(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671623
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】フローサイトメータのデータセットを収集するシステム及びユーザインターフェース
(51)【国際特許分類】
G01N 15/14 20060101AFI20150129BHJP
G01J 3/18 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
G01N15/14 G
G01N15/14 P
G01J3/18
【請求項の数】24
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-535152(P2013-535152)
(86)(22)【出願日】2011年10月25日
(65)【公表番号】特表2013-541717(P2013-541717A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】US2011057747
(87)【国際公開番号】WO2012061155
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2013年6月4日
(31)【優先権主張番号】61/406,255
(32)【優先日】2010年10月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/406,251
(32)【優先日】2010年10月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/406,259
(32)【優先日】2010年10月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513086430
【氏名又は名称】アキュリ サイトメーターズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ACCURI CYTOMETERS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】リッチ,コリン,エイ.
【審査官】
▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0215297(US,A1)
【文献】
特開平04−065654(JP,A)
【文献】
特開2008−197043(JP,A)
【文献】
特開2009−276361(JP,A)
【文献】
特開2009−244080(JP,A)
【文献】
特表2009−505101(JP,A)
【文献】
特開2010−017188(JP,A)
【文献】
特開平10−274562(JP,A)
【文献】
特開2003−161655(JP,A)
【文献】
特開2009−282049(JP,A)
【文献】
特開2000−199855(JP,A)
【文献】
特開2009−270990(JP,A)
【文献】
実開平04−029860(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0219873(US,A1)
【文献】
特開平05−256760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00−15/14
G01J 3/18
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Science Direct
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローサイトメータのフローサイトメータサンプル用データセットを収集するシステムにおいて:
複数の検出器を具え、前記フローサイトメータからの全スペクトルレンジの入力信号を集合的に検出する検出器アレイであって、各検出器が前記全スペクトルレンジのうちのサブセットスペクトルレンジを検出する、検出器アレイと;
ユーザが、前記検出器アレイの互いに物理的に連続していない検出器をグループ分けすることによって、バーチャル検出器チャネルのセットを形成できるユーザインターフェースであって、各バーチャル検出器チャネルが、検出器グループに対応し、対応する検出器グループの検出器のサブセットスペクトルレンジの和を含むバーチャル検出器チャネル範囲を有する、インターフェースと;
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記複数の検出器が第1のバーチャル検出器チャネルのセットに対応する第1のコンフィギュレーションと、第2のバーチャル検出器チャネルのセットに対応する第2のコンフィギュレーションに分類されており、前記第1及び第2のコンフィギュレーションが異なることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記検出器アレイが、最も鮮明な対象物と最も明るい対象物の間の比が少なくとも1:1,000,000である広レンジの入力信号を集合的に検出することを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記検出器アレイがリニアアレイ検出器であることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記リニアアレイ検出器が複数の光ダイオードを具えることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記リニアアレイ検出器が複数の光トランジスタを具えることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記複数の検出器のサブセットスペクトルレンジが連続的であることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記複数の検出器のサブセットスペクトルレンジがオーバーラップしていることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記検出器アレイが、約400nm乃至900nmの入力信号の全スペクトルレンジを検出することを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記複数の検出器のサブセットスペクトルレンジがほぼ同じスパンであることを特徴とするシステム。
【請求項11】
フローサイトメータ中のフローサイトメータサンプルについてのデータセットを収集する方法において:
前記フローサイトメータからの入力信号の全スペクトルレンジを集合的に検出する複数の検出器を有する検出器アレイであって、各検出器が前記全スペクトルレンジのサブセットスペクトルレンジを検出する検出器アレイを提供するステップと;
前記検出器アレイの互いに物理的に連続していない検出器をグループ分けすることをによってバーチャル検出器チャネルのセットを形成するステップであって、各バーチャル検出器チャネルが検出器グループに対応し、対応する検出器グループの検出器のサブセットスペクトルレンジの和を含むバーチャル検出器チャネルレンジを有する、ステップと;
前記検出器アレイで前記フローサイトメータサンプルからの入力信号の全スペクトルレンジを収集するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記入力信号を収集するステップが、最も鮮明な対象物と最も明るい対象物の比が少なくとも1:1,000,000である広レンジの入力信号を収集するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、バーチャル検出器チャネルのセットを形成するステップが、検出器グループのユーザの選択を受信するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法において、バーチャル検出器チャネルのセットを形成するステップが、バーチャル検出器チャネルレンジのユーザの選択を受信するステップと、検出器をバーチャル検出器チャネルレンジの選択に対応する検出器グループにグループ分けするステップとを、具えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法において、バーチャル検出器チャネルのセットを形成するステップが少なくとも一のコンフィギュレーションパラメータを受信するステップと、当該少なくとも一のコンフィギュレーションパラメータに基づいて、検出器を最適にグループ分けするステップと、を具えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記コンフィギュレーションパラメータに基づいて検出器を最適にグループ分けするステップが、バーチャル検出器チャネル間のスピルオーバを最小に抑えるステップと、バーチャル検出器チャネルの感度を最大にするステップとうちの少なくとも一つを具えることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法において、バーチャル検出器チャネルのセットを形成するステップが、蛍光色素セットのユーザ選択を受信するステップと、選択した蛍光色素の各々についてバーチャル検出器チャネルを割り当てるステップと、を具えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法において、バーチャル検出器チャネルのセットを形成するステップが、バーチャル検出器チャネルのセッティングを特定するコンフィギュレーションファイルを受信するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項11に記載の方法において、バーチャル検出器チャネルのセットを形成するステップが、入力信号を収集する前に実行されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項11に記載の方法において、バーチャル検出器チャネルのセットを形成するステップが、入力信号を収集するステップの後に実行されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法が更に、前記収集した入力信号を保存するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記回収した入力信号を保存するステップが、前記検出器アレイ中の個々の検出器によって個別に収集された入力信号を保存するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法において、前記収集した信号を保存するステップが、個々のバーチャル検出器チャネルによって収集された入力信号を保存するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項11に記載の方法が更に、第1のバーチャル検出器チャネルのセットに対応する第1のコンフィギュレーションと、第2のバーチャル検出器チャネルのセットに対応する第2のコンフィギュレーションとに、ユーザが検出器をグループ分けするステップを具え、前記第1及び第2のコンフィギュレーションが異なることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は、2010年10月25日に出願された米国暫定特許出願第61/406,251号「フローサイトメータ用検出システム」、2010年10月25日に出願された第61/406,255号「フローサイトメータ用光学及び検出システム」、2010年10月25日に出願された第61/406,259号「フローサイトメータの検出システム用ユーザインターフェース」の利益を請求する。これらの各出願は、ここに引用により全体が組み込まれている。
【0002】
技術分野
本発明は、一般的にフローサイトメータの分野に関するものであり、特に、フローサイトメータの分野における新規かつ有用なシステム及びユーザインターフェースに関する。
【背景技術】
【0003】
フローサイトメータでは、サンプル流体の流れに光が向けられ、光がサンプル中の粒子に作用して、通常、粒子を励起させ、この励起した粒子が発光する。この発光を検出することにより、研究及び臨床目的で、計数、物理的構造、化学構造、及びその他の有益な情報といった粒子及びサンプル流体を特徴づけるための分析データが提供される。したがって、この検出システムは、フローサイトメータの重要な構成要素であり、収集したデータの品質(例えば、感度、帯域)におけるファクタのみでなく、完全なフローサイトメータシステムの全体構造とコストにおけるファクタでもある。従来のフローサイトメータでは、この検出システムが、比較的感度が高く帯域が高い光電子倍増管またはPMTsを具えており、比較的ノイズの小さいデータを作成している。しかしながら、PMTsには、比較的高価であり、温度ドリフトがあるといった、いくつかの不利益がある。
【0004】
更に、通常のフローサイトメータ検出器は、収集レンジが制限されている。簡単に言うと、通常のフローサイトメータの収集レンジは、フローサイトメータの分析対象物の信号レンジより狭い。このため、通常の検出器には、ゲインレベル及び/又は増幅器が設けられている。検出器は通常、対象物のサイズ(光散乱)又は輝度(蛍光)に関連するデータを収集する。いずれのタイプのデータも、多くの場合サンプル中で検出した各対象物の上で収集される。小さい、あるいはぼやけた対象物から信号を収集するために、ゲインレベルを上げる。しかしながら、高いゲインレベルでは、大きなあるいは明るい対象物からの信号は、収集するには強すぎる。大きなあるいは明るい対象物からの信号を収集するには、ゲインレベルを下げる必要がある。しかしながら、ゲインレベルが低いと、小さいあるいはぼやけた対象物からの信号は、収集するには弱すぎることになる。ゲインレベルとその他のパラメータの設定は、複雑で難しい。通常のフローサイトメータシステムのユーザインターフェースの制限には:(1)ゲインを正しくセットするゲイン設定手順にユーザの時間が費やされる;(2)正しいゲイン設定を決めるためにかなり多くのサンプルが必要である;(3)入力信号の少なくとも一部が、ユーザが設定した「アクティブ動的収集レンジ」外であり、収集されないため、有益なデータに潜在的なロスが生じる;及び(4)追加のサンプルを流すことなくユーザが設定したゲイン/スケール設定の変更を守り、「取り消す」ことができない;といういくつかの欠点がある。
【0005】
フローサイトメータの検出器の使用も、複雑な光学システムがあるため複雑である。従来の光学システムを使用するには、ビームスプリッタ及びフィルタを非常に特別な順序で配列して、特定の波長の光を適当な検出器に正しく導かなくてはならない。様々な蛍光色素を用いた実験又は試験など、波長が異なる検出構造が必要な場合は光学システムの再配置が常に必要である。ユーザがこの再配置をうまく行わないと、検出システムが正確に機能しない。この制限により、フィルタの交換可能性や、検出パラメータの変更が容易でなくなる。更に、様々な光学部品のアラインメントが検出システムの操作性に影響するため、光学システムの特別な配置により、フローサイトメータの信頼性と耐久性が下がる。
【0006】
したがって、フローサイトメータの分野では、新規かつ有益なシステムとユーザインターフェースを作る必要がある。本発明は、フローサイトメータに設定したデータを収集する新規かつ有益なシステムとユーザインターフェースを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、好ましい実施例の光学システムを示す図である。
【
図2】
図2は、好ましい実施例の検出システム用信号処理回路を示す図である。
【
図3】
図3は、好ましい実施例の検出システムとバーチャル検出チャネルを示す図である。
【
図4】
図4A及び4Bは、それぞれ、第1及び第2の好ましい実施例のユーザインターフェースで操作できるデータセット収集方法のフローチャートである。
【
図5】
図5A乃至5Eは、第1の好ましい実施例のユーザインターフェースで操作できるデータセット収集方法の変形例を示す図である。
【
図6】
図6A乃至6Fは、第2の好ましい実施例のユーザインターフェースで操作できるデータセット収集方法の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の好適な実施例についての以下の説明は、発明をこれらの好適な実施例に限定しようとするものではなく、むしろ当業者が本発明を製造及び使用できるようにするものである。
【0009】
好ましい実施例では、フローサイトメータでデータセットを収集するシステムは、インターロゲーションゾーンのあるフローチャネルと、このインターロゲーションゾーンに特定の方向から作用する光源を具える、フローチャネルを有するフローサイトメータ102内の光学検出システムを具える。
図1に示すように、光学システム100は、好ましくは、インターロゲーションゾーンからの光を受けてこれを平行にする平行エレメントと、この平行光を光の連続波長スペクトルに分ける光分散エレメントと、光スペクトルを隣接する検出ポイントアレイに集光する集束レンズを具える、レンズサブシステムを具える。フローサイトメータ用の検出システム200は、少なくとも一の検出ポイントで集光された光を検出して、検出した光に応じた信号を生成する半導体検出デバイスと;この信号を増幅して、高ゲイン−帯域積を特徴とする低ノイズ増幅回路と;増幅した信号から電子ノイズを下げるノイズフィルタと;を具える。検出システム200は好ましくは、フローサイトメータからの全スペクトルレンジ入力信号をまとめて検出する検出器アレイにこのような検出器を複数具えており、各検出器が全スペクトル幅のサブセットスペクトル幅を検出する。好ましい実施例のユーザインターフェース300によって、検出器アレイ中の検出器をグループ分けすることによってユーザはバーチャル検出器チャネルセットを作って、各バーチャル検出器チャネルが検出器グループに対応しており、対応する検出器グループ中の検出器のサブセットスペクトル幅の和を含むバーチャル検出器チャネル幅を有するようにすることができる。
【0010】
好ましい実施例のシステムとユーザインターフェースは、従来のフローサイトメータで用いられる分散した複雑な検出器とフィルタのシステムをなくして、フローサイトメータシステム全体を簡単にし、フローサイトメータをより小型化して、使用をより容易にすることができる。この光学及び検出システムは、また、使用可能な光をすべて捕捉して、フローサイトメータのパワーを上げ使いやすさを良くする。光学及び検出システムとユーザインターフェースはフローサイトメータに一体化されていることが好ましいが、代替的にこのシステムとユーザインターフェースを、顕微鏡及び/又は適当な装置、あるいは光を収集して検出するアプリケーションで使用することもできる。
【0011】
光学システム
図1に示すように、光学システム100は好ましくは、インターロゲーションゾーンからの光を受けてこれを平行にする平行エレメント110と、この平行光を連続波長スペクトルに分散する光分散エレメント120と、光スペクトルを隣接する検出ポイント132のアレイに集光し、その検出アレイは隣接する検出ポイント132で集光する集束レンズ130と、を具えるレンズサブシステムを有する。光学システム100は、更に、スプリアス反射及び/又はその他の望ましくない光学アーチファクトを低減するクリーンナップエレメントを具えていてもよい。一の実施例では、光学システム100は、光を受光して光ダイオード検出器を具える検出システムに向けるか、代替的に、光を受光して光トランジスタ検出器、あるいは適宜の検出器を具える検出システムに向けるようにしてもよい。
【0012】
このレンズサブシステムは、光源から検出器アレイで検出できるフォームへ及び/又は検出ポイント位置へ光を操作するよう機能する複数のレンズ及び/又はレンズ面を有している。このレンズサブシステムの第1ステージでは、好ましくは平行エレメント110が、インターロゲーションゾーンからの光を整列させる平行レンズを、より好ましくは色消しレンズを具えているが、適宜に組み合わせたレンズあるいはその他の平行エレメントを具えていてもよい。平行エレメント110は、好ましくは、ほぼ平行光線になるように、完全にあるいはほぼ完全に光を平行にする。なぜなら不完全な平行は、レンズサブシステムの後のステージに影響し、検出ポイント132において光の焦点が合わず、したがって、インターロゲーションゾーンからの光の検出が悪化するからである。
図1に示すように、平行エレメント110には、無収差のメニスカスレンズ112を接続するあるいはこのレンズと光学的に対にするようにしてもよい。平行エレメント110と無収差メニスカスレンズ112の組み合わせは、レンズサブシステムの第1ステージにおける有効開口数を増やし、これによって、インターロゲーションゾーンからの全体的な光収集効果をあげる。この組み合わせは、また、更なる望ましくない球面収差あるいはその他の光学収差を導入することなく、レンズサブシステムの第1ステージの全焦点距離を縮めて、レンズサブシステムをよりコンパクトにすることができる。一の例示的実施例では、平行エレメント110が、有効焦点距離が約30mmの色消しレンズであり、無収差メニスカスレンズは、約50度の円錐形であり、平行エレメントとメニスカスレンズの色消し三重レンズの有効焦点距離が約20mmである。
【0013】
このレンズサブシステムの第2ステージでは、平行エレメント110から光の連続波長スペクトルへ平行光を分散させるよう光分散エレメント120が機能する。この光分散エレメント120は、好ましくは、フレーム内など平行エレメントの出力に整列して装填されており、平行エレメントに対して適所に永久的に固定するか、あるいは調整可能な位置にあっても良い。
図1に示すように、光分散エレメント120を通過した後、同じ波長の光線が平行になり、異なる波長の光線は波長スペクトル中の相対位置に対応する相対角度で非平衡になるように、この光が再度方向づけられることが好ましい。光分散エレメント120は、様々なバリエーションの好ましい一つである。第1のバリエーションでは、光分散エレメント120が光を分けて、レンズサブシステムの第3ステージへ向けて光を光線の連続スペクトルへ回折させる回折格子を具えている。第2のバリエーションでは、光分散エレメント120が分散プリズムを具えており、レンズサブシステムの第3ステージへ向けて平行光を光線の連続スペクトルに分けている。いずれのバリエーションでも、分散光が鋭角の曲げ角、あるいは適宜の角度を追随し、よりコンパクトなレンズサブシステムを実現することができるようにする。例示的実施例では、光分散エレメント120が約600ライン/mmの格子を有する回折格子又はプリズムであり、光分散エレメントは約22度の曲げ角を提供している。しかしながら光分散エレメントは、適宜の回折レベル及び/又は曲げ角をもつ適宜の構造を具えていてもよい。
【0014】
レンズサブシステムの第3ステージでは、集束レンズ130が、分散した連続スペクトル光を隣接する検出ポイント132のアレイに集光するよう機能する。
図1に示すように、集束レンズ130は、波長が同じ光を集めて、検出ポイントアレイ132上に集光したすべての光がスペクトル順に配置されるようにすることが好ましいが、適宜の方法で分散光を集光させるようにしてもよい。例えば、ビームスプリッタや、レンズサブシステムの追加ステージを用いて、分散光の選択されたスペクトル部分の方向を変えて、適宜のスペクトル順に配置するようにしてもよく、及び/又は、分散光の選択されたスペクトル部分を適宜の位置にある検出ポイントに集光させてもよい。各検出ポイント132は、約0.8mm
2のスポットサイズ、あるいは適宜のスポットサイズでもよい。検出ポイントアレイ132は、リニアアレイであることが好ましい。例えば、短い波長に対応する光は検出ポイントアレイ132の第1の端部近傍に集光させ、長い波長に対応する光は検出ポイントアレイ132の第1の端部の反対側にある第2の端部近傍に集光させることが好ましい。しかしながら、代替的に、検出ポイントアレイが、アーチ状アレイであってもよく(例えば、オープンアークセグメント、又は、閉じた円形、又は楕円形)、あるいはその他の適宜の形状でもよい。例示的な実施例では、集束レンズ130が約160mmの有効焦点距離を有し、長さ約43mmの分散距離をカバーするリニアアレイの検出ポイントに光を集光させる。しかしながら、集束レンズはどのようなレンズ又はレンズ面でもよく、適宜の検出ポイント構造に光を集光させることができる。
【0015】
いくつかの実施例では、光学システム100が更に、クリーンアップエレメント140を具えている。これは、所望しない光学アーチファクトを低減する、あるいは、疑似格子反射からのクロストークなど、受信光のその他のイメージを低減するよう機能する。一の変形例では、クリーンアップエレメント140は光学フィルタを具えている。例えば、光学フィルタは、連続可変フィルタ、セグメント化されたフィルタ、上側ハーフのフィルタ、下側ハーフのフィルタ、あるいはその他の適宜のタイプのフィルタであってもよい。このフィルタは、これに加えて、及び/又は代替的に、例えば、インターロゲーションゾーンの蛍光粒子を励起させるのに使用するレーザの波長など、一またはそれ以上の特定の波長が検出ポイントアレイ132に届かないようにする。例えば、このようなブロックフィルタは、特定の検出ポイントに位置して特定の波長を吸収する又は検出ポイントにおいて特定の波長の光から検出器をマスクする光学ノッチフィルタや、あるいは薄いブロックバーを具えていてもよいが、ブロックフィルタが、追加で及び/又は代替的に、適宜のフィルタデバイスを具えていてもよい。別の変形例では、クリーンアップエレメント140がスリット格子を具えている。これは、この分野で当業者に知られている適宜のスリット格子、あるいはその他の適宜のスリット格子であってもよい。光学システムは、適宜の数のクリーンアップエレメント140を具えていてもよい。一またはそれ以上のクリーンアップエレメント140をレンズサブシステムの光分散ステージの後方に、あるいはレンズサブシステムの集束ステージの前方または後方に配置する、あるいは、レンズサブシステムの適宜の部位に配置することができる。
【0016】
検出システム
検出システム200は、検出器アレイ210に好ましくは一またはそれ以上の半導体光検出器デバイス212を具えている。各半導体検出器デバイス212は、それぞれの検出ポイント132で(上述の光学システム100によって、あるいは適宜の光学システムによって集光した)光を検出し、検出した光に相当する電気信号を生成する。
図2に示すように、検出システム200は、好ましくは、更なる信号処理回路を具えており、この回路は、検出器デバイス212からの信号をブーストあるいは増幅する低ノイズ増幅回路220であって、高ゲイン−振幅積を特徴とする回路と;増幅した信号から電気的ノイズを低減するノイズフィルタ230とを具える。
【0017】
半導体検出器デバイス212は、光を、インターロゲーションゾーンから受光した光の性質に相関する特徴を有する電気信号に変換するよう機能する。検出器デバイス212の波長感度は、好ましくは、波長約400乃至900ナノメータのフルレンジ光、このフルレンジのサブセット、あるいはこのフルレンジ全体を超える光を検出するよう最適化されている。更に、検出ポイント212の波長感度は、赤外線レンジの光の検出を最小化するように最適化されて、検出システムが組み込まれているフローサイトメータ又はその他の器具中の熱源に反応しないようにしている。しかしながら、検出器デバイスは、適宜の波長レンジの光を検出するように最適化することもできる。
【0018】
半導体検出器デバイス212の角感度は、上述の光学システムの集光エレメントから発せられる光の集束コーンにほぼ対応するコーン内の光を受光するように最適化されるが、このコーンの外側を通過する迷光は受けず、これによって、光学システム内で軸外を進む光の感度を最小限にすることができる。更に、半導体検出器デバイス212は、バックライト又はその他の周辺光源からシールドして、信号中のバックグラウンドノイズを最小限にするとともに、フローサイトメータ(あるいはその他の器具)から収集したデータセットの精度を改善するようにしてもよい。半導体デバイス212は、追加で及び/又は代替的に、電磁場からシールドして、誘導電子ノイズを最小限にすることができる。更に、半導体検出器デバイス212は、温度補償を行って、温度によって誘発される出力信号のゲイン又は直線性の変化を最小限にすることができる。
【0019】
半導体検出器デバイス212は、適宜の半導体デバイス又は光検出器デバイスであってもよい。好ましい変形例では、半導体検出器デバイス212が光ダイオードであり、より好ましくはPIN光ダイオードであるが、この光ダイオードは適宜の種類のダイオードであってもよい。光ダイオードは、約20pF又はそれ以下と、容量が非常に小さいことが好ましい。低容量光ダイオードは、一般的に物理的に小さく、感光領域が小さいので、光ダイオード検出器デバイス212は、好ましくは、上述した光学システム又は適宜の光学システムによって光がよく集光される検出ポイント132に配置される。光ダイオードは、受信光の特性に相関する電流を出力するように構成することが好ましいが、代替的に、電圧等の別の適宜の電気的特性を出力するように構成することもできる。
【0020】
代替の変形例では、半導体検出器デバイス212が光トランジスタである。好ましい変形例の光ダイオードと同様に、光トランジスタも非常に容量が小さく、小さな感光領域を有していることが好ましく、よく集光された光を受信する検出ポイントに配置することができる。光トランジスタは、通常、光トランジスタのベースへ約10μm乃至1mAの範囲の適宜の電流をバイアスするなどして、ゲイン応答が入力信号の意図した光パワーレンジにわたってほぼ直線の出力信号を提供するように構成することができる。更に、この光トランジスタからの出力信号は、出力信号を低ノイズ増幅回路、負荷抵抗、あるいはその他の適宜の回路成分に送るなどして、電流信号を電圧信号に変換することができる。いくつかの実施例では、光トランジスタを用いて追加の電流ゲインを提供して信号のゲインを上げる、及び/又は、信号−ノイズ比を上げることができる。特に、光トランジスタの使用により、増幅回路のゲイン抵抗の必要な抵抗値を低減し、その結果検出器ノイズ全体への熱ノイズの寄与を減らすことができる。
【0021】
低ノイズ増幅回路220は、半導体検出器デバイス212からの電流入力を電圧出力に変換し、半導体検出器デバイス212からの信号を増幅するように機能する。低ノイズ増幅回路220は、好ましくは、トランスインピーダンス増幅器であるが、適宜の種類の増幅器であってもよい。増幅器回路は、好ましくは、約1GHzまたはそれ以上の高オープンループゲイン−帯域幅積を有している。低容量の半導体検出器デバイス212と、高ゲイン−帯域幅積を有するトランスインピーダンス増幅器との組み合わせによって、高感度と高帯域幅を維持しながら、検出システム200に(検出器からの信号を増幅するのに)高いゲインを持たせることができる。増幅回路220はさらに、高いフィードバック抵抗と、信号中の全ノイズを低減する低い電圧ノイズ及び低い電流ノイズと、低い入力容量によって特徴づけることができる。例示的実施例では、トランスインピーダンス増幅器が、1乃至20MOhms、好ましくは約10MOhms以上のフィードバック抵抗、約5nV/rtHz以下の電圧ノイズ、約5fA/rtHz以下の電流ノイズ、及び約6pF以下の入力容量を有する。しかしながら、増幅回路のその他の実施例は、適宜のスペックを有していてもよい。増幅回路220は、追加で及び/又は代替的に、電流−電圧変換を実行する適宜の電子部品を具えていてもよく、又は検出システムが適宜の変換回路(例えば能動電流−電圧変換器)を具えていてもよい。増幅回路は、追加で及び/又は代替的に、デジタル信号処理装置を具えていてもよい。
【0022】
ノイズフィルタ230は、増幅した信号から電子ノイズ及び/又は光子誘発ノイズを低減するように機能し、これによって信号−ノイズ比が高くなる。ノイズフィルタ230は、所定のカットオフポイントを上回る高い周波数ノイズを迅速に低減するローパスフィルタを具えている。このノイズフィルタ230は、ハードウエア回路に装填してもよく、及び/又は、デジタル的に設けるようにしてもよい。例示的実施例では、ローパスフィルタは、120dB又はそれより良好な減衰を示し、好ましくは500kHz又はより小さい遷移帯域を有する。ノイズフィルタは、追加で及び/又は代替的に、平滑化アルゴリズムなどの更なる信号処理技術を具えるようにしてもよい。
【0023】
図3に示すように、好ましい実施例では、検出システム200は好ましくは、フローサイトメータから入力信号の全スペクトルレンジ250をトータルで検出する検出器アレイ210内に複数の半導体光検出器デバイス212を具えており、各検出器が全スペクトルレンジのサブセットスペクトルレンジ252を検出する。しかしながら、半導体検出器デバイス212(例えば、光ダイオード又は光トランジスタ)は、代替的に、適宜の検出器システムで使用することができる。例示的実施例では、検出システムが入力信号の約400乃至900nmの全スペクトルレンジ250を検出するが、代替的に、適宜のスペクトルレンジの光を検出することもできる。全体的に、検出システム200は少なくとも約400kHzの帯域幅を有するように構成されるのが好ましい。しかしながら、インターロゲーションゾーンの光源として周波数変調レーザを有するフローサイトメータにおける使用といったいくつかの実施例では、検出システム200が少なくとも約2MHzの帯域幅を有している。代替的に、検出システム200は、適宜の帯域幅を有していてもよい。更に、検出器アレイ210は、好ましくは、最も微細な対象物と最も明るい対象物との間に少なくとも1:100,000の比率、より好ましくは少なくとも1:1,000,000の比率を有する広い入力信号レンジを検出する。好ましい実施例では、検出器アレイ210がリニアアレイであり、このリニアアレイの第1の端部近傍で短い波長の光を検出し、リニアアレイの第1の端部の反対側の第2の端部近傍で長い波長の光を検出するように、分散スペクトル光が検出器アレイに入射するようにしてもよい。代替的に、検出器アレイ210は、好ましくは、隣接する検出器デバイス212を伴うアーチ型アレイ(例えば、オープンアークセグメント、あるいは閉じた円形又は楕円形)であってもよく、あるいは適宜の形状であってもよい。
【0024】
検出器アレイ210の各検出器デバイス212は、好ましくは、検出システム200の全スペクトルレンジ250の各部分又はサブセットを検出する。特に、検出器アレイ210は、好ましくは、光の連続スペクトルレンジを検出することができ、各検出器デバイス212は、サブセットスペクトルレンジをその個々の特性に基づいて、及び/又は、検出器アレイ210の相対位置によって検出するように構成されている。例えば、検出器アレイ210は、50個の検出器を具え、各々が、約400乃至900nmから、約10nm波長のインクリメントで光を検出する。検出器212のサブセットスペクトルレンジ252は、同じスパンである(例えば、各検出器が、検出器アレイの能力及び/又はそれぞれの位置によって、全スペクトルレンジのうち10nmのサブセットレンジを検出する)か、あるいは、等しくないスパンであってもよい。いくつかの実施例では、検出器のいくつか又はすべてが、重なり合うスペクトルの光を検出している。例えば、一の検出器が510乃至530nmの光を検出して、隣の検出器が520乃至540nmの光を検出し、二つの隣接する検出器が双方とも、10nm(520乃至530nm)の光を検出するようにしてもよい。しかしながら、この検出器アレイ210は、適宜の数の検出器を具えていてもよく、検出器は、適宜の光波長レンジ及び/又は光が重なり合う波長レンジを検出するようにしてもよい。複数の検出器で特定波長の光を検出することにより、「スピルオーバ」したスペクトルの重なりは、公知の、この分野の当業者に用いられている技術で自動的に補償することができ、ユーザが制御する技術で、及び/又は、適宜の補償方法で補償される。検出器アレイ210は、好ましくは光の連続スペクトルレンジを検出するが、代替的に、検出器アレイは光の不連続スペクトルレンジを、あるいは光の全スペクトルレンジ250の選択されたサブセットを検出するようにしてもよい。
【0025】
図3に示すように、個々の検出器を、バーチャル検出器チャネル240及び/又は実際の検出器チャネルにグループ分けして、これらを介してフローサイトメータ又はその他の機器からのデータセットを収集することができる。各バーチャル検出器チャネル240は検出器グループに対応し、対応する検出器グループの検出器のサブセットスペクトルレンジ252の和を含むバーチャル検出器チャネルレンジ242を有していてもよい。換言すると、各バーチャル検出器チャネル240は、バーチャル検出器チャネル240に対応する検出器グループの個々の検出器212によって集合的に検出した、加算あるいは組み合わせた入力信号を含む。バーチャル検出器チャネルのいくつか又はすべてが、ほぼ同じバーチャル検出器チャネルレンジ又は異なるバーチャル検出器チャネルレンジを有していてもよい。特に、検出器は、バーチャル検出器チャネル240の第1のセットに対応する第1構造と、バーチャル検出器チャネルセット240の第2のセットに対応する第2構造に分けることができ、第1及び第2の構造が異なる。換言すると、検出器からの信号のグループ分けを行って、使用とアプリケーションで異なるグループになるように再度グループ分けを繰り返してもよく、光学システムと検出システムの構成要素を物理的に再配置する必要がなくなる。
【0026】
ユーザインターフェース
フローサイトメータ用ユーザインターフェース300を用いて、バーチャル検出器チャネルを形成する検出器信号のグループ分けを行い、データを収集して組織化する。
図4A及び4Bに示すように、好ましい実施例では、ユーザインターフェース300は、フローサイトメータ中のフローサイトメータサンプル用データセットを収集する方法を提供しており、この方法は:フローサイトメータからの全スペクトルレンジの入力信号を集合的に検出する複数の検出器を有する検出器アレイであって、各検出器が全スペクトルレンジのサブスペクトルレンジを検出するアレイを提供するステップS310と;この検出器アレイの検出器をグループ分けすることによってバーチャル検出器チャネルセットを作るステップS320と、検出器アレイでフローサイトメータサンプルからの全スペクトルレンジの入力信号を収集するステップS370と、を具える。各バーチャル検出器チャネルは、検出器グループに対応し、対応する検出器グループの検出器のサブセットスペクトルレンジの和を含むバーチャル検出器チャネルレンジを有する。一またはそれ以上のサブステップ変形を含むバーチャル検出器チャネルセットを作るステップS320は、入力信号を収集するステップS370の前及び/又は後に実行することができる。この方法は、更に、収集した入力信号に基づいて初期データセットを保存するステップS380、及び/又は、バーチャル検出器チャネルのコンフィギュレーションのコンフィギュレーションファイルを保存するステップS390を具えていてもよい。ユーザインターフェース300によって、上述した光学及び/又は検出システムを有するフローサイトメータシステムから、あるいは、各々が全スペクトルの光入力信号の一部を検出する複数の検出器アレイを有する適宜の機器から、データを抽出することができる。ユーザインターフェース300によって、より広範囲のデータ収集が可能となり、フローサイトメータの検出器システムの設定及び構成プロセスを簡単にすることができる。しかしながら、このユーザインターフェースとデータセットを収集する方法は、代替的に、顕微鏡などの信号の実スペクトルの検出が必要な適宜のシステムで用いることができる。
【0027】
検出器アレイを提供するステップS310は、好ましくは、フローサイトメータで検出された全光(例えば、蛍光)スペクトルのサブセットを検出する既知のシステムを提供するステップを具える。検出器アレイは、好ましくは、上述した
図2及び3に示す検出システムと同様であることが好ましいが、代替的に、適宜の検出システムであってもよい。特に、検出器アレイは、分散した全光スペクトルを検出する個別の検出器デバイスを具えており、隣接する検出器が全光スペクトルの一部、あるいはサブセットスペクトルレンジを検出するようにしてもよい。より好ましくは、隣接する検出器が全光スペクトルの連続するサブセットスペクトルレンジを検出するようにしてもよい。例えば、検出器アレイ中の一群の隣接する検出器内で、各検出器が10nmのインクリメントで光を検出し、第1の検出器が波長約491乃至500nmの光を検出し、第2の中央検出器が、波長約501乃至510nmの光を検出し、第3の検出器が波長約511乃至521nmの光を検出することができる。検出器アレイは、光ダイオード、光トランジスタ、あるいは適宜の種類の光検出器を具えている。
【0028】
バーチャル検出器チャネルセットを作成するステップS320は、検出器アレイの検出器が収集した信号を指定されたデータチャネルに組織化するよう機能する。
図3に最もよく示すように、バーチャル検出器チャネルセットを作成するステップS320は、検出器アレイの検出器をグループ分けするステップS322を具える。各バーチャル検出器チャネル240は検出器グループに対応し、対応する検出器グループ中の検出器のサブセットスペクトルレンジの和を含むバーチャル検出器チャネルレンジを有する。換言すると、各バーチャル検出器チャネル240は、バーチャル検出器チャネルに対応する検出器グループにおける個々の検出器によって検出された入力信号を集合的に足し合わせたあるいは組み合わせた信号を含む。一またはそれ以上の検出器グループは、互いに物理的に連続する検出器(すなわち、検出器の「ブロック」)を具えていてもよく、及び/又は、光の連続するサブセットスペクトルレンジを検出して、対応するバーチャル検出器チャネルレンジが連続するスペクトルレンジの光を収集するようにしてもよい(バーチャル検出器チャネル240a、240b、及び240dと同様に)。更に、一またはそれ以上の検出器グループは、物理的に互いに連続していない検出器(例えば、検出器の「スプリットブロック」)を具えていてもよく、及び/又は、光の連続しないサブセットスペクトルレンジを検出して、バーチャル検出器チャネル240cのように、対応するバーチャル検出器チャネルレンジが連続しないスペクトルレンジの光を収集するようにしてもよい。
【0029】
入力信号の全スペクトルレンジを収集するステップS370は、検出器アレイで生データを集めるように機能する。入力信号を収集するステップS370は、フローサイトメータサンプルからの最も鮮明な信号と最も明るい信号間に少なくとも比1:100,000、より好ましくは少なくとも1:1,000,000、を提供する入力信号の全ダイナミックレンジを収集するステップを具える。好ましい実施例では、データを生の変調していないフォーマットで、検出器のゲインレベルの調整を行うことなく収集するが、適宜の方法で収集するようにしてもよい。
【0030】
図5及び6に示すように、バーチャル検出器チャネルセットを作成するステップS320は、フローサイトメータにサンプルが流れる前及び/又は後といった入力信号を収集するステップS370の前及び/又は後に実行される。第1の好ましい実施例では、バーチャル検出器チャネルセットを作成するステップS320は、入力信号を収集する前に実行される。
図5Aに示すように、この実施例の第1の変形例では、バーチャル検出器チャネルセットを作成するステップS320は、検出器グループのユーザ選択を受信するステップS330を具えており、このステップでユーザが検出器チャネルを形成している検出器グループを手動で入力あるいは表示する。例えば、各検出器は、標識あるいは番号を付けてもよく、ユーザは検出器「x」乃至「y」が検出器グループであることを特定することができる。各検出器は、入力信号の特定のサブセットスペクトルレンジを検出するように設計されているので、検出器グループのユーザの選択が、検出器グループに対応するバーチャル検出器チャネルを作成する。複数のレーザを有するフローサイトメータシステムについては、ユーザが更に、各検出器、検出器グループ、および/又はバーチャル検出器チャネルにどのレーザを割り当てるかを特定することができる。
【0031】
図5Bに示すように、第1の好ましい実施例の第2の変形例では、バーチャル検出器チャネルセットを作成するステップS320は、所望のバーチャル検出器チャネルレンジ(又は、入力信号の加算したサブセットスペクトルレンジ)のユーザ選択を受信するステップS340と、バーチャル検出器チャネルレンジの選択に対応する検出器グループに検出器をグループ分けするステップS342とを具え、これによって、所望のバーチャル検出器チャネルレンジを規定するバーチャル検出器チャネルセットを形成する。例えば、ユーザは、波長「a」と波長「b」との間のレンジといった、波長レンジを特定して、特定のバーチャル検出器チャネルに振り分けることができ、ユーザインターフェース300は、個々の検出器のうちのどれが互いにグループ分けされるかを決定して、波長「a」と「b」の間の光を検出するバーチャル検出器チャネルを形成することによって、波長レンジを特定の個々の検出器に自動的に関連づける。いくつかの実施例では、ユーザインターフェース300は光学システムのレーザが活性であるシナリオの場合など、検出器グループ又はバーチャル検出器チャネルから所定の検出器を自動的に排除することができる。
【0032】
図5Cに示すように、第1の好ましい実施例の第3変形例では、バーチャル検出器チャネルセットを生成するステップS320が、一またはそれ以上のコンフィギュレーションパラメータを受信するステップS350と、コンフィギュレーションパラメータに基づいて検出器を最適化してグループ分けするステップS352とを具える。この変形例の一例では、バーチャル検出器チャネルセットを生成するステップが、フローサイトメータサンプルにタグをつける蛍光色素セットのユーザ選択を受信するステップS354と、少なくとも一のコンフィギュレーションパラメータに基づいて各蛍光色素についての最適検出器グループを決定するステップと、各蛍光色素に最適検出器グループを振り分けるステップS356とを具え、これによって各蛍光色素にバーチャル検出器チャネルを提供する。様々なサンプルの流れ及び/又は蛍光色素セットの間で、検出器グループを再び割り当てて、様々なアプリケーションについて異なる適宜のバーチャル検出器チャネルを提供するようにしてもよい。検出器を最適にグループ分けするステップS352は、一またはそれ以上のコンフィギュレーションパラメータに依存しており:スピルオーバ(複数の検出器チャネル間の蛍光色素の重複検出)を最小限にするステップと、スピルオーバ補償に必要なもの(通常、データ中のスピルオーバを補償するアルゴリズム)を簡単にするステップと、機器特有の校正パラメータと、検出器チャネルの感度を最大にする(特定の蛍光色素セットを伴う事前のサンプルの流れに基づいて)ステップと、蛍光色素又は器具類のユーザが選択したセットに基づく適宜のコンフィギュレーションパラメータ又は適宜のパラメータと、を具える。検出器を最適にグループ分けするステップS352は、好ましくは、ユーザインターフェース300によって自動的に実行されるが、追加で及び/又は代替的に、ユーザによって手動で実行するようにしてもよい。ユーザインターフェース及び/又はユーザは、更に、各蛍光色素についてフローサイトメータ中の光学レーザコンフィギュレーションを決定することができる。
【0033】
図5Dに示すように、第1の好ましい実施例の第4変形例では、バーチャル検出器チャネルセットを形成するステップS320が、所定の検出器グループと、バーチャル検出器チャネルの配置と、レーザの構成と、及び/又はフローサイトメータの適宜の設定を規定するコンフィギュレーションファイルを受信するステップS360を具える。この変形例では、検出器をグループ分けするステップは、好ましくはコンフィギュレーションファイルの設定を組み込んでおり、及び/又は、ユーザまたはシステムによる更なる変更を含んでもよい。このコンフィギュレーションファイルは、携帯可能な媒体などにユーザによって直接的に提供される、ユーザインターフェース300から選択される、ネットワーク又はサーバから選択してダウンロードされる、バーコードなどの機械読み取り式サンプルラベルに設ける、あるいは適宜の手段によって提供することができる。コンフィギュレーションファイルは、同じ又は異なるフローサイトメータシステムあるいはその他の機器からの以前のサンプルの流れから確保したコンフィギュレーションファイルであってもよく、あるいはテンプレートのコンフィギュレーションファイルであってもよい。バーチャル検出器チャネル設定及び/又はその他の機器の設定を規定するコンフィギュレーションファイルは、その機器の使い勝手を良くし、同様の実験又はテストについての分析の整合を確かなものにする。同様の実験又はテストについてのこの分析の整合性は、臨床アプリケーションなどのいくつかのアプリケーションにおいて特に重要である。
【0034】
第2の好ましい実施例では、バーチャル検出器チャネルを作成するステップS320が、入力信号を収集するステップS370の後(フローサイトメータシステムでサンプルを流した後など)に実行される。
図6B及び6Cに示すように、この実施例の第1及び第2の変形例では、第1の好ましい実施例の第1及び第2の変形例と同様に、バーチャル検出器チャネルセットを形成するステップS320が、検出器グループのユーザ選択を受信するステップS330と、所望のバーチャル検出器チャネルレンジのユーザ選択を受信するステップS340を、それぞれ具えている。
【0035】
図6Dに示すように、この実施例の第3の変形例では、バーチャル検出器チャネルセットを形成するステップS320は、第1実施例の第3変形例と同様に、一またはそれ以上のコンフィギュレーションパラメータを受信するステップS350と、コンフィギュレーションパラメータに基づいて検出器を最適にグループ分けするステップS352を具えている。更に、ユーザインターフェース300は、追加で及び/又は代替的に、ユーザインターフェースで自動的に及び/又はユーザによって手動で認識することができる複数明度フローサイトメータサンプルの明及び/又は暗(又はブランク)ピークに基づいて検出器のグループ分けを最適化するステップを具える。この最適化は、サンプルが流れた後に行われるようにしてもよいし、ユーザが実験制御の設定を行う後であるが、実際のサンプルが流れる前に行うようにしてもよい。
【0036】
図6Eに示すように、第2の好ましい実施例の第4変形例では、バーチャル検出器チャネルセットを作成するステップS320は、第1の好ましい実施例の第4変形例と同様に、コンフィギュレーションファイルを受信するステップS360を具える。
【0037】
バーチャル検出器チャネルセットを作成するステップS320は、上述の変形例の一つであることが好ましいが、その他の実施例では、バーチャル検出器チャネルセットを作成するステップS320は、上述の変形例及び/又はバーチャル検出器チャネルを形成する適宜の手順の、適宜の組み合わせ又は置き換えであってもよい。例えば、第1の実施例のバーチャル検出器チャネルセットを作成する一またはそれ以上の変形例は、入力信号を収集するステップの後に何らかの方法で実装することができる。同様に、第2の実施例のバーチャル検出器チャネルセットを作成する一またはそれ以上の変形例は、入力信号を収集するステップの前に何らかの方法で実装するようにしてもよい。更に、ユーザインターフェース300又はその他の手段を介して、ある一つのサンプルの流れに対して、バーチャル検出器チャネルを複数のコンフィギュレーションで作ることができる(例えば、入力信号を収集する前の第1のコンフィギュレーションと、入力信号を収集した後の第1のコンフィギュレーションと異なる第2のコンフィギュレーションで)、及び/又は、異なるサンプルの流れの間に(例えば、一のサンプルの流れについての第1のコンフィギュレーションと、別のサンプルの流れについての第1のコンフィギュレーションと異なる第2のコンフィギュレーションで)作ることができる。
【0038】
図4乃至6に示すように、ユーザインターフェース300は更に、全部ではないがほとんどの入手可能な検出器から収集した入力信号を保存しておくことができる。収集した入力信号を保存するステップは、入力信号を検出器アレイ中の各個別検出器によって個別に収集された入力信号として保存するステップS380(例えば、
図6A)、及び/又は、バーチャル検出器チャネルセットを介して各個別の検出器グループによって収集した信号として入力信号を保存するステップS380’(例えば、
図6F)を具えていてもよい。収集した入力信号のデータセットは、ローカルメモリ、持ち運び可能な媒体、サーバ、ネットワーク、あるいは適宜のメモリに保存してもよい。保存したデータセットは、好ましくは、検出器の全スペクトルレンジを具えているが、スペクトルレンジあるいは収集した信号の適宜の部分を具えるものでもよい。保存したデータセットはまた、ここに全体が引用によって組み込まれている、米国特許第7,996,188号「フローサイトメータ用ユーザインターフェース」に記載されているように、分析及びその他の操作にも有益である。
【0039】
図4乃至6に示すように、ユーザインターフェース300は、更に、検出器の所定のグループ分けと、バーチャル検出器の配置と、レーザ構成と、及び/又は、フローサイトメータの適宜の設定を決定するコンフィギュレーションファイルを保存するステップS390を具えていてもよい。コンフィギュレーションファイルを保存するステップS390は、ローカルメモリ又は持ち運び可能な媒体に保存するステップ、サーバ又はネットワークに保存するステップ、又は、適宜の保存ステップを具えている。保存したコンフィギュレーションファイルを上述のように、及び/又は、テンプレートとして先のサンプルの流れに使用することができる。例えば、第1のコンフィギュレーションファイルは、サンプルの流れの直後に保存して、検出器グループの最初のコンフィギュレーション及びバーチャル検出チャネルを保存することができ、第2のコンフィギュレーションファイルは、収集したデータの特性に基づいてこのグループ分けを最適化した後に保存することができる。本例では、第1及び第2のコンフィギュレーションファイルを先の参照用に、比較あるいは分析できる。ユーザインターフェース300は追加で及び/又は代替的に、プリントアウトなど別の媒体にコンフィギュレーションファイルを転出させるステップを具えていてもよい。
【0040】
当業者は、上述の詳細な説明と図面及び特許請求の範囲から、特許請求の範囲に規定した本発明の範囲から外れることなく、本発明の好ましい実施例を変形及び変更できることがわかる。