(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
[上下方向]
本願では、「上下方向」との文言が用いられる。後述される実施形態では、この上下方向は、鉛直方向に一致している。この上下方向は、鉛直方向に一致していなくてもよい。この上下方向は、後述されるハウジングの軸方向である。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る湯水混合栓10の斜視図である。
図2は、湯水混合栓10の上部の正面図である。
図3は、湯水混合栓10の上部の側面図である。湯水混合栓10は、本体12、ハンドル14、吐出部16、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22を有する。吐出部16は、ヘッド24を有する。ヘッド24では、シャワー吐出と通常吐出との切り替えが可能である。湯水混合栓10は、例えば、流し台、洗面台等に取り付けられ、水栓器具として使用される。湯水混合栓10は、流し台等の設備に湯水混合栓10を取り付けるための固定部23と、湯供給管に接続される接続部25と、水供給管に接続される接続部27とを有している。
【0018】
ハンドル14の上下回動(前後回動)により、吐出量が調節される(
図3の矢印M参照)。本実施形態では、ハンドル14を上側に動かすほど、吐出量が増加する。逆に、ハンドル14を下側に動かすほど吐出量が増加してもよい。また、ハンドル14の左右回動(旋回)により、湯と水との混合割合が変化する。ハンドル14の左右回動により、吐水温度の調節が可能である。
【0019】
湯水混合栓10は、その内部に、バルブ組立体40(後述)を有する。バルブ組立体40は、外カバー13の内部に配置されている。ハンドル14は、ネジ(図示されず)によって、レバー46(後述)に固定されている。
【0020】
図4(a)はバルブ組立体40の平面図であり、
図4(b)はバルブ組立体40の側面図である。
図4(a)及び
図4(b)では、バルブ組立体40は止水状態にある。
図5(a)はバルブ組立体40の平面図であり、
図5(b)はバルブ組立体40の側面図である。
図5(a)及び
図5(b)では、バルブ組立体40は吐出状態にある。
【0021】
このバルブ組立体40は、湯水混合栓10の内部に配置されている。バルブ組立体40は、外カバー13の内部に配置されている。バルブ組立体40は、単独で取り扱い可能である。湯水混合栓10において、バルブ組立体40は交換可能である。
【0022】
図6は、バルブ組立体40の分解斜視図である。バルブ組立体40は、ハウジング42、回動体44、レバー46及びレバー軸48を有する。
【0023】
更に、バルブ組立体40は、可動弁体60、固定弁体62、パッキン64、Oリング66、Oリング67及びベース体68を有する。
【0024】
レバー46には、ネジ(図示されない)によって、前述のハンドル14が固定されている。レバー46は、ハンドル14と一体で動く。
【0025】
ベース体68は、湯導入口70、水導入口72及び吐出口74を有する。ベース体68の下部には、これら湯導入口70、水導入口72及び吐出口74のそれぞれに対応した開口が設けられており、これらの開口のそれぞれに、湯導入管18、水導入管20及び吐出管22が接続されている。
【0026】
固定弁体62は、ベース体68の上側に固定される。ベース体68には、固定弁体62を固定するための係合凸部76と、ハウジング42を固定するための係合凸部77とが設けられている。固定弁体62には、係合凸部76と係合する係合凹部78が設けられている。
【0027】
固定弁体62は、湯用弁孔80、水用弁孔82及び混合水用弁孔84を有する。湯用弁孔80は、ベース体68の湯導入口70に接続されている。パッキン64により、この接続の水密状態が保持されている。水用弁孔82は、ベース体68の水導入口72に接続されている。パッキン64により、この接続の水密状態が保持されている。混合水用弁孔84は、ベース体68の吐出口74に接続されている。パッキン64により、この接続の水密状態が保持されている。
【0028】
可動弁体60は、上側部材86と、下側部材88とを有する。上側部材86は、下側部材88に固定されている。この固定は、凸部90と凹部92との係合によって達成されている。本実施形態では、上側部材86と下側部材88とが互いに別部材である。別部材とすることで、上側部材86と下側部材88とのそれぞれにおいて、最適な材質及び製法が選択されうる。可動弁体60は全体として一体成形されていてもよい。
【0029】
更に可動弁体60は、Oリング89を有している。Oリング89は、上側部材86と下側部材88との間に配置されている。
【0030】
下側部材88は、貫通孔94を有する。この貫通孔94の上側開口は、上側部材86によって閉塞されている。この閉塞により、貫通孔94は、流路形成凹部96を形成している。この流路形成凹部96は、下方に開放されている。この流路形成凹部96は、固定弁体62側に開放されている。
【0031】
固定弁体62の上面には、平滑面PL1が設けられている。上記孔80、82及び84が存在していない部分が、平滑面PL1を構成している。一方、下側部材88(可動弁体60)の下面には、平滑面PL2が設けられている。流路形成凹部96が形成されていない部分に、平滑面PL2が設けられている。平滑面PL1と平滑面PL2との面接触により、水密状態が確保されている。
【0032】
上側部材86の上面には、レバー46の下端部95と係合するレバー係合穴98が設けられている。レバー46の下端部95は、このレバー係合穴98に挿入されている。レバー46の動きに連動して、可動弁体60が固定弁体62の上を摺動する。
【0033】
本実施形態では、レバー係合穴98は凹部である。ただし、レバー係合穴98の形態は限定されない。レバー係合穴98は、レバー46の下端部95と係合していればよい。レバー係合穴98は、レバー46の下端部95の動きを可動弁体60に伝達する。
【0034】
レバー46とレバー係合穴98との係合は、直接的であってもよいし、間接的であってもよい。例えば、レバー46とレバー係合穴98との間に他の部材が介在していてもよい。
【0035】
上側部材86の上面には、回動体44の裏面と係合しうる係合凸部99が設けられている。この係合凸部99の役割については、後述される。
【0036】
レバー46は、軸孔100を有する。この軸孔100に、レバー軸48が挿通されている。レバー46は、レバー軸48回りに回動しうる。この回動は、前後回動とも称される。
【0037】
ハウジング42は、小径円筒部120と、大径円筒部122と、連結部124とを有する。連結部124は、ハウジング42の半径方向に延在している。小径円筒部120は、上方開口126を有する。大径円筒部122は、下方開口128を有する。
【0038】
大径円筒部122は、係合孔130を有する。この係合孔130が、ベース体68の係合凸部77と係合している(
図4(b)参照)。この係合により、ハウジング42は、ベース体68に固定されている。
【0039】
図7(a)は、回動体44の斜視図である。
図7(a)は斜め上方から見た斜視図である。
図7(b)は、回動体44の平面図である。
図7(c)は、回動体44の側面図である。
図7(d)は、回動体44の底面図である。
図7(e)は、回動体44の斜視図である。
図7(e)は斜め下方から見た斜視図である。
図7(f)は、回動体44の側面図である。
図7(f)の視点は、
図7(c)に対して90°相違する。
図7(g)は、
図7(d)のg−g線に沿った断面図である。
【0040】
回動体44は、基部102と上部104とを有する。上部104は、レバー挿入孔106と、軸孔108とを有する。基部102は、可動弁体60(の上側部材86)に、スライド可能に取り付けられている。レバー挿入孔106は、回動体44を貫通している。
【0041】
レバー46がレバー挿入孔106に挿入されている。レバー46の軸孔100と、回動体44の軸孔108とが同軸で配置される。これら軸孔100及び軸孔108に、レバー軸48が挿入される。レバー軸48の挿入により、レバー46が、回動可能な状態で、回動体44に固定される。レバー挿入孔106の寸法は、レバー46の前後回動を許容しうるように設定されている。
【0042】
回動体44の上部104の円周面部の外径は、ハウジング42の小径円筒部120の内径に略等しい。回動体44の上部104は、小径円筒部120に回転可能な状態で保持されている。この回転では、上部104の外周面105と、小径円筒部120の内周面121とが摺動する。
【0043】
ハウジング42の大径円筒部122は、回動体44の基部102、可動弁体60及び固定弁体62を収容している。
【0044】
図8(a)は、固定弁体62の斜視図である。
図8(b)は、固定弁体62の平面図である。
図8(c)は、固定弁体62の底面図である。
【0045】
図8(b)が示すように、湯用弁孔80は、上面開口線80Lを有している。上面開口線80Lは、平滑面PL1における湯用弁孔80の開口形状である。水用弁孔82は、上面開口線82Lを有している。上面開口線82Lは、平滑面PL1における水用弁孔82の開口形状である。混合水用弁孔84は、上面開口線84Lを有している。上面開口線84Lは、平滑面PL1における混合水用弁孔84の開口形状である。
【0046】
図8(c)が示すように、湯用弁孔80は、下面開口線80sを有している。水用弁孔82は、下面開口線82sを有している。混合水用弁孔84は、下面開口線84sを有している。
【0047】
図8(a)等が示すように、湯用弁孔80は、曲がった長穴である。水用弁孔82も、曲がった長穴である。温度調節及び吐出量の調節を考慮して、これら湯用弁孔80及び水用弁孔82の形状が決定されている。
【0048】
図9(a)は、可動弁体60の下側部材88の斜視図である。
図9(b)は、下側部材88の平面図である。
図9(c)は、下側部材88の底面図である。
【0049】
図9(c)が示すように、流路形成凹部96は、下面開口線96Lを有する。下面開口線96Lは、平滑面PL2における流路形成凹部96の開口形状である。温度調節及び吐出量の調節を考慮して、流路形成凹部96の形状が決定されている。
【0050】
なお、下面開口線96Lには、凸状部m1が設けられている。この凸状部m1は、止水状態から吐出状態に移行する際に、湯又は水の流路形成凹部96への急激な流入を緩和しうる。よって、これらの凸状部m1は、ウォーターハンマーの抑制に寄与する。本実施形態では、複数の凸状部m1が設けられている。
【0051】
図10は、可動弁体60の上側部材86の平面図である。
図11は、上側部材86の斜視図である。
図11は、上側部材86を斜め上方から見た斜視図である。
図12(a)は、上側部材86を斜め下方から見た斜視図である。
図12(b)は、上側部材86の底面図である。
図12(c)は、上側部材86の側面図である。
図13(a)は、
図10のa−a線に沿った断面図である。
図13(b)は、
図10のb−b線に沿った断面図である。
【0052】
前述の通り、上側部材86は、係合凸部99を有している。この係合凸部99は、上側部材86の上面に設けられている。係合凸部99は、上方に突出している。レバー係合穴98は、係合凸部99内に配置されている。係合凸部99は、上側部材86の上面のうちの一部の領域に設けられている。よって可動弁体60の重量の増加が抑制されている。係合凸部99により、レバー係合穴98が深くされている。よって、レバー46の下端部95から可動弁体60への力の伝達が確実とされている。
【0053】
図11が示すように、係合凸部99には、突出部140が設けられている。突出部140は、上方に向かって突出している。係合凸部99のうちの一部の領域に、突出部140が設けられている。よって可動弁体60の重量の増加が抑制されている。レバー係合穴98は、この突出部140内に設けられている。突出部140により、レバー係合穴98が深くされている。よって、レバー46の下端部95から可動弁体60への力の伝達がより一層確実とされている。
【0054】
突出部140の側面には、凹凸142が設けられている。この凹凸142により、前後クリック機構の構成が可能とされている。なお、
図7(d)が示すように、回動体44には、弾性部材を用いた出退機構を配置しうる出退機構配置部144が設けられている。この前後クリック機構が構成される場合、この出退機構が、側面142に当接するように配置される。この前後クリック機構により、前後クリック感が発現しうる。前後クリック感とは、レバー46の前後回動に伴い生じるクリック感である。
【0055】
図7(a)が示すように、回動体44は、係合凹部146を有している。係合凹部146は、回動体44の下面に設けられている。この係合凹部146は、上側部材86の係合凸部99と係合している。この係合凹部146は、スライド溝の役割を果たしている。係合凹部146において、係合凸部99がスライド移動する。
【0056】
図11及び
図12が示すように、係合凸部99は、スライド面sf1を有している。一方、
図7(d)及び
図7(e)が示すように、回動体44の係合凹部146は、スライド面sf2を有している。係合凸部99のスライド移動では、スライド面sf1がスライド面sf2に対して摺動する。可動弁体60の移動方向は、係合凸部99と係合凹部146との間のスライド機構によって規制されている。換言すれば、可動弁体60の移動方向は、方向D1に規制される(
図7(d)参照)。このように、湯水混合栓10は、可動弁体60の移動方向を方向D1に規制する移動方向規制機構を有している。この移動方向規制機構は、可動弁体60と回動体44との間に設けられている。この移動方向規制機構は、スライド機構である。
【0057】
なお、このスライド機構は、レバー46の左右回動を可動弁体60に伝達する回転伝達機構でもある。レバー46の左右回動は、回動体44に伝達される。この結果、回動体44が回転する。上記回転伝達機構により、この回動体44の回転が、可動弁体60に伝達される。このように、レバー46の左右回動に起因して、可動弁体60が回転する。
【0058】
図14(a)はレバー46の側面図である。
図14(b)はレバー46の正面図である。
図14(c)は
図14(b)のc−c線に沿った断面図である。
【0059】
本願では、レバー46の下端部95のうち、レバー係合穴98と当接しうる部分が、レバー当接部ts1とも称される。レバー当接部ts1の決定では、レバー46の前後回動の全範囲が考慮される。いかなるレバー位置においてもレバー係合穴98に当接し得ない部分は、レバー当接部ts1ではない。
【0060】
レバー当接部ts1では、点接触が生じる。レバー46の前後回動に伴い、この接点は、レバー46の下端部95の表面を移動する。よって、レバー当接部ts1は、一点ではない。レバー46を全範囲で前後回動させることにより、レバー当接部ts1は、線又は面となる。レバー当接部ts1の詳細については、後述される。
【0061】
レバー46の下端部95は、レバー当接部ts1を有している。このレバー当接部ts1が、可動弁体60のレバー係合穴98に当接している。この当接により、レバー46の下端部95の動きが可動弁体60に伝達される。よって、レバー46の前後回動に伴い、可動弁体60が移動する。
【0062】
本実施形態では、レバー46の下端部95が凸曲面rs1を有している。レバー当接部ts1は、この凸曲面rs1に位置している。レバー当接部ts1の全体が、凸曲面rs1に位置している。本実施形態において、凸曲面rs1は三次元曲面である。本実施形態において、凸曲面rs1は球面である。
【0063】
この凸曲面rs1は、外側に向かって凸である。すなわち、凸曲面rs1は、レバー下端部95の外側に向かって凸である。レバー下端部95の長手方向中心軸に沿った断面において、凸曲面rs1の断面線は、外側に凸のラインである。上記長手方向中心軸に対して垂直な方向が下端部垂直方向とされるとき、凸曲面rs1の上記断面線は、上記下端部垂直方向の外側に向かう凸形状である。
【0064】
レバー当接部ts1が凸曲面rs1とされることにより、レバー下端部95とレバー係合穴98との当接の自由度が高まる。このため、レバー46の下端部95とレバー係合穴98との当接が円滑となる。この効果の詳細については、後述される。
【0065】
なお、本実施形態では、下端部95の周方向の全体に亘って、凸曲面rs1が設けられている。本実施形態では、下端部95の周方向の全体に亘って、球面である凸曲面rs1が設けられている。このため、レバー下端部95とレバー係合穴98との当接の自由度がより一層高まる。この自由度の向上により、レバー46の取り付け誤差が効果的に吸収されうる。更に、レバー46の汎用性が高まる。
【0066】
図15は、止水状態におけるバルブ組立体40の側面図である。
図16は、
図15のc−c線に沿った断面図である。
図17(a)は、
図15のa−a線に沿った断面図である。
図17(b)は、
図15のb−b線に沿った断面図である。
図18は、吐出状態におけるバルブ組立体40の側面図である。
図18は、吐出量が最大の状態を示している。
図19は、
図18のc−c線に沿った断面図である。
図20(a)は、
図18のa−a線に沿った断面図である。
図20(b)は、
図18のb−b線に沿った断面図である。
【0067】
レバー46を最大限に前後回動させると、止水状態と最大吐出状態との相互移行が達成される。止水状態は、
図15、
図16、
図17(a)及び
図17(b)に示されている。最大吐出状態は、
図18、
図19、
図20(a)及び
図20(b)に示されている。
【0068】
これらの図面に示されるように、レバー46の前後回動により、可動弁体60が移動する。可動弁体60の移動に関して、本願では、次の方向D1、D2、D3及びD4が定義される。
・方向D1:可動弁体60の移動方向
・方向D2:上側から見た平面視におけるレバー46の前後回動方向
・方向D3:レバー係合穴98の長手方向
・方向D4:上記方向D2に対して直角である方向
上記方向D1、上記方向D3及び方向D4は、上記方向D2と同様に、上側から見た平面視における方向である。
【0069】
上述の通り、可動弁体60の移動方向は、方向D1に制約されている。この方向D1は、直線に沿った方向である。
図17(a)及び
図20(a)に示されるように、レバー46の前後回動方向D2は、方向D1に対して傾斜している。
図17(a)及び
図20(a)において両矢印θxで示されるのは、方向D1と前後方向D2との成す角度である。この角度θxは鋭角である。角度θxの単位は度(degree)である。
【0070】
図17(a)及び
図20(a)に示されるように、レバー46の下端部95は、レバー係合穴98内を、レバー係合穴98の長手方向に沿って移動する。レバー46の下端部95は、レバー係合穴98の長手方向における一端から他端まで移動しうる。レバー係合穴98の長手方向長さは、最小限とされている。
【0071】
レバー係合穴98内における下端部95の移動は、相対的な移動である。絶対的には、レバー46の下端部95は、レバー46の前後回動に従って動いている。平面視において、このレバー46の下端部95は、方向D2に沿って動く。この下端部95に押されることで可動弁体60が移動するが、この可動弁体60の移動方向が上記方向D1に制約されている。よって、方向D2とは異なる方向D1に、可動弁体60が移動する。これらの2方向への移動の結果、レバー係合穴98の内部においては、下端部95は、レバー係合穴98の長手方向に沿って移動する。
【0072】
従来の湯水混合栓では、この方向D2と方向D1とが平行である。換言すれば、従来の湯水混合栓では、θxが0°である。これに対して、湯水混合栓10では、前後方向D2が方向D1に対して平行ではない。
【0073】
このように、湯水混合栓10では、上記方向D2が、上記方向D1に対して傾斜している。この傾斜が、本願において、傾斜Xとも称される。この傾斜Xにより、湯用弁孔80及び水用弁孔82と流路形成凹部96との重なりの設計自由度が高まる。よって、吐出仕様の設計自由度が向上しうる。本願では、この傾斜Xが、「可動弁体60の斜め移動」とも称される。
【0074】
レバー係合穴98は、長手方向D3を有している(
図10参照)。
図17(b)及び
図20(b)が示すように、レバー46の前後回動において、レバー46の下端部95は、レバー係合穴98の内部を、上記長手方向D3に沿って移動する。
【0075】
なお、本実施形態では、長手方向D3は直線に沿っている。長手方向D3は曲がっていても良い。設計の容易性を考慮すると、長手方向D3は直線に沿っているのが好ましい。
【0076】
図21は、
図17(b)と
図20(b)とを重ねた図である。
図21では、レバー46の下端部95及びレバー係合穴98が示されている。
図21では、止水状態(
図17(b))における下端部95及びレバー係合穴98が実線で示されている。
図21では、最大吐出状態(
図20(b))における下端部95及びレバー係合穴98が二点鎖線で示されている。
【0077】
本願では、上記方向D2に対して直角である方向がD4とされる(
図21参照)。
【0078】
図21では、可動弁体60の基準点P1が示されている。この基準点P1は、可動弁体60の移動距離を示すために便宜上設定されているにすぎない。基準点P1は、可動弁体60における任意の点であればよい。見やすさの観点から、
図21では、レバー46の下端部95の長手方向中心線L3とレバー係合穴98との交点が、基準点P1に設定されている。
【0079】
図21において両矢印md1で示されるのは、レバー46の下端部95の移動距離である。この距離md1は、上方から見た平面視における移動距離である。この距離md1は、レバー46を前後方向の全範囲に回動させたときの距離である。
【0080】
図21において両矢印md2で示されるのは、可動弁体60の移動距離である。この距離md2は、レバー46を前後方向の全範囲に回動させたときの距離である。この移動距離md2は、上記基準点P1の移動距離である。
図21には、止水時の基準点P1の位置P1aと、最大吐出時の基準点P1の位置P1bとが示されている。距離md2は、位置P1aと位置P1bとの距離である。
【0081】
湯水混合栓10では、可動弁体60の移動距離md2が小さくなるように、上記長手方向D3が上記直角方向D4に対して傾斜している。この傾斜が、本願において、傾斜Yとも称される。この傾斜Yにより、長手方向D3が直角方向D4に一致している場合と比較して、上記可動弁体の移動距離が小さくなる。この傾斜Yによる効果は、ストローク抑制効果とも称される。
【0082】
図21を参照して、上記ストローク抑制効果が説明される。この説明では、仮想レバー係合穴h98が考慮される。
図21では、この仮想レバー係合穴h98が破線で示されている。この仮想レバー係合穴h98の形状及び大きさは、レバー係合穴98と同じである。ただし、仮想レバー係合穴h98の長手方向は、上記方向D4に一致している。
【0083】
図21に示されるように、この仮想レバー係合穴h98においても、上記基準点P1が設定される。
図21には、止水時の基準点P1の位置P1xと、最大吐出時の基準点P1の位置P1yとが示されている。レバー46の下端部95の移動距離が上述と同じく距離md1である場合について考える。この場合、仮想レバー係合穴h98を有する可動弁体の移動距離は、位置P1xと位置P1yとの距離である。位置P1xと位置P1yとの距離は、上記距離md2よりも大きい。換言すれば、上記距離md2は、位置P1xと位置P1yとの距離よりも小さい。このように、上記傾斜Yに起因して、上記ストローク抑制効果が達成されている。
【0084】
図21において両矢印θyで示されるのは、方向D3と方向D4との成す角度である。この角度θyは鋭角である。角度θyの単位は、度(degree)である。
【0085】
上記傾斜Yの方向を考察するため、
図21には、方向D3から方向D4に向かう回転方向y1が示されている。この回転方向y1における回転角度は、上記角度θyである。この回転方向y1は、上側から見たときの回転方向である。本実施形態では、この回転方向y1が時計回り方向である。この傾斜Yにより、上記ストローク抑制効果が達成される。
【0086】
ここで、レバー当接部ts1の形状について考察がなされる。
図17(b)及び
図20(b)の平面視においては示されていないが、レバー46の下端部95の動きは、レバー軸48回りの回転である(
図16及び
図19参照)。このため、レバー46の前後回動に伴い、レバー当接部ts1は、下端部95の表面を上下方向に移動する(要素1)。また、レバー46の前後回動に伴い、レバー当接部ts1とレバー係合穴98との当接角度も変化する(要素2)。更に、本実施形態では、上記傾斜Yが存在している(要素3)。すなわち、方向D3が方向D4に対して傾斜している。
【0087】
このように、レバー46の前後回動においては、複数の上記要素1から3が絡み合う。このため、レバー当接部ts1とレバー係合穴98との接触を、常に面接触とするのは困難である。なお、この「常に」とは、「レバー46の前後回動の全範囲において」との意味である。
【0088】
レバー当接部ts1とレバー係合穴98との接触を、常に線接触とすることは、理論上、可能である。ただし、レバー当接部ts1を単純な円筒形としたのでは、この線接触は達成できない。なぜなら、上記要素1から3が絡み合うからである。よって常時の線接触を可能とするレバー当接部ts1においては、その設計及び加工に、多くの労力が必要である。また、常時の線接触を可能としたレバー当接部ts1では、誤差に対する許容度が低い。この誤差として、レバー46の組み付けの誤差、下端部95の加工の誤差、レバー係合穴98の加工の誤差、上側部材86の組み付けの誤差等が挙げられる。僅かな誤差により、線接触が阻害されうる。
【0089】
以上の観点から、レバー46の下端部95が凸状の三次元曲面を有しているのが好ましく、この三次元曲面にレバー当接部ts1が位置しているのが好ましい。なお「凸状」とは、凹状を除外する趣旨である。三次元曲面とは、平面を変形させることによって成立させることの出来ない曲面を意味する。数学において、この三次元曲面は、二次曲面とも称される。xyz三次元直交座標系の空間において、二次曲面とは、x、y及びzを変数とする三元二次方程式によって表される。
【0090】
上記誤差に対する許容性の観点から、レバー46の前後回動の全範囲において、レバー当接部ts1とレバー係合穴98との接触は、実質的に点接触であるのが好ましい。上記三次元曲面により、レバー46の前後回動の全範囲における実質的な点接触が効果的に達成される。
【0091】
上記誤差に対する許容性の観点から、レバー46の左右回動の全範囲において、レバー当接部ts1とレバー係合穴98との接触は、実質的に点接触であるのが好ましい。
【0092】
なお、「実質的な点接触」とは、接触面積が4mm
2以下であることを意味する。
【0093】
上記三次元曲面として、球面、楕円面、双曲面及び放物面が例示される。加工の容易性及び汎用性の観点からは、上記三次元曲面は球面であるのがより好ましい。
【0094】
上述の通り、本実施形態では、上記ストローク抑制効果が得られうる。本実施形態では、レバー46の下端部95の移動距離md1は、従来の湯水混合栓の距離md1と同等である。本実施形態では、距離md1を従来と同等としつつ、可動弁体60の移動距離md2を抑制することができる。すなわち、本実施形態では、可動弁体60の斜め移動が達成されつつ、ストローク抑制効果が得られうる。
【0095】
上記距離md2を少なくする他の方法として、レバー46の回転中心軸とレバー当接部ts1との距離DZを短くする方法が考えられる。この距離DZが短くされると、上記距離md1が小さくなるため、上記距離md2も小さくなる。この距離DZを短くするには、レバー46の下端部95を短くすればよい。ただし、単に距離DZが短くされるのみでは、可動弁体60を一定の距離だけ移動させるのに必要なレバー46の操作量が大きくなる。よってこの場合、レバー46の操作性が低下しうる。また、レバー46の下端部95が過度に短くされると、可動弁体60とレバー46の下端部95との係合が不確実となりうる。下端部95の長さが維持されることで、レバー46の動作が確実に可動弁体60に伝達されうる。よって、湯水混合栓10の信頼性が高まる。これらの観点から、上記実施形態の如く、上記傾斜Yに基づいて上記ストローク抑制効果を得るのが好ましい。
【0096】
図22は、可動弁体60と固定弁体62との重なりを示す図である。
図22は、上側から見た平面視を示す。
図22では、固定弁体62の上面開口線80L、82L及び84Lのうち、可動弁体60(下側部材88)によって隠れている部分が、破線で示されている。また、
図22では、下側部材88の下面開口線96Lが実線で示されている。
【0097】
図22では、マトリクス状に、6つの局面(a)から(f)が示されている。局面(a)では、レバー前後位置が止水位置にあり、レバー左右位置が左限界MLにある。局面(b)では、レバー前後位置が最大吐出位置にあり、レバー左右位置が左限界MLにある。局面(c)では、レバー前後位置が止水位置にあり、レバー左右位置が正面位置S1にある。局面(d)では、レバー前後位置が最大吐出位置にあり、レバー左右位置が正面位置S1にある。局面(e)では、レバー前後位置が止水位置にあり、レバー左右位置が右限界MRにある。局面(f)では、レバー前後位置が最大吐出位置にあり、レバー左右位置が右限界MRにある。
【0098】
上面開口線80Lで囲まれた領域がXとされる。この領域Xは、湯用弁孔80の上面開口領域である。上面開口線82Lで囲まれた領域がYとされる。この領域Yは、水用弁孔82の上面開口領域である。下面開口線96Lで囲まれた領域がZとされる。この領域Zは、流路形成凹部96の下面開口領域である。
【0099】
局面(b)においてハッチングで示されているのは、上記領域Xと上記領域Zとの重なり領域XZである。局面(d)及び局面(f)においてハッチングで示されているのは、上記領域Yと上記領域Zとの重なり領域YZである。
【0100】
局面(a)、(c)及び(e)では、領域XZ及び領域YZは存在しない。よって局面(a)、(c)及び(e)は止水状態である。局面(b)では、領域XZが存在し、領域YZは存在しない。よって局面(b)では、湯のみが吐出される。局面(d)では、領域XZが存在せず、領域YZが存在する。よって局面(d)では、水のみが吐出される。局面(f)では、領域XZが存在せず、領域YZが存在する。よって局面(f)では、水のみが吐出される。
【0101】
図22では図示されないが、左限界MLと正面位置S1との間において、領域XZ及び領域YZが生じるレバー左右位置が存在する。このレバー左右位置では、湯と水とが混合される。
【0102】
局面(d)が示すように、レバー左右位置が正面位置S1であるとき、水のみが吐出され、湯は混合されない。湯水混合栓10は、レバー46が正面位置S1にあるとき、水のみが吐出されるように構成されている。このため、湯水混合栓10は、省エネルギー性に優れる。
【0103】
図8(b)が示すように、上面開口線80L及び上面開口線82Lは、固定弁体中心線CLに対して互いに対称である。固定弁体中心線CLは、上面開口線82Lに交わっていない。固定弁体中心線CLは、上面開口線80Lに交わっていない。固定弁体中心線CLは、湯用弁孔80と水用弁孔82との間を通過している。固定弁体中心線CLは、上記領域Xと上記領域Yとの間を通過している。このような左右対称の開口を有する固定弁体62において、レバー46が正面位置S1にあるときの水のみ吐出が達成されている。これは、可動弁体60の斜め移動により達成されている。この例が示すように、可動弁体60の斜め移動により、吐出仕様の設定自由度が高まる。可動弁体60の斜め移動は、固定弁体62の孔の設計自由度を高める。
【0104】
レバー46が正面位置S1且つ止水位置にあるときの上記流路形成凹部の位置がPsとされる。
図22の局面(c)では、流路形成凹部96(下面開口線96L)が上記位置Psにある。ここで、上記位置Psにある流路形成凹部96を上記方向D2に沿って移動させた状態が考察される。この状態が、本願において仮想状態とも称される。本実施形態では、この仮想状態は起こりえない。なぜなら、可動弁体60は、方向D2ではなく、方向D1に沿って移動するからである。
【0105】
この仮想状態において、可動弁体60の移動距離は限定されない。好ましくは、この仮想状態における可動弁体60の移動距離は、上述の距離md2に設定される。
【0106】
図示しないが、上記仮想状態において、流路形成凹部96が湯用弁孔80及び水用弁孔82の両方に重なりうる。
図22の局面(c)の状態から、下面開口線96Lを方向D2に沿って真下に移動させた場合が想定される。この場合、明らかに、上記領域Zは、上記領域X及び上記領域Yの両方に重なりうる。本実施形態では、方向D1が方向D2に対して傾斜しているので、上記仮想状態が回避されている。すなわち、可動弁体60の斜め移動に起因して、レバーが正面位置S1であるときに、水のみが吐出される。
【0107】
図23は、ハンドル14の左右回動について説明するための平面図である。実際に操作されるのは、レバー46ではなくハンドル14である。ただし、レバー46とハンドル14とは一体である。ハンドル14の左右回動についての説明は、レバー46の左右回動についての説明でもある。
【0108】
ハンドル14の左右回動全範囲は、左限界MLから右限界MRまでである。本実施形態では、左右回動全範囲RFの角度がθfである。本実施形態では、ハンドル14の左右回動全範囲RFは、正面位置S1に対して左右非対称である。本実施形態では、右限界MRと正面位置S1との角度は25°であり、左限界MLと正面位置S1との角度が75°である。なお、ハンドル14の左右回動全範囲RFは、正面位置S1に対して左右対称であってもよい。
【0109】
角度範囲RT1では、使用者から見て、右側に位置する。ハンドル14の周位置が角度範囲RT1にあるとき、湯が混合されない。すなわち、ハンドル14の周位置が角度範囲RT1にあるとき、水の割合が100%である。範囲RT1は、水吐出位置である。
【0110】
角度範囲RT1は、正面位置S1を含む。ハンドル14の周位置が正面位置S1にあるとき、湯が混合されない。すなわち、ハンドル14の周位置が正面位置S1にあるとき、水の割合が100%である。この構成は、省エネルギーに寄与する。
【0111】
角度範囲RT2は、使用者から見て、角度範囲RT1よりも左側である。ハンドル14の周位置が角度範囲RT2にあるとき、湯が混合される。すなわち、ハンドル14の周位置が角度範囲RT2にあるとき、湯と水とが混合されるか、又は、水が無混合(湯が100%)である。範囲RT2は、湯水混合吐出位置及び湯吐出位置である。
【0112】
角度範囲RT2が小さすぎると、湯水混合比率を調節できるハンドル14の角度範囲が狭くなりすぎて、湯水混合比率の変化が急激になりすぎる場合がある。この観点から、範囲RT2の角度θ2は、40度以上が好ましく、50度以上がより好ましく、55度以上が特に好ましい。角度範囲RT2が大きすぎると、湯水混合比率を調節できるハンドル14の角度範囲が広くなりすぎて、操作性が低下する。この観点から、範囲RT2の角度θ2は、100度以下が好ましく、90度以下がより好ましく、70度以下が特に好ましい。
【0113】
省エネルギーの観点から、範囲RT1の角度θ1は、10度以上が好ましく、15度以上がより好ましく、20度以上がより好ましい。角度θ1が過大である場合、水の割合が100%である範囲が広くなりすぎて、操作性が低下する。この観点から、範囲RT1の角度θ1は、60度以下が好ましく、50度以下がより好ましく、40度以下が特に好ましい。
【0114】
図23において符号K1で示されるのは、湯を吐出しうる範囲と水のみを吐出しうる範囲との境界である。本実施形態では、この境界K1が、レバー正面位置S1よりも湯側に位置している。よって、レバー周位置が正面位置S1から少しズレた場合でも、湯が吐出しない。よって省エネルギー性が更に高められている。
【0115】
図23において角度θkで示されているのは、正面位置S1と境界K1との間の回動角度である。省エネルギーの観点から、角度θkは、3°以上が好ましく、5°以上がより好ましい。温度調節性の観点からは、角度θ2が大きいほうがよい。この観点から、角度θkは、10°以下が好ましく、8°以下がより好ましい。
【0116】
上述の通り、湯水混合栓10では、上記角度θx及びθyが設定されている(
図21参照)。上述のストローク抑制効果を高める観点から、角度比(θy/θx)は、0.4以上が好ましく、0.42以上がより好ましく、0.45以上がより好ましい。角度比(θy/θx)が過大である状態でストローク抑制効果を達成しようとすると、バルブ組立体が大型化しやすい。この観点から、比(θy/θx)は、0.6以下が好ましく、0.58以下がより好ましく、0.55以下がより好ましい。上記実施形態では、θy/θxは0.5とされた。
【0117】
図21において両矢印Lhで示されているのは、レバー係合穴98の長手方向長さである。
図12(b)において両矢印Lmで示されているのは、可動弁体60の最大横断長さである。可動弁体60が円筒形である場合、この最大横断長さLmは、可動弁体60の外径である。平面視において、可動弁体60を横断する直線と、可動弁体60の輪郭線との交点は2点である。この2つの点の距離の最大値が、最大横断長さLmである。なお、上記実施形態において、可動弁体60は上側部材86と下側部材88とを有する。上側部材86の最大横断長さと下側部材88の最大横断長さとが比較される。この比較において、より大きな横断長さが、最大横断長さLmである。
【0118】
可動弁体60の移動距離md2が不足すると、吐出量調整の自由度が低下しうる。距離md2の不足を防止する観点から、比(Lh/Lm)は、0.2以上が好ましく、0.25以上がより好ましく、0.3以上がより好ましい。長さLhが過大である場合、水栓が大型化しやすい。また、長さLmが過小である場合、可動弁体60による止水状態の保持が困難となる場合がある。これらの観点から、比(Lh/Lm)は、0.5以下が好ましく、0.45以下がより好ましく、0.4以下がより好ましい。
【0119】
上記長手方向長さLhは、上記比(Lh/Lm)が好ましい範囲となるように設定されるのが好ましい。好ましい水栓の大きさを考慮すると、この長さLhを具体的に規定することもできる。例えば、この長さLhは、8mm以上が好ましく、8.5mm以上がより好ましく、9mm以上がより好ましい。この長さLhが過大である場合、可動弁体60が大型化しやすい。この観点から、この長さLhは、例えば、12mm以下が好ましく、11.5mm以下がより好ましく、11mm以下がより好ましい。
【0120】
可動弁体60の最大横断長さLmは、上記比(Lh/Lm)が好ましい範囲となるように設定されるのが好ましい。好ましい水栓の大きさを考慮すると、この長さLmを具体的に規定することもできる。例えば、この長さLmは、25mm以上が好ましく、26mm以上がより好ましく、26.5mm以上がより好ましい。この長さLmが過大である場合、可動弁体60が大型化しやすい。この観点から、この長さLmは、例えば、30mm以下が好ましく、29mm以下がより好ましく、28.5mm以下がより好ましい。
【0121】
図17(b)において両矢印Lsで示されるのは、レバー係合穴98の短方向長さである。この「短方向」とは、レバー係合穴98の上記長手方向に対して直角の方向である。レバー46の下端部95の耐久性の観点から、この長さLsは、5mm以上が好ましく、5.5mm以上がより好ましく、6mm以上がより好ましい。弁体ユニットの小型化の観点から、この長さLsは、8.5mm以下が好ましく、8.2mm以下がより好ましく、8mm以下がより好ましい。
【0122】
図14(a)及び
図14(c)が示すように、レバー当接部ts1は、2箇所に存在する。止水状態から吐出状態へ向かうレバー操作では、第1のレバー当接部ts11が、レバー係合穴98に当接する。この時、第2のレバー当接部ts12は、レバー係合穴98に当接していなくてもよいし、当接していてもよい。一方、吐出状態から止水状態へ向かうレバー操作では、第2のレバー当接部ts12が、レバー係合穴98に当接する。この時、第1のレバー当接部ts11は、レバー係合穴98に当接していなくてもよいし、当接していてもよい。
【0123】
図17(b)において両矢印T1で示されるのは、第1のレバー当接部ts11と第2のレバー当接部ts12との最大距離である。この距離T1の決定では、距離Dp(図示されない)が考慮される。この距離Dpは、レバー当接部ts11上の一点と、レバー当接部ts12上の一点との距離である。上述の通り、レバー当接部ts11及びレバー当接部ts12は線又は面でありうる。よって、複数の上記距離Dpが存在しうる。距離T1は、この距離Dpの最大値である。
【0124】
レバー46の下端部95の耐久性の観点から、この距離T1は、5mm以上が好ましく、5.5mm以上がより好ましく、6mm以上がより好ましい。弁体ユニットの小型化の観点から、この距離T1は、8.5mm以下が好ましく、8.2mm以下がより好ましく、8mm以下がより好ましい。
【0125】
図24は、平面視におけるレバー係合穴98の形状である。レバー係合穴98は、その一端部を形成する第1円形部C1と、その他端部を形成する第2円形部C2と、一定の幅を有するストレート部ST1とを有する。第1円形部C1は、半円である。第2円形部C2は、半円である。第1円形部C1の直径は、第2円形部C2の直径に等しい。第1円形部C1の直径は、ストレート部ST1の幅に等しい。第2円形部C2の直径は、ストレート部ST1の幅に等しい。第1円形部C1と第2円形部C2とが、ストレート部ST1によって繋げられている。
【0126】
最大吐出状態において、レバー46の下端部95は、第1円形部C1に面接触する(
図20(b)参照)。止水状態において、レバー46の下端部95は、第2円形部C2に面接触する(
図17(b)参照)。これらの面接触により、レバー46の下端部95とレバー係合穴98との接触面積が増大されている。この接触面積の増大は、レバー係合穴98及び下端部95の傷つきを抑制しうる。この接触面積の増大は、レバー係合穴98及び下端部95の耐久性を向上させうる。
【0127】
レバー係合穴98の形状は、レバー係合穴98の形状に限定されない。レバー係合穴98の他の形状として、長円(楕円)及び長方形が例示される。
【0128】
レバーの下端部95の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。凸曲面に成形することを容易とする観点からは、この下端部95の材質として、樹脂が好ましい。レバー耐久強度の観点からは、金属又は繊維強化樹脂が好ましい。上記実施形態では、繊維強化樹脂が用いられた。
【0129】
レバー係合穴98を有する部材(上側部材86)の材質として、樹脂及び金属が例示される。この樹脂には、繊維強化樹脂も含まれる。成形性の観点から、この材質としては、樹脂が好ましい。操作時の耐衝撃性の観点から、この樹脂として、繊維強化されていない樹脂が好ましい。上記実施形態では、POM樹脂が用いられた。POM樹脂とは、ポリアセタール樹脂である。
【0130】
本願には、独立形式請求項に係る発明とは異なる他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成及びそれらの組み合わせは、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
【0131】
例えば、本願には、上記他の発明として、次の発明Aが記載されている。
[発明A]
湯用弁孔、水用弁孔及び吐出弁孔を有する固定弁体と、
上記固定弁体の上面に摺動可能に配置されており、流路形成凹部及びレバー係合穴を有する可動弁体と、
左右回動及び前後回動が可能なレバーと、
上記前後回動が可能なようにレバーを支持するとともに上記レバーの左右回動に連動して回転する回動体と、
を備えており、
上記レバーの下端部がレバー当接部を有しており、
上記レバー当接部が上記レバー係合穴に当接しており、この当接により、上記レバーの下端部の動きが上記可動弁体に伝達され、
上記レバーの左右回動に起因して、上記可動弁体が上記固定弁体に対して左右回動し、この可動弁体の左右回動により、湯水混合比率の調節が可能とされており、
上記レバーの前後回動により、上記可動弁体が上記固定弁体に対して方向D1に移動し、この移動により、吐出量の調節が可能とされており、
上側から見た平面視において、上記レバーの前後回動方向D2が上記方向D1に対して傾斜しており、
上記レバーが正面位置にあるとき、水のみが吐出されるように構成されており、
上記レバーが正面位置且つ止水位置にあるときの上記流路形成凹部の位置がPsとされ、上記位置Psにある上記流路形成凹部を上記方向D2に沿って移動させた状態が仮想状態とされるとき、
この仮想状態において、上記流路形成凹部が上記湯用弁孔及び上記水用弁孔の両方に重なりうる湯水混合栓。
【0132】
上記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成をそなえなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。