(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シェルタ本体の内底部内には、前記電気信号伝達手段の中間部位を接続及び分離できるコネクタ部を収納配置する配線接続ボックスを備えていることを特徴とする請求項12に記載の防災用シェルタ。
前記シェルタ本体の内底部内には、前記転舵角伝達手段の中間部位を接続及び分離できる転舵角伝達用接続部を収納配置する機構接続部収納ボックスを備えていることを特徴とする請求項13に記載の防災用シェルタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたような地震用シェルタは、組み立て及び分解が可能で、耐震強度を備えているものの、多数の金属製枠材、金属製継手、鉄板製補強板及び固定手段によって構築体を形成しているため、構成部品が多く、構造が複雑で、全体の重量が重く、津波等の水害に使用できないという問題点があった。
つまり、前記特許文献1の地震用シェルタは、金属製の枠材と保護板から主に構成されているので、地震用としては優れているものの、洪水等の水害時には、水没してしまうため、津波等の水害に使用できない。
【0008】
また、特許文献2の津波防災用シェルタは、一辺が80cmの底面中央部に重心移動重り3段が配置されてバランスを図っているものの、形状が、正面視して正八角形で、平面視及び側面視して縦長の矩形に形成されているので、河川の氾濫時や津波の際に大きな波を受けたときや、土石流や瓦礫等の障害物が衝突したときに、抵抗を受け易いため、バランスを崩して転倒し易い形状になっている。
このため、その大きな波を受けたときや、障害物が衝突したときであっても、さらに安定した平な状態を保つことが可能で、あらゆる災害に対応することができる多機能的な防災用シェルタが要望されていた。
【0009】
そこで、本発明は、前記問題点を解消すべく発明されたものであり、地震や水害等のあらゆる災害の際に避難用として使用できる防災用シェルタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明に係る防災用シェルタは、内部に避難用空間を有する防災用シェルタであって、前記避難用空間を形成する樹脂製のシェルタ本体と、前記シェルタ本体
の出入口に開閉自在に配設された
扉体と、を備え、前記シェルタ本体内には、中空形状の球体からなり、凹面状に形成された内底部と、前記内底部の周縁部に載設されて前記凹面状に形成された部位を閉塞する蓋体と、上端部が、前記シェルタ本体の天井部に固定され、下端部が、前記避難用空間の床面を貫通して前記蓋体あるいは前記内底部に固定された支柱と、基端部が、前記支柱に回動可能に軸支され、先端部が、前記扉体の前記避難用空間側に形成された係合部に係合・離脱可能に配置される支持バーと、が配置されていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、防災用シェルタは、脚部をシェルタ本体に固定したことで、設置時における安定性が向上し、地震による揺れによっても転倒し難く、洪水や土石流等に遭っても流され難いため、多くの人命を救うことができる。また、シェルタ本体の外周の下部に脚部を固定したことで、洪水や土石流等による浮遊時におけるシェルタ本体の不用意な姿勢変動を抑制して安定性を向上させることができる。
このため、本発明に係る防災用シェルタは、大きな地震や大きな津波があった際に、避難者は、防災用シェルタの扉
体を開けて出入口から避難用空間内に入ることにより、シェルタ本体内に避難して身体を守ることができる。
また、かかる構成によれば、防災用シェルタは、支柱を有していることによって、シェルタ本体を支えて強度を向上させることができる。また、シェルタ本体が揺れた際に、避難者は、支柱に掴まることにより、身体が移動するのを抑制することができる。また、扉体の係合部に係合・離脱可能に配置される支持バーを有していることによって、支持バーで扉体をしっかりと閉塞状態に保つことができる。
【0012】
また、
前記シェルタ本体の外周の下部に固定された脚部と、前記脚部に配設され重心位置を下方にするバランサと、を備え、前記脚部は、有底の円筒形状をなし内部に形成された錘材収納空間を有し、前記錘材収納空間に前記バランサが収納されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る防災用シェルタは、脚部にバランサを配設したことで、重心位置を下げて浮遊時の安定性が向上し、例えば、洪水や津波等の水害の際に、水上に浮かべると、シェルタ本体を水平な安定した状態を保つことができる。その結果、本発明に係る防災用シェルタは、あらゆる災害の際に、多くの人命を救うことができる防災設備及び避難具として役立つことができる。
また、かかる構成によれば、防災用シェルタは、脚部を有底の円筒形状にしたことで、浮遊時における上下方向の回転を抑制し安定した姿勢を維持して、居住性を向上させることができる。また、円筒形状の脚部は、洪水や土石流や津波等による衝撃を受け流して緩和させることができるため、水害時でも流され難く、シェルタ本体の損傷を防止することができる。
【0018】
また、前記支持バーは、基端部が前記支柱に回動自在に軸支され、先端部が前記係合部に形成された係合溝に係合・離脱可能に配置され
て、前記支持バーの先端部に形成され、外径が当該支持バーの外径よりも大きく形成され
て、前記係合部に配置される係止
部を備え、前記係合部は、前記支持バーの軸支部を中心として回動する当該支持バーを半径とする回動軌跡に対して拡径して形成された扉締付面を有することが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、支持バーは、係止部を、扉部材の係合部に形成された扉締付面に摺接するように係合部に係合させて摺動させることによって、扉部材を避難空間側に引き寄せて密閉状態に閉塞させることができる。このため、扉部材の周囲から雨水、水、海水及び空気が避難用空間内に浸入するのを完全に遮断して水密状態にすることができる。
【0020】
また、前記支柱は、中空状に形成され、大気中と連通する空気取入口と、前記空気取入口に設けられ、前記
支柱の支柱本体内から大気中方向へ流れる空気を阻止する空気取込用の逆止弁と、前記支柱本体内の空間からなるシリンダ室に進退自在に設けられたピストンを有してなるピストンシリンダ機構と、前記シリンダ室内の空気を前記避難用空間に吐出する空気供給口と、前記空気供給口に設けられ、前記避難用空間から前記シリンダ室内方向へ流れる空気を阻止する空気供給用の逆止弁と、を備え、前記ピストンシリンダ機構は、前記ピストンが進退することによって、前記空気取入口から前記シリンダ室内に大気を取り込んだ後、前記空気供給口から前記避難用空間内に前記大気を供給することが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、防災用シェルタは、支柱に設けたピストンシリンダ機構を駆動させることによって、大気中の空気をピストンの吸引力で吸引して避難用空間内に供給することができる。このため、避難用空間内が酸欠状態になるのを防止することができる。
【0022】
また、前記支柱は、前記防災用シェルタが海上または水上に配置された際に、海中または水中に連通し、上部に前記ピストンが配置されたウォータシリンダ室を有し、前記ピストンは、海水の波動または水の波動によって上昇及び下降して、前記空気取入口から前記シリンダ室内に大気中の空気を取り込んで前記空気供給口から前記避難用空間内に吐出することが好ましい。
【0023】
かかる構成によれば、防災用シェルタは、支柱に設けたピストンシリンダ機構を海水の波動または水の波動によって上昇及び下降させて駆動させることにより、大気中の空気をビストンの吸引力で吸引して避難用空間内に供給することができる。このため、避難用空間内は、海水の波動または水の波動がある場合、自然エネルギーを自動的に避難用空間内の空気を外気と交換させることができる。この場合、ピストンシリンダ機構は、海水及び水の波の力を利用するので、防災用シェルタが海上等に流されたときに、電力や燃料等の特別なエネルギー源を使用しないで駆動させることができるため、ピストンシリンダ機構を強制駆動させる手段として特に有効利用することができる。
【0024】
また、前記支柱は、中空状に形成され、上部に大気中と連通する大気排出口を有する管状の支柱本体と、前記大気排出口に設けられ、前記大気中から前記支柱本体内方向へ流れる空気を阻止する第1逆止弁と、前記支柱本体内に移動可能に配置され、前記支柱本体内を第1エアシリンダ室と第2エアシリンダ室とに区画する第1ピストンと、前記第1ピストンに一端を連結したピストンシャフトと、前記支柱本体内に移動自在に設けられ、前記ピストンシャフトの他端に連結されて前記第1ピストンと共に進退すると共に、前記支柱本体内を第3エアシリンダ室とウォータシリンダ室とに区画する第2ピストンと、前記支柱本体内を前記第2エアシリンダ室と前記第3エアシリンダ室とに区画する隔壁と、前記避難用空間内の空気を前記第1シリンダ室内に取り入れる室内空気取込口と、前記室内空気取込口に設けられ、前記第1シリンダ室内から前記避難用空間内方向へ流れる空気を阻止する第2逆止弁と、前記第2エアシリンダ室内の空気を前記避難用空間に吐出する第1空気供給口と、前記第1空気供給口に設けられ、前記避難用空間から前記第2シリンダ室内方向へ流れる空気を阻止する第3逆止弁と、前記第3シリンダ室内の空気を前記避難用空間に吐出する第2空気供給口と、前記第2空気供給口に設けられ、前記避難用空間から前記第3エアシリンダ室内方向へ流れる空気を阻止する第4逆止弁と、上端部に大気中と連通する第1空気取入口を有し、下端部に前記第2エアシリンダ室に連通する第1連通口を有する第1空気取入管と、前記第1空気取入口に設けられ、前記第1逆止弁の閉弁に連動して大気が第1空気取入管内側へ流れるのを阻止する第1一方向弁と、上端部に大気中と連通する第2空気取入口を有し、下端部に前記第3エアシリンダ室に連通する第2連通口を有する第2空気取入管と、前記第2空気取入口に設けられ、前記第1逆止弁の開弁に連動して大気が第1空気取入管内側へ流れるのを阻止する第2一方向弁と、を備え、前記ウォータシリンダ室は、前記シェルタ本体が浮上している海水または水に連通し、前記第2ピストンは、前記海水の波動または水の波動によって進退することが好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、防災用シェルタは、支柱内に配置した第2ピストンが、海水の波動または水の波動によって進退することにより、防災用シェルタが海上または水上に流された場合に、第2ピストンの駆動に伴う吸引力で大気中の空気を取り込んで避難用空間内に供給することができると共に、避難用空間内の空気を吸引して大気中に排出させることができる。このため、避難用空間内の空気を海水の波動または水の波動で自動的に換気をすることができる。
【0026】
また、前記第1逆止弁の弁体は、前記第1一方向弁の弁体と、前記第2一方向弁の弁体とにそれぞれ連結して連動させる連結部材を備え、前記第1逆止弁は、当該第1逆止弁の弁体が閉弁したときに、前記第1一方向弁の弁体が開弁し、前記第2一方向弁の弁体が閉弁し、前記第1逆止弁の弁体が開弁したときに、前記第1一方向弁の弁体が閉弁し、前記第2一方向弁の弁体が開弁することが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、第1逆止弁は、閉弁したときに、第1一方向弁が開弁し、第2一方向弁が閉弁するように開閉できるので、第1逆止弁の開弁、閉弁に対して、第1一方向弁と第2一方向弁とを交互に連動させて、大気を取り込むことができる。
【0028】
また、前記支柱には、前記ピストンを上下動させるためのハンドルが配置され、前記ピストンは、前記ハンドルの上下動または前記ハンドルの回転操作によって上昇及び下降して、前記空気取入口から前記シリンダ室内に大気中の空気を取り込んで前記空気供給口から前記避難用空間内に吐出することが好ましい。
【0029】
かかる構成によれば、避難者は、支柱に配置されたハンドルを操作することによってピストンを上下動させて、空気取入口からシリンダ室内に大気中の空気を取り込み、さらにその空気を避難用空間内に供給することができるため、避難用空間内の空気を手動的に強制換気させることができる。その結果、避難用空間内が酸欠状態になるのを防止することができる。
【0030】
また、前記支柱は、中空状に形成され、上部に大気中と連通する第1空気取入口を有する管状の支柱本体と、前記第1空気取入口に設けられ、前記支柱本体内から大気中方向へ流れる空気を阻止する第1逆止弁と、前記支柱本体内に移動可能に配置され、前記支柱本体内を第1シリンダ室と第2シリンダ室とに区画するピストンと、前記ピストンに一端を連結したピストンシャフトと、前記支柱本体に対して長手方向に移動自在に設けられると共に、前記ピストンシャフトの他端に連結されて前記ピストンを進退させるためのハンドルと、前記第1シリンダ室内の空気を前記避難用空間に吐出する第1空気供給口と、前記第1空気供給口に設けられ、前記避難用空間から前記第1シリンダ室内方向へ流れる空気を阻止する第2逆止弁と、前記第2シリンダ室内の空気を前記避難用空間に吐出する第2空気供給口と、前記第2空気供給口に設けられ、前記避難用空間から前記第2シリンダ室内方向へ流れる空気を阻止する第3逆止弁と、上端部に大気中と連通する第2空気取入口を有し、下端部に前記第2シリンダ室に連通する連通口を有する空気取入管と、前記空気取入管に設けられ、前記第2シリンダ室内から前記空気取入管内方向へ流れる空気を阻止する第4逆止弁と、を備え、前記ピストンは、前記ハンドルを操作することによって連動し、前記第1空気取入口及び前記第2空気取入口から前記第1シリンダ室及び前記第2シリンダ室に大気を取り込んだ後、前記第1空気供給口及び前記第2空気供給口から前記避難用空間内に前記大気を供給することが好ましい。
【0031】
かかる構成によれば、ピストンは、ハンドルを操作することによって連動し、第1空気取入口及び第2空気取入口から第1シリンダ室及び第2シリンダ室に大気を取り込んだ後、第1空気供給口及び第2空気供給口から避難用空間内に大気中の空気を供給することができるため、避難用空間内の空気を手動的に強制換気させることができる。
【0032】
また、前記第1空気取入口には、当該第1空気取入口を開閉する空気取入口開閉弁が配置され、前記空気取入口開閉弁の弁体は、前記避難用空間内に配置された操作部材に、連結部材によって連結されていることが好ましい。
【0033】
かかる構成によれば、避難者は、避難用空間内に配置された操作部材を操作することによって、防災用シェルタ内から外に出ずに、空気取入口開閉弁の弁体を駆動させて開弁、閉弁させることができる。このため、防災用シェルタが海上や水上にあるときに、避難用空間内から空気取入口開閉弁を開閉できるので、特に有効利用することができる。
【0034】
また、前記支柱は、当該支柱に沿って上下方向に延設された支柱カバーによって覆われていることが好ましい。
【0035】
かかる構成によれば、支柱は、支柱カバーによって覆われていることにより、避難者が支柱に衝突したときに、衝撃力を緩衝させることができる。
【0044】
また、前記シェルタ本体または前記脚部は、船舶に着脱可能に固定されていることが好ましい。
【0045】
かかる構成によれば、シェルタ本体または前記脚部は、船舶に着脱可能に固定されていることによって、津波や大しけや船舶の故障等で、船舶が沈没しそうになったときに、船舶上の防災用シェルタを避難用の船として利用することができる。
【0046】
また、前記シェルタ本体は、透明な樹脂からなる窓と、前記避難用空間側に配置された前記船舶用の操舵ハンドルと、前記避難用空間内に配置されて、前記操舵ハンドルの転舵角を船舶に設けられた舵に伝達するための転舵角伝達手段と、前記シェルタ本体に配置された前記転舵角伝達手段と前記船舶に配置された前記転舵角伝達手段とを接続する転舵角伝達用接続部と、前記避難用空間内に配置された計器盤と、前記計器盤と前記船舶に配置された電源と接続する電気信号伝達手段と、を備え、前記シェルタ本体内を前記船舶の操舵室として使用可能にしたことが好ましい。
【0047】
かかる構成によれば、防災用シェルタは、シェルタ本体内を船舶の操舵室として使用可能にしたことによって、平常時は防災用シェルタを船舶の操舵室として利用し、津波や大しけや船舶の故障等で、船舶が沈没しそうになったときに、船舶上の防災用シェルタを避難用の船あるいは水面に浮く浮上型救命カプセルとして利用することができる。
【0048】
また、前記シェルタ本体の内底部内には、前記電気信号伝達手段の中間部位を接続及び分離できるコネクタ部を収納配置する配線接続ボックスを備えていることが好ましい。
【0049】
かかる構成によれば、防災用シェルタは、シェルタ本体の内底部内に、コネクタ部を収納配置する配線接続ボックスを有することによって、電気信号伝達手段の中間部位を接続及び分離を容易に行うことができ、船上への設置、取り外し及び電気系統の接続作業を容易に行うことができる。
【0050】
また、前記シェルタ本体の内底部内には、前記転舵角伝達手段の中間部位を接続及び分離できる転舵角伝達用接続部を収納配置する機構接続部収納ボックスを備えていることが好ましい。
【0051】
かかる構成によれば、防災用シェルタは、シェルタ本体の内底部内に、転舵角伝達用接続部を収納配置する機構接続部収納ボックスを備えていることによって、転舵角伝達手段の中間部位を接続及び分離を容易に行うことができる。このため、防災用シェルタは、船上に設置したり、取り外したりするのを可能にすると共に、設置及び取り外し作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0068】
本発明によれば、地震や水害等のあらゆる災害の際に避難用として使用できる防災用シェルタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0070】
次に、
図1〜
図9を参照して、本発明に係る防災用シェルタを実施するための形態(以下「実施形態」という)を説明する。
【0071】
≪防災用シェルタの構成≫
図1に示すように、防災用シェルタ1は、大地震、津波、洪水、崖崩れ、火災等のあらゆる災害時に、避難者を防護したり、避難者が避難したりするための避難器具(シェルタ)である。つまり、防災用シェルタ1は、避難者が、崩れて来た家屋の屋根や建材や土砂や瓦礫等の落下物の下敷きになったり、押し潰されたりするのを防護すると共に、さらに、津波や洪水等の水害時に、緊急用のカプセル状避難筏としても使用することが可能な災害用の避難器具(シェルタ)である。防災用シェルタ1は、内部が空洞な大型の略球体形状をしたものからなる。
【0072】
防災用シェルタ1は、それぞれ後記する避難用空間R1と、備品収納室R2と、錘材収納室R3と、覗き窓11と、出入口12と、空気口15と、空気口ハッチ17と、扉部材8と、シェルタ本体2と、バランサ3と、把持部13と、ヒンジ部材14、脚部4と、支柱5と、錘材6と、床面7と、SOS報知装置9と、を主に備えている。
【0073】
防災用シェルタ1は、例えば、側面に出入口12、扉部材8及び把持部13を備え、上部に覗き窓11、空気口15、空気口ハッチ17、クレーン引き上げ用のフック16及びGPSチップ91を備え、下部に備品収納室R2、錘材収納室R3、バランサ3、脚部4、錘材6、床面7等を備え、略球状に形成されている。防災用シェルタ1は、例えば、直径が1000mm(1人用)〜2500mm(25人用)程度のドーム型の人員防護体であり、建物の屋内、屋外及び地中に配備することが可能な大きさに形成されている。
【0074】
なお、本発明に係る防災用シェルタ1は、河川の氾濫、土石流、津波等水害時及び船舶事故時の緊急用の避難筏や、大地震や崖崩れや火災、土砂災害等災害時に防災設備や、地下シェルタとして使用することも可能である。
本実施形態では、その一例として、大地震時に屋内及び屋外で使用する場合を例に挙げて説明する。なお、津波及び洪水等の水害時、船舶上で使用する場合、火災発生時、防犯用として使用する場合等については、後記する変形例で説明する。
【0075】
防災用シェルタ1は、地震発生時(または、予震発生時や、緊急地震速報装置のお知らせがあったとき)に直ぐに避難者が、その防災用シェルタ1に入り込んで避難するシェルタであり、家屋内の床面や庭の片隅等の直ぐに逃げ込むことが可能な適宜な場所に予め配置しておく。また、防災用シェルタ1は、地震発生時や、火災発生時や、その他の災害時に崖崩れや、土砂崩れや、頭上から落下物が落下する危険性が予想される場所(屋内及び屋外)に配置しておくことが望ましい。さらに、防災用シェルタ1は、後記する変形例で説明するが、水に浮くように形成されているため、津波や、洪水時の河川の氾濫が予想される場所に配置してもよい。防災用シェルタ1は、全体が略球状でコンパクトに形成されたことによって、地震、崖崩れ、水害、火災等のあらゆる災害の際に、落下する建造物、岩、水等が衝突する強い衝撃力や、外圧、熱、火に対して耐えるのに適した中空状の球体形状をしている。
【0076】
<避難用空間の構成>
図1に示すように、避難用空間R1は、防災用シェルタ1の内部の床面7上の空間であって、避難者が地震発生時、崖崩れ発生時及び津波発生時等に、緊急避難場所として使用したり、地震発生後及び崖崩れ発生後の一時的な避難場所として使用したりするためのキャビン状の空間である。避難用空間R1は、シェルタ本体2によって形成された略球状の内部空間からなる。さらに、
図2に示すように、避難用空間R1の下方には、錘材収納室R3と、備品収納室R2と、バランサ3とが主に設けられている。
【0077】
≪錘材収納室の構成≫
錘材収納室R3は、錘材6を収納するための空間であり、シェルタ本体2内の内底部2cに形成されている。錘材収納室R3は、シェルタ本体2に凹面状に形成された内底部2cと、この内底部2cの周縁部に載設されて凹面状に形成された部位を閉塞する蓋体31と、によって中空状に形成されている。
【0078】
<錘材の構成>
錘材6は、シェルタ本体2の重心と位置を低くしてバランスを取るためのバランサウエイトであり、砂、砂利、砕石、土、金属片、粒状の金属、あるいは、水よりも比重が大きい小さな物からなる。錘材6は、錘材収納室R3及び錘材収納空間41内にそれぞれ充填される。
【0079】
<蓋体の構成>
蓋体31は、内底部2cを閉塞する円板状の樹脂製平板部材からなり、周縁がシェルタ本体2の内壁部2bに圧接した状態で載設されて、錘材収納室R3の上蓋を構成している。蓋体31の周縁は、例えば、接着剤で内壁部2bに固着されている。蓋体31の上面には、中央部に支柱5が立設けられている。
【0080】
≪備品収納室の構成≫
図2に示すように、備品収納室R2は、備品を収納するための空間であり、防災用シェルタ1内に避難した避難者が載る床面7の床下に形成されている。備品収納室R2は、前記蓋体31の上面と、シェルタ本体2の内底部2cの近傍の内壁部2bと、蓋体31の上面から予め設定された間隔を介してその上方に配置されて備品収納室R2を閉塞する床板71及び収納蓋72と、床板71及び収納蓋72と蓋体31との間の空間74と、から主に形成されている。
なお、備品とは、緊急避難用備品であり、例えば、飲料水、懐中電灯、ラジオ、乾電池、保存食、携帯酸素、医療品、携帯トイレ、ロープ等の防災用品である。備品は、例えば、袋にまとめて入れて、備品収納室R2に収納して置く。
【0081】
<床面の構成>
前記床面7は、避難用空間R1の底面を形成する部材であって、シェルタ本体2内の錘材収納室R3の上面を形成する部材である。床面7には、後記する床板71と、収納蓋72と、収納蓋用蝶番73と、床面支持部2hと、支柱5と、が設けられている。なお、床面7の上には、カーペット等を敷設しても構わない。
【0082】
床板71は、避難用空間R1の床面7を形成する板部材であり、床面支持部2h上に載設されている。床板71の中央部には、支柱5が垂設されている。
収納蓋72は、備品収納室R2を開閉するための板部材であり、収納蓋用蝶番73によって床板71に対して回動可能に連結されている。収納蓋72は、床面支持部2h上に載置されて、床板71の機能も果たす。
収納蓋用蝶番73は、床板71と収納蓋72とに亘って複数も設けられている。
空間74は、備品収納室R2を形成する床下空間であって、床板71及び収納蓋72と、蓋体31と、内壁部2bとによって形成されている。
【0083】
≪バランサの構成≫
図2に示すように、バランサ3は、地上及び水面上において、外力や波によって防災用シェルタ1が揺れた際に、シェルタ本体2内の支柱5が垂直な安定した状態になるように、シェルタ本体2の重心を中心C1よりも下方にするためのオモリ(バランサウエイト)の役目を果たす部材である。バランサ3は、前記錘材収納室R3に収納された錘材6と、シェルタ本体2の外側底部2dに固定された脚部4と、この脚部4内に収納された錘材6と、からなる。
【0084】
≪脚部の構成≫
脚部4は、防災用シェルタ1を、屋内、地上あるいは水面上に配置したときの揺れを規制して安定化させるための前記バランサ3としてのバランサウエイトの役目と、球状の防災用シェルタ1を地面に安定した状態で配置させるための置き台の役目と、を果たす部材である。脚部4は、中空状に形成され錘材収納空間41を有する有底の筒形状に形成され、合成樹脂あるいは金属材料からなる。脚部40は、例えば、平面視して円形、側面視して矩形をした有底円筒体の形状に形成されて、上部4aが、シェルタ本体2の外側底部2dにキーあるいは接着剤等によって固定されている。錘材収納空間41には、前記錘材6が充填されている。
【0085】
なお、脚部40は、平面視して円形以外のものであってもよい。脚部40は、例えば、水面上で回転するのを抑制するために、平面視して前後方向等に長く形成してもよい。また、脚部は、全体を水よりも比重の重い部材(例えば、金属等)で形成して、錘材収納空間41及び錘材6がないものであっても構わない。
【0086】
≪支柱の構成≫
図2に示すように、前記支柱5は、シェルタ本体2が揺れた際に、避難用空間R1内に避難している避難者が掴まるための棒状部材であり、シェルタ本体2を支える大黒柱の役目も果たす。支柱5は、上端部がシェルタ本体2の天井部2eに固定され、下端部が、避難用空間R1の床面7を貫通して蓋体31あるいは内底部2cの上面に固定されて、垂直に設けられている。支柱5は、外径が30mm程度の鉄製棒状部材または鋼管からなる支柱本体51によって主に形成されている。
支柱本体51には、中央部に設けられ係止部53を有する支持バー52を回動自在に保持する軸支部54と、下方の床板71に穿設された貫通孔に内嵌されたカラー55と、蓋体31の上面中央に設けて支柱5の下端を保持する支柱受板材56と、天井部2eの中央に設けられ支柱5の上端を保持する支柱上端保持部57と、が設けられている。
【0087】
<支持バーの構成>
図6に示すように、支持バー52は、扉部材8を避難用空間R1側に引き寄せて扉部材8を出入口12に水密状態に閉塞するための棒状部材である。この支持バー52は、基端部が、支柱5に対して上下方向に回動可能に軸支部54に軸支され、先端部に固定された係止部53が、扉部材8の避難用空間R1側に形成された係合部81の係合溝82に係合・離脱可能な係止部53に係止される。
係止部53は、前記係合溝82の左右縁の扉締付面83に摺接する部材であり、少なくとも扉締付面83と摺接する部位が曲面状に形成された部材からなる。このため、係止部53は、例えば、支持バー52の先端部に形成され、外径が支持バー52の外径よりも大きく形成された球体からなる。この係止部53は、係合部81内の扉締付面83を摺動させると扉部材8を避難用空間R1側に距離L(約15mm)引き寄せることができる。
【0088】
図6に示すように、軸支部54は、支柱本体51に外嵌されてボルト締めされた円筒部54aと、円筒部54aの外周部から突出した突片54bと、支持バー52を突片54bに軸支するための軸ピン54cと、から構成されている。
図2に示すように、前記カラー55は、樹脂製または金属製の円筒部材からなる。
支柱受板材56は、中央部に支柱本体51に下端部が内嵌される窪みを有する厚い円盤状の部材からなる。
支柱上端保持部57は、支柱本体51の上端部が内嵌される窪みを有すると共に、上端にクレーン掛止用のフック16が設けられた厚板状金属板であり、シェルタ本体2の天井部2eに植設されている。
【0089】
≪シェルタ本体の構成≫
図1に示すように、シェルタ本体2は、防災用シェルタ1の本体主要部及び避難用空間R1を形成する部材であり、合成樹脂製の中空状の球体である。シェルタ本体2は、このシェルタ本体2に形成された出入口12と、出入口12を開閉する扉部材8と、シェルタ本体2の下部2gに設けられたバランサ3と、シェルタ本体2の外周の下部2gに固定された脚部4と、を備えている。シェルタ本体2は、例えば、シェルタ本体2の外周面を形成する外層部材21と、この外層部材21の避難用空間R1側の面に固着され、シェルタ本体2の内壁面を形成する緩衝材22と、で形成されている。
【0090】
外層部材21は、例えば、複数の合成樹脂を積層した多層構造に形成された強化部材であり、シェルタ本体2の外壁部2aを形成している。外層部材21は、例えば、FRP樹脂、ロービングクロス、コア層、ガラス繊維、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)樹脂等で積層された複合積層材からなる。なお、その外層部材21の表面は、コーティング材で覆って、さらに強度を向上させてもよい。
【0091】
なお、外層部材21を構成するFRP樹脂は、いわゆる強化プラスチックといわれる合成樹脂であり、金属材料よりも比強度が強く、軽量で、耐熱性、難燃性及び耐食性に優れた素材である。このため、この外層部材21で形成されたシェルタ本体2は、衝撃に対して強く、折れ難い、壊れ難い、変形し難、腐らない構造の防災用シェルタ1にすることが可能となる。
【0092】
前記ロービングクロスは、縦糸及び横糸にロービングを用いて平織りして製織した織物であり、ガラスクロスと同様に縦方向及び横方向に対して強度を有する。
コア層は、プラスチックやカーボングラファイト等の複数の薄い合成樹脂材料を積層して形成された芯材である。
ガラス繊維は、ガラスを溶解して牽引して極細い繊維状にした材料であり、積層された外層部材21の耐衝撃性、耐熱性、強度及び軽量化を向上させるための部材である。
コーティング材は、シェルタ本体2の外周面2fを覆う塗料からなり、ゲルコートコーテイングまたはゲルコート塗装といわれている。外層部材21の外壁部2aの表面は、コーティング材を塗装することにより、外壁部2aの凹凸をなくして光沢のある綺麗な面にすると共に、紫外線による劣化と、外壁部2aに傷が付くのを防止する機能も果たす。
なお、外層部材21の表面の色は、遠くからでも発見し易い、例えば、蛍光色等の目立つ色が望ましい。
【0093】
緩衝材22は、外壁部2aの外層部材21の内面全体に固着され内壁部2bを形成する内装部材であり、例えば、軟質で、衝撃を吸収するクッション性と、高熱及び低温が避難用空間R1に伝わるのを遮断する断熱性と、に優れた材料である発泡スチロール、ウレタン、あるいは、樹脂製段ボール等からなる。緩衝材22は、例えば、厚さが約10mm程度の厚板状の衝撃吸収材からなる。また、緩衝材22は、断熱材としての機能も果たすため、冬季や寒冷地や水上において、避難者を寒さから守ると共に、また、雪崩用の避難具としても、使用可能である。
【0094】
≪出入口の構成≫
図1に示すように、出入口12は、避難者が防災用シェルタ1内の避難用空間R1に出入りするための出入り口であり、後記する扉部材8によって開閉される。出入口12は、例えば、シェルタ本体2の側面部位の一箇所に円形に形成された孔からなり、出入口12の内周縁に全周に亘って環状に切欠形成された段差部12aを有している。
図3及び
図4に示すように、段差部12aは、断面視して略L字状に切欠形成され、扉部材8を閉塞した際に、扉部材8の周縁部8aの切欠部8bに設けられたシール材Sに圧縮した状態に圧接して出入口12を密閉させて完全防水にする。さらに、
図3に示すように、扉部材8に設けた後記する係合部材80の係合部81に支持バー52の係止部53を係合させることにより、扉部材8の密閉状態を確実にすることができる。
【0095】
図4に示すように、前記段差部12aには、シール材Sが半分露出した状態で、このシール材Sが接着剤を介在して嵌着される環状溝12bが形成されている。
環状溝12bは、例えば、Oリングまたはゴムチューブからなる環状のシール材Sを装着される溝である。
環状溝12bの背面側(避難用空間R1)には、例えば、FRP樹脂によって形成された補強部材12cが、扉部材8の切欠部8bの避難用空間R1側に配置された係合部材80の補強部80aに対向して配置されている。
【0096】
≪扉部材の構成≫
図3〜
図5に示すように、前記扉部材8は、出入口12を、水が浸入しないように密閉した状態に閉めることが可能な開閉体(ハッチ)であり、シェルタ本体2の内側及び外側から開閉し、水密状態に出入口12を密閉した状態にロック・アンロックできるようになっている。この扉部材8は、円形の開閉板部材8cと、開閉板部材8cの周縁に形成された切欠部8bと、開閉板部材8cの中央部に設けられた係合部材80と、開閉板部材16cの外側寄りに設けられた取手8fと、扉部材8を閉塞状態にロックするロック機構19と、ヒンジ部材14と、を備えて構成されている。扉部材8は、出入口12を密閉状態にすることによって、防災用シェルタ1を、水、雨水、海水及び障害物から保護するカプセル状態にすることが可能なドアハッチである。
【0097】
前記周縁部8aは、開閉板部材8cの内側周縁部位であって扉部材8を閉塞した際に、防災用シェルタ1の出入口12に内嵌するようになっている。
切欠部8bは、周縁部8aの避難用空間R1側に形成され、扉部材8を閉塞した際に、段差部12aに対して対向した位置に形成されている。
開閉板部材8cは、例えば、出入口12をシェルタ本体2の外側から覆うようにして閉塞する樹脂製の厚板部材であり、後記するヒンジ部材14を中心として回動自在に軸支されている。
【0098】
≪取手の構成≫
図3に示すように、取手8fは、開閉板部材8cを回動させる際に手で持つための摘みであり、開閉板部材8cに設けられたロック機構19寄りの位置に配置されている。この取手8fは、例えば、開閉板部材8cに対して、半円状あるいはコ字状に形成されたビニール製あるいは軟質樹脂製のロープ状部材からなる。
【0099】
≪ヒンジ部材の構成≫
図3に示すように、ヒンジ部材14は、開閉板部材8cをシェルタ本体2に対して開閉自在に回動させるための連結部材であり、ロック機構19とは反対の位置に配置された蝶番からなる。このヒンジ部材14は、シェルタ本体2に固定され、軸棒挿入管を有する第1蝶番片14aと、開閉板部材8cに固定され、軸棒挿入管を有する第2蝶番片14bと、第1蝶番片14aの軸棒挿入管と第2蝶番片14bの軸棒挿入管とに挿入して回動自在に連結する軸棒部材14cと、から構成されている。
【0100】
≪係合部材の構成≫
図3、
図5及び
図6に示すように、係合部材80は、前記支持バー52の先端部及び係止部53が係合する部材であり、扉部材8の避難用空間R1側の中央部に設置されている。係合部材80は、それぞれ後記する係合部81と、係合溝82と、扉締付面83と、延設部84とを一体形成された金属製板材または合成樹脂からなる。
【0101】
係合部81は、球状の係止部53が収納・離脱されるポケット状部位であり、平面視して略コ字状に形成されている。
図5に示すように、係合溝82は、係合部81の前面の上側中央部から真下に向けて切欠形成され、支持バー52の先端部が挿入される溝である。係合部81には、略V字状に形成されて支持バー52が係合部81の中央部に自動的に寄るように案内するためのガイド部82aと、このガイド部82aの下端から下側に向かって徐々に細くなるように形成された挟持溝82bと、が形成されている。
【0102】
図6に示すように、扉締付面83は、係合部81内に挿入された係止部53が摺接する摺動面であり、係合溝82の外側周縁部である。扉締付面83は、支持バー52の軸支部54を中心として回動する支持バー52を半径とする回動軌跡に対して拡径して形成された斜面からなる。扉締付面83は、係合部81の上側に形成されて緩斜面83aと、この緩斜面83aの下側に連続形成された急斜面83bと、からなる。
図3及び
図6に示すように、延設部84は、係合部81の下端部から扉部材8の周縁部8aまで延設された補強部材であり、下端部にL字状に折曲形成された補強部80aが形成されている。
【0103】
≪ロック機構の構成≫
図7及び
図8に示すように、ロック機構19は、シェルタ本体2の内側から扉部材8を密閉状態にロックするためのハッチ止め部材であり、防災用シェルタ1の内側に設けられている。ロック機構19は、扉部材8の周縁部8aの近傍に設けられた第1係合部19aと、この第1係合部19aに対して対向した状態でシェルタ本体2に設置された第2係合部19bと、第1係合部19a及び第2係合部19bに係合、離脱してロック状態、アンロック状態にするロック部材19cと、から主に構成されている。
【0104】
第1係合部19aは、扉部材8の内側面に接着剤によって固着される平板部19dと、この平板部19dに一体成形されたコ字状部19eとからなる。第1係合部19aと第2係合部19bは、扉部材8において、ヒンジ部材14とは反対である対称位置に配置され、対称位置であれば逆であっても構わない。
【0105】
第1係合部19a、第2係合部19bは、少なくとも、後記する鎌形部19hが挿入、離脱できるものでればよく、以下、それぞれが一体形状の場合を例に挙げて説明する。
第2係合部19bは、平板部19fと、コ字状部19gとを一体形成してなり、平板部19fをシェルタ本体2の外壁部2aに接着剤で固着されている。
【0106】
ロック部材19cは、第1係合部19aと第2係合部19bとを連結することによって、扉部材8で出入口12を閉塞した状態でシェルタ本体2に固定してロック状態及びアンロック状態にするための部材である。このロック部材19cは、前記鎌形部19hと、この鎌形部19hの基端部に連設された操作レバー部19iと、この操作レバー部19iを回動自在に軸支する軸支部19jと、から構成されている。
【0107】
鎌形部19hは、第1係合部19aのコ字状部19e、及び、第2係合部19bのコ字状部19gに係合することによって、扉部材8をロック状態にし、それらから離脱することにより、アンロック状態にする鎌形状(楔形状)のフック部材である。鎌形部19hは、楔形状に形成されていることにより、操作レバー部19iを操作した際に、楔の原理により扉部材8を内側に引き込む方向に力がコ字状部19gに働き、ガタツキなく締め付けることができる。
【0108】
操作レバー部19iは、防災用シェルタ1の内側にいる者が扉部材8を出入口12に閉塞した状態にロックするとき、あるいは、そのロック状態を解除する際に、操作する棒状部材である。この操作レバー部19iは、先端部に鎌形部19hが設けられ、中央部に軸支部19jが設けられている。
図7示すように、操作レバー部19iは、例えば、矢印a方向に操作すると、この軸支部19jを中心として鎌形部19hが矢印b方向に回動して、第1係合部19a及び第2係合部19bに挿入されてロック状態になる。
【0109】
≪覗き窓の構成≫
図9に示すように、覗き窓11は、シェルタ本体2内外から内外部を視認したり、太陽光を取り入れて避難用空間R1を明るくしたり、汚物等をシェルタ本体2外に投棄したりするための開閉式窓である。覗き窓11は、透明な強化プラスチック等の透明部材によって形成されたハッチ等からなる。覗き窓11の外周部には、不図示の窓枠ゴムが設けられて、覗き窓11の周縁とシェルタ本体2の窓孔(図示省略)とを水密状態に嵌着させるためのシール部材であり、接着剤によって覗き窓11に接着されている。
【0110】
≪空気口の構成≫
図1に示すように、空気口15は、防災用シェルタ1外の外気を避難用空間R1内に流入させるための空気取入口用の窓であり、例えば、防災用シェルタ1の上部の二箇所に設けられている。空気口15は、後記するシェルタ本体2の内壁部2bから外壁部2aに貫通して形成された内径が30mm程度の孔に、空気口ハッチ17を嵌入してなる。空気口15は、例えば、避難用空間R1内から空気口ハッチ17を開閉操作することによって、大気中に連通するようになっている。
【0111】
≪空気口ハッチの構成≫
図9に示すように、前記空気口ハッチ17は、空気口15を密閉した状態に閉めることが可能な開閉体であり、シェルタ本体2(
図1参照)に穿設された孔(図示省略)に内嵌された円筒部材17aと、この円筒部材17aの上部に一体形成された鍔部材17bと、円筒部材17a内に回動自在に軸支された弁体17cと、弁体17cに連結された弁体操作部材17dと、からなる。
【0112】
円筒部材17aは、上端部がシェルタ本体2(
図1参照)の孔の上部に配置され、下端部が避難用空間R1(
図1参照)内に突出した状態に配置されている。
鍔部材17bは、シェルタ本体2の外側の孔の周縁部に接着剤で固定されている。
弁体17cは、円筒部材17aを閉塞する円板状の部材からなり、下面に弁体操作部材17dが垂下した状態に連結されている。弁体17cは、例えば、その弁体操作部材17dを上側に押すと、弁体17cが軸支部(図示省略)を中心として回動して開弁し、弁体操作部材17dを下側に下降させると、弁体17cが軸支部(図示省略)を中心として回動して閉弁するようになっている。その弁体17cは、空気口15内に雨水、海水等の水が入ると、水の重さで自動的に閉弁するように構成されている。
【0113】
≪把持部の構成≫
図1に示すように、把持部13は、避難者が、防災用シェルタ1を移動させるときに、手で握って引っ張ったり、持ち上げたりするための部位である。把持部13は、例えば、シェルタ本体2の外壁部2aの膝の高さ程度の位置に設置された複数の略コ字状の樹脂製部材からなる。
【0114】
図2に示すように、避難者が床面7上に座った状態において、避難者の肩の高さと略同じ高さのシェルタ本体2の内壁部2bには、避難者を拘束するシートベルト10が設けられている。このシートベルト10は、防災用シェルタ1が揺れる場合に避難者をシェルタ本体2に固定する拘束部材である。シートベルト10は、帯状のウエビング10aと、ウエビング10aの中央部位を内壁部2bにボルト締めするための取付金具10bと、ウエビング10aの一端部寄りに設けられたタング10cと、タング10cが着脱自在に結合されるバックル10dと、から構成されている。
【0115】
≪SOS報知装置の構成≫
図1に示すように、SOS報知装置9は、災害時に防災用シェルタ1内に一時的に緊急避難した避難者が、外部に対して救助の要請を知らせるための発信装置である。SOS報知装置は、シェルタ本体2の高い位置に埋設されたGPSチップ91と、文字を付記してなる表示部92等からなる。
【0116】
GPSチップ91は、シェルタ本体2の上側の外周面2fに設置され、警察署、消防所、自衛隊等のソナーで、避難者の居場所を伝達できるようになっている。
表示部92は、防災用シェルタ1の持ち主名、何人生存しているか等の文字や識別コード等を適宜に付記して表す表示部位であり、例えば、外周面2fの直接付記したものであっても、あるいは、外周面2fに設けた透明板に避難用空間R1から直接文字を付記するようにしたものであってもよい。
【0117】
なお、SOS報知装置は、携帯電話や、発光ダイオードからなる表示装置であっても構わない。このため、シェルタ本体2の外周面2fには、太陽電池(図示省略)を取り付けて置くと便利である。また、備品収納室内には、手動式の発電装置を収納させて置くと便利である。
【0118】
≪防災用シェルタの作用≫
次に、
図1〜
図9を参照して本発明の実施形態に係る防災用シェルタ1の作用を使用手順に沿って説明する。
【0119】
図1〜
図2に示すように、防災用シェルタ1は、例えば、始めから地震、津波等の災害が来た場合を予想して、直ぐに、防災用シェルタ1内に逃げ込むことが可能な適宜な場所に配置して置くことが望ましい。防災用シェルタ1を配置して置く場所としては、例えば、屋内の床の上、あるいは、自宅の庭等の屋外の平らな地面上に置いて、災害が発生したときに備えておく。
【0120】
移動や移設する場合は、例えば、クレーン(図示省略)の掛止部にフック16を掛けて、クレーンによって防災用シェルタ1を適宜な場所へ移動させる。錘材収納室R3及び脚部4内には、砂等の錘材6を入れておく。また、避難用空間R1内には、緊急避難用備品を入れておく。実験上、フック16は、荷重が500kgの防災用シェルタ1であっても、クレーンで引き上げることが可能であった。
【0121】
例えば、大きな予震が発生時や、緊急地震速報装置のお知らせがあったときには、一般に、大地震が発生するまでに10秒〜数十秒程度の時間がある。大きな地震の予震やお知らせがあった場合、避難者は、出入口12から避難用空間R1に入り込んで避難する。
【0122】
防災用シェルタ1内に入った避難者は、
図1に示す状態の支持バー52を上方向に上げて、先端の係止部53を
図2に示すように、係合部81内に入れると共に、支持バー52の先端部を係合溝82内に入れて、その支持バー52を下方向(
図5及び
図6の矢印c,d方向)に押し下げる。すると、
図4に示すように、扉部材8は、避難用空間R1側(矢印e方向)に引き寄せられて、周縁部8aの切欠部8bが出入口12のシール材Sに圧接して水密状態に閉塞される。
【0123】
次に、
図8に示すように、操作レバー部19iは、矢印a方向に操作すると、この軸支部19jを中心として鎌形部19hが矢印b方向に回動して、第1係合部19a及び第2係合部19bに挿入されて水、扉部材8が出入口12の水密状態に閉塞したのを維持してロック状態にすることができる。
【0124】
また、
図9に示す空気口ハッチ17の弁体操作部材17dを押し上げることにより、弁体17cが開弁して大気中の空気をシェルタ本体2内に取り入れることができる。弁体操作部材17dを引っ張れば、弁体17cが空気口ハッチ17を密閉した状態に閉弁させて、雨水や海水等の浸入を防止することができる。
【0125】
大地震で家屋が倒壊して建材等が防災用シェルタ1上に落下しても、また、崖崩れで土砂や瓦礫等が防災用シェルタ1上に落下しても、シェルタ本体2が強度を有するので、防災用シェルタ1内の避難者が下敷きになって押し潰されるのを防護することができる。つまり、防災用シェルタ1は、瓦礫等の障害物が当たっても壊れることなく、さらに、水等が浸入することがない防水性を備えたカプセル状になっているため、防災用シェルタ1内に避難した避難者をあらゆる災害から守ることができる。
【0126】
図1に示すように、シェルタ本体2は、外壁部2aがFRP樹脂等からなるので、衝撃性、強弾性、耐腐食性及び強度を備え、折れない、割れない、変形しない、腐らない、浮くという性質を備えている。さらに、シェルタ本体2は、その内壁部2bが、衝撃を吸収するクッション性と、熱及び低温が対する断熱性とを備えた緩衝材22からなるので、保温効果や緩衝性にも優れている。
【0127】
このように、防災用シェルタ1は、強度、耐衝撃性、緩衝性等を備えていると共に、外形が球体であるので、瓦礫、鉄骨等の障害物や風雨や水等が当たったとしても、その負荷を受け流し易い形状をしているため、衝撃力を受け難い。
このような防災用シェルタ1内に逃げ込んだ避難者は、避難用空間R1が前記した強度を有するカプセル状のシェルタ本体2に被われているので、衝撃を直接受けることが無い。衝撃を受けたとしても、防災用シェルタ1が揺れるだけで、凹んだり、割れたり、変形したり、水が浸入して来ることはない。強度実験を行った結果、防災用シェルタ1は、7.2トンの荷重に対しても変形することがなかった。特に、地上において置き台の役目を果たす脚部4は、河川に氾濫時や海上において、船底にあるセンタキールの役目を果たすので、防災用シェルタ1の揺れを安定化させるのに寄与する。
【0128】
図1に示す防災用シェルタ1は、揺れた際や、波のある水上に流された際に、バランサ3が重心を安定化させる役目を果たすので、揺れを抑制することができる。
防災用シェルタ1は、喩え、土砂等によって押されて移動したり、転倒したりしたとしても、内壁部2b全体が緩衝材22で形成されているので、避難者が避難用空間R1内で内壁面に衝突しても、衝撃が緩衝材22で吸収されるため、ケガをすることがない。
したがって、この防災用シェルタ1内に避難した避難者は、あらゆる災害に対して身を守ることが可能である。また、防災用シェルタ1は、あらゆる災害に耐えることができる強度を有する球状シェルタであるため、あらゆる災害時の人命救助や避難用シェルタとして使用することが可能である。
【0129】
地震が静まって、防災用シェルタ1内から脱出する場合は、
図8に示すように、防災用シェルタ1内にあるロック機構19の操作レバー部19iを操作して扉部材8を外方向に押せば、出入口12が開放され、防災用シェルタ1外に出ることができる。また、地震が続くようであれば、防災用シェルタ1内にしばらくの間、備品収納室R2に収納してある備品を利用するなどして避難していれば安全である。
【0130】
家屋の倒壊や崖崩れ等により、防災用シェルタ1の上に家屋の建材や土砂等の落下物があって、防災用シェルタ1内から出ることができない生き埋めの状態の場合には、SOS報知装置(図示省略)を操作して救助信号を発信し、助けを呼ぶことによって、早期に救助されることが可能となる。このようにして、避難者は、大地震時に自分自身の身体を防災用シェルタ1によって守ることが可能となる。また、防災用シェルタ1は、昼間おいて、外周面2fが目立つ黄色等の蛍光色で塗装されているので、発見され易い。防災用シェルタ1は、夜間において、LED等からなるSOS報知装置9を点灯表示することによって目立つため、救助者に発見され易い。
また、SOS報知装置9は、GPSチップ91から救助発信信号を発信させたり、表示部92で救助を文字表示したりすることで、外部に発見し易くすることが可能である。
【0131】
[第1変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。なお、既に説明した構成は同じ符号を付してその説明を省略する。
【0132】
図10は、本発明の実施形態に係る防災用シェルタの第1変形例を示す図であり、使用状態を示す概略断面図である。
図11は、本発明の実施形態に係る防災用シェルタの第1変形例を示す図であり、シェルタ本体を開放したときの状態を示す概略拡大断面図である。
【0133】
前記実施形態では、扉部材8を備えた防災用シェルタ1(
図1参照)を例に挙げて本発明を説明したが、
図10及び
図11に示す防災用シェルタ1Aのように、シェルタ本体2Aが二つに分割可能にして、シェルタ本体2A自体が開閉する小型のシェルタであっても構わない。
【0134】
この場合、シェルタ本体2Aは、
図10に示すように、左側のシェルタ半体2A1と、右側のシェルタ半体2A2と、左側のバランサ3A1と、右側のバランサ3A2と、蝶番23Aと、ロック機構19Aと、吸気用ホース24Aと、吊革25Aとを主に備えている。シェルタ本体2Aは、半球形状の左側のシェルタ半体2A1と、このシェルタ半体2A1と対称な半球形の右側のシェルタ半体2A2とを、下端部に設けた蝶番23Aで開閉自在に連結した中空状の球体からなる。このシェルタ本体2Aは、強度が高く、弾丸性が大きいアラミド繊維入りのアラミド繊維強化プラスチック(AFRP、CFRP、DFRP、KFRP)や、ホーザンからなる。
【0135】
左側のシェルタ半体2A1は、例えば、上側の内壁部2A1bに、避難者が外気を吸引して呼吸するための吸気用ホース24Aと、避難者が掴まるための吊革25Aと、が設けられ、上端部にシェルタ半体2Aaとシェルタ半体2Abとを閉塞した状態にロックするロック機構19Aを備え、下端部に、シェルタ半体2A1とシェルタ半体2A2とを開閉自在に接続する蝶番23Aと、錘材6を充填した左側のバランサ3A1と、を備えている。
【0136】
図11に示すように、ロック機構19Aは、前記実施形態のロック機構19と同様に、シェルタ本体2Aの内側から左側のシェルタ半体2A1とシェルタ半体2A2とを密閉状態にロックするためのハッチ止め部材である。ロック機構19Aは、右側のシェルタ半体2A1の周縁部の近傍に設けられた環状の係合部19Aaと、この係合部19Aaに対して対向した位置のシェルタ半体2A1に設置されて、係合部19Aaに係合、離脱してロック状態、アンロック状態にするロック部材19Acと、から主に構成されている。
【0137】
ロック部材19Acは、係合部19Aaに連結させることによって、シェルタ半体2A1と、シェルタ半体2A2とが内嵌した状態でロックしたり、アンロック状態にするための部材である。ロック部材19Acは、鎌形状(楔形状)のフック部材からなる鎌形部19Ahと、この鎌形部19Ahの基端部に連設されてロック部材19Acを回動させる操作レバー部19Aiと、この操作レバー部19Aiを回動自在に軸支する軸支部19Ajと、から構成されている。
【0138】
蝶番23Aは、左側のシェルタ半体2A1の下端部に固定された一方の蝶番片23Aaと、右側のシェルタ半体2A1の下端部に固定された他方の蝶番片23Abと、二つの蝶番片23Aa、蝶番片23Abを連結する軸棒部材23Acと、から構成されている。
吸気用ホース24Aは、基端部が、大気に連通するように左側のシェルタ半体2A1の空気口15Aに固定された中空の蛇腹ホースからなり、先端部が、避難者が口でくわえて外気を吸う部位となっている。
吊革25Aは、両端部を左側のシェルタ半体2A1の内壁部2A1bに固定されて、輪を描くように配置された帯状部材あるいはベルト状部材からなる。
【0139】
右側のシェルタ半体2A2は、例えば、左側のシェルタ半体2A1の周縁部が内嵌する段差状の拡径部2A2aと、この拡径部2A2aに設けられた環状のシール材S2と、上端部に設けられロック機構19Aのロック部材19Acが係合する係合部19Aaと、下端部に設けられ錘材6を充填した左側のバランサ3A2と、前記蝶番23Aと、を備えている。
【0140】
このように防災用シェルタ1は、小型に形成されても、アラミド繊維強化プラスチックから形成されていることによって、衝撃に対して強い強度を備えている。このため、家屋が倒壊するような大地震の際に、避難者が防災用シェルタ1内に逃げ込むことにより、落下して来る建材等の障害物から身を守ることができる。
【0141】
また、空気口15Aは、シェルタ本体2Aに穿設した貫通孔に吸気用ホース24Aを内嵌したものであってもよい。つまり、空気口15Aは、避難用空間R1と大気中とを連通し、水等が浸入しないように閉塞できるものであれば、その構造は特に限定されない。
【0142】
[第2変形例]
図12は、本発明の実施形態に係る防災用シェルタの第2変形例を示す概略縦断面図である。
図13は、本発明の実施形態に係る防災用シェルタの第2変形例を示す図であり、支柱に設けたピストンシリンダ機構を示す要部拡大概略縦断面図である。
【0143】
前記実施形態では、
図1に示すように、シェルタ本体2の上部に空気口ハッチ17で開閉される空気口15を設けたことを説明したが、
図12及び
図13に示すように、支柱5Bにピストンシリンダ機構50Bを設けて、ピストンシリンダ機構50Bを利用してシェルタ本体2B外の大気を避難用空間R1内に取り込むようにしても構わない。
【0144】
この場合、防災用シェルタ1Bは、それぞれ後記する支柱5Bの支柱本体51Bと、第1逆止弁VB1と、第1空気取入口OB1と、ピストン50Baと、ピストンシャフト50Bbと、第1シリンダ室50Bcと、第2シリンダ室50Bdと、ハンドル5Baと、第1空気供給口O1と、第2逆止弁VB2と、第2空気取入口OB2と、第3逆止弁VB3と、空気取入管PB1と、第4逆止弁VB4と、ストッパ50Be,50Bfと、仕切部材50Bgと、漏防止部材50Bhと、支柱カバー5Bbと、を主に備えている。この支柱5Bは、管形状の支柱本体51Bと、この支柱本体51Bの中央部位から分岐して上方向に向けて延設された空気取入管PB1と、を接合してなる。
【0145】
支柱本体51Bは、第1シリンダ室50Bc及び第2シリンダ室50Bdを形成すると共に、ピストン50Ba、ストッパ50Be,50Bf、仕切部材50Bg、及び、漏防止部材50Bhを内設し、ハンドル5Baを挿通している。支柱本体51Bは、この中空状に形成され、上部に大気中と連通し空気取入口開閉体VB5のスライド移動によって開閉される第1空気取入口OB1を有する管状部材からなる。この支柱本体51Bは、上端がシェルタ本体2Bの外周面2Bfまで延設され、下端が内底部2Bcまで延設されて、それぞれ固定されている。
【0146】
第1逆止弁VB1は、第1空気取入口OB1に設けられ、支柱本体52B内から大気中方向へ流れる空気を阻止する一方向弁である。第1空気取入口OB1は、大気を第1シリンダ室50Bc内に取り入れるための取入口である。
【0147】
ピストン50Baは、ハンドル5Baの上下方向の操作によって上下動する部材であり、第1シリンダ室50Bcと第2シリンダ室50Bdとの間を上下動可能に支柱本体51Bに内設されている。ピストン50Baは、支柱本体51B内を第1シリンダ室50Bcと第2シリンダ室50Bdとに区画するように配置されている。
ピストンシャフト50Bbは、上端がピストン50Baに連結され、下端が支柱本体51B内のハンドル5Baの基端部に連結されて、中央部が仕切部材50Bgに挿通され、仕切部材50Bgの上下部位にそれぞれストッパ50Be,50Bfが固定されている。
【0148】
第1シリンダ室50Bcは、支柱本体51B内において、第1逆止弁VB1からピストン50Baまでの間に亘って形成された空間であり、第1空気取入口OB1から取り込んだ空気が、ピストン50Baの上下動で第1シリンダ室50Bcを通って第1空気供給口O3へ流れるようになっている。
第2シリンダ室50Bdは、支柱本体51B内において、ピストン50Baから仕切部材50Bgまでの間に亘って形成された空間であり、第2空気取入口OB2から取り込んだ空気が、ピストン50Baの上下動で第2シリンダ室50Bdを通って第2空気供給口O4へ流れるようになっている。
【0149】
第1空気供給口O3は、第1シリンダ室50Bc内の空気を避難用空間R1に吐出させるための空気吐出口であり、支柱本体51Bにおいて、避難用空間R1内の上部となる部位に形成されている。第2逆止弁VB2は、この第1空気供給口O3に配置され、避難用空間R1から第1シリンダ室50Bc内方向へ流れる空気を阻止する一方向弁である。
【0150】
第2空気供給口OB4は、第2シリンダ室50Bd内の空気を避難用空間R1に吐出する吐出口であり、支柱本体50Baの中央部位に形成されている。
第3逆止弁VB3は、第2空気供給口OB4に設けられ、避難用空間R1から第2シリンダ室50Bd内方向へ流れる空気を阻止する一方向弁である。
【0151】
前記ハンドル5Baは、ピストン50Baを上下動させて外気をピストンシリンダ機構50Bを介して避難用空間R1に手動的に取り込むための操作部材であり、支柱本体51Bに漏防止部材50Bhを介在して挿通した状態に設けられている。このハンドル5Baは、使用しないときには支柱本体51Bに沿うような状態に折り畳むことが可能な折り畳み式ハンドルになっている。
漏防止部材50Bhは、支柱本体51B内の空気が支柱本体51B外に漏れるのを防止するためのシートであり、支柱本体51Bの内壁に移動自在に密着されるようにしてハンドル5Baに固定されている。
【0152】
空気取入管PB1は、上端部に大気中と連通する第2空気取入口OB2を有し、下端部に第2シリンダ室50Bdに連通する連通口OB5を有する配管である。
第2空気取入口OB2は、シェルタ本体2Bの上方の外周面2Bfに配置されている。
連通口OB5は、前記第2空気供給口OB4の対向した位置に形成されている。
第4逆止弁VB4が、空気取入管PB1の連通口OB5に設けられ、第2シリンダ室50Bd内から空気取入管PB1内方向へ流れる空気を阻止する一方向弁である。
【0153】
前記ストッパ50Be,50Bfは、一体に上下動するピストン50Ba、ピストンシャフト50Bb及びハンドル5Baの上下動する範囲Hを、仕切部材50Bgに当接することで規制するための厚板状部材であり、ピストンシャフト50Bbに固定されている。
【0154】
仕切部材50Bgは、支柱本体51B内において、第2シリンダ室50Bdと、この第2シリンダ室50Bdの下側に形成された中空部2Biとに区画する部材であり、支柱本体51Bに固定された厚板状部材からなる。
支柱カバー5Bbは、支柱5Bを上端部から下端部に亘って覆う保護カバーであり、例えば、弾性を有する合成樹脂製の略円筒形状のカバー部材からなる。支柱カバー5Bbは、防災用シェルタ1Bが揺れて避難者が支柱5Bに衝突した際の緩衝材の役目も果たす。
また、シェルタ本体2Bの上部には、避難用空間R1内の空気を大気中に放出させるための換気口OB6が形成されている。
【0155】
このように構成された本発明の第2変形例は、避難者が外気を避難用空間R1内を大気中の空気と交換して空気の入れ換えを行いたい場合、ハンドル5Baを手動で上下動させる。すると、ピストン50aは、ハンドル5Baに連動して上下動する。ピストン50Baが下降すると、第1空気取入口OB1から第1シリンダ室50Bc内に大気が取り込まれると共に、第2シリンダ室50Bd内の空気が、第3逆止弁VB3を押し開けて第2空気供給口OB4から避難用空間R1内に大気が供給される。そして、避難用空間R1内に大気が入り込んだことにより、入り込んだ空気の分だけ、避難用空間R1内に空気が換気口OB6から大気中に排出される。
【0156】
また、ピストン50Baが上昇すると、第1空気取入口OB1の第1逆止弁VB1が閉弁して、第1シリンダ室50Bc内に空気が、第2逆止弁VB2に押し開けて第1空気供給口O3から避難用空間R1内に空気が供給される。そして、避難用空間R1内に大気が入り込んだことにより、入り込んだ空気の分だけ、避難用空間R1内に空気が換気口OB6から大気中に排出される。また、大気中の空気は、第2空気取入口OB2から空気取入管PB1内に入り込んで、第4逆止弁VB4を押し開けて連通口OB5から第2シリンダ室50Bdに大気が取り込まれるようになっている。このため、シェルタ本体2B内が、水の浸入しない密閉状態であったとしても、外気を避難用空間R1内に取り込めるので、酸欠状態になることがない。その結果、防災用シェルタ1Bは、海上や水上や地上等のあらゆる場所で使用することが可能である。
【0157】
また、備品収納室R2内には、例えば、酸素吸入器93a及びホース93bを有する酸素ボンベ93を設置しておいてもよい。
また、錘材収納室R3には、飲料水とバランサ3の役目を果たす水WをタンクTに入れて収納しておいてもよい。
【0158】
[第3変形例]
図14は、本発明の実施形態に係る防災用シェルタの第3変形例を示す概略縦断面図である。
前記第2変形例では、
図13に示すように、上下動させてピストン50Baを駆動させるハンドル5Baを説明したが、これに限定されるものではない。
図14に示すように、ハンドル5Caは、ピストン50Caと、上端がピストン50Caに連結され、下端が回転体50Ccに連結されたロッド50Cbと、支柱本体51C内に回転自在に支軸された前記回転体50Ccと、一端が回転体50Ccの中心に固定され、他端に回転式のハンドル5Caを設けたレバー50Cdと、レバー50Cdを軸支する軸部材50Ceと、を連結して、このハンドル5Caを回転させることによって、ピストンクランク機構で回転体50Cc及びレバー50Cdを回転させるようにしてもよい。
【0159】
このようにすれば、前記第2変形例で説明した
図13に示すハンドル5Baを上下方向に移動させるために支柱本体51Bに形成したスリット状の溝や、この溝を密閉させるための漏防止部材50Bhが不要となる。つまり、
図14に示すレバー50Cdの軸部材50Ceは、Oリング(図示省略)を介在して支柱本体51Cに軸支することにより、簡単に密閉状態の部位にハンドル5Caを設けることができる。
【0160】
[第4変形例]
図15は、本発明の実施形態に係る防災用シェルタの第4変形例を示す概略縦断面図である。
図16は、本発明の実施形態に係る防災用シェルタの第4変形例を示す要部拡大概略縦断面図である。
前記第2変形例では、
図13に示すように、第1空気取入口OB1を垂直な支柱本体51Bの上端に設けて、その第1空気取入口OB1をシェルタ本体2Bの外周面2Bfに設けた空気取入口開閉体VB5を避難用空間R1外で操作して開閉するようにしたがこれに限定されるものではない。
【0161】
つまり、空気取入口開閉弁VD1は、支柱本体51Dの上端部を水平に折曲させて、空気取入口OD1を横方向に向けて形成すると共に、空気取入口開閉弁VD1を避難用空間R1内から押し引き操作して開閉できるようにしてもよい。
【0162】
この場合、空気取入口開閉弁VD1は、この空気取入口開閉弁VD1の弁体VD1aと、この弁体VD1aを操作するためのノブVD1bと、避難用空間R1内に配置された前記ノブVD1bとシェルタ本体2D外に配置された弁体VD1aとを連結する連結部材VD1cと、を備えて構成されている。
【0163】
ピストンシリンダ機構50Dは、前記第2変形例で説明したピストンシリンダ機構50B(
図13参照)と略同一構造であり、支柱5Dの上端部を略L字状に折曲させて空気取入口開閉弁VD1を設けた点が相違しているので、同一構造の部位の説明は省略する。
弁体VD1aは、空気取入口OD1の開口端をスライド移動させることで、開弁、閉弁される板状の部材からなる。ノブVD1bは、上下方向に押し引き操作する操作部材であり、避難用空間R1内の天井部2Deに配置されている。連結部材VD1cは、シェルタ本体2Dの天井部2Deに穿設された貫通孔2Diに進退自在に挿入されている。
【0164】
空気取入口開閉弁VD1をこのよう構成したことによって、避難者は、空気取入口開閉弁VD1を避難用空間R1内から開閉操作できるため、シェルタ本体2B外に出て空気取入口開閉弁VD1を開閉する必要がないので、便利である。
【0165】
また、シェルタ本体2Dは、
図16に示すように、外壁部2Daを耐火性、耐高温性に優れて比重が水よりも軽く、水に浮く気泡コンクリートで成形してもよい。この場合、内壁部2Dbは、強化プラスチック(FRP)等の強度に優れている合成樹脂で形成する。
【0166】
このように、シェルタ本体2Dを形成することによって、防災用シェルタ1Dは、水や海水に浮き、搬送性も向上されたものとすることができると共に、火災の際の火に耐える構造にすることができる。このため、防災用シェルタ1Dは、地震、津波、洪水、火災等のあらゆる災害に利用することが可能となる。
【0167】
[第5変形例]
図17は、本発明の実施形態に係る防災用シェルタの第5変形例を示す概略縦断面図である。
図18は、本発明の実施形態に係る防災用シェルタの第5変形例を示す図であり、支柱に設けたピストンシリンダ機構を示す要部拡大概略縦断面図である。
【0168】
前記第2変形例では、
図12及び
図13に示すように、支柱5Bにピストンシリンダ機構50Bを設けて、ハンドル5Baを手動的に操作することでピストン50Caを作動させて、シェルタ本体2B外の大気を避難用空間R1内に取り込むことを説明したが、
図17及び
図18に示すように、自動的にかつ強制的にピストンシリンダ機構50Eを駆動させてもよい。
【0169】
この場合、防災用シェルタ1Eは、
図18に示すように、それぞれ後記する支柱5Eの支柱本体51Eと、大気排出口OE1と、第1逆止弁VE1と、第1ピストン50Eaと、第2ピストン50Ebと、ピストンシャフト50Ecと、第1エアシリンダ室50Edと、第2エアシリンダ室50Eeと、第3エアシリンダ室50Efと、ウォータシリンダ室50Egと、隔壁50Ehと、室内空気取込口OE2と、第2逆止弁VE2と、第1空気供給口OE3と、第3逆止弁VE3と、第2空気供給口OE4と、第4逆止弁VE4と、第1空気取入管PE1と、第1空気取入口OE5と、第1連通口OE6と、第1一方向弁VE5と、第5逆止弁VE6と、第2空気取入口OE7と、第2一方向弁VE7と、第2空気取入管PE2と、第2連通口OE8と、バルブカバー50Eiと、支柱カバー5Ebと、を備えている。
【0170】
支柱5Eは、管形状の支柱本体51Eと、この支柱本体51Eの中央部位から分岐して上方向に向けてそれぞれ延設された第1空気取入管PE1及び第2空気取入管PE2と、を接合してなる。
図17に示すように、支柱本体51Eは、上端部がシェルタ本体2Eを貫通して上側外壁面まで配置され、下端部が備品収納室R2、錘材収納室R3、シェルタ本体2E及び脚部4Eを貫通して配置され、脚部4Eの外側まで連通している。このため、防災用シェルタ1Eを水面及び海水面に浮かべ際には、水及び海水が支柱本体51E内に下側開口部51Eaから入り込む構造になっている。つまり、支柱本体51Eは、水上では中空状に形成されて、上端部が大気中と連通し、下端部が水中に連通している。支柱本体51Eは、緩衝用の支柱カバー5Ebによって覆われている。
【0171】
大気排出口OE1は、第1エアシリンダ室50Ed内の空気を大気中に排出するための排出口であり、通気孔50Ejを有するバルブカバー50Eiによって覆われている。
第1逆止弁VE1は、大気排出口OE1に設けられ、大気中から支柱本体51E内方向へ流れる空気を阻止するワンウェイバルブである。この第1逆止弁VE1の弁体は、後記する第1一方向弁VE5の弁体及び第2一方向弁VE7の弁体に連動するように連結部材VE5a,VE7aによって連結されている。
【0172】
第1ピストン50Eaは、支柱本体5E内に移動可能に配置され、支柱本体5E内を第1エアシリンダ室50Edと第2エアシリンダ室50Eeとに区画するように配置されている。
第2ピストン50Ebは、支柱本体5E内に移動自在に設けられ、ピストンシャフト50Ecの他端に連結されて第1ピストン50Ea及び第2ピストン50Ebと共に進退すると共に、支柱本体5E内を第3エアシリンダ室50Efとウォータシリンダ室50Egとに区画するように配置されている。この第2ピストン50Ebは、海水の波動または水の波動によって進退(上下動)する。
ピストンシャフト50Ecは、中央部が隔壁50Ehを挿通して、上端が第1ピストン50Eaに連結され、下端が第2ピストン50Ebに連結された円柱状の部材である。
【0173】
第1エアシリンダ室50Edは、支柱本体51E内において、第1逆止弁VE1から第1ピストン50Eaまでの間に亘って形成された空間であり、室内空気取込口OE2から取り込んだ避難用空間R1内の空気が、第1ピストン50Eaの上下動で第1エアシリンダ室50Ed、大気排出口OE1を通って大気中に排出されるようになっている。
【0174】
第2エアシリンダ室50Eedは、支柱本体51E内において、第1ピストン50Eaから隔壁50Ehまでの間に亘って形成された空間であり、第1ピストン50Eaが上昇したときに、第1一方向弁VE5が開弁して第1空気取入口OE5から第1空気取入管PE1内に取り込んだ空気が、第5逆止弁VE6を押し開けて第1連通口OE6から第2シリンダ室50Bd内に入り込むようになっている。また、第1ピストン50Eaが下降すると、この第2エアシリンダ室50Eed内の空気が、第3逆止弁VE3を押し開けて第1空気供給口OE3から避難用空間R1内に空気が入り込むようになっている。
【0175】
第3エアシリンダ室50Efは、支柱本体51E内において、第3エアシリンダ室50Efは、第2ピストン50Ebが下降すると、第2一方向弁VE7が開弁して第2空気取入口OE7から第2空気取入管PE2内に取り込んだ空気が、第6逆止弁VE8を押し開けて第2連通口OE8から第3エアシリンダ室50Ef内に入り込むようになっている。また、第2ピストン50Ebから隔壁50Ehまでの間に亘って形成された空間であり、第2ピストン50Ebが上昇したときに、第4逆止弁VE4が押し開けられて第2空気供給口OE4から第3エアシリンダ室50Ef内の空気が避難用空間R1内に空気が供給されるようになっている。
【0176】
ウォータシリンダ室50Egは、防災用シェルタ1Eが海上または水上に流された際に、海中または水中に連通して海水または水が入り込む筒状のシリンダ室であり、上部に第2ピストン50Ebが上昇、下降自在に配置されている。そして、ウォータシリンダ室50Egは、防災用シェルタ1Eが浮上している海水または水の波動(波の上下動)で第2ピストン50Ebが押し上げられたり、引き下げられたりする。
【0177】
隔壁50Ehは、支柱本体51E内を第2エアシリンダ室50Eeと第3エアシリンダ室50Efとに区画する仕切部材であり、隔壁50Ehの外周部が、支柱本体51E内に節目を形成するように固定されている。隔壁50Ehは、中央部にピストンシャフト50Ecが上下動自在に挿入されている。
【0178】
室内空気取込口OE2は、避難用空間R1内の空気を第1エアシリンダ室50Ed内に取り入れる取込口であり、第1エアシリンダ室50Edの外壁に形成されている。
第2逆止弁VE2は、その室内空気取込口OE2に設けられ、第1エアシリンダ室50Ed内から避難用空間R1内方向へ流れる空気を阻止するワンウェイバルブである。
【0179】
第1空気供給口OE3は、第2エアシリンダ室50Ee内の空気を避難用空間R1に供給する吐出口であり、第2エアシリンダ室50Eeの内壁に形成されている。
第3逆止弁VE3は、第1空気供給口OE3に設けられ、避難用空間R1内から前記第2エアシリンダ室50Ee内方向へ流れる空気を阻止するワンウェイバルブである。
【0180】
第2空気供給口OE4は、第3エアシリンダ室50Ef内の空気を避難用空間R1に供給する吐出口であり、第3エアシリンダ室50Efの内壁に形成されている。
第4逆止弁VE4は、第2空気供給口OE4に設けられ、避難用空間R1内から第3エアシリンダ室50Ef内の方向へ流れる空気を阻止するワンウェイバルブである。
【0181】
第1空気取入管PE1は、上端部に大気中と連通する第1空気取入口OE5を有し、下端部に第2エアシリンダ室50Eeに連通する第1連通口OE6を有する配管であり、略L字状に形成されている。この第1空気取入管PE1内には、第1一方向弁VE5及び第5逆止弁VE6が設けられている。
第1空気取入口OE5は、第1空気取入管PE1の上端に係止され、この第1空気取入口OE5に内設された略球状の第1一方向弁VE5の弁座Ve5bと、第1一方向弁VE5のバルブハウジングの機能を果たす。第1空気取入口OE5は、第1逆止弁VB1の閉弁で連結部材VE5aによって第1一方向弁VE5の弁体が引っ張られたときに閉弁し、第1逆止弁VB1の開弁で連結部材VE5aによって第1一方向弁VE5の弁体が押し戻されたときに開弁するようになっている。
つまり、第1一方向弁VE5は、第1逆止弁VE1の閉弁に連動して大気が第1空気取入管PE1内側へ流れるのを阻止するワンウェイバルブである。
【0182】
第2空気取入口OE7は、大気を取り入れるための取入口であり、第2空気取入管PE2の上端部に形成されている。第2空気取入口OE7は、球状の第2一方向弁VE7を支持するバルブ支持片VE7bと、弁座VE7cとを有すると共に、バルブ支持片VE7bのバルブハウジングの機能も果たす。この第2空気取入口OE7は、前記第1空気取入口OE5の近傍に配置されている。
第2一方向弁VE7は、前記第2空気取入口OE7に設けられ、前記第1逆止弁VE1の開弁に連動して大気が第2空気取入管PE2内側へ流れるのを阻止するワンウェイバルブである。つまり、第2一方向弁VE7の弁体は、第1逆止弁VE1の弁体と連結部材VE5aによって連結されて連動し、前記第1一方向弁VE5が閉弁したときに開弁し、第1一方向弁VE5が開弁したときに閉弁するように逆に構成されている。
【0183】
前記第1連通口OE6は、第1空気取入管PE1の下端部に形成され、第2エアシリンダ室50Eeに連通する部位である。この第1連通口OE6には、第2エアシリンダ室50Ee内から第1空気取入口OE5側へ空気が流れるのを規制する第5逆止弁VE6が設けられている。
【0184】
第2空気取入管PE2は、上端部に大気中と連通する第2空気取入口OE7を有し、下端部に第3エアシリンダ室50Efに連通する第2連通口OE8と、第6逆止弁VE8とを有する。
第2連通口OE8は、第2空気取入管PE2の下端部であって、第6逆止弁VE8が配置される部位である。
第6逆止弁VE8は、第3エアシリンダ室50Ef内から第2空気取入口OE7へ空気が流れるのを規制するワンウェイバルブである。
バルブカバー50Eiは、支柱5Eを覆う緩衝用の保護部材である。
【0185】
このように構成された本発明の第5変形例の防災用シェルタ1Eは、海上また水上に流されたときに、海水の波または水の波に伴って、海水または水が、ウォータシリンダ室50Eg内に入り込んだり、出たりする構造になっている。このため、海水の波または水の波の上下動で第2ピストン50Ebが押し引きされて、その波に連動してピストンシリンダ機構50E全体が動き、避難用空間R1内に空気を吐出したり、避難用空間R1内の吸引して、人間が呼吸するように自動的に大気の吸気と、避難用空間R1内に空気の排気が継続して行われる。
【0186】
例えば、防災用シェルタ1Eが海上に浮上していて、上下動する波がウォータシリンダ室50Eg内に浸入すると、その波で第2ピストン50Ebを押し上げる。第2ピストン50Ebが上昇すると、ピストンシャフト50Ecを介在して第1ピストン50Eaも上昇する。すると、第3エアシリンダ室50Ef内の空気が、第4逆止弁VB4を押し開いて避難用空間R1内に入り込む。
また、第1ピストン50Eaは、上昇することにより、第2エアシリンダ室50Ee内が負圧になるので、第5逆止弁VE6、第1一方向弁VE5及び大気中の空気を吸引して開弁させると共に、第1逆止弁VB1を押し上げて開弁させる。すると、大気中の空気が、第1一方向弁VE5及び第5逆止弁VE6を通って第2エアシリンダ室50Ee内に入り込む。
【0187】
また、海上の波が下降すると、ウォータシリンダ室50Eg内の第2ピストン50Ebが波の下降で下側に吸引されて下降する。第2ピストン50Ebが下降すると、ピストンシャフト50Ecを介在して第1ピストン50Eaも下降する。すると、第3エアシリンダ室50Ef内の空気が、負圧になるので、第6逆止弁VE8及び第2一方向弁VE7を吸引して開弁させて、大気中の空気を第2空気取入口OE7から第2一方向弁VE7、第6逆止弁VE8を介して第3エアシリンダ室50Ef内に引き込む。
また、第1ピストン50Eaは、下降することにより、第2エアシリンダ室50Ee内の空気を、第3逆止弁VE3に押し当てて開弁させ、避難用空間R1内に押し込む。また、第1ピストン50Eaは、第1エアシリンダ室50Ed内を負圧にさせて、第2逆止弁VE2を吸引して開弁させ、避難用空間R1内の空気を、第1エアシリンダ室50に吸引する。
【0188】
このようにピストンシリンダ機構50Eは、波の上下動で大気中の空気を、第1エアシリンダ室50Ed、第2エアシリンダ室50Ee及び第3エアシリンダ室50Efを介して避難用空間R1内に送り込ますと共に、避難用空間R1内の空気を第1エアシリンダ室50Ed、第2エアシリンダ室50Ee及び第3エアシリンダ室50Efを介して大気中に排出する動作を行う。この動作は、波が上下動していれば半永久的に連続して自動駆動されるため、常に、避難用空間R1内の空気をクリーンな状態に維持して、酸欠するのを解消することができる。
特に、このピストンシリンダ機構50Eは、電力や燃料等を使用しないので、避難中に使用するのに最適な構造をしている。
【0189】
また、シェルタ本体2Eの上部にある大気排出口OE1、第1空気取入口OE5及び第2空気取入口OE7は、中空半円形状のバルブカバー50Eiによって覆われているため、そこから雨水や海水や水が浸入して来るのを抑制することができる。
【0190】
[第6変形例]
図19は、本発明の実施形態に係る防災用シェルタの第6変形例を示す図であり、船舶上に配置した状態を示す概略側面図である。
図20は、本発明の実施形態に係る防災用シェルタの第6変形例を示す図であり、船舶上に配置した状態を示す概略拡大背面図である。
図21は、本発明の実施形態に係る防災用シェルタの第6変形例を示す図であり、船舶上に配置した状態を示す概略拡大縦断面図である。
図22は、本発明の実施形態に係る防災用シェルタの第6変形例を示す図であり、シェルタ本体と船体との固定状態を示す要部拡大部分断面図である。
【0191】
本発明に係る防災用シェルタ1Fは、
図19に示すように、船舶100に載設して操舵室110として使用しても構わない。
この場合、シェルタ本体2Fは、
図19に示すように、中空状のやや縦長の卵型に形成され、前側にエポキシ樹脂等の透明な樹脂からなる窓26Fが設けられ、後側に縦長の長円形状の扉部材8Fが設けられ、上部後方側に空気口15Fが設けられ、外側底部2Fdに脚部4F(
図2参照)が設けられている。
【0192】
図20及び
図21に示すように、脚部4Fは、バランサ3Fの機能と、載置台の機能を果たす部材であり、予め船舶100のデッキ12等の船体101上に形成された脚部係合部121に係合される。脚部4Fは、上面がシェルタ本体2Fの外側底部2Fdが係合する曲面形状に形成された略円盤状の部材からなり、外側底部2Fdに固定されている。
【0193】
図21に示すように、シェルタ本体2F内の避難用空間R1内は、一般の船の操舵室110と同じように、前記窓26Fと、船舶用の操舵ハンドル140と、船員が操舵する際に座る操舵席150と、計器類161が配置された計器盤160と、ソナーや方位計等の種々の計器類161と、計器盤160をシェルタ本体2Fを保持する複数の計器盤支持柱180と、操舵ハンドル140の転舵角を船舶100に設けられた舵(図示省略)に伝達するための転舵角伝達手段200と、船舶100に配置されたプロペラ(図示省略)を回転駆動させるための駆動部(図示省略)等に駆動信号を送る電気信号伝達手段300と、を主に備えている。
【0194】
防災用シェルタ1Fは、このように構成されていることによって、シェルタ本体2F内を船舶100の操舵室110として使用することが可能である。
この場合、シェルタ本体2Fまたは前記脚部4Fは、船舶100の船体101に固定具130によって着脱可能に固定されて、緊急時などのときに、船体101から分離させることができる。このため、防災用シェルタ1Fは、シェルタ本体2F内を船舶100の操舵室110として使用可能にしたことによって、平常時は防災用シェルタ1Fを船舶100の操舵室110として利用し、津波や大しけや船舶100の故障等で、船舶100が沈没しそうになったときに、船舶100上の防災用シェルタ1Fを避難用の船あるいは水面に浮く浮上型救命カプセルとして利用することができる。
【0195】
前記転舵角伝達手段200は、操舵ハンドル140の転舵角を舵(図示省略)に伝達する機構であって、例えば、油圧伝達機構、ケーブル伝達機構あるいは歯車伝達機構からなる。転舵角伝達手段200は、シェルタ本体2Fの内底部2Fc内に設けた開閉自在な機構接続部収納ボックス2F1内に、中間部位を接続及び分離できる転舵角伝達用接続部210が設けられている。
【0196】
電気信号伝達手段300は、計器盤160に配置されて電気を使用する計器類161等で電気機器に電力を供給する配線や、船舶100に配置されたプロペラ(図示省略)を回転駆動させるための駆動部に駆動用の電気信号を送る配線等である。この電気信号伝達手段300は、シェルタ本体2Fの内底部2Fc内に設けた開閉自在な配線接続ボックス2F2内に、電気信号伝達手段300の中間部位を接続及び分離ができるコネクタ部310が設けられている。
【0197】
また、機構接続部収納ボックス2F1と配線接続ボックス2F2との間には、船体101に配置した配線や配管を挿通して機構接続部収納ボックス2F1及び配線接続ボックス2F2に配索するための配索ボックス2F3が設けられている。
なお、機構接続部収納ボックス2F1、配線接続ボックス2F2及び配索ボックス2F3の上部には、開閉するための開閉蓋2F1a,2F2a,2F3aがそれぞれ開閉自在に設けられている。
【0198】
防災用シェルタ1Fは、シェルタ本体2Fの内底部内に、コネクタ部310を収納配置する配線接続ボックス2F2を有することによって、電気信号伝達手段300の中間部位を接続及び分離を容易に行うことができ、船上への設置、取り外し及び電気系統の接続作業が容易である。
また、防災用シェルタ1Fは、シェルタ本体2Fの内底部内に、転舵角伝達用接続部210を収納配置する機構接続部収納ボックス2F1を備えていることによって、転舵角伝達手段200の中間部位を接続及び分離を容易に行うことができる。このため、防災用シェルタ1fは、船上に設置したり、取り外したりするのを可能にすると共に、設置及び取り外し作業を容易に行うことができる。
【0199】
また、
図22に示すように、前記固定具130は、シェルタ本体2Fの内底部2Fcから外側底部2Fdにある船体101に捩じ込むなどして、シェルタ本体2Fを船体101に固定する部材であり、例えば、救急時に取り外せる構造になっている。固定具130は、例えば、摘み付き固定具131のように、指を入れてリング形状の頭部に入れてき抜きながら捩じることで取り外せるものでもよい。また、鎖付固定具132のように、第1固定具132aと第2固定具132bとを鎖で連結して、鎖を引っ張ることでシェルタ本体2Fから引き抜くことができるようにして、工具を不要にしたものであってもよい。
【0200】
≪その他の変形例≫
例えば、防災用シェルタ1は、家族の人数等に合わせて、家族全員が防災用シェルタ1内に入ることが可能な適宜な大きさのものにしてもよい。例えば、防災用シェルタ1は、左右の幅を長くして、平面視して長円形あるいは楕円形にしてもよい。