおよびRNA鎖における異常塩基対および点変異を導くであろうヌクレオチド低環の「側鎖基」を変更する可能性がある。第三に、アルキル化剤は、適切なDNAおよびRNA合成をまた妨げるヌクレオチドから低環を分離する可能性がある。最後に、アルキル化剤は、DNAおよびRNA合成中に塩基対を妨げるヌクレオチド塩基の環構造を破壊する可能性がある。
【0041】
正常なDNA鎖複写において、各デオキシリボヌクレオチドがアデニン塩基(A)、チミン(T)、シトシン(C)およびグアニン(G)を含有してよいデオキシリボヌクレオチドを有するDNA鎖は、鎖上の各デオキシリボヌクレオチドを他のデオキシリボヌクレオチドと連結することにより複写するが、ここで、通常の連結は、改変前のDNA鎖とその複写されたDNA鎖間において、アデニン(A)とチミン(T)間で生じてA−T連結を形成し、シトシン(C)とグアニン(G)間で生じてC−G連結を形成する。
【0042】
窒素マスタードアルキル化剤は、特定の窒素マスタードアルキル化剤が二官能アルキル化剤である場合、グアニン(G)塩基が他のグアニン(G)塩基に連結するような非天然の塩基−塩基連結を可能にして、自然なDNA鎖複写を損傷することにより抗癌剤として作用することができる。以下、二官能アルキル化剤は、上の構造Iの、例えばビス−(2−クロロエチル)メチルアミンなど、少なくとも2つの2−クロロエチル側鎖を有する窒素マスタードである。
【0043】
上記反応2において、構造IVにより表されるデオキシリボヌクレオチドの2−クロロエチル側鎖の一つは、構造IIIのアルキル化グアニン(G)塩基を有する。下の逆反応3において、構造IVのデオキシリボヌクレオチドの残りの2−クロロエチル側鎖も分子内環化を受け、高反応アジリジニウム環を有するデオキシリボヌクレオチドVの形成を生じる。
反応3:上の構造IVのデオキシリボヌクレオチドの残りの2−クロロエチル側鎖からのアジリジニウムカチオンの形成
【0044】
【化9】
【0045】
下の反応4は、グアニン(G)塩基および活性化アジリジニウム環を有するデオキシリボヌクレオチドVの異常連結と、これもグアニン(G)塩基を有する他のデオキシリボヌクレオチドIIIとの異常連結により、構造VIにより表される製品のグアニン・グアニン(G−G)連結の形成を示す。以下、構造VIは、上の構造IIにより表される二官能アルキル化窒素マスタードを有するN−7位で、構造IIIにより表されるデオキシリボヌクレオチドの2分子の結合からの製品のすべての立体異性体およびラセミ体を表す。
反応4:グアニン(G)塩基および活性化アジリジニウム環を有するデオキシリボヌクレオチドVの異常連結と、これもグアニン(G)塩基を有する他のデオキシリボヌクレオチドVIとの異常連結
【0046】
【化10】
【0047】
水は、OH基で窒素マスタードの2−クロロエチル側鎖上の塩素原子を置換することにより、上の反応1の構造IIにより表される高い反応性エチレンイミニウム中間物(アジリジニウムカチオン)を分解するため、水の存在下において、窒素マスタードの高度に不安定な性質と非常に短期間の作用が生じる。窒素マスタードは、水と反応し、ヒドロキシル(OH)基で塩素原子の1つまたは両方を置換するため、非常に不安定で、非常に短期間しか作用しないと言われる。塩素原子の置換は、アジリジニウムカチオンの形成を遮断する可能性があり、従って、窒素マスタードが、例えば、DNAグアニン塩基のN−2位のアルキル化剤として作用することを阻害する可能性がある。反応5は、競合する平衡反応、1aと1bおよび5aと5bを示す。反応1aと1bにおいて、構造Iの窒素マスタードの遊離形態は、上の反応1で記述したように、アジリジウムイオンIIと平衡であってよい。反応1aと1bの平衡定数は、上のKeq(1a,1b)として説明される。同様に、反応5aと5bの平衡定数Keq(5a,5b)は、IXのHX塩の濃度の構造Iの窒素マスタードの遊離形態の濃度とHXの濃度の積に対する比率として表されてよい。従って、実施形態において、窒素マスタードが、下の反応5により示されるように、下の構造Iにより表されるような窒素マスタードの遊離塩基形態を構造IXにより表されるようなHX塩に変更することにより安定化されても、Keq(1a,1b)のKeq(5a,5b)に対する比率として表されるアジリジニウムカチオンの平衡濃度であってよい。従って、反応2〜4の構造IIIのDNAのグアニン塩基のN−2位は、下の反応5のアジリジニウムカチオンの濃度がKeq(5a,5b)に対するKeq(1a,1b)と同等の実正数の可能性があるため、下の反応5のように、IXのHX塩によりアルキル化されてよい。以下、窒素マスタードの遊離塩基形態は、窒素マスタードのいかなる非塩の形態であり、ここで、窒素原子の孤立電子対は、上の反応1のように、IIのアジリジニウムイオンを形成するために利用されてよい。本発明の実施形態において、上の構造IIのアジリジニウムカチオンは、電子供与による求核性攻撃を受けてよく、結果として、求核試薬をアルキル化する。例えば、グアニン(G)のN−7位で、上の反応2で示される構造IIIの求核性グアニン(G)との反応は、より広い範囲で起こる。グアニン(G)の他の部位およびアデニン(A)、シトシン(C)およびチミン(T)などの他のDNA塩基、およびリン酸酸素もアルキル化されてよい。
【0048】
発明者は、一級アルコールの酸素は、しばしば、求核試薬であり、従って、窒素マスタードの遊離塩基または薬剤的に許容されるHX塩は、例えば、正常なDNA鎖複写を阻害することによりT細胞リンパ腫に対して抗癌剤として作用するために利用される代わりに、求核試薬が窒素マスタードの遊離塩基または薬剤的に許容されるIXのHX塩によりアルキル化される、所望しない副反応で使用されるため、遊離塩基または下の反応5のように、薬剤的に許容されるIXのHX塩の使用において、不利に作用する可能性があることを開示する。以下、下の反応5のように、薬剤的に許容されるIXのHX塩は、本発明の化合物を用いて治療される対象者に対して薬剤的に許容され、実質的に非毒性である塩の形態を意味する。従って、薬剤的に許容される不活性成分、すなわち、薬剤的に許容される賦形剤が、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性の媒体または担体中の窒素マスタードの遊離塩基または薬剤的に許容されるIXのHX塩の可溶化を促進するのに必要とされる場合、窒素マスタードの遊離塩基または薬剤的に許容されるIXのHX塩の形成において、1から20個の炭素原子を有する二級および三級アルコール、アミン、アミノアルコールは、1から20個の炭素原子を有する一級アルコールに比べて好ましい。
【0049】
エチルアルコールは、塩素の損失を促進することにより、窒素マスタードまたはそのHX塩を分解する求核試薬であるため、窒素マスタードまたはそのHX塩を溶解するために使用されない。イソプロピル、セチル、ステアリル、セテアリルまたはラノリンアルコールは、窒素マスタードまたはそのHX塩を溶解または処理するために、好ましい薬剤的に許容される賦形剤である。代替的に、例えば、局所用製剤として、薬剤的に許容される賦形剤は、溶媒、緩和剤、保湿剤、防腐剤、乳化剤およびpH剤を含んでよい。適切な溶媒は、アセトン、グリコール、ポリウレタンおよび他の当該分野に周知のものを含む。適切な緩和剤は、鉱油、プロピレングリコールジカプリレート、低級脂肪酸エステル、プロピレングリコールの低級アルキルエーテル、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ロウおよび他の当該分野に周知のものを含む。適切な保湿剤は、グリセリン、ソルビトールおよび他の当該分野に周知のものを含む。適切な乳化剤は、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、ステアリン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンセトステアリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリエチレングリコールステアレート、プロピレングリコールステアレートおよび他の当該分野に周知のものを含む。適切なpH剤は、塩化水素酸、リン酸、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウムおよび他の当該分野に周知のものを含む。代替的に、pH剤は、約1重量%から約15重量%の酢酸、クエン酸または乳酸を含む。適切な防腐剤は、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、パラベンおよび他の当該分野に周知のものを含む。
【0050】
発明者は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール(EG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、プロピレングリコール(PG)およびジエチレングリコール一置換エーテル(DGMSE)が、有効な薬剤的に許容される賦形剤であることを開示する。ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール(EG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、プロピレングリコール(PG)およびジエチレングリコール一置換エーテル(DGMSE)は、薬剤的に許容される賦形剤の混入物である可能性がある痕跡求核試薬に水素結合してよく、これにより、痕跡求核試薬の求核強度を減少させる。従って、ジエチレングリコール一置換エーテル(DGMSE)またはジメチコンまたはシクロメチコンなどのシリコン類は、窒素マスタードの遊離塩基または薬剤的に許容される下のIXのHX塩の形成において、窒素マスタードの遊離塩基またはIXのHX塩の溶解を促進するために、薬剤的に許容される賦形剤として有効である。
【0051】
本発明の実施形態において、下の構造IXの窒素マスタードの薬剤的に許容されるHX塩は、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性の媒体または担体中、下の構造IXの窒素マスタードの薬剤的に許容されるHX塩の有効なアルキル化活性により測定されるように、それぞれの遊離塩基より、より安定性があり、より長期間作用する。ここで、3年後にワセリンまたはエタノールを含有しない非水性の媒体または担体中で薬剤的に許容されるHX塩の有効なアルキル化活性は、3ヶ月後にワセリンまたはエタノールを含有しない非水性の媒体または担体中で、構造Iの各窒素マスタードの遊離塩基の有効なアルキル化活性に相当する。窒素マスタード遊離塩基または下の構造IXの薬剤的に許容されるHX塩の形成において、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体は、ヒトの用途に適切な当該分野で認識される、いかなるグレードの白色または黄色ワセリンを含有しない。ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体は、窒素マスタード遊離塩基または下の構造IXの薬剤的に許容されるHX塩の形成において、Penreco Snow White Pet USPとして購入可能な材料を含有しない。ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体は、窒素マスタード遊離塩基または薬剤的に許容される下の構造IXのHX塩の形成において、多様な融点のパラフィンロウと併用して鉱油と配合される炭化水素混合物を含有しない。ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体は、ワセリン、脂肪酸エステルからなる群から選択される親油性緩和剤を含有しない。
【0052】
以下、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体中の下の構造IXの薬剤的に許容されるHX塩の重量%が、基本的に、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体中の構造Iの窒素マスタードの各遊離塩基の重量%と等しい場合、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体中の下の構造IXの薬剤的に許容されるHX塩の有効なアルキル化活性は、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体中の各窒素マスタードの遊離塩基形成の有効なアルキル化活性に等しい。
【0053】
本発明の実施形態において、窒素マスタードの薬剤的に許容されるHX塩は、対応する遊離塩基形態より低蒸気圧なため、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体中の窒素マスタードの下の構造IXの薬剤的に許容されるHX塩の使用は、遊離塩基形態の揮発性と比較して揮発性を減少することにより、有効なアルキル化活性を維持する可能性がある。
【0054】
下の矢印5cで表される反応は、窒素マスタードをHXと反応させることにより、前記遊離形態高反応窒素マスタードアルキル化剤を薬剤的に許容されるHX塩に変換して安定化される、本発明の安定化窒素マスタード・HX組成物の形成を図示する。
反応5:窒素マスタードが上の反応1のように構造Iにより表される、構造IXにより表される窒素マスタード・HXの形成
【0055】
【化11】
【0056】
一つの実施形態において、Xは有利にCl、Br、IまたはHSOあるいはNOなどのハロゲン系であってよく、HXがそれぞれHCl、HBr、HIまたはHSOあるいはHNOであってよい。代替的に、薬剤的に許容されるHX塩は、適切な非毒性有機または無機酸または無機塩基から形成される従来の酸添加塩または塩基付加塩を含む。例示的な酸添加塩は、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸および硝酸などの無機酸由来のもの、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、イセチオン酸、シュウ酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、カルボン酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、酢酸、フェニル酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、グルタミン酸、サリチル酸、スルファニル酸およびフマル酸などの有機酸由来のものを含む。例示的な塩基付加塩は、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの第四アンモニウム水酸化物)由来のもの、アルカリまたはアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウムまたはマグネシウム)などの無機塩基由来のもの、および塩基性アミノ酸などの非毒性有機塩基由来のものを含む。
【0057】
以下、薬剤的に許容される窒素マスタードまたは薬剤的に許容される窒素マスタードのHX塩は、活性な薬剤的成分(API)である。一つの実施形態において、APIは、NaCl:APIの10:1重量比として提供されてよい。代替的に、NaClのAPIに対する重量比は、約100:0.01から0.01;100であってよい。代替的に、APIは、上述の薬剤的に許容されるHX塩を1つ以上有するいかなる個体混合物に調製されてよい。発明者は、学説上、HX塩としてのAPIは、塩マトリックスおよびAPIのHX塩は、両方イオン性であるため、塩マトリックスで安定化される。
【0058】
図1は、薬剤的に許容される窒素マスタードまたは薬剤的に許容される窒素マスタードのHX塩を病変の皮膚に局所的に塗布するステップ10からなる、皮膚疾患を伴う患者を治療する、本発明の一つの実施形態、方法1を示す。ここで、窒素マスタードまたは薬剤的に許容される窒素マスタードのHX塩は、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体中に存在し、窒素マスタードは、以下の構造により表される。
【0059】
【化12】
【0060】
一つの実施形態において、各R、R、R...R34(R−R34)は、水素原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、2〜12個の炭素原子を有する分岐鎖アルキル基、3〜17個の炭素原子を有するシクロアルキル基、2〜12個の炭素原子を有するフッ素化直鎖アルキル基、2〜12個の炭素原子を有するフッ素化分岐鎖アルキル基、3〜17個の炭素原子を有するフッ素化シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、バイシクロアルキル基、アルケニル基、アルカルケニル基、アルケニルアルキル基、アルキニル基、アルカルキニル基、アルキニルアルキル基、トリフルオロプロピル基、シアノプロピル基、アクリロイル基、アリールアクリロイル基、アクリロイルアリール基、アルキルアシル基、アリールアシル基、アルキレニルアシル基、およびアルキニルアシル基からなる群から独立して選択される。
【0061】
一つの実施形態において、nは1、2または3である。
【0062】
一つの実施形態において、pは0、1または2、およびn+p≦3である。
【0063】
一つの実施形態において、同一分子中のR−R34のいずれか2つは、3から8員の環状基を形成するように連結されてよい。
【0064】
一つの実施形態において、窒素マスタードは、ビス−(2−クロロエチル)エチルアミン、ビス−(2−クロロエチル)メチルアミンおよびトリス−(2−クロロエチル)アミンからなる群およびその組み合わせから有利に選択される。以下、構造VII、VIII、IXおよびX(XI〜XIV)は、前記化合物が光学活性可能である、全てのラセミ体および立体異性体を表してよい。
【0065】
代替的に、一つの実施形態において、窒素マスタードは、以下の構造により表される窒素マスタードのプロドラッグから有利に得てよい。
【0066】
【化13】
【0067】
一つの実施形態において、各R35、R36、R37...R78(R35−R78)は、水素原子、1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、2〜12の炭素原子を有する分岐鎖アルキル基、3〜17個の炭素原子を有するシクロアルキル基、2〜12個の炭素原子を有するフッ素化直鎖アルキル基、2〜12個の炭素原子を有するフッ素化分岐鎖アルキル基、3〜17個の炭素原子を有するフッ素化シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、バイシクロアルキル基、アルケニル基、アルカルケニル基、アルケニルアルキル基、アルキニル基、アルカルキニル基、アルキニルアルキル基、トリフルオロプロピル基、シアノプロピル基、アクリロイル基、アリールアクリロイル基、アクリロイルアリール基、アルキルアシル基、アリールアシル基、アルキレニルアシル基、およびアルキニルアシル基からなる群から独立して選択される。実施形態において、同一分子中のR−R57のいずれか2つは3から8員の環状基を形成するように連結されてよい。
【0068】
一つの実施形態において、各X基は、1から7個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキレン、3から17個の炭素原子を有するシクロアルキレン、4から20個の炭素原子を有するアルキルシクロアルキレン、4から20個の炭素原子を有するシクロアルキルアルキレン、4から30個の炭素原子を有するアリーレン、4から30個の炭素原子を有するアルキルアリーレン、4から30個の炭素原子を有するアリールアルキレンおよびその組み合わせからなる群から選択される連結基である。
【0069】
一つの実施形態において、各Ar基は、二官能芳香族連結基であり、ここで各Arは、アリーレン基、置換アリーレン基および/またはヘテロアリーレン基からなる群から選択される。
【0070】
構造XI、XII、...XIV(XI〜XIV)により表される化合物は、活性窒素マスタードを生成するために生体内で代謝可能なため、窒素マスタードのプロドラッグ候補の形態であってよい。以下、「プロドラッグ」は、活性窒素マスタードの先駆物質(先駆者)とする。プロドラッグは、代謝過程により親薬物への化学的変換を受けてよく、従って、活性窒素マスタードとなる。以下、構造XI、XII、...XIV(XI〜XIV)は、前記化合物が光学活性可能である、全てのラセミ体および立体異性体を表してよい。
【0071】
例えば、ホスファターゼおよびホスファアミダーゼ酵素は、例えば、シクロホスファミドなどの上の構造XI、下の構造XIAまたは下の構造XIBのイホスファミドのP−N結合を加水分解し、二官能ホスホルアミドマスタードに非酵素的に分解されてもよい中間体アルドホスファミドを生じる。実施形態において、上の構造XIAのシクロホスファミドまたは上の構造XIBのイホスファミドは、シトクロームP−450により、酸化的に活性されてよい。
【0072】
【化14】
【0073】
一つの実施形態において、上の構造XII、例えば、下の構造XIIAのクロラムブシルは、窒素マスタード型の二官能アルキル化剤であってよい。
【0074】
【化15】
【0075】
構造XIIは、非増殖細胞に対して細胞障害性であるかもしれないが、細胞周期非特異性であってよい。活性は、核酸を含む多くの細胞内分子構造をアルキル化または結合する、不安定なエチレンインモニウムイオンの形成の結果として生じる可能性がある。その細胞障害性作用は、主として、核酸合成を阻害するDNA鎖の架橋による。
【0076】
一つの実施形態において、上の構造XIII、例えば、4−ビス(2−クロロエチル)アミノ−L−フェニルアラニン、下の構造XIIIAのメルファランは、窒素マスタード型の二官能アルキル化剤であってよい。
【0077】
【化16】
【0078】
構造XIIの窒素マスタードプロドラッグのように、構造XIIIのプロドラッグは、細胞障害性または非増殖細胞の可能性もあるが、細胞周期非特異性であってよい。
【0079】
一つの実施形態において、上の構造XIV、例えば、下の構造XIVAのウラシルマスタードは、窒素マスタード型の二官能アルキル化剤であってよい。
【0080】
【化17】
【0081】
一つの実施形態において、窒素マスタードの薬剤的に許容されるHX塩は、窒素マスタード・HCl、窒素マスタード・HSO、窒素マスタード・HNO、窒素マスタード・HSO、窒素マスタード・HBr、窒素マスタード・HIおよびその組み合わせからなる群から有利に選択されてよい。
【0082】
一つの実施形態において、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体の成分は、ポリエチレングリコール(PEG)またはエチレングリコール(EG)、ポリプロピレングリコール(PPG)またはプロピレングリコール(PG)、ジエチレングリコール一置換エーテル(DGMSE)、HOCHCHOCHCHOR79(HO(CHCHO)79)であってよく、ここで、R79は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、2〜12個の炭素原子を有する分岐鎖アルキル基、3〜17個の炭素原子を有するシクロアルキル基、2〜12個の炭素原子を有するフッ素化直鎖アルキル基、2〜12個の炭素原子を有するフッ素化分岐鎖アルキル基、3〜17個の炭素原子を有するフッ素化シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、バイシクロアルキル基、アルケニル基、アルカルケニル基、アルケニルアルキル基、アルキニル基、アルカルキニル基、アルキニルアルキル基、トリフルオロプロピル基、シアノプロピル基、アクリロイル基、アリールアクリロイル基、アクリロイルアリール基、アルキルアシル基、アリールアシル基、アルキレニルアシル基、およびアルキニルアシル基からなる群から選択される。
【0083】
一つの実施形態において、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体の各成分は、エトキシジグリコール剤、ヒドロキシプロピルセルロース、緩衝ゲル、メントール石英USP、ブチル化ヒドロキシトルエンNF、グリセリンUSP、エデト酸2ナトリウムUSP、デシルメチルスルホキシド、Kris−エステル236およびその組み合わせからなる群から選択されてよい。
【0084】
緩衝ゲルは、2−プロペン酸、アクリラート、アクリル酸、プロペノエート、ビニル蟻酸、アクロレイン酸、エチレンカルボキシル酸、プロペン酸、CH=CHCOOH、プロペン酸、キセリナアクリロバ(Kyselina akrylova)、氷アクリル酸、エチレンカルボキシル酸、Acide acrylique[フランス語]、Acido acrilio[スペイン語]、氷アクリル酸、Kyselina akrylova[チェコ語]、プロペン酸、2−プロペン酸同種重合体、アクリル酸同種重合体、アクリル酸、アクリル酸樹脂、アクリル重合体、アクリル重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリゾールA1、アクリゾールA3、アクリゾールA5、アクリゾールAC5、アクリゾールWS−24、アクリゾールase−75、アクリゾールlmw−20X、Antiprex461、AntiprexA、アラゾーブ750、アラゾーブS 100F、Arolon、Aron、Axon A 10H、アタクチックポリ(アクリル酸)、CCRIS3234、カルボマー、カルボマー1342、カルボマー910、カルボマー910[USAN]、カルボマー934[USAN]、カルボマー934p[USAN]、カルボマー940[USAN]、カルボマー941[USAN]、カルボポール1342、カルボポール910、カルボポール934、カルボポール934P、カルボポール940、カルボポール941、カルボポール960、カルボポール961、カルボポール971P、カルボポール974P、カルボポール980、カルボポール981、Carboset 515、Carboset樹脂番号515、カルボキシビニル重合体、カルボキシポリメチレン、カルポレン(Carpolene)、コロイド119/50、Cyguard266、DispexC40、Dowラテックス354、G−Cure、Good−rite K37、Good−rite K702、Good−rite K732、Good−rite K−700、Good−rite K727、Good−rite WS801、Haloflex202、Haloflex208、Joncryl678、Junlon110、Jurimer AC10H、Jurimer AC10P、NSC106034、NSC106035、NSC106036、NSC106037、NSC112122、NSC112123、NSC114472、NSC165257、Nalfloc636、NeocrylA−1038、OLD01、P11H、P−11H、PA11M、PAA−25、ポリアクリル酸、Pemulen TR−1、Pemulen TR−2、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリレート、ポリアクリレートエラストマー、2−プロペン酸の重合体で、ペンタエリスリトールのアリルエーテルと架橋、2−[ロー]プロペン酸の重合体で、スクロースのアリールエーテルと架橋、2−プロペン酸の重合体で、スクロースまたはペンタエリスリトールのアリルエーテルと架橋、アクリル酸の重合体で、ペンタエリスリトールのアリルエーテルと架橋、アクリル酸の重合体で、スクロースまたはペンタエリスリトールのアリルエーテルと架橋、重合体カルボキシビニル、重合アクリル酸、Polytex973、Primal ASE 60、プロペン酸重合体、R968、ラクリル、レバクリルA 191、Rohagit SD 15、Sokalan PAS、ソリドコールN、Synthemul 90−588、TB1131、Tecpol、Texcryl、ベルシコルE7、ベルシコルE15、ベルシコルE9、ベルシコルK11、ベルシコルS25、Viscalex HV30、Viscon103、WS24、WS801、XPA、54182−57−9、9007−20−9、カルボマー、Carbomere[INN−フランス語]、Carbomero[INN−スペイン語]、Carbomerum[INN−ラテン語]、カルボポール、カルボキシポリメチレン、カルボキシポリメチレン樹脂、2−プロペン酸、アクリル酸、アクロレイン酸、エチレンカルボキシル酸、プロペン酸、ビニル蟻酸、CH=CHCOOH、プロペン酸、Kyselina akrylova、2−プロペン酸カルシウム塩、アクリル酸カルシウム塩、カルシウムアクリレート、カルシウムジアクリレート、アクリル酸、2−プロペン酸、AIDS−209945、AIDS209945、カルボマー、カルボポール934P、2−プロペン酸、2−メチル−、2−ヒドロキシエチルエステル、エチニル−酢酸および2−エチルヘキシル2−プロペン酸からなる群から選択される。
【0085】
一つの実施形態において、皮膚疾患の治療に使用される窒素マスタードアルキル化剤の薬剤的に許容されるHX塩は、窒素マスタードの薬剤的に許容されるHX塩は、窒素マスタードの各遊離塩基形より、水による攻撃に対してより抵抗性であるため、より安定しており、活性作用が長い。実施形態において、窒素マスタードアルキル化剤の薬剤的に許容されるHX塩は、ワセリンを含有しない非水性の媒体または担体に添加されてよい。実施形態において、窒素マスタードアルキル化剤の薬剤的に許容されるHX塩の使用および/または、ワセリンを含有しない非水性の媒体または担体にそれらを添加することは、皮膚疾患の治療において、より安定した作用の長期持続をもたらす。
【0086】
一つの実施形態において、皮膚疾患は、乾せん、湿疹、紫外線角化症、ろうそう、類肉腫症、脱毛症、皮膚T細胞リンパ腫、すなわち、菌状息肉症、リンパ細胞の異常増殖、胸膜および腹膜滲出液、皮膚B細胞リンパ腫、皮膚の偽リンパ腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、気管支原性肺癌、悪性メラノーマ、リンパ肉腫、慢性リンパ性白血病、真性多血症、リンパ腫様丘疹症、ムッハ・ハーベルマン症(PLEVA)およびその組み合わせからなる群から選択される。方法1のステップ10のように、送達方法は、用量が適切な活性成分量を含む無菌溶液または懸濁液の窒素マスタードまたは窒素マスタード・HClをヒトおよび動物に局所的に投与することを含む。局所液剤または懸濁液を、経皮的な投与における遅延放出非水性マトリックスに混合する。一つの実施形態において、哺乳類の用量は、非水性および非ワセリンマトリックスにおいて、1日、活性成分が約.0001重量%から約2.0重量%であってよい。他の実施形態において、哺乳類の用量は、非水性および非ワセリンマトリックスにおいて、1日、活性成分が約.015重量%から約0.04重量%であってよい。一つの実施形態において、哺乳類の用量は、非水性および非ワセリンマトリックスにおいて、1日、活性成分が約0.015重量%から約0.030重量%であってよい。以下、局所的投与は、体の局所部または身体部の表面に薬物を施すことを意味する。
【0087】
本発明の実施形態において、皮膚疾患をもつ患者の治療方法は、病変皮膚に窒素マスタードまたは窒素マスタード・HClを局所的に施すことを含む。本方法の実施形態において、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体は、有効量の窒素マスタードまたは窒素マスタード・HClを提供することにより、窒素マスタードまたはそのHX塩による皮膚の刺激を軽減する。以下、「軽減」は、皮膚の刺激が減少したため、痛みの減少および皮膚刺激が減少し、結果として改善されたことを意味する。以下、窒素マスタードまたは窒素マスタード・HClの有効量は、上の表1に開示するように、過敏を生じることなしに、前記疾患の一つを伴う皮膚の治療に適切なものであってよい。
【0088】
本発明の実施形態において、発揮性アルキル化剤の安定化方法は、非水性流動可能軟膏またはクリームがワセリンまたはエタノールを含有しない非水性流動可能軟膏またはクリームを提供するステップと、エタノールを含有しない無水溶媒中の発揮性アルキル化剤のHX塩を再構成するステップと、混合された非水性流動可能軟膏またはクリームと発揮性アルキル化剤のHX塩を併用するステップとを含む。実施形態における窒素マスタードまたは窒素マスタード・HClの安定化方法において、窒素マスタードのHX塩は、窒素マスタード・HClである。窒素マスタードまたは窒素マスタード・HClの安定化方法の実施形態において、窒素マスタードまたは窒素マスタードのHX塩の活性期間は、約3ヶ月から約3年である。
【0089】
一つの実施形態における窒素マスタードまたは窒素マスタード・HClの安定化方法において、非水性流動可能軟膏またはクリームは、ポリプロピレングリコール(PPG)、プロピレングリコール(PG)、またはポリエチレングリコール(PEG)またはエチレングリコール(EG)を含む。実施形態における窒素マスタードまたは窒素マスタード・HClの安定化方法において、非水性流動可能軟膏またはクリームは、基本的に、プロピレングリコール、エトキシジグリコール剤、ヒドロキシプロピルセルロース、メントール石英USP、ブチル化ヒドロキシトルエンNF、グリセリンUSP、エデト酸2ナトリウムUSP、デシルメチルスルホキシドおよびKris−エステル236を含む。実施形態における窒素マスタードまたは窒素マスタード・HClの安定化方法において、窒素マスタードまたはそのHX塩は、ビス−(2−クロロエチル)エチルアミン、ビス−(2−クロロエチル)メチルアミンおよびトリス−(2−クロロエチル)アミン、およびその組み合わせからなる群から選択される。
【0090】
一つの実施形態において、本発明の目的においてワセリンまたはエタノールを含有しない許容される非水性媒体または担体は、上の反応5に示すような構造IXの窒素マスタードまたはそのHX塩を分解する可能性がある、例えば、水またはエタノールなどの求核試薬を含有しないクリームまたは軟膏などの流動可能な非水性の薬剤的な媒体または担体であってよい。一つの実施形態において、適切な薬剤的に許容される担体は、エトキシジグリコール剤、ヒドロキシプロピルセルロース、メントール石英USP、ブチル化ヒドロキシトルエンNF、グリセリンUSP、エデト酸2ナトリウムUSP、デシルメチルスルホキシド、Kris−エステル236、プロピレングリコールおよびエチレングリコールを含む。一つの実施形態において、ポリプロピレングリコール(PPG)、プロピレングリコール(PG)、ポリエチレングリコール(PEG)またはエチレングリコール(EG)は、約15から約60重量%プロピレングリコールまたはエチレングリコールであってよい。ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体は、本発明の感作物質とともに防腐剤、安定剤、保湿剤、乳化剤などの補助剤を含んでよい。
【0091】
本発明の一つの実施形態において、感作物質は、癌患者の管理癌治療で、発熱療法などの既存の治療との併用で、補助的療法として使用されてもよい。
【0092】
実施例1
上の反応5に示す構造IXの約0.001から約2.0ビス−(2−クロロエチル)メチルアミン塩酸塩の調製
本薬品の製剤は、ワセリンまたはエタノールを含有しない局所的軟膏ベース中の薬剤的に許容される窒素マスタード塩酸塩を含む。成分/組成物を1リットルのバッチサイズと仮定し、以下の表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
a製造中の損失を補うために必要な場合、原体の僅かな過多量を使用してよい。
bMerck&Co.,West Point,PA 19486から入手可能。
【0095】
調製
例えば、上の反応5のように、構造IXのビス−(2クロロエチル)メチルアミン・HClなどの0.001〜2.0重量%の窒素マスタードを含有する薬品は、以下の一般工程により調製されてよい。
【0096】
軟膏の調製
全ての乾燥賦形剤成分を混合し、表2の配合に従って重量を量り、適切な容器に入れる。以下、賦形剤は、バルクを提供するための窒素マスタードまたは薬剤的に許容されるHX塩の遊離型に添加される不活性物質である。以下、乾燥賦形剤成分は、グラムなど、つまりgmで、個体重量として添加されることを示す。
【0097】
乾燥材料の粒子サイズは、滴定を通して均一なサイズに減少される。次に、約15から約60重量%のポリプロピレングリコール(PPG)、プロピレングリコール(PG)、ポリエチレン
グリコール(PEG)またはエチレングリコール(EG)を、滑らかなペーストを形成するために、幾何学的稀釈の原理により添加する。一度、滑らかなペーストが達成されたら、流動的な質感を保持する用量が得られるまで、プロピレンまたはエチレングリコールを添加する。
【0098】
次に、全内容量を大きなビーカーに移す。回転棒を加え、ビーカーを磁気攪拌プレートに設置し、調合を開始する。
【0099】
混合物の回転を続けながら、グリセリンを添加する。混合物が回転している間、元の容器を約15から約60重量%のエトキシジグリコールで洗浄し、容器の内容物をビーカーで回転している混合物に添加する。エトキシジグリコールを添加した後、kris−エステルを回転している混合物に添加する。次に、混合物を約1から2時間、回転させる。回転が完了した後、混合物に蓋をし、一夜、放置する。
【0100】
翌日、混合物を、最小限、あるいは、全く空気を含まないように、高剪断の混合機で均一な粘度になるまで混合する。空気および湿気は、約0.01から約0.1トルの減圧を適用することにより、混合中除去されてよい。混合物は、それから、乾燥窒素を添加することにより、周囲圧にもってくる。
【0101】
窒素マスタードの添加
窒素マスタードの適切な濃度および用量を無水アルコール(200プルーフ)で再構成し、次に、適切な量の非水性媒体または担体に添加する。非水性媒体または担体は、ワセリンまたはエタノールを含有せず、攪拌により均一な粘度になるまで、60〜90秒間、攪拌される。例えば、一つの実施形態において、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体中の薬剤的に許容される窒素マスタード・HClの濃度(mg/ml)は、有利に、100mlの非水性媒体当り約1mgの窒素マスタード・HClから100mlの非水性媒体当り約2000mgの窒素マスタード・HClである。一つの実施形態において、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体中の窒素マスタード・HClの濃度(mg/ml)は、有利に、ワセリンまたはエタノールを含有しない100mlの非水性媒体または担体当り約10mgの窒素マスタード・HClからワセリンまたはエタノールを含有しない100ml非水性媒体または担体当り約40mgの窒素マスタード・HClである。一つの実施形態において、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体に使用される窒素マスタード・HClのの濃度(mg/ml)は、有利に、ワセリンまたはエタノールを含有しない100ml非水性媒体または担体当り約15mgの窒素マスタード・HClからワセリンまたはエタノールを含有しない100ml非水性媒体または担体当り約30mgの窒素マスタード・HClである。本混合物は、それから、50mlのフリップトップのプラスチックシリンダーに注入され、適切な患者へと搬送される。
【0102】
洗浄
工程で使用された全ての容器は、チオ硫酸ナトリウム水溶液浴内に置かれる。内容物は、2時間溶液浴に放置され、次に、洗浄される。浴は、それから、通常の手段で廃棄される。注意:チオ硫酸ナトリウムは、窒素マスタードと反応し、通常の手段で破棄できる安全で無害な混合物を生成する。
【0103】
実施例2
上の反応5に示す構造IXの約0.001から約2.0ビス−(2−クロロエチル)メチルアミン塩酸塩の調製
本薬品の製剤は、局所的軟膏ベース内の薬剤的に許容される窒素マスタード塩酸塩を含む。成分/組成物を1リットルのバッチサイズと仮定し、以下の表3に示す。
【0104】
【表3】
【0105】
製造中の損失を補うために必要な場合、原体の僅かな過多量を使用してよい。
【0106】
Merck&Co.,West Point,PA 19486から入手可能。
【0107】
上の反応5に示すような構造IXの窒素マスタードまたはそのHX塩を分解する可能性がある、例えば、水またはエタノールなどの求核試薬を含有しないクリームまたは軟膏などの流動可能な非水性の薬剤的な媒体または担体である、本発明の目的におけるワセリンまたはエタノールを含有しない許容される非水性媒体または担体は、基本的に含湿量がないジメチコンまたはシクロメチコンなどのジメチルポリシロキサン流体であってよい。以下、ジメチコンは、低粘度シリコン、低粘度とは、すなわち、25℃で約1cpsから1,000cpsのポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、CAS#107−46−0、純シリコン1cSt、発揮性シリコン、発揮性シリコン類、発揮性ポリジメチルシロキサン、低温シリコン類、スキンケアシリコン、スキンケアシリコン類、オクタメチルトリシロキサン、CAS#107−51−7、CAS107−51−7、デカメチルテトラシロキサンCAS#104−62−8、ドデカメチルペンタシロキサンCAS#141−63−9、トリシロキサン、低粘度ジメチコン、発揮性ジメチコン、化粧品ジメチコン流体、化粧品ベース流体、日焼け用ローションシリコン、発汗抑制剤シリコン、ヘアケアシリコン、低表面張力シリコンおよび低気化熱シリコンを意味する。以下、シクロメチコンは、シクロペンタシロキサン、発揮性ポリジメチルシクロシロキサン、CAS541−02−6、CAS#541−02−6、低表面張力シリコン、発揮性シリコン、D5シリコン、Dow Corning 245流体、DC 245流体、245シリコン、スキンクリームシリコン、発汗抑制剤シリコン、日焼け用ローションシリコン、皮膚用シリコン、スキンケアシリコン、ボディケアシリコン、バスオイルシリコン、GE 1202、GE SF 1202シクロペンタシロキサン、D5シクロペンタシロキサンおよびD5デカメチルシクロペンタシロキサンを意味する。一般的に、ジメチコンおよびシクロメチコンは、優れた皮膚軟化性、強度な加湿および湿潤性をもつジメチルシリコンオイルである。ジメチコンおよびシクロメチコンは、OH停止重合体ではなくメチル停止なため、水分でいえば<0.1重量%のように、非常に低水分含量である。
【0108】
調製
ジメチコンまたはシクロメチコン軟膏に、例えば、上の反応5のように、構造IXのビス−(2クロロエチル)メチルアミン・HClなどの0.001〜2.0重量%の窒素マスタードを含有する薬品は、以下の一般工程により調製されてよい。
【0109】
ジメチコンまたはシクロメチコン軟膏の調製
a)全ての乾燥賦形剤成分を混合し、表3の配合に従って重量を量り、適切な容器に入れる。
【0110】
b)乾燥材料の粒子サイズは、滴定を通して均一なサイズに減少される。
【0111】
c)次に、約10から約60重量%のジメチコンまたはシクロメチコンを、滑らかなペーストを形成するために、幾何学的稀釈の原理により添加する。滑らかなペーストが達成されたら、流動的な質感を保持する用量が得られるまで、ジメチコンまたはシクロメチコンを添加する。
【0112】
d)次に、全内容量を大きなビーカーに移す。回転棒を加え、ビーカーを磁気攪拌プレートに設置し、調合を開始する。
【0113】
e)混合物の回転を続けながら、グリセリンを添加する。混合物が回転している間、元の容器を約10から約16重量%のエトキシジグリコールで洗浄し、容器の内容物をビーカーで回転している混合物に添加する。
【0114】
f)エトキシジグリコールを添加した後、約0.01〜15重量%のC(2n+2)COOH(n=1〜6)の構造を有するクエン酸、乳酸または脂肪酸などの調整剤を回転している混合物に添加する。次に、混合物を約1から2時間、回転させる。回転が完了した後、混合物に蓋をし、一夜、放置する。
【0115】
g)翌日、混合物を、最小限、あるいは、全く空気を含まないように、高剪断の混合機で均一な粘度になるまで混合する。空気および湿気は、約0.01から約0.1トルの減圧を適用することにより、混合中、除去されてよい。混合物は、それから、乾燥窒素を添加することにより、周囲圧にもってくる。
【0116】
窒素マスタードと上のステップg)のワセリンまたはエタノールを含有しないジメチコンまたはシクロメチコン非水性媒体または担体の併用
一つの実施形態において、基本的に完全な均一粘度を有する薬剤的に許容される窒素マスタード・HClは、1)エタノールがイソプロピルアルコールなどの無水二級または三級アルコールから厳密に除外されている、イソプロピルアルコールなどの無水二級または三級アルコールと再構成されている適切な量のAPI、および2)上のステップg)からワセリンまたはエタノールを含有しない適切な量の非水性媒体または担体を混合するために、高剪断の混合機を使用して、60〜90秒間、攪拌することにより形成されてよい。例えば、一つの実施形態において、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体中の薬剤的に許容される窒素マスタード・HClの濃度(mg/ml)は、有利に、100mlの非水性媒体当り約1mgの窒素マスタード・HClから100mlの非水性媒体当り約2000mgの窒素マスタード・HClである。他の実施形態において、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体に使用される薬剤的に許容される窒素マスタード・HClの濃度(mg/ml)は、有利に、100mlのワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体当り約10mgの窒素マスタード・HClから100mlのワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体当り約40mgの窒素マスタード・HClである。他の実施形態において、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体に使用される薬剤的に許容される窒素マスタード・HClの濃度(mg/ml)は、有利に、100mlのワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体当り約15mgの窒素マスタード・HClから100mlのワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体当り約30mgの窒素マスタード・HClである。本混合物は、それから、50mlのフリップトップのプラスチックシリンダーに注入され、適切な患者へと搬送される。
【0117】
発明者は、約0.01から0.2ml、約0.1から約0.5ml、または約0.1から約1mlの低容量の容器は、フリップトップのプラスチックシリンダーが100から1000服用の期間に対して周囲環境に開放される時より、周囲水などの求核試薬またはメタノールまたはエタノールなどの求核試薬の低用量が低容量の容器に添加されるため、50mlのフリップトップのプラスチックシリンダーより、短期間の使用に対して薬剤的に許容される窒素マスタード・HClの1から10服用を提供するために、有利に使用されてよいことを開示する。発明者は、薬剤的に許容される窒素マスタードが約1から10服用に対してより低容量の容器に収容される場合、上の反応5で示される構造IXの遊離型窒素マスタードまたはそのHX塩の分解が軽減されることを予測する。理論上、遊離型窒素マスタードまたはそのHX塩の塩化物は、水またはエタノールなどにより求核的攻撃により置換される可能性があり、結果としてOHでClを置換する。遊離型窒素マスタードまたはそのHX塩の前記分解は、環境に存在する微量の水、エタノールまたは他の求核試薬から窒素マスタードを隔離することにより避けられる。図2に図示するように、装置20は、この小さい容量の容器を示す。
【0118】
図2はワセリンまたはエタノールまたは安定化発揮剤アルキル化剤または発揮剤アルキル化剤のHX塩を含有しない非水性媒体または担体中の薬剤的に許容される窒素マスタード・HClを含む装置20の前方断面図を示し、それは、壁31に囲まれた室25からなる。壁31は、外部表面28および内部表面23、端部24および21、開口部30からなる。最初の室25は、基本的に、開口部30を通して、上の薬剤的に許容される窒素マスタード・HClの完全に均一された混合物で充填されてよい。開口部30は栓22で閉鎖されてよい。栓22は、壁31と同様の材料または融点が低いプラスチックまたはロウ素材で作成されてよい。
【0119】
図3は、加熱が機械的に強度な熱シール26と27を形成するために、物理的および機械的に端部21と24を結合する栓22および端部21と24を融点に加熱することにより、熱シール26および27形成後の装置20を示す。
【0120】
図4は、穿孔33と34を形成するために圧着工具または他の適切な工具を使用して、栓22の穿孔33と34を形成した後の装置20を示す。穿孔33と34は、熱シール21と24を弱めるため、機械的に強度が落ち、結果として、疾患部または治療部に薬剤的に許容される窒素マスタード・HClの塗布を求める患者により、栓22を除去するための開裂線を生じる。代替的に、栓22に穴を空けるために、はさみ、かみそりの刃、またはナイフなどの尖った端または刃を持つ器具を使用し、よって装置20の壁31に開口部30を回復させてもよい。
【0121】
一つの実施形態において、薬剤的に許容される窒素マスタード・HClを疾患部または治療部への塗布を求める際、装置20の壁31から栓22を除去し、壁31の開口部30を回復してよい。壁31を潰すまたは圧力をかけると、室25の容量を減少し、薬剤的に許容される窒素マスタード・HClが開口部30を通して室25からの流出を引き起こし、疾患部または治療部に薬剤的に許容される窒素マスタード・HClの局所的塗布が可能となる。
【0122】
一つの実施形態において、室25内のワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体中の薬剤的に許容される窒素マスタード・HClの濃度は、100mlの非水性媒体当り約1mgの窒素マスタード・HClから100mlの非水性媒体当り約2000mgの窒素マスタード・HClである。他の実施形態において、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体中の薬剤的に許容される窒素マスタード・HClの濃度は、ワセリンまたはエタノールを含有しない100mlの非水性媒体または担体当り約10mgの窒素マスタード・HClからワセリンまたはエタノールを含有しない100mlの非水性媒体または担体当り約40mgの窒素マスタード・HClである。他の実施形態において、ワセリンまたはエタノールを含有しない非水性媒体または担体中の薬剤的に許容される窒素マスタード・HClの濃度は、有利に、ワセリンまたはエタノールを含有しない100mlの非水性媒体または担体当り約15mgの窒素マスタード・HClからワセリンまたはエタノールを含有しない100mlの非水性媒体または担体当り約30mgの窒素マスタード・HClである。外口または開口部30は、外壁31に開口部を形成することにより作られ、該当開口部30を通して、窒素マスタードの混合物が、患者の治療のために医師の処方箋により提供される。
【0123】
装置20の外壁31は、上のステップg)またはステップ9)の混合物および/または再構成された窒素マスタード溶液に対して不浸透性または不透過性である。以下、「不浸透性」または「不透過性」は、壁31が上のステップg)またはステップ9)の混合物および/または再構成された窒素マスタード溶液が壁31を通って移動または拡散するのを防ぐことを意味する。以下、「不透過性」は、壁31または上のステップg)またはステップ9)の混合物および/または再構成された窒素マスタード溶液により影響を受ける可能性のある壁31を通して上のステップg)またはステップ9)の混合物および/または再構成された窒素マスタード溶液が移動するのを防ぐことを意味する。壁31は、アルミニウムホイル、プラスチックでライニングされたまたは樹脂でコーティングされたアルミニウムホイル、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/ビニルアセテート共重合体、シリコンエラストマー、医療品質のポリジメチルシロキサン、ネドプレン(nedprene)ゴム、ポリイソブチレン、塩化ポリエチレン、塩化ポリビニル、塩化ビニル−ビニルアセテート共重合体、ポリメチアクリレート 重合体(ハイドロゲル)、塩化ポリビニリデン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレンビニルオキシエタノール共重合体、シリコン共重合体、ポリシロキサン−ポリカーボネート共重合体、ポリシロキサン−ポリエチレンオキシド共重合体、ポリシロキサン−ポリメタクリレート共重合体、ポリシロキサン−ポリメタクリレート共重合体、ポリシロキサン−アルキレン共重合体ポリシロキサン−エチレン共重合体、ポリシロキサン−アキレンシラン共重合体、ポリシロキサンエチレンシラン共重合体、セルロース重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、澱粉、ゼラチン、天然ガム、合成ガム、およびその組み合わせを含む弾性素材から作成されてよい。
【0124】
洗浄
工程で使用された全ての容器は、チオ硫酸ナトリウム水溶液浴に置かれる。内容物は、2時間水溶液浴に放置され、次に、洗浄される。浴は、それから、通常の手段で廃棄される。注意:チオ硫酸ナトリウムは、窒素マスタードと反応し、通常の手段で破棄できる安全で無害な混合物を生成する。
【0125】
上述の本発明の実施形態は、例示および説明目的のために提示される。本発明を網羅的または開示される精密の形態に限定することを意図するものではなく、多様な修正および変形が可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0126】
本発明の特徴は、添付の特許請求において記載する。しかし、発明自体は、添付図面と併せて、以下の例示的実施形態の詳細な説明を参照することにより良く理解されるだろう。
図1図1は、本発明の実施形態に基づき、皮膚疾患を治療するために安定化アルキル化剤を含有する組成物の使用方法を示す。
図2図2は、本発明の実施形態に基づき、一部壁により囲まれた室を有する装置の前方断面図を示す。
図3図3は、本発明の実施形態に基づき、開口部を閉じるために機械的に密封した栓を有する装置を示す。
図4図4は、本発明の実施形態に基づき、栓の除去を簡単にするために溶封が鋸歯状になった装置を示す。
図1
図2
図3
図4