特許第5671625号(P5671625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5671625プロピレン重合用固体触媒およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671625
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】プロピレン重合用固体触媒およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20150129BHJP
   C08F 10/06 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   C08F4/654
   C08F10/06
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-537593(P2013-537593)
(86)(22)【出願日】2011年9月2日
(65)【公表番号】特表2014-500346(P2014-500346A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】KR2011006528
(87)【国際公開番号】WO2012070753
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2013年5月7日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0117370
(32)【優先日】2010年11月24日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507324740
【氏名又は名称】サムスン トータル ペトロケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム サン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】イ チン ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム ウン イル
(72)【発明者】
【氏名】パク チュン リョ
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−124705(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101824106(CN,A)
【文献】 特表2013−516535(JP,A)
【文献】 特表2008−534730(JP,A)
【文献】 特表2008−518075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/64−4/78
C08F 10/00−10/14
C08F 110/00−110/14
C08F 210/00−210/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン、マグネシウム、ハロゲンおよび下記一般式(II)で表示されるビシクロアルケンジカルボキシレート系内部電子供与体を含む、プロピレン重合用固体触媒。
【化1】
(式中、RおよびRは互いに同一であるか相異し、炭素原子1〜20個の線状、分枝状または環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基またはアルキルアリール基であり;R、R、RおよびRは互いに同一であるか相異し、水素、炭素原子1〜20個の線状、分枝状または環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基またはアルキルアリール基である。)
【請求項2】
前記固体触媒は、マグネシウム5〜40重量%、チタン0.5〜10重量%、ハロゲン50〜85重量%および内部電子供与体2.5〜30重量%を含むことを特徴とする請求項1に記載のプロピレン重合用固体触媒
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン重合用固体触媒およびその製造方法に関するものであって、より詳しくは、環境有害物質が含有されていないながら、立体規則性が優れたポリプロピレンを高い収率で重合できる、プロピレン重合用固体触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、産業的に非常に有用な物質であるが、特別に自動車と電子製品と関連した素材に多様な用途に幅広く適用されている。ポリプロピレンの適用がより拡大されるためには、結晶化度を高めて、剛性を改善させることが重要であり、これのためには、固体触媒が高い立体規則性を表すように考案されなければならない。
【0003】
プロピレンなどのオレフィン類の重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与体およびハロゲンを必須成分として含有する固体触媒が知られており、該固体触媒と有機アルミニウム化合物および有機シリコン化合物からなる触媒系を用いて、オレフィン類を重合または共重合させる方法が多く提案されている。しかし、このような方法は、高立体規則性の重合体を高い収率で得るには十分に満足なことでなく、このような側面においての改善が要求されている。
【0004】
触媒活性の増加を通じて原価を低め、立体規則性などの触媒性能を向上させ、重合体の物性を改善させるために、内部電子供与体として芳香族ジカルボン酸のジエステルを使用することは普遍的に広く知られた方法であり、これに関する特許などが出願された。特許文献1(米国特許第4,562,173号)、特許文献2(米国特許第4,981,930号)などはその例だとすることができるし、前記特許などは芳香族ジアルキルジエステルまたは芳香族モノアルキルエステルを使用して、高活性及び高立体規則性を発現する触媒製造方法を紹介している。
しかし、芳香族ジカルボン酸のジエステル化合物は、極めて少ない量でも生態系および人間の生殖機能の低下、成長障害、奇形、癌などを誘発する重大な影響を及ぼす環境ホルモン物質であって、深刻な問題を惹起し得る。そのため、近来に、食品包装容器などの用途に使用されるポリプロピレンの製造には、環境親和的な物質が内部電子供与体として含有された触媒を使用しなければならない要求が台頭している。さらに、前記特許などの方法は、高立体規則性の重合体を高い収率で得るには十分に満足なことでなく、改善が要求される。
【0005】
特許文献3(韓国特許第0491387号)には非芳香族のジエステル物質を、特許文献4(韓国特許第0572616号)には非芳香族でありながらケトンとエ-テル作用基を同時に有する物質を内部電子供与体として使用した触媒の製造方法が開示されている。しかし、この二つの方法すべて活性と立体規則性の側面で大きく改善されるべき余地がある。
一方、特許文献5(米国公開特許第2009/0069515A1号)には非芳香族のジイソブチル‐4-メチル‐シクロヘキサン‐1,2‐ジカルボキシレートを使用した触媒の製造方法が提案されているが、活性と立体規則性の側面全てにおいて大きく改善されるべき余地があり、非サイクリック化合物を使用した例は無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,562,173号明細書
【特許文献2】米国特許第4,981,930号明細書
【特許文献3】韓国特許第0491387号明細書
【特許文献4】韓国特許第0572616号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/00695151号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の如き問題点を解決するために案出されたものであって、本発明の解決しようとする課題は、環境有害物質を含有していないながら、立体規則性が優れたポリプロピレンを高い収率で重合できる、プロピレン重合用固体触媒の製造方法を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のような課題を解決するために、本発明は、チタン、マグネシウム、ハロゲンおよび下記一般式(II)または(III)で表示されるビシクロアルケンジカルボキシレ-ト(bicycloalkene dicarboxylate)系内部電子供与体を含む固体触媒が提供される。
【0009】
【化1】
【0010】
ここで、R1およびR2は互いに同一であるか相異し、炭素原子1〜20個の線状、分枝状または環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基、またはアルキルアリール基であり;R3、R4、R5およびR6は互いに同一であるか相異し、水素、炭素原子1〜20個の線状、分枝状または環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基またはアルキルアリール基である。
【0011】
また、本発明は、次の工程等を含む固体触媒の製造方法を提供する:
(1)有機溶媒の存在下で、ジアルコキシマグネシウムとチタンハライドを反応させる工程;
(2)60〜150℃の温度に昇温させながら、前記工程(1)の結果物に前記一般式(II)または(III)で表示されるビシクロアルケンジカルボキシレ-ト系内部電子供与体中から選ばれる1種または2種以上を投入して反応させる工程;及び
(3)60〜150℃の温度で、前記工程(2)の結果物とチタンハライドを反応させ、結果物を洗浄する段階。
【0012】
前記工程(1)で使用される有機溶媒としては、その種類に特別に限定が無く、炭素数6〜12個の脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素などが使用され得るし、より好ましくは炭素数7〜10個の飽和脂肪族または芳香族炭化水素、またはハロゲン化炭化水素が使用され得るし、その具体的な例としては、オクタン、ノナン、デカン、トルエンおよびキシレン、クロロブタン、クロロヘキサン、クロロヘプタンなどから選ばられる1種以上を単独にまたは混合して使用することができる。
【0013】
前記工程(1)で使用されるジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを塩化マグネシウムの存在下で無水アルコールと反応させて得られる、平均粒径が10〜200μmであり、表面が滑らかな球形粒子であって、前記球形の粒子形状はプロピレンの重合時にもそのまま維持されることが好ましいが、上記平均粒径が10μm未満であると、製造された触媒の微細粒子が増加し好ましくなく、200μmを超えると、嵩密度が小さくなる傾向があり好ましくない。
【0014】
さらに、前記ジアルコキシマグネシウムに対する前記有機溶媒の使用比は、ジアルコキシマグネシウム重量:有機溶媒体積で1:5〜50であることが好ましく、1:7〜20であることがより好ましいが、前記使用比が1:5未満であると、スラリーの粘度が急激に増加して、均一な攪拌が難しくなり好ましくなく、1:50を超えると、生成される担体の嵩密度が急激に減少するか粒子表面が荒くなる問題が発生し好ましくない。
【0015】
前記固体触媒の製造工程中、工程(1)で使用されるチタンハライドは、好ましくは下記一般式(I)で表示される:
【0016】
Ti(OR)a(4-a)・・・・・・(I)
【0017】
ここで、Rは炭素原子1〜10個のアルキル基であり、Xはハロゲン元素であり、aは一般式の原子価を合わせるためのもので、0〜3の整数である。前記チタンハライドとしては、特に四塩化チタンを使用することが好ましい。
【0018】
前記固体触媒の製造工程中、工程(1)における反応は、-20〜50℃の温度範囲でジアルコキシマグネシウムを有機溶媒に懸濁させた状態で、チタンハライドを徐々に投入して行なうことが好ましい。
この時、使用するチタンハライドの使用量は、ジアルコキシマグネシウム1モルに対して0.1〜10モル、さらに0.3〜2モルにすることが好ましいが、0.1モル未満であると、ジアルコキシマグネシウムがマグネシウムクロライドに変化する反応が円滑に進行されないので好ましくなく、10モルを超えると、過度に多くのチタン成分が触媒内に存在するようになるので好ましくない。
【0019】
前記固体触媒の製造工程において、前記工程(2)で使用される、前記一般式(II)または一般式(III)で表示される内部電子供与体の例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸エチルヘキシルエステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジオクチルエステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジイソブチルエステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジブチルエステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジイソプロピルエステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジプロピルエステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジエチルエステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジメチルエステル、7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸エチルヘキシルエステル、7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジオクチルエステル、7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジイソブチルエステル、7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジブチルエステル、7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジイソプロピルエステル、7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジプロピルエステル、7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジエチルエステル、7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジメチルエステル、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸エチルヘキシルエステル、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジオクチルエステル、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジイソブチルエステル、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジブチルエステル、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジイソプロピルエステル、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジプロピルエステル、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジエチルエステル、
【0020】
5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジメチルエステル、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸エチルヘキシルエステル、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジオクチルエステル、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジイソブチルエステル、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジブチルエステル、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジイソプロピルエステル、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジプロピルエステル、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジエチルエステル、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジメチルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸エチルヘキシルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジオクチルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジイソブチルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジブチルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジイソプロピルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジプロピルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジエチルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジメチルエステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸エチルヘキシルエステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジオクチルエステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジイソブチルエステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジブチルエステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジイソプロピルエステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジプロピルエステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジエチルエステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジメチルエステル、
【0021】
7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸エチルヘキシルエステル、7,7−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジオクチルエステル、7,7−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジイソブチルエステル、7,7−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジブチルエステル、7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジイソプロピルエステル、7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジプロピルエステル、7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジエチルエステル、7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジメチルエステル、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸エチルヘキシルエステル、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジオクチルエステル、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジイソブチルエステル、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジブチルエステル、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジイソプロピルエステル、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジプロピルエステル、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジエチルエステル、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジメチルエステル、
【0022】
6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸エチルヘキシルエステル、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジオクチルエステル、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジイソブチルエステル、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジブチルエステル、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジイソプロピルエステル、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジプロピルエステル、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジエチルエステル、6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジメチルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸エチルヘキシルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジオクチルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジイソブチルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジブチルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジイソプロピルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジプロピルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジエチルエステル、5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジメチルエステルなどがあり、この中で1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0023】
前記工程(2)は,前記工程(1)の結果物の温度を60〜150℃、好ましくは 80〜130℃まで徐々に昇温させながら、昇温過程中に内部電子供与体を投入して1〜3時間反応させることにより行なわれることが好ましいが、前記温度が60℃未満であるか反応時間が1時間未満であれば、反応が完結されるのが難しく、前記温度が150℃を超えるか反応時間が3時間を越えると、副反応によって、結果物である触媒の重合活性または重合体の立体規則性が低くなり得る。
【0024】
前記内部電子供与体は、前記昇温過程中に投入される限り、その投入温度および投入回数は大きく制限されないし、前記内部電子供与体の全体使用量は、使用されたジアルコキシマグネシウム1モルに対して0.1〜1.0モルを使用することが好ましいが、前記範囲を外れると、結果物である触媒の重合活性または重合体の立体規則性が低くなることがあるので好ましくない。
前記固体触媒の製造工程中、工程(3)は、60〜150℃、好ましくは80〜130℃温度で工程(2)の結果物とチタンハライドを2次に反応させる工程である。この時、使用されるチタンハライドの例としては、前記の一般式(I)のチタンハライドを挙げることができる。
【0025】
固体触媒の製造工程において、各工程における反応は、窒素気体雰囲気で、水分などを十分に除去させた、攪拌機が装着された反応器中で実施することが好ましい。
前記の方法で製造される本発明の固体触媒は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび内部電子供与体を含んでなり、触媒活性の側面を考慮して見るとき、マグネシウム5〜40重量%、チタン0.5〜10重量%、ハロゲン50〜85%および内部電子供与体2.5〜30重量%を含んでなることが好ましい。
【0026】
本発明の触媒製造方法によって製造される固体触媒は、プロピレン重合または共重合方法に使用され得るし、本発明によって製造される固体触媒を利用したプロピレン重合または共重合方法は、前記固体触媒と助触媒および外部電子供与体の存在下に、プロピレンを重合またはプロピレンと他のα−オレフィンを共重合させることを含む。
上記固体触媒は、重合反応の成分として使用される前に、エチレンまたは α−オレフィンに前重合して使用することができる。
前重合反応は、炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン)、前記触媒成分および有機アルミニウム化合物(例えば、トリエチルアルミニウム)の存在下で、十分に低い温度とエチレンまたはα−オレフィン圧力条件で行なうことができる。前重合は、触媒粒子を重合体で取り囲んで触媒形状を維持させて、重合後に重合体の形状を良くするのに助けを与える。前重合後の重合体/触媒の重量比は、約0.1〜20:1であることが好ましい。
【0027】
前記プロピレン重合または共重合方法において、助触媒成分としては、周期律表第II族または第III族の有機金属化合物が使用され得るし、その例として、好ましくは、アルキルアルミニウム化合物が使用される。前記アルキルアルミニウム化合物は下記一般式(IV)で表示される:
【0028】
AlR3・・・・・・(IV)
【0029】
ここで、Rは炭素数1〜6個のアルキル基である。
【0030】
前記アルキルアルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムおよびトリオクチルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0031】
前記固体触媒成分に対する前記助触媒成分の比率は、重合方法によって多少差異はあるが、固体触媒成分中のチタン原子に対する助触媒成分中の金属原子のモル比が1〜1000の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜300の範囲であるのが良い。もし、固体触媒成分中のチタン原子に対する助触媒成分中の金属原子、例えば、アルミニウム原子のモル比が前記1〜1000の範囲を外れると、重合活性が大きく低下される問題がある。
【0032】
前記プロピレン重合または共重合方法において、前記外部電子供与体としては、次の一般式(V)で表示されるアルコキシシラン化合物中で選ばれる1種以上を使用することができる:
【0033】
R1mR2nSi(OR3)(4-m-n)・・・・・・(V)
【0034】
ここで、R1及びR2は同一であるか異なり得るし、炭素数1〜12個の線状または分枝状または環状アルキル基、またはアリール基であり、R3は炭素数1〜6個の線状または分枝状アルキル基であり、m、nはそれぞれ0または1であり、m+nは1または2である。
【0035】
前記外部電子供与体の具体例としては、ノルマルプロピルトリメトキシシラン、ジノルマルプロピルジメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ノルマルブチルトリメトキシシラン、ジノルマルブチルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジt-ブチルジメトキシシラン、ノルマルペンチルトリメトキシシラン、ジノルマルペンチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルエチルジメトキシシラン、シクロペンチルプロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルプロピルジメトキシシラン、シクロヘプチルトリメトキシシラン、ジシクロヘプチルジメトキシシラン、シクロヘプチルメチルジメトキシシラン、シクロヘプチルエチルジメトキシシラン、シクロヘプチルプロピルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルプロピルジメトキシシラン、ノルマルプロピルトリエトキシシラン、ジノルマルプロピルジエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ノルマルブチルトリエトキシシラン、ジノルマルブチルジエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、ジt−ブチルジエトキシシラン、ノルマルペンチルトリエトキシシラン、ジノルマルペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロペンチルプロピルジエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルプロピルエトキシシラン、シクロヘプチルトリエトキシシラン、ジシクロヘプチルジエトキシラン、シクロヘプチルメチルジエトキシシラン、シクロヘプチルエチルジエトキシシラン、シクロヘプチルプロピルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシランおよびフェニルプロピルジエトキシシランなどであり、この中で1種以上を単独または混合して使用することができる。
【0036】
前記固体触媒に対する前記外部電子供与体の使用量は、重合方法によって多少差異があるが、触媒成分中のチタン原子に対する外部電子供与体中のシリコン原子のモル比が0.1〜500の範囲であるのが好ましく、1〜100の範囲であることがより好ましい。もし、前記固体触媒成分中のチタン原子に対する外部電子供与体中のシリコン原子のモル比が0.1未満であれば、生成されるプロピレン重合体の立体規則性が顕著に低くなり好ましくなく、500を超えると、触媒の重合活性が顕著に落ちる問題点がある。
【0037】
前記プロピレン重合または共重合方法において、重合反応の温度は20〜120℃であることが好ましいが、重合反応の温度が20℃未満であると、反応が十分に進行されないので好ましくなく、120℃を超えると、活性の低下が甚だしく、重合体の物性にも良くない影響を与えるので好ましくない。
【発明の効果】
【0038】
本発明の方法によって製造された固体触媒を使用すれば、環境有害物質を含有しないながら、立体規則性が優れたポリプロピレンを高い収率で重合することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、具体的な実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。しかし、これら実施例などは例示的な目的であるだけで、本発明がこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例]
実施例1
1.固体触媒の製造
窒素で十分に置換された、1リットルサイズの攪拌機が設けられたガラス反応器に、トルエン150mlとジエトキシマグネシウム(平均粒径20μmの球形であり、粒度分布指数が0.86であり、嵩密度が0.35g/ccのもの)20gを投入し、10℃に維持した。四塩化チタン40mlをトルエン60mlに希釈して、1時間にわたって投入した後、反応器の温度を110℃まで上げてやりながら、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2−エン‐2,3-ジカルボン酸ジブチルエステル6.6gを注入した。110℃で2時間維持した後、90℃に温度を下げて、攪拌を止め上澄液を除去し、追加にトルエン200mlを使用して1回洗浄した。これにトルエン150mlと四塩化チタン50mlを投入して、温度を110℃まで上げて2時間維持した。熟成過程が終わった前記のスラリー混合物を毎回当たりトルエン200mlで2回洗浄し、40℃でノルマルヘキサンで毎回当たり200mlずつ5回洗浄して、薄黄色の固体触媒成分を得た。窒素流で18時間乾燥させて得られた固体触媒成分中のチタン含量は3.2重量%、内部電子供与体の含量は10.2重量%であった。
【0041】
2.ポリプロピレン重合
4リットルサイズの高圧用ステインレス製反応器内に、前記の固体触媒10mgとトリエチルアルミニウム6.6mmol、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.66mmolを投入した。続いて、水素1000mlと液体状態のプロピレン2.4リットルを順に投入した後、温度を70℃まで上げて重合を実施した。重合開始後2時間が経過すれば、反応器の温度を常温まで下げながらバルブを開けて、反応器内部のプロピレンを完全に脱気させた。
その結果、得られた重合体を分析して、表1に示した。
ここで、触媒活性、立体規則性は次のような方法で決定した。
(1) 触媒活性(kg-PP/g-cat) = 重合体の生成量(kg) ÷ 触媒の量(g)
(2) 立体規則性(X.I.):混合キシレン中で結晶化されて析出された不用成分の重量%
【0042】
参照実施例2
実施例1の1.固体触媒の製造において、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2−エン‐2,3-ジカルボン酸ジブチルエステル6.6gの代りに、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジブチルエステル6.5gを使用して触媒を製造した。固体触媒成分中のチタン含量は3.0重量%、内部電子供与体の含量は9.4重量%であった。次に、実施例1と同一な方法でポリプロピレン重合を行い、結果を表1に示した。
【0043】
実施例3
実施例1の1.固体触媒の製造において、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2−エン‐2,3-ジカルボン酸ジブチルエステル6.6gの代りに、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-2,3-ジカルボン酸ジエチルエステル5.3gを使用して触媒を製造した。固体触媒成分中のチタン含量は2.9重量%、内部電子供与体の含量は9.5重量%であった。次に、実施例1と同一な方法でポリプロピレン重合を行い、結果を表1に示した。
【0044】
参照実施例4
実施例1の1.固体触媒の製造において、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2−エン‐2,3-ジカルボン酸ジブチルエステル6.6gの代りに、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸ジエチルエステル5.3gを使用して触媒を製造した。固体触媒成分中のチタン含量は2.8重量%、内部電子供与体の含量は9.3重量%であった。次に、実施例1と同一な方法でポリプロピレン重合を行い、結果を表1に示した。
【0045】
実施例5
実施例1の2.ポリプロピレン重合において、シクロヘキシルメチルジメトキシシランの代りに、ジシクロペンチルジメトキシシランを使用して重合を実施した。結果は表1に示した。
【0046】
比較例1
1.固体触媒の製造
窒素で十分に置換され、1リットルサイズの攪拌機が設けられたガラス反応器に、トルエン150ml、テトラハイドロフュラン12ml、ブタノール20ml、マグネシウムクロライド21gを投入し、110℃に昇温後、1時間を維持させて、均一溶液を得た。溶液の温度を15℃に冷却し、四塩化チタン25mlを投入した後、反応器の温度を60℃で1時間に亘って昇温し、10分間熟成後、 15分間停置させて、 担体を沈め、上部の溶液を除去した。反応器内に残ったスラリーは、200mlのトルエンを投入し、攪拌、停置、上澄液の除去過程を2回繰り返して洗浄した。
このようにして得られたスラリーに、トルエン150mlを注入した後、15℃で四塩化チタン25mlをトルエン50mlに希釈して、1時間にわたって投入した後、反応器の温度を30℃まで分当たり0.5℃の速度で上げた。反応混合物を30℃で1時間維持した後、ジイソブチルフタレート7.5mlを注入し、さらに分当たり0.5℃の速度で110℃まで昇温させた。
110℃で1時間維持した後、90℃に温度を下げ、攪拌を止め、上澄液を除去し、追加にトルエン200mlを使用して同一な方法で1回洗浄した。これにトルエン150mlと四塩化チタン50mlを投入して、温度を110℃まで上げて1時間維持した。熟成過程が終わった前記のスラリー混合物を、毎回当たりトルエン200mlで2回洗浄し、40℃でヘキサンで毎回当たり200mlずつ5回洗浄して、薄黄色の固体触媒成分を得た。窒素流で18時間乾燥させて得られた固体触媒成分中のチタン含量は3.3重量%であった。
【0047】
2. ポリプロピレン重合
前記の固体触媒10mgを使用して実施例1と同一な方法で重合を実施し、その結果を表1に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
上記表1に示した通り、本発明による実施例1ないし実施例5は、ビシクロアルケンジカルボキシルレート系内部電子供与体を使用して、立体規則性と活性が全て優れた反面、比較例1は活性が非常に劣勢であり、立体規則性も実施例より劣ることを分かる。