特許第5671631号(P5671631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5671631コーティング組成物の添加剤としてのポリヒドロキシアルカノエートの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671631
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】コーティング組成物の添加剤としてのポリヒドロキシアルカノエートの使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 167/04 20060101AFI20150129BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20150129BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20150129BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20150129BHJP
   C09D 175/00 20060101ALI20150129BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150129BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   C09D167/04
   C09D167/00
   C09D163/00
   C09D133/00
   C09D175/00
   C09D7/12
   B32B27/36
【請求項の数】16
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-548838(P2013-548838)
(86)(22)【出願日】2012年1月12日
(65)【公表番号】特表2014-505769(P2014-505769A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】EP2012050410
(87)【国際公開番号】WO2012098041
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2013年8月20日
(31)【優先権主張番号】11151181.2
(32)【優先日】2011年1月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】598067245
【氏名又は名称】ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】ハンス マルク
(72)【発明者】
【氏名】ヤウンキー ヴォイシーヒ
(72)【発明者】
【氏名】フランク アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】レンツ ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】ルティークヘーデ ヘンデリク
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−503227(JP,A)
【文献】 特開平01−234474(JP,A)
【文献】 特開2004−018723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00−10/00
C09D101/00−201/10
B05D1/00−7/26
B29D9/00
B32B1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学硬化性および/または放射線硬化性コーティング組成物の添加剤としてのポリヒドロキシアルカノエートの使用であって、前記コーティング組成物は、
記コーティング組成物の総量に対して、合計分率が10〜90wt%のバインダーとしての自己架橋性または外部架橋性ポリマー樹脂と任意に架橋剤としての有機化合物と、
0.01〜20wt%のポリヒドロキシアルカノエートと含み、
前記ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレートおよびポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート−コ−4−ヒドロキシブチレートから成る群から選択されるポリマーおよび/または共重合体である、使用。
【請求項2】
前記ポリヒドロキシアルカノエートは、モノマー単位として以下の構造の少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【化1】
[式中、
xは1、2、3または4であり、
Rは、H、アルキル、アリール、アルケニル、アラルキル、ハロアルキル、ハロゲンまたはシアノ、あるいはエポキシ基、エーテル基、アシル基、エステル基および/またはカルボキシル基を含むラジカルである。]
【請求項3】
xは1または2であり、RはHまたはアルキルであることを特徴とする請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記ポリヒドロキシアルカノエートは、モノマーから構成される1または複数のブロックを含み、前記モノマーは、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシバレリアン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸および3−ヒドロキシオクタン酸から成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項5】
使用前の前記ポリヒドロキシアルカノエートは、粉体として存在し、それ自体で使用されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
使用前の前記ポリヒドロキシアルカノエートは、粒径がd50=0.5μmからd50=15μmの粒子として存在し、それ自体で使用されることを特徴とする請求項に記載の使用。
【請求項7】
単一のポリヒドロキシアルカノエートが使用されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
少なくとも1つの前記ポリヒドロキシアルカノエートは、前記コーティング組成物中の分率が前記コーティング組成物の総量に対して0.5〜10wt%であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記ポリヒドロキシアルカノエートは、艶消剤、手触り品質を改善するための添加剤、粘度に影響を与えるための添加剤、耐引っかき性を改善するための添加剤、流動性調整剤および/または耐ブロッキング性を改善するための添加剤として使用されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記ポリヒドロキシアルカノエートは艶消剤として使用されることを特徴とする請求項に記載の使用。
【請求項11】
添加剤としてポリヒドロキシアルカノエートを含むコーティング組成物であって、前記コーティング組成物の総量に対して、0.01〜20wt%のポリヒドロキシアルカノエートを含み、
前記ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレートおよびポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート−コ−4−ヒドロキシブチレートから成る群から選択されるポリマーおよび/または共重合体であり、
記コーティング組成物は、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、エポキシ樹脂および/またはアルキド樹脂の群から選択されるバインダーとして少なくとも1つの自己架橋性または外部架橋性ポリマー樹脂と、前記コーティング組成物の総量に対して、任意に、15〜99.5wt%の少なくとも1つの架橋剤と、0〜84.99wt%の少なくとも1つの溶媒とを含み、前記コーティング組成物は、化学硬化性および/または放射線硬化性コーティング組成物であるコーティング組成物。
【請求項12】
前記ポリヒドロキシアルカノエートは、前記コーティング組成物中の分率が前記コーティング組成物の総量に対して0.5〜10wt%であることを特徴とする請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記ポリヒドロキシアルカノエートは、モノマー単位として以下の構造の少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項11又は12に記載のコーティング組成物。
【化2】
[式中、
xは1,2,3または4であり、
Rは、H、アルキル、アリール、アルケニル、アラルキル、ハロアルキル、ハロゲンまたはシアノ、あるいはエポキシ基、エーテル基、アシル基、エステル基および/またはカルボキシル基を含むラジカルである。]
【請求項14】
前記ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレートおよびポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート−コ−4−ヒドロキシブチレートから成る群から選択されるポリマーおよび/または共重合体であることを特徴とする請求項11又は12に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
艶消剤としてポリヒドロキシアルカノエートを含むことを特徴とする請求項11〜14のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
請求項11〜15のいずれか1項に記載のコーティング組成物によって基材に生成されるコーティング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング組成物の添加剤としてのポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の使用に関する。さらに本発明は、PHAを含むコーティング組成物に関する。また本発明は、PHAを含むコーティング組成物から生成されるコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
コーティング産業の分野では、従来からの実施で、コーティング組成物、特に透明ワニス(クリアコート)の添加剤として、たとえば高多孔性の非晶質二酸化ケイ素を使用することによって、たとえば光沢度を減少させている。光沢度の減少または失透度の増大によって、特定の光学プロフィールがコーティングに与えられ、その特性を理由に最近よく用いられるようになっている。このような二酸化ケイ素粒子の最も広く知られていて一般に利用される種類は、シリカのゲル化または沈殿によって得られる。その後、得られた二酸化ケイ素は、洗浄、乾燥および粉砕される。別の種類の二酸化ケイ素粒子は、熱分解した二酸化ケイ素の凝集によって生成され、これは、さまざまな方法で行なうことができる。この後者の種類(たとえば、Evonik社製のAcematt TS 100)は、前者の粒子と比較して、失透率がかなり増大している(10%から15%)。したがって、特定の失透度を得るために、各コーティング組成物には前者の種類の粒子より後者の種類の粒子が実質的に少量必要となる。
【0003】
しかし、失透率が増大した生成物の種類は、ワニスなどのコーティング組成物に使用する場合、粘度がきわめて急増する。粘度が増大するという望ましくない効果は、上に記載する種類の粒子などのように、粒子濃度が低い種類が他の生成物と同じ失透率を得るのに必要最小量であっても生じる。したがって、失透率の増大は粘度の激増に矛盾することになる。多くは、コーティング組成物および/またはコーティングの機械特性に対して不利な影響が見られる。さらに詳しい情報に関しては、「Lackadditive、Johan Bieleman、Weinheim、New York、Chichester、Brisbane、Singapore、Toronto、Wiley、1998」が参照可能である。
【0004】
同じように、コーティング組成物の艶消剤としての特定のワックスの使用が知られている。一般に、そのようなワックスは、上記の二酸化ケイ素粒子より失透率が低い。これらのワックスの失透率を増大させるためには、さまざまな方法がある。たとえば、米国特許出願公開第2003/0154885号明細書は、コーティング組成物のさまざまな特性を改善するために特定のワックスの混合物を使用することを記載している。記載されている方法の1つは、失透率を改善するものである。その混合物は、C2−C18α−オレフィンのホモポリマーまたは共重合体を含み、メタロセン触媒によって調製され、さまざまな公知のワックスの群から選択される少なくとも1つの他のワックスをさらに含む。しかし、特定のコーティング系中のワックスは分散性が低いことが唯一の欠点となりうる。
【0005】
国際公開第2008/068003号パンフレットは、二酸化ケイ素粒子とワックスの組み合わせに関して記載しているワックスでコーティングされたケイ素粒子を艶消剤として使用している。
【0006】
同じように、艶消剤としての特別な脂肪族ポリウレタンと高度に架橋したアクリル酸エステルビーズ(たとえばMicrochem(スイス)社製)との使用が知られている。さらに、この種類の艶消剤は、特に柔軟で心地良い感触の膜表面をもたらす。艶消剤は、上記の二酸化ケイ素粒子と比較して失透率が減少するため、比較的多くの量が必要となる。
【0007】
また、ポリメチル尿素系の有機艶消剤(たとえばPergopakという商品名の製品)も記載されている。これらの樹脂は、さまざまなコーティング系に良好な失透効果をもたらす。さらに、良好な機械抵抗と心地良い感触の表面とが、仕上げた後のコーティングで得られる。
【0008】
上記ワックスおよび有機艶消剤などの石油化学原料系の合成ポリマーに関連するこれまで以上の問題は、たとえば生物分解性が低いことである。これらは、環境に蓄積されると環境負荷を引き起こす。この理由から、合成ポリマーの代替の原料源としてPHAの重要性がますます高まっている。この種類のPHA系の合成ポリマーは、石油化学原料系のポリマーと異なり、生物分解性に適している。PHAは、さまざまな細菌によって合成され、栄養分が乏しい場合にカーボンおよびエネルギー源として利用されるポリエステルである。ポリ−3−ヒドロキシブチレート(P−3HB)が最もよく知られ、最も評価されているPHAである。発酵過程およびその後の精製に対応して供給することによって、P−3HB系の共重合体が得られ、3−ヒドロキシブタン酸の他に、たとえば3−ヒドロキシバレリアン酸、4−ヒドロキシブタン酸および/またはC6−C163−ヒドロキシ脂肪酸などのさまざまなモノマーを含むことが可能である。PHAは、たとえば梱包材料として使用される生物分解性プラスチック材料の生成に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0154885号明細書
【特許文献2】国際公開第2008/068003号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Lackadditive、Johan Bieleman、Weinheim、New York、Chichester、Brisbane、Singapore、Toronto、Wiley、1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明によって対処する課題は、コーティング組成物の失透率を増大させたり、コーティング組成物で生成されるコーティングの失透度を増大させたりする新しい可能性を見出し、これにより特定の外観を理由にこれまで以上に最近よく用いられるコーティングの艶消し光学プロフィールを得るものである。さらに同時に、コーティング組成物またはコーティング組成物を使用して生成されるコーティングの他の重要な品質特性を適合および/または改善する必要がある。さらに具体的には、コーティング組成物およびコーティングの粘度、流動性、耐引っかき性、透明度、耐ブロッキング性など典型的な特性、さらにはコーティングの手触り品質も改善する必要がある。特に、上記の特性の間でバランスをとる必要がある。上記の特性、特に失透率または失透度は、非石油化学原料系の特定の添加剤をコーティング組成物に混合することによって得る必要がある。その結果、特に、コーティング組成物およびコーティング中の生物分解性がきわめて低い合成物質の量を減少させつつ、上に記載した優れた特性、特に良好な失透率を得る必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、上に記載した課題は、ポリヒドロキシアルカノエートの使用によって解決できることがわかった。
【0013】
したがって、本発明は、コーティング組成物の添加剤としてのポリヒドロキシアルカノエートの使用を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、ポリヒドロキシアルカノエートを含むコーティング組成物を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、ポリヒドロキシアルカノエートを含む本発明のコーティング組成物によって基材に生成されるコーティングを提供する。
【0016】
本発明の使用によって、コーティングの光沢度が顕著に減少したり、コーティング組成物の失透率が増大したりする。さらに、本発明のコーティング組成物およびコーティングは他の特性に優れ、特に、粘性がわずかに増大し、流動性が良好で、耐引っかき性が高く、透明度が低く、耐ブロッキング性が良好であり、さらには手触り品質が望ましい。さらに、PHAは石油化学原料系ではないため、本発明のコーティング組成物およびコーティングの石油化学物質の割合を減少しつつ、上記の優れた品質を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
PHAは、本発明に従って、添加剤、特にコーティング組成物の艶消剤または除光剤として使用される。当業者が認識しているように、添加剤は、系、たとえばコーティング組成物に添加される一般に使用される補助剤または物質であり、たとえば上記の系またはそれより生成される系に、特定の特性、たとえば失透度が高く、耐引っかき性が高く、かつ/あるいは手触り感が改善するなどの上記の有利な特性をコーティングにもたらす。このさらに詳細な情報は、Roempp−Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1998、13ページを参照されたい。したがって、使用または利用分野に応じて、PHAはさまざまな添加剤として独創的に使用される。たとえば、PHAは艶消剤として使用することができる。しかし、たとえば手触り品質を改善するために、粘度に特に影響を与えるために、耐引っかき性を改善するために、流動性を最適化するために、あるいは耐ブロッキング性を増大させるために、添加剤としての特定の使用も可能である。また、PHAは、コーティング組成物および/またはコーティングのたとえば上に挙げた複数の特性などの多くのさまざまな特性に影響を与えたり、改善したりする添加剤として使用することができるのは言うまでもない。これは、PHAが、たとえば複数の機能を備える添加剤として使用可能であることを意味する。
【0018】
添加剤、特に艶消剤として本発明による使用に用いるPHAは、天然由来のポリエステル類であり、周知のようにさまざまな細菌によって合成でき、当業者に知られている方法によって単離および/または精製することができる。
【0019】
一般に、PHAは、組換え細菌培養物を使用し、発酵によって工業生産される。同じように遺伝子組み換え植物による製造、あるいはバイオ廃棄物の嫌気的発酵によるその製造に関しても示されている。さらに詳しい情報に関しては、「Polyhydroxyalkanoates:an overview、Bioresource Technology 87(2003)137−146」を参照されたい。PHAを生成する発酵過程の終了後に、使用される細菌培養の細胞バイオマスから生成物を分離する必要がある。対応する単離法および精製方法に関しては、たとえば「Chemistry and Technology of Biodegradable Polymers、G.J.L.Griffin、Springer、第1版(1993年12月31日)、ISBN−10:0751400033」に記載されている。精製後、ポリヒドロキシアルカノエートは、室温、つまり約10〜40℃で粉末状、あるいは粉体物質として一般に得られる。粉体とは、周知のように細かく粉砕した固体物質の塊を意味する。
【0020】
本発明による使用に用いるPHAが、モノマービルディングブロックとして、重合してポリエステルを形成するヒドロキシカルボン酸によるものである。これらのモノマーまたはヒドロキシカルボン酸は、特に2−ヒドロキシカルボン酸から6−ヒドロキシカルボン酸である。これは、たとえばヒドロキシル基がモノマーのカルボキシル基に対して少なくともβ位にあるのが好ましいことを意味する。さらに、ヒドロキシカルボン酸はさまざまな置換基を有することも可能である。存在しうる置換基には、たとえばアルキル基、さまざまな官能性のアルキル基、アリール基、アルケニル基、ハロゲン基、シアノ基、エポキシ基、エーテル基、アシル基、エステル基およびカルボキシル基、さらにはそのような基の組み合わせが挙げられるが、これに限定されない。好適なモノマーは、PHAが構成単位またはモノマー単位として以下の構造の少なくとも1種類を含むものである。
【0021】
【化1】
【0022】
式中、
xは1、2、3または4、特に1または2、きわめて好ましくは1であり、
Rは、H、アルキル、アリール、アルケニル、アラルキル、ハロアルキル、ハロゲン、シアノ、あるいはエポキシ基、エーテル基、アシル基、エステル基および/またはカルボキシル基を含むラジカル、特にHまたはアルキルであり、アルキルの場合はメチルまたはエチルが好ましく、メチルがさらに好ましい。
【0023】
構成単位またはモノマー単位の式は、一般には複数の同じまたは異なるモノマー、本発明ではヒドロキシカルボン酸が連続して化学結合していることを意味する。本発明では、化学結合はエステル結合を含む。したがって、モノマー単位はポリマー鎖のモノマー由来の単位であり、同じモノマーまたはさまざまなモノマーに由来する他の複数の単位を有するポリマー鎖の鎖結合に存在する。
【0024】
本発明で好ましく使用されるPHAは、同じモノマーの繰り返し構造単位からそれぞれ成る1または複数のブロックを含み、各モノマーは、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシバレリアン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸および/または3−ヒドロキシオクタン酸から成る群から選択される。本発明に従って特に好ましく使用されるのは、ポリ−3−ヒドロキシブチレート(P−3HB)、ポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート(P−3HB−3HV)、ポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート(P−3HB−4HB)およびポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート−コ−4−ヒドロキシブチレート(P−3HB−3HV−4HB)のポリマー構造および/または共重合構造の少なくとも1つを含むPHAである。本発明の特に好ましい一実施形態は、上記のポリマーおよび共重合体のうち1または複数、好ましくは1つから成るPHAを使用する。
【0025】
本発明で使用するPHAの分子量は、きわめて大きく異なりうる。したがって、PHAの質量平均分子量(Mw)は、たとえば5,000〜2,000,000g/mol(ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定)である。PHAの質量平均分子量(Mw)は、80,000〜300,000g/mol(GPCによって測定)であるのが好ましい。
【0026】
上に記載したように、精製後には、PHAは一般に粉体として得られ、本発明に従ってたとえばその形態で使用することができる。
【0027】
このようにPHAは、たとえばさまざまな供給元(たとえばBiomer社(独国)、Tianan Biologic Material社(中国)、Tianjin Green Bioscience社(中国))から入手可能である。本発明のための材料は、粒子を含むのが好ましい。特に好ましい実施形態では、PHAは、さらに細かい一次粒子が凝集した粒子の形態で使用され、任意に粉砕しても微粉にしてもよい。このように粒子または粉体は、任意にさらに粉砕でき、任意にさらに狭い粒度分布が得られる。これは、一般に用いる粉砕法を使用して行われ、たとえばジェットミル、ビーズミル、スパイラルジェットミルおよび同じようなミルを使用して粉砕される。PHAは、ジェットミルを使用して微粉にし、PHA粒子を生成するのが好ましい。
【0028】
使用されるPHA粒子は、粒径が定義されるのが有利に好ましい。本発明では、粒径はパラメータd50によって示す。このパラメータは、粒子の50wt%の粒径が上記のd50の以下であることを意味する。PHA粒子は、粒径が好ましくはd50=0.05μmからd50=100μm、さらに好ましくはd50=0.1μmからd50=50μm、きわめて好ましくはd50=0.5mμからd50=15μm、特にd50=1μmからd50=7μmである。粒径は、粒子の直径がいずれの場合も球体とされる粒子の直径(直径近似値)を意味する。
【0029】
本発明では、粒径測定は、レーザ回折や当業者に知られている技術によって行われる。レーザ光などの光線束を透過する粒子は、たとえば光を散乱する。光が散乱する角度は、粒子の大きさおよび/またはその直径に直接関係がある。その測定法に関する詳細な情報に関しては、以降の実施例が参照可能である。
【0030】
コーティング組成物の本発明の使用では、PHAは、いずれの場合もコーティング組成物の総量に対して0.01〜20wt%、好ましくは0.5〜10wt%、特に1〜8wt%で使用されるのが好ましい。単一のPHAまたは2つ以上の異なるPHAの組み合わせがある。単一のPHAが使用されるのが好ましい。また、PHAは、たとえば上に記載した艶消剤などの他の艶消剤と組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本発明の使用において使用されるコーティング組成物は任意であってよい。さまざまなコーティング組成物とその成分に関しては、たとえば「Lackrohstoff−Tabellen、E.Karsten/O.Lueckert、Vincentz 2000 ISBN 3878705611」および「Pigment−und Fuellstoff−Tabellen、O.Lueckert、Vincentz 2002 ISBN 9783878707448」に記載されている。いずれの場合も本発明の使用では、コーティング組成物は、バインダーとして少なくとも1つの典型的なポリマー樹脂と、さらに任意に典型的な有機溶媒溶液および/または水と、さらに任意に他の典型的なコーティング添加剤とを含む。コーティング組成物のそのような成分が選択する方法および量は当業者に知られている。当業者は、その技術知識に基づいて、いずれの場合もこの具体的事例の要件に従ってそのような選択をすることができる。
【0032】
バインダーとしてのポリマー樹脂は、たとえば従来のポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、アクリル樹脂(ポリアクリレート樹脂およびポリメタクリレート樹脂など)、ポリエステルアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリエーテルアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシ樹脂および/またはアルキド樹脂であるが、これに限定されない。さらに詳しい情報に関しては、「Roempp−Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1998、73−74ページ」を参照されたい。これらのポリマー樹脂は、自己架橋でも外部架橋でもよい。これは、周知のように樹脂の架橋官能基が1つの樹脂および同じ樹脂、あるいは異なる有機化合物の中に存在していてもよいことを意味する。外部架橋系の場合、たとえばアミノ樹脂、さらにはモノマー性および/またはポリマー性の、ブロックおよび/または遊離ポリイソシアネートは、架橋剤、特ポリイソシアネートとしてさらに存在してもよく、これにより、たとえばポリマー樹脂のヒドロキシル基と反応させて薄膜を形成することが可能である。1つの好ましい外部架橋系では、バインダーとしての少なくとも1つのヒドロキシ官能性ポリマー樹脂、特にヒドロキシ官能性ポリエステルは、架橋剤として少なくとも1つのポリイソシアネートと結合する。
【0033】
本発明の使用では、バインダーとしてアクリル樹脂、ポリエステルアクリル樹脂および/またはポリエステルポリオール樹脂が特に使用される。水性コーティング組成物の場合の特に好ましい実施形態はアクリル樹脂を使用し、溶媒性コーティング組成物では、ヒドロキシ官能性ポリエステルと少なくとも1つのポリイソシアネートとの組み合わせであり、非溶媒性コーティング組成物では、単に反応性希釈剤によるものであり、本発明ではポリエステルアクリル樹脂を放射線硬化するのが有利である。本発明では、「溶媒性」などの上で選択した用語の定義は、以下の記載で確認することができる。
【0034】
コーティング組成物中のバインダーとしてのポリマー樹脂と、任意に架橋剤として存在する有機化合物との合計分率は、この具体的事例に依存し、大きく異なりうる。本発明の特定の実施形態では、その合計分率は、いずれの場合もコーティング組成物の総量に対してたとえば10〜90wt%であってよく、好ましくは15〜80wt%、きわめて有利には25〜60wt%である。しかし、これより少なくても多くても全く可能であり、たとえばコーティング組成物が粉体コーティング原料である場合は特に多くなる。その場合、その合計分率は最大99.5wt%となりうる。
【0035】
コーティング組成物は、たとえばポリマー樹脂の種類と、任意に使用される架橋剤の種類に応じて物理的硬化および/または化学的硬化および/または放射線硬化してもよい(この点に関しては、たとえばRoempp−Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1998、274〜276ページおよび542〜544ページを参照されたい)。コーティング組成物は、1成分系、2成分系または多成分系であってよい。当業者は、いずれの場合も要件に従って、上記の可能性からを選択する方法を知っている。
【0036】
コーティング組成物は任意に溶媒を含む。使用される溶媒は、当業者に知られている典型的な有機溶媒、たとえば脂肪族溶媒、脂環式溶媒、芳香族溶媒、たとえばブチルグリコール、ブチルジグリコール、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトンおよびメチルエチルケトンなどの典型的なエーテル、エステルおよび/またはケトンであるが、これに限定されない。溶媒しては水も使用される。コーティング組成物は、たとえば水性でも溶媒性でもよい。本発明では、水性とは、コーティング組成物は溶媒として主に水を含むことを意味する。水性コーティング組成物の場合では、溶媒の総量に対して特に20wt%以下、特に10wt%以下の有機溶媒がコーティング組成物に存在している。
【0037】
コーティング組成物が、溶媒の総量に対して10wt%以下、好ましくは5wt%以下、特に好ましくは2wt%以下の水を含む場合、本発明において、前記コーティング組成物は、溶媒性であると考える。水性または溶媒性を具体化する上記の割合と比較して、コーティング組成物はさらにバランスがとれた割合および比の有機溶媒溶液および水を含むことも可能であることは言うまでもない。
【0038】
コーティング組成物中の溶媒の分率は、コーティング組成物の総量に対してたとえば0〜84.99wt%であってよい。
【0039】
溶媒の代わりに、あるいは溶媒のほかに、コーティング組成物は、任意に反応性希釈剤を含む。使用される反応性希釈剤は、当業者には知られている典型的な低粘性化合物であり、コーティング組成物に希釈効果を与え、化学反応によって薄膜に留まる。たとえば、当業者に知られているモノアクリレート、ジアクリレートおよび/またはトリアクリレートは、たとえばジプロピレングリコールジアクリレートなどの反応性希釈剤として放射線硬化系で使用してもよい。さらに詳しい情報に関しては、「Roempp−Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1998,491ページ」を参照されたい。
【0040】
また、コーティング組成物は、たとえば粉体コーティング原料であってよい。粉体コーティング原料は、固形分が100%の有機コーティング粉体、通常は熱硬化性有機コーティング粉体である。粉体コーティング原料によるコーティングは、あらゆる溶媒も必要としない。
【0041】
特定の利点は、本発明の使用のために、水性および溶媒性のみならず、たとえば反応性希釈剤による粉体コーティング原料またはコーティング組成物などの非溶媒性のコーティング組成物も使用することが可能である。したがって、本発明の使用の適用可能性はきわめて広い。
【0042】
さらに、本発明の使用のために用いられるコーティング組成物は、顔料または充填剤をさらに含んでもよい。そのような顔料または充填剤は、この事例の要件に従って当業者によって選択することが可能である。さらに詳しい情報に関しては、「Roempp−Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1998、250〜252ページ、さらには451〜453ページ」を参照されたい。
【0043】
しかし、使用するコーティング組成物には、顔料および充填剤は実質的に含まれない。特に、使用するコーティング組成物は透明ワニスである。
【0044】
さらに、本発明の使用で用いるコーティング組成物は、さまざまなコーティング添加剤をさらに含んでもよい。そのようなコーティング添加剤は、当業者には知られており、その技術知識に基づき、この事例の要件に従って選択することが可能である。たとえば、光開始剤、消泡剤、湿潤剤、セルロース誘導体(たとえば硝酸セルロースおよび酢酸セルロース)などの皮膜形成助剤、流動性調整剤、分散剤および/またはレオロジー制御添加剤を使用してもよいが、これに限らない。
【0045】
本発明は、PHAを含むコーティング組成物をさらに提供する。また、本発明の使用における上に記載した実施形態および好ましい実施形態は、使用されるPHAおよびコーティング組成物に関して、PHAを含む本発明のコーティング組成物に対応して適用される。
【0046】
コーティング組成物は、当業者に知られている方法を使用して生成され、調製の特殊性はない。たとえば、撹拌タンクまたは溶解槽などの従来および公知の混合アセンブリでコーティング組成物の成分を撹拌および混合しながら徐々に添加するなどの公知の技術が使用される。
【0047】
本発明は、本発明のコーティング組成物によって生成されるコーティングも提供する。
【0048】
コーティングは、本発明のコーティング組成物を基材に塗布し、塗布されたコーティング組成物を硬化することによって生成される。
【0049】
また、コーティングは、当業者に知られている塗布技術と、これに続く硬化法とによって基材に生成される。塗布は、たとえば公知のスプレー法、噴射法、展布法、ローリング法、注入法、含浸法および/またはディッピング法によって行われるが、これに限定されない。
【0050】
コーティング組成物を基材に塗布した後に、よく用いられる技術に従って硬化される。たとえば、塗布されたコーティング組成物は物理的に乾燥してもよく、熱硬化および/または活性放射線(放射線硬化)を使用して、好ましくは紫外線、さらには電子線によって硬化してもよい。熱硬化は、コーティング組成物および/または基材の種類に応じて、たとえば約10〜約250℃で行なってもよい。また、硬化時間は、たとえば硬化法(熱硬化または化学硬化)の種類、使用されるコーティング組成物および/または基材の種類それぞれに依存している。たとえば、硬化は1分から数時間あるいは何日でも、たとえば最大10日間行なってもよい。ここで基材は、動作していても静止していてもよい。硬化条件は、当業者によってその技術知識に基づいて問題とならないように各事例に適合させることができる。
【0051】
膜厚は、3μm〜5mmであり、10μm〜2mmが好ましい。繰り返して言うが、測定因子は、いずれの場合も個別基準、さらには適用の個別範囲に認められる条件である。
【0052】
本発明で使用可能な基材は、コーティング組成物に用いられるあらゆる基材である。さらに具体的には、本発明のコーティングは、さまざまな構成および形態の金属、ガラス、プラスチック、木、革、合成皮革、セラミックス、紙および布に塗布されるが、これに限定されない。
【0053】
本発明のコーティングは、一重コーティングでも多重コーティングでもよい。多重コーティングの場合では、本発明のコーティングの個々の被膜を生成するコーティング組成物は、同じでも異なってもよい。しかし、使用したコーティング組成物の少なくとも1つは本発明のコーティング組成物であり、すなわちPHAを含むことが本発明には不可欠である。
【0054】
本発明の使用によって、コーティング組成物の優れた失透率、あるいはコーティングの優れた失透度が成功裏に得られる。光沢度がかなり減少しつつ、粘性がわずかに増大し、流動性が良好で、耐引っかき性が高く、透明度が高く、耐ブロッキング性が良好で、手触り品質が望ましいなどの特性も優れる。上記の特性の間で優れたバランスが得られる。さらに、本発明に従って使用されるPHAは、たとえば石油化学原料系の艶消剤より、生物分解しやすいことから環境への負担が少ない。上記の有利な特性は、本発明のコーティング組成物および本発明のコーティングにも明らかに適している。
【0055】
実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0056】
A)
さまざまな供給元から得たPHAをジェットミルによってさまざまな強度で微粉にし、PHA粒子を生成した。ここで、異なる粒度分布の粒子を得た。粒径または粒度分布は、Sympatec RODOS乾燥分散システムを備えたSympatec HELOS/BF測定システムを使用してレーザ回折によって23℃で測定した。
【0057】
表1はPHA微粉粒子の対応するデータの概要を示す。PHA粒子は、添加剤または艶消剤として3つの異なるコーティング系の異なるコーティング組成物に使用した(「C)欄」を参照)。
【0058】
【表1】
【0059】
1本発明の使用に用いるPHA
P−3HB=ポリ(3−ヒドロキシブチレート)
P−3HB−3HV=ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)
P−3HB−4HB=ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)
【0060】
表1によるPHAのほかに、市販されている典型的な二酸化ケイ素系の艶消剤をコーティング組成物に使用した(「C)欄」を参照)。また、市販のワックスを艶消剤として使用した(「C)欄」を参照)。表2および3は、使用した従来の艶消剤の対応するデータの概要を示す。
【0061】
【表2】
【0062】
1 熱分解した二酸化ケイ素により生成
2 沈殿により生成
3 ゲル化により生成
【0063】
【表3】
【0064】
B)
A)に示した艶消剤を使用して、さまざまなコーティング組成物を生成した。これらのコーティング組成物を使用して、さまざまな基材上にコーティングを生成した(「C)欄」を参照)。
【0065】
コーティング組成物とコーティングのさまざまな特性を評価した。以下に、評価した特性と、これらの評価に用いる分析法を記載する。
【0066】
(塗布して硬化した)コーティングの流動性、クレータ、泡沫および透明度をコントラストカードおよび/またはガラス板上で視覚的評価した(評価基準1〜5、1=きわめて良好、5=不良、透明度に対しては5=低い)。また、コーティング組成物の外観および均質性を視覚的評価した。
【0067】
コーティングの手触り品質も評価した。この場合、6人が対応する基材のコーティングに触り、評価基準(評価基準1〜5、1=きわめては心地良く、滑らかな感触、5=心地悪く、荒い感触)に従って評価した。
【0068】
Byk−Gardner社製のMicro−TRI−Gloss光沢度計を使用して(60°の角度の光沢)、コーティングの光沢度をコントラストカード上で測定した。値が高いと光沢度は高くなる。
【0069】
コーティングイメージのヘイズおよび明暸性さは、「ヘイズ−ガードプラス(haze-gard plus)」装置(Byk−Gardner社製)を使用してポリエステルフィルム(Melinex O)上で測定した。
【0070】
ヘイズは、表面の光が入射光線の主反射方向から逸れる角度で乱反射することから生じ、表面は乳白色のヘイズを帯びるのが見られる。ASTM D 1003は、主反射方向からの入射光から2.5°超に逸れる角度で反射する光の割合としてヘイズを定義している。
【0071】
イメージの明暸性(つまり、透過の鮮明さ)は、反射の主平面から逸れるきわめて狭い角度で分散する強度が比較的高い光に依存している。その効果は、対象とする試料を通して細部が確認できる精度を表す。イメージの明暸性は、反射の主平面から2.5°未満に逸れる角度で測定される(Byk−Gardner社製品カタログ2007−2008)。
【0072】
「ヘイズ−ガードプラス」装置を使用して互いに別々に測定するイメージのヘイズおよび明暸性の値が、各々高い場合には、イメージのヘイズまたは明暸性が高ということである。
【0073】
コーティングの耐ブロッキング性をコントラストパネル上で測定した。コーティングしたコントラストパネル(面積が5×10cmの試験片)を中央で曲げ、曲げたコーティング領域を合わせて圧力をかけた(1時間、60℃、負荷重量1kg)。圧力をかけた領域をコーティングが損傷することなく互いに再び容易に離すことができる場合、耐ブロッキング性は良好である。ここでも、1〜5の評価基準が適用される(上記参照)。
【0074】
コーティング組成物の粘度は、10 1/sの剪断速度でStressTechレオメーター(Reologica社製)を使用して23℃で測定した。
【0075】
コーティングの摩擦係数(COF)は、ガラス板上で、Altekモデル9505AE(負荷重量0.5kg)を使用して23℃で、いずれの場合も一定の条件で測定した。
【0076】
値が低いと表面の感触に滑らかである(この点に関しては、「Kittel、Lehrbuch der Lacke und Beschichtungen、Analyse und Pruefungen、第10巻、S.Hirzel Verlag Stuttgart、2006、568〜569ページ」も参照されたい)。
【0077】
耐引っかき性は、SATRA摩耗試験法によってコントラストカード上で測定した。報告する数字は、最初の擦過傷の跡が目視できるまでの摩擦サイクル数である。さらに、光沢度は試験前後に測定した(60°の角度の光沢度、上記参照)
【0078】
C)
コーティング組成物とコーティングの生成および評価
以下に記載する調製および評価のすべてを25℃で行なった。
【0079】
C1)コーティング系1
コーティング組成物およびコーティングは、コーティング系1で生成した(表4を参照)。
【0080】
【表4】
【0081】
Laromer PE 56F:不飽和ポリエステルアクリル樹脂
Laromer DPGDA(ジプロピレングリコールジアクリレート、反応性希釈剤としてのアクリル酸エステル(BASF社製))
BYK−UV 3570:反応性の流動性調製剤としてのポリエステル変性アクリロイル官能性ポリジメチルシロキサン
BYK−1790:非シリコーン系の消泡剤
Irgacure500:2つの光開始剤の混合物(BASF社製)
【0082】
コーティング系1の成分を、溶解槽で撹拌しながら上に示した順序で徐々に混合した。次に、A)に示したものからのさまざまな艶消剤を添加し、撹拌しながら10分間分散した。使用した艶消剤と、いずれの場合も各製剤の総重量に対するその重量分率(wt%)とを表5に示す。
【0083】
このように生成したコーティング組成物を、25μmのワイヤードクターと、25μmの4方向バーアプリケータとを使用してガラス板に塗布した。
【0084】
次に、塗布したコーティング組成物を紫外線照射によって硬化した(UV照射硬化システム(IST社製)、ベルト速度5m/分、水銀ランプ、120W/cm)。
【0085】
表5は、生成したコーティング組成物およびコーティングのさまざまな特性および試験結果の概要を示す。
【0086】
【表5】
【0087】
PHAを含む本発明のコーティング組成物は、沈殿も塊も見られない均質の外観を示す。また、本発明のコーティングの特性、特に失透率は、従来のコーティングの特性と同じか、さらに良好である。全体としては、本発明のコーティング組成物およびコーティングに関しては、上記の異なる特性の間に優れたバランスが見られ、このバランスは従来のコーティング組成物およびコーティングよりいずれの場合もはるかに良好である。
【0088】
さらに、コーティング組成物の粘度に対する使用した艶消剤の効果を確認した(表6)。また、使用した艶消剤と、いずれの場合も個々の製剤の総重量に対するその重量分率(wt%)とを示す。
【0089】
【表6】
【0090】
典型的な艶消剤、特に二酸化ケイ素系のものの使用と比較して、本発明による使用にPHAを用いた場合、コーティング材の粘度が実質的に小さく増大する。
【0091】
C2)コーティング系2
コーティング組成物およびコーティングは、コーティング系2で生成した(表7を参照)。
【0092】
【表7】
【0093】
Setaqua 6756(Nuplex Resins社製):自己架橋アクリル樹脂の分散剤
BYK−093:ポリグリコール中の消泡性ポリシロキサンおよび疎水性固体の混合物
BYK−346:ポリエーテル非変性シロキサン
【0094】
コーティング系2の成分を、溶解槽で撹拌しながら上に示した順序で徐々に混合した。次に、A)に示したものからのさまざまな艶消剤を添加し、撹拌しながら10分間分散した。使用した艶消剤と、いずれの場合も各製剤の総重量に対するその重量分率(wt%)は表8からわかる。
【0095】
このように生成したコーティング組成物を、100μmのワイヤードクターと、100μmの4方向バーアプリケータとを使用してガラス板に塗布した。
【0096】
次に、試料を25℃で1週間保存し、コーティング組成物を硬化した。
【0097】
表8は、生成したコーティング組成物およびコーティングのさまざまな特性および試験結果の概要を示す。
【0098】
【表8】
【0099】
PHAの本発明の使用によって、従来の艶消剤を使用する場合と同じような品質特性が得られ、特に、失透率が良好となる。酸化ケイ素系の艶消剤とともにPHAを独創的に使用することによって有利な特性を示す。
【0100】
さらに、コーティング系2で生成したコーティング組成物およびコーティングの流動性、気泡形成性および耐引っかき性を評価した(表9を参照)。また、使用した艶消剤と、いずれの場合も各製剤の総重量に対するその重量分率(wt%)とを示す。
【0101】
【表9】
【0102】
1 使用したAQUAMAT 270分散剤の固形分に対する。
【0103】
ここでも、従来のコーティング組成物およびコーティングを比較して、本発明のコーティング組成物およびコーティングに関して、改善した特性、特に改善した失透率および改善した流動性が認められる。
【0104】
コーティング系2の他のコーティング組成物およびコーティングに関して、クレータ、流動性および耐ブロッキング性の評価をした(表10を参照)。また、使用した艶消剤と、いずれの場合も各製剤の総重量に対するその重量分率(wt%)とを示す。
【0105】
【表10】
【0106】
1 使用したAQUACER 539エマルションの固形分に基づく
【0107】
本発明のコーティング組成物およびコーティングは、従来の石油化学原料系の艶消剤を含むコーティング組成物およびコーティングに匹敵する特性を示す。
【0108】
C3)コーティング系3
コーティング組成物およびコーティングは、コーティング系3で生成した(表11を参照)。
【0109】
【表11】
【0110】
Desmophen 1300 BA(Bayer Material Science社製):ポリエステル樹脂
NCチップE 510 ESO(DOW社製):硝酸セルロース
BYK−323:アラルキル非変性ポリメチルアルキルシロキサン
Desmodur HL 60 BA(Bayer Material Science社製):ジイソシアン酸トルエン/ヘキサメチレンジイソシアネートによる芳香族/脂肪族ポリイソシアネート
【0111】
コーティング系3の成分1を、溶解槽で撹拌しながら上に示した順序で徐々に混合した。次に、A)に示したものからのさまざまな艶消剤を添加し、撹拌しながら10分間分散した。使用した艶消剤と、いずれの場合も個々の製剤の総重量に対するその重量分率(wt%)は表12で確認することができる。コーティング系3の成分2を調製するために、表11のB)に示す成分を、溶解槽で撹拌しながら上に示した順序で徐々に混合した。塗布直前に、2つの成分を成分1/成分2の割合(質量比)が2/1となるように混合した。
【0112】
このように生成したコーティング組成物を、100μmのワイヤードクターと、100μmの4方向バーアプリケータとを使用してガラス板に塗布した。さらに、コーティング組成物をポリエステルフィルム(Melinex O)に流した。
【0113】
次に、試料を25℃で24時間保存し、コーティング組成物を硬化し、これにより基材にコーティングを生成した。
【0114】
表12は、生成したコーティングに認められるさまざまな特性および試験結果の概要を示す。
【0115】
【表12】
【0116】
本発明のコーティングのさまざまな特性は、石油化学原料系の艶消剤を含む従来のコーティングよりさらに良好か、あるいはこれに匹敵している。したがって、本発明によるコーティングでは、石油化学物質の割合を減少させつつ、上記の優れた特性が得られる。