(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671675
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】栓部材、低温貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/00 20060101AFI20150129BHJP
F25D 13/00 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
F25D23/00 302A
F25D13/00 101D
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-242447(P2010-242447)
(22)【出願日】2010年10月28日
(65)【公開番号】特開2012-93055(P2012-93055A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2013年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】パナソニックヘルスケアホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 義広
【審査官】
仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−025471(JP,A)
【文献】
実開昭60−024758(JP,U)
【文献】
実開昭60−086240(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
F25D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口面を有する断熱筐体と、前記開口面を開放または閉塞する断熱扉と、前記断熱筐体の内部に収納された物品を冷却する冷却装置と、前記断熱筐体を構成する断熱壁の庫外側から庫内側へ貫通し内周面に雌螺子が形成された貫通孔と、前記貫通孔の前記庫外側の開口部周囲に設けられた第1鍔部材と、を含んで構成される低温貯蔵庫に用いられ、前記開口部を開放または閉塞する栓部材であって、
前記雌螺子に螺合される雄螺子と、
前記雄螺子が前記雌螺子に螺合されることにより、前記第1鍔部材に当接して前記開口部を閉塞する第2鍔部材と、
前記第2鍔部材の前記第1鍔部材側に設けられたパッキンと、を備え、
前記第2鍔部材の外周部には、前記パッキンの前記第1鍔部材に当接する面よりも前記断熱筐体側に延伸した突出部が設けられ、
前記突出部の長さは、前記第1鍔部材の厚さよりも短く、
前記雄螺子は、
前記雄螺子が前記雌螺子に螺合されつつ、前記第1鍔部材に前記第2鍔部材が当接されていない状態において、前記開口部の一部を開放する切れ込みが外周の一部に形成されてなること、
を特徴とする栓部材。
【請求項2】
請求項1に記載の栓部材であって、
前記雄螺子は、
円柱部材の外周の一部に前記切れ込みが形成された螺子であること、
を特徴とする栓部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の栓部材であって、
前記雄螺子は、
前記切れ込みが前記雄螺子の螺合方向の全長にわたって形成されてなること、
を特徴とする栓部材。
【請求項4】
請求項3に記載の栓部材であって、
前記雄螺子は、
前記切れ込みを複数有すること、
を特徴とする栓部材。
【請求項5】
開口面を有する断熱筐体と、
前記開口面を開放または閉塞する断熱扉と、
前記断熱筐体の内部に収納された物品を冷却する冷却装置と、
前記断熱筐体を構成する断熱壁の庫外側から庫内側へ貫通し内周面に雌螺子が形成され
た貫通孔と、
前記貫通孔の前記庫外側の開口部周囲に設けられた第1鍔部材と、
前記雌螺子に螺合される雄螺子と、前記雄螺子が前記雌螺子に螺合されることにより、前記第1鍔部材に当接して前記開口部を閉塞する第2鍔部材と、前記第2鍔部材の前記第1鍔部材側に設けられたパッキンと、を含み、前記開口部を開放または閉塞する栓部材と、
を備え、
前記第2鍔部材の外周部には、前記パッキンの前記第1鍔部材に当接する面よりも前記断熱筐体側に延伸した突出部が設けられ、
前記突出部の長さは、前記第1鍔部材の厚さよりも短く、
前記雄螺子は、
前記雄螺子が前記雌螺子に螺合されつつ、前記第1鍔部材に前記第2鍔部材が当接されていない状態において、前記開口部の一部を開放する切れ込みが外周の一部に形成されてなること、
を特徴とする低温貯蔵庫。
【請求項6】
請求項5に記載の低温貯蔵庫であって、
前記貫通孔は、
前記断熱筐体の側面の前記断熱壁に設けられていること、
を特徴とする低温貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栓部材、低温貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍物品等の貯蔵や、生体組織及び検体等の冷却保存に用いられる低温貯蔵庫では、庫内の空気が冷却され、庫内の気圧が庫外の気圧よりも低い陰圧の状態となる場合がある。庫内が陰圧状態になると、低温貯蔵庫の扉を開くことは難しくなるため、低温貯蔵庫には、一般的に庫内の陰圧状態を解消するための圧力調整装置が設けられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−25471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、低温貯蔵庫の庫外の空気を庫内に流入させるポートを塞ぐ栓を、利用者が取り外すことにより庫内の陰圧状態を解消している。ところで、利用者は、ポートを塞ぐ栓を取り外す際に栓を落としてしまうことがある。このような場合、低温貯蔵庫の設置場所や低温貯蔵庫の構造等によっては、落下した栓を拾い、再びポートを塞ぐことは利用者の負担になる場合がある。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、利用者が低温貯蔵庫の陰圧状態を解消する際に、利用者の負担を軽減することができる栓部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一つの側面に係る開口面を有する断熱筐体と、前記開口面を開放または閉塞する断熱扉と、前記断熱筐体の内部に収納された物品を冷却する冷却装置と、前記断熱筐体を構成する断熱壁の庫外側から庫内側へ貫通し内周面に雌螺子が形成された貫通孔と、
前記貫通孔の前記庫外側の開口部周囲に設けられた第1鍔部材と、を含んで構成される低温貯蔵庫に用いられ、
前記開口部を開放または閉塞する栓部材であって、前記雌螺子に螺合される雄螺子と、前記雄螺子が前記雌螺子に螺合されることにより、
前記第1鍔部材に当接して前記開口部を閉塞する
第2鍔部材と、
前記第2鍔部材の前記第1鍔部材側に設けられたパッキンと、を備え、
前記第2鍔部材の外周部には、前記パッキンの前記第1鍔部材に当接する面よりも前記断熱筐体側に延伸した突出部が設けられ、前記突出部の長さは、前記第1鍔部材の厚さよりも短く、前記雄螺子は、前記雄螺子が前記雌螺子に螺合されつつ、
前記第1鍔部材に
前記第2鍔部材が当接されていない状態において、前記開口部の一部を開放する切れ込みが外周の一部に形成されてなること、とする。
【発明の効果】
【0007】
利用者が低温貯蔵庫の陰圧状態を解消する際に、利用者の負担を軽減することができる栓部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態である低温貯蔵庫10の斜視図である。
【
図2】断熱扉21,22が開放された状態の低温貯蔵庫10の斜視図である。
【
図4】分解された圧力調整装置30および断熱筐体20の断熱壁の一部を示す図である。
【
図5】部材60及び部材61が断熱筐体20の断熱壁に実際に取り付けられた状態を示す図である。
【
図8】貫通孔80が閉塞された状態の圧力調整装置30の断面図である。
【
図9】貫通孔80が開放された状態の圧力調整装置30の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
図1及び
図2を参照しつつ、本発明の一実施形態である低温貯蔵庫10の概要について説明する。
図1は、断熱扉21が閉じられた状態の低温貯蔵庫10の斜視図であり、
図2は、断熱扉21,22が開放された状態の低温貯蔵庫10の斜視図である。なお、ここでは、X軸方向を低温貯蔵庫10に対する左右の方向とし、Y軸方向を低温貯蔵庫10に対する上下の方向とし、Z軸方向を低温貯蔵庫10に対する前後の方向とする。
【0010】
低温貯蔵庫10は、例えば−85℃以下の超低温度域において、冷凍物品等の貯蔵や、生体組織等の保存を行い、前面(+Z側)に開口面を有する断熱筐体20を備えている。
【0011】
断熱筐体20の前面の開口面には、前面の開口面を開放または閉塞する断熱扉21,22が設けられ、断熱筐体20の下側(−Y側)には、庫内を冷却する冷却装置23が設けられている。また、断熱筐体20の左側(−X側)の側面には、庫内の陰圧状態を解消するための圧力調整装置30が設けられている。
【0012】
断熱扉21は、いわゆる外扉であり、庫内の温度の設定等を行うためのコントロールパネル31が設けられる。断熱扉21の左端には、断熱扉21を開閉するためのハンドル32が設けられている。また、断熱筐体20の左側の側面には、断熱扉21が閉じられた際に、ハンドル32とともに断熱扉21を固定するためのロック部材33が設けられている。断熱扉21の内側には、内扉として庫内の断熱性を高めるための断熱扉22が設けられている。
【0013】
図3は、低温貯蔵庫10の平面図である。断熱筐体20は、例えば金属製の内箱40と、内箱40を覆うように設けられた金属製の外箱41と、断熱筐体20の断熱性を高めるため内箱40及び外箱41の間に充填された断熱材42と、を含んで構成される。なお、内箱40及び外箱41は、冷凍物品等を出し入れするための開口面を前面に有している。
【0014】
断熱扉21は、内部に断熱材45が充填された金属製の扉である。また、断熱扉21の庫内側の周縁部には、断熱扉21を閉じた際に庫内の気密性を高めるためのパッキン46が設けられている。低温貯蔵庫10は、圧力調整装置30において空気の出入りがなく、断熱扉21,22が閉じられると密閉状態となる。
【0015】
ここで、
図4を参照しつつ、圧力調整装置30の詳細について説明する。
図4は、分解された圧力調整装置30と、圧力調整装置30が取り付けられる断熱筐体20の断熱壁の一部を示す斜視図である。
【0016】
圧力調整装置30が取り付けられる断熱筐体20の断熱壁には、庫外側から庫内側へと貫通する貫通孔50が設けられている。圧力調整装置30は、貫通孔50に挿入され、庫外の空気を庫内へ流入させる経路を形成するための部材60,61と、空気を流入させる経路を開放または閉塞する栓部材62と、を含んで構成される。
【0017】
部材60は、庫内側から貫通孔50に挿入される鍔付きの筒状部材であり、外周面に雄螺子が形成された円筒部材70及び、円筒部材70の一端に一体形成された鍔部材71からなる。
【0018】
部材61は、庫外側から貫通孔50に挿入される鍔付きの筒状部材であり、円筒部材72及び、円筒部材72の一端に一体形成された鍔部材73からなる。円筒部材72の内周面には、円筒部材70に形成された雄螺子と螺合させるための雌螺子が形成されている。
【0019】
図5は、部材60,61が断熱筐体20の断熱壁に実際に取り付けられた状態を示す図である。円筒部材70の雄螺子と、円筒部材72の雌螺子とが螺合されることにより、鍔部材71は、内箱40の壁面に庫内側から当接し、鍔部材73は、外箱41の壁面に庫外側から当接する。このため、鍔部材71,73は、断熱筐体21の断熱壁を、庫内側と庫外側から押圧するように結合する。また、円筒部材70及び円筒部材72の内側には、空気を流入させる経路として、庫内側と庫外側とを貫通する貫通孔80が形成される。
【0020】
栓部材62は、貫通孔80の庫外側の開口部81を開放または閉塞する部材であり、
図6に示すように、雄螺子75、ツマミ76、及びパッキン77からなる。なお、ツマミ76及びパッキン77は、鍔部材に相当する。また、
図6は栓部材62の斜視図であり、
図7は栓部材62の側面図である。
【0021】
雄螺子75は、
図4に示すように、円筒部材72の雌螺子に螺合される円柱状の螺子である。雄螺子75の外周には、雄螺子75が螺合される方向に沿って複数の切れ込み100a〜100dが形成されている。切れ込み100a〜100dの長さは、
図7に示した雄螺子75の長さdと略等しい。したがって、切れ込み100a〜100dは、雄螺子75の螺合方向の全長にわたって形成されていることになる。また、本実施形態では、等しい形状の切り込み100a〜100dが、雄螺子75の外周に等間隔で入れられるように、雄螺子75は形成される。
【0022】
ツマミ76は、雄螺子75の一端に雄螺子75と一体に形成され、例えば雄螺子75より直径が長い円柱形状を有する。また、ツマミ76の雄螺子75側の面には、雄螺子75の外周に沿ってパッキン77が貼り付けられている。
【0023】
また、パッキン77は、雄螺子75が円筒部材72の雌螺子に螺合されてねじ込まれることにより、鍔部材73の開口の周囲の面(開口部81が設けられた面)に当接する。したがって、
図8に示すように、栓部材62は、貫通孔80を確実に閉塞するため、庫内から庫外への冷気が漏れることを防止できる。なお、
図8は、貫通孔80が閉塞された状態の圧力調整装置30の断面図(
図3のA−Bの断面を−Z方向に見た際の断面図)である。但し、ここでは、圧力調整装置30の断面構造を容易に理解できるよう、雄螺子75の切りこみ100a〜100dのうち、100aのみを記載している。
【0024】
図9は、貫通孔80が開放された状態の圧力調整装置30の断面図である。なお、
図9も、
図8と同様に、
図3のA−Bの断面を−Z方向に見た際の断面図である。栓部材62が回転されて雄螺子75が緩められると、パッキン77は鍔部材73の開口の周囲の面に当接されていない状態となる。なお、雄螺子75が緩められた状態では、雄螺子75の一部は円筒部材72の雌螺子に螺合されている。このような状態では、例えば切れ込み100aと、開口部81の一部との間を遮るものは無い。したがって、例えば、庫内が陰圧状態である場合、雄螺子75を緩めることにより庫外の空気を庫内へ流入させることが可能となる。つまり、雄螺子75を緩めることにより陰圧状態を解消可能となる。
【0025】
以上、本実施形態の低温貯蔵庫10について説明した。栓部材62の雄螺子75には、切れ込み100a〜100dが形成されているため、本実施形態では、栓部材62を取り外すことなく庫内の陰圧状態を解消できる。この結果、陰圧状態を解消する際に栓部材62を落とす可能性は低くなり、利用者の負担を軽減できる。さらに、例えば、利用者が、切れ込みの無い栓部材で陰圧状態を解消できるような低温貯蔵庫を有している場合、切れ込みのある栓部材62のみを新たに用意すれば、特別な工事等をすることなく、本実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0026】
また、例えば雄螺子75の代わりに、円筒部材に切れ込みをいれた雄螺子を用いることも可能である。しかしながら、円筒部材に切れ込みを入れた雄螺子は、円筒部材の内部が空洞であるため、雄螺子としての部品強度が低下することがある。雄螺子75では、円筒部材ではなく円柱部材を用いるため、雄螺子75の部品強度を向上させることができる。
【0027】
また、例えば、雄螺子75の切れ込みは、雄螺子75の一部だけに形成しても本実施形態と同様の効果を得ることはできる。しかしながら、例えば、切れ込みが雄螺子75の先端(ツマミ76とは反対側の端)から一部しか入っていない場合、庫外と庫内とを連通させるために、利用者はツマミ76を回しすぎ、栓部材62を取り外してしまう可能性もある。雄螺子75では、切れ込み100aは、雄螺子75の螺合方向の全長にわたって形成されている。このため、利用者はツマミ76を少し回して雄螺子75を緩めるだけで、確実に陰圧状態を解消することが可能となる。
【0028】
また、雄螺子75には、4つの切れ込み100a〜100dが形成されている。このため、例えば、1つしか切れ込みが無い場合と比較すると、より早く庫内の陰圧状態を解消できる。
【0029】
また、例えば、庫内と庫外を連通させる貫通孔は、低温貯蔵庫10の前面の断熱扉21に設けることも可能である。しかし、一般的な低温貯蔵庫の断熱扉は、本実施形態と同様に2重構造(内扉及び外扉を備える構造)となっている。このため、前面に貫通孔を設ける場合、低温貯蔵庫の構造が複雑になる。低温貯蔵庫10においては、貫通孔80は、断熱筐体20の側面の断熱壁に設けられているため、利用者の利便性を確保しつつ、低温貯蔵庫10の構造を単純な構造とすることができる。
【0030】
なお、上記実施例は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0031】
10 低温貯蔵庫
20 断熱筐体
21,22 断熱扉
30 圧力調整装置
31 コントロールパネル
32 ハンドル
33 ロック部材
40 内箱
41 外箱
42 断熱材
46,77 パッキン
50,80 貫通孔
60,61 部材
62 栓部材
70,72 円筒部材
71,73 鍔部材
75 雄螺子
76 ツマミ
81 開口部
100a〜100d 切り込み