(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中空押出形材の押出方向に延びる直線を仮想基準線としたとき、各バンパーステイは、前記車体から前記バンパーリインフォースメントに向かうに従って前記仮想基準線が車両幅方向中央に近づくように配置される、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバンパー構造。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係るバンパー構造は、フロントバンパーに適用されるものであり、
図1に示すように、バンパーリインフォースメントRと、左右一対のバンパーステイS,Sと、左右一対のフランジF,Fとを備えている。
【0018】
以下の説明において、「左右」、「前後」、「上下」は、車体の一部であるサイドメンバM,Mにバンパー構造を取り付けた状態を基準にする。つまり、「左右方向」は、「車両幅方向」と同義であり、サイドメンバM,Mの前端同士を結ぶ仮想の横軸Xに沿う方向と一致する。また、「前後方向」は、「車両直進方向」と同義であり、横軸Xに直交する仮想の縦軸Yに沿う方向と一致する。
【0019】
バンパーリインフォースメントRは、サイドメンバM,Mの前方(すなわち、横軸Xの前方)に配置される中空の横梁であり、バンパーステイS,Sを介してサイドメンバM,Mに支持されている。
【0020】
バンパーリインフォースメントRは、
図2にも示すように、平面視弧状を呈しており、前側に凸となるように湾曲している。バンパーリインフォースメントRの中心軸線は、車両幅方向中央以外においては、横軸Xに対して傾斜している。バンパーリインフォースメントRの湾曲部分は、アルミニウム合金製の中空押出形材の両端部を把持した状態で、当該中空押出形材の後面に曲げ型を押圧することで形成する。
【0021】
バンパーリインフォースメントRは、
図1に示すように、上プレート11、下プレート12、前プレート13および後プレート14を備えている。
【0022】
上プレート11および下プレート12は、互いに平行であり、上下に間隔をあけて対向している。
【0023】
前プレート13および後プレート14は、互いに平行であり、前後に間隔をあけて対向している。前プレート13は、上プレート11および下プレート12の前縁同士を繋いでおり、後プレート14は、上プレート11および下プレート12の後縁同士を繋いでいる。
【0024】
前プレート13の端部には、
図3の(b)にも示すように、作業用開口13a,13bが形成されている。同様に、後プレート14の端部には、作業用開口14a,14bが形成されている。車両幅方向中央寄りの作業用開口13a,14aは、フランジFのボルト挿通孔2aの中心軸線上に位置しており、フェンダー寄りの作業用開口13b,14bは、フランジFのボルト挿通孔2bの中心軸線上に位置している。
【0025】
バンパー構造がフラットバリアに正面衝突した場合、バンパーリインフォースメントRには、曲げ変形(湾曲部分が直線状に伸ばされる変形も含む)が発生するとともに、バンパーステイSとの接合部付近において断面圧潰が発生する。本実施形態では、曲げ変形がある程度進行した後に断面圧潰が生じるように、バンパーリインフォースメントRの各部の寸法が設定されている。
【0026】
ちなみに、曲げ変形に影響を及ぼすのは、主としてバンパーリインフォースメントR全体の曲げ剛性である。当該曲げ剛性は、断面2次モーメントを増減させることで調整することができるので、前プレート13および後プレート14の肉厚の大きさや、前プレート13と後プレート14との離間距離の大きさなどを増減させることで、ビーム曲げ過程の開始・終了のタイミングを調整することができる。一方、断面圧潰に影響を及ぼすのは、主に、上プレート11および下プレート12の肉厚と、前プレート13と後プレート14との離間距離の大きさであるから、これらを増減させることで、ビーム圧潰過程の開始・終了の時期を調整することができる。
【0027】
フランジFは、
図1に示すように、バンパーステイSとサイドメンバMとの間に介設される。フランジFは、バンパーステイSとは別体の部材からなる。本実施形態のフランジFは、アルミニウム合金製の平板に折り曲げ加工を施して形成したものであり、メインプレート21と、サブプレート22とを備えている。
【0028】
メインプレート21は、サイドメンバMの前端に突き合わされる部位である。
図3の(a)に示すように、メインプレート21の周縁部には、複数のボルト挿通孔2a,2b,2cが形成されている。ボルト挿通孔2a,2bは、バンパーステイSの後端の輪郭Oの左右に形成されており、他のボルト挿通孔2cは、輪郭Oの下に形成されている。ボルト挿通孔2a,2b,2cには、メインプレート21をサイドメンバM(
図1参照)の前端に固定するためのボルトが挿通される。
【0029】
サブプレート22は、
図1に示すように、サイドメンバMの上面に沿わされる部位である。サブプレート22は、メインプレート21の上端から後方に向かって張り出しており、かつ、メインプレート21に直交している。
図3の(a)に示すように、サブプレート22には、ボルト挿通孔2dが形成されている。ボルト挿通孔2dには、サブプレート22をサイドメンバM(
図1参照)の上面に固定するためのボルトが挿通される。
【0030】
バンパーステイSは、
図1に示すように、バンパーリインフォースメントRの長手方向の端部に固定されるとともに、フランジFを介してサイドメンバMに固定される。バンパーステイSは、アルミニウム合金製の中空押出形材(ホロー形材)からなる。なお、
図1中の仮想基準線Pは、中空押出形材の押出方向に延びる直線である。
【0031】
バンパーステイSは、これを上から見たときに、押出方向(仮想基準線P)が車両直進方向(縦軸Y)に斜交する方向となるように配置されている。すなわち、バンパーステイSは、押出方向が車両直進方向と一致しないように配置されていて、
図2に示すように、水平面に投影された仮想基準線Pは、縦軸Yに斜交する。本実施形態のバンパーステイSは、サイドメンバMからバンパーリインフォースメントRに向かうに従って仮想基準線Pが車両幅方向中央(中央線C)に近づくように構成されている。縦軸Yに対する仮想基準線Pの傾斜角度θは、
図2においては35(deg)である。なお、傾斜角度θが45(deg)を上回ると、軸圧潰によるエネルギー吸収が少なくなる虞があり、傾斜角度θが15(deg)を下回ると、断面圧潰によるエネルギー吸収が少なくなる虞があるので、傾斜角度θは、15(deg)以上45(deg)以下であることが望ましい。
【0032】
バンパーステイSを上から見たときの形状は、限定されるものではないが、本実施形態では、平面視五角形状を呈している。なお、バンパーステイSの上面に付した点線は、バンパーステイSを三つの領域S1〜S3に区分けするための仮想鉛直面を示している。前後二つの仮想鉛直面は、いずれも横軸Xに平行であり、バンパーリインフォースメントR寄りの仮想鉛直面は、外壁34の前端を通り、フランジF寄りの仮想鉛直面は、外壁34の後端を通る。
【0033】
以下の説明では、複数の領域S1〜S3のうち、最前部の領域S1を「三角形部S1」と称し、中間部の領域S2を「平行四辺形部S2」と称し、最後部の領域S3を「台形部S3」と称する。
【0034】
三角形部S1は、上から見た形状が略鈍角三角形を呈する領域である。三角形部S1の前端は、バンパーリインフォースメントRの後面に沿うように成形されており、バンパーリインフォースメントRの後面に当接する。
【0035】
平行四辺形部S2は、上から見たときの形状が平行四辺形を呈する領域であり、三角形部S1と台形部S3との間に位置している。
【0036】
台形部S3は、上から見たときの形状が台形を呈する領域である。台形部S3の後端は、フランジFのメインプレート21に沿うように成形されており、メインプレート21の前面に当接する。台形部S3の幅寸法は、サイドメンバMからバンパーリインフォースメントRに向かうに従って漸増する。
【0037】
バンパーステイSの構成をより詳細に説明する。
図3の(a)に示すように、バンパーステイSは、上壁31と、下壁32と、内壁33と、外壁34と、仕切壁35と、上リブ36と、下リブ37とを備えている。
【0038】
上壁31および下壁32は、同一の平面形状となるように成形されており、上下に間隔をあけて対向している(
図4参照)。上壁31および下壁32は、いずれも平板状であり、かつ、互いに平行である。上壁31は、上プレート11と同じ高さに位置しており、下壁32は、下プレート12と同じ高さに位置している。なお、図示は省略するが、上壁31および下壁32の形態を曲板状、波板状、折れ板状などとしてもよい。
【0039】
内壁33は、上壁31および下壁32の車両中央側の側縁同士を繋いでいる。なお、内壁33の高さ方向の中間部分は、平板状を呈しているが、内壁33の上部および下部は、断面円弧状に湾曲している。内壁33の前端は、後プレート14に当接し、内壁34の後端は、メインプレート21に当接する(
図3の(b)参照)。
図2に示すように、内壁33の前端から中央線Cまでの距離は、内壁33の後端から中央線Cまでの距離よりも小さい。なお、図示は省略するが、内壁33の形態を波板状や折れ板状としてもよい。
【0040】
外壁34は、
図3の(a)に示すように、上壁31および下壁32のフェンダー側の側縁同士を繋いでいる。外壁34の前端は、後プレート14の側縁に当接する。本実施形態の外壁34は、平板状を呈しているが、曲板状、波板状、折れ板状などとしてもよい。
【0041】
仕切壁35は、内壁33と外壁34との間に位置し、上壁31および下壁32を繋いでいる。本実施形態の仕切壁35は、平板状を呈している。仕切壁35の前端は、後プレート14に当接し、仕切壁35の後端は、メインプレート21に当接する(
図3の(b)参照)。
図2に示すように、仕切壁35の前端から中央線Cまでの距離は、仕切壁35の後端から中央線Cまでの距離よりも小さい。なお、図示は省略するが、仕切壁35の形態を曲板状、波板状、折れ板状などとしてもよい。
【0042】
上リブ36は、上壁31の下面に突設されており、下リブ37は、下壁32の上面に突設されている。本実施形態の上リブ36および下リブ37は、外壁34と仕切壁35との間に位置し、押出方向に延在している。上リブ36および下リブ37の前端は、後プレート14に当接する(
図3の(b)参照)。
【0043】
バンパーステイSの外殻は、上壁31、下壁32、内壁33および外壁34によって形成されており、外殻の内部は、仕切壁35によって第一空間H1と第二空間H2とに分けられている。外殻の前側の周縁(上壁31、下壁32、内壁33および外壁34の前端)は、溶接によってバンパーリインフォースメントRに接合されている。外殻の後側の周縁(上壁31、下壁32および内壁33の後端)および仕切壁35の後端は、溶接によってフランジFに接合される。
【0044】
第一空間H1は、上壁31、下壁32、内壁33および仕切壁35によって囲まれた断面矩形状の空間である(
図4の(b)参照)。第一空間H1の前側の開口端は、バンパーリインフォースメントRによって閉塞されており、第一空間H1の後側の開口端は、フランジFによって閉塞される。
【0045】
第二空間H2は、上壁31、下壁32、外壁34および仕切壁35によって囲まれた断面矩形状の空間である(
図4参照)。第二空間H2の前側の開口端は、バンパーリインフォースメントRによって閉塞されている。第二空間H2の後側の開口端は、閉塞されておらず、開口している。
【0046】
バンパーステイSの外殻には、座屈調整用の凹部3aおよび開口3bが形成されている。凹部3aは、第一空間H1側に窪んでおり、開口3bは、第一空間H1に通じている。
【0047】
凹部3aは、
図4に示すように、上下二箇所に形成されている。一方の凹部3aは、上壁31に形成されており、他方の凹部3aは、下壁32に形成されている。両凹部3a,3aは、内壁33に隣接する位置に形成されており、かつ、上下に対向している。凹部3aを形成するには、内壁33と仕切壁35の間においてバンパーステイSの外殻に皿絞り加工を施し、外殻の一部を第一空間H1側に窪ませればよい。
図3の(b)に示すように、本実施形態の凹部3aは、三角形部S1に形成されており、平面視長円形を呈しているが(
図3参照)、凹部3aの位置、大きさ。形状等は、適宜変更しても差し支えない。
【0048】
開口3bは、
図3の(a)に示すように、内壁33に形成されている。開口3bを形成するには、バンパーステイSの外殻を切除すればよい。本実施形態の開口3bは、略矩形を呈しており、
図3の(b)に示すように、その大部分が三角形部S1に形成されている。なお、開口3bの位置、大きさ、形状等は、適宜変更しても差し支えない。
【0049】
バンパーステイSには、作業用の欠損部3c,3dが形成されている。
図3の(a)にも示すように、一方の欠損部3cは、内壁33に形成された長円形状の開口であり、他方の欠損部3dは、仕切壁35に形成された矩形状の切欠きである。欠損部3c,3dは、
図3の(b)に示すように、バンパーリインフォースメントRの作業用開口13a,14aからフランジFのボルト挿通孔2aを見通せるよう、ボルト挿通孔2aの中心軸線上に位置している。欠損部3c,3dを形成するには、バンパーステイSのうち、ボルト挿通孔2aの中心軸線と交差する部分を切除すればよい。ボルト挿通孔2aの中心軸線上に欠損部3c,3dを設けると、ボルトあるいはボルト締結用の工具を挿入し易くなるので、車体への取付作業が容易になる。なお、欠損部3c,3dの大きさや形状等は、適宜変更しても差し支えない。
【0050】
なお、他のボルト挿通孔2bの中心軸線は、上リブ36および下リブ37の間を通過しており、バンパーステイSの外殻や仕切壁35と交差していないので、バンパーステイSを切除せずとも、作業用開口13b,14bからボルト挿通孔2bを見通すことができる。
【0051】
バンパーステイSは、アルミニウム合金製の中空押出形材を利用して形成する。この中空押出形材は、
図4と同様の断面形状を備えている。
【0052】
バンパーステイSを製造する際には、まず、
図5の(a)に示すように、中空押出形材3の一端側を第一切断線C1に沿って切断するとともに、中空押出形材3の他端側を第二切断線C2および第三切断線C3に沿って切断する。第一切断線C1と外壁34とのなす角度θ1は、バンパーリインフォースメントRの後面と外壁34とのなす角度と等しい。第二切断線C2は、押出方向を法線とする平面に対して角度θ2で傾斜する直線である。角度θ2は、
図2に示す仮想基準線Pの傾斜角度θと等しい。第三切断線C3は、第二切断線C2と交差する直線である。第二切断線C2と第三切断線C3とのなす角度θ3は、90(deg)以上180(deg)未満である。
【0053】
中空押出形材3からブロック30を切り出したら、
図5の(b)に示すように、ブロック30の第一切断線C1側の端部を仕上線C4に沿って切除する。仕上線C4は、バンパーリインフォースメントRの後面の形状と同じである。その後、ブロック30の適所に、
図3の(a)に示す凹部3a、開口3bおよび欠損部3c,3dを形成すると、バンパーステイSとなる。
【0054】
バンパーステイSにフランジFを接合する場合には、
図3の(b)に示すように、まず、バンパーステイSの後端にフランジFの前面を当接させ、その後、上壁31、下壁32、内壁33および仕切壁35の後端に沿って溶接を施せばよい。バンパーステイSをフランジFに接合すると、第一空間H1の後側の開口端がフランジFによって閉塞される。なお、仕切壁35のフェンダー側の側面は、外部に露出しているので、仕切壁35とフランジFとの溶接作業を簡易且つ迅速に行うことができる。
【0055】
バンパーステイSをバンパーリインフォースメントRに接合する場合には、外壁34の前端を後プレート14の側縁に一致させつつ、バンパーステイSの前端をバンパーリインフォースメントRの後面に当接させ、その後、上壁31、下壁32、内壁33および外壁34の前端に沿って溶接を施せばよい。バンパーステイSをバンパーリインフォースメントRに接合すると、第一空間H1および第二空間H2の前側の開口端がバンパーリインフォースメントRによって閉塞される。なお、外壁34の前端と後プレート14の側縁とが揃っているので、外壁34と後プレート14との溶接作業を簡易且つ迅速に行うことができる。
【0056】
バンパーステイSをサイドメンバMに固定する場合には、フランジFのサブプレート22をサイドメンバMの上面に載置しつつ、フランジFのメインプレート21をサイドメンバMの前端面に当接させ、ボルト挿通孔2a〜2dに挿入したボルトをサイドメンバMに締着すればよい。
【0057】
次に、
図6を参照して、フラットバリアに正面衝突した場合における衝突エネルギーの吸収過程を説明する。
【0058】
図6の(a)に示すバンパー構造に対して、正面側(車体前方)から衝突荷重Lが作用すると、
図6の(b)に示すように、まず、バンパーステイS,S間においてバンパーリインフォースメントRの湾曲部分が直線状に伸ばされることで、衝突エネルギーが吸収される(ビーム曲げ過程)。なお、バンパーリインフォースメントRに作用した衝突荷重は、バンパーステイSによって受け止められるので、バンパーリインフォースメントRには、バンパーステイSからの反力が作用する。
【0059】
バンパーリインフォースメントRの湾曲部分が直線状に伸ばされる際には、三角形部S1の凹部3aおよび開口3b(
図3参照)の開口縁部に局所的な座屈(圧潰)が生じるものの、三角形部S1に座屈が集中する結果、バンパーステイS全体の圧潰が抑制されるので、バンパーステイSは、ビーム曲げ過程中のバンパーリインフォースメントRを安定して支持することができる。
【0060】
なお、衝突荷重Lの作用位置が上下にオフセットした場合でも、凹部3aおよび開口3bの周囲に座屈が集中する結果、バンパーステイSの座屈開始時期を遅らせることが可能となるので、少なくとも衝突の初期段階においては、バンパーリインフォースメントRを安定的に支持することが可能になる。
【0061】
衝突荷重Lが大きい場合には、ビーム曲げ過程の途中から、バンパーステイSに隣接した領域においてバンパーリインフォースメントRの断面圧潰が進行し始める(ビーム圧潰過程)。ビーム圧潰過程では、バンパーステイS(特に仕切壁35)がバンパーリインフォースメントRの後面に減り込み、バンパーリインフォースメントRが潰れることで衝突エネルギーを吸収する。なお、上プレート11および下プレート12は、蛇腹状に座屈変形する。
【0062】
ビーム圧潰過程がある程度進行すると、
図6の(c)に示すように、バンパーリインフォースメントRに作用した衝突荷重Lのうち、押出方向に沿う方向の分力L1によって、バンパーステイSに軸圧潰が発生するようになり、中空押出形材の押出方向と直交する方向の分力L2によって、バンパーステイSに断面圧潰が発生するようになる(ステイ圧潰過程)。すなわち、ステイ圧潰過程では、
図6の(d)に示すように、バンパーステイSに軸圧潰と断面圧潰とが生じることで衝突エネルギーを吸収する。
【0063】
このように、本実施形態のバンパー構造によれば、少なくとも正面衝突の場合においては、ビーム曲げ過程、ビーム圧潰過程およびステイ圧潰過程が順次進行するようになるので、支持力(サイドメンバMに伝わる荷重)のピークも時間差をもって順次現れるようになる。
【0064】
しかも、本実施形態に係るバンパー構造によれば、バンパーステイSの軸圧潰によるエネルギー吸収を期待できるので、「断面圧潰型」のバンパーステイ(押出方向が上下方向あるいは左右方向となるように配置されたバンパーステイ)に比べて、ステイ各部の薄肉化(バンパーステイの軽量化)を図ることが可能となり、さらには、バンパーステイSの断面圧潰によるエネルギー吸収も期待できるので、「軸圧潰型」のバンパーステイ(押出方向が前後方向となるように配置されたバンパーステイ)に比べて、支持力のピークを低く抑えることができ、なおかつ、ピーク後における支持力の急低下を抑制することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態に係るバンパー構造によれば、バンパーリインフォースメントRの支点間距離が狭まるようになるので、バンパーステイS,S間におけるバンパーリインフォースメントRの変形抵抗を維持したままバンパーリインフォースメントRの薄肉化(軽量化)を図ることが可能となる。すなわち、押出方向が車両直進方向と一致するようにバンパーステイを配置すると、バンパーステイの内側縁は、
図2の仮想線Qの位置となり、バンパーリインフォースメントRの端部は、仮想線Qとの交点q’まで支持されることになるが、押出方向が車両直進方向と一致しない本実施形態のバンパー構造では、バンパーステイSが仮想線Qよりも中央線C側に張り出していて、バンパーステイSの内側縁が仮想線Qよりも中央線C側の位置となるので、バンパーリインフォースメントRの端部は、交点q’よりも中央線Cに近い支持点qまで支持されるようになる。このように、バンパーステイSによれば、仮想線Qから中央線C側に張り出す平面視三角形状の部分によっても、バンパーリインフォースメントRが支持されるようになるので、バンパーリインフォースメントRの支点間距離がサイドメンバM,Mの離間距離よりも小さくなる。また、バンパーステイSがバンパーリインフォースメントRと広範囲に接触するようになるので、バンパーリインフォースメントRの圧潰範囲を増大させることが可能になり、ひいては、衝突エネルギーの吸収量を増大させることが可能となる。
【0066】
また、本実施形態に係るバンパー構造によれば、バンパーステイSの外殻に座屈調整用の凹部3aおよび開口3bを設けているので、座屈の開始位置をコントロールすることが可能になり、ひいては、圧潰パターンの再現性が高まる。また、凹部3aおよび開口3bを設けると、これらを設けない場合に比べて、バンパーステイSの剛性が低下するため、支持力のピークを抑えることが可能になる。
【0067】
また、フランジFのボルト挿通孔2aの中心軸線上においてバンパーステイSに欠損部2c,2dを形成しているので、ボルトあるいはボルト締結用の工具をバンパーステイSに挿入し易くなり、ひいては、車体への取付作業が容易になる。
【0068】
本実施形態では、バンパーステイSの外殻に凹部3aおよび開口3bを設けた場合を例示したが、凹部3aおよび開口3bの一方あるいは両方を省略してもよい。例えば、
図7の(a)に示すバンパーステイSでは、その外殻の三箇所(上壁31,下壁32および内壁33)に座屈調整用の開口3b,3b,3bを形成している。開口3b,3b,3bは、いずれも、バンパーステイSの三角形部S1(
図2参照)に位置し、第一空間H1に通じている。
【0069】
また、本実施形態では、後加工にて形成した凹部3aを例示したが、
図7の(b)に示す凹部3a’,3a’のように、押出成形によって形成してもよい。一方の凹部3a’は、上壁31に形成されており、他方の凹部3a’は、下壁32に形成されている。両凹部3a’,3a’は、内壁33に隣接する位置に形成されており、かつ、押出方向に連続している。
【0070】
本実施形態においては、円弧状のバンパーリインフォースメントRを例示したが、本発明に適用可能なバンパーリインフォースメントの形状を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、楕円弧や放物線をなすバンパーリインフォースメントのほか、曲率の異なる複数の円弧を組み合わせた形状や曲線と直線とを組み合わせた形状のバンパーリインフォースメント、さらには、直線部の両側に後方に向けて傾斜する傾斜部を具備するバンパーリインフォースメント(屈折部分を具備するバンパーリインフォースメント)を使用してもよい。
【0071】
また、
図8の(a)に示すように、直線状を呈するバンパーリインフォースメントR’を使用しても差し支えない。バンパーリインフォースメントR’に組み合わされるバンパーステイS’は、前記のバンパーステイSにおいて三角形部S1を省略した形状となる。なお、ビーム曲げ過程では、バンパーリインフォースメントR’のうち、左右のバンパーステイS’,S’の間の部分が車体側に凸となるように変形することで、衝突初期における衝突エネルギーが吸収されることになる。
【0072】
また、本実施形態では、バンパーステイSを、サイドメンバMからバンパーリインフォースメントRに向かうに従って仮想基準線Pが中央線Cに近づくように配置した場合を例示したが(
図2参照)、
図7の(b)に示すバンパーステイS”のように、サイドメンバMからバンパーリインフォースメントRに向かうに従って仮想基準線Pが中央線Cから遠ざかるように配置してもよい。