(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5672026
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
H01L23/12 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-14046(P2011-14046)
(22)【出願日】2011年1月26日
(65)【公開番号】特開2012-156305(P2012-156305A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2014年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】菅原 正吉
【審査官】
木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−107889(JP,A)
【文献】
特開2000−022046(JP,A)
【文献】
特開2005−093603(JP,A)
【文献】
特開平08−153971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12−23/25
H05K 3/00− 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボスが設けられた成型部品と、固定穴が形成された基板とを有し、該基板の一面に前記成型部品を搭載すると共に、前記固定穴に挿入された前記ボスの先端部を前記基板の他面側でかしめることにより前記成型部品を前記基板に固定した電子装置であって、
前記基板を、前記一面を有する第1の基板部と、前記他面を有する第2の基板部とを積層した構成とし、
前記固定穴を、前記第1の基板部に形成された第1の穴部と、前記第2の基板部に形成された第2の穴部とにより構成し、
前記第1の穴部の直径を前記第2の穴部の直径よりも小さく設定すると共に、前記第1の基板部と前記第2の基板部とを積層する際に前記第1の穴部と前記第2の穴部とが同心的となるよう構成したことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記第1の基板部と前記第2の基板部とをプリプレグで接合したことを特徴とする請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
前記成型部品は樹脂成型されており、前記ボスを一体的に成型された構成であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子装置。
【請求項4】
前記第2の基板部の厚さは、前記ボスのかしめ後の高さよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項5】
前記基板の前記他面にはランドが形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子装置に係り、特に成型部品に設けられたボスを基板の固定穴に挿入した後にかしめることにより成型部品を基板に固定した電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、基板に樹脂成型部品を取り付けた構造の電子装置が知られている。この構造の電子装置では、成型部品を基板に固定する必要がある。成型部品を基板に固定する方法としては、ねじを用いた固定方法や、樹脂成型品にボスを形成すると共にこのボスを基板に形成された穴に挿通した後に熱かしめ又は超音波かしめすることにより固定する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、この種の電子装置には、マザーボード等に表面実装されるものがある。この電子装置の一例を
図6〜
図9に示す。
【0004】
電子部品1は、成型部品2と基板3とにより構成されており、成型部品2に立設されたボス5,6を基板3に熱かしめ又は超音波かしめすることにより、成型部品2を基板3に固定する構成とされている。また、電子部品1はマザーボード等に表面実装されるため、基板3の実装面3bにはマザーボード等に電気的に接続するためのランド9が形成されている。
【0005】
しかしながら、基板3の実装面3bにランド9が形成された構成では、基板3と成型部品2とをネジ止め或いは単に熱かしめ又は超音波かしめにより固定する方法では、ネジの頭及びかしめ部分が基板から突出してしまい、これが邪魔となって電子部品1をマザーボード等に表面実装することができなくなってしまう。
【0006】
このため、
図7及び
図8に示すように基板3に大径穴7a,8aと小径穴7b,8bを加工することによりザグリ穴7,8を形成し、ボス5.6を小径穴7b,8bに挿通した後に大径穴7a,8a内で熱かしめ又は超音波かしめすることが行われている。これにより、熱かしめ又は超音波かしめされたボス5,6の先端部のボスかしめ部5a,6aは、大径穴7a,8aの内部に位置することとなり、基板3の実装面3bから突出するようなことはない。よって、ザグリ穴7,8を設けることにより、電子部品1を確実にマザーボード等に表面実装することが可能となる。
【0007】
従来、このザグリ穴7,8は、先ず小径穴7b,8bを穴加工した後、ザグリ用カッター等を用いた機械加工により大径穴7a,8aを形成することが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−45382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、電子部品1の軽薄短小化が図られ、これに伴い基板3の薄型化も図られている。例えば、
図6〜
図9に示した電子部品1に用いられる基板3は、その厚さが0.5mm程度である。
【0010】
このような薄い基板3に対して機械加工によりザグリ穴7,8を形成する場合、特にザグリ用カッターで大径穴7a,8aを加工することが困難で加工精度が低下してしまうという問題点があった。
【0011】
また機械加工時において、大径穴7a,8aと小径穴7b,8bとの境界部に応力が集中してしまい、この部位にクラック等が発生するおそれがあった。更に、ザグリ穴加工は貫通孔を形成加工に比べて加工工程が複雑で、加工コストが上昇してしまうという問題点もあった。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、加工精度の向上、加工工程の簡単化、及び製品コストの低減を図りうる電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題は、第1の観点からは、
ボス(15,16)が設けられた成型部品(11)と、固定穴(17,18)が形成された基板(12)とを有し、該基板(12)の一面(12a)に前記成型部品(11)を搭載すると共に、前記固定穴(17,18)に挿入された前記ボス(15,16)の先端部を前記基板(12)の他面(12b)側でかしめることにより前記成型部品(11)を前記基板(12)に固定した電子装置であって、
前記基板(12)を、前記一面(12a)を有する第1の基板部(13)と、前記他面(12b)を有する第2の基板部(14)とを積層した構成とし、
前記固定穴(17,18)を、前記第1の基板部(13)に形成された第1の穴部(17a,18a)と、前記第2の基板部(14)に形成された第2の穴部(17b,18b)とにより構成し、
前記第1の穴部(17a,18a)の直径(D1,D3)を前記第2の穴部(17b,18b)の直径(D2,D4)よりも大きく設定すると共に、前記第1の基板部(13)と前記第2の基板部(14)とを積層する際に前記第1の穴部(17a,18a)と前記第2の穴部(17b,18b)とが同心的となるよう構成したことを特徴とする電子装置により解決することができる。
【0014】
尚、上記参照符号は、あくまでも参考であり、これによって、特許請求の範囲の記載が限定されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
開示の電子装置によれば、第1及び第2の穴部の直径が異なることにより第1及び第2の穴部により構成される固定穴はザグリ穴として機能し、かつ、第1及び第2の穴部はいずれも貫通孔であるため容易に加工することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態である電子部品の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態である電子部品を構成する基板の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態である電子部品の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態である電子部品を構成する基板の固定穴近傍を拡大した断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態である電子部品の固定穴近傍を拡大した断面図である。
【
図6】
図6は、従来の一例である電子部品の斜視図である。
【
図7】
図7は、従来の一例である電子部品を構成する基板の斜視図である。
【
図8】
図8は、従来の一例である電子部品を構成する基板の固定穴近傍の拡大した断面図である。
【
図9】
図9は、従来の一例である電子部品のザグリ穴近傍を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0018】
図1〜
図5は、本発明の一実施形態である電子部品10を説明するための図である。
図1は電子部品10の斜視図であり、
図2は電子部品10を構成する基板12の斜視図であり、
図3は電子部品10の分解斜視図であり、
図4は基板12の要部断面図であり、
図5は電子部品10の要部断面図である。
【0019】
電子部品10は、成型部品11及び基板12を有した構成とされている。この電子部品10は、図示しないマザーボートに表面実装されるものである。
【0020】
成型部品11は樹脂成型されており、内部の所定の電子回路等が配設されている。本実施形態において、成型部品11は特にその機能を特定されるものではなく、半導体部品,光学部品,スイッチング部品等の種々の電子部品を適用することができる。
【0021】
また、成型部品11の第1の基板部13と対峙する対峙面11aには、基板12に固定する際に熱かしめ又は超音波かしめされる複数のボス15,16が一体的に形成されている(
図3参照)。本実施形態では、ボス15とボス16はその直径が異なっているが、成型部品11に形成されるボスの形状及び配設数は適宜選定することが可能である。
【0022】
また、ボス15,16の直径は、後述する第1の穴部17a,18aの直径よりも小さく設定されている。更に、ボス15,16の対峙面11aからの突出高さは、ボス15,16が熱かしめ又は超音波かしめされることにより形成されるボスかしめ部15a,16aが、後述する第2の穴部17b,18bの高さよりも低くなるよう設定されている。
【0023】
基板12は、本実施形態では平面視で成型部品11と略同じ外形を有している。基板12は、第1の基板部13と第2の基板部14とを積層した構成とされている。第1の基板部13は、成型部品11が搭載される搭載面12aを有している。また第2の基板部14はランド20が形成されており、電子部品10をマザーボードに実装する際の実装面12bを有している。
【0024】
この第1の基板部13と第2の基板部14は、接合部材を用いて接合されることにより基板12を構成する。本実施形態では、この第1の基板部13と第2の基板部14とを接合する接合部材としてプリプレグ19を用いている。
【0025】
プリプレグ19は、熱可塑性樹脂にガラス繊維を含浸させた構成とされている。そして、第1の基板部13と第2の基板部14との間にプリプレグ19を介装した状態で加熱加圧することにより、第1の基板部13と第2の基板部14は接合され、これにより第1の基板部13と第2の基板部14を一体的に積層した基板12が形成される。
【0026】
尚,本実施形態では第1の基板部13及び第2の基板部14は、いずれもガラス−エポキシ基板により形成されている。しかしながら、各基板部13,14の材質はこれに限定されるものではなく、他の基板材料を用いることも可能である。
【0027】
また、基板12は、固定穴17及び固定穴18が形成されている。固定穴17の形成位置は成型部品11に突出形成されたボス15の形成位置に対応するよう構成されおり、固定穴18は成型部品11に突出形成されたボス16の形成位置に対応するよう構成されている。
【0028】
この固定穴17,18の構成について、
図2〜
図5を用いて更に詳細に説明する。尚、
図4及び
図5は基板12を固定穴17の形成位置で切断した断面図であるが、固定穴17の構造及び固定穴18の構造は直径寸法が異なる点以外は同一構成である。このため、
図4及び
図5では固定穴17の構成の符号のみを示し、固定穴18の構成についてはその符号を括弧書きして示すものとする。
【0029】
この固定穴17は、第1の基板部13に形成された第1の穴部17aと、第2の基板部14に形成された第2の穴部17bとにより構成されている。また、固定穴18は、第1の基板部13に形成された第1の穴部18aと、第2の基板部14に形成された第2の穴部18bとにより構成されている。
【0030】
第1の穴部17a,18aは第1の基板部13に形成された貫通穴であり、また第2の穴部17b,18bは第2の基板部14に形成された貫通穴である。このように、各穴部17a,18a,17b,18bは貫通穴であるため、従来のザクリ穴の形成に比べて容易にかつ低コストで各穴部17a,18a,17b,18bを形成することができる。
【0031】
また、第1の穴部17aの直径(D1)は第2の穴部17b(D2)の直径よりも小さく設定(D1<D2)されており、第1の穴部18aの直径(D3)は第2の穴部18bの直径(D4)よりも小さく設定(D3<D4)されている。この第1の穴部17aと第2の穴部17b、及び第1の穴部18aと第2の穴部18bの直径を異ならせるのは、貫通穴である各穴部17a,18a,17b,18bを加工する際のドリル径を変更することにより容易に行うことができる。
【0032】
尚、第1の穴部17a,18aの直径はボス15,16の直径に対応するよう設定されており、具体的には第1の穴部17aの直径はボス15を挿通しうる直径に設定されおり、第1の穴部18aの直径はボス16を挿通しうる直径とされている。
【0033】
前記のように第1の基板部13と第2の基板部14は、プリプレグ19を用いて接合されることにより積層され、これにより基板12を構成する。この第1及び第2の基板部13,14を積層する際、第1の穴部17aと第2の穴部17b及び第1の穴部18aと第2の穴部18bとが同心的となるよう(中心位置が一致するように)構成されている。
【0034】
尚、この積層処理の際、プリプレグ19には第2の基板部14に形成された第2の穴部17b,18bと同等又は同等以上大きな穴が形成されており、よって固定穴17,18内にプリプレグ19が露呈しないような構成とする。
【0035】
上記のように固定穴17,18は、直径が異なる第1の穴部17a,18aと第2の穴部17b,18bとが重なることにより構成されているため段差を有した穴となる。従って、固定穴17,18は、ザグリ穴と実質的に等しい構造となる。
【0036】
上記構成とされた基板12に成型部品11を固定するには、先ず成型部品11に形成されたボス15,16を固定穴17,18に挿入することにより成型部品11を基板12の搭載面12aに搭載する。次に、ボス15,16の第1の穴部17a,18aから突出した先端部を基板12の他面側(具体的には、第1の穴部17a,18aと第2の穴部17b,18bとの間の段差部分)で熱かしめ又は超音波かしめすることにより、
図5に示すようにボスかしめ部15a,16aを形成する。
【0037】
ボスかしめ部15a,16aは、ボス15,16が熱かしめ又は超音波かしめされることにより、第1の穴部17a,18aの直径よりも大きくなる。よって、ボスかしめ部15a,16aが固定穴17,18から抜け出すことはなく、成型部品11は基板12に固定された構成となる。
【0038】
この際、第2の基板部14の厚さH1(プリプレグ19の厚さを含む)は、ボスかしめ部15a,16aの高さH2よりも大きくなるよう設定されている(H1>H2)。従って、ボスかしめ部15a,16aが実装面12bから突出するようなことはなく、電子部品10をマザーボード等に実装する際、ボスかしめ部15a,16aがランド20とマザーボードとの接続の邪魔になるようなことはない。
【0039】
上記のように本実施形態に係る固定穴17,18は、ザグリ穴と同等の効果を奏する。また、ザグリ穴と等価の機能を奏する固定穴17,18は、第1の基板部13に形成された貫通穴である第1の穴部17a,18aと、第2の基板部14に形成された貫通穴である第2の穴部17b,18bとを組み合わせて構成されている。よって、固定穴17,18を容易にかつ低コストで形成することができる。
【0040】
また、第2の穴部17b,18bの高さH1は、ボスかしめ部15a,16aが実装面12bから突出しないよう精度良く定める必用があるが、本実施形態に係る電子部品10では、この第2の穴部17b,18bの高さH1は第2の基板部14とプリプレグ19の厚さにより定まるため、容易に高精度に定めることができる。よって、ボスかしめ部15a,16aの搭載面12aからの突出を確実に防止することができる。
【0041】
尚、成型部品11とランド20は電気的に接続する必要があるが、第1の基板部13、第2の基板部14、及びプリプレグ19には図示しないビア及び配線層が形成されており、これらにより成型部品11とランド20は電気的に接続された構成とされている。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0043】
10 電子部品
11 成型部品
12 基板
12a 搭載面
12b 実装面
13 第1の基板部
14 第2の基板部
15,16 ボス
15a,16a ボスかしめ部
17,18 固定穴
17a,18a 第1の穴部
17b,18b 第2の穴部
19 プリプレグ
20 ランド