(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
本実施形態の薬剤投与装置100は、
図1、
図2に示すように、手で握られる長形形状の筐体101と、筐体101の先端側に装着された先端キャップ102と、を備えている。また、先端キャップ102の外周面には、長円形状の確認窓103が設けられている。さらに、筐体101の外周面には、電源ボタン105、エア抜きボタン106、完了ボタン107、薬剤投与ボタン108、および表示部109(通知手段の一例)が設けられている。
【0009】
なお、
図1においては、製剤シリンジ104が薬剤投与装置100に装着された状態を示している。そして、製剤シリンジ104の装着状態は、確認窓103から製剤シリンジ104を目視することにより確認することができる。
先端キャップ102は、筐体101の先端に着脱可能であり、
図2に示すように、筐体101のインナーケース111(装着部の一例)内に、製剤シリンジ104を装着・脱着する時や、薬液を注入する注射針110を製剤シリンジ104に対して着脱する時に、着脱される。
【0010】
先端キャップ102は、上述したように、内部確認用の確認窓103を有している。このため、製剤シリンジ104の有無や種類、製剤の残量等を視覚的に確認することができる。
また、先端キャップ102は、製剤投与用の注射針110の先端が、先端キャップ102の先端部分から露出しないようにカバーする役割を有している。さらに、製剤投与時においては、先端キャップ102の先端面を皮膚に当接させ、製剤投与用の注射針110を先端キャップ102の前面にある先端開口部102aから、皮膚に向けて前進させる。そして、この状態で、注射針110を皮膚に刺し、製剤シリンジ104内にある製剤が人体内に投与される。
【0011】
つまり、先端キャップ102は、注射針110などの先端が尖った鋭利な部材をカバーして、操作時における安全性を確保するために設けられている。
確認窓103は、上述したように、先端キャップ102内に装着されている製剤シリンジ104の有無や種類、製剤の残量等を視覚的に確認する内部確認用の窓である。確認窓103は、開放状態の開口部として形成されていてもよいし、開口部に透明のカバーを装着して形成されていてもよい。つまり、確認窓103から、先端キャップ102の内部が視覚的に確認できればよい。
【0012】
電源ボタン105は、筐体101の端部に設けられ、薬剤投与装置100の電源をON/OFFする。
エア抜きボタン106は、製剤シリンジ104内の空気抜きを行うときに使用される。つまり、製剤シリンジ104の製剤を投与する前に、製剤シリンジ104内や投与するための注射針110(内部が空洞である中空針)内にエアが入っている場合がある。このため、この場合には、エア抜きボタン106を操作することにより、
図4に示すピストン駆動用モータ115(注入駆動部の一例)を駆動させて、ピストンユニット116によって、エアを製剤シリンジ104および注射針110の外部に押し出す。
【0013】
完了ボタン107は、エア抜きボタン106によってエア抜き動作を行った後や、表示部109の表示内容の確認等が完了した後、次のステップに進む際に操作される。
薬剤投与ボタン108は、薬剤を投与する準備が完了した後、薬剤投与時に押下される。薬剤投与ボタン108が押下されると、上述のように、注射針110が皮膚に穿刺され、製剤シリンジ104内の製剤が人体内に注入投与される。
さらに、表示部109は、薬剤の投与量、内部に搭載した充電式電池125a(
図5参照)の電池残量やエア抜き操作等の各種の必要な情報を表示するときに使用され、LCDまたは有機ELによって構成されている。
【0014】
次に、
図2を用いて、本実施形態の薬剤投与装置100の内部構成について説明する。
図2に示すように、筐体101の内部には、インナーケース111が設けられている。そして、上述のように、インナーケース111内に製剤シリンジ104が装着される。
スライドモータ113は、製剤シリンジ104に設けられた識別コード104aとコードリーダ112との位置関係を調整する読取駆動手段であって、本実施形態では、製剤シリンジ104側を移動させる。
位置検出手段114は、スライドモータ113を移動させた際に、所定の位置に来ているかどうかの状態を検知する。
【0015】
次に、製剤シリンジ104の識別コードについて、
図3を用いて説明する。
図3(a)に示すように、製剤シリンジ104は、細長い円筒形状を有しており、その後方の外周面には、識別コード104aとして1次元バーコードが貼り付けられている。なお、識別コード104aには、例えば、製剤名、製剤コード、製造メーカ、製造年月日、製造場所、ロット番号、有効期間、仕向け地等の情報が含まれる。
【0016】
なお、識別コード104aは、製剤シリンジ104に直接印字されたバーコードでもあってもよい。識別コード104aとしての条件を考慮すれば、直接印字されたバーコードよりも、ラベルの方が安定している。これは、製剤シリンジ104が透明なガラスなどの材料で形成されているため、バーコードを直接印字したのでは、光を透したり、表面に光沢があるため光が乱反射したりするなどの問題があるからである。よって、識別コード104aとしては、不透明なラベルにバーコードが印刷されたものを用いることが好ましい。
【0017】
また、
図3(a)では、製剤シリンジ104の軸方向にバーコードが配置されているが、本発明はこれに限られるわけではなく、軸方向と垂直な方向(製剤シリンジ104の円周方向)に沿ってバーコードを配置してもよい。
なお、識別コード104aは、1次元バーコードでも、2次元コードでもよい。1次元バーコードとしては、JAN(EAN、UPC)、ITF、CODE39,NW−7、CODE128などがある。
また、2次元コードには、スタック型2次元コードとして、PDF417やCode49が代表的であり、マトリックス型2次元コードとしては、QRコード、DataMatrix、Vericodeなどが代表的である。
【0018】
以上のように、製剤シリンジ104の外周面に設けられた識別コード104aは、
図2および
図4に示すように、インナーケース111の外周方向に、コードリーダ112(読取手段の一例)によって読み取られるようになっている。この読み取りを行うために、先端側が開口した円筒状のインナーケース111の外周面の長手方向には、識別コード104aの長さよりも長い開口部111aが形成されている。
【0019】
スライドモータ113は、
図4に示すように、製剤シリンジ104に設けられた識別コード104aとコードリーダ112との位置を調整するための読取駆動手段である。このスライドモータ113を駆動することにより、ピストン駆動用モータ115とインナーケース111を一体的に前後させる。これにより、コードリーダ112と識別コード104aとの位置合わせを行うことができる。
【0020】
なお、スライドモータ113を駆動した場合には、ピストン駆動用モータ115とインナーケース111とが一体的に前後する。この時、ピストンユニット116が製剤シリンジ104に対して前後に駆動されることはない。
製剤シリンジ104に対して、ピストンユニット116が前後する時は、ピストン駆動用モータ115が駆動された時だけである。
【0021】
一方、ピストン駆動用モータ115の近傍に所定間隔で配置された位置検出手段114は、インナーケース111と共に、スライドモータ113によって移動するピストン駆動用モータ115が、どの位置に移動したかを検知する。
なお、
図3(b)に示すように、製剤シリンジ104が専用カートリッジ150に装着された状態では、専用カートリッジ150の外周面に識別コード150aが設けられていればよい。
【0022】
また、
図3(b)に示すように、識別コード150aには、バーコードの代わりにQRコードが用いられている。このため、この場合には、
図4に示すコードリーダ112も、識別コード150aを読み取れるものに変更すればよい。
さらに、このような専用カートリッジ150を用いた場合には、
図4に示したインナーケース111は、その専用カートリッジ150を装着するために、大径のものに変更すればよい。
【0023】
この場合には、大径のインナーケース111の凹部(図示せず)に、突起部120bを係合させることで、専用カートリッジ150をインナーケース111に対して固定することができる。
以下の説明では、
図3(a)に示す製剤シリンジ104単体をそのまま装着した場合について説明する。
図4における先端キャップ102は、
図1および
図2に示すように、薬剤投与装置100の筐体101に装着され、固定されている。
【0024】
インナーケース111は、筐体101内および先端キャップ102内を前後方向(
図4において、矢印の示す左右方向)にスライド動作可能であって、内部後方にピストンユニット116を収納し、製剤シリンジ104内の薬剤を前方に押し出すことが可能である。
製剤シリンジ104は、インナーケース111に対して位置規制(装着時に着脱自在に固定)される。これにより、識別コード104aがコードリーダ112によって読取り可能な位置に装着される。
なお、識別コード104aは、製剤シリンジ104の長手方向において読取り可能となっている。
【0025】
位置検出手段114は、所定間隔で3箇所に配置された反射型または透過型のフォトセンサ114a〜114cを含むように構成されている。
このうち、フォトセンサ114aは、インナーケース111が刺針位置にあるか否かを検出する。また、フォトセンサ114bは、インナーケース111が抜針位置にあるか否かを検出する。さらに、フォトセンサ114cは、インナーケース111が識別コード104aの読取り位置にあるか否かを検出する。
【0026】
遮蔽板114dは、前後方向にスライド動作した際、フォトセンサ114a〜114cの光を遮蔽したり開放したりすることで、インナーケース111の位置を検出する。また、遮蔽板114dは、ピストン駆動用モータ115を収納したケース115aと一体として形成されている。ケース115aは、インナーケース111およびスライドモータ113と接続されており、スライドモータ113の回転によって前後方向にスライド動作可能である。
【0027】
以上の構成による識別コード104aの読取り方法について、以下に説明する。
図4において、インナーケース111は、遮蔽板114dによってフォトセンサ114bが遮蔽される位置、すなわち抜針位置で停止している。ここで、製剤シリンジ104がインナーケース111に装着され、さらに先端キャップ102が筐体101に装着されたことが検出されると、スライドモータ113の駆動により、遮蔽板114dが後方にスライドし、フォトセンサ114c間が遮蔽される位置で停止する。
【0028】
その後、スライドモータ113が逆転し、遮蔽板114dが前方にスライドし、フォトセンサ114b間が遮蔽される位置で停止する。
この前後方向(製剤シリンジ104の軸方向)を往復する動作の際、コードリーダ112が製剤シリンジ104の識別コード104aを、開口部111aを介して読取り、正しい製剤シリンジ104がインナーケース111内に装着されているか否かを判定する。ここで、正しい製剤シリンジ104が装着されていると判定されると、薬剤を投与することが可能となる。一方、装着された製剤シリンジ104が間違っている場合には、エラーを表示部109に表示し、薬剤を投与することができない状態となる。間違った識別コードを読み取った場合には、製剤シリンジ104を装着したインナーケース111を再度、前後方向に往復動作(リトライ)をする。これにより、装着状態不良に起因する誤検出を防止して、読み取り精度を高めることができる。また、インナーケース111を前後進動作させる際に、前進動作および後進動作のそれぞれにおいて識別コードを読み取ることで、1回の動作で2回識別コードを読み取ることも可能である。
【0029】
次に、
図5は、本実施の形態の薬剤投与装置100内の電気回路部130(その周辺部分含む)の電気ブロック図を示している。充電式電池125aと充電回路125bとによって、電源部125が構成されている。これにより、マイクロプロセッサ121を含む薬剤投与装置100の全ての部分に電源供給が行なわれる。
マイクロプロセッサ121は、上述した電源ボタン105、エア抜きボタン106、完了ボタン107、薬剤投与ボタン108、シリンジ検出スイッチ127、識別コード104aを読み取るコードリーダ112、メモリ126、モータドライブ回路120、エンコーダ117、表示部109、サウンダ123、バイブレータ124と接続されている。
【0030】
また、モータドライブ回路120は、ピストン駆動用モータ115、電流検知回路118、スライドモータ113、位置検出手段114と接続されている。
なお、シリンジ検出スイッチ127は、インナーケース111内に製剤シリンジ104が適切な状態で装着されているか否かを検出する。
また、メモリ126は、例えば、製剤シリンジ104内の製剤をどの程度投与するかという投与量などの制御情報や、実際に製剤を投与した投与履歴情報などを記憶している。
【0031】
次に、モータドライブ回路120は、ピストン駆動用モータ115とスライドモータ113とを駆動するために設けられている。
電流検知回路118は、これらのピストン駆動用モータ115、またはスライドモータ113が適切に駆動されているか否かを、電流の大きさの変化に基づいて検知する。
さらに、エンコーダ117は、ピストン駆動用モータ115の回転方向および回転数を検知して、製剤の投与量を制御する。
【0032】
サウンダ123、バイブレータ124は、例えば、シリンジ検出スイッチ127によって、製剤シリンジ104がインナーケース111内に適切に装着されていないことが検出されると、表示部109にエラー表示をすると共に、サウンダ123、バイブレータ124から警報を発する。
【0033】
図6は、主な動作フローチャートを示している。
まず、ステップS150において、シリンジ検出スイッチ127によって、製剤シリンジ104のインナーケース111への装着判定が行なわれる。
ここで、製剤シリンジ104が適正に装着されていれば、ステップS151において、スライドモータ113を動作させる。これにより、インナーケース111を前後方向に動作させることができる。
【0034】
次に、ステップS152において、位置検出手段114が、コード読取位置か否かを判定する。
ここで、コード読取位置と判定された場合には、ステップS153において、製剤シリンジ104の識別コード104aがコードリーダ112によって読み取られる。実際には、上述のように、スライドモータ113の駆動によって遮蔽板114dが後方にスライドし、フォトセンサ114c間が遮蔽される位置で一旦停止する。その後、スライドモータ113の逆転によって、遮蔽板114dが前方にスライドし、フォトセンサ114b間が遮蔽される位置で停止する。この前後方向(製剤シリンジ104の軸方向)を往復する動作の際、コードリーダ112は、製剤シリンジ104の識別コード104aを、開口部111aを介して読取る。本実施形態では、ステップS154においても、再度、識別コード104aをコードリーダ112によって読み取るようにしている。これにより、1回の読み取り動作の中で、前後往復動作の際に、2回識別コード104aを読み取る機会があり、2回識別コード104aを取得して比較することで、読み取り精度を向上させることができる。もちろん、識別コード104aの読取は、1回のみであってもよい。
【0035】
ステップS155においては、マイクロプロセッサ121が、製剤シリンジ104の識別コード104aから読み取った情報とメモリ126に保存されている判定基準とを比較して、製剤シリンジ104が適正なものであれば、薬剤投与ステップに進み、薬剤投与処理が行われる。
すなわち、スライドモータ113を駆動することで、インナーケース111を前方側に移動させ、注射針110を先端開口部102aから先端キャップ102の前方へ移動させることで、人体に穿刺を行なう。
【0036】
なお、識別コードの読み取り動作を、薬剤投与前の準備動作、例えば、エア抜き動作と一緒に実施することで、注入までの時間を短縮することができる。この時、判定対象となる製剤シリンジには、1つの製剤だけが封入されているとは限らず、複数の製剤が封入されている場合もある。その際には、製剤シリンジ内の製剤の種類の判別も行えばよい。
【0037】
次に、ピストン駆動用モータ115を駆動することにより、ピストンユニット116を前方に移動させる。これにより、注射針110を介して、メモリ126に保存された設定値分の製剤が、製剤シリンジ104から人体に投与される。
なお、以上の工程において、ステップS152において、コード読取位置にあるか否かの判定が行なえない時には、ステップS156に移行する。そして、ステップS156において、読取不能時間が判定されタイムアップ状態になると、ステップS157に移行する。一方、タイムアップ状態でない場合は、ステップS152へ戻る。
【0038】
ステップS157においては、スライドモータ113を駆動することで、インナーケース111を後方の元の位置に移動させる。その後、表示部109へのエラー表示などのエラー処理が行なわれる。
また、ステップS155において製剤シリンジ104が適正でないと判定された場合には、ステップS158において、表示部109にエラー表示を行う。その後、ステップS159において、スライドモータ113を駆動してインナーケース111を後方の元の位置に移動させる。そして、ステップS160において、製剤シリンジ104をインナーケース111から取り外して、ステップS150に戻り、別の製剤シリンジ104を装着する作業からやり直す。
【0039】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2に係る薬剤投与装置の構成を示している。ここで、
図7の構成のうち、
図1〜
図6と同一構成部分については、同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態2においては、製剤シリンジ104は、インナーケース111内において周方向に回転可能に保持されており、識別コード104bがコードリーダ112によって読取り可能な位置に装着される点で、上記実施の形態1とは異なっている。
【0040】
なお、識別コード104bは、製剤シリンジ104の回転方向において読取り可能となるように、製剤シリンジ104の外周方向に沿って印刷、あるいは印刷されたラベルが貼りつけられて形成されている。
位置検出手段114は、フォトセンサ114aを用いて、インナーケース111が刺針位置にあるか否かを検出する。一方、フォトセンサ114bは、インナーケース111が抜針位置にあるか否かを検出する。
【0041】
遮蔽板114dは、前後方向にスライド動作した際、2個のフォトセンサ114a,114bの光を遮蔽したり開放したりすることで、インナーケース111の位置を検出する。
シリンジ駆動モータ215は、インナーケース111の外周外方に固定され、減速部216とローラ217とを有する。
【0042】
ローラ217は、弾力のある材料、例えば、ゴムやスポンジ等で形成されている。そして、ローラ217は、インナーケース111の開口部111aを介して、製剤シリンジ104の外周に軽く接触しており、シリンジ駆動モータ215の駆動によって、製剤シリンジ104を回転させる。
【0043】
以上の構成による識別コード104bの読取り方法を以下に説明する。
インナーケース111は、遮蔽板114dによってフォトセンサ114b間が遮蔽される位置、すなわち抜針位置で停止している。
ここで、シリンジ検出スイッチ127が、製剤シリンジ104がインナーケース111に装着され、さらに先端キャップ102が筐体101に装着されたことを検出すると、シリンジ駆動モータ215が駆動され、減速部216を介してローラ217が回転する。これにより、ローラ217に当接している製剤シリンジ104を回転させることができる(
図7に示す矢印方向に回転)。
【0044】
この時、コードリーダ112によって、開口部111aを介して製剤シリンジ104の識別コード104bが読取られる。ここで、正しい製剤シリンジ104が装着されているか否かが判定され、装着された製剤シリンジ104が適正であれば薬剤投与が可能となる。一方、装着された製剤シリンジ104が不適正であれば、表示部109にエラー表示させるとともに、薬剤の投与ができない状態とする。
なお、より正確に識別コード104bを読取るためには、製剤シリンジ104を複数回、回転させながらコードリーダ112による識別コード104bの読み取りを行なうようにしてもよい。
【0045】
(実施の形態3)
次に、
図8は、実施の形態3に係る薬剤投与装置の構成を示している。ここで、
図8に示す構成のうち、
図7と同じものについては同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態においては、
図8に示すように、自走式のコードリーダ212を用いた点で、上記実施の形態1,2とは異なっている。
つまり、コードリーダ212は、製剤シリンジ104の軸方向における所定の範囲において前後に反復揺動することで、識別コード104aを読み取る。これにより、識別コード104aの読取精度を高めることができる。
【0046】
また、このようにコードリーダ112を、製剤シリンジ104の軸方向の所定の範囲において前後に反復揺動させることで、製剤シリンジ104の軸方向に沿って表示された識別コード104aを読み取ることができる。
その際、製剤シリンジ104は、シリンジ駆動モータ215の回転駆動力が、減速部216を介してローラ217から伝達され、回動する。よって、インナーケース111に対して製剤シリンジ104を装着した際に、識別コード104aが開口部111aに対応した位置にない状態であっても、製剤シリンジ104を回転させて開口部111aに識別コード104aが表出した時に、自走式のコードリーダ112で確実に識別コード104aを読み取ることができる。
【0047】
なお、上記実施の形態2,3で説明した
図7、
図8の構成では、電気ブロックおよび動作フローチャートは、上記実施の形態1で説明した
図5、
図6に示す内容とほぼ同様である。異なる点としては、
図7、
図8で示したシリンジ駆動モータ215が、
図5のモータドライブ回路120に接続されている点である。
【0048】
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4に係る薬剤投与装置の構成を示している。ここで、
図9に示す構成のうち、
図1〜
図8と同一構成部分については、同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態4においては、上述の実施の形態1と実施の形態2、あるいは実施の形態1と実施の形態3を組み合わせたものである。
すなわち、製剤シリンジ104の外周面に設けられた識別コード104aが、製剤シリンジ104の軸方向に沿って配置されている場合でも、外周方向に沿って配置されている場合でも、読み取れるように構成されている。
【0049】
この場合、スライドモータ113の駆動によって、インナーケース111を製剤シリンジ104の軸方向における前後方向(
図9における左右方向)に移動させることで、コードリーダ112によって識別コード104aを読み取る。
この動作により、識別コード104aの読み取りが成功した場合には、以降は、実施の形態1と同様にして、投与動作が行なわれる。
【0050】
一方、この状態で識別コード104aの読み取りができない場合には、シリンジ駆動モータ215を駆動して、減速部216を介してローラ217に接触している製剤シリンジ104を回動(
図9において、上下方向)させる。これにより、この様な場合でも、コードリーダ112を用いて識別コード104aの読取動作を行なうことができる。
以上のように、本実施の形態では、製剤シリンジ104の外周面に設けられる識別コード104aの向きに関わらず、識別コード104aを読み取ることができる。
【0051】
(実施の形態5)
図10は、本発明の実施の形態5に係る薬剤投与装置の構成を示している。ここで、
図10に示す構成のうち、上述した実施の形態1と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態では、製剤シリンジ104に設けられた識別コード104cとしてQRコードを用いている。この識別コード104cは、コードリーダ312によって、開口部111aを介して、読み取られる。
【0052】
コードリーダ312は、
図10に破線で示すように、約45度回動する構造を有している。つまり、本実施の形態では、コードリーダ312は、製剤シリンジ104の識別コード104cを読み取って、それが適切なであるか否かを読み取るだけでなく、外部の識別コード、例えば、患者用タグの識別コード405も読み取ることができる。
そのため、筐体101の内の開口部111aの外方に反射板402を設け、この反射板402の中心線404に対して、図中破線で示すように移動したコードリーダ112と対称な角度部分の延長部分に対応する筐体101(点線枠で示す)の一部に、開口部403を新たに設けている。
【0053】
つまり、コードリーダ312を、図中破線で示すように、約45度回動させた時には、反射板402、開口部403を介して、筐体101外に置かれた識別コード405を読み取ることもできる。
なお、開口部403には、筐体101内への埃などの進入を防止するために、透明板(図示せず)等が設けられていることが好ましい。
【0054】
(実施の形態6)
図11は、本発明の実施の形態6に係る薬剤投与装置の構成を示している。ここで、
図11に示す構成のうち、上述した実施の形態1と同一の構成については、同一符号を付し、その説明を簡略化する。
本実施の形態では、製剤シリンジ104の外周面に設けられた識別コード104dとして、文字列を用いている点で、上述した実施の形態とは異なっている。
【0055】
この文字列は、製剤シリンジ104に直接印字されていてもよいし、印字された文字列のラベルを貼り付けてもよい。ただし、識別コード104dとしての条件を考慮すれば、直接印字された識別コードよりもラベルの方が安定している。これは、製剤シリンジ104が透明なガラスなどの材料で形成されている場合には、光を透したり表面に光沢があるため光が乱反射したりするなどの問題があるからである。そこで、本実施の形態の識別コード104aは、不透明なラベルに文字列を印字して構成されることが好ましい。
したがって、コードリーダ412は、この文字列なる識別コード104dを読み取り可能な、例えば、OCR(Optical Charactor Reader;光学式文字読取装置)等を用いればよい。
【0056】
(実施の形態7)
図12は、本発明の実施の形態7に係る薬剤投与装置の構成を示している。ここで、
図12に示す構成のうち、上述した実施の形態6と同一の構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態では、製剤シリンジ104の外周面に、文字列の識別コード104dと、QRコードの識別コード104cとを設けている点で、上述した実施の形態1〜6とは異なっている。
【0057】
これらの識別コード104c,104dは、単一のコードリーダによって読み取ってもよいし、識別コード104cをコードリーダ512で読み取り、識別コード104dをコードリーダ512で読み取るような構成としてもよい。
コードリーダ512としては、例えば、QRコードリーダを用いることができ、コードリーダ512としては、例えば、OCR(Optical Charactor Reader;光学式文字読取装置)などを用いることができる。
また、単一のコードリーダとしては、例えば、CCDカメラを使用してそれぞれの識別コードの画像を取り込み、識別コード104cの部分は、QRコード読取ソフト、識別コード104dの部分は、OCRソフトなどを用いて、それぞれの識別コードを読取・認識することができる。
【0058】
(実施の形態8)
本発明のさらに他の実施形態に係る薬剤投与装置について、
図13を用いて説明すれば以下の通りである。
図13は、本実施の形態に係る薬剤投与装置の構成を示している。ここで、
図13に示す構成のうち、上述した実施の形態で説明した構成と同じものについては同一符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
本実施の形態においては、
図13に示すように、製剤シリンジ104の外周面に、識別コード104eとしてRF−IDを用いた点で、上記実施の形態とは異なっている。
ここで、RF-ID(Radio Frequency-Identfication)は、誘導電磁界または電波を介して、非接触で半導体メモリのデータを読み出し、書込みのために近距離通信を行うものの総称である(JIS X0500 2002年より)。
【0060】
RF−IDは、所持する人・取り付けられた物とその情報とを一元化させる目的で使用される。つまり、人・物がある場所で、随時、必要な情報を取り出すことができ、かつ必要に応じて新たな情報を書き込むことができる。
RF−IDには、カード型(SC17)やタグ型(SC31)があり、カード型のRF−IDとして良く知られたものとしては、鉄道の自動改札に使用されるSUICAやIKOCAなどのFelicaカードなどがある。また、タグ型は、任意の形状にすることができ、入院患者に使用されるIC−TAGや物流システム使用されるIC−TAGなどがある。
【0061】
本実施の形態では、薬剤投与装置600は、本体内(上図の点線で囲まれている部分)にコードリーダとしてRF−IDリーダ612を備えている。そして、RF−IDとしての識別コード104eを有する製剤シリンジ104が装置本体に装着された際に、RF−IDリーダ612を用いて製剤シリンジ104の識別コード104eを読み込み、正しい製剤シリンジ104が装着されているか否かを判定する。
【0062】
なお、RF−IDは無線であるため、上記実施の形態1〜7の様に、モータを動作させる必要は無いので、ここではそれらの説明を省略する
また、患者に設けられた患者用RF−IDタグ612aに、装置本体を近づけることで、患者と装置本体内に装着された製剤シリンジ104との関係が適正か否かも判定することができ、より安全性を高めることができる。
【0063】
なお、RF−IDは無線式であるため、内蔵するアンテナや使用する周波数により到達距離を変えることができる。本実施の形態では、近距離(例えば、100mm以下。より好ましくは、30mm以下)タイプのタグ型が採用されている。これにより、RF−IDリーダ612を用いて識別コードを読み取る際に、隣の患者や近くにある別の製剤シリンジを余分に読み取ってしまうことを回避できる。
つまり、必要な時に、読み取りたい対象物の近くに装置本体を近づけるだけで、必要な情報を読み取って判定を行なうことができる。
【0064】
RF−IDを読み込むタイミングについては、製剤シリンジ104の識別コード(RF−ID)104eを読み込む場合には、製剤シリンジ104が薬剤投与装置600の本体に装着されたタイミングでのみ有効にしたり、患者用RF−IDタグ612aを読み込む場合には、装置本体に設けられた各種操作ボタンのいずれかが押された時のみ読み込み有効にしたりすることで、より正確に読み込むことができる。なお、操作ボタンとしては、外部読み込みボタンを別途設けてもよいし、その他の既存のボタン(例えば、完了ボタンなど)を使用してもよい。
【0065】
さらに、RF−IDは、読み書き(Read/Write)が可能であることから、
図8に示すRF−IDリーダ612の代わりに、RF−IDのデータを読み書きできる「RF−IDリーダ/ライタ」(図示せず)を使用することもできる。
これにより、製剤シリンジ104の識別コード(RF−ID)104eに、この製剤シリンジ104における注入回数、注入量、注入した日付(年月日時分秒など)および製剤残量などのデータを記録することができる。よって、管理上も間違いが無くなり、正確な管理を行うことができる。
【0066】
同様に、患者に取り付けられている患者用RF−IDタグ612aにも、この患者に薬剤を注入した回数、注入した量および注入した日付(同上)などの注入履歴を一定期間記録しておくこともできる。
もちろん、薬剤投与装置600の本体側においても、上記のようなデータを履歴として記録することができ、管理上、臨床における治療上においても、データを生かすことができる。
【0067】
その他、患者の病気、体温、血圧、心拍数、血糖値などデータをその測定した日付(同上)とともに患者情報データとして患者用RF−IDタグ612aに記録しておくことが好ましい。この場合には、薬剤投与装置600によって薬剤を注入する際に、その患者の最新の情報データを確認して、患者に本当に注入していい薬剤であるか否かの判定を行なうことができる。もし、患者情報データのいずれかに不適正な懸念データがある場合には、警告表示および通知を行ない、再確認をすることもできる。この結果、患者の状況も含めて、より適正な薬剤注入を実施することができる。
【0068】
<主な特徴>
以上のように、本発明の実施の形態1から8に示したものは、いずれもインナーケース111内に製剤シリンジ104を装着した後、この製剤シリンジ104が適正であるか否かを、識別コード104a〜104eをコードリーダ112で読み取ることで、判定することができる。これにより、製剤シリンジの識別コードを確実に読み取ることができるため、極めて使い勝手の良い薬剤投与装置を得ることができる。
【0069】
すなわち、従来の薬剤投与装置のように、製剤シリンジをインナーケース内に装着する時に判定を行う場合には、装着動作が手作業で行なわれるため、識別コードの読取不良が発生しやすい。しかも、この読取不良が発生する度に、何度も製剤シリンジをインナーケース内への装着をやり直さなければならず、極めて使い勝手が悪かった。
これに対して、本発明に係る薬剤投与装置によれば、インナーケース111内に製剤シリンジ104を装着した後、識別コード104a〜104eをコードリーダ112によって読み取る。これにより、手作業による装着動作に起因した読取不良は発生せず、結果として、インナーケース111内への装着動作も繰り返す必要もないため、極めて使い勝手の良い薬剤投与装置を得ることができる。