(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671672
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】タイロッド用のアンカーヘッド
(51)【国際特許分類】
E21D 20/00 20060101AFI20150129BHJP
E02D 5/80 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
E21D20/00 W
E02D5/80 Z
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-69726(P2013-69726)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-159728(P2014-159728A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2013年3月28日
(31)【優先権主張番号】10 2013 002 734.9
(32)【優先日】2013年2月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514275646
【氏名又は名称】FiReP Rebar Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(72)【発明者】
【氏名】塚本 健一
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−293196(JP,A)
【文献】
特開2005−121154(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3023469(JP,U)
【文献】
特開2007−327535(JP,A)
【文献】
特開2012−140985(JP,A)
【文献】
特公昭48−024974(JP,B1)
【文献】
独国特許出願公開第19828371(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 20/00
E02D 5/80
F16B 23/00〜43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイロッド(2)をアンカー穴(5)の大気側に係止するためのアンカーヘッド(1)であって、
タイロッド(2)のアンカーねじ(2)上に螺合するためのねじ孔(7)を備えたアンカーナット(3)と、
ねじ込まれたタイロッド(2)からアンカーナット(3)へ加えられる引っ張り力をアンカー穴(5)を包囲する基底(6)へ伝達するように定められた、前記アンカーナット(3)と協働する、アンカープレート開口部(8)を備えたアンカープレート(4)と、
を有し、
アンカーナット(3)が円錐形状の支持領域(7)を有し、アンカーナットのその支持領域が、取り付けられた状態において、アンカープレート(4)のアンカープレート開口部(8)内へ嵌入し、そこで、アンカープレート(4)が少なくともアンカープレート開口部(8)の領域内に有する、相補的な内側円錐(9)に支持され、
かつアンカーナット(3)が少なくとも1つの、スリット(12)を有し、前記スリットがアンカーナットの壁面をその軸方向の延びの部分領域にわたって中断する、
ものにおいて、
少なくとも1つのスリット(12)が、アンカーナット(3)の大気側の端部(13)に開口しており、かつ
前記スリットが、そこから始まって、アンカーナット(3)の軸方向の全長の25%から90%の間となる長さにわたって延びており、
アンカーナット(3)の大気側の端部(13)のスリットを有する領域が、タイロッド(2)を係止する際に、円錐形状の支持領域(7)がアンカープレート(4)の内側円錐(9)内へ進入することによって内側へ圧縮され、タイロッド(2)とアンカーナット(3)の間の径方向と軸方向のねじのあそびが減少する、
ことを特徴とするアンカーヘッド。
【請求項2】
アンカーナットの壁面が、円錐状の支持領域(7)の基底側の領域(14)内で、中断なしで全周にわたってつながって形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のアンカーヘッド(1)。
【請求項3】
アンカーナットの壁面の、少なくとも1つのスリット(12)の延長上に残る周領域が、予め定められた負荷を上回った場合に破断する、破断すべき箇所として形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のアンカーヘッド(1)。
【請求項4】
アンカーナット(3)が複数のスリット(12)、好ましくは2から6のスリット(12)を有し、前記スリットがアンカーナットの壁面の周面にわたって均一に分配されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアンカーヘッド(1)。
【請求項5】
アンカーナット(3)の円錐状の支持領域(7)の大気側の端部に、基底側のストッパ面(24)を有するヘッド領域(10)が連続しており、前記ストッパ面がアンカーナット(3)の長手軸(16)に対して、円錐状の支持領域(7)がアンカーナット(3)の長手軸(16)に対して傾斜する角度よりも大きい角度で傾斜している、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のアンカーヘッド(1)。
【請求項6】
アンカーナット(3)の円錐状の支持領域の大気側の端部に、急激に増大する直径を有するヘッド領域(10)が、該ヘッド領域の基底側の端面がアンカーナット(3)の長手軸(16)に対して直角に延びるストッパ面(24)を形成するように、連続している、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のアンカーヘッド(1)。
【請求項7】
円錐状の支持領域(7)の、アンカーナット(3)のヘッド領域(10)に連続する領域が、目盛および/または少なくとも1つの色目印を有している、
ことを特徴とする請求項5または6に記載のアンカーヘッド(1)。
【請求項8】
アンカープレート(4)が、アンカープレート開口部(8)を包囲するカラー(20)を有し、前記カラー内に内側円錐(9)が形成されており、カラー(20)がすべて、あるいは、大部分が、アンカープレート(4)の基底側に延びている、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のアンカーヘッド(1)。
【請求項9】
カラー(20)が、別体の挿入部材(22)内に形成されており、前記挿入部材が、円筒状のカラー領域(21)をもってアンカープレート(4)のアンカープレート開口部(8)内に挿入されており、かつカラー領域(21)から外側へ突出する添接段部(23)によってアンカープレート(4)の大気側の表面に添接する、
ことを特徴とする請求項8に記載のアンカーヘッド(1)。
【請求項10】
アンカーナット(3)とアンカープレート(4)の間の円錐ペアリングの接触面(7、9)の少なくとも1つに、摩擦を減少させるコーティングが設けられている、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のアンカーヘッド(1)。
【請求項11】
アンカーナット(3)および/またはアンカープレート(4)が、繊維強化されたプラスチックからなる、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のアンカーヘッド(1)。
【請求項12】
タイロッド(2)をアンカー穴(5)の大気側に係止するためのアンカーヘッド(1)を有するアンカーナット(3)であって、アンカーナット(3)がアンカーヘッドを有し、前記アンカーヘッドがアンカーナット(3)の大気側の端部(13)と基底側の端部(15)の間で軸方向の長手方向(16)に延びており、かつタイロッド(2)のアンカーねじ(19)上に螺合するための、長手方向(16)に延びるねじ孔(17)と円錐形状の支持領域(7)とを有しており、前記支持領域の大きい方の直径領域が、アンカーナット(3)の大気側の端部(13)に、そして小さい方の直径領域が基底側の端部(15)に向けられており、アンカーナット(3)が少なくとも1つの、スリット(12)を有し、前記スリットがアンカーナットの壁面をその軸方向の延びの部分領域にわたって中断している、
ものにおいて、
少なくとも1つのスリット(12)が、アンカーナット(3)の大気側の端部(13)に開口しており、かつ
スリットがそこから始まって、アンカーナット(3)の軸方向の全長の25%から90%となる長さにわたって延びており、
アンカーナット(3)の大気側の端部(13)のスリットを有する領域が、タイロッド(2)を係止する際に、円錐形状の支持領域(7)がアンカープレート(4)の内側円錐(9)内へ進入することによって内側へ圧縮され、タイロッド(2)とアンカーナット(3)の間の径方向と軸方向のねじのあそびが減少する、
ことを特徴とするアンカーナット。
【請求項13】
アンカーナットが、請求項2から7の少なくとも1項に記載の特徴をもって形成されている、
ことを特徴とする請求項12に記載のアンカーナット(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載されたアンカーヘッドに関するものである。それは、タイロッドをアンカー穴の大気側に係止するために用いられ、そのためにアンカーナットおよびそれと協働するアンカープレートとを有している。アンカーナットは、その長手軸の方向に延びるねじ孔を用いてタイロッドのアンカーねじ上に螺合するように、定められている。アンカープレートは、前もってアンカープレート開口部を用いてアンカー穴内へ挿入されたタイロッドの大気側の自由端部上に挿し嵌められて、その後螺合されたアンカーナットによって力を加えられる。その場合にアンカープレートは、タイロッドからアンカーナットへ及ぼされる引っ張り力をアンカー穴を包囲する基底へ伝達するように、定められている。
【背景技術】
【0002】
この種のアンカーヘッドとタイロッドおよびその使用は、知られている。それらは一般に、基底の複数の層を互いに結合し、基底の表面近傍領域内に不安定性をもたらすことのある力を、深い位置にある基底層内へ導入するために用いられ、その基底層は十分に大きい拘束力を吸収することができる。その場合にタイロッドは、圧倒的に、採掘の坑内のトンネル区間内で、たとえば炭鉱内で、ロックアンカーとして使用される。多くはそこで空間的にきわめて狭い状況に基づいて、ロックアンカーはしばしば接着アンカーとして回転ドリルで形成されたボーリング穴内へセットされる。掘進の間、ロックアンカーは圧倒的にトンネルフェース、天井の部分を一時的に固定するために、そして特に鉱物/炭層の領域内で側壁を固定するために、使用される。さらに、この種のタイロッドは、コンクリート内で使用するための鉄筋上の終端係止部材としても、使用することができる。
【0003】
この種のタイロッドは、たとえば特許文献1から知られており、その詳細は、特に使用と形成についても、同文献を参照するよう指示する。
【0004】
さらに、タイロッドのためのこの種のアンカーヘッドにおいて、たとえば特許文献2からは、アンカーナットに円錐形状の支持領域が形成されており、アンカーナットのその支持領域が、組み立てられた状態においてアンカープレート開口部内へ嵌入して、そこで、アンカープレートが少なくともこのアンカープレート開口部の領域内に有する、相補的な内側円錐に支持されることが、知られている。
【0005】
さらに、支持能力を向上させ、かつより高い強度を得るために、アンカーナットに少なくとも1つの、好ましくは軸平行に延びるスリットを設けることも、知らており、そのスリットはアンカー壁を、その軸方向の広がりの部分領域にわたって中断する。この種の種概念に基づく、付属のタイロッドを有するアンカーヘッドは、特許文献3から知られている。同様に、タイロッドの支持能力と強度のさらなる向上も望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国公開公報DE19828371A1
【特許文献2】独国実用新案公報DE202008003381U1
【特許文献3】独国公開公報DE102010042352A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の課題は、簡単な構造において係止する際にさらに高い支持能力と改良された強度値を達成する、冒頭で挙げた種類の、安価に形成され、容易に取り扱うことのできるアンカーヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載のアンカーヘッドによって解決される。本発明の好ましい形態と展開が、従属請求項から明らかにされる。
【0009】
本発明に基づく解決において重要なことは、アンカーナットの大気側の端部に少なくとも1つのスリットが開口しており、そこから始まってアンカーナットの軸方向の全長の25%から90%の間、好ましくは30%から88%の間および特に好ましくは50%から85%の間にわたって延びていることである。
【0010】
これまで知られているアンカーヘッドとは異なり、アンカーナットの壁面を中断するスリットが、アンカーナットの基底側の端部にではなく、大気側の端部に位置し、その場合にスリットがアンカーナットの全長にわたって延びていない。
【0011】
それによって、これまで知られている実施形態に対して、アンカーヘッド内部のさらに改良された応力分配およびアンカーナットからタイロッドへの改良された力伝達に基づいて、さらに上昇した支持荷重と強度値を達成することができる。
【0012】
アンカーナットを締め付けることによって積極的に軸方向に負荷を加えることにより、あるいは係止された基底からの収束現象によって受動的に負荷が加わることにより、螺合されたアンカーナットを有するタイロッドがアンカープレートの内側円錐内へだんだんと深く引き込まれるので、径方向に作用する第1のプレスが、ナット円錐の基底側の、スリットのない領域内で最初は弾性的な変形をもたらし、それがアンカーナットの軸方向の支持負荷をさらに増大させる。
【0013】
軸方向の負荷がさらに増大し、ないしはアンカーシャフト内の引っ張りにさらに負荷がかかった場合に、径方向に作用するプレスがさらに増大し、従ってナット円錐のさらなる弾性的な変形および重畳する可塑変形がもたらされ、それがアンカーナットの軸方向の長さにわたってスリットのある領域の方向へ広がる。ここで、外側円錐内の直径の増大にもかかわらず、径方向のプレスに対するアンカーナットの変形抵抗はそれ以上増大せず、本発明に基づいてこの大気側の領域内に配置されたスリットに基づいて、全体として固有の面プレスがアンカープレートの内側円錐によってナット円錐の表面全体に均一化され、それによってアンカーナットの負荷容量が著しく増大する。その場合にアンカーナットのすべてのねじリブは、ほぼ同じ程度で力伝達に利用され、それは、前に知られている、基底側に配置されたスリットを有するアンカーナットにおいては、そうはならない。
【0014】
構成が簡単なことにより、本発明に基づくアンカーヘッドは、安価に形成することができる。アンカーヘッドは、その使用においても、容易に取り扱うことができる。
【0015】
好ましくは、アンカーナットの壁面は、円錐形状の支持領域の、より小さい直径をもって孔の最深部へ向いた、基底側の領域においては、全周面にわたって中断なしでつながって形成されている。
【0016】
その場合に、好ましい実施変形例によれば、アンカーナットの壁面の、1つまたは複数のスリットの延長上に残る周領域は、予め定められた負荷を上回った場合に破断する、破断すべき箇所として形成されている。
【0017】
アンカーナットが、周面に均一に分配された、複数のスリットを有していると、特に効果的である。その場合に好ましくは、それぞれ対をなして対向する、2から6のスリットが設けられている。
【0018】
さらに、アンカーナットの大気側の端部に設けられたスリットを有する領域が次のように、すなわちタイロッドを締め付ける場合にアンカーナットの円錐形状の支持領域がアンカープレートの内側円錐内へ進入することによって、タイロッドとアンカーナットの間の軸方向のねじのあそびだけでなく、径方向のねじのあそびも減少し、あるいは完全に無効にされるように、内側へ向かって圧縮されると、特に効果的である。それによって、一方で、アンカーシステムの最大の支持荷重と強度値が、他方では、たとえば鉄筋の、スリップのない固定も得ることができる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、アンカーナットの円錐形状の支持領域の大気側の端部に、基底側のストッパ面を有するヘッド領域が連続しており、そのストッパ面はアンカーナットの長手軸に対して、円錐形状の支持領域がアンカーナットの長手軸に対して傾斜している角度よりも大きい角度で傾斜している。ストッパ面は、アンカープレートに添接することができ、アンカーナットの円錐状の領域がアンカープレート内へさらに引き込まれることを困難にし、あるいは阻止することができる。
【0020】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、アンカーナットの円錐形状の支持領域の大気側の端部に、急激に増大する直径を有するヘッド領域が次のように、すなわちヘッド領域の基底側の端面がアンカーナットの長手軸に対して直角に延びるストッパ面を形成するように、連続しており、そのストッパ面はアンカープレートの相補的なストッパ面に対して当接することができ、それによってこの形状結合により、アンカーナットの円錐形状の領域がアンカープレートの内側円錐内へさらに引き込まれることが防止される。それによって、アンカープレートの内側円錐内でのアンカーナットの軸方向運動の定められたストロークとそれに伴ってシステム可撓性も定められたように制限することができる。
【0021】
アンカーナットを工具によって容易に螺合することができるようにするために、アンカーナットにはそれ自体知られているやり方で、形状結合部材、好ましくは外側六稜を形成することができ、その場合に形状結合部材は、好ましくはヘッド領域の増大された直径を有する領域内に配置されている。
【0022】
支持領域の、アンカーナットのヘッド領域に直接連続する領域が、目印を有していると、特に効果的であって、その目印は、目盛および/または色目印の形式で形成することができる。負荷を加える全工程の間、本発明に基づくアンカーヘッドは力−距離のグラフにおいてほぼ線形の関数を展開し、その関数はアンカーヘッド内の負荷状態を表すインジケータとして、そしてまた場合によっては発生する、表面近傍の岩盤層の最初の変化(最初の収束)を表すインジケータとしても、利用することができる。これは特に、新しいオーストリアのトンネル工法の考え方において、イニシャルステージにおける方法的利点を意味し、かつ特に安価で、きわめて効果的なモニタリングを可能にする。
【0023】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、アンカープレートは、アンカー開口部を包囲するカラーを有しており、そのカラーがその中に形成された内側円錐のためのハウジングを形成する。カラーは、アンカープレートの片側に、あるいはダブルカラーの形式で両側に、延びることができる。しかしスペースを節約する理由からは、カラーが主として、あるいは特に完全に、アンカープレートの基底側に延びており、それによってアンカー穴の大気側の終端領域内へ差し込むことができると、特に効果的である。その場合にカラーの軸方向の長さは、アンカープレートの厚みの複数倍、好ましくは3倍から10倍である。
【0024】
その場合に、カラーが別体の挿入部材内に形成されており、その挿入部材の円筒状のカラー領域がアンカープレート開口部内へ挿入され、カラー領域から外側へ張り出す添接段部がアンカープレートの大気側の表面に添接すると、特に効果的である。その場合に添接段部の大気側の表面は、好ましくは、アンカーナットが最大設けられている挿入距離だけアンカープレート内へ引き込まれた場合に、アンカーナットのヘッド領域の基底側のストッパ面と接触する。
【0025】
さらに、アンカーナットとアンカープレートの間の円錐ペアの接触面の少なくとも1つに、摩擦を減少させるコーティングあるいは摩擦を減少させる挿入片、特にナイロン挿入片が設けられていると、効果的な場合がある。それによって、同じトルクにおいて、より高い締め付けが可能になる。
【0026】
さらに、アンカーナットおよび/またはアンカープレートが繊維強化されたプラスチックから、特にグラス繊維強化されたプラスチック(GFK)からなると、特に効果的である。しかし、それぞれ適用場合に応じて、アンカーナットおよび/またはアンカープレートは、金属合金から形成することもできる。アンカープレートは、好ましくは円形に形成されているが、角張って、特に正方形に形成することもできる。
【0027】
本発明の対象は、さらに、上述した種類のアンカーヘッド用のアンカーナットである。その場合にアンカーナットは、大気側の端部と基底側の端部の間で軸方向に延びる、ナットボディを有している。ナットボディは、タイロッドのアンカーねじ上に螺合するための、軸方向に延びるねじ孔と、円錐形状の支持領域とを有しており、その支持領域は、より小さい直径を有する基底側の領域をもってまずアンカープレートのアンカープレート開口部内へ差し込むことができ、それによってそこで、取り付けられた状態において、アンカープレートが少なくともそのアンカープレート開口部の領域内に有する、相補的な内側円錐と協働する。その場合に円錐形状の支持領域のより大きい直径領域は、アンカーナットの大気側の端部へ向けられている。アンカーナットは、さらに、好ましくは軸平行に延びる、少なくとも1つのスリットを有しており、そのスリットは、アンカーナットの壁面をその軸方向の延びの部分領域にわたって中断し、かつアンカーナットの大気側の端部において開口しており、スリットはそこから、アンカーナットの軸方向の全長の25%から90%となる長さにわたって延びている。
【0028】
そのほか、上述した種類のアンカーヘッドの他の特徴を有するアンカーナットも、形成することができる。
【0029】
本発明の他の利点と特徴が、以下の説明および図面に示す実施例から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係るアンカーヘッドの第1の実施形態を示す横断面図である。
【
図3】本発明に係るアンカーヘッドの第2の実施形態を示す横断面図である。
【
図4】本発明に係るアンカーヘッドの第3の実施形態を示す横断面図である。
【
図5】
図3に示すアンカーヘッドを有するタイロッドをセットした状態で示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図5には、本発明に係るアンカーヘッド1を有するタイロッド2の実施例が示されており、それにおいてタイロッド2、アンカーナット3およびアンカープレート4は、それぞれ完全に繊維複合材料からなる。タイロッド2は、ここではロックアンカーとしてアンカー穴5内へ挿入されており、そこで穿孔穴の最深部においてそれ自体知られたやり方で、たとえば接着容器によって、固定されている(図面には図示されない)。タイロッド2から及ぼされる引っ張り力は、螺合されたアンカーナット3を介してそれと協働するアンカープレート4へ伝達され、そのアンカープレートはアンカー穴5の大気側の端部を包囲する基底6に支持される。このようにして、ここではロックからなる基底6の、アンカー穴5の領域内に位置する、表面近傍の層が安定化される。
【0032】
アンカーナット3のボディは、円錐形状の支持領域7を有しており、その支持領域は、取り付けられた状態においてアンカープレート4のアンカープレート開口部8内へ嵌入する。そこにおいて、アンカーナット3の円錐形状の支持領域7は、アンカープレート4がアンカープレート開口部8の周壁として有している、相補的な内側円錐9に支持される。円錐形状の支持領域7も、内側円錐9も、ここではセルフロックするように7.5°の円錐角度をもって形成されている。
【0033】
円錐形状の支持領域7の大気側の端部に、アンカーナット3のヘッド領域10が連続しており、そのヘッド領域には取り付けるため、かつ付勢力を加えるために、外側六稜11が設けられている。
【0034】
支持能力を向上させ、より高い強度値を得るために、アンカーナット3は、直径方向に対向し、それぞれ軸平行に延びる2つのスリット12を有しており、そのスリットがアンカーナットの壁面をそれぞれその軸方向の広がりの長さにわたって中断している。本発明によれば、これらのスリット12は、アンカーナット3の大気側の端部13において始まって、アンカーナット3の基底側の端部15から明らかな距離14で終了するように、配置されている。
図1、3および4の実施例において、スリット12は大気側の端部13から始まって、アンカーナット3の軸方向の全長の80%から85%の間となる長さにわたって延びている。
【0035】
その場合に2つのスリット12は、ヘッド領域10と円錐形状の支持領域7の大部分を、2つのセグメント10aと10bに分割している。円錐形状の支持領域7の基底側の端部のみが、アンカーナット3の軸方向の長さの約15%から20%の高さ14において全周面にわたってつながって形成されている。
【0036】
長手軸16の方向において、アンカーナット3につながったねじ孔17が設けられており、その内ねじ18がタイロッド2の波形の特殊ねじプロフィール19に適合されている。すなわちアンカーナット3は、最初はわずかなあそびにおいてタイロッド2上へ容易に螺合することができるが、それに対して後には、内側円錐9内で円錐形状の支持領域7を径方向に押圧し、ないしは締め付ける場合に、アンカーナット3の内ねじ18はタイロッド2のねじ19上にあそびおよびスリップなしで固定される。
【0037】
アンカープレート4は、外側に、従って基底6とは逆の、大気側の表面に、ここでは円錐台形状に形成されている、中央の隆起部を有し、それがカラー20を形成し、そのカラーは中央に、内側円錐9を備えたアンカープレート開口部8を有している。カラー20には、基底6へ向いた基底側の表面において、同様に領域21が突出しており、その領域が、取り付けられた状態においてアンカー穴5内へ嵌入する。
【0038】
その場合に、この基底側のカラー領域21は、それぞれ適用場合に応じて異なる長さで突出する(
図1と3)ことができる。
図4に示す実施例において、カラー20は、その基底側の領域21を含めて、別体の挿入部材22内に形成されており、その挿入部材がアンカープレート4のアンカープレート開口部8内へ挿入されている。ここにおいて挿入部材は、大気側のカラー20から径方向外側へ突出する添接段部23によってアンカープレート4の大気側の表面に添接する。
【0039】
アンカーナット3のヘッド領域10は、急激に増大する直径を有しており、それによってヘッド領域10の基底側の端面には、アンカーナット3の長手軸16に対して垂直に延びるストッパ面24が形成されている。このストッパ面24は、アンカープレート4のカラー20の大気側の表面に形成された、相補的なストッパ面25に当接することができる。その場合にこの形状結合によって、アンカーナット3の円錐形状の支持領域7がアンカープレート4の内側円錐9内へさらに引き込まれることが、防止される。
【0040】
個々のタイロッド2を取り付ける場合に、アンカーナット3とアンカープレート4とからなる、2部材のアンカーヘッド1が、アンカーシャフトエンド26上に予め取り付けられて、その後、タイロッド2が好ましくは接着剤の容器で満たされたアンカー穴5内へセットされる。その場合にアンカーナット3は、合成樹脂の硬化後に、まず従来のようにトルクを用いて締め付けることができ、従ってタイロッド2は2部材のアンカーヘッド1を介して締め付けることができる。
【0041】
アンカーナット3を締め付ける場合に、アンカーナットの終端側の円錐形状の支持領域7が、アンカープレート4の内側円錐9内へ延びる。その場合に、アンカーナット3の円錐形状の支持領域7の大気側の端部は、スリット12に基づいて径方向に圧縮され、それによって径方向のねじのあそびはこのときすでに少なくともほぼ完全に無効にされ、それが、アンカープレート4内でアンカーナット3の締め付けをもたらす。その場合に内ねじ18は、タイロッド2の外ねじ19との形状結合に基づいて、アンカーナット3の軸方向移動を阻止する。
【符号の説明】
【0042】
2 タイロッド
3 アンカーナット
4 アンカープレート
5 アンカー穴
7 支持領域
8 アンカープレート開口部
9 内側円錐
12 スリット