特許第5671749号(P5671749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671749
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】ガス漏れ検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/24 20060101AFI20150129BHJP
   G01M 3/00 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   G01M3/24 Z
   G01M3/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-128928(P2012-128928)
(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公開番号】特開2013-253836(P2013-253836A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2013年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】501198039
【氏名又は名称】国土交通省国土技術政策総合研究所長
(74)【代理人】
【識別番号】100080115
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 和壽
(72)【発明者】
【氏名】久保田 裕二
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 実公平02−010430(JP,Y2)
【文献】 特開2010−025794(JP,A)
【文献】 特許第4074154(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00 − 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを供給するガス管からガスが漏れたことを検知するガス漏れ検知装置であって、
前記ガス管の周りに形成された閉空間と、この閉空間内に所定の音波を発生する音源と、この音源から離れた前記閉空間内において音波を測定する音波測定手段と、この音波測定手段で測定した音波を比較・分析する分析手段と、を備え、
前記音波測定手段は、前記閉空間内の離間した2箇所以上に設けられており、
前記分析手段は、これら2箇所以上の前記音波測定手段により測定された複数の音波の波形を比較して、前記閉空間内において1つの音波測定手段と他の音波測定手段との間を音波が進むのにかかった時間を算出し、算出した時間の変化に基づいてガス漏れを判定することを特徴とするガス漏れ検知装置。
【請求項2】
前記音波測定手段は、前記閉空間内において等間隔に複数設けられており、
前記分析手段は、前記各音波測定手段により測定された複数の音波の波形を比較して、音波が各間隔を進むのにかかった時間をそれぞれ算出する請求項に記載のガス漏れ検知装置。
【請求項3】
前記ガス管は、水素ガスを供給するガス管であり、前記閉空間には、空気が封入されている請求項1又は2に記載のガス漏れ検知装置。
【請求項4】
前記ガス管は、都市ガスやLPガスなどの可燃性ガスを供給するガス管であり、前記閉空間には、ヘリウムガスが封入されている請求項1又は2に記載のガス漏れ検知装置。
【請求項5】
前記閉空間は、前記ガス管の周りを被覆して漏れ出したガスを捕集する捕集管と、この捕集管より上方に配管され、前記捕集管内と連通する音波を測定するための音波測定管と、からなり、この音波測定管に、前記音源と前記音波測定手段が設置されている請求項1ないしのいずれかに記載のガス漏れ検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス漏れ検知装置に関するものであり、詳しくは、空間に存在するガスの種類やその濃度の違いから音の伝わり方が変化することを利用してガス漏れを検知するガス漏れ検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、戸建の住宅やオフィスビル、公共施設等においても、都市ガスやLPガスから水素を取り出し、空気中の酸素と化学反応させて電気と熱を発生させる燃料電池式の発電・給湯システム(以下、単に燃料電池施設という)が普及するようになった。
【0003】
このため、都市ガスやLPガスから水素を取り出すのではなく、戸建住宅等の各燃料電池施設に直接水素ガスを供給する試みも行われている。
しかし、水素ガスは、非常に燃えやすく爆発の危険があるため、安全供給するうえで、ガス漏れ検知が重要となってきている。
【0004】
一般の戸建住宅に供給される都市ガスやLPガスなどの可燃性ガスは、ガス事業法及び関係省令により付臭剤を添加することで空気中のガス濃度が一定以上となった場合に人間の嗅覚で感知できるよう義務づけられおり、一般的な可燃性ガスのガス漏れに対しては、人間の嗅覚に期待した対策が立てられている。
しかし、そもそも一般住宅における地下ピットや床下・天井裏のガス管周り、道路下の共同溝内などの人間が滅多に立ち入らない場所、及び閉狭な暗渠内のガス管や土中埋設管などの人間が立ち入れない場所でのガス漏れには対処できず、根本的な解決手段が待たれている。
【0005】
その上、一般的な付臭剤は、ターシャリーブチルメルカプタン(TBM:tertiary-butylmercaptan)などの有機硫黄化合物からなるため、燃料電池式の発電・給湯システムに供給する水素にこのような付臭剤を添加すると、付臭剤の硫黄分が燃料電池の電極や触媒を傷めてしまい、燃料電池の耐用年数を低下させてしまうという問題もある。
【0006】
また、空気中の音速と比重の軽い分子量の小さな気体(HやHe等)中の音速が異なる(速くなる)ことは広く知られた事実であるが、温度や風速による測定誤差が顕著であるため、風速計(流量計)などの例はあるもののガス漏れ検知装置としては利用されていなかった。一般的な可燃性ガスのガス漏れ検知装置としは、ガス管の一定区間内の圧力低下や複数の流量計で計測した流量の違いからガス漏れを検知するものが主流であり(例えば、特許文献1、2)、広域に亘って複数の事業者が共同利用する共同溝内に敷設された配管のガス漏れなどに適用できるものではなかった。
なお、共同溝とは、電力・電線ケーブル、上水道管、下水道管、ガス管、地域冷暖房配管、真空集塵配管、ケーブルテレビ配線などの複数の公益物件(インフラ:インフラストラクチャ[infrastructure])が敷設された複数の公益事業者の共同利用に係る道路下等に設けられた公共施設をいう。
【0007】
水素ガスを検知するものとしては、水素ガスの濃度で電導度が変化する酸化スズ半導体を感ガス素子とする水素ガスセンサなどが知られているが、このような水素ガスセンサをガス漏れ検知装置に利用する場合、漏れた水素ガスがセンサまで達しないと検知できない、いわばピンポイントの検知装置となってしまい、広域空間に適用することができないという問題がある。つまり、共同溝などの広域空間で利用するには、半導体を使う高価なガスセンサを膨大な数設けなければならず、不経済であるという問題がある。
そのため、安全に水素ガスを供給するうえで、ある一定区間のガス漏れを漏れた瞬間に高感度に検知する安価なガス漏れ検知装置の開発が望まれている。
【0008】
音速差を利用した燃料電池に適用できるガスセンサとしては、特許文献3に、超音波発信素子2と超音波受信素子3との距離を60mm未満に設定して対向配置し、この間に空気以外のガスが混入したときと、このガスが混入しないときとの、超音波の伝搬時間差に基づいて、混入したガスの濃度を検出するガスセンサが開示されている。
【0009】
しかし、この特許文献3に記載の発明は、音速差に着目している点でこの発明と共通してはいるものの、特許文献3に記載のガスセンサは、自動車用の燃料電池を念頭におき、開放状態で水素ガス等を検知する点などこの発明とは着想が異なるため、60mm未満の極めて限定されたいわばピンポイントの範囲しか検知できないものであり、前述の高価な半導体方式のガスセンサや既存の接触燃焼方式のガスセンサの代替技術にしかなり得ないものであった。
つまり、この発明が対象としている共同溝内などの広域空間(数十メートルや数百メートルの範囲)のガス漏れを検知できないという前述の従来技術の問題点を解決することはできていない。
【0010】
この発明の発明者は、ガス管の周りに気体の出入りがほとんどなく、温度や風速が変化し難い閉じた空間(以下、「閉空間」という)を形成し、その中で連続的に音波を計測することで、温度や風速による影響を排除すれば、前述の気体の比重と音速の関係をガス漏れ検知装置に利用できるのではないかと考え、この発明を想到するに至ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2820508号公報
【特許文献2】特許第3273847号公報
【特許文献3】特開2010−025794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、この発明は、前記従来技術の問題点を解決し、全体として安価であり、共同溝内を通って各燃料電池施設に水素ガスを供給するような広域空間のガス管にも適用することができ、広域に亘る一定空間のガス漏れを漏れた瞬間に検知することができるガス漏れ検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ガスを供給するガス管からガスが漏れたことを検知するガス漏れ検知装置であって、前記ガス管の周りに形成された閉空間と、この閉空間内に所定の音波を発生する音源と、この音源から離れた前記閉空間内において音波を測定する音波測定手段と、この音波測定手段で測定した音波を比較・分析する分析手段と、を備え、前記音波測定手段は、前記閉空間内の離間した2箇所以上に設けられており、前記分析手段は、これら2箇所以上の前記音波測定手段により測定された複数の音波の波形を比較して、前記閉空間内において1つの音波測定手段と他の音波測定手段との間を音波が進むのにかかった時間を算出し、算出した時間の変化に基づいてガス漏れを判定することを特徴とする。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項に記載のガス漏れ検知装置において、前記音波測定手段は、前記閉空間内において等間隔に複数設けられており、前記分析手段は、前記各音波測定手段により測定された音波の波形を比較して、音波が各間隔を進むのにかかった時間をそれぞれ算出することを特徴とする。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載のガス漏れ検知装置において、前記ガス管は、水素ガスを供給するガス管であり、前記閉空間には、空気が封入されていることを特徴とする。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載のガス漏れ検知装置において、前記ガス管は、都市ガスやLPガスなどの可燃性ガスを供給するガス管であり、前記閉空間には、ヘリウムガスが封入されていることを特徴とする。
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれかに記載のガス漏れ検知装置において、前記閉空間は、前記ガス管の周りを被覆して漏れ出したガスを捕集する捕集管と、この捕集管より上方に配管され、前記捕集管内と連通する音波を測定するための音波測定管と、からなり、この音波測定管に、前記音源と前記音波測定手段が設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
この発明は、前記のようであって、請求項1に記載の発明によれば、ガスを供給するガス管からガスが漏れたことを検知するガス漏れ検知装置であって、前記ガス管の周りに形成された閉空間と、この閉空間内に所定の音波を発生する音源と、この音源から離れた前記閉空間内において音波を測定する音波測定手段と、この音波測定手段で測定した音波を比較・分析する分析手段と、を備え、前記音波測定手段は、前記閉空間内の離間した2箇所以上に設けられており、前記分析手段は、これら2箇所以上の前記音波測定手段により測定された複数の音波の波形を比較して、前記閉空間内において1つの音波測定手段と他の音波測定手段との間を音波が進むのにかかった時間を算出し、算出した時間の変化に基づいてガス漏れを判定するので、音源から発する音波が減衰して波形の比較・分析ができなくなるまでの範囲で検知可能なため、一組のガス漏れ検知装置で共同溝内を通って各燃料電池施設に水素ガスを供給するような広域空間のガス管のガス漏れも検知することができ、広域に亘る一定空間のガス漏れを漏れた瞬間に検知することができる。このため、水素ガスなどの危険なガスの公共の空間における供給を安全に行うことができる。
また、音源(スピーカ)や音波測定手段(マイク)などの汎用品の安価で少ない構成で広域空間をカバーできるため、全体として非常に安価に構築することができ、極めて経済的である。また、気体の分子量等の相違により音速が変わることを利用して、所定のガスが漏れ出した瞬間を拡散前において検知することができ、所定の広域空間を対象とする極めて高感度なガス漏れ検知装置となる。
【0022】
請求項に記載の発明によれば、請求項に記載のガス漏れ検知装置において、前記音波測定手段は、前記閉空間内において等間隔に複数設けられており、前記分析手段は、前記各音波測定手段により測定された音波の波形を比較して、音波が各間隔を進むのにかかった時間をそれぞれ算出するので、前記作用効果に加え、ガス漏れが発生した区間(音波測定手段の間隔)を特定することができ、ガス供給の遮断等が容易でより安全であるとともに、復旧作業等を格段に早くすることができる。
【0023】
請求項に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載のガス漏れ検知装置において、前記ガス管は、水素ガスを供給するガス管であり、前記閉空間には、空気が封入されているので、前記作用効果に加え、水素ガスが空気と比べて格段に分子量が小さいため、水素ガスが漏れた際の音速差が計測し易く、水素ガスの漏洩を検知しやすくなり、水素ガスのガス漏れ検知の精度が向上する。
【0024】
請求項に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載のガス漏れ検知装置において、前記ガス管は、都市ガスやLPガスなどの可燃性ガスを供給するガス管であり、前記閉空間には、ヘリウムガスが封入されているので、前記作用効果に加え、分子量の大きなプロパンやブタンガスを含み、全体として空気と平均分子量が近い都市ガスやLPガスなどの可燃性ガス(特に、LPガス)を分子量の小さな不活性ガス中で検知することにより音速差が顕著となり、これらの可燃性ガスのガス漏れ検知の精度を向上することができる。
【0025】
請求項に記載の発明によれば、請求項1ないしのいずれかに記載のガス漏れ検知装置において、前記閉空間は、前記ガス管の周りを被覆して漏れ出したガスを捕集する捕集管と、この捕集管より上方に配管され、前記捕集管内と連通する音波を測定するための音波測定管と、からなり、この音波測定管に、前記音源と前記音波測定手段が設置されているので、前記作用効果に加え、音波が伝播する際の障害となるものがなく、音波の減衰を最小限に抑えることができる。そのため、検知範囲が広くなり、全体として安価なものにすることができ、経済性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】この発明の検知原理を示す説明図である。
図2】測定した音波の波形を比較して音波が到達するのに掛かった時間を算出する際の説明図である。
図3】この発明の実施例1に係るガス漏れ検知装置の概略構成を示す模式図である。
図4】同上の分析手段を主に示す構成説明図である。
図5】ガス管の直線部分を配管と直交する鉛直面で切断した状態を示す図面であり、(a)が、配管に直交する鉛直面で切断した状態を示す断面図、(b)が、配管を水平方向に見た状態を示す立面図である。
図6】同上の被覆管のボックス継手を示す鉛直断面図である。
図7】同上の被覆管のマイクロフォン取り付け部分を示す立面図である。
図8】この発明の実施例2に係るガス漏れ検知装置の概略構成を示す模式図である。
図9】この発明の実施例3に係るガス漏れ検知装置の閉空間を、ガス管と直交する鉛直面で切断した状態で示す鉛直断面図である。
図10図9の閉空間の変形例を示す鉛直断面図である。
図11図9の閉空間の曲がり部分を水平方向に見た立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
先ず初めに、この発明に係るガス漏れ検知装置の検知原理について説明する。
気体中を進む音の音速cは、次式に示すように、気体の比熱比、絶対温度、平均分子量に影響され、圧力の影響はほとんどない。このため、空気中に分子量が小さく比重の軽いヘリウム(He)ガスや水素(H)ガスが混ざるとその分気体の平均分子量が小さくなり音速が速くなる。
【0029】
【数1】
ここで、cは気体中の音速[m/s]、γは気体の比熱比、Rは気体定数:8.314[J/mol・K]、Tは気体の絶対温度[K]、Mは平均分子量[g/mol]。
【0030】
上記式を用いて、気体が乾燥空気(水蒸気の影響を考慮しない)の場合、ヘリウム(He)ガスの単体の場合、水素(H)ガスの単体の場合の音速をそれぞれ求めてみる。先ず、空気について求めると、空気の比熱比は、2原子分子である窒素(N)、酸素(O)が組成のほとんどを占めるためγ=1.40である。また、乾燥空気の平均分子量は、組成から計算すると、M=28.966[g/mol]なので、気体定数R=8.314[J/mol・K]を含めそれぞれの値を代入すると、空気中の音速は、
air=20.055√T・・・式(1)
となる。
【0031】
ここで、T[K]=273.15+t[℃](t:摂氏温度[℃])であるので、0[℃]でマクローリン展開して、式(1)の絶対温度Tの関数曲線に0[℃]で接する直線に近似すると、空気中の音速は、
air=331.5+0.61t・・・式(2)
の摂氏温度tの1次関数が得られる。
【0032】
同様に、ヘリウム(He)ガスの単体の場合は、単原子分子なので比熱比はγ=1.66となり、単体ガスの平均分子量は分子量と等しいためM=4.00となる。これらの値を前記数1の式にそれぞれ代入して0[℃]で接する直線に近似すると、ヘリウム中の音速は、
He=970.0+1.55t・・・式(3)
となる。
【0033】
水素(H)ガス単体の場合は、2原子分子なので比熱比はγ=1.40となり、平均分子量は分子量M=2.02となり、これらを前記数1の式にそれぞれ代入して0[℃]で接する直線に近似すると、水素ガス中の音速は、
H2=1269.5+2.00t・・・式(4)
となる。
【0034】
得られた近似式に20[℃]を代入して比較すると、cair=343.7[m/s]、
He=1001.0[m/s]、cH2=1309.5[m/s]となり、ヘリウムや水素などの比重の軽い気体と空気との比較では、約3倍ないし3倍以上の速度差があり、常温でも顕著な差が生じることが分かる。この発明は、この気体中を進む音の速度差をガス漏れ検知に利用するものである。
【0035】
図1に示すように、水素ガスの供給管の周りにこの管より径の大きな被覆管で覆い空気の流通がない閉じられた閉空間を形成する。そして、その被覆管内において、同一スピーカから発せられた音波を異なる2地点でマイクロフォンを用いて測定・記録・観測する。
例えば、この2地点の中間領域で水素ガスがガス管から漏れ出していたと仮定した場合、水素ガスを含有する空気内を通過した音波は、水素ガスが混入して平均分子量が軽くなった分だけ前記数1の式に従い音速がc’と速くなると考えられる。
【0036】
この知見を利用してこの発明では、図2に示すように、異なる2地点で測定した音波の波形を比較して、その区間を音波が進むのに費やした時間Δtを計算する。このΔtは、通常の空気中の音速cair(式2参照)で進んだ時間Δt=L1/cair,Δt=L3/cairと、水素ガス混入により速くなった音速c’で進んだ時間Δt=L2/c’と、の和であるから(図1、2参照)、この時間Δtをガス漏れがない場合(通常の乾燥空気のみの場合)に音波が当該距離Lを伝播するのに掛かる時間Δtair=L/cairと比べることでガス漏れを検知することができるというものである。つまり、音速は、前述のように温度の関数として表わせるが、空気の出入がほとんどない閉空間では急激な気温(気体の温度)の変化は通常ありえないことから、2地点で同一スピーカから発する音波の波形を記録することを継続的又は断続的に行い、2地点間の距離Lを進むのに掛かった時間Δtを連続又は定期的に算出し続け、その値が変化した(短くなった)場合には、ガス漏れと判定することができるといえる。この原理を利用したものが本発明に係るガス漏れ検知装置である。
【0037】
なお、掛かった時間ΔtとΔtairと比べるのではなく、2地点間の距離LをΔtとΔtairでそれぞれ割って平均音速(V’=L/ΔtとVair=L/Δtair)を算出し、これら平均音速(V’とVairと)を比較しても同じことがいえる。
【0038】
次に、図面を参照しながら、この発明の実施の形態について、以下に説明する。
【実施例1】
【0039】
この発明は、その組成が分っているものであればどんなガスを供給する場合にでも適用することができるが、水素ガスを共同溝内に配管されたガス管を用いて各燃料電池施設に供給する場合を例示して説明する。
先ず、図3図7を用いて、この発明の一実施の形態である実施例1に係るガス漏れ検知装置1について説明する。
【0040】
図3図4に示すように、実施例1に係るガス漏れ検知装置1は、水素ガスの供給管であるガス管G1の周りを遊嵌して覆う閉空間としての被覆管G2と、この被覆管G2内に音波を発生する音源であるスピーカSと、このスピーカSで発生する音波を被覆管G2内において測定する音波測定手段としての2つのマイクロフォンM1、M2と、これら2つのマイクロフォンM1、M2で測定した音波を比較・分析する分析手段Aなどから構成され、ガス管G1からガスが漏れたことを検知する機能を有している。
【0041】
水素ガスを供給するガス管G1は、水素ガスを供給可能であれば、どのような管でも構わないが、本実施例では、都市ガス等で利用されている一般的な呼び径25のポリエチレン管が採用されている(図5参照)。安価で地震に強く都市ガスでの長年の実績があるのに加え、管同士の接続において電気融着等が容易にでき、水素ガスの漏れるおそれが少ないからである。
【0042】
被覆管G2は、閉空間を形成していれば特に材質・形状等は問わないが、本実施例では、呼び径25のガス管G1を被覆する呼び径75のVU硬質ポリ塩化ビニル管からなり(図5参照)、閉空間を形成するとともに、ガス管G1から水素ガスが漏洩した場合に水素ガスが共同溝の他の空間に拡散しないように、一時的に遮蔽する機能を有している。
ここで、閉空間とは、気体中を進む音速は気流や温度の影響を受けるため、これらの影響を無視できる程度に空気等の内部の気体が閉塞されていればよく、厳密な気密性は要求されない。よって、本実施例に係る被覆管G2同士の接続も、水道管等と同様に接着剤塗布により接合する接着接合で行われている。
【0043】
スピーカSは、後述のパーソナルコンピュータA2に接続されて所定の音波を発生可能な一般的な汎用品のスピーカであり、ガス管G1,被覆管G2の曲がり部分に当たるボックス継手(図6参照)に設置されている。
また、本実施例に係るスピーカSで発生する音波は、周波数が1000Hzの正弦波を用いたが、後述のマイクロフォンM1、M2等を通して記録した音のピークを検出(算出)可能な波形を有する音波であればよい。
【0044】
音波の周波数に関しては、常人の耳では聞こえないような周波数が20kHzを超える超音波の方が指向性が高く波形が鋭角的となり、ピークが出易く正確に感知できるというメリットがあるものの、音波測定手段であるマイクロフォンM1,M2の振動子が超音波に反応する軽い特殊なものにしなければならないことから、コストアップとなる。
ただし、発生する音波を、ソリトンなどの特殊なパルス波とすることができれば、音波が減衰してもピークの検出が容易なことから、検知性能を落とさずに音波測定手段の設置間隔を広げることが可能と考えられ、そうすることでコストアップの問題も解決できるものと思われる。
【0045】
マイクロフォンM1、M2は、図4に示すように、音波の音圧(音圧レベル)を振動膜でキャッチ(測定)して電気信号に変換する市販のマイクロフォンm(小野測器製 形式:MI−1431)と、その信号を増幅するとともにインピーダンス変換する市販のプリアンプa(小野測器製 形式:MI−3110)と、がセットとなった、20Hz〜8kHzまでの周波数帯域の音波を測定可能な同一構成の2組のマイクロフォンセットであり、音波測定手段として音波を測定する機能を有している。
なお、このマイクロフォンM1、M2は、図7に示すように、被覆管G2のチーズ管Tにソケット等を嵌め込み、その中に延長部品などを装着した上取り付けられている。
【0046】
分析手段Aは、図4に示すように、マイクロフォンM1、M2と接続する分析器A1と、分析器A1と接続する分析用のパーソナルコンピュータA2とからなり、マイクロフォンM1、M2で測定した音波を比較・分析する機能を有している。
【0047】
この分析器A1は、マイクロフォンから送られてくる音波の音圧レベルのデータを所定のサンプリング周期毎に収集して、所定のフォーマットに変換してA2のハードディスク等の外部記憶手段に記録する機能を有した一般にデータステーション(小野測器製 形式:DS−2000)と呼ばれる器機である。
【0048】
パーソナルコンピュータA2は、所定のソフトウェアがインストールされた市販のノート型PCであり、分析器A1で記録したマイクロフォンM1とマイクロフォンM2のそれぞれの音波の波形(所定のサンプリング周期毎の音圧レベルの変化)を比較・分析し、ガスが漏洩したか否かを判定する機能を有している。
【0049】
具体的には、パーソナルコンピュータA2では、マイクロフォンM1で測定した正弦波(音波)の(音圧レベルの)第1ピークとなる時間と、マイクロフォンM2で測定した正弦波の第1ピークとなる時間とを比べて、マイクロフォンM1とマイクロフォンM2との設置間隔Lを進むのに費やした時間Δtを算出し、その時間Δtがガス漏れがない場合に掛かる時間に基づき検知精度を考慮して定めた一定時間tより短くなった場合に水素ガスがガス管G1から漏れたと判断する。
勿論、音波が設置間隔Lを進む平均音速v=L/Δtを算出し、ガス漏れがない場合の音速に基づき検知精度を考慮した一定音速Vと比較してガス漏れを判断しても構わない。
【0050】
なお、このパーソナルコンピュータA2は、マイクロフォンM1、M2、分析器A1の測定・記録の開始及び停止を制御するとともに、前述のスピーカSの音波の発生・停止を制御する制御手段としても機能する。
【0051】
以上のように、実施例1に係るガス漏れ検知装置1によれば、普通の空気中より水素ガスが含まれる空気(ガス)中の方が音速が速くなることを利用して、閉空間である被覆管G2内の離れた2点(マイクロフォンM1、M2の設置位置)で音波の波形を記録し、その音波が既知のマイクロフォンM1、M2間の距離を進む正確な時間を算出し、その算出値が変化したか否かにより水素ガスの漏洩の有無を検知するので、一組のガス漏れ検知装置1でガス漏れが検知できる範囲が、音源であるスピーカSから発する音波が減衰して分析手段Aにより波形の比較・分析ができなくなるまでの広域であり、共同溝内を通って各燃料電池施設に水素ガスを供給するような広域空間におけるガス管のガス漏れも検知することがでる。
【0052】
また、ガス管G1から水素ガスが漏れ出した瞬間をその被覆管G2内における拡散前において検知することができ、所定の広域空間を対象とする極めて高感度なガス漏れ検知が可能となる。このため、水素ガスなどの危険なガスの公共の空間における供給を安全に行うことができる。
また、スピーカSやマイクロフォンM1,M2等などの安価な汎用品で構成されているため、全体として非常に安価な構成とすることができ、極めて経済的である。
【実施例2】
【0053】
次に、図8を用いて、この発明の一実施の形態である実施例2に係るガス漏れ検知装置2について説明する。前述の実施例1に係るガス漏れ検知装置1との相違点は、音波測定手段であるマイクロフォンの設置個数とその設置箇所であるので、その点について主に説明し、その他の同一構成の物は同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
実施例2に係るガス漏れ検知装置2は、被覆管G2と、スピーカSと、複数のマイクロフォンM1,M2,M3,・・・と、複数のマイクロフォンが全て接続された分析器A1と、パーソナルコンピュータA2などから構成されている。
【0055】
また、ガス漏れ検知装置2では、複数のマイクロフォンM1,M2,M3,・・・は、全て等間隔L’で設置されている。また、分析手段Aは、前述と同様に、マイクロフォンM1,M2,M3,・・・で音波の第1ピークが測定された時間が記録されるので、これらの時間の差を順に算出することにより、音波が設置間隔L’を進むのに掛かった時間ΔTをそれぞれ算出する。
【0056】
そして、分析手段Aは、これらの時間ΔTが所定より短くなった場合に水素ガスがガス管G1から漏れたと判断する。なお、本実施例では、マイクロフォンの設置間隔を等間隔としたが、設置間隔が既知であればよく、その場合は、その区間を音波が進むのに掛かった平均音速を算出して、その平均音速が大きくなった場合にガス漏れが発生したと判断すればよい。
【0057】
このように実施例2に係るガス漏れ検知装置2によれば、複数のマイクロフォンM1,M2,M3,・・・を設置しているため、ガス漏れが発生した区間を特定することができ、ガス供給の遮断等が容易でより安全であるとともに、復旧作業等を格段に早くすることができる。
【0058】
次に、図9図11を用いて、この発明の一実施の形態である実施例3に係るガス漏れ検知装置3について説明する。前述の実施例1に係るガス漏れ検知装置1との相違点は、閉空間として例示した被覆管G2が後述の2本の管からなるだるま管形状となっている点だけであるので、その点について主に説明し、その他の同一構成の物は同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
図9に示すように、実施例3に係るガス漏れ検知装置3の閉空間は、ガス管G1を遊嵌して被覆し、ガス管G1からガスが漏れた際、漏れたガスを捕集するVU硬質ポリ塩化ビニル管からなる捕集管G3と、この捕集管G3の上方に配管され、捕集管G3内部と連通する音波を測定するための専用管であるVU硬質ポリ塩化ビニル管からなる音波測定管G4などから構成されており、この音波測定管G4に、音源であるスピーカSと、音波測定手段であるマイクロフォンM1,M2が設置されている。
このように、ガス管を捕集管G3で覆ってその上方に音波測定管G4を配管することで、ガス管G1で供給する空気より軽いガス(例えば、水素ガス)の検知がし易くなる。
【0060】
それに加え、スピーカSから発生する前述の正弦波の音波をマイクロフォンM1,M2で測定する際に、ガス管G1の継手部分や曲がり部分などの障害物が一切ないため、音波の減衰を最小限に抑えることができる。このため、ガス漏れ検知装置3の検知範囲を広げることができ、経済性を向上させることができる。
ちなみに、実施例1に係るガス漏れ検知装置1では、44mの距離で測定した結果、概ね音圧レベルが1/5に減衰が認められた。
しかし、このように、音波測定用の専用管を設けることで音の伝播の邪魔となるものを排除できるため、音波の減衰を最小限にできることは明らかである。
【0061】
なお、捕集管G3も音波測定管G4も特に形状、材質等が限定されるものではなく、前述の閉空間を形成していればよい。特に、捕集管G3は、ガスが漏洩しないゴム管、樹脂チューブや樹脂フィルムの筒状物でも構わないし、音波測定管G4も、音波が減衰し難い突起等の障害物のない直線状の囲いであればよい。
ただし、音波測定管G4の形状、材質は、音波の反射・干渉などの影響を軽減するため実験等を通じて適宜選択して決めることが好ましい。
【0062】
また、図10に示すように、捕集管G3と音波測定管G4との間は離間していてもよく、その間は、ゴムチューブG5などで所定間隔(例えば、1m)毎に連結されていればよい。要するに、捕集管G3と音波測定管G4とは、ガス管G1から漏洩したガスが瞬時に音波測定管G4へ移行するように何らかの形で連通されていればよい。
このような構成とすることで、図11に示すように、ガス管G1の配管経路と音波測定経路(音波測定管G4)とを切り離して設置することが可能となり、一般的なガス管のようにエルボ管での直角な曲がり継手が基本の配管ではなく、音波測定経路である音波測定管G4を音波測定に適した直管やなるべくなだらかな曲がりとすることができ、この点でも検知範囲を広げて経済性を向上させることができる。
また、捕集管G3は、経路全体に亘って連続している必要があるが、音波測定管G4を別経路とすることで、測定区間を任意に設定することが可能となり、音源の干渉等を防止することもできる。
【0063】
以上のように、実施例1〜3に係るガス漏れ検知装置により検知するガスとして水素ガスを例に挙げて説明したが、気体を進む音速は、気体の種類によらず前記数1の式に従うので、その組成が分っているものであればどんなガスを供給する場合にでも適用することができる。ただし、検知精度を良くするためには音速差が顕著な組み合わせが好ましく、供給するガスが都市ガスやLPガスなどの可燃性ガス(特にLPガス)である場合は、被覆管G2には、分子量の小さな不活性ガスであるヘリウム(He)ガスを充填して、その中で検知することが好ましい。分子量の大きなプロパンやブタンガスを含んでいると、混合気体全体として空気と平均分子量が近くなるためである。
【0064】
また、分析手段が、ガスの漏洩により音波の到達時間が短くなること(音速が速くなること)でガスが漏れたと判断することを例に挙げて説明したが、スピーカから発する音を所定に反射させたり、同一スピーカから同一音波を相対して発したりして、ガス漏れを検知する空間に何らかの方法で定常波を発生させ、その定常波が音波測定手段(マイクロフォン)で観測されなくなるとガス漏れと判断するようにしても構わない。そうすることで、音波測定手段の設置個数を検知空間に比して減じることができる。
【0065】
それに加え、パーソナルコンピュータは、図示ノート型パソコンに限られず、前述のソフトウェアと同様の機能を提供可能なサーバや大型のコンピュータ(電子計算機)であってもよく、分析器もコンピュータで代替可能であれば、省略することも可能である。また、被覆管も気体がほとんど流出入しない閉空間を形成していれば、人があまり出入りしない(即ち、気流が発生しない)天井裏や暗渠、地下ピットなどの単なる空間でも構わない。その他の手段も、図示実施の形態に限られず、特許請求の範囲で適宜変更可能なことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0066】
1,2,3 ガス漏れ検知装置
G1 ガス管
G2 被覆管
G3 捕集管
G4 音波測定管
S スピーカ(音源)
M1,M2,M3,… マイクロフォン(音波測定手段)
A 分析手段
A1 分析器(分析手段)
A2 パーソナルコンピュータ(分析手段)
図1
図2
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図10
図11