(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような弾性波デバイスにおいて、誘電体膜の表面を平坦としたまま、厚さを一様に大きくすると、TCF値の絶対値を小さくすることができる反面、励起された弾性表面波の損失が大きくなって、K
2(電気機械結合係数)値は小さくなり、フィルタ等に適用した場合における帯域幅の確保が困難となってしまう。すなわち、従来の弾性波デバイスにおいては、温度に対する周波数特性の安定化とフィルタとしての十分な帯域確保とを両立することが困難であった。
【0005】
それゆえに、本発明の目的は、弾性波デバイスにおいて、フィルタとしての十分な帯域を維持しつつ、温度に対する周波数特性の安定化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の局面は、圧電基板と、前記圧電基板上に形成されて所定波長λのレイリー波を主要弾性波として励起するIDT電極と、前記圧電基板および前記IDT電極を覆うように形成された誘電体膜とを備える弾性波デバイスであって、前記誘電体膜は、前記IDT電極の少なくとも一部の電極指の鉛直上方に凸部を有し、前記IDT電極の電極指の延伸方向に垂直な断面において、前記誘電体膜の上端縁の最も低い部分を通る水平線より上方の前記凸部を含む領域の面積である、当該凸部の1つ当たりの断面積は、0.0125λ
2以下である、弾性波デバイスである。
【0007】
また、上述の断面において、前記水平線からの前記凸部の高さは、0.04λ以上であることが好ましい。
【0008】
また、圧電基板は、カット角および伝播角を右手系直交座標のオイラー角(φ,θ,ψ)で表した場合、θ=35°以上40°以下のニオブ酸リチウムであることが好ましい。
【0009】
また、前記誘電体膜の前記圧電基板への被覆厚さは、0.12λ以上0.72λ以下であることが好ましい。
【0010】
また、このような弾性波デバイスは、前記誘電体膜の表面に被覆された保護膜をさらに備えることが好ましい。
【0011】
本発明の第2の局面は、第1のフィルタと、第1のフィルタの通過帯域より、高周波数側に通過帯域を有する第2のフィルタと、整合回路とを備えるデュプレクサであって、第1のフィルタは、上述の弾性波デバイスを直列共振器および並列共振器として用いたラダーフィルタであり、第1のフィルタの、少なくとも1つの直列共振器に形成された凸部の1つ当たりの断面積を当該直列共振器の励起波長で規格化した規格化断面積は、少なくとも1つの並列共振器に形成された凸部の1つ当たりの断面積を当該並列共振器の励起波長で規格化した規格化断面積より大きい、デュプレクサである。
【0012】
また、第1のフィルタは、上述の弾性波デバイスを用いた二重結合モードフィルタをさらに含み、二重結合モードフィルタに形成された凸部の1つ当たりの断面積を当該結合二重モードフィルタの励起波長で規格化した規格化断面積は、少なくとも1つの並列共振器に形成された凸部の1つ当たりの断面積を当該並列共振器の励起波長で規格化した規格化断面積より大きいことが好ましい。
【0013】
本発明の第3の局面は、第1のフィルタと、第1のフィルタの通過帯域より、高周波数側に通過帯域を有する第2のフィルタと、整合回路とを備えるデュプレクサであって、第2のフィルタは、上述の弾性波デバイスを直列共振器および並列共振器として用いたラダーフィルタであり、第2のフィルタの、少なくとも1つの並列共振器に形成された凸部の1つ当たりの断面積を当該並列共振器の励起波長で規格化した規格化断面積は、少なくとも1つの直列共振器に形成された凸部の1つ当たりの断面積を当該直列共振器の励起波長で規格化した規格化断面積より大きい、デュプレクサである。
【0014】
また、第2のフィルタは、上述の弾性波デバイスを用いた結合二重モードフィルタをさらに含み、結合二重モードフィルタに形成された凸部の1つ当たりの断面積を当該結合二重モードフィルタの励起波長で規格化した規格化断面積は、少なくとも1つの直列共振器に形成された凸部の1つ当たりの断面積を当該直列共振器の励起波長で規格化した規格化断面積より大きいことが好ましい。
【0015】
本発明の第4の局面は、圧電基板と、圧電基板上に形成されて所定波長λのレイリー波を主要弾性波として用いる少なくとも1組のIDT電極と、圧電基板およびIDT電極を覆うように形成された誘電体膜とを備える弾性波デバイスであって、IDT電極はそれぞれ、バスバーおよび当該バスバーから交互に延伸する複数の電極指およびダミー電極指を有し、IDT電極のそれぞれの電極指は、他方のIDT電極の電極指と交互に並び、かつ、他方のIDT電極のダミー電極に対向するよう配置され、IDT電極のそれぞれの電極指の先端と、当該電極指に対向する他方のIDT電極ダミー電極の先端との距離dは、1λ以上3λ以下である、弾性波デバイスである。
【0016】
本発明の第5の局面は、圧電基板と、圧電基板上に形成されて所定波長λのレイリー波を主要弾性波として用いる少なくとも1組のIDT電極と、圧電基板およびIDT電極を覆うように形成された誘電体膜とを備える弾性波デバイスであって、IDT電極はそれぞれ、バスバーおよび当該バスバーから交互に延伸する複数の電極指を有し、IDT電極のそれぞれの電極指は、他方のIDT電極の電極指と交互に並ぶよう配置され、IDT電極のそれぞれの電極指の先端と、他方のIDT電極の端縁との距離dは、1λ以上3λ以下である、弾性波デバイスである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、弾性波デバイスにおいて、フィルタとしての十分な帯域を維持しつつ、温度に対する周波数特性の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について以下に説明する。
図1は本実施形態に係る弾性波デバイス100の構造を示す断面図である。弾性波デバイス100は、圧電基板101上にIDT電極102を形成し、さらに誘電体膜103を被覆して構成される。誘電体膜103は、IDT電極102の上方(IDT電極102を覆う部分)に凸部104を有するように形成される。なお、凸部104は、バイアススパッタリング法によって、誘電体膜103を成膜する際に、圧電基板101に印加するバイアスを制御することにより、形成することができる。
【0020】
圧電基板101は、回転Yカットニオブ酸リチウム基板を用い、レイリー波を主要な弾性表面波として利用する。圧電基板101のカット角および伝播角を右手系直交座標のオイラー角(φ,θ,ψ)で表した場合、θ=35°以上40°以下であるニオブ酸リチウムであることが好ましい。尚、φとψは夫々−20°以上20°以下の任意の値である。本実施形態では圧電基板101を回転Yカットニオブ酸リチウム(カット角129°)基板、即ち、オイラー角(φ,θ,ψ)=(0°,39°,0°)の基板としている。また、IDT電極102として、各厚さ0.04λのモリブデンおよびアルミニウムの積層電極を用いている。ここでλは励起する弾性表面波の波長であり、IDT電極102のピッチの2倍と定義する。また、誘電体膜として二酸化ケイ素(SiO
2)を用いている。
【0021】
発明者は、凸部104を適切な形状で形成することにより、フィルタとしての十分な帯域を維持しつつ、温度に対する周波数特性の安定化を図ることができると考え、レイリー波についてのK
2値を劣化させず、レイリー波についてのTCF値を改善する、凸部104の形状の好適な条件について以下のように検討を行った。
【0022】
まず、弾性波デバイス100において従来同様、凸部104を設けないとした場合の、誘電体膜103の厚さと、K
2(電気機械結合係数)値およびTCF値との関係を調べ、
図2に示す結果を得た。
図2は、誘電体膜の厚さと、レイリー波についてのK
2値および
レイリー波の反共振周波数におけるTCF値(TCF_fa値)との関係を示すグラフである。誘電体膜の表面に凸部104を設けず、平坦としたまま、厚さを一様に大きくすると、
図2に示す通り、TCF_fa値の絶対値が小さくなり改善することができるが、K
2(電気機械結合係数)値は大きく低下し劣化してしまう。
【0023】
つぎに、誘電体膜103の圧電基板101への被覆厚さを0.25λとし、凸部104を設けた場合について、以下のように検討した。
図3に、検討に係る凸部104の形状の例を模式的に示す。
図3の(a)および(b)は、IDT電極102の電極指の延伸方向に垂直な面による弾性波デバイス100の断面図である。
図3の(a)は、凸部104の断面を三角形としたものであり、(b)は、長方形としたものである。凸部104は、各IDT電極102の上部に形成され、断面図において、凸部104およびIDT電極102の電極指の対称軸が一致する。
図3の(a)および(b)の各形状において、凸部104の、この断面における誘電体膜103の上端縁の最も低い部分を含む水平線からの高さ(突出量)および水平線に沿った幅によって定まる断面積と、レイリー波の反共振周波数におけるTCF値(TCF_fa値)およびレイリー波についてのK
2値との関係を調べ、
図4−
図7に示す結果を得た。
【0024】
図4は、凸部104の断面を、各高さの三角形とした場合の、凸部104の1つ当たりの断面積とレイリー波についてのK
2値との関係を示すグラフである。また、
図5は、凸部104の断面を、各高さの長方形とした場合の、凸部104の1つ当たりの断面積とレイリー波についてのK
2値との関係を示すグラフである。
図4および
図5には、
図2に示す、凸部104を設けないとした場合における誘電体膜103の厚さが0.25λのときのレイリー波についてのK
2値も比較値として示してある。
図4に示すように、凸部104の断面の形状が三角形である場合、凸部104を設けても、レイリー波についてのK
2値が比較値より大きく低下することはなく、劣化が発生しないことを確認した。とくに凸部104の高さを0.04λ以上とすると、K
2値は大きくなるか、または、低下幅が抑制され、好ましい。また、
図5に示すように、凸部104の断面の形状が長方形である場合、凸部104を設けることにより、レイリー波についてのK
2値は比較値より概ね大きくなり、改善されることを確認した。
【0025】
また、
図6は、凸部104の断面を、各高さの三角形とした場合の、凸部104の1つ当たりの断面積とレイリー波についてのTCF_fa値との関係を示すグラフである。また、
図7は、凸部104の断面を、各高さの長方形とした場合の、凸部104の1つ当たりの断面積とレイリー波についてのTCF_fa値との関係を示すグラフである。
図6および
図7には、
図2に示す、凸部104を設けないとした場合における誘電体膜103の厚さが0.25λのときのTCF_fa値も比較値として示してある。
図6および
図7に示すように、凸部104の断面の形状が三角形であるか長方形であるかによらず、凸部104を設けることにより、TCF_fa値が改善されることを確認した。
【0026】
以上の結果を整理すると、弾性波デバイス100の凸部104は、高さを0.04λ以上とすることにより、主要波であるレイリー波のK
2値の劣化を抑制しつつ、TCF_fa値を改善することができる。また、本条件は、凸部104の断面形状が三角形や長方形である場合だけでなく、
図1に示すような、三角形と長方形の中間形状である台形である場合においても適用可能である。また、バイアススパッタリング法で形成される凸部104の形状は、断面形状の輪郭が曲線を含む場合であっても、概ね、三角形、長方形、または、台形のいずれかに近似でき、本条件が適用できる。
【0027】
また、弾性波デバイス100の凸部104の断面形状を上底0.04λ、下底0.09λ、高さ0.08λの台形形状とした場合について、誘電体膜103の厚さと、レイリー波のK
2値およびTCF_fa値との関係を調べた。この結果を
図8に示す。従来、一般的に使用される、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)を圧電基板とする弾性波デバイスにおいては、TCF_fa値は−50ppm/K程度であるが、
図8によれば、誘電体膜の厚さが0.12λ以上0.72λ以下であれば、弾性波デバイス100のTCF_fa値の絶対値が、50ppm/Kより小さくなり、従来よりもTCF_fa値を改善することができる。
【0028】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について以下に説明する。本実施形態に係る弾性波デバイ
スは、第1の実施形態に係る弾性波デバイス100において、不要なスプリアスとなるSH波についてのK
2値を所定値以下としたものである。
【0029】
発明者は、第1の実施形態に係る弾性波デバイス100について、SH波についてのK
2値を所定値以下とする、凸部104の形状の好適な条件について以下のように検討を行った。
【0030】
図9は、凸部104の断面を、各高さの三角形とした場合の、凸部104の1つ当たりの断面積と不要波となるSH波についてのK
2値との関係を示すグラフである。また、
図10は、凸部104の断面を、各高さの長方形とした場合の、凸部104の1つ当たりの断面積と不要波となるSH波についてのK
2値との関係を示すグラフである。
図9および
図10に示すように、凸部104の断面の形状が三角形であるか長方形であるかによらず、1つ当たりの断面積を0.0125λ
2以下とすると、SH波についてのK
2値が概ね0.005%以下となり、不要波のK
2値を実用上十分な程度に小さくすることができることを確認した。
【0031】
以上の結果と第1の実施形態での結果を整理すると、弾性波デバイ
スの凸部104は、高さを0.04λ以上とし、1つ当たりの断面積を0.0125λ
2以下とするこ
とにより、主要波であるレイリー波のK
2値の劣化も抑制しつつ、TCF_fa値を改善
し、また、不要波であるSH波についてのK
2値を十分に低下させることができる。また
、本条件は、第1の実施形態における条件と同様、三角形、長方形、または、台形のいずれかに近似できる凸部104の形状全般に対して適用できる。
【0032】
第1および第2の実施形態では、圧電基板101として回転Yカットニオブ酸リチウム(カット角129°)基板を用い、誘電体膜として二酸化ケイ素(SiO
2)を用いたが、本発明の趣旨は、これらとは異なる材質やカット角の圧電基板や、異なる材質の誘電体膜に対しても適用でき、それぞれの材質の特性に応じて、好ましい凸部104の形状の条件を求めることができる。
【0033】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について以下に説明する。本実施形態に係る弾性波デバイス300は、第1または第2の実施形態に係る弾性波デバイ
スにおいて、誘電体膜103の表面に、保護膜305をさらに設けたものである。
図11に弾性波デバイス300の断面図を示す。保護膜305は、凸部104を含む誘電体膜103を保護するとともに、周波数調整膜としても機能する。保護膜305の材質としては、窒化ケイ素(SiN)および酸化窒化ケイ素(SiON)等が挙げられる。また、保護膜305の厚さは、5nm−20nm程度とすることが好ましい。
【0034】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態について以下に説明する。本実施形態は、第1−第3の実施形態に係る弾性波デバイ
スを、デュプレクサに適用したものである。
図12の(a)に、本実施形態に係るデュプレクサ400の構成を示す。デュプレクサ400は、第1の端子404が接続された第1のラダーフィルタ401と、第2の端子405が接続された第2のラダーフィルタ402と、第3の端子406と接続された整合回路403とからなる。また、第1のラダーフィルタ401および第2のラダーフィルタ402は、それぞれ整合回路403と接続されている。第1のラダーフィルタ401および第2のラダーフィルタは、第1−第3の実施形態に係る弾性波デバイ
スを用いて構成されている。
【0035】
図12の(b)に、デュプレクサ400の各端子間の通過特性(アドミタンス)を模式的に示す。
図12の(b)に示す通り、第1のラダーフィルタ401の通過帯域を示す第3の端子406と第1の端子404との間の通過帯域は、第2のラダーフィルタ402の通過帯域を示す第2の端子405と第3の端子406との間の通過帯域よりも低周波数側にある。
【0036】
第1のラダーフィルタ401の構成の一例を
図13に示す。
図13の(a)に示すように、第1のラダーフィルタ401は、入力端子411および出力端子412と、これらの間に直列に接続された直列共振器413と、直列共振器413に一端が接続され、他端が接地される並列共振器414とを含む。
【0037】
第1のラダーフィルタ401の直列共振器413を構成する部分において、凸部104の1つ当たりの断面積を直列共振器413の励起波長λ1で規格化した規格化断面積(断面積/λ1
2)は、並列共振器414を構成する部分において、凸部104の1つ当たりの断面積を並列共振器414の励起波長λ2で規格化した規格化断面積(断面積/λ2
2)より大きい。これにより、第1のラダーフィルタ401は、直列共振器413のTCF値が、並列共振器414のTCF値よりも改善される。一般に、ラダーフィルタの通過帯域の高周波数側のスロープ特性は、直列共振器の共振周波数の高周波数側のスロープ特性に依存するため、第1のラダーフィルタ401は、通過帯域の高周波数側のスロープ部分のTCF値がより改善されることになる。
【0038】
また、第2のラダーフィルタ402も、第1のラダーフィルタ401と同様、入力端
子および出力端
子と、これらの間に直列に接続された直列共振
器と、直列共振
器に一端が接続され、他端が接地される並列共振
器とを含む。
【0039】
しかし、第2のラダーフィルタ402においては、並列共振
器を構成する部分において、凸部104の1つ当たりの断面積を並列共振
器の励起波長λ3で規格化した規格化断面積(断面積/λ3
2)のほうが、直列共振
器を構成する部分において、凸部104の1つ当たりの断面積を直列共振
器の励起波長λ4で規格化した規格化断面積(断面積/λ4
2)より大きい。これにより、第2のラダーフィルタ402は、並列共振
器のTCF値が、直列共振
器のTCF値よりも改善される。一般に、ラダーフィルタの通過帯域の低周波数側のスロープ特性は、並列共振器の共振周波数の低周波数側のスロープ特性に依存するため、第2のラダーフィルタ402は、通過帯域の低周波数側のスロープ部分のTCF値がより改善されることになる。
【0040】
以上により、デュプレクサ400全体としてみた場合に、分波性能上重要である、第1のラダーフィルタ401および第2のラダーフィルタ402の各通過帯域の間の周波数域において、TCF値を改善することができる。
【0041】
第1のラダーフィルタ401は、
図13の(b)に示す構成としてもよい。この構成例は、(a)に示す構成例において直列共振器413に、DMSフィルタ(結合二重モードフィルタ)451を接続している。この場合、第1のラダーフィルタ401のDMSフィルタ451を構成する部分において、凸部104の1つ当たりの断面積をDMSフィルタ421の励起波長λ5で規格化した規格化断面積(断面積/λ5
2)は、並列共振器414を構成する部分において、凸部104の1つ当たりの断面積を並列共振器414の励起波長λ6で規格化した規格化断面積(断面積/λ6
2)より大きいものとすればよい。
【0042】
第2のラダーフィルタ402も、第1のラダーフィルタ401と同様、DMSフィルタ461を接続してもよい。この場合、第2のラダーフィルタ402のDMSフィルタ461を構成する部分において、凸部104の1つ当たりの断面積をDMSフィルタ461の励起波長λ7で規格化した規格化断面積(断面積/λ7
2)は、並列共振器414を構成する部分において、凸部104の1つ当たりの断面積を直列共振器423の励起波長λ8で規格化した規格化断面積(断面積/λ8
2)より大きいものとすればよい。
【0043】
また、デュプレクサ400は、2つのフィルタの一方として、上述のような第1のラダーフィルタ401および第2のラダーフィルタ402のいずれかを用い、他方のフィルタとして、その他のフィルタを用いてもよい。
【0044】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態について以下に説明する。
図14の(a)は本実施形態に係る弾性波デバイス500を透過的に示した上面図である。弾性波デバイス500は、圧電基板501上に、2つのIDT電極502と、反射器504を形成し、さらに図示しない誘電体膜503を被覆して構成される。
【0045】
IDT電極502は、バスバー511と、バスバー511から交互に延伸する電極指512およびダミー電極指513からなる。2つのIDT電極502のそれぞれの電極指512は、他方の電極指512と交互に並び、かつ、他方のダミー電極指513に対向するよう配置される。電極指512の先端と、対向するダミー電極指513の先端とは、距離dだけ隔てられている。
【0046】
図15は、弾性波デバイス500における距離dと反共振点におけるQ値であるQp値との関係を示すグラフである。
図15によれば、距離dが増加するほど、弾性波の閉じ込め効果が向上し、Qp値が大きくなる傾向が分かる。とくに距離が励起波長λより大きいと、Qp値は1500を超え、十分に損失を低減したフィルタを構成できることが分かる。しかし、距離dが3λを超えると、弾性波の伝搬損失が大きくなる傾向が現れる。したがって、距離dをλ以上3以下の範囲とすることで、好適な減衰特性を有する弾性波デバイス500を構成することができる。
【0047】
また、弾性波デバイス500は、
図14の(b)に示すように、IDT電極502がダミー電極指513を備えず、2つのIDT電極502のそれぞれの電極指512の先端と、他方のIDT電極502のバスバー511の端縁との距離を距離dとしても、距離dをλ〜3λの範囲とすることで、好適な減衰特性を有する弾性波デバイス500を構成することができる。
【0048】
本実施形態は、第1−第3の弾性波デバイ
スに適用することもできるし、他の弾性波デバイスに適用することもできる。