特許第5671618号(P5671618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671618
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】PGAを含んでなる新しいEMD製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/00 20060101AFI20150129BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20150129BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20150129BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20150129BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20150129BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20150129BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20150129BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20150129BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20150129BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20150129BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20150129BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20150129BHJP
   A61L 27/00 20060101ALI20150129BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20150129BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20150129BHJP
   A61K 6/097 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   A61K37/02
   A61K47/36
   A61K8/73
   A61K9/10
   A61K9/06
   A61K9/20
   A61K9/48
   A61K9/19
   A61K9/12
   A61Q11/00
   A61P19/00
   A61P1/02
   A61L27/00 F
   A61P29/00
   A61P31/00
   A61K6/097
【請求項の数】25
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-524463(P2013-524463)
(86)(22)【出願日】2011年10月17日
(65)【公表番号】特表2013-534240(P2013-534240A)
(43)【公表日】2013年9月2日
(86)【国際出願番号】EP2011068092
(87)【国際公開番号】WO2012049324
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2013年2月14日
(31)【優先権主張番号】1051082-4
(32)【優先日】2010年10月15日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】506415207
【氏名又は名称】ストラウマン ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ラズロ・ガラムセギ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリ・ヴィタル
【審査官】 池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−523047(JP,A)
【文献】 特開平06−090703(JP,A)
【文献】 特開2009−029813(JP,A)
【文献】 J Clin Periodontol,1997年,vol.24,p.669-677
【文献】 J Clin Periodontol,1997年,vol.24,p.678-684
【文献】 Analytica chimica Acta,1998年,vol.359,p.107-113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 38/00−38/58
A61K 39/00−39/44
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/48
A61K 6/00−6/10
A61K 8/00−8/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)を含んでなる、薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤であって、6質量/体積%(w/v%)以下の滅菌プロピレングリコールアルギナート(PGA)を含み、そしてここで、該滅菌PGAは、130kDaを超える質量平均分子量(Mw)を有する、上記製剤。
【請求項2】
滅菌PGAの質量平均分子量が、130〜250kDaの間の範囲内にある、請求項1に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項3】
130kDaを超える質量平均分子量を有し、3質量/体積%(w/v%)〜6質量/体積%(w/v%)の範囲内の滅菌PGAを含んでなる、請求項1又は2に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項4】
滅菌PGAの質量平均分子量が135kDaを超えるか又はそれに等しい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項5】
滅菌PGAの質量平均分子量(Mw)が、185kDaを超えるか又はそれに等しい、請求項1〜のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項6】
滅菌プロピレングリコールアルギナートが、少なくとも250kDaの初期質量平均分子量(Mwo)を有する非滅菌PGAのe−ビーム滅菌より得られる、請求項1〜のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項7】
滅菌PGAが、250〜500kDaの範囲内の初期質量平均分子量(Mwo)を有する非滅菌PGAのe−ビーム滅菌より得られる、請求項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項8】
適用されるe−ビーム滅菌線量が、25〜30kGyの範囲の線量から選ばれる、請求項又はに記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項9】
エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質は、18〜25kDaの間、20〜24kDaの間、20〜22kDaの間、及び20kDaから成るグループから選択される平均分子量を有する、少なくとも60〜70%アメロゲニンを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項10】
前記製剤が少なくとも18ヶ月に亘って、3.5を超えるpHを有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項11】
前記製剤が24ヶ月の期間に亘って、3.5を超えるpHを有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項12】
前記製剤が2〜8℃の温度範囲で、3.5を超えるpHを有する、請求項10又は11に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項13】
製剤が、更に、一つ又はそれ以上の薬学的に許容可能な賦形剤、薬学的に許容可能な一つ又は複数の担体又はそれらの組合せを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項14】
エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質の量が、その基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質及び滅菌PGAの全組合せ質量で、その他の賦形剤を含まない質量に基づいて、93%〜98%、94%〜97%、及び95%〜96%(質量/体積)の範囲内である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項15】
更に、一つ又はそれ以上の非エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質活性剤を含んでなる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項16】
少なくとも二つの表面安定剤を含んでなる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項17】
表面安定剤が、アニオン表面安定剤、カチオン表面安定剤、両性イオン表面安定剤及びイオン性安定剤から成るグループから選択される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項18】
医療において使用するための、請求項1〜17のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項19】
製剤が、経口、肺内、直腸、眼内、結腸、非経口、大そう内、膣内、腹腔内、局所、頬内、鼻腔内及び局所投与から成るグループから選択される投与用に製剤化される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項20】
液体分散剤、経口懸濁剤、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏剤、クリーム剤、放出制御製剤ファーストメルト製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、カプセル剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、及び混合型即時放出及び制御放出製剤より成るグループから選択した投薬形態に製剤化される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項21】
硬組織の再生、組織鉱化、骨成長及び/又は骨再成長、象牙質の再生、セメント質形成
を促進し及び/又は誘導するのに、及び/又は生鉱化組織の部分間を結合するのに使用するため;他の一部の生組織上の結合サイトに一部の生鉱化組織を結合させるため;硬組織間の結合を支持するため;及び/又は処置及び/又は外傷から続く鉱化した創腔及び/又は組織欠損を補うため;の、請求項1〜20のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項22】
軟組織の再生を促進し及び/又は誘導するのに使用するため、及び/又は炎症及び/又は感染症を処置し及び/又は予防するため、及び/又はSIRSを処置するため;硬組織の再生、組織鉱化、骨成長及び/又は骨再成長、象牙質の再生、セメント質形成を促進し及び/又は誘導するため、及び/又は生鉱化組織の部分間を結合するため;一部の生鉱化組織を他の一部の生組織上の結合サイトに結合させるため;硬組織間の結合を支持するため;及び/又は処置及び/又は外傷から続く鉱化した創腔及び/又は組織欠損を補うため;の、請求項1〜21のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤。
【請求項23】
軟組織の再生を促進し及び/又は誘導するため:及び/又は炎症及び/又は感染症の処置及び/又は予防のため;及び/又はSIRSの処置のため;硬組織の再生、組織鉱化、骨成長及び/又は骨再成長、象牙質の再生、セメント質形成を促進し及び/又は誘導するため、及び/又は生鉱化組織の部分間を結合するため;一部の生鉱化組織を他の一部の生組織上の結合サイトに結合させるため;硬組織間の結合を支持するため;及び/又は処置及び/又は外傷から続く鉱化した創腔及び/又は組織欠損を補うため;の薬学的組成物の製造のための、請求項1〜22のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤の使用。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤を製造する方法であって、次の:
a. 発育期の哺乳類の歯から、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質を単離する工程;
b. 250kDaを超える初期質量平均分子量(Mwo)を有する非滅菌PGAを25〜30kGyの範囲の線量でe−ビーム滅菌する工程;及び
c. a.から得られた生産物とb.から得られた生産物とを混合する工程;
を含んでなることを特徴とする、上記方法。
【請求項25】
エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質、及び130kDaを超える質量平均分子量を有する滅菌プロピレングリコールアルギナート(PGA)を含んでなる、薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤であって、ここで、該製剤が次の:
a. 発育期の哺乳類の歯から、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質を単離する工程;
b. 250〜500kDaの範囲の初期質量平均分子量(Mwo)を有する非滅菌PGAを25〜30kGyの範囲の線量でe−ビーム滅菌する工程;及び
c. a.から得られた生産物とb.から得られた生産物とを混合する工程;
を含んでなる方法により製造される、上記製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製したエナメル基質の蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質を含んでなる、薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤に関する。特に、本発明は、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質及び少なくとも130kDaの質量平均分子量を有する滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)を含む安定製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エナメル基質中に存在するエナメル基質蛋白質は、エナメルに対する前駆体として最も広く知られている。セメント質形成の前に、エナメル基質蛋白質は、発育期歯根の先端部(apicl end)において根表面に析出する。析出エナメル基質がセメント質形成のための開始因子である証拠が存在する。再び、セメント質それ自身の形成は、歯根膜及び歯槽骨の発育と関連がある。従って、エナメル基質蛋白質は、歯における自然の付着物発育の擬態を通して歯周組織再生を促進できる(非特許文献1)。
【0003】
単離したエナメル基質蛋白質は、エナメル基質に隣接して発育する組織において自然に見出される一因子のみならず、因子の組織的なカスケードを誘発できる。それらは、発育組織の自然環境を擬態し、その結果、組織再生、細胞分化及び/又は成熟に対する自然の刺激を擬態する。
【0004】
ブタのエナメル基質からの蛋白質の精製した酸抽出物の形態におけるエナメル基質誘導体(EMD)は、以前に、厳しい歯付着物喪失を患う患者において、機能的な歯根膜、セメント質及び歯槽骨の修復のために成功裏に採用した(非特許文献2)。
【0005】
エナメル基質誘導体(EMD)製剤は、また、歯周の再生を促進させることが示した(非特許文献3)。この研究において、異なった製剤は、使用される製剤に依存して、結果が異なるか否かを見つけるために使用した。EMDがPGAに溶解するとき、最も満足すべき結果が得られることを、研究は示した。
【0006】
例えば、特許文献1は、初めて、活性成分として、いわゆるエナメル基質と呼ばれている歯科エナメルに対する前駆体に由来する蛋白質部分を含む少なくとも一つの部分上での鉱化組織の再生による、鉱化組織の部分間の結合を誘導することに使用する組成を記載する。
【0007】
更にその上、培養した歯根膜細胞(PDL)に関する研究において、これらの細胞の付着率、成長及び代謝は、EMDが培地に存在するとき著しく増大することが示した。また、EMDに曝露した細胞は、対象群と比較して、増大した成長因子の分子内cAMPシグナリング及び自己分泌産生を示した。他方、上皮細胞は、EMDが存在するときcAMPシグナリング及び成長因子の分泌が増大するが、増殖と成長の両方が阻害した(非特許文献4)。
【0008】
エナメル基質蛋白質及びエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質が、硬組織の形成を誘導することができ(即ち、エナメルの形成:特許文献2(Slavkin));組織間の結合を保証すること(特許文献3及び特許文献4);感染症及び炎症性疾患の処置に有効な効果を有する、皮膚及び粘膜などの開放創の治癒を促進すること(特許文献5及び特許文献6);象牙質の再生を誘導すること(特許文献7);移植片の取り込みを促進すること(特許文献8);腫瘍の処置においてアポトーシスを誘導すること(特許文献9);全身感染症又は炎症に対して、免疫応答の不均衡を規制すること(特許文献10):及び、腫瘍縮小手術などの処置及び/又は外傷からの続く創腔及び/又は組織欠損の充填を支援すること(特許文献11)が、それぞれ、可能であることを、以前に、特許文献で記載されていた。
【0009】
EMDは、アメロゲニン、エナメリン、房状分枝蛋白質、プロテアーゼ及びアルブミンなどの多数の蛋白質より成り立っている。70〜90%など、少なくとも60〜90%を占めるEMDの主要構成成分であるアメロゲニンは、選択的スプライシング及び制御したポスト分泌腺処理による単一遺伝子からの疎水性蛋白質誘導体のグループである。それらは、脊椎動物の進化を通して高度に保存され、そして、調査した全ての高等脊椎動物の間で(80%)、配列相同性に全体で高いレベルを示す。事実、ブタ及びヒトのアメロゲニン遺伝子転写物の配列は、基盤の4%が異なっているのみである。それ故、エナメル基質蛋白質及び/又はEMD蛋白質は、ブタ起源ではあるが、ヒトの肉体に遭遇したとき、「同一のもの」と考えられ、そして、アレルギ応答又はその他の好ましくない反応を引き起こすことなく、ヒトにおいて歯科再生を促進することができる。エナメル基質誘導体蛋白質(EMD)は、エナメル質の最も知られた前駆体である。PGAで濃厚にしたその水溶液は、登録商標名:Straumann(登録商標) Emdogainで、商品化されている。PGAで濃厚にしたエナメル基質誘導体蛋白質(EMD)の水溶液は、また、Straumann(登録商標)Emdogain Plusにおいても見出すことが。
【0010】
水溶液中でEMDを保持するために、溶液は、蛋白質の等電点(IEP)より十分下のpHを持つべきであり、EMDに対しては、IEPはpH6.5であるので、従って、より好ましくは、溶液のpHは、<5.0である。容易な適用のために、溶液はPGAで濃厚になる。化学的には、PGAは、ケルプ(海藻)から誘導されるアルギン酸のエステルである。いくつかのカルボキル基は、プロピレングリコールでエステル化され、いくつかは、適切なアルカリで中和され、そして、いくつかは、フリーのまま残っている。PGAそれ自身は酸性であり、そして、PGAがEMD溶液に溶解した後、pHは低下する。酸性条件下で、PGAの分解に起因して、pHの低下を保持する。混合物の耐久性は、EMDが歯の表面上に沈殿することが可能となるpH値で決定される。沈殿は生理的条件、即ち、IEP近辺のpHで発生することが想定される。歯根環境とEMD−PGA混合物の両方のpH及び緩衝能力は、EMD蛋白質の沈殿挙動に影響を与え、IEP近辺のpH及びPGAで製剤したEMD溶液の低い緩衝能力は沈殿を支持する。
【0011】
D.J. McHughは、HYPERLINK(非特許文献5)において、アルギナートの重合度(DP)は、分子の平均分子量の物差しであり、そして平均鎖当たりのウロン酸ユニットの数でもあることを記載している。DP及び分子量は、直接、アルギナート溶液の粘度に関連し、貯蔵中の粘度の喪失は、アルギナートの解重合の程度を表す物差しである。
【0012】
PGAは、一般的に、低、中、及び高粘度のアルギナート(2%水溶液の粘度を参照して)として記載される様々なグレードで製造される。PGAアルギナートの分子量が高ければ高いほど、その溶液の粘度は高くなる。製造者は、抽出条件の厳格さを変更することにより分子量(重合度、DP)を制御することができ、そして彼らは、100〜1000ユニットの範囲のDPを有する、10〜1000mPa・s(1%溶液)の範囲の製品を提供する。粘度200〜400mPa・s「中粘度」のPGAは、恐らく、最も広い適用分野を見出す。高DPを有するPGAは、低DPのそれより安定性が低いことが知られている。低粘度のPGA(約50mPa・s程度)は、3年間、10〜20℃に貯蔵して、観察可能な変化は見られなかった。中粘度のアルギン酸ナトリウム(約400mPa・s程度)は、1年後、25℃で10%喪失、及び33℃で45%喪失を示した。
【0013】
プロピレングリコールアルギナートは、25℃で1年後、約40%の粘度低下を示し、そして、また、溶解性は低下した。アンモニウムアルギナートは、一般的に、上記のいかなるものより安定性が低下する。アルギン酸は最も安定性の低い生成物であり、そしていかなる長鎖物質も、常温で数ヶ月以内に、より短い鎖長に分解する。しかし、短鎖物質を含むアルギナートは安定であり、そして、鎖長当たり約40ユニットのウロン酸のDPを有するアルギン酸は、20℃の温度で、1年間に亘ってほとんど変化を示さない。しかし、薬学的錠剤の崩壊剤としてのアルギン酸の主用途は、湿潤下で膨潤する能力に依存し、そして、これはDPの変化により影響を受けない。市販のアルギナートは、冷所で、即ち、25℃以下の温度で貯蔵すべきであり、温度が上昇すると、著しい解重合が起こるかもしれず、粘度及びゲル強度などの商業的に有用な特性に影響を与える。前記のアルギナートは、通常、10〜13%の湿度を有し、そして解重合率は、湿度の割合が増加すると上昇し、それ故、貯蔵面積は乾燥すべきである。
【0014】
上記の通り、EMD蛋白質は、PGA水溶液中において事前製剤され、ここでPGAの分解は、時間と共に次々にpHを低下させる酸性生成物を提供する。温度が上昇すると、分解が加速する。生成物の急激な酸性化を避けるために、その結果、この影響を制限するために、生成物は低温で、即ち、2〜8℃の温度範囲で輸送し、貯蔵する必要がある。それにもかかわらず、市販のStraumann(登録商標) EmdogainのPGAとの製剤中のEMDの安定性は、時間と共に急速に低下することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】US第5098891号
【特許文献2】US第4672032号
【特許文献3】EP第0337967号B
【特許文献4】EP第0263086号B
【特許文献5】EP第1059934号B
【特許文献6】EP第1153610号B
【特許文献7】WO第01/97834号
【特許文献8】WO第00/53197号
【特許文献9】WO第00/53196号
【特許文献10】WO第03/024479号
【特許文献11】WO第02/080994号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Gestrelius S, Lyngstadaas SP, Hammarstrom L. Emdogain - periodontal regeneration based on biomimicry; Clin Oral Invest 4:120-125 (2000);
【非特許文献2】Hammarstrom et al., 1997, Journal of Clinical Periodontology 24, 658-668;
【非特許文献3】Hammarstrom et al., 1997, Journal of Clinical Periodontology 24, 669-677;
【非特許文献4】Lyngstadaas et al., 2001 , Journal of Clinical Periodontology 28, 181-188;
【非特許文献5】http://www.fao.org/docrep/x5822e/x5822e04.htm;
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
エナメル基質誘導体(EMD)蛋白質及びエナメル基質蛋白質は、軟及び硬組織の再生を促進し、そして炎症及び感染症を低下させる能力により、臨床歯学分野で幅広く使用されている。
【0018】
Straumann (登録商標)Emdogainは、アルギナート担体、プロピレングリコールアルギナート(PGA)、及びブタのエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質より成る市販の製品であり、歯周病の処置に使用され、硬質及び軟組織の再生を促進し、及び歯周外科手術につながる炎症を低下させる。Straumann(登録商標)Emdogainの製造において採用したPGAは、50〜175mPa・s(2%水溶液、22℃、Brookfield粘度)の粘度、即ち、「低粘度」を有する。製剤は、時間経過によるpHの急速な低下に起因して、安定性に欠ける。
【0019】
それ故、製剤の急激な酸性化を避けるために、製剤は低温で、即ち、2〜8℃の範囲の温度で貯蔵し、輸送する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、精製したエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質及び滅菌したプロピレングリコールアルギナートを含む薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤の驚くべき発見に関し、ここで、滅菌PGAは、250〜500kDaの間の質量平均分子量(MWo)を有する非滅菌PGAからe−ビーム滅菌により入手可能であり、時間と共により安定であり、特に、製剤のpHが時間と共により安定となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】2002年〜2009年の粗製PGA及びKelcoloid(登録商標)O(PGA)の質量平均分子量(M)を示す。
図2】PGAの酸触媒加水分解の反応スキームを示す。
図3】Straumann(登録商標)EmdogainのpH対2〜8℃での貯蔵時間を示す。
図4】Straumann(登録商標)EmdogainのpH対異なった温度での貯蔵時間を示す。
図5】2〜5℃の範囲での擬一次反応速度定数のPGA濃度依存性を示す。
図6】PGAの質量平均分子量の閾値が、ポルランの検量標準に対してGPCで測定して、135kDaより大きく(図6A)、及び140kGa大きくなり得る(図6B)。
図7】e−ビーム照射線量の関数としての比較例のManucol(登録商標)エステルB− Kelcoloid(登録商標) Oを示す。
図8】PGA濃度とStraumann(登録商標)Emdogainの耐久性の関係を示す。pH規格(3.5)が、Emdogain対滅菌PGA(即ち、e−ビーム滅菌PGA)濃度の寿命を決定した。
図9】滅菌PGAのMが、185kDaなど、135kDaを超えるときの滅菌PGAの分子量(M)とEmdogainの貯蔵安定性の関係を示す。参照として、Mが117kDaを有する滅菌PGAを用いた。
図10】滅菌PGAのMが135kDaであるとき、滅菌PGAの分子量(M)とEmdogainの貯蔵安定性の関係を示す。
【0022】
定義:
ALGは、非滅菌のPGAに対して本明細書において使用される略号である。
ALGSは、e−ビームを用いて滅菌した滅菌PGAに対して本明細書で使用される略号である。
【0023】
この文脈において、「被検体」は、鳥類、爬虫類、哺乳類、霊長類及びヒトなどのいかなる脊椎動物も対象とする。
【0024】
PGAはいくつかの異なった名称:プロピレングリコールアルギナート、アルギン酸ヒドロキシプロピル、プロパン−1,2−ジオールアルギナート又はE405を有する。
【0025】
本文脈において、「製剤」は、「組成」に代替できる。
【0026】
本文脈において、「e−ビーム」は電子線を意味し、また、電子の流れである陰極線とも呼ばれている。E−ビーム滅菌は、殺菌法として用いられる。
【0027】
用語の非滅菌のプロピレングリコールアルギナート(PGA)は、本文脈において、食品グレードのPGA、粗製PGA、医学グレードのPGA及び工業グレードのPGAを含むことを意味する。
【0028】
滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)は、本明細書において、好ましくは、少なくとも250kDaで、250〜500kDaの間の質量平均分子量(Mwo)を有する非滅菌PGAのe−ビーム滅菌から得られる。あるいは及び互換的に、滅菌PGAは、少なくとも250kDaの初期質量平均分子量(Mwo)を有する非滅菌PGAのe−ビーム滅菌から得られる。滅菌PGAの質量平均分子量(M)は、130kDaより高く、130〜500kDaの間である。
【0029】
本文脈における滅菌は、非滅菌のPGAを調製し、そして約25〜30kGyの範囲の線量を用いて滅菌することにより達成でき、上記線量は少なくとも25kGyであるべきである。滅菌方法は次のステップ:
1)無菌性の保証水準(SAL)を選択する(10-6);
2)滅菌したサンプルに対する全バイオバーデンを計算する;
3)サンプルはe−ビームを用いて滅菌する;
ことを含む。e−ビーム線量の選択は、ステップ2)の計算を基礎とする。方法はISO規格11137−2(2006)に従う。用語「無菌性の保証水準」は、滅菌後の対象物上における単細胞の生存可能な微生物の発生確率であり、そして用語「バイオバーデン」は、製品の上又は中において生存可能な微生物の個体数である。前記PGAは、粉末として滅菌され、そして得られた製品は無菌環境下で、賦形剤と混合される。あるいは、非滅菌のPGA粉末は、無菌環境下で、賦形剤と混合され、そしてその後、滅菌される。しかし、その他の一般的に公知の滅菌方法も、当業者に知られた通り、非滅菌PGA又は非滅菌PGAを含む混合物を滅菌するために使用することができる。
【0030】
正確な値が与えられても、これらの値も、また、これらの値からの誘導値を含むことは本文脈を通して当然である。
【0031】
PGA(滅菌、及び非滅菌の両方)の質量平均分子量は、本発明において、ポルランのモル質量を標準として用いたサイズ排除クロマトグラフィにより決定されるが、しかし、万能較正など、固有粘度の測定などの他の方法を分析のために使用するとき、質量平均分子量は、他の用語で特定され、そして、当業者に公知の他の値を有することもあり得る。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、精製したエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質及び滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)を含む薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤の驚くべき発見に関し、ここで、滅菌PGAは、250〜500kDaの間の初期質量平均分子量(Mwo)を有する非滅菌のPGAから得られ、時間と共により安定であり、特に、pHが時間と共により安定となる。滅菌PGAの質量平均分子量は、130kDaより大きく、130〜500kDaの間である。滅菌PGAはe−ビーム滅菌から得られてもよい。
【0033】
精製したエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質及び滅菌プロピレングリコールアルギナート(PGA)を含む事前に知られた製剤の製造に採用したPGAは、50〜175mPa・s(2%水溶液、22℃、Brookfield粘度)の粘度を有し、即ち、それは「低粘度」である。これらの製剤は、低温でも時間と共に急速なpHの低下に起因して、安定性の欠如に見舞われる。それ故、製品の急激な酸性化を避けるために、製品は低温で、即ち、2〜8℃の範囲の温度で貯蔵し、輸送しなければならない。更に、前記PGAは、210〜245kDaの間の初期質量平均分子量を有し、それは約230kDaで、又は245kDa以下であることを意味している(表1参照)。
【0034】
高い質量平均分子量を有する滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)を含む製剤は、より安定であり、そして温度に感度の低いpHを有していることを驚くべきことに見出した。これは時間と共に貯蔵安定性の高い製剤に導く。高い質量平均分子量を有するプロピレングリコールアルギナートの例としては、商標名Kelcoloid (登録商標)O, Kelcoloid(登録商標) NF 及び Manucol(登録商標)Ester Mで市販されているものがある。Kelcoloid (登録商標)Oのバッチ番号9B02535は、高い質量平均分子量を有するプロピレングリコールアルギナートの追加の例である。
【0035】
Kelcoloid (登録商標)Oに加えて、商品名:Kelcoloid (登録商標)HVF、Kelcoloid (登録商標)LVF及びKelcoloid (登録商標)Sなどの利用可能な、Kelcoloid (登録商標)の異なったグレードも存在する。これら製品シートに基づくグレードは、主として、水溶液の粘度、エステル化度、及びpHにおいて、互いに識別する。前記PGAのエステル化度は、約70、約80など高い。
【0036】
本発明は、薬局方の全ての要求事項を果たし、同一粘度、同一初期pH及びほぼ同一のエステル化度を有するカルボキシル基を含み、Straumann(登録商標)Emdogain 製剤、及びStraumann(登録商標) Emdogain Plus 製剤に使用され、及び使用されるべき異なったPGAは、時間と共に異なった貯蔵安定性をもたらし得るという、驚くべき発見を基礎としている。この驚くべき発見は、最終生成物のpH安定性がPGAの質量平均分子量に関連する使用PGAの品質に依存することを有している。それ故、PGAの酸触媒による加水分解率と担体PGAの質量平均分子量の間の関係が驚くべきことに判明した。
【0037】
それ故、本発明は、より安定した、より寿命の長い製剤は、前記製剤で使用したPGAの加水分解の程度を注意深く選択することにより得ることができるという驚くべき知見を基礎としている。また、本発明は、精製したエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質、及び以前に使用したものを超える初期質量平均分子量を有するPGAを含む製剤は、より安定性があり、より耐久性が長くなるという知見を基礎としている。
【0038】
それ故、本発明の製剤及び特定品質のPGAの使用により避けることができる一つの問題は、前記製剤に対する貯蔵期間及び耐久性が保証できることである。経済的観点より、製剤に使用するPGAの分子量を特定し、測定することは都合がよく、それにより、製剤包装の長い有効期間を保持できる。
【0039】
高い質量平均分子量(M)、即ち、滅菌したときの質量平均分子量が130lDaより高く、質量平均分子量が130〜500kDa、130〜450kDa、130〜420kDa、200〜450Da又は130〜250kDaの範囲を有するPGAの品質は、EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質を含む製剤において望ましいということが今判明した。前記質量平均分子量は、また、130〜550kDaの範囲内であってもよい。質量平均分子量は、また、130より高く、135、140、150、18又は185kDaを超えるか又はそれに等しくてもよい。
【0040】
pH安定性は、EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質及びPGAを含む製剤の最も重要なパラメータであり、そして生成物の耐久性に影響を与え、そして、また、輸送、即ち、製剤が、温度と時間に関していかに輸送されるかに関する重要な影響を有する。pHは時間と共に低下し、そして低下速度が製剤の耐久性に影響を与え、pHがより速く低下すればするほど、製剤がより速く安定性を低下させる。
【0041】
更にその上、また、高い質量平均分子量を有するPGAを用いることが、EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質を含む製剤において、良好に濃縮した(ゲル化した)挙動を有する前記製剤を提供することが驚くべきことに判明した。また、高い質量平均分子量を有するPGAを用いることは、PGA濃度が少なくてすむので、良好なpH安定性を有する前記製剤を提供するであろう。本発明によると、特許請求範囲の製剤における滅菌PGAの濃度は、6質量/体積%(w/v%)以下である。更に、滅菌PGAの濃度は、3〜5w/v%、3〜4w/v%などの、3〜6w/v%の範囲内である。更に、滅菌PGAの濃度は、3、3.5、4、4.5、5,5.5又は6w/v%などである。
【0042】
従って、本発明は、貯蔵安定性のある、安定なエナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質を含む、薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤に関し、ここで、前記製剤は、3w/v%〜6w/v%範囲など、6w/v%以下の滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)を含み、そして、滅菌PGAは、135、140、150、180又は185kDaを超えるか又はそれに等しい、130〜250kDaの範囲の質量平均分子量(M)を有する。
【0043】
特に、前記薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤は、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘誘導体蛋白質を、少なくとも、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、80又は90%など、少なくとも60〜90%のアメロゲニンを含み、18〜25kDa、20〜24kDa、20〜22kDaの間、及び20kDaから成るグループから選択される質量平均分子量を有する製剤である。
【0044】
本発明に記載の、薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤は、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質を含む、現在入手可能な同様の製剤より、時間と共により安定であり、即ち、それは、少なくとも24ヶ月、少なくとも、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29及び30ヶ月など、少なくとも18ヶ月の期間に亘って、好ましくは、2〜8℃範囲の温度で、pH3.5を超えるpH値を有するが、しかし高い温度も同様に使用できる。本発明の実施態様によると、本発明の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤は安定であり、即ち、それは、少なくとも36ヶ月など、少なくとも34ヶ月の期間に亘ってpH3.5を超えるpH値を有する。
【0045】
本発明に記載の、薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤は、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質を含む、現在入手可能な同様の製剤より、時間と共により安定であり、即ち、それは、少なくとも24ヶ月など、少なくとも18ヶ月に亘ってpH3.5を超えるpH値を有する。本発明の製剤は、好ましくは、2〜8℃の温度範囲で保持される。しかし、本発明の製剤は、高い温度でも同様に保持できる。
【0046】
滅菌PGAは、非滅菌PGAのe−ビーム滅菌より得られる。それ故、一実施態様において、本発明は、特に、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質及び滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)を含む、薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤に関し、ここで、滅菌PGAは、250〜500kDaの範囲の初期質量平均分子量(Mwo)を有する非滅菌PGAのe−ビーム滅菌など、少なくとも250kDaの初期質量平均分子量(Mwo)を有する非滅菌PGAのe−ビーム滅菌から得られる。適用したe−ビーム滅菌線量は、本文脈において、約25〜30kGyの範囲の線量から選択され、前記線量は少なくとも25kDyである。
【0047】
更に、本発明は、初めて、薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤の製造方法を開示し、その結果、それに関し、前記方法は、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質を発育する哺乳類の歯から単離すること、250kDaを超える初期質量平均分子量(MWo)を有する非滅菌のPGAをe−ビーム滅菌すること、そして両成分を混合することで特徴付けられる。
【0048】
結果として、本発明は、また、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質、及び135、140、150、180又は185kDaを超えるか、又は等しいなど、130kDaを超える質量平均分子量を有する滅菌プロピレングリコールアルギナート(PGA)を含む、薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤に関し、ここで前記製剤は、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質を発育期の哺乳類の歯から単離すること、250〜500kDaの範囲の初期質量平均分子量を有する非滅菌PGAをe−ビーム滅菌すること、及び両成分を混合することを含む方法により製造される
【0049】
一つの実施態様において、本発明は、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質及び滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)を含む、薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤を製造するために250〜500kDaの範囲の初期質量平均分子量(Mwo)を有する非滅菌のPGAの使用に関し、ここで、滅菌PGAの質量平均分子量(M)は、135kDaを超える、又はそれに等しい、185kDaを超える、又はそれに等しいなど、130kDaを超える、そしてここで、前記製剤は、少なくとも24ヶ月、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29及び30ヶ月など、少なくとも18ヶ月の期間に亘って、3.5を超えるpH値を有する。製剤は、好ましくは、2〜8℃の温度範囲で保持される。しかし、高い温度もまた同様に使用できる。
【0050】
本発明は、また、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質及び滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)を含む薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤を製造するために、250〜500kDaの範囲の初期質量平均分子量(Mwo)を有する非滅菌のPGAをe−ビーム滅菌して使用することに関し、ここに、滅菌PGAの質量平均分子量(M)は、少なくとも135ka、少なくとも185kDaなど、130kDaより高く、そしてここに、前記製剤は、少なくとも24ヶ月など、少なくとも18ヶ月の期間に亘って3.5を超えるpH値を有する。製剤は、好ましくは、2〜8℃の温度範囲に保持される。しかし、を超える温度も同様に使用できる。
【0051】
本発明に記載の、薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤は、基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質及び滅菌PGAの組合せ全質量を基礎とし、他の賦形剤を含めず、質量/体積比で、93%〜約98%、94%〜約97%。及び95%〜約96%の範囲で、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質を含む。
【0052】
本発明は、また、EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質及びPGAを含む薬学的製剤に関し、ここで、滅菌前のPGAは、250〜500kDaの範囲の質量平均分子量(Mwo)、又は、本明細書で定義した二つ又はそれ以上のEMD蛋白質の組合せを有す。そのような薬学的製剤は、場合により、また、薬学的に許容可能な担体、賦形剤及び/又は希釈剤を含む。
【0053】
一つの実施態様において、本発明に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤は、更に、アニオン性表面安定剤、カチオン性表面安定剤、両性イオン表面安定剤及びイオン性表面安定剤から成るグループから選択できる少なくとも二つの表面安定剤を含む。
【0054】
本発明に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤は、医薬品において使用できる。そのような意図した使用のために、前記製剤は、経口、肺内、直腸、眼内、結腸、非経口、大そう内、膣内、腹腔内、局所、頬内、鼻腔内、及び局所投与から成るグループから選択されるいかなる投与に対しても製剤化できる。その意図した投与ルートによると、製剤は、液体分散剤、経口懸濁剤、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏剤、クリーム剤、放出制御製剤、ファーストメルト製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、カプセル剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、パルス放出製剤、及び混合型即時放出及び制御放出製剤より成るグループから選択される投薬形態に製剤化される。
【0055】
更に、本発明に記載の薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤は、一つ又はそれ以上の薬学的に許容可能な賦形剤(一つ又は複数の)、薬学的に許容可能な担体(一つ又は複数の)、又はそれらの組合せ並びに一つ又はそれ以上の非エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質活性剤を含むことができる。
【0056】
薬学的製剤は、本文脈において、また、化粧品製剤並びに薬剤と化粧品の間のいわゆる灰色領域に属する組成物、即ち、薬用化粧品を包含する。
【0057】
薬学的製剤は、例えば、固体、半固体、又は流体製剤の形体であってもよく、例えば:
−送達デバイス、インプラント;
−粉末、顆粒、ペレット、カプセル、アガロース又はキトサンビーズ、微小粒子、ナノ粒子;
−スプレイ、エアゾール、吸入デバイス;
−ゲル、ヒドロゲル、ペースト、軟膏、クリーム、石鹸、歯磨きペースト;
−溶液、分散液、懸濁液、乳化液、混合物、ローション、マウスウオッシュ、シャンプー、浣腸剤;
−例えば、二つの分離した容器を含むキット;
である。ここで、容器の初めの一つが、場合により他の活性薬物物質(一つ又は複数の)及び/又は薬学的に許容可能な賦形剤、担体及び/又は希釈剤と混合した本発明の製剤を含み、そして、第二の容器は、即製の製剤を得るために、使用前に第一の容器に添加する目的の好適な媒体を含む。
【0058】
本発明の製剤は、外科手術中の使用に対して、例えば、ゲル、フィルム又は乾燥ペレットの形体で、又はすすぎ液として、又はペースト若しくはクリームによる処置としての局部適用(例えば、口腔内で)に対して好適であり得る。
【0059】
製剤は、従来の薬学的実践に基づき製剤してもよく、例えば、“Remington's Pharmaceutical Sciences”及び“Encyclopedia of Pharmaceutical Technology”, edited by Swarbrick, J. & J. C. Boylan, Marcel Dekker, Inc., New York, 1988を参照されたい。
【0060】
本発明の製剤は、例えば、義歯、補綴、インプラント、及び口腔、鼻腔、膣腔などの体腔に適用してもよく、特に、歯科的/歯科学的領域内での適用が想定される。
【0061】
薬学的に又は化粧品的に許容可能な賦形剤、担体及び/又は希釈剤は、製剤が投与される個人に対して実質的に安全である物質である。そのような賦形剤、担体及び/又は希釈剤は、通常は国の衛生当局により指定した要求事項を達成する。例えば、英国薬局方、米国薬局方及びヨーロッパ薬局方などの公式の薬局方は、薬学的に許容される賦形剤に対して基準を設定する。
【0062】
薬学的に許容可能な賦形剤が薬学的製剤の使用に適しているか否かについては、一般的に、どのような種類の投与形体が選択されるかに依存する。以下に、本発明に記載の使用に対して、異なった種類の製剤での使用用の適切な薬学的に許容可能な賦形剤の例を示す。
【0063】
本発明に記載の使用用の組成において、薬学的に許容可能な賦形剤(一つ又は複数の)及びその最適濃度の選択は、一般的に予測できない、そして、最終組成の実験評価を基礎として決定しまければならない。しかし、薬学的製剤の当業者は、例えば、“Remington's Pharmaceutical Sciences”, 18th Edition, Mack Publishing Company, Easton, 1990に指針を見つけることができる。
【0064】
薬学的に許容可能な賦形剤は、溶媒、緩衝剤、防腐剤、保湿剤、キレート化剤、酸化防止剤、安定剤、乳化剤、懸濁剤、ゲル形成剤、軟膏基材、浸透促進剤、香料及び皮膚保護剤を含んでもよい。
【0065】
溶媒の例としては。例えば、水、アルコール、植物油又は魚油(例えば、アーモンド油、ひまし油、カカオ脂、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、オリーブ油、パーム油、ピーナツ油、けし油、なたね油、ゴマ油、大豆油、ひまわり油、及び茶種油などの食用油)、鉱物油、脂肪油、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、流動ポリアルキルシロキサン及びそれらの混合物がある。
【0066】
緩衝剤の例としては、例えば、クエン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、リン酸水素(hydrogenphosphoric acid)、ジエチルアミンなどがある。
【0067】
本発明に記載の製剤の使用に対して好適な防腐剤の例としては、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、エチル、プロピル、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、イソプロピルパラベンなどのパラベン;ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、安息香酸、安息香酸メチル、フェノキシエタノール、ブロノポール、ブロニドックス、MDMヒダントイン、イソプロピニルブチルカルバメート、EDTA,ベンザルコニウムクロリド及びベンジルアルコール、又は防腐剤の混合物がある。
【0068】
保湿剤の例としては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、乳酸、尿素及びそれらに混合物がある。
【0069】
キレート化剤の例としては、ナトリウムEDTA及びクエン酸がある。
【0070】
酸化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、システイン及びその混合物がある。
【0071】
乳化剤の例としては、天然ゴム、例えば、アカシアゴム又はトラガカントゴム;天然リン脂質、例えば、大豆レシチン、ソルビタンモノオレアート誘導体;羊毛脂;羊毛アルコール;ソルビタンエステル;モノグリセリド;脂肪アルコール;脂肪酸エステル(例えば、脂肪酸のトリグリセリド);及びそれらの混合物がある。
【0072】
懸濁剤の例としては、例えば、及びナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、 ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、 微結晶セルロース (例えば、Avicel(登録商標)RC 591 、メチルセルロース) などのセルロース及びセルロース誘導体;カラギーナン;アカシアゴム、アラビアゴム、キサンタンゴム、又はトラガカントゴム、及び、その、例えば、アカシアゴムとの混合物などの天然ゴム;例えば、アルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩及びキトサンなどのセルロースがある。
【0073】
ゲル基剤、粘度上昇剤、又は傷口から浸出液を取り出すことができる成分としては、流動パラフィン、ポリエチレン、脂肪油、コロイド状シリカ又はアルミニウム、亜鉛石鹸、グリセロール、プロピレングリコール、トラガカント、カルボキシビニル高分子、マグネシウム−アルミニウムシリケート、Carbopol(登録商標);例えば、澱粉又は例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及び他のセルロース誘導体などのセルロース誘導体などの親水性高分子;水膨潤性の親水コロイド、カラギーナン、ヒアルロン酸塩(例、場合により塩化ナトリウムを含むヒアルロン酸塩のゲル)及びプロピレングリコールアルギナートを含むアルギナートがある。
【0074】
本発明に記載の製剤において使用するためのゲルの他の例としては、PEG(ポリエチレングリコール)、デキストラン硫酸塩、できストロース、ヘパラン硫酸塩、ジェラチンなどのヒドロゲルを含む。
【0075】
軟膏基剤の例としては、例えば、蜜蝋、パラフィン、セタノール、パルミチン酸セチル、植物油、脂肪酸のソルビタンエステル(Span)、ポリエチレングリコール及び脂肪酸のソルビタンエステルとエチレンオキシド間の縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween)がある。
【0076】
疎水性又は水−乳化軟膏基剤の例としては、パラフィン、植物油、動物油脂、合成グリセリド、ワックス、ラノリン、及び液状ポリアルキルシロキサンがある。
【0077】
親水性の軟膏基剤の例としては、固体マクロゴール(ポリエチレングリコール)がある。
【0078】
軟膏基材のその他の例としては、トリエタノールアミン石鹸、硫酸化脂肪アルコール及びポリソルベートがある。
【0079】
粉末成分の例としては、アルギナート、コラーゲン、ラクトース、傷口に適用したとき、ゲルを形成することができる粉末(液体/傷口浸出液を吸収する)がある。通常、大きい傷口に適用することを意図した粉末は、滅菌し、そして存在する粒子は微粉化しなければならない。
【0080】
他の賦形剤の例としては、カルメロース、ナトリウムカルメロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、キサンタンゴム、ローカストビーンゴム、アカシアゴム、ジェラチン、カルボマ、ビタミンEなどの乳化剤、グリセリルステアラート、セタニルグルコシド、コラーゲン、カラギーナン、ヒアルロン酸塩、アルギン酸塩、及びキトサンなどの高分子である。
【0081】
好適な分散又は湿潤剤は、例えば、天然リン脂質、例えば、レシチン又は大豆レシチン;エチレンオキシドと、例えば、脂肪酸、長鎖脂肪族アルコール又は脂肪酸とヘキシトール又はヘキシトール無水物から誘導した部分エステルとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンステアラート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートなどがある。
【0082】
本発明に記載の薬学的製剤におけるEMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質の濃度は、当業者なら容易に理解する様に、製剤の目的用途に依存して変わる。一般的に、薬学的製剤におけるペプチドの濃度は、0.05〜90mg/mlなど、0.05〜80mg/mlなど、1〜70mg/mlなど、5〜65mg/mlなど、10〜60mg/mlなど、15〜55mg/mlなど、20〜50mg/mlなど、25〜45mg/mlなど、25〜40mg/mlなど、26〜39mg/mlなど、27〜36mg/mlなど、 27、28、29、30、31、32、33、34、35又は36mg/mlなどの、0.01〜100mg/mlの範囲内である。被検体の生体内に適用する量は、一般的に、約1μg/cmなどの、約10ng/cm2〜0.1mg/cm2である。
【0083】
精製したエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)により分離可能な3つの主要蛋白質画分を含む。これらの画分は、画分A、B及びCとそれぞれ命名される。分離した及び/又は精製した蛋白質の一般的な量比は、主蛋白質20、14、及び5kDaのピークにおいて、それぞれ約80/8/12である。
【0084】
上記の通り、画分Cは、一般的に、SDS−PAGE電気泳動により分析した通り、約5kDa、4kDa及び3,5kDaなどの、約3.5kDa〜5kDaの間の分子量を有する。画分Aは、一般的に、SDS−PAGE電気泳動により分析した通り、約20kDaの分子量を有する。画分Bは、一般的に、SDS−PAGE電気泳動により分析した通り、約15kDa、12kDa、10kDa及び6kDaなど、約6kDa〜15kDaの間の分子量を有する。
【0085】
EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質は、アメロゲニン、エナメリン、房状蛋白質、プロテアーゼ及びアルブミンなどの多数の蛋白質より成る。EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質の主要構成成分(高々、約90%)であるアメロゲニンは、選択的スプライシング及び制御したポスト分泌腺処理による単一遺伝子から誘導可能な疎水性蛋白質のグループである。それらは脊椎動物の進化を通して高度に保存され、そして調査した全ての高等脊椎動物中、高レベルの配列相同性を示す(80%)。事実、ブタ及びヒトのアメロゲニン遺伝子転写産物の配列は、基盤の4%が異なるのみである。それ故、エナメル基質蛋白質又はEMD蛋白質は、ブタ起源ではあるが、ヒト体内に遭遇するとき、「同一のもの」と見なされ、そして、アレルギ応答又は他の望ましくない反応を引き起こすことなく、ヒトにおいて歯科的再生を促進できる。
【0086】
本文脈において、精製したエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質は、それ故、少なくとも、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69又は70%などの、少なくとも、60〜70%で、20、21、22、23、24又は25kDa、又は20〜22、20〜24若しくは20〜23kDaなど、20〜25kDaの分子量を有するアメロゲニンを含むエナメル基質蛋白質と定義される。一般的に、精製した及び/又は分離したエナメル基質蛋白質の量比は、画分A,B及びCの主要蛋白質ピーク間で、75〜85/5〜12/5〜15など、又は少なくとも80%、少なくとも8%及び少なくとも5%などの、約80/8/12である。少なくとも、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、80、70〜90、60〜70、70〜80又は80〜90%など、約60〜90%の精製した及び/又は単離したエナメル基質蛋白質は、アメロゲニン及び/又はアメロゲニン誘導体の断片である。
【0087】
本発明において、ローカルアルゴリズムプログラムは、蛋白質の同定を決定するのに最もよく適している。ローカルアルゴリズムプログラム(Smith-Watermanなどの)は、一つの配列における部分配列を、第二の配列における部分配列と比較し、そして最大の総類似性スコアをもたらす部分配列とこれら部分配列の配列比較(alignment)の組合せを見つけた。内部にギャップがあれば、それは不利になる。ローカルアルゴリズムは、単一領域又は共通の結合サイトを有する二つの多領域蛋白質を比較するのに十分機能する。
【0088】
同一性及び類似性を決定する方法は、公的に利用可能なプログラムが制定される。二つの配列間の同一性及び類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラムの方法としは、GCGプログラムパッケージ (Devereux, J et al (1994)) BLASTP, BLASTN, and
FASTA (Altschul, S.F. et al (1990))が挙げられるが、それに限定されない。BLASTXプログラムは、NCBI及び他の出所(BLAST Manual, Altschul, S.F. et al, Altschul, S.F. et al (1990))から、公的に利用可能である。別の好ましい例は、Clustal W (http://www.ebi.ac.uk/clustalw/)である。各々の配列分析のプログラムは、デフォルト・スコアリング・マトリックス及びデフォルト・ギャップ・ペナルティを有する。一般的に、分子生物学者は、使用したソフトウエアプログラムにより確立した初期設定を使用することが期待される。
【0089】
EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質中のアミノ酸は、更に、蛋白質の配列が無傷である限り、化学、等長変換、又はその他いかなる方法によっても改質され得る。EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質中のアミノ酸の改質は、蛋白質の活性、安定性、生体適応性又は臨床実績を向上させ、又は毒性及び蛋白質に対する副作用を低下させ得る。化学的改質の例としては、グリコシル化及びメチル化を含むが、それに限定されない。アミノ酸は、また、アミノ酸のD若しくはL体又はS若しくはR異性体などの全ての異なった立体異性形体であってもよい。本発明のEMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質におけるアミノ酸は、また、その合成の類似体で代替してもよい。合成類似体の活用は、より安定で、そしてより分解し難いEMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質をもたらすかもしれない。非天然のアミノ酸の例としては、α*、及びα−二置換*アミノ酸*、N−アルキルアミノ酸*、乳酸*;トリフルオロチロシン*、p−Clフェニルアラニン*、p−Brフェニルアラニン*、p−Iフェニルアラニン*などの天然アミノ酸のハライド誘導体;L−アリルグリシン*、β−アラニン*、L−a−アミノ酪酸*、L−g−アミノ酪酸*、L−a−アミノイソ酪酸*、L−e−アミノカプロン酸#、7−アミノヘプタン酸*、L−メチオニンスルホン#*、L−ノルロイシン*、L−ノルバリン*、p−ニトロ−L−フェニルアラニン*、L−ヒドロキシプロリン#、L−チオプロリン*;4−メチル−Phe*、ペンタメチル−Phe*などのフェニルアラニンのメチル誘導体;L−Phe(4−amino)#、L−Tyr(メチル)*、L−Phe(4−イソプロピル)*、L−Tic(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸)*、L−ジアミノプロピオン酸#;及びL−Phe(4−ベンジル)*が挙げられる。本明細書において、記号*は、誘導体の疎水性の性質を表示するために活用され、一方、#は、誘導体の親水性の性質を表示するために活用され、#*は、両親媒性の特性を表示する。
【0090】
EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質は、更に、アミノ酸His及び/又はMetを含むN−及び/又はC−末端標識を含む。Metは、以前に説明した通り、金属表面と結合することを容易にする硫黄を含む。Hisは、例えば、Ni及び他の金属に対して強力な親和性を有する。従って、この標識の使用は、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、タンタル、金、外科的な鋼材及びニッケルなどの金属表面に、又は金属酸化物,水酸化物及び/又は水素化物表面などに、蛋白質を結合するための利点を有する。それらが例えば医療用人工器官の生体内鉱物形成及び/又は骨結合を改良するために使用するときなど、EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質が金属表面に取り付けられるとき、これは非常に重要である。C−及び/又はN−末端の標識は、また、当業者には公知の通り、生成した蛋白質の精製方法において有用である。C−及び/又はN−末端の標識の使用は、また、蛋白質を完全に曝露されることを可能し、即ち、標識は蛋白質を表面に結合するために使用され、そして蛋白質の残りは、例えば、原子、分子、細胞及び組織との相互作用に関係ない。EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質の各々の端部において一つの標識を使用することが、蛋白質の製造中に有用であるかもしれず、不完全な蛋白質生成物から関心ある蛋白質を精製中、ペプチドの一端をカラムに取り付けることを可能にし、一方、蛋白質の他端は、対象物の表面に結合するために使用してもよい。結果として、本発明の一つの好ましい実施態様は、EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質を、更に、N−末端及び/又はC−末端ヒスチジン標識を含んでなる製剤に関する。そのような標識は、以前に記載した通り、本発明に記載のEMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質に取り付けられたメチオニン及び/又はヒスチジン残基を含む。好ましい実施態様において、この標識は、3〜5個又は5〜10個の残基など、3個又はそれ以上の残基を含む。標識は、本発明に記載のEMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質を共に有し、EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質の二次構造に間違った方法(negative manner)では影響を与えない安定製剤のために、尚(still)、提供するいかなる量の残基も含むことができる。好ましくは、このヒスチジン標識は、5個のヒスチジン残基より成る。別の好ましい実施態様において、EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質は、好ましくは、5個のメチオニン残基より成るN−末端及び/又はC−末端メチオニン標識を含む。別の好ましい実施態様において、製剤は、そのC−又はN−末端においてメチオニン標識を、そして他端においてヒスチジン標識を含むEMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質を含む。
【0091】
一つの実施態様において、EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質は、天然源から単離する代わりに、例えば、合成的製造又は生合成により製造される。EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質又はその断片は、化学合成による合成的製造などのペプチド製造のためのいかなる公知の方法によっても製造してもよい。合成的製造は、また、製造した蛋白質又はその断片の安定性を改良することを可能にする。当業者は、アミノ酸配列の合成のために利用可能な方法を知っている。
【0092】
好ましくは、生物学的製造は、EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質又はその断片を製造するための方法として使用してもよい。生物学的製造は、細胞培養又は、例えば、バクテリア細胞などの微生物細胞中での培養など生物学的システムにおけるアミノ酸配列の製造を意味する。生物学的製造のために、特定アミノ酸配列をエンコードする対応核酸配列を構成することは必要である。当業者は、合成すべき特定のアミノ酸配列が決定されると、そのような核酸配列をいかにして構築するか、そしてEMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質又はその断片をいかにして製造し、そしてそれを製造するために使用されるシステムから、いかにしてそれを精製するかを容易に知るであろう(参照:例えば、Svensson J, Andersson C, Reseland JE, Lyngstadaas SP, Bulow L:Histidine tag fusion increase expression levels of active recombinant Amelogenin in Escherichia coli.(Protein Expr Purif, 48; 134-41 (2006))。
【0093】
本文脈における医療用人工器官は、脊椎動物、特に、哺乳類、特にヒトの体内に移植することを意図するいかなるデバイスにも関する。本文脈における医療用人工器官は、生体組織を代替するために及び/又は体内のいかなる機能も回復ために使用し得る。そのような器官の非限定の例としては、大腿骨股関節;大腿骨頭;寛骨臼カップ;幹部、楔状部、関節挿入部を含む肘;大腿骨及び脛骨成分、幹部、楔状部、関節挿入部又は膝蓋骨の英語" 膝蓋骨成分を含む膝;幹部及び頭部を含む肩部;手首;足首;手;指;足指;脊椎;椎間板;人工関節;歯科インプラント;耳小骨の英語" 耳小骨インプラント;きぬた骨、つち骨、あぶみ骨、きぬた骨−あぶみ骨、つち骨−きぬた骨、つち骨−きぬた骨−あぶみ骨を含む人工中耳;人工内耳;爪、ねじ、ステープル及びプレートなどの整形外科固定デバイス;心臓弁;ペースメーカ;カテーテル;脈管;空間充填インプラント;補聴器を支持するためのインプラント;外部固定用のインプラント;及び、また、子宮内器具(IUDs);及び蝸牛内又は頭蓋内の電子デバイスなどのバイオ電子デバイスなどの体の骨格を代替し、体の機能を回復する医療用のデバイスである。
【0094】
本発明の製剤は、また、粒子を含んでもよく、粒子の例としては、直径で100〜500μの範囲内の孔サイズを有する多孔性粒子である。
【0095】
投与:
本発明に記載の、薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤は、硬組織の再生、組織鉱化、骨成長及び/又は骨再成長、象牙質の再生、セメント質形成を促進し及び/又は誘導するため、及び/又は生鉱化組織の部分間を結合、他の一部の生組織上の結合サイトに一部の生鉱化組織を結合させるため;硬組織間の結合を支持するため;及び/又は処置及び/又は外傷から続く鉱化した創腔及び/又は組織欠損を補うため、に使用できる。
【0096】
本発明に記載の、薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤は、炎症及び/又は感染症の処置及び/又は予防のため、及び/又は全身性炎症反応症候群(SIRS)の処置のため、軟組織の再生を促進し、及び/又は、誘導することにおいて、あるいは、及び/又は更に使用できる。
【0097】
結果として、本発明は、更に、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質を含む、薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤の使用に関し、ここで、前記製剤は、6質量%(wt)以下の滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)を含み、そしてここで、前記滅菌PGAは、薬学的組成物を製造するために;硬組織の再生、組織鉱化、骨成長及び/又は骨再成長、象牙質の再生、セメント質形成を促進し、及び/又は誘導するため、及び/又は生鉱化組織の部分間を結合するために;一部の生鉱化組織を他の一部の生組織上の結合サイトに結合させるために;硬組織間の結合を支持するために;及び/又は処置及び/又は外傷から続く鉱化した創腔及び/又は組織欠損を補うために;並びに軟組織の再生を促進し、及び/又は、誘導するために;及び/又は炎症及び/又は感染症の処置及び/又は予防のために、及び/又はSIRSの処置のために、135、140、150、180又は185kDa以上又はそれと同等の、130kDaを超える質量平均分子量(M)を有する。
【0098】
また、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質を含むを含む薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤の投与を含む方法は、硬組織の再生、組織鉱化、骨成長及び/又は骨再成長、象牙質の再生、セメント質の形成、及び/又は生鉱化組織の部分間を結合する、他の一部の生組織上の結合サイトに生鉱化組織を結合させるために;硬組織間の結合を支持するために;及び/又は、処置及び/又は外傷から続く鉱化した創腔及び/又は組織欠損を補うために;並びに、軟組織の再生を促進し、及び/又は、誘導するために;及び/又は炎症及び/又は感染症の処置及び/又は予防のため、及び/又はSIRSの処置のために想定され、ここで前記製剤は、6質量/体積%(w/v%)以下の滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)を含み、そしてここで、前記滅菌PGAは、その必要な患者に対して、135、140、150、180又は185kDaより大きく又はそれと同等など、130kDaを超える質量平均分子量(M)を有する。
【0099】
エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質、及び滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)を含む薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤、ここで滅菌PGAの質量平均分子量(M)は、135、140、150、180又は185kDaを超える又はそれと等しいなど、130kDaを超える質量平均分子量(M)であり、それを必要とする被験者に、ペプチドが、投与されるべき組織に依存して、いかなる好適なルートにより、例えば、局所(経皮)、経口、舌下、鼻腔、耳内、直腸内又は膣内投与により、又は歯根、歯根カナル又は骨片などの体腔へ投与され得る。更にその上、本発明の製剤は、外科手術と連結して、例えば、体内における骨折と連結して、投与することに適用してもよい。本発明の製剤は、また、ゲルの適用により局部注射を経由して、又は医療用人工器官、例えば、移植組織、骨格、又はバイオガラス素材などを経由して投与され得る。本発明の製剤をシャンプー、歯科充填材料におけるアルギナート又はキトサン(徐放出用)ビーズ、歯磨きを経由して投与することも、また、可能である。上記で定義した高い質量平均分子量を有するEMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質及びPGAを含む本発明の薬学的製剤を、例えば、切れ目、歯周損壊部、抜歯小孔内へ、又はサイナスリフト手法で局部的に投与する場合、蛋白質は、骨の治療を改良し、及び/又は、加速し得る。
【0100】
製剤は、摂食により、鼻腔又は肺により、吸入により、又は血液内、脊髄液内、関節内又は腹腔内への注射により、徐放性製剤としてカプセル化され、そして経口的に送達される。
【0101】
別の態様において、本発明は、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質及び滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)を含む薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤を使用することに関し、ここで滅菌PGAの質量平均分子量(M)は、バイオ鉱物化の誘導のための薬剤の調製をするため、135、140、150、180又は185kDaより大きく又はそれと同等など、130kDaを超える質量平均分子量(M)である。特に、本発明は、また、骨の形成及び/又は再生のための薬剤の調製のために、EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質及び上記で定義した通りの高い質量平均分子量を有するPGAを含む薬学的製剤の使用に関する。特別の実施態様において、本発明は、また、軟骨、セメント質及び/又は歯の組織の形成及び/又は再生のための薬剤の調製のために、EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質及び上記で定義した通りの高い質量平均分子量を有するPGAを含む薬学的製剤の使用に関する。EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質及び上記で定義した通りの高い質量平均分子量を有するPGAを含む本発明の薬学的製剤は、骨粗鬆症、骨折、歯周炎、外傷、骨メタボリックシンドローム、歯髄炎、根尖病変などの処置のための薬剤の調製のために使用され得る。
【0102】
エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質及び滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)を含む薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤で、ここで滅菌PGAの質量平均分子量(M)は、135、140、150、180又は185kDaより大きく又はそれと同等など、130kDaを超える質量平均分子量(M)であるが、骨折の治療のための薬剤を調製のために使用され得る。
【0103】
本発明の一つの態様は、また、バイオ鉱物化の誘導のために使用するための、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質及び滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)を含む薬学的、歯科的及び/又は化粧品製剤に関し、ここで滅菌PGAの質量平均分子量(M)は、135、140、150、180又は185kDaより大きく又はそれと同等など、130kDaを超える質量平均分子量(M)である。例えば、EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質及び上記で定義した通り、高い質量平均分子量を有するPGAを含む本発明の薬学的製剤は、軟骨、セメント質及び/又は歯学組織の形成及び/又は再生のための薬剤の調製に使用し得る。
【0104】
別の態様において、本発明は、骨の形成及び/又は再生のために使用するための、EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質及び上記で定義した通り高い質量平均分子量を有するPGAを含む本発明の薬学的製剤に関する。
【0105】
尚、別の態様において、本発明は、骨折の治療のために使用するための、EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質及び上記で定義した通り高い質量平均分子量を有するPGAを含む本発明の薬学的製剤に関する。
【0106】
EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質は、また、鉱物沈殿及び/又はバイオ鉱物化及び/又はBMPsなどの骨生成を含む天然蛋白質の組合せで使用し得る。また、バイオ鉱物化を含む鉱物沈殿の誘導及び/又は刺激のために二つ又はそれ以上の組合せを使用することも可能である。
【0107】
EMD蛋白質及び/又はエナメル基質蛋白質及び上記で定義した通り高い質量平均分子量を有するPGAを含む本発明の薬学的製剤は、また、バイオ鉱物化構造の融合のために、又はバイオ鉱物化構造と別の材料との融合のために使用し得る。そのような材料の例としては、チタン及び鋼材、バイオガラス、リン酸カルシウム、アパタイトなどの移植可能なバイオ材料を含む。他の例としては、カラム材料、フィルタ材料などが挙げられる。
【0108】
本発明に記載の補足の製剤は、カルボキシメチルセルロース及びPGAなどのセルロース誘導体、アルギナートを、更に、含むことができる製剤である。
【0109】
本発明は、また、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質から成る製剤に関し、ここで、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69又は70%の蛋白質など、少なくとも60〜70%の蛋白質は、20kDaより高くなど、16、17、18又は19kDaなど、16〜40kDaの間の分子量、及び3、4、5又は6w/v%など、3〜6質量/体積(w/v%)程度の、135、140、150、180又は185kDaを超える又はそれに等しいなど、130kDaを超える質量平均分子量を有する滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)を有する。本発明は、また、本質的に、エナメル基質蛋白質及び/又はエナメル基質誘導体(EMD)蛋白質から成る製剤に関し、ここで、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69又は70%など、少なくとも60〜70%の蛋白質は、20kDaなど、16、17、18、19又は20kDaなど、16〜40kDa間の分子量を有し、そして、3、4、5又は6w/v%など、3〜6質量/体積%(w/v%)程度で、135、140、150、180又は185kDaを超える又はそれに等しいなど、130kDaを超える質量平均分子量を有する滅菌したプロピレングリコールアルギナート(PGA)を有する。
【0110】
〔実験部分〕
〔実施例1〕
質量平均分子量(M):
質量平均分子量は、GPC(Agilent社製)を用いたAM−S01分析法に基づいて決定し、そしてパラメータは下記の通りであった:
溶出液:リン酸塩緩衝液:pH7,0;
プレカラム:PSS Suprema:10μm:100Å:8×50mm;
PSS Suprema:10μm:100Å:8×300mm;
PSS Suprema:10μm:1000Å:8×300mm;
PSS Suprema:10μm:100Å:8×300mm;
ポンプ:Agilent1100;
流速:1.0ml/min;
自動サンプラ:Agilent1100、5ομl:注入体積付き;
サンプル濃度:2.0、3.0g/L;
温度:23℃;
検出器:Aglient1100R1;
計算:PSS WinGPC Unity 7.20版;
計算はポルランのモル質量基準を用いた従来の検量線を基礎とした。
【0111】
2002〜2009年における非滅菌のPGA及びKelcoloid(登録商標)Oの質量平均分子量を表1で開示した。
【表1】
【0112】
この表は、以前に使用したPGAは、210〜245kDa間の質量平均分子量を有することを示し、約230kDaで、又は245kDa以下であることを意味する。更にその上、この表は、MとMz間の差異が以前に使用したPGAより、Kelcoloid(登録商標)O-9B02535の方がはるかに高いことを示している。
【0113】
〔実施例2〕
Emdogain製剤で使用した滅菌PGAは、ISO−1137−2(2006)基準に基づき、非滅菌PGAのe−ビーム滅菌から得られた。滅菌法は、次のステップを含む:
1.無菌性保証水準(SAL)10-6(百万分の一)が、PGAの一滅菌ユニットに適用される(100gPGA/ポーチ);
2.全バイオバーデンは、この滅菌ユニット(100gPGA/ポーチ) に対して計算される:全バイオバーデン=100g*CFU/g −→ この滅菌ユニットが、例えば、50gPGAのみのパッキングを変更する場合、全バイオバーデンは減少する;
3.従って、この全バイオバーデンVDmax25が適用され −→最小25kGy。
【0114】
PGAは、e−ビーム照射のコースでは架橋されない。e−ビーム照射により発生する主要な方法は、鎖の分断である。それ故、この場合、e−ビーム線量(R)の変動による質量平均分子量(M)の変化は、Charlesby式(式1)により簡略化できる。PGAの初期質量平均分子量(Mwo)、適用したe−ビーム線量(R)、及び放射線分解収率(G)が、基本的に滅菌PGAの分子量(M)を決定する(参照、例えば、図8)。
【0115】
【数1】
【0116】
は、化学的に同一のPGAに対しては一定である。Manucol(GsM)Ester B及びKelcoloid(登録商標)O(GsK)PGAの計算値は、偏差範囲内でほとんど同一であった:
【数2】
【0117】
e−ビーム線量の検出誤差範囲は、2kGyであるので、送達した滅菌e−ビーム線量は、R=26.4〜28.4kGyの狭い範囲内で検出され(良好な安全マージン(security margin)を提供し)、初期のMwoは、主として滅菌PGAのMを決定する。Mwo=滅菌PGAのM。これは、初期分子量が高い理由である。これは、良好な濃厚特性を有する推進力である。
(T.Q Nguyen, H.H Kausch, J. App. Polym. Sci. 29(1984), p.455) ;
(A. Schiltz, et al, Revue Phys. Appl. 19(1984)439 (439-444))
【0118】
〔実施例3〕
PGAの分解は、C.J. Gray. A. J. Griffiths, D. L. Stevenson, J. F. Kennedy; Studies on the Chemical Stability of Propylene Glycol alginates Ester, Carbohydrate Polymers, 1990, 12, 419-430により研究された。彼らは二つのタイプの分解を同定した:
1)カルボン酸とプロピレングリコールを提供するエステル結合の加水分解(pHの変化);
2)粘度の低下を伴う多糖類骨格におけるグリコシド結合の分解。
【0119】
酸性条件下で、PGAのエステル基は、加水分解に対して安定であり、そして多糖類骨格の加水分解のみ起こることを彼らは見つけた。しかし、この声明(statement)は、中庸な酸性条件下(〜pH3〜5)では証明されていない。高分子骨格の加水分解は、エステルの加水分解並びにpH及び粘度低下が同時に起こる。
【0120】
エステルの全加水分解速度は、酸触媒による加水分解速度:kA[エステル][H+]、中性部分の分解速度:k'H20[エステル]、及び塩基触媒による分解速度:kB[エステル][OH-]の個々の分解速度の合計として書くことができる。
【数3】
ここで、kA;k'H20;kBは、反応速度定数であり、[エステル]、[H+]、[OH-]は、それぞれ、エステル、プロトン(水素イオン)及びヒドロキシルイオン濃度である。
【0121】
酸性条件下で、中性及び塩基性触媒による加水分解は、酸触媒反応と比較して無視でき、従って、式1は:
【数4】
に簡略化できる。
【0122】
カルボン酸の生成とエステルの消費の間に、偶奇性が存在する(図3)。
【0123】
結果として、エステルの消費速度は、カルボン酸の生成と同等であり、そして、式2は:
【数5】
に転換される。
【0124】
酸生成の全速度は、d[H+]/dtに比例すると考えられ、
【数6】
を与える。
【0125】
EmdogainにおけるPGAの加水分解は、エステルの加水分解と類似する。pH5とpH3の間の[H+]濃度は、二桁変化する。初期pH(〜pH5)からpHが3.0に低下するときまでの期間におけるエステル濃度の変化は、[H+]の上昇より、はるかに小さい範囲に広がり、その後、[H+]の変化は、エステル濃度の変化より全体の反応速度に大きい影響を表した。簡略化のために、[エステル]は、反応速度定数kAに関与し、k'の擬一次反応速度定数を提供する。
【数7】
【0126】
初期[H+]が、[H0+]であると想定して、式5の積分式は:
【数8】
を与え、
ここで、pH=−log[H+]及びln[H+]=−2.3025*pHであり、式7は:
【数9】
と書くことができる。
【0127】
ここで、k”=2.3025*'は、Emdogain中の滅菌PGA加水分解の擬一次反応速度定数であり、tはEmdogainの貯蔵時間であり、pHは、時間=tにおける実際のpHあり、そしてpH0は初期pHである。
【0128】
式8は、pHと貯蔵時間(t)の間に線形の相関関係が存在し、そして、勾配が擬一次反応速度定数(k”)であることを示す。実際、pHが規定の下限値(pH3.5)に到達するかぎり、この線形性は想定できる(図4)。
【0129】
pH3.5を超えると、酸触媒による脱エステル化反応とエステル化反応の平衡挙動は考慮すべきである。平衡pH(約pH2.7〜2.8)に近づくと、pH対時間曲線は平坦になる(図5)。製品の特定許容限界値は、pH3.5であるので、式8は、特定pH値内で、pH変化の全速度を説明するために使用できる。
【0130】
滅菌PGA濃度の反応速度定数に及ぼす影響
モデルを擬一次反応速度式に簡略化するために(式4から式5へ)、エステル濃度[エステル]は、反応速度定数kAと合体させる。Emdogainの安定性の手順において(Biora STP記録)、エステル濃度には従わない。式4が式5に転換したときの同様の考察に従って、エステル濃度の変化は、桁が変わるほど広がっていかないので、それは滅菌PGA濃度[滅菌PGA]により代替できる。
【数10】
ここで、k'A=2.3025*A酸性PGA加水分解速度定数であり、そして、Constは、滅菌なしのPGA濃度のエステル化速度定数である。後者は、対応するカルボン酸とアルコールのみが溶液に存在するときの酸触媒によるエステル化反応を意味する。
【0131】
k”と[滅菌PGA]間の線形回帰は:
【数11】
であり、式9及び14から、pHが初期pH0から3.5に低下するまでの時間のおおまかな推測が行える(pHが、EmadogaintpH3.5の寿命又は耐久性を決定)。
【0132】
【数12】
【0133】
式14から計算した24ヶ月間の耐久性のために適用される滅菌PGA濃度[滅菌PGA]は、高温に製品を曝露することなく、24ヶ月間の規定の要求性能内でpHを維持する臨界濃度を証明した。高温が加水分解プロセスを加速した。
【0134】
温度の反応速度定数に及ぼす影響:
pH低下に及ぼす温度の影響は明らかである。Straumann(登録商標)Emdogainの昇温への曝露は、pH低下の全速度を著しく加速させる。反応速度定数(k”)は、Arrhenius式に基づき、温度(T)により変化し:
【数13】
【0135】
対数形式で書くと、
【数14】
であり、ここで:
R=8.314472J/(K*mol)−一般ガス定数;
Aは頻度因子であり;
aは反応の活性化エネルギ[J/mol]であり;
TはKelvin温度である。
【0136】
式10に基づき:
【数15】
の間で直線関係があり、
直線回帰線から、logA とEa/R定数を決定することができる。温度依存性を表2にまとめた。
【0137】
【表2】
【0138】
温度及びPGA濃度の温度依存性及び酸性化を加速する曝露温度を含めて、6質量/体積%(w/v)%)が、EMD−PGAシステムのpH安定性のための閾値として決定した。適用可能性のために、臨床テストは製剤粘度の要求値を、3.0〜4.0 Pa*s(22℃、19:1/s)と証明した。この目的のために、PGAの質量平均分子量の閾値は、GPCのポルラン検量基準により測定して、130kDaより高くあるべきである。
【0139】
〔実施例4〕
EMD製剤の貯蔵安定性:
サンプル調整:
EMD溶液
濃度33mg/mlを有するEMD溶液は、正規のEMDバルク溶液製造に基づき正規の製造ラインで調製した。溶液は滅菌濾過の後、製造ラインから取り出した。EMD溶液は酢酸及び水を含み、そして溶液のpHは4.9〜5の間であった。
PGA:
Kelcoloid(登録商標)Oは、FMC Biopolymer社から購入した。分子量は既に上記の通り分析した。得られたM値は上記の表1に示した。PGAは、e−ビーム滅菌で滅菌した。使用装置:Sterigenics:San Diego;送達したe−ビーム線量:25〜30kGy。得られた滅菌PGAは、M=184kDa±12kDaを有していた。
Emdoqainサンプルの調製
得られた滅菌PGA(30.0g)は、層流の空気層(LAF)で、常温(約20℃)の条件下で、EMDバルク溶液(500mL)に徐々に加えた。溶液を撹拌し、撹拌は24時間継続し、その後、停止した。Emdoqain製剤サンプルは、LAFの条件下で滅菌サンプル管(50mL)内に移送した。一サンプルを引出し、pH及び粘度を測定した:
粘度=3.0Pa・s(22℃、18.9:1/s)(Anton Paar MRC Physica−300レオメータ、構成:CP-25-2 --> シリアル番号:12513):
pH=4.70(Metrohm780:pH meter:Entrich pH プローブ番号:6.00226.100装備付き)。
得られたサンプルは、調製後、速やかに冷蔵庫に置いた。冷蔵庫の温度は、+4℃に調節した。温度はサンプルの近辺で制御した。温度のずれは、±2.0℃を超えなかった。
サンプルのpHは、14ヶ月間測定した(図9参照)。
対照サンプル
pHの安定性データは、Emdogain安定性プログラムから誘導した。データは、e−ビーム滅菌PGA:M=117kDaを用いて調製したEmdogainサンプルから選択した。
対照サンプルの名称は、E7254であり:
初期値:粘度:3.0Pa・s(22℃、18.9:1/s)及びpH4.5;
粗製PGA:M=219kDa;
滅菌 (e−ビーム処理)PGA:M=17kDa;
対照サンプルのpHは24ヶ月間測定した(図9参照)。
【0140】
参考文献:
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図8
図9
図10