(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る篩振動装置は、粉体物性測定装置1における、粉体堆積層の安息角、スパチュラ角、崩潰角、ゆるめかさ密度、固めかさ密度、凝集度測定の際に使用される。
【0014】
粉体物性測定装置1の外観を構成する二大要素は、本体2と、その前部を覆うカバー3である。本体2は図示しない架台構造の外側を板金製の筐体4で囲んだものであり、高さ調整可能な複数の支持脚5により支持面の上に支持される。カバー3は透明な合成樹脂により主要部が形成されており、左右一対のアーム6で本体2の左右両側面に取り付けられる。アーム6の先端は本体2に連結する支点部7となり、カバー3は支点部7を中心として垂直面内で回動する。
【0015】
カバー3を下ろすと
図2の実線状態となる。この時カバー3で囲い込まれる空間が
図3、4に示す測定室10となる。前述の通りカバー3は主要部が透明であるため、カバー3を下ろした状態でも測定室10の内部を見通すことができ、作業者は試料の状況等を目視で確認しながら、粉塵の影響を受けることなく測定作業を行うことができる。
【0016】
カバー3の正面には手掛け部3aが形成されており、そこに手を掛けて、カバー3を
図2の仮想線の位置まで引き上げることができる。
図2の仮想線の位置まで引き上げたときは、カバー3は手を離してもその位置に留まっている。このように測定室10を開放状態にした上で、作業者は測定済みの試料や測定に供した用具の片付け、新たな測定作業のセッティング、保守点検作業などを行う。測定室10を開放状態にしておく必要がなくなったときはカバー3を下ろす。支点部7でカバー3を支える軸にはダンパーが組み合わせられており、下ろす途中で手を離せばカバー3はゆっくりと降下し、衝撃を与えることなく静かに閉じる。
【0017】
粉体物性測定装置1は、試料粉体を篩にかける篩振動装置を備える。
図7から
図9に篩振動装置20の構造を示す。
【0018】
篩振動装置20は、粉体物性測定装置1の架台構造を自身の架台構造として利用している。架台構造から複数本のコラム21が立ち上がり、これら複数本のコラム21により、肉厚の金属板からなる第1デッキ22が水平に支持される。第1デッキ22の上には、複数の弾性支持体23により、これも肉厚の金属板からなる第2デッキ24が水平に支持される。
【0019】
弾性支持体23は、ゴムや軟質合成樹脂のような弾性物質を、円筒形のブロックの形に成型した防振ゴムであり、第2デッキ24の荷重を支える。弾性支持体23及び後述の弾性支持体33は、バネのような緩衝材であってもよいが、減衰効果を備えていることが好ましい。
【0020】
弾性支持体23の両端にはボルト25が設けられている。この弾性支持体23を介して
第1デッキ22と第2デッキ24とを連結するので、第1デッキ22と第2デッキ24との間では、互いに防振保持されることになる。
【0021】
第2デッキ24の上面には錘90が載置される。錘90は左右対称に2個設けられ、それぞれ図示しないボルトで第2デッキ24に取り付けられる。錘90は第2デッキ24の重量を増加させるものであり、これにより、弾性支持体33を挟んで取り付けられる振動レバー27と第2デッキ24との重量差が確保され、振動レバー27を安定的に、かつ効果的に振動させることができる。
【0022】
左右の錘90の上端同士は連結板91で連結される。これにより、錘90は第2デッキ24の上に安定して保持される。
【0023】
コラム21、第1デッキ22、及び第2デッキ24は筐体4の内部に位置している。第2デッキ24の上面には、
図7において右端となる箇所に軸受26が固定されている。軸受26には鋼製の角パイプからなる振動レバー27の一端が支軸28で取り付けられている。振動レバー27は支軸28を中心として垂直面内で回動可能であり、振動レバー27において支軸28の箇所が支点部、その反対側の端が作用点部、それらの中間が力点部となる。
【0024】
振動レバー27の作用点部は筐体4の内部から測定室10に突き出すものであり、ここにはリング状の篩取付枠29が固定される。振動レバー27の力点部には磁極片30が固定され、それに対向する電磁石31が第2デッキ24に取り付けられている。
【0025】
振動レバー27の上面には、力点部に近接した位置に、肉厚の金属板からなる横桁32が、両端を振動レバー27の横幅より突き出す形で溶接固定されている。横桁32は振動レバー27の支点部と作用点部を結ぶ方向と直角に交差する方向に延びる。横桁32は振動レバー27に振動を伝達するための板状の部材で、振動レバー27から突き出す両端部分にそれぞれ弾性支持体33が取り付けられ、この弾性支持体33を介して第2デッキ24上に支持される。
【0026】
弾性支持体33は、ゴムや軟質合成樹脂のような弾性物質を、円筒形のブロックの形に成型した防振ゴムであり、横桁32と振動レバー27及び篩取付枠29、篩取付枠29に取り付けられる篩40と篩押さえ41、篩40と篩押さえ41を篩取付枠29に固定する締結具53、篩40に投入される試料粉体の重量を含めた荷重を支える。弾性支持体33の両端の中心にはボルト34が設けられており、この弾性支持体33を介して第2デッキ24と横桁32とを連結するので、第2デッキ24と横桁32及び振動レバー27との間では、互いに防振保持されることになる。
【0027】
図8に示す通り、第2デッキ24は計4個の弾性支持体23を介して第1デッキ22に取り付けられ、横桁32は計2個の振動レバー用の弾性支持体33を介して第2デッキ24に取り付けられる。ここに示した弾性支持体23の数は、第1デッキ22と第2デッキ24とを保持するのに十分なものである。弾性支持体33は第2デッキ24を土台として振動レバー27を上下方向に所定の振幅で振動させるためのもので、弾性体の特性のうち主として反発力を利用するものである。なお、4個と2個という弾性支持体23と弾性支持体33の数はあくまでも例示であり、必ずしも発明を限定するものではない。
【0028】
篩取付枠29に取り付けられる篩40は、外径約82mm、内径約75mmである。篩取付枠29の中で、振動レバー先端側と支軸側との距離は約92mmである。支軸28から篩取付枠29の開口の中心までの距離は約407.5mmである。
【0029】
振動レバー27は第2デッキ24に対して平行に振動するのではなく、支軸28を支点として上下に振れる。そのため、篩取付枠29の先端側と支軸側とでは、厳密には振幅は異なることになる。しかし、支点となる支軸28までの長さを十分に取っているため、両地点における振幅差は無視できる範囲であるといえる。例えば、篩40の中心の振幅を約1mmに設定した場合、篩40の先端側内面の振幅と支軸側内面の振幅はそれぞれ約1.1mmと約0.9mmとなる。この値の差は、振動の均一さが要求される凝集度測定においても、振動の安定性が得られることを考慮すれば、十分に許容されるものといえる。
【0030】
電磁石31に電流を流すと磁界が生じ、その磁界によって磁極片30は下方に吸引される。弾性支持体33は圧縮され、振動レバー27は支軸28を支点に
図7において反時計まわりに振れ、篩取付枠29が降下する。次に、電磁石31に流れていた電流が途絶えると吸引力がなくなり、振動レバー27は弾性支持体33の反発弾性力で
図7において時計まわりに振れ、篩取付枠29は上昇する。こうして、電磁石31に交流電流を流せば、篩取付枠29は上下方向に細かく振動することになる。
【0031】
ここで、横桁32への弾性支持体33の取付位置は、振動レバー27の力点部において、振動レバー27の支点部と作用点部を結ぶ線と直角に交差する線上に、線同士の交差点を挟んで対称をなす形に設定されている。すなわち弾性支持体33の取付位置は、振動レバー27に対して左右対称位置であり、振動レバー27の支点である支軸28から等距離でもある位置に設定される。こうすることで、弾性支持体33に掛かる荷重は等しくなり、振動レバー27は左右への揺れがない安定した振動を行うことができる。
【0032】
上記構成では電磁石31で磁極片30を吸引して振動レバー27を振動させるものとしたが、磁極片を永久磁石に代え、電磁石31が永久磁石に対し及ぼす反発力で振動レバー27を振動させるといった構成も可能である。
【0033】
一端が支点部、他端が作用点部となり、中間に力点部を有する振動レバー27を、支点部を支持する軸受部26と、力点部近傍において、支点部から十分な距離を有し、支点部に対する場合と作用点部に対する場合のいずれにおいても互いに等しい距離間隔をもって配置された2個の弾性支持体33で支持し、振動レバー27の力点部に対し電磁石31で吸引力および/または反発力を及ぼして、振動レバー27を振動させることにより、作用点部に設けられた篩取付枠29に振動を伝えるものであるから、前後左右の振動の偏りを抑え、かつ、振動に伴う弾性支持体の内部発熱によって弾性支持体の弾性率などが経時変化することによる影響を少なくでき、長時間安定した振動を付与することができる。さらに、構造が堅牢であるため篩40や試料粉体の重量によって振幅が減少することもなく、試料粉体を均一に篩うことができる。また、電磁石31に流す電流を調整することにより、振幅を任意に変えることができる。
【0034】
振動レバー27に対し、篩取付枠29の部分の振幅を所定の振幅値に調整するための振動センサー73が設けられる。振動センサー73の取り付け位置は、篩取付枠29に近くかつ試料粉体に直接触れない箇所、例えば筐体4内の振動レバー27の下部で、筐体4の前面パネル(図示せず)に近い箇所に設定される。
【0035】
振動センサー73としては、例えば非接触式変位センサーが用いられる。振動レバー27の下部に取り付けられたL字形金具74の水平部(Lの字の横画)が振動センサー73によって検知される面となる。振動センサー73が出力する振動信号は制御装置70に送られ、制御部70は初期の設定値との差を逐次検知しつつ電磁石31の電流を調整し、篩取付枠29の部分が所定の振幅値を維持するようにする。
【0036】
振動センサー73用の非接触式変位センサーとしては、例えばオムロン株式会社製リニア近接センサー(センサヘッド:E2CA−X10A 3M、センサアンプ:E2CA−AL4F)を使用することができる。これ以外にも、株式会社キーエンス製のEX−416、株式会社サンエテック製のSS−203などが使用可能である。ここに具体例を示したセンサーは、仕様を含め、発明に限定的な意味合いをもたらすものではない。
【0037】
図3には安息角測定用のセッティングが示されている。篩取付枠29の上面には篩40の上に篩押さえ41を重ねて載置する。篩取付枠29の下面には安息角測定用漏斗42を取り付け、これらを締結具53で篩取付枠29に固定している。安息角測定用漏斗42の下方にはブラケット44により支持された安息角測定テーブル43が配置されている。
【0038】
安息角測定テーブル43の下にはそこからこぼれた試料を受けるバット45が配置される。バット45は筐体4の内部から測定室10に突き出す垂直な支持軸46により支持されている。支持軸46は
図10に示す支持軸昇降モータ47により昇降せしめられるものであり、支持軸昇降モータ36はモータドライバ48で駆動される。
【0039】
図4にはスパチュラ角測定用のセッティングが示されている。
図3の安息角測定用セッティングで安息角測定用漏斗42であったものがスパチュラ角測定用シュート49に置き換えられ、安息角測定テーブル43とそれを支えるブラケット44の組み合わせがスパチュラ角測定ブレード50とそれを支えるブラケット51の組み合わせに置き換えられている。このときバット45上には、スパチュラ角測定ブレード50を囲む囲枠52を設置する。
【0040】
粉体堆積層支持装置、すなわち安息角測定テーブル43とスパチュラ角測定ブレード50は、ブラケット44または51により、筐体4の内部に配置された衝撃付与装置60のベース61に連結される。
【0041】
衝撃付与装置60は、ベース61から垂直に立ち上がるガイドポール62を有する。ガイドポール62は衝撃錘63を上下自在に案内する。衝撃錘63を持ち上げてガイドポール62の根元に落下させることにより、ベース61に振動が生じ、その振動がブラケット44またはブラケット51を介して安息角測定テーブル43またはスパチュラ角測定ブレード50に伝わる仕組みである。
【0042】
図5にはかさ密度測定用のセッティングが示されている。篩40には篩押さえ41を重ね、篩取付枠29の下面には上段シュート54を取り付け、これらを締結具53で篩取付枠29に固定している。上段シュート54の下にはブラケット55で支持された下段シュート56が配置されている。タッピング台80には測定カップ81が取り付けられる。測定カップ81にはキャップ81aが取り付けられている。測定室10の床の上にはバット45が置かれている。測定カップ81は、容積が10ml、25ml、50ml、100mlのものが用いられる。
【0043】
図6には凝集度測定用のセッティングが示されている。篩取付枠29には網目の異なる3個の篩57a、57b、57cが積み重ねられる。篩57a、57b、57cは、上のものほど網目が粗く、下のものほど網目が細かい。すなわち篩57aが粗目、篩57bが中目、篩57cが細目ということになる。一番上の篩57aの上には篩押さえ41を重ね、篩押さえ41から篩57cまでを締結具53で篩取付枠29に固定する。篩取付枠29の下においては、バット45を篩57cの下まで上げて、篩57cを通過した試料粉体を受け取らせる。なお、バット45に代え、受皿として篩受けを篩57cの下に配置し、締結具53で固定してもよい。
【0044】
粉体物性測定装置1の動作制御は、
図10に示す制御装置70によって行われる。制御装置70は、パーソナルコンピュータ71と、パーソナルコンピュータ71より指令を受けて各構成要素を制御するメイン制御部72を含む。制御装置70には、電磁石31、支持軸昇降モータ47とモータドライバ48、振動センサー73といった既出の構成要素の他に、表示装置75が接続される。表示装置75は外付けのモニター装置などにより構成され、測定データや計算結果などの表示を行う。
【0045】
安息角は次のようにして測定する。
図3のセッティングにおいて、篩押さえ41及び篩40に試料粉体を投入し、篩取付枠29を振動させると、篩40を通過した試料粉体が安息角測定用漏斗42に入る。安息角測定用漏斗42は試料粉体を集束させ、安息角測定テーブル43の上に注ぐ。試料粉体は安息角測定テーブル43の上に円錐形に堆積する。そこから、例えば特許第4155942号公報に開示された計算手法で、安息角を求める。
【0046】
安息角測定後、衝撃付与装置60で所定回数(3回)の衝撃を発生させると、安息角をなしていた粉体堆積層が崩潰する。この状態で崩潰角を測定する。ここで、崩潰角とは、安息角を形成していた粉体堆積層が、衝撃にともない形を変えた後の粉体堆積層の傾斜角のことである。
【0047】
崩潰角の測定後、差角を算出する。ここで、差角とは、安息角から崩潰角を引いた角度のことで、その大きさから粉体の噴流性(フラッシング性)を推測することができる。
【0048】
スパチュラ角は次のようにして測定する。
図4のセッティングにおいて、バット45をブラケット51にほぼ密着する高さまで持ち上げる。その状態で篩押さえ41及び篩40に試料粉体を投入し、篩取付枠29を振動させる。篩40を通過した試料粉体はスパチュラ角測定用シュート49に入る。スパチュラ角測定用シュート49は試料粉体を集束させ、スパチュラ角測定ブレード50の上に注ぐ。試料粉体はスパチュラ角測定ブレード50の上に積もる。なお、スパチュラ角測定のため試料粉体を供給する際、スパチュラ角測定ブレード50を囲枠52内にセットした後、試料粉体を篩にかけないで直接手でスパチュラ角測定ブレード50上に盛るようにしてもよい。
【0049】
スパチュラ角測定ブレード50がすっかり試料粉体に埋もれたところでバット45と囲枠52を降下させると、スパチュラ角測定ブレード50の上には連続した山形状の粉体堆積層が残る。そこから、例えば特許第4155942号公報に開示された計算手法で、この粉体堆積層の傾斜角を求める。
【0050】
その後、衝撃付与装置60で所定回数の衝撃を発生させて粉体堆積層を崩潰させる。この状態で、粉体堆積層の傾斜角を求め、崩潰前と崩潰後の傾斜角の平均値を算出する。この値がスパチュラ角である。
【0051】
かさ密度は次のようにして測定する。
図5のセッティングにおいて、篩押さえ41及び篩40に試料粉体を投入し、篩取付枠29を振動させると、篩40を通過した試料粉体が上段シュート54と下段シュート56を通じて落下し、測定カップ81に入る。試料粉体が測定カップ81から溢れたら試料粉体の投入をやめ、試料粉体をすり切る。次いで測定カップ81をタッピング台80から取り外し、電子天秤等の質量測定装置に載せて質量を測定する。その質量を測定カップ81の容積で除した値が、ゆるめかさ密度となる。
【0052】
次いで測定カップ81にキャップ81aを被せてタッピング台80に戻し、試料粉体を投入しつつタッピングを行う。所定回数または所定時間タッピングを行った後、キャップ81aを取り外し、試料粉体をすり切る。その後測定カップ81をタッピング台80から取り外し、電子天秤等の質量測定装置に載せて質量を測定する。その質量を測定カップ81の容積で除した値が、固めかさ密度となる。
【0053】
凝集度は次のようにして測定する。
図6のセッティングにおいて、篩押さえ41、及び三段の篩57a、57b、57cの中で一番上の篩57aに所定量の試料粉体を投入し、篩取付枠29を振動させる。この測定の場合には振動の強さを示す振幅と振動時間を予め設定しておく。所定時間の振動後、篩57a、57b、57c及び篩受け58に残った試料粉体の質量を測定する。その測定値より、試料粉体の物性評価値としての凝集度を求めることができる。
【0054】
凝集度の測定にあたって使用する篩57a、57b、57cの組み合わせは、試料粉体の粒子径により、その都度設定される。例えば、平均粒子径9μmのプリンタ用トナーが試料粉体である場合、篩57a、57b、57cには、網目が150μm、75μm、45μmのものが選択される。篩57a、57b、57cの網目は、試料粉体が全て通過する大きさでなければならない。
【0055】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。