特許第5671777号(P5671777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000002
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000003
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000004
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000005
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000006
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000007
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000008
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000009
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000010
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000011
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000012
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000013
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000014
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000015
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000016
  • 特許5671777-半導体装置の製造方法 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671777
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20150129BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20150129BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20150129BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20150129BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20150129BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   H01L29/78 658E
   H01L29/78 658G
   H01L29/78 658Z
   H01L29/78 652H
   H01L29/91 A
   H01L29/06 301D
   H01L21/324 X
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2008-118843(P2008-118843)
(22)【出願日】2008年4月30日
(65)【公開番号】特開2009-272324(P2009-272324A)
(43)【公開日】2009年11月19日
【審査請求日】2011年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】冨澤 浩
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−024866(JP,A)
【文献】 特開2007−311607(JP,A)
【文献】 特開2006−216632(JP,A)
【文献】 特開2006−114866(JP,A)
【文献】 特開2006−287127(JP,A)
【文献】 特開2003−229569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/324
H01L21/329
H01L21/336
H01L29/06
H01L29/78−29/792
H01L29/861−29/885
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型半導体基板の主面に、一部が開口するマスクを形成するマスク工程と、
前記第1導電型半導体基板の、前記マスクの開口部分に露出する半導体部分をエッチングしてトレンチを形成するエッチング工程と、
前記トレンチを第2導電型半導体で埋める埋め込み工程と、
前記マスクを研磨ストッパ膜として前記第1導電型半導体基板の前記主面側の表面を研磨する研磨工程と、
前記マスクを除去する除去工程と、
前記埋め込み工程により前記トレンチが前記第2導電型半導体で埋められ、前記研磨工程により研磨され、その後、前記除去工程により前記マスクが除去された半導体基板を非酸化性および非窒化性の雰囲気でアニール処理して、前記半導体基板の前記主面側の表面を平滑化するアニール工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記アニール工程における処理温度は、950℃以上1100℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記アニール工程における非酸化性および非窒化性の雰囲気の圧力は、10Torr以上760Torr以下であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記アニール工程における処理時間は、30秒以上200秒以下であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記アニール工程における非酸化性および非窒化性の雰囲気は水素ガス雰囲気であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記アニール工程の後、前記第1導電型半導体基板と前記第2導電型半導体との境界およびその両側にある前記第1導電型半導体基板と前記第2導電型半導体の表面に不純物をイオン注入し不純物注入層を形成するイオン注入工程と、
前記不純物注入層を活性化する活性化工程と、
を含み、
前記除去工程では、前記研磨工程により研磨された第2導電型半導体の表面と前記第1導電型半導体基板の表面とからなる段差を露出させ、
前記アニール工程では、前記段差の前記第2導電型半導体の角が丸みを帯びた形状とすることで前記半導体基板の前記主面側の表面を平滑化することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、半導体基板にトレンチを形成し、そのトレンチをエピタキシャル成長で埋める工程を含む半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MOSFET(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、バイポーラトランジスタまたはダイオードなどの半導体装置では、ドリフト電流が流れる領域(以下、ドリフト層とする)を薄くすると、ドリフト電流の電流経路が短くなるため、オン抵抗は低くなるが、耐圧が低下してしまう。逆に、ドリフト層を厚くすると、耐圧は高くなるが、オン抵抗が高くなってしまう。このように、これらの半導体装置では、オン抵抗(電流容量)と耐圧との間にトレードオフの関係がある。
【0003】
このトレードオフを改善する技術として、超接合構造が公知である。超接合構造とは、ドリフト層を、単一の半導体層ではなく、不純物濃度を高めたn型半導体領域とp型半導体領域とを交互に繰り返し接合した構造(以下、並列pn構造とする)としたものである。並列pn構造を形成する方法として、ドライエッチングすることによりn型ドリフト層にトレンチを形成し、このトレンチをエピタキシャル成長のp型半導体で埋める方法が提案されている。
【0004】
ところで、シリコンにトレンチを形成する方法として、いわゆるボッシュプロセスが公知である。ボッシュプロセスでは、エッチング工程とパッシベーション工程を交互に連続して行うことにより異方性エッチングが進行する。
【0005】
上述のような方法で形成されたトレンチ内に、結晶性に優れたエピタキシャル層を成長させる方法として、次のような方法が提案されている。シリコン基板の上面にトレンチエッチング用のマスク酸化膜を形成し、マスク酸化膜を用いたエッチングを行ってシリコン基板にトレンチを形成する。そして、マスク酸化膜を除去した後、非酸化性または非窒化性の減圧雰囲気下にて熱処理を行ってシリコン基板でのトレンチ内面を平滑化する。さらに、エピタキシャル成長法によりトレンチ内にエピタキシャル層を形成してトレンチ内をエピタキシャル層で埋め込む(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、別の方法が提案されている。第1導電型の半導体基板の表面層に所望のパターンのトレンチを形成する。ついで、該トレンチ内を洗浄し、乾燥させる。そして、ガス炉内で、該ガス炉内にエッチングガスを供給することにより、トレンチ内の露出面をエッチングする。そして、エッチングが終了した後に、非酸化性及び非窒化性の雰囲気で熱処理し、続いてトレンチ内に第2導電型の半導体をエピタキシャル成長させて、トレンチを埋める(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
また、上述した方法により形成された半導体の表面を平滑化する方法として、低抵抗半導体基板に一導電型半導体層が積層された半導体基板表面に、トレンチ形成用並列絶縁膜と該並列絶縁膜をマスクにして形成される並列トレンチとマーカーとを形成し、前記並列トレンチ内に他導電型半導体層の充填後、その突出部を除去する第一研磨工程と、前記他導電型半導体層の研磨に続いて前記並列絶縁膜の除去を行う除去工程とを連続的に行う半導体素子の製造方法において、第一研磨工程および除去工程ではそれぞれ前記絶縁膜と前記半導体層に対する研磨レートが異なる研磨スラリーを用いて研磨する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
【特許文献1】特開2002−124474号公報
【特許文献2】特開2006−019610号公報
【特許文献3】特開2007−129115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
超接合構造を形成するための前記ドライエッチング法では、ウェハーにトレンチを形成するためのマスクとなる酸化膜がエッチングされて薄くなる。そのため、トレンチ形成後に残ったマスク酸化膜は、ウェハー面内のさまざまな部分で不均一な厚さとなっている。このマスク酸化膜は、トレンチにp型半導体を埋め込んだ後に、ウェハー表面から突出しているp型半導体を研磨する際に、研磨終了の基準となる研磨ストッパ膜として使用される。そのため、マスク酸化膜の厚さのばらつきによって研磨の基準位置が変わってくることになり、ウェハーの面内での各p型半導体領域の厚さにばらつきが生じる。さらに、マスク酸化膜を完全に除去した後のウェハーの表面には、n型半導体領域とp型半導体領域との接合部において、マスク酸化膜の厚さに相当する高さの段差が生じる。つまり、ウェハーに並列pn構造を形成する工程において、並列pn構造の表面層の全域にわたって不均一な凹凸が生じてしまうことになる。
【0010】
並列pn構造の表面層の段差は、ウェハーの特性に大きな影響を与え、ウェハーの品質を低下させる原因の一つとなっている。その理由は、並列pn構造の表面層において、n型半導体領域とp型半導体領域との接合部にn+ソース領域を形成する際に、n型半導体領域側のn+ソース領域とp型半導体領域側のn+ソース領域とがつながらない恐れがあるからである。例えば、図15は、n+ソース領域の形成において、イオン注入後の並列pn構造の表面層に形成された不純物注入層を示す断面図である。また、図16は、イオン注入された不純物注入層を活性化させてできるn+ソース領域を示す断面図である。図15および図16において、左半部はウェハー外周部であり、右半部はウェハー中心部である(図2図9においても同じ)。n+ソース領域106の形成において、p型半導体領域103の表面層には高不純物濃度のpベース領域105(二点鎖線で示す)が設けられる。そして、イオン注入によりpベース領域105の表面層に不純物注入層106aを形成し、続いて不純物注入層106aを活性化させて高不純物濃度のn+ソース領域106を形成する。このとき、図15に示すように並列pn構造104の表面層に段差があると、n型半導体領域102とp型半導体領域103との接合部において、n型半導体領域102の表面層に形成された不純物注入層106aと、このn型半導体領域102に隣接するp型半導体領域103の表面層に形成された不純物注入層106aとがつながらない箇所ができることがある。そして、図16のウェハー外周部に示すように、この不純物注入層106aを活性化させたとしても、n型半導体領域102の表面層に形成されたn+ソース領域106と、このn型半導体領域102に隣接するp型半導体領域103の表面層に形成されたn+ソース領域106とがつながらない箇所ができる。図15および図16に示す並列pn構造104の表面層の段差は一例であり、ウェハー外周部およびウェハー中心部において種々の段差が生じる。従って、ウェハー表面の各領域によって、ウェハーのデバイスの表面構造の形成にばらつきが生じるため、チップごとに品質が異なってしまうという問題が生じることになる。
【0011】
上述した特許文献1または2の技術では、p型半導体を埋め込む前のトレンチ内面に対して、熱処理を行うため、トレンチ内にp型半導体を形成した後の、並列pn構造の表面層の段差は解消されない。
【0012】
上述した特許文献3の技術では、第一研磨工程と除去工程とでは研磨面に合わせて研磨レートの異なる研磨スラリーを必要とする。そのため、製造コストの増大を招くという問題が生じてしまう。
【0013】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、ウェハー面内におけるチップの品質のばらつきを抑えることのできる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる半導体装置の製造方法は、第1導電型半導体基板の主面に、一部が開口するマスクを形成するマスク工程と、前記第1導電型半導体基板の、前記マスクの開口部分に露出する半導体部分をエッチングしてトレンチを形成するエッチング工程と、前記トレンチを第2導電型半導体で埋める埋め込み工程と、前記マスクを研磨ストッパ膜として前記第1導電型半導体基板の前記主面側の表面を研磨する研磨工程と、前記マスクを除去する除去工程と、前記埋め込み工程により前記トレンチが前記第2導電型半導体で埋められ、前記研磨工程により研磨され、その後、前記除去工程により前記マスクが除去された半導体基板を非酸化性および非窒化性の雰囲気でアニール処理して、前記半導体基板の前記主面側の表面を平滑化するアニール工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、請求項2の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1に記載の発明において、前記アニール工程における処理温度は、950℃以上1100℃以下であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項3の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項2に記載の発明において、前記アニール工程における非酸化性および非窒化性の雰囲気の圧力は、10Torr以上760Torr以下であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項4の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項2に記載の発明において、前記アニール工程における処理時間は、30秒以上200秒以下であることを特徴とする。
【0018】
また、請求項5の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項4に記載の発明において、前記アニール工程における非酸化性および非窒化性の雰囲気は水素ガス雰囲気であることを特徴とする。
また、請求項6の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜5のいずれか一つに記載の発明において、前記アニール工程の後、前記第1導電型半導体基板と前記第2導電型半導体との境界およびその両側にある前記第1導電型半導体基板と前記第2導電型半導体の表面に不純物をイオン注入し不純物注入層を形成するイオン注入工程と、前記不純物注入層を活性化する活性化工程と、を含み、前記除去工程では、前記研磨工程により研磨された第2導電型半導体の表面と前記第1導電型半導体基板の表面とからなる段差を露出させ、前記アニール工程では、前記段差の前記第2導電型半導体の角が丸みを帯びた形状とすることで前記半導体基板の前記主面側の表面を平滑化することを特徴とする。
【0019】
上述した各請求項の発明によれば、アニールを行う前に、マスクを研磨ストッパ膜として用い、マスクより上に突出している第2導電型半導体を研磨して、半導体基板の表面をほぼ平滑にしている。その後のアニール処理により、第1導電型半導体の表面端部および第2導電型半導体の表面端部は、角が取れて丸みを帯びた形状となる。そのため、第1導電型半導体と、第2導電型半導体との段差が解消され、半導体基板の表面をさらに平滑な面にすることができる。また、第1導電型半導体と第2導電型半導体の接合部において第1導電型半導体の方が高い箇所では、第1導電型半導体の表面端部が丸みを帯びた形状となることによって、アニールを行わない場合(第1導電型半導体の表面端部が角張っている)に比べて、イオン注入によって第1導電型半導体に打ち込まれた不純物が、第1導電型半導体の表面端部が丸みを帯びた分だけ、第2導電型半導体の表面に近い位置に達する。そして、第1導電型半導体の不純物注入層を活性化させてできるn+ソース領域は、第2導電型半導体の表面の高さよりも低い位置まで達する。第2導電型半導体の方が高い箇所では、この逆となる。これにより、半導体基板の表面にn+ソース領域を形成する際に、第1導電型半導体と第2導電型半導体との接合面において、第1導電型半導体にできるn+ソース領域と第2導電型半導体にできるn+ソース領域とがつながる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる半導体装置の製造方法によれば、半導体基板の表面と、半導体基板に形成されたトレンチ内に埋め込んだ半導体領域の表面との段差が解消されるので、ウェハー面内におけるチップの品質のばらつきを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nに付す+は、それが付されていない層や領域よりも高不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明にかかる製造方法により製造される超接合半導体装置の一例を示す断面図である。ここでは、縦型MOSFETを例にして説明する。図1に示すように、低抵抗のn++ドレイン層1の上に、n型半導体領域2とp型半導体領域3を交互に繰り返し接合させてなる並列pn構造4が設けられている。並列pn構造4のp型半導体領域3の表面層には、高不純物濃度のpベース領域5が設けられている。pベース領域5の表面層には、高不純物濃度のn+ソース領域6が設けられている。
【0023】
並列pn構造4のn型半導体領域2とn+ソース領域6の間において、pベース領域5の表面上には、ゲート酸化膜7を介してゲート電極8が設けられている。pベース領域5およびn+ソース領域6には、ソース電極9が接している。ソース電極9は、層間絶縁膜10によりゲート電極8から絶縁されている。n++ドレイン層1の裏面には、ドレイン電極11が設けられている。この半導体装置の表面は、図示省略した表面保護膜により覆われている。
【0024】
図2図7は、本発明にかかる製造方法による製造途中の半導体装置を示す断面図である。これらの図は、デバイスの表面構造の活性領域における、ウェハーの表面の段差の一例を示している。また、デバイスの表面構造の活性領域を取り囲む耐圧構造領域や、チップ状に切断するための基準線となるスクライブ領域は図示を省略する。まず、図2に示すように、n型の低抵抗シリコン基板(n++基板)21を用意し、その表面にn型半導体22をエピタキシャル成長させる。n型低抵抗基板21は、n++ドレイン層1となる。そして、例えば熱酸化法によりn型半導体22の表面にマスク酸化膜23を形成し、マスク酸化膜23の表面に図示省略したレジスト膜を塗布する。次いで、フォトリソグラフィおよびエッチングによって、トレンチ形成領域上の部分のマスク酸化膜を開口する。同時に、デバイスの表面構造の位置合わせに用い、図示省略したマーカー形成領域上の部分のマスク酸化膜23も開口する。そして、デバイスの表面構造の活性領域上のレジスト膜を除去する。このとき、デバイスの表面構造の活性領域を囲むように形成されている耐圧構造領域上のレジスト膜は残しておく。
【0025】
次いで、図3に示すように、例えば、図2に示す状態の半導体装置を図示しないチャンバー内に入れ、そのチャンバー内に保護膜形成ガスとエッチングガスを数秒ずつ交互に供給しながら、n型半導体22の、マスク酸化膜23の開口部分に露出する部分をエッチングして、n型低抵抗基板21に達するトレンチ24を形成する。その際、保護膜形成ガスの供給期間では、トレンチ側壁に保護膜が形成される。エッチングガスの供給期間では、n型半導体22がエッチングされる。このとき、マスク酸化膜23もわずかにエッチングされる。n型半導体22の、トレンチ形成後に残った部分が並列pn構造4のn型半導体領域2となる。
【0026】
次いで、図3に示す状態の半導体装置をチャンバーから取り出し、トレンチ24の内部を洗浄した後、図4に示すように、エピタキシャル成長法によりトレンチ24をp型半導体25で埋める。このp型半導体25が並列pn構造4のp型半導体領域3となる。次いで、図5に示すように、マスク酸化膜23を研磨ストッパ膜としてCMP(Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)などの研磨を行い、先のp型半導体25のエピタキシャル成長によりマスク酸化膜23より上に突出したシリコン層を除去して、ウェハーの表面を平滑化する。
【0027】
次いで、図6に示すように、デバイスの表面構造の活性領域上に形成されているマスク酸化膜23を除去する。このとき、p型半導体25もわずかに薄くなる。次いで、図7に示すように、例えば、非酸化性および非窒化性の雰囲気での熱処理を行う。この熱処理により、n型半導体22の表面およびp型半導体25の表面は、平滑化される。ここまでのプロセスで、並列pn構造4が形成される。
【0028】
この後、通常のMOSFETの製造プロセスにより、図1に示すように、図示しないフィールド酸化膜、ゲート酸化膜7およびゲート電極8を順次形成し、セルフアラインによるイオン注入および熱拡散によりpベース領域5を形成する。さらに、n+ソース領域6、層間絶縁膜10、ソース電極9、図示省略した表面保護膜およびドレイン電極11を形成し、縦型MOSFETが完成する。
【0029】
各部の寸法や不純物濃度、プロセス条件等の一例を示す。なお、本発明は、これらの数値に限定されるものではない。耐圧が600Vである場合、n型低抵抗基板21の厚さは例えば625μmである。n型半導体22の厚さおよび濃度は、それぞれ、例えば50μmおよび4×1015cm-3である。n型半導体22の表面に、例えば、パイロジェニック酸化などの熱酸化法によって、酸化雰囲気で1150℃、20時間の熱処理を行い、マスク酸化膜23を形成する。熱酸化直後のマスク酸化膜23の厚さは、例えば2.4μmである。トレンチ24の開口幅は、例えば6μmである。マスク酸化膜23の開口に用いたレジスト膜は除去する。そのとき、耐圧構造領域上に形成されているレジスト膜は残す。トレンチ24の深さは例えば50μmである。このトレンチ24を形成するエッチング工程ではマスク酸化膜23もエッチングされる。そして、残されたマスク酸化膜23の厚さは、例えば0.7μm〜1.1μmである。マスク酸化膜23を研磨終了の基準としてp型半導体25を研磨した後に、マスク酸化膜23を除去することで、n型半導体22とp型半導体25と接合面に生じる段差は、例えば、0.3μm程度になる。マスク酸化膜23を除去した後の並列pn構造4の表面層の平滑化は、例えば、水素流量50リットル/min、1100℃で3分間のアニール処理により行う。
【0030】
なお、耐圧構造領域上のマスク酸化膜は除去する必要はない。その理由は、耐圧構造領域は、ウェハーの表面に厚いフィールド酸化膜を備える構造となるからである。また、スクライブ部上のマスク酸化膜は、除去してもしなくてもよい。その理由は、スクライブ部がウェハーのデバイスの表面構造に影響を与えない領域であり、ウェハーをチップ状にするに際し、切断される領域であるからである。
【0031】
また、並列pn構造4の形成工程中のエッチングは、例えば、マスク酸化膜23の除去に際し、並列pn構造4の表面層のさまざまな部分で不規則な凹凸を生じさせる。しかしながら、並列pn構造4の形成工程の最後に行われるアニール処理により、n型半導体22とp型半導体25の接合部において高い方の表面端部の角が丸みを帯びた形状となる。つまり、並列pn構造4の表面層は、平滑で段差のない面となる。そのため、エッチングによって生じる並列pn構造4の表面層の凹凸は、並列pn構造4の表面層をアニールすることで解消される。
【0032】
図8は、n+ソース領域の形成において、イオン注入後の並列pn構造の表面層に形成される不純物注入層を示す断面図である。また、図9は、イオン注入された不純物注入層を活性化させてできるn+ソース領域を示す断面図である。n+ソース領域27の形成において、p型半導体25の表面層には高不純物濃度のpベース領域26(二点鎖線で示す)が設けられる。そして、pベース領域26の表面層にイオン注入により不純物注入層27aを形成し、続いて不純物注入層27aを活性化させることで高不純物濃度のn+ソース領域27が設けられる。図8に示すように、並列pn構造4の表面層は、熱処理を行うことで、高さの違うn型半導体22とp型半導体25とがなだらかにつながった平滑な面となる。そのため、イオン注入により並列pn構造4の表面層に形成される不純物注入層27aは、並列pn構造4の表面層において、完全につながる。そして、図9に示すように、不純物注入層27aを活性化させてできるn+ソース領域27も、完全につながる。
【0033】
以上説明したように、実施の形態1によれば、アニールを行う前に、マスク酸化膜23を研磨ストッパ膜として用い、マスク酸化膜23より上に突出している並列pn構造4のp型半導体領域3を研磨して、ウェハーの表面をほぼ平滑にしている。その後のアニール処理により、並列pn構造4のn型半導体領域2の表面端部および並列pn構造4のp型半導体領域3の表面端部は、角が取れて丸みを帯びた形状となる。そのため、並列pn構造4のn型半導体領域2と、並列pn構造4のp型半導体領域3との段差が解消され、ウェハーの表面をさらに平滑な面にすることができる。また、並列pn構造4のn型半導体領域2と並列pn構造4のp型半導体領域3の接合部において並列pn構造4のn型半導体領域2の方が高い箇所では、並列pn構造4のn型半導体領域2の表面端部が丸みを帯びた形状となることによって、アニールを行わない場合(並列pn構造4のn型半導体領域2の表面端部が角張っている)に比べて、イオン注入によって並列pn構造4のn型半導体領域2に打ち込まれた不純物が、並列pn構造4のn型半導体領域2の表面端部が丸みを帯びた分だけ、並列pn構造4のp型半導体領域3の表面に近い位置に達する。そして、並列pn構造4のn型半導体領域2の不純物注入層を活性化させてできるn+ソース領域6は、並列pn構造4のp型半導体領域3の表面の高さよりも低い位置まで達する。並列pn構造4のp型半導体領域3の方が高い箇所では、この逆となる。これにより、ウェハーの表面にn+ソース領域6を形成する際に、並列pn構造4のn型半導体領域2と並列pn構造4のp型半導体領域3との接合面において、並列pn構造4のn型半導体領域2にできるn+ソース領域6と並列pn構造4のp型半導体領域3にできるn+ソース領域6とがつながる。従って、ウェハー面内におけるチップの品質のばらつきを抑えることができる。
【0034】
(実施の形態2)
実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法について説明する。図10および図11は、実施の形態2にかかる製造方法による製造途中の半導体装置を示す断面図である。実施の形態2の説明および添付図面について、実施の形態1と重複する説明は省略する。まず、実施の形態1と同様に、図2に示すように、n型の低抵抗シリコン基板21の表面にn型半導体22を形成し、続いてn型半導体22の表面にマスク酸化膜23を形成する。次いで、フォトリソグラフィおよびエッチングによってマスク酸化膜23を開口し、図3に示すように、低抵抗シリコン基板21に達するトレンチ24を形成する。実施の形態2において、トレンチ形成後のn型半導体22の表面に残されたマスク酸化膜23の厚さは、例えば1.1μmとなる。
【0035】
次いで、トレンチ24の内面に、例えば、非酸化性および非窒化性の常圧雰囲気で熱処理を行う。この熱処理は、例えば、水素流量50リットル/min、1100℃、700〜760Torrで2分間行う。このとき、トレンチ24の内面が平坦化される。
【0036】
次いで、図10に示すように、トレンチ24をp型半導体25で埋める。次いで、図11に示すように、マスク酸化膜23より上に突出したp型半導体25を研磨することで並列pn構造4の表面層を平滑化する。このとき、マスク酸化膜もわずかに研磨され、残されたマスク酸化膜の厚さは、例えば、0.8μmとなる。その後、残されたマスク酸化膜を除去して、通常のMOSFETの製造プロセスを行うことにより、図1に示すような縦型MOSFETが完成する。
【0037】
実施の形態2において、トレンチ24の内面に行う熱処理は、マスク酸化膜23とn型半導体22との境界で、トレンチ24の側壁部分のマスク酸化膜23が削れることを抑える目的で行われる。これにより、トレンチ24にp型半導体25を埋め込む際に、トレンチ24の側壁の、マスク酸化膜23とn型半導体22との境界領域に、p型半導体25が侵入するのを防ぐことができる。
【0038】
なお、トレンチ内面に行う熱処理を、実施の形態2にかかる熱処理条件で行わない場合、例えば、非酸化性または非窒化性の減圧雰囲気内で、水素ガスを導入して熱処理を行った場合、p型半導体25をエピタキシャル成長させると、n型半導体22とp型半導体25との接合面において、n型半導体22とマスク酸化膜23との境界面にp型半導体25が侵入してしまう。図12図14は、実施の形態2にかかる製造方法における熱処理条件と異なる場合の製造途中の半導体装置を示す断面図である。例えば、トレンチ24の内面に、水素流量50リットル/min、1100℃、700〜760Torrで2分間のアニール処理を行う。このとき、図12に示すように、マスク酸化膜23とn型半導体22との境界において、トレンチ24の側壁に酸化膜の削れた部分(以下、酸化膜削れ部とする)28が生じる。この酸化膜削れ部28ができた状態で、トレンチ24にp型半導体25を埋め込んだ場合、図13に示すように、酸化膜削れ部28の内部にもp型半導体25が埋め込まれる。そのため、その後の工程、例えば、図14に示すようなウェハー表面の平滑化工程において、p型半導体25が、n型半導体22との接合面付近のn型半導体22を覆うように存在することになる。このような場合、n型半導体22にできるn+ソース領域6とp型半導体25にできるn+ソース領域6とがつながらない恐れが生じる。
【0039】
以上説明したように、実施の形態2によれば、並列pn構造4のn型半導体領域2とマスク酸化膜23との境界において、酸化膜削れ部28ができるのを抑えている。そのため、並列pn構造4のn型半導体領域2と並列pn構造4のp型半導体領域3との接合面において、並列pn構造4のn型半導体領域2の表面に、並列pn構造4のp型半導体領域3が覆い被さることを抑えることができる。これにより、n型半導体領域2にできるn+ソース領域6とp型半導体領域3にできるn+ソース領域6とがつながる。従って、ウェハー面内におけるチップの品質のばらつきを抑えることができる。
【0040】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、種々変更可能である。例えば、実施の形態中に記載した寸法や濃度などは一例であり、本発明はそれらの値に限定されるものではない。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。また、本発明は、MOSFETに限らず、IGBT、バイポーラトランジスタまたはダイオードなどの半導体装置を製造する際にも適用することができる。さらに、本発明は、並列pn構造を作製する場合に限らず、半導体にトレンチを形成する場合にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明にかかる半導体装置の製造方法は、トレンチ形成工程を有する半導体装置の製造方法に有用であり、特に、超接合構造を有するパワー半導体装置の製造方法に適している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明にかかる製造方法により製造される超接合半導体装置の一例を示す断面図である。
図2】本発明にかかる製造方法による製造途中の半導体装置を示す断面図である。
図3】本発明にかかる製造方法による製造途中の半導体装置を示す断面図である。
図4】本発明にかかる製造方法による製造途中の半導体装置を示す断面図である。
図5】本発明にかかる製造方法による製造途中の半導体装置を示す断面図である。
図6】本発明にかかる製造方法による製造途中の半導体装置を示す断面図である。
図7】本発明にかかる製造方法による製造途中の半導体装置を示す断面図である。
図8】本発明にかかる製造方法による製造途中の半導体装置の要部を示す断面図である。
図9】本発明にかかる製造方法による製造途中の半導体装置の要部を示す断面図である。
図10】実施の形態2にかかる製造方法による製造途中の半導体装置を示す断面図である。
図11】実施の形態2にかかる製造方法による製造途中の半導体装置を示す断面図である。
図12】実施の形態2にかかる熱処理条件を変更した製造方法による製造途中の半導体装置を示す断面図である。
図13】実施の形態2にかかる熱処理条件を変更した製造方法による製造途中の半導体装置を示す断面図である。
図14】実施の形態2にかかる熱処理条件を変更した製造方法による製造途中の半導体装置を示す断面図である。
図15】従来の製造方法による製造途中の半導体装置の要部を示す断面図である。
図16】従来の製造方法による製造途中の半導体装置の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
21 n型低抵抗基板
22 n型半導体
25 p型半導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16