(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5671865
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】筐体
(51)【国際特許分類】
H05K 5/06 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
H05K5/06 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-173856(P2010-173856)
(22)【出願日】2010年8月2日
(65)【公開番号】特開2012-33826(P2012-33826A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2013年7月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150441
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敏弘
【審査官】
遠藤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−079400(JP,A)
【文献】
実開昭56−016980(JP,U)
【文献】
特開2001−237577(JP,A)
【文献】
特開2006−351905(JP,A)
【文献】
特開2006−019580(JP,A)
【文献】
特開2009−054725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品搭載面に部品を搭載する部品搭載部を有したベース部材と、
前記部品搭載部との接合部にシール手段を介在させた状態で前記ベース部材を覆うことにより、前記ベース部材との間に部品の収容空間を確保するカバー部材と
を備えた筐体であって、
前記シール手段は、
前記部品搭載面の縁部であって、前記カバー部材によって前記ベース部材を覆った場合に前記カバー部材よりも内方となる位置に開口する部分を有したガスケット収容溝と、
外表面が前記部品搭載面よりも下方に位置する状態で前記ガスケット収容溝の内部に配設したガスケットと、
前記カバー部材において前記ベース部材のガスケット収容溝に対応する部位に形成し、前記ベース部材を覆った場合に前記ガスケット収容溝に進入することにより、前記ガスケットの外表面を押圧する突条片部と
を備えたことを特徴とする筐体。
【請求項2】
前記ベース部材には、前記ガスケット収容溝の外縁側に位置する部位に外縁壁部を設ける一方、前記カバー部材には、前記ベース部材の外縁壁部を収容する壁収容溝を形成し、前記壁収容溝の内縁側に位置する内縁壁部を前記突条片部として機能させることを特徴とする請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
前記ガスケット収容溝には、前記突条片部が進入した際の前記ガスケットの弾性変形を許容する変形用空間部を確保したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の筐体。
【請求項4】
前記ベース部材の外縁壁部には、外縁側に位置する部位に前記部品搭載面から離隔するに従って漸次内縁側に傾斜するガイド面を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー部材によってベース部材を覆うことにより、互いの間に収容空間を確保するようにした筐体に関するもので、特に、筐体の防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インバータ等のように設置場所が屋外となり得る電子機器の筐体においては、防水性を確保するためにカバー部材とベース部材との接合部にシール手段を介在させるのが一般的である。シール手段としては、ベース部材における部品搭載面の周囲にガスケットを配設し、カバー部材の開口端縁をガスケットに押圧させることによってベース部材とカバー部材との間を水密に接合させるものが適用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−252187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ベース部材の部品搭載面にガスケットを配設するようにした筐体にあっては、ガスケットを配設した分だけ電子部品等の部品の搭載領域が減少することになる。もちろん、部品の搭載領域を所望面積だけ確保してベース部材を構成することは可能である。しかしながら、所望となる大きさの搭載領域を確保した場合には、その分だけベース部材の外形寸法を増大してガスケットを配設しなければならないことになり、筐体が大型化するのは否めない。もちろん、ガスケットの幅を小さく設定すれば、搭載領域の減少率を小さく抑えることができる。しかしながら、ガスケットの幅を小さく設定した場合には、成形誤差や組み立て誤差の影響により、ベース部材とカバー部材との間の水密性を確保できない事態を招来する恐れがある。
【0005】
一方、カバー部材の開口端縁にガスケットを配設することも考えられる。しかしながら、この場合には、カバー部材における開口端縁の板厚寸法が増大するため、結局、上述の問題を解決するには至らない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、外形寸法の大型化を招来することなく、ベース部材とカバー部材との間の水密性及び部品の搭載領域を確保することのできる筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る筐体は、部品搭載面に部品を搭載する部品搭載部を有したベース部材と、前記部品搭載部との接合部にシール手段を介在させた状態で前記ベース部材を覆うことにより、前記ベース部材との間に部品の収容空間を確保するカバー部材とを備えた筐体であって、前記シール手段は、前記部品搭載面の縁部
であって、前記カバー部材によって前記ベース部材を覆った場合に前記カバー部材よりも内方となる位置に開口する部分を有したガスケット収容溝と、外表面が前記部品搭載面以下となる状態で前記ガスケット収容溝の内部に配設したガスケットと、前記カバー部材において前記ベース部材のガスケット収容溝に対応する部位に形成し、前記ベース部材を覆った場合に前記ガスケット収容溝に進入することにより、前記ガスケットの外表面を押圧する突条片部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上述した筐体において、前記ベース部材には、前記ガスケット収容溝の外縁側に位置する部位に外縁壁部を設ける一方、前記カバー部材には、前記ベース部材の外縁壁部を収容する壁収容溝を形成し、前記壁収容溝の内縁側に位置する内縁壁部を前記突条片部として機能させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述した筐体において、前記ガスケット収容溝には、前記突条片部が進入した際の前記ガスケットの弾性変形を許容する変形用空間部を確保したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上述した筐体において、前記ベース部材の外縁壁部には、外縁側に位置する部位に前記部品搭載面から離隔するに従って漸次内縁側に傾斜するガイド面を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベース部材の部品搭載面にガスケット収容溝を形成し、その内部に外表面が部品搭載面以下となるようにガスケットを配設しているため、ガスケットを覆う位置にも部品を搭載することが可能となり、外形寸法の大型化を招来することなく所望となる部品の搭載領域を確保することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態である筐体の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した筐体の要部を拡大して示す断面斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した筐体の要部を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した筐体のベース部材とカバー部材とを接合させる過程を順に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る筐体の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1及び
図2は、本発明の実施の形態である筐体を示したものである。ここで例示する筐体1は、内部に電子部品等、各種構成部品Pを搭載してインバータ等の電子機器を構成するもので、ベース部材10とカバー部材20とを備えて構成してある。
【0015】
ベース部材10は、内表面が部品搭載面11aとなる矩形板状の部品搭載板部(部品搭載部)11と、部品搭載板部11の一端部に設けたコンジットフレーム部12と、部品搭載板部11の外表面に設けた複数の冷却フィン13とを備えている。部品搭載板部11及び冷却フィン13は、アルミニウムやアルミニウム合金等の比較的熱伝導率の大きな金属によって一体に成形してある。コンジットフレーム部12は、コンジットコネクタ(図示せず)を挿通させるための装着孔12aを有した板状部分であり、部品搭載板部11の一端部内表面から冷却フィン13とは反対側に向けて突出するように設けてある。図からも明らかなように、コンジットフレーム部12は、部品搭載板部11から離隔するに従って幅が漸次小さくなる台形状に形成してある。
【0016】
カバー部材20は、ベース部材10との間に部品Pを収容するための収容空間を確保した状態でベース部材10の内表面を覆うものである。本実施の形態では、基準壁部21、端壁部22、一対の側壁部23,23を射出成形によって一体成形したカバー部材20を適用している。基準壁部21は、ベース部材10の部品搭載板部11に対向して配置される部分であり、部品搭載板部11よりもわずかに幅の小さい矩形状に形成してある。端壁部22は、ベース部材10のコンジットフレーム部12に対向して配置される台形状部分であり、基準壁部21の一端縁から基準壁部21の内表面側に向けて屈曲して延在している。一対の側壁部23,23は、基準壁部21の両側縁からそれぞれ基準壁部21の内表面側に向けて屈曲して延在した部分である。これら一対の側壁部23,23は、基準壁部21から離隔するに従って相互間隔が漸次増加するように延在しており、延在端部の相互間がベース部材10の部品搭載板部11とほぼ同じ幅となるように構成してある。
【0017】
図2及び
図3に示すように、ベース部材10の部品搭載板部11と、カバー部材20の端壁部22及び一対の側壁部23,23との間には、シール手段30が構成してある。シール手段30は、ベース部材10の部品搭載板部11と、カバー部材20の端壁部22及び一対の側壁部23,23との間に水密性を確保するためのもので、部品搭載板部11の部品搭載面11aにガスケット収容溝31と外縁壁部32とを設ける一方、端壁部22及び側壁部23,23には壁収容溝33を設けて構成してある。
【0018】
ガスケット収容溝31は、部品搭載面11aの縁部に沿って形成した一連の凹所であり、ガスケット装着部31a及び変形用空間部31bを有している。ガスケット装着部31aは、横断面が矩形状を成すもので、
図2〜
図4に示すように、その内部にガスケット34を収容している。ガスケット34は、横断面が矩形に構成したもので、ガスケット装着部31aに配置した場合に、幅方向においてはガスケット装着部31aに嵌合する一方、上方に位置する外表面34aが部品搭載面11aよりも下方に位置する寸法のものを適用している。変形用空間部31bは、ガスケット装着部31aよりも内縁側となる位置に形成した凹所であり、ガスケット34の外表面34aが押圧された場合にガスケット34の変形部分を収容する機能を有している。
【0019】
外縁壁部32は、部品搭載面11aにおいてガスケット収容溝31よりも外縁側に位置する部位から立設した一連の突出部分である。この外縁壁部32には、外縁側に位置する部位にガイド面32aが形成してある。ガイド面32aは、部品搭載面11aから離隔するに従って漸次内縁側に位置するように形成したものである。
【0020】
壁収容溝33は、端壁部22及び側壁部23,23の延在端部に形成した外壁部33aと内壁部(突条片部)33bとの間に位置する一連の凹所であり、ベース部材10の外縁壁部32を収容することのできる寸法に形成してある。図からも明らかなように、壁収容溝33を構成する外壁部33aは一様な板厚を有するように構成してある一方、内壁部33bは壁収容溝33の内表面が開口に向けて漸次内縁側に傾斜しており、延在端部に向けて漸次板厚が小さくなるように構成してある。
【0021】
尚、図には明示していないが、基準壁部21及び側壁部23,23とコンジットフレーム部12との接合部には、図示していない別のシール手段が設けてあり、互いの間の水密性が確保してある。
【0022】
上記のように構成した筐体1では、
図4に示すように、カバー部材20における端壁部22の延在端部及び一対の側壁部23,23の延在端部をそれぞれ部品搭載板部11に接合させた状態でベース部材10を覆うことにより、部品搭載板部11の内表面との間に部品Pの収容空間を確保したインバータの筐体1を構成することになる。この間、カバー部材20を射出成形した際の寸法誤差等により、例えば側壁部23の延在端部が部品搭載面11aの縁部よりも内縁側に位置していたとしても、側壁部23の延在端部に形成した外壁部33aがベース部材10のガイド面32aに当接することによって外縁側に案内されることになり、壁収容溝33の内部に確実に外縁壁部32が収容されることになる。
【0023】
壁収容溝33の内部に外縁壁部32が収容された状態においては、端壁部22及び側壁部23,23の延在端部に形成した内壁部33bが部品搭載面11aに形成したガスケット収容溝31に進入し、内壁部33bの先端によってガスケット34の外表面34aが押圧されるため、端壁部22及び側壁部23,23と部品搭載板部11との間の水密性が確保される。しかも、外表面34aが押圧されたガスケット34は、外表面34aを部品搭載面11aから突出することなく、ガスケット収容溝31の変形用空間部31bに膨出する形で弾性的に変形することになる。従って、上述したシール手段30を適用する筐体1においては、
図3の二点鎖線で示すように、ガスケット34の外表面34aに対向する領域をも部品Pの搭載領域として算入することが可能である。これにより、部品搭載板部11の外形寸法を大型化せずとも、所望となる部品Pの搭載領域を確保することができるようになる。
【0024】
加えて、この筐体1においては、ガスケット34の幅を大きく確保した場合にも、部品Pの搭載領域に影響を与えない。従って、仮に成形誤差や組み立て誤差が発生した場合にも、端壁部22及び側壁部23,23によってガスケット34が確実に押圧され、ベース部材10とカバー部材20との間の水密性を確保することが可能である。
【0025】
尚、上述した実施の形態では、電子機器の筐体1を例示しているが、必ずしも電子機器である必要はない。また、ベース部材10がコンジットフレーム部12を備えたものを例示しているが、ベース部材10は部品搭載面11aを有するものであれば、コンジットフレーム部12を備えている必要はない。
【0026】
さらに、上述した実施の形態では、ガスケット34の外表面34aが部品搭載面11aよりも低くなるようにガスケット34を配設するようにしているが、部品搭載面以下であればよく、例えばガスケットの外表面が部品搭載面と同一平面上となるように配置しても構わない。
【符号の説明】
【0027】
1 筐体
10 ベース部材
11 部品搭載板部
11a 部品搭載面
20 カバー部材
22 端壁部
23 側壁部
30 シール手段
31 ガスケット収容溝
31b 変形用空間部
32 外縁壁部
32a ガイド面
33 壁収容溝
33a 外壁部
33b 内壁部
34 ガスケット
34a 外表面
P 部品