【実施例】
【0056】
A)
さまざまな供給元から得たPHAをジェットミルによってさまざまな強度で微粉にし、PHA粒子を生成した。ここで、異なる粒度分布の粒子を得た。粒径または粒度分布は、Sympatec RODOS乾燥分散システムを備えたSympatec HELOS/BF測定システムを使用してレーザ回折によって23℃で測定した。
【0057】
表1はPHA微粉粒子の対応するデータの概要を示す。PHA粒子は、添加剤または艶消剤として3つの異なるコーティング系の異なるコーティング組成物に使用した(「C)欄」を参照)。
【0058】
【表1】
【0059】
1本発明の使用に用いる
PHA
P−3HB=ポリ(3−ヒドロキシブチレート)
P−3HB−3HV=ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)
P−3HB−4HB=ポリ(
3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)
【0060】
表1による
PHAのほかに、市販されている典型的な二酸化ケイ素系の艶消剤をコーティング組成物に使用した(「C)欄」を参照)。また、市販のワックスを艶消剤として使用した(「C)欄」を参照)。表2および3は、使用した従来の艶消剤の対応するデータの概要を示す。
【0061】
【表2】
【0062】
1 熱分解した二酸化ケイ素により生成
2 沈殿により生成
3 ゲル化により生成
【0063】
【表3】
【0064】
B)
A)に示した艶消剤を使用して、さまざまなコーティング組成物を生成した。これらのコーティング組成物を使用して、さまざまな基材上にコーティングを生成した(「C)欄」を参照)。
【0065】
コーティング組成物とコーティングのさまざまな特性を評価した。以下に、評価した特性と、これらの評価に用いる分析法を記載する。
【0066】
(塗布して硬化した)コーティングの流動性、クレータ、泡沫および透明度をコントラストカードおよび/またはガラス板上で視覚的評価した(評価基準1〜5、1=きわめて良好、5=不良、透明度に対しては5=低い)。また、コーティング組成物の外観および均質性を視覚的評価した。
【0067】
コーティングの手触り品質も評価した。この場合、6人が対応する基材のコーティングに触り、評価基準(評価基準1〜5、1=きわめては心地良く、滑らかな感触、5=心地悪く、荒い感触)に従って評価した。
【0068】
Byk−Gardner社製のMicro−TRI−Gloss光沢度計を使用して(60°の角度の光沢)、コーティングの光沢度をコントラストカード上で測定した。値が高いと光沢度は高くなる。
【0069】
コーティングイメージのヘイズおよび明暸性さは、「ヘイズ−ガードプラス(haze-gard plus)」装置(Byk−Gardner社製)を使用してポリエステルフィルム(Melinex O)上で測定した。
【0070】
ヘイズは、表面の光が入射光線の主反射方向から逸れる角度で乱反射することから生じ、表面は乳白色のヘイズを帯びるのが見られる。ASTM D 1003は、主反射方向からの入射光から2.5°超に逸れる角度で反射する光の割合としてヘイズを定義している。
【0071】
イメージの明暸性(つまり、透過の鮮明さ)は、反射の主平面から逸れるきわめて狭い角度で分散する強度が比較的高い光に依存している。その効果は、対象とする試料を通して細部が確認できる精度を表す。イメージの明暸性は、反射の主平面から2.5°未満に逸れる角度で測定される(Byk−Gardner社製品カタログ2007−2008)。
【0072】
「ヘイズ−ガードプラス」装置を使用して互いに別々に測定するイメージのヘイズおよび明暸性の値が、各々高い場合には、イメージのヘイズまたは明暸性が高ということである。
【0073】
コーティングの耐ブロッキング性をコントラストパネル上で測定した。コーティングしたコントラストパネル(面積が5×10cmの試験片)を中央で曲げ、曲げたコーティング領域を合わせて圧力をかけた(1時間、60℃、負荷重量1kg)。圧力をかけた領域をコーティングが損傷することなく互いに再び容易に離すことができる場合、耐ブロッキング性は良好である。ここでも、1〜5の評価基準が適用される(上記参照)。
【0074】
コーティング組成物の粘度は、10 1/sの剪断速度でStressTechレオメーター(Reologica社製)を使用して23℃で測定した。
【0075】
コーティングの摩擦係数(COF)は、ガラス板上で、Altekモデル9505AE(負荷重量0.5kg)を使用して23℃で、いずれの場合も一定の条件で測定した。
【0076】
値が低いと表面の感触に滑らかである(この点に関しては、「Kittel、Lehrbuch der Lacke und Beschichtungen、Analyse und Pruefungen、第10巻、S.Hirzel Verlag Stuttgart、2006、568〜569ページ」も参照されたい)。
【0077】
耐引っかき性は、SATRA摩耗試験法によってコントラストカード上で測定した。報告する数字は、最初の擦過傷の跡が目視できるまでの摩擦サイクル数である。さらに、光沢度は試験前後に測定した(60°の角度の光沢度、上記参照)
【0078】
C)
コーティング組成物とコーティングの生成および評価
以下に記載する調製および評価のすべてを25℃で行なった。
【0079】
C1)コーティング系1
コーティング組成物およびコーティングは、コーティング系1で生成した(表4を参照)。
【0080】
【表4】
【0081】
Laromer PE 56F:不飽和ポリエステルアクリル樹脂
Laromer DPGDA(ジプロピレングリコールジアクリレート、反応性希釈剤としてのアクリル酸エステル(BASF社製))
BYK−UV 3570:反応性の流動性調製剤としてのポリエステル変性アクリロイル官能性ポリジメチルシロキサン
BYK−1790:非シリコーン系の消泡剤
Irgacure500:2つの光開始剤の混合物(BASF社製)
【0082】
コーティング系1の成分を、溶解槽で撹拌しながら上に示した順序で徐々に混合した。次に、A)に示したものからのさまざまな艶消剤を添加し、撹拌しながら10分間分散した。使用した艶消剤と、いずれの場合も各製剤の総重量に対するその重量分率(wt%)とを表5に示す。
【0083】
このように生成したコーティング組成物を、25μmのワイヤードクターと、25μmの4方向バーアプリケータとを使用してガラス板に塗布した。
【0084】
次に、塗布したコーティング組成物を紫外線照射によって硬化した(UV照射硬化システム(IST社製)、ベルト速度5m/分、水銀ランプ、120W/cm)。
【0085】
表5は、生成したコーティング組成物およびコーティングのさまざまな特性および試験結果の概要を示す。
【0086】
【表5】
【0087】
PHAを含む本発明のコーティング組成物は、沈殿も塊も見られない均質の外観を示す。また、本発明のコーティングの特性、特に失透率は、従来のコーティングの特性と同じか、さらに良好である。全体としては、本発明のコーティング組成物およびコーティングに関しては、上記の異なる特性の間に優れたバランスが見られ、このバランスは従来のコーティング組成物およびコーティングよりいずれの場合もはるかに良好である。
【0088】
さらに、コーティング組成物の粘度に対する使用した艶消剤の効果を確認した(表6)。また、使用した艶消剤と、いずれの場合も個々の製剤の総重量に対するその重量分率(wt%)とを示す。
【0089】
【表6】
【0090】
典型的な艶消剤、特に二酸化ケイ素系のものの使用と比較して、本発明による使用にPHAを用いた場合、コーティング材の粘度が実質的に小さく増大する。
【0091】
C2)コーティング系2
コーティング組成物およびコーティングは、コーティング系2で生成した(表7を参照)。
【0092】
【表7】
【0093】
Setaqua 6756(Nuplex Resins社製):自己架橋アクリル樹脂の分散剤
BYK−093:ポリグリコール中の消泡性ポリシロキサンおよび疎水性固体の混合物
BYK−346:ポリエーテル非変性シロキサン
【0094】
コーティング系2の成分を、溶解槽で撹拌しながら上に示した順序で徐々に混合した。次に、A)に示したものからのさまざまな艶消剤を添加し、撹拌しながら10分間分散した。使用した艶消剤と、いずれの場合も各製剤の総重量に対するその重量分率(wt%)は表8からわかる。
【0095】
このように生成したコーティング組成物を、100μmのワイヤードクターと、100μmの4方向バーアプリケータとを使用してガラス板に塗布した。
【0096】
次に、試料を25℃で1週間保存し、コーティング組成物を硬化した。
【0097】
表8は、生成したコーティング組成物およびコーティングのさまざまな特性および試験結果の概要を示す。
【0098】
【表8】
【0099】
PHAの本発明の使用によって、従来の艶消剤を使用する場合と同じような品質特性が得られ、特に、失透率が良好となる。酸化ケイ素系の艶消剤とともにPHAを独創的に使用することによって有利な特性を示す。
【0100】
さらに、コーティング系2で生成したコーティング組成物およびコーティングの流動性、気泡形成性および耐引っかき性を評価した(表9を参照)。また、使用した艶消剤と、いずれの場合も各製剤の総重量に対するその重量分率(wt%)とを示す。
【0101】
【表9】
【0102】
1 使用したAQUAMAT 270分散剤の固形分に対する。
【0103】
ここでも、従来のコーティング組成物およびコーティングを比較して、本発明のコーティング組成物およびコーティングに関して、改善した特性、特に改善した失透率および改善した流動性が認められる。
【0104】
コーティング系2の他のコーティング組成物およびコーティングに関して、クレータ、流動性および耐ブロッキング性の評価をした(表10を参照)。また、使用した艶消剤と、いずれの場合も各製剤の総重量に対するその重量分率(wt%)とを示す。
【0105】
【表10】
【0106】
1 使用したAQUACER 539エマルションの固形分に基づく
【0107】
本発明のコーティング組成物およびコーティングは、従来の石油化学原料系の艶消剤を含むコーティング組成物およびコーティングに匹敵する特性を示す。
【0108】
C3)コーティング系3
コーティング組成物およびコーティングは、コーティング系3で生成した(表11を参照)。
【0109】
【表11】
【0110】
Desmophen 1300 BA(Bayer Material Science社製):ポリエステル樹脂
NCチップE 510 ESO(DOW社製):硝酸セルロース
BYK−323:アラルキル非変性ポリメチルアルキルシロキサン
Desmodur HL 60 BA(Bayer Material Science社製):ジイソシアン酸トルエン/ヘキサメチレンジイソシアネートによる芳香族/脂肪族ポリイソシアネート
【0111】
コーティング系3の成分1を、溶解槽で撹拌しながら上に示した順序で徐々に混合した。次に、A)に示したものからのさまざまな艶消剤を添加し、撹拌しながら10分間分散した。使用した艶消剤と、いずれの場合も個々の製剤の総重量に対するその重量分率(wt%)は表12で確認することができる。コーティング系3の成分2を調製するために、表11のB)に示す成分を、溶解槽で撹拌しながら上に示した順序で徐々に混合した。塗布直前に、2つの成分を成分1/成分2の割合(質量比)が2/1となるように混合した。
【0112】
このように生成したコーティング組成物を、100μmのワイヤードクターと、100μmの4方向バーアプリケータとを使用してガラス板に塗布した。さらに、コーティング組成物をポリエステルフィルム(Melinex O)に流した。
【0113】
次に、試料を25℃で24時間保存し、コーティング組成物を硬化し、これにより基材にコーティングを生成した。
【0114】
表12は、生成したコーティングに認められるさまざまな特性および試験結果の概要を示す。
【0115】
【表12】
【0116】
本発明のコーティングのさまざまな特性は、石油化学原料系の艶消剤を含む従来のコーティングよりさらに良好か、あるいはこれに匹敵している。したがって、本発明によるコーティングでは、石油化学物質の割合を減少させつつ、上記の優れた特性が得られる。