(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671544
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】血液試料を採取および分析する装置およびランセット連結機構
(51)【国際特許分類】
A61B 5/157 20060101AFI20150129BHJP
A61B 5/151 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
A61B5/14 300L
A61B5/14 300D
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-533494(P2012-533494)
(86)(22)【出願日】2010年9月3日
(65)【公表番号】特表2013-507206(P2013-507206A)
(43)【公表日】2013年3月4日
(86)【国際出願番号】EP2010005416
(87)【国際公開番号】WO2011044971
(87)【国際公開日】20110421
【審査請求日】2013年7月23日
(31)【優先権主張番号】09012895.0
(32)【優先日】2009年10月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098464
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 洌
(74)【代理人】
【識別番号】100149630
【弁理士】
【氏名又は名称】藤森 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100179257
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 勝利
(72)【発明者】
【氏名】リスト、ハンス
(72)【発明者】
【氏名】フリュッゲ、カイ
【審査官】
湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−296015(JP,A)
【文献】
特表2005−525846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/157
A61B 5/151
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランセット連結機構であって、穿刺軸の方向に延伸し、ランセットを収容する少なくとも1つのチャンバを有し、前記穿刺軸に沿って制御された前進動作および後退動作を行うために、前記チャンバに入り込み前記ランセットに連結可能な駆動ロッドを有し、
前記ランセット(60)は、前記穿刺軸に対して横断する方向に延伸する少なくとも1つの曲げ軸の周りで弾性的に曲がることができ、
前記チャンバ(5)は、前記ランセット(60)の厚さよりも大きい高さの断面を有し、その中で前記ランセット(60)がスライド可能であり、前記穿刺軸を横断する方向の軸の周りに少なくとも1つの湾曲部(65)を有するシャフト(64)を備え、
前記駆動ロッド(9)は、前記ランセットが前記湾曲部(65)により曲げられた状態にある場合に、前記駆動ロッド(9)を前進動作させることにより前記ランセット(60)に係合でき、前記駆動ロッド(9)は、前記駆動ロッド(9)をさらに前進動作させることにより前記ランセットが前記湾曲部(65)から退いて緩和した状態にある場合に、前記ランセットに対して嵌合することを特徴とするランセット連結機構。
【請求項2】
前記ランセット(60)が少なくとも1つの連結凹部を有し、
前記駆動ロッド(9)はその前端に少なくとも1つの連結構造を有し、該連結構造は前記ランセット(60)の曲げ軸に垂直に延伸し、前記ランセット(60)が前進移動すると前記曲げられているランセット(60)の前記連結凹部に係合することを特徴とする請求項1記載のランセット連結機構。
【請求項3】
前記ランセット(60)が、1枚の平らな金属平板から作製され、その後端の領域で少なくとも1つの孔(63)を有し、
前記駆動ロッド(9)が、その前端に、前記孔(63)に引っ掛け可能な少なくとも1つのフック(66)を有することを特徴とする請求項2記載のランセット連結機構。
【請求項4】
血液試料を採取および分析する装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング上に設けられ、前記血液試料が採取される体の部位を押圧するコンタクト装置と、
前記ハウジング上を移動可能なように取り付けられ、複数のランセットを含むマガジンであって、前記ランセットが一度に1つずつ前記体の部位に穿刺され、また刺創から出る血液試料を受け取るために引き抜かれるマガジンと、
ランセットを動作位置に持ち込むために、前記マガジンを進める装置と、
穿刺軸に沿って制御された穿刺動作を行うために、前記動作位置にあるランセットに連結可能な駆動ロッドを有するランセット駆動部と、
前記ランセットに割り当てられたテストエレメントであって、該テストエレメントのそれぞれに、受け取られた血液試料が分析されるために移送されるテストエレメントと、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のランセット連結機構と
を備え、
前記ランセット駆動部、前記マガジンを進める装置、および前記穿刺軸に対して略垂直方向の試料移送動作を生み出す装置を備えた一体型の駆動ユニットにより特徴付けられる装置。
【請求項5】
前記駆動ユニットが、
前記ランセット駆動部、前記マガジンの進行、および前記試料移送動作のための力を供給する共通の駆動源と、
駆動力伝達ギヤであって、該駆動力伝達ギヤを介して前記ランセット駆動部、前記マガジンを進める装置、および前記試料移送動作を生み出す装置が前記駆動源に連結可能な駆動力伝達ギヤと
を備えることを特徴とする請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記駆動力伝達ギヤが、回転角に応じて、前記駆動源の力を選択的に、前記ランセット駆動部、前記マガジンを進める装置、および前記試料移送動作を生じさせる装置に伝達する少なくとも1つのロータを備えることを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項7】
穿刺、前記マガジンの進行、および試料移送に必要な動作が、共通する軸の周りでの回転動作から生み出されることを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記駆動ユニットが、
前記ハウジング内において、前記穿刺軸に対して垂直に配置される回転軸(19)の周りを回転可能なように取り付けられるドライブロータ(20)と、
前記ドライブロータ(20)を駆動するバネ(43)と、
前記ドライブロータ(20)と同軸に回転可能なように取り付けられ、前記駆動バネ(43)に接続されるテンションロータ(18)であって、前記ドライブロータ(20)に対してテンションロータ(18)を回転させることにより前記駆動バネ(43)に張力を加えるテンションロータ(18)と、
前記ドライブロータ(20)の回転を、前記穿刺軸に沿った前記ランセット(60)の半径方向の前進動作および後退動作に変換する第1カムコントロールと、
前記テンションロータ(18)の回転動作を、前記マガジン(4)を進めるための直線動作に変換する第2カムコントロールを有するステッピングスイッチ機構と、
前記テンションロータ(18)の回転動作を、前記穿刺軸に略垂直なプレッシャータペット(37)の直線動作に変換する第3カムコントロールを有する試料移送装置(12)と
を備える請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記マガジン(4)が、円形リング状に設計され、それぞれが1つのランセット(13)を含む、半径方向に配置される多数のチャンバ(5)を有し、
前記マガジン(4)の回転軸が、前記ドライブロータ(20)の回転軸(19)と平行に配置されることを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記テンションロータ(18)が、平らな円形ディスクとして設計され、中央のポット状の凹部(46)を有し、
前記ドライブロータ(20)が、前記凹部(46)内に位置することを特徴とする請求項8または9記載の装置。
【請求項11】
前記ドライブロータ(20)が、該ドライブロータ(20)の回転動作を半径方向の動作に変換するために、溝走行部(28)が移動するコントロール溝(29)を正面側に有することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
1つのアーム状の伝達レバー(22)が、前記ハウジング内で枢動可能なように取り付けられ、
前記伝達レバー(22)の自由端部が前記駆動ロッド(9)に接続され、
前記溝走行部(28)が、前記自由端部とレバー軸との間で前記伝達レバー(22)上に配置され、
前記伝達レバー(22)の前記レバー軸が、前記ドライブロータの回転軸(19)に対して平行に延伸し、前記穿刺軸を横断する方向に移動可能であり、それにより前記伝達レバーの伝達比が設定可能であることを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記ドライブロータ(20)および前記テンションロータ(18)が、互いに回転不能に固定された方法で接続可能であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記ステッピングスイッチ機構が、
前記テンションロータ(18)に設けられ、スイッチカム(35)が移動することにより前記リンクスライドを作動させるスイッチカム(35)と、
前記リンクスライド(11)によって動かされるスイッチリンク(34)と、
前記リンクスライド(11)の半径方向の動作を、前記マガジン(4)の限られた回転動作に変換するために、前記マガジン(4)の外側に配置され、前記スイッチリンク(34)に係合するスイッチエレメントと
を含んでなることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記テンションロータ(18)が、前記ドライブロータ(20)の回転動作を、前記穿刺軸に垂直な動作に変換するために、その縁の領域に、摩擦エレメントが移動する傾斜部(40)を有することを特徴とする請求項8〜14のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルで特定される特徴を有する、血液試料を採取および分析する装置に関する。また本発明は、請求項13のプリアンブルで特定される特徴を有する、ランセット連結機構に関する。
【背景技術】
【0002】
代謝病の患者は、定期的に血液を分析しなければならない。特に糖尿病患者は、定期的に血糖値を調べるように指導される。このために、好ましくは指先に、ランセットを用いて小さな創傷が作り出される。少量の試料はこのとき流出する血液から収集され、続いて分析されるためにテストエレメントへ移送される。
【0003】
より最近では、小型で、自動的に作動する携帯用装置が開発され、これは使い捨て品として備えられる複数のランセットを有するマガジン、および対応する数のテストエレメントを含む。血液試料の分析は、一体型の測定装置を用いて行われる。このような高度に一体化された装置は、患者が単一の装置のみを持ち運べばよいという利点を有し、患者はこの装置を用いて、消耗品を取り替えなければなくなるまで、多数の検査を同じように行うことができる。
【0004】
誰もが自動の血糖検査を行うことができる小型の携帯用装置に対するデザインの要求は、非常に厳しく、また多種多様である。すなわち、装置は可能な限り小型かつ軽量であるべきである。また装置は、血糖検査をどこでも、また可能な限り目立たずに行なえるように、容易に、かつ快適に操作できるものでなければならない。また言うまでもなく、医療器具には絶対的信頼度が期待される。さらに糖尿病は蔓延していることから、製造費用は、量産品で受け入れられる枠内にとどまらなくてはならない。
【0005】
完全に自動で作動する血糖検査装置では、特別な駆動機構が必要とされ、これは多様かつ大きく異なる動作を行わなければならない。これらの動作には、ランセットの迅速な穿刺動作およびそれに続く引き抜き動作、未使用のランセットを動作位置に運ぶためにマガジンを進めること、新しいランセットの連結および使用済みランセットの取り外し、およびランセットからテストエレメントへの血液試料の移送を引き起こす運動が含まれる。
【0006】
国際公開第2009/030340号パンフレットには、体液中の分析物を測定する分析装置が記載されており、これは複数の穿刺エレメントを有するドラム型のマガジンおよび複数の分析エレメントを含む。またこの穿刺エレメントは、毛管チャネルおよび試料移送域を有する。
【0007】
国際公開第2009/027010号パンフレットには、長方形のマガジンを有する分析システムが記載されており、内部に多数の使い捨てランセットおよび分析エレメントが保管される。
【0008】
さらに古い欧州特許出願第08010403.7号は、マガジンを含む分析システムに関し、このマガジンは、試料接触域を有する分析エレメントと毛管チャネルを有する穿刺エレメントとを入れるチャンバを有する。さらにこの分析システムは、穿刺駆動部、マガジンを収容するホルダおよび測定および評価装置を有する再利用可能な分析装置を含む。
【0009】
血液試料を採取および分析するための装置は、米国特許出願第2004/0092995号明細書により公知であり、この装置において多数のディスポーザブルランセットは、隣接する平たく丸いマガジンのチャンバに保管される。ランセット駆動部は選択的にランセットに連結されてもよく、これらランセットを半径方向に動かす。さらに、この装置は多数の分析エレメントを含む。
【0010】
ディスポーザブルランセットの、ランセット駆動部への連結およびランセット駆動部からの非連結は、欧州特許第1333756号明細書に記載されている。このランセットは、射出成形された可撓性アームを有し、これはアンダーカットを有するタペットに係合する。
【0011】
ドライブスプリングによって駆動可能なドライブロータ、テンションロータおよびランセット連結機構を有するランセット駆動部は、例えば欧州特許出願公開第1669028号明細書から公知である。このドライブスプリングは、電気モータによって駆動されるギヤを介して、ドライブロータに対してテンションロータを回転させることによって張力をかけられる。このランセット連結機構は、カムコントロールを用いて、ドライブロータの回転動作を使用されるランセットの直線運動に変換する。テンションロータおよびドライブロータは、ロックボルトによって互いに連結されている場合には、同期して動かされ得る。
【発明の概要】
【0012】
引用された先行技術から進んで、本発明は、請求項1のプリアンブルによる、血液試料を採取および分析する装置を提供するという目的に基づき、この装置はとりわけ小型かつ軽量であると同時に、非常に高い機械的信頼度を有し、またエネルギー要求が可能な限り少ない。
【0013】
この目的は、請求項1の特徴部分による、ランセット駆動部、マガジンを進める装置、および穿刺軸に略垂直な試料の移送動作を生じさせる装置を含む一体型の駆動ユニットによって達成される。本発明によれば、駆動ユニットはランセットを駆動するだけでなく、検査サイクルの最後においてマガジンを進めるのを確実にし、また付加的に、穿刺軸に対して略垂直な動作を生み出すことができる。この動作は、ランセットから受け取った血液試料を割り当てられたテストエレメントへ移送する目的で用いられ、ここでランセットおよびテストエレメントは互いに対して押し付けられる。これにより力は、穿刺軸に対して略垂直に及ぼされる。また、試料移送動作は、テストエレメントおよびランセットが互いに対して動かされる別の動作シーケンスを含んでいてもよいが、これら動作シーケンスは、もはや穿刺軸に垂直に起こる必要はなく、むしろ例えば穿刺軸と平行な動作成分を含んでいてもよい。
【0014】
検査サイクルを行うのに必要な全ての機械的動作のための、単一のテストドライブの提供は、決定的な利点、すなわち、装置がより小型になり、それによって軽量化するという利点を有する。またこの装置は、より確実かつ効率的に作動する。最後に、この装置はとりわけコスト効率よく製造され得る。
【0015】
一体型の駆動ユニットは、好適には単一の共通する駆動源を有し、これはランセット駆動部のための力、マガジンを進める力、および試料移送動作のための力を運ぶ。
【0016】
駆動源は、駆動力伝達ギヤを用いて、ランセット駆動部、マガジンを進める装置、および試料移送動作を生じさせる装置に連結され得る。とりわけロータは、このような駆動力伝達ギヤの中心の要素として用いることができ、このロータはその回転角に応じて、駆動源の力を選択的に、ランセット駆動部、マガジンを進める装置、および試料移送動作を生じさせる装置に伝達する。穿刺、マガジンの進行および試料移送に必要な動作は、好適には共通する軸の周りの回転動作から生じる。
【0017】
中心となる駆動源の力は、最終的に必要な直線動作を直接生じさせるのではなく、むしろ最初にロータを回転させるという事実から、360°の自然な回転角度が可能であって、これは、ロータの完全な回転のコースにおいて、駆動源をランセット駆動部、マガジンを進める装置、または試料移送動作を生じさせる装置に連結するためである。
【0018】
国際公開第2009/030340号パンフレットに開示されている分析装置は、駆動機構および連結エレメントを有する連結ユニットを含み、これは穿刺エレメントが駆動部によってその穿刺経路上に動かされるような方法で、マガジン内に保管される穿刺エレメント上に連結され得る。穿刺エレメントが保管されているマガジンドラムは、個別のマガジン駆動機構によって動かされ、この駆動機構は、ベルトを介してマガジンベルトプーリに連結され、ドラムマガジンを所望のあらかじめ定められた位置まで回転させられる。欧州特許出願第08010403.7号による分析システムでは、2つのモータが設けられており、これらは詳細には、穿刺駆動部用の第1の電気モータと、ベルトドライブを介してマガジンを移動させる第2のモータである。また米国特許出願第2004/0092995号明細書の装置も、マガジン用の個別の駆動ユニットを有する。この駆動ユニットは、ギヤホイールを駆動するステッピングモータを含む。このギヤホイールは、マガジンの内側にその歯が係合するので、ステッピングモータの回転は、中心点の周りでのマガジンの回転を引き起こす。
【0019】
ランセット駆動部は、穿刺されるべき体の部位の方向において迅速な穿刺動作を行えなければならず、また、それに続く引き抜き動作も、少なくとも最初は迅速であるべきだということが公知である。これに比べて、マガジンの進行、ランセットの連結および非連結、およびランセットからテストエレメントへの血液試料の移送に必要な残りの動作は、比較的低速である。このために駆動ユニットは、有利には、それ自体がある程度公知である、第1カムコンロールによって回転がランセットの半径方向の前進動作および後退動作へと変換されるドライブロータ、同軸テンションロータ、ドライブロータとテンションロータとの間で作動するドライブスプリングを含む。また駆動ユニットは、テンションロータの回転動作を、マガジンを進めるための直線動作に変換する第2カムコントロールを有するステッピングスイッチ機構、ならびに、テンションロータの回転動作を、穿刺軸に垂直な接触圧力用エレメントの直線動作に変換する第3カムコントロールを有するテストエレメント連結装置も含む。本発明によれば、テンションロータだけが、駆動力伝達ギヤを介して中央の駆動源に直接摩擦して連結される。テンションロータの回転は、カムコントロールを用いて、マガジンを前進させるための直線動作または穿刺軸に垂直な接触圧力用エレメントの直線動作に変換される。ゆえに低速な動作が実施可能である。ランセットの迅速な穿刺動作は、テンションロータをドライブロータに対して回転させることによって、駆動バネがあらかじめ張力をかけられ、穿刺をトリガーするために解放される場合にのみ起こる。このようにして、最初に、マガジン、ランセット連結機構および血液試料の移送用の装置の低速な動作に駆動源を適合させることができる。実質的により迅速な穿刺動作は、ドライブスプリングの張力によってトリガーされる。テンションロータは駆動力伝達ギヤの中心のエレメントとして用いられるので、単一の共通する駆動源によって、駆動機構の全ての動作を生じさせることが可能である。
【0020】
電気モータが駆動源として好適であり、その速度はウォームギヤを用いて充分に減速され得るので、テンションロータの回転動作は充分に、かつ正確に制御可能である。しかしながら、バネ機構など、機械的な駆動力を運ぶ他のあらゆる移動駆動エレメントも考えられる。また駆動源は、エネルギーアキュムレータを含むこともできる。
【0021】
本発明による装置の、さらに好ましく有利な実施形態および改良された形態は、従属請求項による。
【0022】
上述の目的は、請求項13で特定した特徴を有するランセット連結機構によっても達成される。湾曲したチャンバとともにランセットの可撓性により、チャンバ中に保管されるランセットがチャンバの曲率にしたがって弾性に曲げられるという結果をもたらす。曲げ張力により、ランセットはクランプされた状態でチャンバ内に位置する。ランセットはゆえに、バネ力でチャンバの壁を押し付ける。これは、たとえチャンバが動かされたり、チャンバ上に衝撃が加えられたりしても、チャンバ内の避けられない遊びにもかかわらず、ランセットがその位置にとどまるという利点を有する。これは装置の輸送および操作中の、ガタガタと鳴る音を防ぐ。
【0023】
ランセットが穿刺軸に沿って湾曲したチャンバから引き抜かれると、ランセットは緩み、元の形状を取り戻す。曲げ状態から緩み状態まで移行する間、またはその逆に移行する間の、ランセットの弾性変形は、駆動ロッドをランセットに連結する目的で用いられる。駆動ロッドは、ランセットが曲げ状態にある場合のみランセットに連結され得る。反対に、ランセットがチャンバの外部で緩み状態にある場合には、駆動ロッドはランセットとの間に嵌合接続を有する。制御された穿刺動作はこのとき、穿刺軸に沿って実行され得る。駆動ロッドとランセットとの間の嵌合は、ランセットが穿刺後に再び引き抜かれることを可能にする。ランセットは、再びチャンバの湾曲したシャフトに入るほど充分遠くに引き抜かれると、もう一度弾性的に曲がることができる。ゆえにランセットと駆動ロッドとの間の嵌合接続は、もう一度解放されてもよい。
【0024】
緩み状態において嵌合接続を形成するために、ランセットは好適には連結凹部を有し、駆動ロッドは、ランセットの曲げ軸に垂直に延伸し、曲げられたランセットの連結凹部に係合できる連結構造をその前端に有する。ランセットがチャンバから抜き取られると、連結凹部は曲げ軸の周りの環状経路上を動く。それに対して連結構造は、穿刺軸の方向にのみ動く。駆動ロッドおよびランセットの穿刺軸の方向への同期運動の間、連結凹部と連結構造の間では、穿刺軸に垂直な方向への相対運動が起こる。それゆえ連結凹部は、自動的に連結構造に係合する。
【0025】
ランセットは、1枚の平らな金属平板から容易に作製できる。またそれは、その後方領域に孔(eye)を有することもできる。駆動ロッドは、これに対応して装着されるフックをその前端に有していてもよく、これは孔に引っ掛けられ得る。多大な量が必要となるランセットは、ゆえに非常に容易かつコスト効率よく製造でき、例えばプレス加工によって製造され得る。必要なことは、充分に弾性のある材料、好適には鋼板を選択することのみである。孔は、駆動ロッドの前端にあるフックが、上に引っ掛けられるのに充分な幅であればよい。これは、ランセットが約1mmの幅であれば充分である。ランセットを収容するためのチャンバは、それに対応して狭く、とりわけ小さい寸法の条件を満たすように実施される。
【0026】
複数のチャンバは、環状マガジンにおいて互いに隣接して配置されてもよく、これらチャンバのシャフトは半径方向に延伸している。マガジンを回転させることによって、チャンバの1つは、駆動ロッドがチャンバ内に入り込み、チャンバ内に配置されるランセットに連結できる位置へと移動され得る。このような平らなリングマガジンにおけるチャンバの配置は、とりわけロータドライブがリングマガジンの中央に同軸に配置されている場合に、全体の高さが低い、非常に小型な携帯用装置の構成を可能にする。
【0027】
とりわけ好適な実施形態において、マガジンは下側部分および上側部分からなり、組み立て状態のチャンバを形成する。ランセットはゆえに、まだ解放しているチャンバにおいて、緩み状態で置かれ得る。上側部分が置かれるとすぐに、ランセットは結果として生じるシャフトの湾曲部に圧入され、外側からの力なしにはマガジン内部の所定の位置から滑り出ることはできなくなる。製造に関して特に優れているのは、マガジンのチャンバ全てが、1つのワークステップで同時にランセットを充填でき、ランセット連結機構に必要なランセットの曲げが、マガジン上部を押すことによってなされ得ることである。
【0028】
本発明による装置のさらなる詳細、機能および効果は、添付の図面に関してより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】血液試料を採取および分析する装置の、簡略化した斜視図である。
【
図2】
図1の装置の駆動ユニットを、拡大斜視図である。
【
図3a】
図2の駆動ユニットのテンションロータを下から見た図である。
【
図5a】
図2aの駆動ユニットのドライブロータを上から見た図である。
【
図6】挿入されたマガジンを有する
図1の装置の一部の拡大斜視図を、回転軸を通る半径方向に縦断面で示す。
【
図7a】ランセットを備える
図1の装置のマガジンを簡略化した斜視図であって、チャンバを通る縦断面図である。
【
図7b】ランセットおよび
図2の駆動ユニットの駆動ロッドを備える
図7aのマガジンを示す。
【
図8】
図7bの駆動ロッドを大きく拡大した斜視図である。
【
図9a】駆動ロッドをランセットに連結する手順を概略的に示す。
【
図9b】駆動ロッドをランセットに連結する手順を概略的に示す。
【
図9c】駆動ロッドをランセットに連結する手順を概略的に示す。
【
図9d】駆動ロッドをランセットに連結する手順を概略的に示す。
【
図11】ランセット連結機構の代替的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に示される装置の耐荷重エレメントは、ベースプレート1である。ハウジングは、ベースプレート1の上に設置される上部カバー2を含む。ハウジングの残りの部分は、この図では省かれている。円形の受容部(receptacle)3が上面側に設けられ、その上には円形リング状のマガジン4が配置され得る。このマガジン4は複数のチャンバ5を含み、チャンバは互いに隣接して配置され、半径方向に延伸し、また各チャンバにはランセットが保管される。マガジン4はまた、チャンバ5に割り当てられる複数のテストエレメントも含む。
【0031】
ハウジングの前面側は、接触圧力用弓状部(contact pressure bow)6によって形成される。開口部8を囲む固定リング7は、ほぼ中央に実装される。固定リング7は、指の接触圧力用に用いられ、これにより血液試料が取り込まれる。指先はいくらか開口部8内に突出する。マガジン4に保管されているランセットの1つは、後部から開口部8を通って指先を穿刺でき、また刺創から出る血液試料を受け取るために再び引き抜かれ得る。
【0032】
ランセット駆動部はカバー2の下に隠れている。ここではカバー2にある長方形の出口開口部10を通して見える、駆動ロッド9の前端のみが見えている。作動中は、マガジン4が受容部3上に置かれると、駆動ロッド9は開口部10から飛び出し、後部からマガジン4のチャンバ5に入り込むことができ、これはそこに保管されているランセットを駆動して開口部8の方向に進め、その後再び穿刺軸に沿ってチャンバ5内へ引き抜く。取り込まれた血液試料は、その後分析のためにテストエレメントへ移送され得る。
【0033】
マガジン4に保管されるランセットおよびテストエレメントは、一回使用のみが意図されている。ゆえに血液試料を採取および分析した後、マガジン4はその軸の周りで回転されるので、新しいランセットを動作位置へと動かす。マガジン4を前進させる目的に必要な装置は、カバー2の下に位置付けられる。それのリンクスライド11のみが見えており、これはリンクスライド11の半径方向の動作を、マガジン4のその回転軸の周りでの回転へと変換するために、マガジン4の下側に設けられるピンと協働する。
【0034】
穿刺軸に垂直な試料の移送動作を生み出す装置12は、接触圧力用弓状部6の下方に見ることができる。これはランセットにより受け取られた血液試料を、マガジン4中の割り当てられたテストエレメント上に移送するために用いられ、ここでランセットおよびテストエレメントは互いに押し付けられている。
【0035】
駆動ユニットの詳細は
図2で見られる。ランセット13は、駆動ロッド9の前の動作位置にある。
【0036】
電気モータ15が、ベースプレート1上に固定されている。これはバッテリにより電力を供給される。ウォームホイール17とかみ合うウォームシャフト16は、電気モータ15のシャフトに固定される。電気モータ15の速度はゆえに、大きく減速される。さらに、部分的にベースプレート1の下に配置されているギヤホイールは、電気モータ15の駆動力をテンションロータ18に伝達し、テンションロータ18は取り付けられて、ベースプレート1上で垂直な回転軸19の周りを回転できる。ドライブロータ20も取り付けられ、同じ回転軸19の周りを回転でき、ゆえにテンションロータ18と同軸周りに回転できる。テンションロータ18およびドライブロータ20は接続されているので、それらはコイルバネを介して回転動作できる。分かりやすさのために、ランセット駆動部の駆動バネとして用いられるこのコイルバネは、図示されていない。
【0037】
テンションロータ18が、同軸のドライブロータ20が静止している間に電気モータ15によって回転しだすと、駆動バネは張力をかけられる。ドライブロータ20はその後解放されると、緩む駆動バネの作用により、テンションロータ18に続いて進む。このドライブロータ20の迅速な回転は、カムコントロールを用いて、穿刺キャリッジ21の半径方向の前進動作および後退動作に変換される。この穿刺キャリッジ21は、ランセットに連結され得る駆動ロッド9を運ぶ。
【0038】
ランセットのストロークを変更するために、ドライブロータ20の回転は、穿刺軸に沿うランセットの前進動作および後退動作に直接には変換されない。むしろ変換は、レバー軸が穿刺軸を横断する方向に動作可能なレバーキャリッジ23に取り付けられる、1つのアーム状の伝達レバー(one-armed transmission lever)22を介して行われる。このため伝達レバー22は、長円形のホール24を有し、ここにレバーキャリッジ23の枢動ピン25が係合する。反対側の自由端部では、伝達レバー22はフォーク26として実施され、これは穿刺キャリッジ21の縁に設けられるピン27を取り囲む。伝達レバー
22を枢動ピン25の周りで枢動させることにより、穿刺キャリッジ21の穿刺軸に沿った、またはドライブロータ20の回転軸19に対して半径方向での、直線動作をもたらす。
【0039】
長円形のホール24およびフォーク26の間に、伝達レバー22は溝走行部28を保持し、これは下方に向き、またドライブロータ20の上側に設けられているコントロール溝29に係合する。例えばレバーキャリッジ23が左に動かされると、枢動ピン25は長円形のホール24内を右に移動する。枢動ピン25と溝走行部28の間でレバーアームはゆえに長くなり、したがって伝達比が大きくなり、これを用いて溝走行部28の半径方向の動作は、伝達レバー22を介して穿刺キャリッジ21のピン27に伝達される。レバーキャリッジ23は伝達レバー22が置かれる位置に平行に動かされるので、穿刺キャリッジ21を駆動するレバーの自由端のストロークのみが変化し、それに対して穿刺キャリッジ21の置かれる位置は変わらない。これは、穿刺深さを変化させるためにランセットのストロークを変更することを可能にする。
【0040】
レバーキャリッジ23の後側の縁は、歯形ラック30として実施され、ここにギヤホイール31が係合する。駆動はギヤピニオン32により行われる。それゆえ、レバーキャリッジ23は、伝達レバー
22の伝達比を設定するために左右に動かされ得る。
【0041】
駆動ユニットは、テンションロータ18の回転動作を、マガジン4を進めるための直線動作に変換する、第2カムコントロールを有するステッピングスイッチ機構を統合する。このステッピングスイッチ機構は、ガイド33上で半径方向に動作可能なように取り付けられるリンクスライド11を含む。このリンクスライド
11はその上側でスイッチリンク34を支持する。これに対応して形成されたスイッチピンがマガジン4の下側に設けられ、これはリンクスライド
11の半径方向の動作を、マガジン4の限られた回転動作に変換するために、上部からスイッチリンク34に係合する。テンションロータ18は、その外側でスイッチカム35を運ぶ。スプリングバウ36は、リンクスライド
11の作動エレメントをテンションロータ18の外側に押し付ける。スイッチカム35の上を移動する間、リンクスライド11はスイッチカム35によって形成される湾曲経路をたどり、テンションロータ18の回転動作はリンクスライドの直線的な前進動作および後退動作に変換される。この短いストロークの動作は、スイッチリンク34によりマガジン4に伝達され、このことはマガジン4をもう一段階回転させるためである。これにより、新しいランセットを有する次のチャンバ5が動作位置に到達する。
【0042】
さらに駆動ユニットは、穿刺軸に垂直な試料の移送動作を発生させる装置を含む。プレッシャータペット37は、テンションロータ18から少し離れた摩擦スリーブ38内で垂直に動作可能なように取り付けられる。プレッシャータペット37は、摩擦ローラ39に接続される。摩擦ローラ39がその上面を移動する傾斜部40は、テンションロータ18上にその外縁の領域で装着されている。電気モータ15により駆動されるテンションロータ18が、低速回転にセットされると、摩擦ローラ39はテンションロータ18の特定の角度で傾斜部40の領域に到達し、上方へ動かされ始める。ゆえにプレッシャータペット37は上方に動かされる。傾斜部40の頂点に到達した後、摩擦ローラ39およびプレッシャータペット37は下方へと戻る。
【0043】
プレッシャータペット37によって行われる動作は、ここでは穿刺軸と垂直方向に延びるが、穿刺軸と平行な動作成分を含むこともできる。プレッシャータペット37の動作は、受け取られた血液試料を移送するために、穿刺後に、動作したランセットをテストエレメントに対して押し付ける目的で用いられる。プレッシャータペット37はその後再び戻され、これによりランセットは再びテストエレメントから外れる。スプリングバウ41は、摩擦ローラ39が傾斜部40の上側にバネにより荷重を加えることを確実にするので、摩擦ローラ39が傾斜部40の外形を正確にたどることが確実となる。
【0044】
記載される駆動ユニットは、共通する中央の駆動源、すなわち電気モータ15の動作により、血液試料を採取および分析するのに必要な多様な動作の全てを生み出す。電気モータ15の力はY字状に分岐された動力伝達装置によって、動作位置にあるランセット、マガジン4、および穿刺軸に垂直な試料の移送動作を発生させる装置に伝達される。この駆動力伝達ギヤの主要なエレメントはテンションロータ18であって、これはとりわけ、ランセット駆動部の駆動バネに張力をかけるため、リンクスライド
11を作動させるため、またはプレッシャータペット37を上昇させるために、回転角度に応じて電気モータ15の力を選択的に分配する。
【0045】
図3aおよび3bにおいて、上述の駆動ユニットは、より理解しやすいように本質的な動作エレメントに減らして示されている。共通の回転軸19は中央に位置し、その周りをテンションロータ18およびドライブロータ20が回転する。テンションロータ18はその下側(
図3a参照)にギヤリング45を有し、これを介して電気モータ15の駆動力がテンションロータ18に伝達される。ギヤリング45に係合しているギヤホイールはこの図では省略されており、またテンションロータ18を摩擦によって電気モータ15に接続する、駆動力伝達ギヤの残りのエレメントについても同様である。
【0046】
テンションロータ18は基本的には平らなディスク形状を有し、また
図4で最もよく見える、中央のポット状の凹部46を有する。
図5aおよび5bで最もよく見える、平らな円形ディスクとして装着されているドライブロータ20は、凹部46内に位置する。揺動部材として装着されるツメ47は、テンションロータ18のポット状の凹部46のベース上で枢動可能なように取り付けられる。ロックピン48が係合する湾曲溝49と、ツメ47が係合できる凹部50とは、それらに対応してドライブロータ20の下側に設けられる。テンションロータ18およびドライブロータ20はゆえに、一回転方向において互いに回転方向について固定されて接続されてもよく、また互いに強固にラッチ(latch)されることも可能である。テンションロータ18およびドライブロータ20が、ツメ47およびロックピン48により回転方向について互いに固定されて接続されている場合、テンションロータ18の回転動作はドライブロータ20に直接伝達されるので、とりわけ穿刺前後に必要となるような、低速動作も実行できる。
【0047】
図3bもまた伝達レバー22の機能を示し、その溝走行部28はドライブロータ20のコントロール溝29を下って移動する(travel down)(
図5a参照)。伝達レバー22は枢動ピン25を用いてレバーキャリッジ23上に取り付けられており、長円形のホール24は、レバーキャリッジ23の穿刺軸Sを横断する方向の動作を可能にする。駆動ロッド9が上に設置される穿刺キャリッジ21は、ピン27により伝達レバー22のフォーク26において係合する。レバーキャリッジ23を動かすことにより設定できる伝達比は、短いレバーアームAと長いレバーアームBとの比に起因し、ここで短いレバーアームAは、溝走行部28および枢動ピン25の回転軸の間の距離に対応し、長いレバーアームBは、枢動ピン25とフォーク26のピン27への係合点との間の距離に対応する。
【0048】
マガジン4(
図2参照)を前進させるために用いられる第2の直線動作への、テンションロータ18の回転動作からの変換は、スイッチカム35を用いて行われ、
図3bで示されるテンションロータ18の角度でよく見える。リンクスライド
11の下側に設けられる摩擦ピン51は、スイッチカム35を下って移動する。スプリングバウ36は、テンションロータ18の縁側への摩擦ピン51のバネ接触を確実にする。
【0049】
テンションロータ18の外縁は、帽子のつばにように、外側に向かう水平なフランジとして実施される。この縁は、傾斜部40の領域において倍の厚さにされる。摩擦ローラ39が傾斜部40を移動すると、摩擦スリーブ38に取り付けられているプレッシャータペット37は、試料の移送動作を行うために垂直に上方へ移動する。スプリングバウ41は均一な接触圧力を確実にし、摩擦ローラ39はこれを用いて、とりわけ傾斜部40の上を移動する際に、テンションロータ18の縁を押し付ける。
【0050】
図6において、マガジン4は受容部3上に位置する。共通の回転軸19が見え、その周りをテンションロータ18、ドライブロータ20およびマガジン4が回転する。
【0051】
図6の垂直断面は、リングに配置されたチャンバ5の1つの中央を通るものであって、チャンバ5はそれぞれ1つの使い捨てランセットを収容するために用いられる。チャンバ5は、回転軸19に対して半径方向に延伸する。穿刺キャリッジ21上に設置される駆動ロッド9は、ここではまだ完全にチャンバ5の外側に配置されているが、その中に保管されているランセットに連結して、ランセットを駆動して開口部8の方向へ半径方向に進めるために、後部からチャンバ5内へ入り込み、穿刺を行うことができる。
【0052】
プレッシャータペット37の機能は、
図6でよく見え、これは穿刺後にランセットをテストエレメントに接触させるために、入口開口部42を下側から貫通してチャンバ5に入り込むことができる。さらに、駆動バネ43が断面で見え、これはテンションロータ18とドライブロータ20との間に位置する。
【0053】
図7aにおいて、ランセット60は部分的にチャンバ5内に配置される。ランセット60は1枚の平らな金属平板から作製でき、これは穿刺軸を横断して延伸する曲げ軸の周りで弾性的に曲げられ得る。
図7における断面はランセット60の長手軸に沿って伸びているので、ランセット60は半分のみ見えている。残りの半分は鏡像の形で備えられる。前方では、ランセット60は研磨され鋭くなっており、先端61を形成し、これは血液試料を受け取るために毛管溝(trough)62と隣接する。また後端の領域においては、ランセット60は孔63を有し、これは駆動ロッド9(
図6参照)に連結するために用いられる。
【0054】
チャンバ5はシャフト64を有し、これはランセット60の断面に適合されている。ランセットが平らな金属平板から作製されているこの例示的な実施形態において、シャフト64は本質的に、ランセット60の厚さよりもわずかに大きい高さを有する長方形の断面を有し、これはシャフト64中のいくらかの遊びにより前後にスライドできる。この径方向内側に向いている後部領域において、シャフト64は、穿刺軸に沿って延びる湾曲部65を有する。
【0055】
図7bは、湾曲したシャフト64を有するチャンバ5と、弾性に曲げられたランセット60と、ここでチャンバ5の後端に入ったばかりの駆動ロッド9との協働作用を示す。
【0056】
図7aでは、まだ平らな緩んだ状態にあるランセット60が見える。ランセット60はここで内側に押されると、この位置から半径方向に、シャフト64の湾曲部65をたどって弾性的に曲がるだろう。孔63は同時に、垂直上方に動かされる。また逆に、ランセット60が径方向外側に押されると、孔63は再び垂直下方に動かされる。この移動は駆動ロッド9の取り付けおよび取り外しに用いられてもよく、この目的で駆動ロッド9は対応する連結構造を有する。
【0057】
図8によれば、駆動ロッド9はその前端にフック66を有し、これはランセット60の孔63(
図7a参照)に引っ掛けられ得る。フック66中のスロット67は、ランセット60の後端がこれを通して入るには、ちょうど充分な大きさである。また穿刺方向における後端では、駆動ロッド9は固定ホール69を有するシャフト68を有する。この駆動ロッドはゆえに、穿刺キャリッジ21に設置することができる(
図2および
図6参照)。
【0058】
駆動ロッド9は、単一の鋼板から製造される。この駆動ロッド9は、ランセット60よりも大幅に狭い。駆動ロッド9をチャンバ5内でガイドするために、チャンバ5のシャフト64は、高さおよび幅が駆動ロッド9の寸法に調整された中央のガイド溝70を有する(
図7b参照)。比較的狭い駆動ロッド9はゆえに、湾曲部65に従う必要なくシャフト64の中央を走り、ランセット60上で左右に係合するだけである。
【0059】
孔63を有する、弾性的に曲げ可能なランセット60、シャフト64および湾曲部65を有するチャンバ5、およびフック66を有する駆動ロッド9は、ランセット連結機構を形成し、ここでランセット60は、駆動ロッド9がチャンバ
5に入り込み、ランセット60を径方向外側へ駆動すると、自動的に駆動ロッド9に連結する。
【0060】
穿刺の準備段階における駆動ロッド9のランセット
60への連結を、
図9a、9b、9c、9dに基づき説明する。
【0061】
図9aでは、駆動ロッド9はまだチャンバ5の外部に配置されている。またランセット60は、完全にシャフト64の中に配置されている。ランセット60の後方領域は、シート状の金属の面から直角方向、この図においては上方への湾曲部65によって曲げられている。ランセット60の後端はゆえに、駆動ロッド9のフック66のスロット67を越えて突出する。
【0062】
図9bにおいて、駆動ロッド9は、半径方向に外側へ(図では左側へ)わずかな距離だけ移動しており、後方からチャンバ5に入り込んでいる。ランセット60の後端はフック66のスロット67を通して滑り、それによりフック66はここで下方より孔63に係合できる。孔63の引っ掛けは、弾性的に曲げられたランセット60のバネ張力により補助される。
【0063】
駆動ロッド9がチャンバ5内にさらに入り込むと、ランセット60を半径方向にチャンバの外側へさらに駆動する。これは、小さな創傷を作り出す迅速な穿刺動作である。
【0064】
図9cにおいて、ランセット60は湾曲部65(
図9b参照)の領域から退いている。このときランセット60は緩み状態にあり、フック66は孔63に完全に引っ掛けられる。
【0065】
図9dにおいて、ランセット60は反転地点に到達している。これは最大の穿刺深さに対応する。駆動ロッド9の動作方向はここで反転する。フック66のアンダーカットにより、駆動ロッド9はランセット60を前に押すだけでなく、後ろへ引くことも可能となり、ここでフック66と孔63との間のぴったりとした接続は維持されている。
【0066】
駆動ロッド9および付随するランセット60のさらなる引き抜きの過程で、ランセットは最終的に、湾曲部65の領域に入る際に自動的に取り外される。取り外しの工程は、上述の取り付けと正確に対応しており、ただし方向は反転している。
図9bは、フック66が再び孔63を解放する瞬間に対応する。
【0067】
図10によるランセット80の代替的な実施形態も、先端81およびその上に隣接している毛管溝82を有する。上述のランセットとは対照的に、ランセット80のボディは2つのアーム83aおよび83bに分かれており、これらは鏡像で備えられている。孔84aおよび84bは、両方の端部領域に設けられ、これらは2つの平行なフックを備える駆動ロッドに連結するために用いられる。このランセット80もまた、弾性的に曲げることができる1枚の金属平板から作製される。一方のアーム83aは、穿刺軸を横断して延伸する曲げ軸の周りで、上方に弾性的に曲げられてもよく、一方で他方のアーム83bは、反対方向に下方に曲げられ得る。ランセット80をマガジン内で保管するために、マガジンチャンバはそれぞれ右シャフトおよび左シャフトを含んでいなければならず、ここで一方のシャフトは上方に曲げられ、他方のシャフトは下方に曲げられる。
【0068】
図11に示される、ランセット連結機構の代替的な実施形態は、シャフト91を有するマガジンチャンバ90を有し、これは穿刺方向を横断する軸の周りで、全長を通して湾曲している。シャフト91に挿入されるランセット92は、それに応じて全長が弾性的に曲げられており、ゆえに正面領域(図中、左側)においても弾性的に曲げられている。ランセット92の後端近くに設けられ、シャフト91の曲率に応じたランセット92の穿刺方向(図中、左方向)への動作の際に、下方へ移動する孔94は、ここでもランセット92を駆動ロッドに取り付け、また駆動ロッドから取り外すために用いられる。曲げ張力により、ランセット92の先端93は下方に押され、シャフト91の真下に配置される検査パネル
95上に接する(incident)。このようにして、穿刺工程の間にランセット92によって受け取られた血液を、自動的に検査パネル95上に移送することができ、このために必要となるさらなる補助器具はない。
【符号の説明】
【0069】
1 ベースプレート
2 カバー
3 受容部
4 マガジン
5 (4の)チャンバ
6 接触圧力用弓状部
7 (6上の)固定リング
8 (6中の)開口部
9 駆動ロッド
10 (2中の)出口開口部
11 リンクスライド
12 試料移送装置
13 ランセット
15 電気モータ
16 ウォームシャフト
17 ウォームホイール
18 テンションロータ
19 回転軸
20 ドライブロータ
21 穿刺キャリッジ
22 伝達レバー
23 レバーキャリッジ
24 (22中の)長円形のホール
25 (
23の)枢動ピン
26 (22の)フォーク
27 ピン
28 溝走行部
29 (20の)コントロール溝
30 (20上の)歯形ラック
31 ギヤホイール
32 ギヤピニオン
33 ガイド
34 (11の)スイッチリンク
35 (18上の)スイッチカム
36 スプリングバウ
37 (12の)プレッシャータペット
38 摩擦スリーブ
39 摩擦ローラ
40 (18上の)傾斜部
41 スプリングバウ
42 (5の)入口開口部
43 駆動バネ
45 ギヤリング
46 凹部
47 (18上の)ツメ
48 (18
上の)ロックピン
49 (20中の)溝
50 (20中の)凹部
51 (11の)摩擦ピン
60 ランセット
61 先端
62 毛管溝
63 孔
64 (5の)シャフト
65 (64の)湾曲部
66 (9上の)フック
67 スロット
68 シャフト
69 固定ホール
70 (64の)ガイド溝
80 ランセット
81 先端
82 毛管溝
83a、83b アーム
84a、84b 孔
90 マガジンチャンバ
91 (90の)シャフト
92 ランセット
93 先端
94 孔
95 検査パネル