(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の爪および前記第2の爪は、それぞれ、その高さが最大となる部分から離れる方向に、該高さが漸減する摺動面を有し、該摺動面は、前記シャフトの長手方向中央側に向いている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の緊縛具。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の緊縛具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の緊縛具の実施形態を示す図((a)は側面図、(b)は部分断面平面図、(c)は側面図)、
図2および
図3は、それぞれ、
図1に示す緊縛具が備えるラチェット機構の構成および作動状態を示す部分断面図、
図4は、
図1に示す緊縛具が備えるラチェット機構における第1のラチェット歯と第1の爪の係合状態を示す側面図、
図5は、
図1に示す緊縛具が備えるラチェット機構における第2のラチェット歯と第2の爪の係合状態を示す側面図、
図6は、
図1に示す緊縛具の分解平面図、
図7は、
図1に示す緊縛具が備えるベースを示す図((a)は側面図、(b)は平面図、(c)は側面図)、
図8は、
図1に示す緊縛具が備えるレバーを示す図((a)は側面図、(b)は平面図、(c)は側面図)、
図9は、
図1に示す緊縛具が備えるシャフトの組立前の状態を示す図((a)は正面図、(b)は平面図)、
図10〜
図15は、それぞれ、
図1に示す緊縛具の操作過程を順に示す図である。
【0023】
図1、
図6、
図10〜
図15に示すように、緊縛具(ベルトの締め具)1は、ベース2と、レバー3と、シャフト4との3つの部品で構成され、ベース2とレバー3とがシャフト4を中心として回動可能に支持された構造となっている。この構造により、緊縛具1は、ベース2とレバー3とが互いに接近・離間可能となり、接近した折り畳み状態と、離間した展開状態とを取り得る。
【0024】
図7(
図1、
図6についても同様)に示すように、ベース2は、板部材で構成され、その中央部を底板20とし、底板20の両側部をほぼ直角に折り曲げることにより形成された対向する一対の側板21、22を有している。このようにベース2は、1枚の板部材を加工してなるものである。
【0025】
ベース2の底板20には、緊締ベルト(帯体)11を挿通するための長孔(スリット)25が形成されている。
図10〜
図15に示すように、この長孔25に緊締ベルト11(帯体)の一端部を挿通し、底板20に巻き付ける(取り付ける)ことができる。これにより、緊締ベルト11の一端部をベース2に取り付けて固定することができる。
【0026】
また、側板(ベース側第2側板(ベースの他方側の側板))21の基端部213(ベース2の回動中心側)には、ほぼ円形の開口23が形成され、側板(ベース側第1側板(ベースの一方側の側板))22の基端部223(ベース2の回動中心側)には、開口24が形成されている。
【0027】
開口23の縁部には、緊縛具1の組立時にシャフト4を開口23等へ挿通する際、シャフト4の第1の爪8がそれぞれ通過する一対の逃げ孔27が形成されている(
図7(a)参照)。これにより、緊縛具1の組み立て、特に自動組立機による組み立てを容易に行うことができる。
【0028】
また、側板21、22の外側の面のベース2の回動中心から離れた側には、凸部(隆起部)26が形成されている。
【0029】
図7(a)に示すように、側板21の長手方向の途中、すなわち、側板21の開口23と凸部26との間の部分には、レバー3が接近・離間する側の縁部211に、「U」字状に欠損した欠損部28が形成されている。
【0030】
そして、側板21の欠損部28が位置する部分には、当該部分を2箇所反対方向に折り曲げてなる段差部29が設けられている。この段差部29では、側板21と側板22との間隔が急峻に変化する。この段差部29より、側板21は、凸部26側の先端部212と、開口23側の基端部213とに分けることができる。そして、
図7(b)に示すように、先端部212は、基端部213よりも側板22側に位置する。なお、先端部212と基端部213とのズレ量Δt(
図1(b)参照)は、ベース2を構成する板部材の厚さt
1(レバー3を構成する板部材の厚さt
2)の2倍以上であるのが好ましい。
【0031】
レバー3は、ベース2に対し回動操作されるものである。
図8(
図1、
図6についても同様)に示すように、レバー3は、板部材で構成され、その中央部を底板30とし、底板30の両側部をほぼ直角に折り曲げることにより形成された対向する一対の側板31、32を有している。このようにレバー3は、1枚の板部材を加工してなるものである。
【0032】
前述したように、ベース2も、1枚の板部材を加工してなるものである。そして、ベース2を構成する板部材の厚さt
1と、レバー3を構成する板部材の厚さt
2とは、同じ大きさとなっている。これにより、ベース2となる板部材と、レバー3となる板部材とに、共通の母材から切り出したものを用いることができる。なお、厚さt
1、t
2は、特に限定されず、例えば、当該板部材がステンレス鋼で構成されている場合には、0.3〜2.2mmであるのが好ましく、0.5〜1.5mmであるのがより好ましい。
【0033】
また、側板(レバー側第2側板(レバーの他方側の側板))31の基端部313(レバー3の回動中心側)には、開口33が形成され、側板(レバー側第1側板(レバーの一方側の側板))32の基端部323(レバー3の回動中心側)には、ほぼ円形の開口34が形成されている。この開口33、34および前記開口23、24の内径(最小内径)は、ほぼ同一とされており、この内径は、後述するシャフト4の外径と同等かまたはそれより若干大きく設定されている。
【0034】
また、各開口23、24、33、34が同軸上に一致するように位置合わせされる。これにより、各開口23、24、33、34をシャフト4が一括して挿通することができる。
【0035】
側板31、32の先端部(レバー3の回動中心から離れた側)には、ベース2とレバー3を閉じたときに、すなわち、折り畳み状態で、ベース2の凸部26が係合する開口36が、凸部26に対応する位置にそれぞれ形成されている。この係合により、折り畳み状態が確実に維持される。これにより、
図15に示すように、緊縛具1が使用されている状態で、当該緊縛具1が不本意に展開状態となるのを防止することができる。
【0036】
図6に示すように、緊縛具1の組み立て時には、ベース2の側板21の基端部213の内側に、レバー3の側板31の基端部313が挿入され、レバー3の側板32の基端部323の内側に、ベース2の側板22の基端部223が挿入される。これにより、レバー3の側板31は、ベース2の側板21よりも内側に位置し、当該側板21に重なり、ベース2の側板22は、レバー3の側板32よりも内側に位置し、当該側板32に重なる(
図1(b)、
図2、
図3参照)。従って、側板21の基端部213と側板22の基端部223との設置間隔と、側板31の基端部313と側板32の基端部323との設置間隔とは、ほぼ一致するように設定される。
【0037】
図8(a)に示すように、側板31の長手方向の途中、すなわち、側板31の開口33と開口36との間の部分には、ベース2に対して接近・離間する側の縁部311に、「U」字状に欠損した欠損部35が形成されている。
図15に示すように、ベース2とレバー3とが最も接近した状態では、ベース2の欠損部28とレバー3の欠損部35とが互い入り込み合う。また、その際、レバー3の側板31は、緊縛具1の幅方向で、ベース2の先端部212と基端部213との間に位置する(
図1(b)中の二点鎖線で示す「側板31」参照)。
【0038】
図1(b)に示すように、側板32の開口34の周囲には、外方へ突出するような段差部37が形成されている。これにより、側板32と、その内側に隣接するベース2の側板22との間に所定の間隙(ギャップ)38が形成される。
【0039】
図8(b)、レバー3の底板30には、例えばマイナスドライバ12等の工具が接続される接続部としての長孔(スリット)39が形成されている。
図13に示すように、レバー3を回動操作する際、長孔39にマイナスドライバ12に挿入し、その挿入状態でレバーに対する操作力を回動中心から比較的遠い位置で付与することができる。これにより、回動操作を容易に行なうことができる。
【0040】
シャフト4は、レバー3をベース2に対し回動可能に支持する部材であるとともに、緊締ベルト11を巻き取る巻取軸としての機能を有している。すなわち、シャフト4は、各開口23、24、33、34に挿通されるほぼ円筒状の部材であり、その中心軸を介して対向する位置に、緊締ベルト11を挿通するための一対の長孔41が形成されている。
【0041】
このシャフト4は、1枚の板部材を加工してなるものであり、その厚さt
3は、特に限定されず、例えば、当該板部材がステンレス鋼で構成されている場合には、0.3〜2.2mmであるのが好ましく、0.5〜1.5mmであるのがより好ましい。なお、厚さt
3は、厚さt
1、t
2よりも小さいのが好ましい。
【0042】
また、シャフト4の一端部および他端部には、それぞれ、複数の脚片42、43が形成されている。この場合、脚片43の長さは、脚片42の長さより長い。このような脚片42、43は、シャフト4のベース2およびレバー3に対する軸方向の位置または移動範囲の少なくとも一方を規制する規制部材としての機能を有する。
【0043】
本実施形態では、脚片42の数と脚片43の数は等しい(各3個ずつ)。そして、脚片42、脚片43ともに、シャフト4の周方向に沿ってほぼ等間隔で配置されている。これにより、前記機能を均一かつ安定的に発揮することができる。
【0044】
図9(b)に示すように、各脚片43は、緊縛具1の組み立て前には、外方へ向けて、すなわち、シャフト4の中心軸から遠ざかる方向へ所定の形状に予め折り曲げられている。
【0045】
また、各脚片42は、緊縛具1の組み立て前には、シャフト4の軸方向に延在している。そして、シャフト4を開口23、24、33、34に挿通させた後に、各脚片42は、外方へ向けて、すなわち、シャフト4の中心軸から遠ざかる方向へ所定の形状に折り曲げられる。このとき、各脚片43は、
図9に示す状態よりもさらに折り曲げられる(
図1参照)。なお、各脚片43が既に折り曲げられているため、シャフト4が開口23、24、33、34から抜け出てしまうのを確実に防止することができる。
【0046】
折り曲げられた各脚片42、43は、シャフト4が各開口23、24、33、34から抜けるのを阻止する(
図1〜
図3参照)。また、シャフト4のベース2およびレバー3に対する軸方向の位置決めがなされ、よって、シャフト4の第1の爪8とベース2の第1のラチェット歯6とが確実に噛み合うとともに、シャフト4の第2の爪9とレバー3の第2のラチェット歯7とが確実に噛み合う。
【0047】
図2、
図3に示すように、短い方の各脚片42は、ほぼL字状に折り曲げられている。この場合、各脚片42は、折り曲げ角度がほぼ直角かまたは60°以上の鋭角に折り曲げられ、その端部421は、レバー3の側板32の基端部323、本実施形態では段差部37で囲まれる内側部分(隆起部分)に当接している。
【0048】
一方、長い方の各脚片43もほぼL字状に折り曲げられている。この場合、各脚片43は、折り曲げ角度が60°以上の鋭角、好ましくは70〜85°程度の鋭角に折り曲げられ、その端部431は、ベース2の側板21の基端部231、本実施形態では開口33の近傍に当接している。
【0049】
このような脚片42側の当接と、脚片43側の当接とにより、シャフト4の軸方向の位置規制を行う機能が発揮される。そのため、該機能を持つ例えば座金のような部品を省略することができ、よって、緊縛具1をベース2とレバー3とシャフト4の3つの部品のみから構成することができ、部品点数の減少および構造の簡素化が図れる。
【0050】
以上のようなベース2およびレバー3は、金属製の板材を所望の形状に打ち抜き、必要に応じ、曲げ加工、プレス加工、研削加工、研磨加工、その他表面処理等を施すことにより製造されるのが好ましい。また、シャフト4も、同様の板材を所望の形状に打ち抜き、円筒状に丸めることにより製造されるのが好ましい。このようにして製造することにより、部品の製造が容易であり、量産する場合の再現性、寸法安定性に優れ、製造コスト、材料コストが安価な緊縛具1が提供される。また、シャフト4は、円筒状に構成されているため、その強度が高く、緊締ベルト11を巻き取る際に捻れや変形を生じることが防止される。
【0051】
このような金属材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鉄または鉄系合金、銅または銅合金、チタンまたはチタン合金等の各種金属材料を用いることができる。なお、金属材料に代えて、各種硬質プラスチックやセラミックス等を用いることもできる。
【0052】
また、このような緊縛具1は、レバー3をベース2に対し反復回動させたとき、シャフト4を一方向にのみ回転(順転)させるラチェット機構10を有している。
【0053】
図7(c)に示すように、ベース2の一方の側板22における開口24の周囲には、第1のラチェット歯6が形成されている。
【0054】
図8(a)に示すように、レバー3の他方(側板22と反対側)の側板31における開口33の周囲には、第2のラチェット歯7が形成されている。
【0055】
図9に示すように、シャフト4の一端部の外周面(外周部)40には、第1のラチェット歯6に係合する一対の第1の爪8が、シャフト4の中心軸を介して対向する位置(中心軸に対し等角度間隔の位置)に突出形成されて(突設されて)いる。また、シャフト4の他端部の外周面40には、第2のラチェット歯7に係合する一対の第2の爪9が、シャフト4の中心軸を介して対向する位置(中心軸に対し等角度間隔の位置)に突出形成されている。
【0056】
このような第1のラチェット歯6、第2のラチェット歯7、第1の爪8および第2の爪9により、ラチェット機構10が構成される。これらの各構成要素は、ベース2、レバー3およびシャフト4のいずれかに一体的に形成されている。そのため、別途にラチェット機構を構成するための部品を用いる必要がなく、部品点数の減少、構造の簡素化、組立の容易化(特に自動化)に寄与する。
【0057】
緊縛具1では、第1のラチェット歯6とシャフト4の各脚片42との間に、レバー3の側板32の基端部323が介挿されている。これにより、各脚片42の端部421が第1のラチェット歯6(歯部61)に接触するのを防止することができる。また、第2のラチェット歯7とシャフト4の脚片43との間に、ベース2の側板21の基端部213が介挿されている。これにより、各脚片43の端部431が第2のラチェット歯7(歯部71)に接触するのを防止することができる。このような接触防止により、シャフト4の回転をより円滑に行うことができる。
【0058】
第1のラチェット歯6と第2のラチェット歯7とは、それぞれ、それが形成されている側板が異なるが、それらの形状や作用はほぼ同一であるため、以下、第1のラチェット歯6およびこれに係合する第1の爪8について代表的に説明する。
【0059】
図4に示すように、第1のラチェット歯6は、中心角60°の等角度間隔で形成された鋸歯状の6個の歯部61を有している。各歯部61は、側板22と同じ厚さの平歯で構成されている。各歯部61の一端には、開口24の径方向に延在し、後述する第1の爪8の係止面81と係止する係止面62が形成されている。
【0060】
また、係止面62の内周側端部から、時計方向に隣接する係止面62の外周側端部までの間には、若干円弧状に湾曲した縁部63が形成されている。
【0061】
このような第1のラチェット歯6においては、係止面62と縁部63とにより形成される切欠き64内に、第1の爪8が挿入、収納される。
【0062】
第1のラチェット歯6は、その歯部61を平歯としたことにより、次のような製造上の利点がある。すなわち、第1のラチェット歯6は、側板22に打ち抜き加工を施して形成するが、歯部61を平歯とする場合、別途パンチングを施してテーパ面等を形成する等の必要がなく、製造工程の簡素化が図れ、生産効率の向上に寄与する。
【0063】
なお、歯部61を平歯としても、第1のラチェット歯6と第1の爪8とによるラチェット機構の作動が適正、円滑になされるのは、前述したようにシャフト4の軸方向の位置等が規制され、第1の爪8および第2の爪9の位置が適正に設定されているからである。
【0064】
図1(b)に示すように、第1の爪8は、ベース2の側板22と同様に、レバー3の側板32よりも内側に位置している。これにより、第1の爪8は、ベース2の側板22に形成された第1のラチェット歯6に確実に係合する。
【0065】
また、
図4、
図9に示すように、第1の爪8は、正面視および側面視(平面視)において、それぞれその輪郭がほぼ三角形の形状をなしており、シャフト4の外周面40からほぼ直角に起立する(シャフト4の径方向に延在する)係止面81と、該係止面81の一端の角部82において最大高さ(突出量)となり、該角部82から離れる方向にその高さが漸減する摺動面83と、シャフト4の外周面40および係止面81にそれぞれほぼ直交する端面84とを有している。この場合、摺動面83は、シャフト4の長手方向中央側に向いて形成されている。なお、本実施形態では、摺動面83は、湾曲凸面となっているが、傾斜平面や湾曲凹面であってもよい。
【0066】
切欠き64内に第1の爪8が挿入、収納されている状態(
図4に示す状態)において、第1のラチェット歯6がシャフト4に対し
図4中反時計回りに回転(相対的に回転)すると、係止面62と係止面81とが係止し、第1の爪8を介してシャフト4に回転力が伝達され、シャフト4が同方向に回転する。
【0067】
また、第2のラチェット歯7と第2の爪9との係合によりシャフト4の
図4中時計回りの回転が阻止された状態において、第1のラチェット歯6がシャフト4に対し
図4中時計回りに回転(相対的に回転)すると、第1の爪8の摺動面83が縁部63に沿って摺動し、第1の爪8が歯部61を乗り越えて次の切欠き64内に至り、以後順次これを繰り返す。
【0068】
第2のラチェット歯7およびこれに係合する第2の爪9についても、前記第1のラチェット歯6および第1の爪8と同様の構成および作用を有する。この場合、第2のラチェット歯7は、第1のラチェット歯6と同じ向きで形成されている(
図1(b)参照)。従って、第1のラチェット歯6と第2のラチェット歯7とは、シャフト4に回転力を与える回転方向(またはシャフト4の回転を阻止する回転方向)が互いに逆となっている。
【0069】
第1のラチェット歯6と同様に、第2のラチェット歯7も、
図5に示すように、中心角60°の等角度間隔で形成された鋸歯状の6個の歯部71を有している。各歯部61は、側板31と同じ厚さの平歯で構成され、その一端には、開口33の径方向に延在し、第2の爪9の係止面91と係止する係止面72が形成されている。
【0070】
また、係止面72の内周側端部からは、若干円弧状に湾曲した縁部73が形成されている。そして、係止面72と縁部73とにより形成される切欠き74内に、第2の爪9が挿入、収納される。
【0071】
図1(b)に示すように、第2の爪9は、レバー3の側板31と同様に、ベース2の側板21よりも内側に位置している。これにより、第2の爪9は、レバー3の側板31に形成された第2のラチェット歯7に確実に係合する。
【0072】
この第2の爪9も、第1の爪8と同様に、シャフト4の外周面40からほぼ直角に起立する(シャフト4の径方向に延在する)係止面91と、高さが漸減する摺動面93と、シャフト4の外周面40および係止面91にそれぞれほぼ直交する端面94とを有している。この場合、摺動面93は、シャフト4の長手方向中央側に向いて形成されている。
【0073】
第1の爪8および第2の爪9の形成数は、特に限定されないが、それぞれ、1〜6個程度、特に2〜4個程度であるのが好ましい。本実施形態では、第1の爪8の形成数は、2つ、第2の爪9の形成数は、3つであるが、その他、例えば、第1の爪8および第2の爪9のいずれか一方または双方は、シャフト4の外周に、シャフト4の中心軸に対し等角度間隔で3個または4個、あるいはそれらの整数倍形成されていてもよい。
【0074】
また、第1の爪8および第2の爪9の形成数がそれぞれn
1個およびn
2個(n
1、n
2は2以上の整数)である場合、第1のラチェット歯6および第2のラチェット歯7の歯数は、対称性を考慮して、それぞれ、n
1、n
2の整数倍(本実施形態では各々6個)であるのが好ましい。すなわち、前記歯数は、それぞれ、偶数、特に4以上の偶数であるのが好ましい。
【0075】
また、第1の爪8および第2の爪9のうちの少なくとも一方は、長孔41の中心線上に位置していないのが好ましい。第1の爪8、第2の爪9をプレス加工等により外周面40から隆起させて形成する場合、当該爪と長孔41とが接近すると、その部分の強度が低下するが、このような構成とすることにより、例えばシャフト4の長さを長くする等の寸法変更を行うことなく、十分な強度を確保することができ、シャフト4の変形等をより確実に防止することができる。
【0076】
以上のような構成の緊縛具1は、手作業でまたは自動組立機を用いて組み立てることができるが、生産性の向上、製造コストの低減のために、自動組立機を用いて組み立てるのが好ましい。特に、図示の緊縛具1は、前述したようにベース2とレバー3とシャフト4の3つの部品で構成されているため、自動組立機を用いて組み立てることが容易に可能であり、好ましい。
【0077】
この自動組立機は、まず、ベース2とレバー3とを、各開口23、24、33、34が同軸上に一致するように位置合わせするように組み立てる。このとき、逃げ孔27が第2のラチェット歯7の切欠き74と一致するようにしておくのが好ましい。
【0078】
次に、シャフト4を側板21側から開口23、33、24、34に順次挿通する。これに伴い、シャフト4に形成された第1の爪8は、対応する逃げ孔27および第2のラチェット歯7の切欠き74を順次通過して、第1のラチェット歯6の切欠き64内に挿入、収納され、シャフト4に形成された第2の爪9は、第2のラチェット歯7の切欠き74内に挿入、収納される。
【0079】
次に、シャフト4の軸方向の位置決めがなされた状態で、シャフト4の両端部にそれぞれ形成された各脚片42を外方へ向けて所定の形状に折り曲げる。
【0080】
このような工程を自動組立機が行なうことにより、ベース2とレバー3とシャフト4とを自動的に組み立てて、緊縛具1を得ることができる。
【0081】
次に、緊縛具1の操作方法について、
図1〜
図5、
図10〜
図15を参照しつつ説明する。ここでは、緊縛具1の使用態様の一例として、電柱13に緊締ベルト11を装着する態様を挙げる。
【0082】
図10に示すように、ベース2とレバー3とを開いた状態、すなわち、展開状態で、緊締ベルト11の一端部をベース2の長孔25に挿通し、底板20に巻き付ける。緊締ベルト11は、電柱13の外周面を一周して、その他端部は、シャフト4の両長孔41に挿通される。なお、緊締ベルト11の不要部分は、予め切断、除去しておくのが好ましい。
【0083】
この
図10に示す状態から、
図11に示すように、レバー3をベース2に対し閉じる方向(
図11中矢印A方向)に回動操作すると、第2のラチェット歯7の歯部71の係止面72が第2の爪9の係止面91と係合し、トルクが伝達されてシャフト4がベース2に対し
図11中矢印C方向に回転する。これにより、緊締ベルト11がシャフト4に所定長さ巻き取られる。また、このとき、シャフト4は、第1のラチェット歯6に対し
図4中反時計回りに回転することとなるが、第1の爪8の摺動面83が縁部63に沿って摺動し、第1の爪8が歯部61を乗り越えて次の切欠き64内に至り、以後順次これを繰り返す。
【0084】
なお、第1の爪8が歯部61を乗り越える際には、
図2に示すように、シャフト4の長手方向中央側に向いている第1の爪8の摺動面83からの反力を受けてベース2の側板22が撓み、当該側板22の基端部223が、レバー3の側板32の基端部323から離間するように内側へ移動、変形する(以下同様)。これにより、例えばベース2の側板22の他に、レバー3の側板32も撓ませなければ、第1の爪8の歯部61に対する乗り越えがなされない場合(この場合を以下「場合1」と言う)に比べて、レバー3の矢印A方向への回動操作を容易に行なうことができる。よって、緊縛具1では、レバー3を
図11中の矢印A方向に回動操作するための操作力は、前記場合1の約半分で済む。
【0085】
そして、第1の爪8が歯部61を乗り越え、次の切欠き64内に挿入された時には、側板22は、自らの弾性により
図1(b)に示す元の形状に復帰する。
【0086】
図11に示す状態から、すなわち、レバー3をベース2に対しある程度閉じたところで、
図12に示すように、レバー3を反対方向、すなわちベース2に対し開く方向(
図12中矢印B方向)に回動操作すると、前記とは逆に、第1のラチェット歯6の歯部61の係止面62が第1の爪8の係止面81と係合し、逆回転防止機能が働くので、シャフト4はベース2に対し回転せず、そのままの状態を維持する(
図4参照)。また、このとき、第2のラチェット歯7は、不動のシャフト4に対し矢印Cと反対方向に回転することとなるが、第2の爪9の摺動面93が縁部73に沿って摺動し、第2の爪9が歯部71を乗り越えて次の切欠き74内に至り、以後順次これを繰り返す(
図5参照)。
【0087】
なお、第2の爪9が歯部71を乗り越える際には、
図3に示すように、シャフト4の長手方向中央側に向いている第2の爪9の摺動面93からの反力を受けてレバー3の側板31が撓み、当該側板31の基端部313が、ベース2の側板21の基端部213から離間するように内側へ移動、変形する(以下同様)。これにより、例えばレバー3の側板31の他に、ベース2の側板21も撓ませなければ、第2の爪9の歯部71に対する乗り越えがなされない場合(この場合を以下「場合2」と言う)に比べて、レバー3の矢印B方向への回動操作を容易に行なうことができる。よって、緊縛具1では、レバー3を
図12中の矢印B方向に回動操作するための操作力は、前記場合2の約半分で済む。
【0088】
そして、第2の爪9が歯部71を乗り越え、次の切欠き74内に挿入された時には、側板31、21は、自らの弾性により
図1(b)に示す元の状態に復帰する。
【0089】
図12に示す状態から、すなわち、レバー3をベース2に対しある程度開いたところで、
図13に示すように、レバー3を再び閉じる方向(
図13中矢印A方向)に回動操作する。このとき、シャフト4には緊締ベルト11が巻き付けられつつあるので、レバー3の回動操作に要する力は、
図11に示す状態でのレバー3の回動操作に要する力よりも大きくなる。そのため、レバー3の長孔39にマイナスドライバ12を差し込み、この状態でマイナスドライバ12ごとレバー3の回動操作をするのが好ましい。これにより、レバー3の回動操作を容易に行なうことができる。
【0090】
また、
図13に示す状態でも、
図11に示す状態と同様に、シャフト4がベース2に対し
図13中矢印C方向に回転する。これにより、緊締ベルト11がシャフト4にさらに巻き取られる。
【0091】
また、このときも、第1の爪8が歯部61を乗り越えるが、その際も、ベース2の側板22が第1の爪8の摺動面83からの反力を受けて撓み、当該側板22の基端部223が、レバー3の側板32の基端部323から離間するように内側へ移動、変形する(
図2参照)。
【0092】
そして、緊締ベルト11に十分な張力が与えられる程度に、緊締ベルト11がシャフト4に巻き取られたら、
図14に示すように、レバー3を
図14中矢印A方向に最後まで回動させてベース2とレバー3とを閉じる。
【0093】
このとき、
図15に示すように、ベース2の先端部に形成された一対の凸部26とレバー3の先端部に形成された一対の開口36とを係合させ、ベース2およびレバー3の閉状態をロックする。この操作は、レバー3の底板30の先端部を例えばハンマーで叩くことにより行われる。以後、ベース2およびレバー3の閉状態(ロック状態)、すなわち、折り畳み状態を確実に維持することができ、安全性が高い。
【0094】
また、緊締ベルト11の基端部に余剰部分があった場合でも、該余剰部分は、緊締ベルト11内に位置するので、外方へ突出することが防止され、安全である(
図15参照)。
【0095】
また、前述したように、緊縛具1では、レバー3をベース2に対し矢印A方向と矢印B方向とに反復回動させる際、その反復回動操作を容易に行なうことができる。これにより、レバー3の全長を従来のもの(例えば前記特許文献1に記載の緊縛具)よりも例えば20〜50%程度短くすることができる。
【0096】
以上、本発明の緊縛具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、緊縛具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0097】
例えば、ベース、レバー、シャフトの形状、構造、ラチェット機構の構造(特に各構成要素の形状)や設置位置、各脚片の形状、構造、条件、緊締ベルトの装着部分、巻き取り部分の構造、ベースとレバーのロック機構の構造や有無等については、上述した実施形態のものと異なるものであってもよい。
【0098】
本発明の緊縛具の用途は、特に限定されず、電柱に巻き付ける帯体(緊締ベルト)を緊張するものに限らず、例えば、ビル、駅のプラットホーム、橋梁、鉄塔等の建造物、構造物、共同構または建設工事現場等において、柱状物や管類に対し巻き付ける帯体を緊張(緊締)するのに使用することもできる。