(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
フィールド機器は、流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントや工場に設置される機器である。近年においては、国際計測制御学会(ISA:International Society of Automation)で策定されたインダストリアル・オートメーション用無線通信規格であるISA100.11aに準拠して無線により各種信号の送受信を行うフィールド機器(無線フィールド機器)が実現されている。
【0003】
以上の無線フィールド機器を管理する機器管理システムは、複数の無線フィールド機器、ゲートウェイ、及び管理装置等から構成される通信システムを基礎として構築される。ここで、ゲートウェイは、管理装置が接続される有線ネットワークと無線フィールド機器が接続される無線ネットワークとを接続するとともに、無線ネットワークにおける無線帯域の確保等を行って無線フィールド機器と管理装置との間で行われる通信の制御を行う装置である。管理装置は、例えば機器管理システムの管理者によって操作され、管理者の指示に応じて、無線フィールド機器で測定された測定データの収集や無線フィールド機器に対するパラメータの設定等を行う装置である。
【0004】
以上の機器管理システムにおける管理装置と無線フィールド機器との間の通信は、無線ネットワークにおける上りの無線経路の無線帯域と下りの無線経路の無線帯域の双方がゲートウェイによって確保された状態で行われる。ここで、下りの無線経路とは、管理装置(ゲートウェイ)から無線フィールド機器に向かう無線経路であり、上りの無線経路とは、無線フィールド機器から管理装置(ゲートウェイ)に向かう無線経路である。尚、一度確保された無線帯域は、意図的に無線経路を切断する処理を行わなければ開放されない。
【0005】
以下の特許文献1には、無線通信が可能な通信中継器をフィールド機器に接続して、無線通信が可能な任意の場所からフィールド機器へのアクセスを可能にする通信システムが開示されている。また、以下の特許文献2には、フィールド機器が備える信号変換器内に携帯電話通信機能を設けることによって、フィールド機器との間の長距離のデータ通信を可能とする通信システムが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した通信システムの一部をなすゲートウェイは、無線フィールド機器によって指示される転送レートを示すパラメータ(Comitted Burst)の値に応じて上りの無線経路の無線帯域を確保し、管理装置によって指示される同パラメータの値に応じて下りの無線経路の無線帯域を確保している。管理装置によって指示されるパラメータの値は、通信すべきデータの種類等に応じて管理装置によって適宜変更される。これに対し、無線フィールド機器によって指示されるパラメータの値は固定されており、通信すべきデータの種類等に応じて変更することはできない。
【0008】
このように、管理装置によって指示されるパラメータは値が可変であって、無線フィールド機器によって指示されるパラメータは値が固定である大きな理由は、無線フィールド機器の電源として電池を使用しているためであると考えられる。詳細を述べると以下の通りである。
【0009】
無線フィールド機器は、電源として電池(バッテリ)が用いられており、電池の消費を低減して動作時間を長くするために、必要最低限のタイミングでのみ無線通信を行い、残りの殆どが無線通信を行わない休止状態とされる。上りの無線経路について単純に広い無線帯域を確保して転送レートを上げてしまうと、休止状態が減って電池の消費が多くなり、頻繁に電池を交換しなければならないという問題が生ずる。
【0010】
以上の通り、無線経路については、闇雲に広い無線帯域を確保して転送レートを常時上げてしまうと上述した問題が生ずるが、転送レートを一時的に上げた方が管理を行う上で望ましい場合がある。例えば、複数の無線フィールド機器に対して大量のパラメータ設定を行う場合や、無線フィールド機器に設けられたファームウェアのアップグレード等を行う場合である。このような場合には、下りの無線経路を介して送信されるデータの量のみならず、上りの無線経路を介して送信されるデータの量も増大するため、上りの無線経路と下りの無線経路の双方の転送レートが高い方が短時間で処理を終えることが可能になり管理上好ましい。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、管理装置と無線フィールド機器との間における下りの無線経路のみならず上りの無線経路についても転送レートを自由に設定することが可能な通信制御装置、通信制御方法、及び通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の通信制御装置は、無線フィールド機器(1a〜1e)と該無線フィールド機器の管理を行う管理装置(4)との間で行われる無線ネットワーク(N1)を介した通信を制御する通信制御装置(32)において、前記管理装置から出力されて、前記管理装置から前記無線フィールド機器に向かう下りの無線経路において確保すべき無線帯域を示す転送レート情報を記憶する記憶部(32a)と、前記記憶部に記憶された前記転送レート情報に基づいて、前記下りの無線経路における無線帯域を確保するとともに、前記無線フィールド機器から前記管理装置に向かう上りの無線経路における無線帯域を確保する無線帯域確保部(32b)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、管理装置から出力された下りの無線経路において確保すべき無線帯域を示す転送レート情報が記憶部に記憶され、この記憶部に記憶された転送レート情報に基づいて、下りの無線経路における無線帯域が確保されるとともに、上りの無線経路における無線帯域が確保される。
また、本発明の通信制御装置は、前記記憶部が、前記下りの無線経路における送信元及び送信先を示す情報と、前記転送レート情報とを対応させて記憶し、前記無線帯域確保部が、前記記憶部に記憶された情報のうち、前記上りの無線経路における送信元及び送信先が前記記憶部に記憶された送信先及び送信元にそれぞれ一致する情報に対応する転送レート情報に基づいて、前記上りの無線経路における無線帯域を確保することを特徴としている。
また、本発明の通信制御装置は、前記無線帯域確保部が、前記上りの無線経路及び前記下りの無線経路の双方の無線帯域が既に確保されている状態で、前記管理装置から新たな転送レート情報が出力された場合には、当該新たな転送レート情報に基づいて、前記上りの無線経路及び前記下りの無線経路の双方の無線帯域を変更することを特徴としている。
また、本発明の通信制御装置は、前記無線帯域確保部が、前記上りの無線経路及び前記下りの無線経路の双方の無線帯域が既に確保されている状態で、前記管理装置から新たな転送レート情報が出力された場合には、前記上りの無線経路及び前記下りの無線経路の双方で既に確保されている無線帯域を開放してから、当該新たな転送レート情報に基づいて、前記上りの無線経路及び前記下りの無線経路の双方の無線帯域を新たに確保することを特徴としている。
本発明の通信制御方法は、無線フィールド機器(1a〜1e)と該無線フィールド機器の管理を行う管理装置(4)との間で行われる無線ネットワーク(N1)を介した通信を制御する通信制御方法において、前記管理装置から出力された、前記管理装置から前記無線フィールド機器に向かう下りの無線経路において確保すべき無線帯域を示す転送レート情報を記憶する第1ステップと、前記第1ステップで記憶された前記転送レート情報に基づいて、前記下りの無線経路における無線帯域を確保する第2ステップと、前記第1ステップで記憶された前記転送レート情報に基づいて、前記無線フィールド機器から前記管理装置に向かう上りの無線経路における無線帯域を確保する第3ステップとを有することを特徴としている。
本発明の通信システムは、無線ネットワーク(N1)に接続される無線フィールド機器(1a〜1e)と、該無線フィールド機器の管理を行う管理装置(4)とを備える通信システム(CS)において、前記無線フィールド機器と前記管理装置との間で行われる前記無線ネットワークを介した通信を制御する上記の何れかに記載の通信制御装置を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、管理装置から出力された下りの無線経路において確保すべき無線帯域を示す転送レート情報を記憶部に記憶し、この記憶部に記憶した転送レート情報に基づいて、下りの無線経路における無線帯域を確保するとともに、上りの無線経路における無線帯域を確保しているため、管理装置と無線フィールド機器との間における下りの無線経路のみならず上りの無線経路についても転送レートを自由に設定することが可能であるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による通信制御装置、通信制御方法、及び通信システムについて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による通信システムの全体構成を示すブロック図である。
図1に示す通り、本実施形態の通信システムCSは、I/Oデバイス1a〜1e(無線フィールド機器)、ルーティングデバイス2a,2b、ゲートウェイ3、及び管理装置4を備えており、ゲートウェイ3の制御によってI/Oデバイス1a〜1eと管理装置4との間で無線ネットワークN1を介した通信が可能である。尚、
図1に示すI/Oデバイス1a〜1e及びルーティングデバイス2a,2bの数は任意である。
【0016】
I/Oデバイス1a〜1eは、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器等のプラントや工場に設置される無線フィールド機器であり、インダストリアル・オートメーション用無線通信規格であるISA100.11aに準拠した無線通信を行う。これらI/Oデバイス1a〜1eの動作は、管理装置4がI/Oデバイス1a〜1eに対して各種のパラメータを設定することにより制御される。また、また、I/Oデバイス1a〜1eで得られた測定データはゲートウェイ3を介して管理装置4に収集される。
【0017】
ルーティングデバイス2a,2bは、I/Oデバイス1a〜1e及びゲートウェイ3との間でISA100.11aに準拠した無線通信を行い、I/Oデバイス1a〜1eとゲートウェイ3との間で送受信されるデータを中継する。これらI/Oデバイス1a〜1e、ルーティングデバイス2a,2b、及びゲートウェイ3が互いに無線接続されることにより、スター・メッシュ状の無線ネットワークN1が形成される。尚、ルーティングデバイス2a,2bに代えて、ルーティングデバイス2a,2bの機能(中継機能)を備えるI/Oデバイスが設けられていても良い。
【0018】
ゲートウェイ3は、ゲートウェイ部31、システムマネージャ部32(通信制御装置)、及びセキュリティマネージャ部33を備えており、通信システムCSで行われる通信の制御を行う。ゲートウェイ部31は、I/Oデバイス1a〜1e等によって形成される無線ネットワークN1と、管理装置4が接続される有線のプラントネットワークN2とを接続し、I/Oデバイス1a〜1e等と管理装置4との間で送受信される各種データの中継を行う。このゲートウェイ部31は、上述した無線通信規格ISA100.11aに準拠した無線通信を行う。
【0019】
システムマネージャ部32は、I/Oデバイス1a〜1eと管理装置4との間で行われる無線ネットワークN1を介した通信を制御する。具体的に、システムマネージャ部32は、管理装置4からI/Oデバイス1a〜1eに向けたデータ送信が行われる前に、管理装置4からI/Oデバイス1a〜1eに向かう無線経路(以下「下りの無線経路」という)の無線帯域を確保する。また、逆にI/Oデバイス1a〜1eから管理装置4に向けたデータ送信が行われる前に、I/Oデバイス1a〜1eから管理装置4に向かう無線経路(以下「上りの無線経路」という)の無線帯域を確保する。
【0020】
システムマネージャ部32は、メモリ32a(記憶部)及び無線帯域確保部32bを備えており、無線帯域確保部32bが必要に応じてメモリ32aに記憶されるコントラクトテーブル(Contract Table)を参照して、送信元及び送信先が互いに逆になる下りの無線経路及び上りの無線経路の無線帯域が同じになるように無線帯域の確保を行う。これにより、例えば複数のI/Oデバイス1a〜1eに対して大量のパラメータ設定を行う場合や、I/Oデバイス1a〜1eに設けられたファームウェアのアップグレード等を行う場合等において、下りの無線経路に加えて上りの無線経路の転送レートを自由に設定することが可能になる。
【0021】
メモリ32aに記憶されるコントラクトテーブルは、無線経路を介して送信されるデータの送信元及び送信先を示す情報と、その無線経路において確保すべき無線帯域を示す転送レートを示す転送レートパラメータ(Comitted Burst:転送レート情報)とが対応付けられたテーブルである。
図2は、本発明の一実施形態において用いられるコントラクトテーブルの一例を示す図である。
図2に例示するコントラクトテーブルは、無線ネットワークN1で確保される無線経路毎に、経路番号、通信方向を示す情報、送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号、及び転送レートパラメータが対応付けられている。
【0022】
ここで、本実施形態の通信システムCSを構成する機器(I/Oデバイス1a〜1e、ルーティングデバイス2a,2b、ゲートウェイ3、及び管理装置4)には、IPv6(Internet Protocol Version 6)アドレス等の一意に定まるアドレスが割り当てられており、これらの機器は、同時に複数の機能(アプリケーション)を動作させることが可能である。上記の送信元アドレス及び送信先アドレスは、データの送信元の機器及び送信先の機器をそれぞれ特定するアドレスである。また、上記の送信元ポート番号及び送信先ポート番号は、送信元の機器及び送信先の機器で動作していてデータ送信(送受信)に関わる機能をそれぞれ識別する番号(TLPort番号)である。
【0023】
転送レートパラメータは、正の値及び負の値を取り得る。正の値である場合には、1秒間に送信できるAPDU(Application Protocol Data Unit)の値が規定され、負の値である場合には、1つのAPDUが送信される周期が規定される。例えば、このパラメータの値が「−15」に設定されている場合には15秒間に1回の割合でAPDUを送信するために必要な無線帯域が無線帯域確保部32bによって確保されることとなる。
【0024】
セキュリティマネージャ部33は、システムマネージャ部32の下で、セキュリティの管理を行う装置である。例えば、セキュリティマネージャ部33には、無線ネットワークN1への参入が許可されているI/Oデバイスを示すホワイトリストや、無線ネットワークN1への参入が拒否されているI/Oデバイスを示すブラックリスト等が登録されている。これらのリストの内容を参照して、システムマネージャ部32が無線ネットワークN1に対してI/Oデバイスを参入させるか否かの参入処理を行う。
【0025】
管理装置4は、有線のプラントネットワークN2に接続されており、例えば通信システムCSの管理者によって操作され、管理者の指示に応じて、I/Oデバイス1a〜1eで測定された測定データの収集やI/Oデバイス1a〜1eに対するパラメータの設定等を行う。また、管理装置4は、I/Oデバイス1a〜1eに設けられたファームウェアのアップグレード等を行うことも可能である。この管理装置4は、例えばノート型或いはデスクトップ型のパーソナルコンピュータ等によって実現される。
【0026】
次に、上記構成における通信システムの動作について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による通信システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。尚、以下では、理解を容易にするために、管理装置4がI/Oデバイス1aのパラメータを取得する場合の動作について説明する。また、以下では、初期状態においては、管理装置4からI/Oデバイス1aに向かう下りの無線経路、及び、I/Oデバイス1aから管理装置4に向かう上りの無線経路の双方の無線帯域が確保されていないものとする。
【0027】
まず、I/Oデバイス1aのパラメータ読み出しを要求する旨を示すクライアント要求(Client.Request)が、管理装置4からI/Oデバイス1aに向けて送出される(ステップS10)。尚、このクライアント要求には、管理装置4からI/Oデバイス1aに向かう下りの無線経路において確保すべき無線帯域を示す転送レートパラメータが含まれている。
【0028】
管理装置4からのクライアント要求がゲートウェイ3で受信されると、ゲートウェイ3に設けられたゲートウェイ部31は、管理装置4からI/Oデバイス1aに向かう下りの無線経路の無線帯域が確保されているか否かを判断する。確保されていないと判断した場合には、ゲートウェイ部31はシステムマネージャ部32に対して無線帯域確保の実行要求(Execute.Request)を出力する(ステップS11)。尚、この実行要求には、管理装置4に割り当てられたアドレス(送信元アドレス)及び送信元ポート番号、I/Oデバイス1aに割り当てられたアドレス(送信先アドレス)及び送信先ポート番号、並びにクライアント要求に含まれる転送レートパラメータが含まれている。
【0029】
ゲートウェイ部31からの実行要求を受信すると、システムマネージャ部32は、実行要求に含まれている上記のアドレス、ポート番号、及び転送レートパラメータをメモリ32aのコントラクトテーブルに格納する(ステップS12:第1ステップ)。これにより、例えば
図2に示す経路番号「1」に対応して、「下り」を示す情報、送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号、及び転送レートパラメータ「−1」がコントラクトテーブルに格納される。
【0030】
次いで、システムマネージャ部32の無線帯域確保部32bは、ゲートウェイ部31からの実行要求に含まれる転送レートパラメータ(メモリ32aのコントラクトテーブルに格納された転送レートパラメータ)で示される転送レートが得られるような無線帯域を確保し、管理装置4からI/Oデバイス1aに向かう下りの無線経路に存在する全ての機器に対して無線帯域情報を通知することにより無線帯域の設定を行う。具体的に、無線帯域確保部32bは、ルーティングデバイス2a及びI/Oデバイス1aに対して無線帯域設定(SetContract)を順次行い(ステップS13,S14:第2ステップ)、ゲートウェイ部31に対して実行応答(Execute.Response)を行う(ステップS15:第2ステップ)。
【0031】
無線帯域確保部32bからの実行応答を受信すると、ゲートウェイ部31は、システムマネージャ部32の無線帯域確保部32bで確保された無線帯域を用いて管理装置4からのクライアント要求をI/Oデバイス1aに向けて送信する。このクライアント要求は、まず下りの無線経路に存在するルーティングデバイス2aに送信され(ステップS16)、次いでルーティングデバイス2aからI/Oデバイス1aに送信される(ステップS17)。
【0032】
管理装置4からのクライアント要求を受信すると、I/Oデバイス1aは、クライアント要求で指示されたパラメータの読み出しを行って、読み出したパラメータが含まれるクライアント応答(Client.Response)を管理装置4に送信する。ここで、I/Oデバイス1aは、クライアント応答を送信するにあたり、I/Oデバイス1aから管理装置4に向かう上りの無線経路の無線帯域が確保されているか否かを判断する。
【0033】
確保されていないと判断した場合には、I/Oデバイス1aはゲートウェイ3のシステムマネージャ部32に対して無線帯域確保の実行要求(Execute.Request)を出力する(ステップS18)。尚、この実行要求には、I/Oデバイス1aに割り当てられたアドレス(送信元アドレス)及び送信元ポート番号、管理装置4に割り当てられたアドレス(送信先アドレス)及び送信先ポート番号、並びに値が固定された転送レートパラメータが含まれている。尚、転送レートパラメータの値は、I/Oデバイス1aの電池の消費を抑えるために、例えば「−15」に固定されている。
【0034】
I/Oデバイス1aからの実行要求を受信すると、システムマネージャ部32の無線帯域確保部32bは、メモリ32aに記憶されたコントラクトテーブルから、上りの無線経路における送信元及び送信先が下りの経路における送信先及び送信元にそれぞれ一致するものを検索する(ステップS19)。具体的には、I/Oデバイス1aからの実行要求に含まれる送信元アドレス及び送信元ポート番号が送信先アドレス及び送信先ポート番号にそれぞれなっており、且つ、I/Oデバイス1aからの実行要求に含まれる送信先アドレス及び送信先ポート番号が送信元アドレス及び送信元ポート番号にそれぞれなっている下りの無線経路をコントラクトテーブルから検索する。
【0035】
例えば、
図2に示す、経路番号「3」に対応している送信元アドレス、送信先アドレス、送信元ポート番号、送信先ポート番号、及び転送レートパラメータ「−15」が含まれる実行要求を、システムマネージャ部32がI/Oデバイス1aから受信したとする。この実行要求に含まれる送信元アドレス及び送信先アドレスは経路番号「1」に対応している送信先アドレス及び送信元アドレスにそれぞれ一致しており、且つ、送信元ポート番号及び送信先ポート番号は経路番号「1」に対応している送信先ポート番号及び送信元ポート番号にそれぞれ一致している。システムマネージャ部32の無線帯域確保部32bは、このような関係にある下りの無線経路を検索する。
【0036】
以上の関係にある下りの無線経路が検索されると、システムマネージャ部32の無線帯域確保部32bは、検索された下りの無線経路における転送レートパラメータで示されている転送レートが得られるような無線帯域を、上りの無線経路についても確保する。つまり、I/Oデバイス1aから受信した実行要求に含まれる転送レートパラメータ(値が「−15」に固定されたパラメータ)に拘わらず、無線帯域確保部32bは、
図3に示す経路番号「1」に対応している転送レートパラメータの値「−1」に基づいて上りの無線経路の無線帯域を確保する。尚、コントラクトテーブルから以上の関係にある下りの無線経路が検索されなかった場合には、無線帯域確保部32bは、I/Oデバイス1aから受信した実行要求に含まれる値が固定された転送レートパラメータに基づいて上りの無線経路の無線帯域を確保する。
【0037】
無線帯域を確保すると、無線帯域確保部32bは、I/Oデバイス1aから管理装置4に向かう上りの無線経路に存在する全ての機器に対して無線帯域情報を通知することにより無線帯域の設定を行う。具体的に、無線帯域確保部32bは、ルーティングデバイス2a及びゲートウェイ部31に対して無線帯域設定(SetContract)を順次行い(ステップS20,S21:第3ステップ)、I/Oデバイス1aに対して実行応答(Execute.Response)を行う(ステップS22:第3ステップ)。
【0038】
無線帯域確保部32bからの実行応答を受信すると、I/Oデバイス1aは、システムマネージャ部32の無線帯域確保部32bで確保された無線帯域を用いてクライアント応答を管理装置4に向けて送信する。このクライアント応答は、まず上りの無線経路に存在するルーティングデバイス2aに送信され(ステップS23)、次いでルーティングデバイス2aからゲートウェイ部31に送信され(ステップS24)、最終的にゲートウェイ部31から管理装置4に送信される(ステップS25)。
【0039】
以上の通り、本実施形態では、管理装置4から出力されたクライアント要求に含まれる転送レートパラメータ(下りの無線経路において確保すべき無線帯域を示すパラメータ)をゲートウェイ3のシステムマネージャ部32のメモリ32aに記憶し、この転送レートパラメータに基づいて下りの無線経路における無線帯域を確保するとともに、上りの無線経路における無線帯域を確保している。このため、管理装置4と無線フィールド機器1a〜1eとの間における下りの無線経路のみならず上りの無線経路についても転送レートを自由に設定することが可能になる。
【0040】
これにより、管理装置4がI/Oデバイス1a〜1eとの間で一時的に高速通信を行うといった柔軟な運用が可能になる。例えば、I/Oデバイス1a〜1eのファームウェアのアップグレードを行う場合に、下りの無線経路及び上りの無線経路の双方について、転送レートパラメータの値「−1」で示されている転送レートが得られるような無線帯域を確保することで、アップグレードに要する時間を従来の10分の1以下にすることができる。
【0041】
以上、初期状態において管理装置4からI/Oデバイス1aに向かう下りの無線経路、及び、I/Oデバイス1aから管理装置4に向かう上りの無線経路の双方の無線帯域が確保されていない場合の動作について説明した。次に、これら下りの無線経路及び上りの無線経路の無線帯域が既に確保されている状態で、管理装置4から無線帯域を変更すべき旨を示すクライアント要求が送信された場合の動作を説明する。
【0042】
図4,
図5は、本発明の一実施形態による通信システムの他の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図4に示すタイミングチャートは、管理装置4から無線帯域を変更すべき旨を示すクライアント要求が送信された場合に、無線帯域の開放を行わずに無線帯域を変更する動作を示すものであり、
図5に示すタイミングチャートは、無線帯域の開放を行ってから新たに無線帯域を確保する動作を示すものである。尚、これら
図4,
図5において、
図3に示すステップと同じステップについては同じ符号を付している。
【0043】
まず、
図4に示すタイミングチャートにおいて、
図3に示すステップS10と同様に、I/Oデバイス1aのパラメータ読み出しを要求する旨を示すクライアント要求(Client.Request)が、管理装置4からI/Oデバイス1aに向けて送出されたとする(ステップS30)。但し、このクライアント要求に含まれる転送レートパラメータの値が変更されており、既に確保されている無線帯域の変更を指示するものであるとする。
【0044】
管理装置4からのクライアント要求がゲートウェイ3で受信されると、ゲートウェイ3に設けられたゲートウェイ部31は、管理装置4からI/Oデバイス1aに向かう下りの無線経路の無線帯域が確保されているか否かを判断する。また、管理装置4からのクライアント要求に含まれる転送レートパラメータが既に確保されている無線帯域を変更するものであるか否かを判断する。
【0045】
ここでは、上記の転送レートパラメータが既に確保されている無線帯域を変更するものであるため、ゲートウェイ部31は、システムマネージャ部32に対して無線帯域変更の実行要求(Execute.Request)を出力する(ステップS31)。尚、この実行要求にも、管理装置4に割り当てられたアドレス(送信元アドレス)及び送信元ポート番号、I/Oデバイス1aに割り当てられたアドレス(送信先アドレス)及び送信先ポート番号、並びにクライアント要求に含まれる転送レートパラメータが含まれている。
【0046】
ゲートウェイ部31からの実行要求を受信すると、システムマネージャ部32は、実行要求に含まれている上記のアドレス、ポート番号、及び新たな転送レートパラメータをメモリ32aのコントラクトテーブルに格納する(ステップS32)。次いで、システムマネージャ部32の無線帯域確保部32bは、新たな転送レートパラメータで示される転送レートが得られるような無線帯域を確保し、管理装置4からI/Oデバイス1aに向かう下りの無線経路に存在する全ての機器に対して無線帯域情報を通知することにより無線帯域の設定を行う。
【0047】
具体的に、無線帯域確保部32bは、ルーティングデバイス2a及びI/Oデバイス1aに対して無線帯域変更(ModifyContract)を順次行い(ステップS33,S34)、ゲートウェイ部31に対して実行応答(Execute.Response)を行う(ステップS35)。これにより、管理装置4とI/Oデバイス1aとの間における上りの無線経路及び下りの無線経路における無線帯域の双方が変更される。
【0048】
以上の処理が終了すると、管理装置4からのクライアント要求がゲートウェイ部31からI/Oデバイス1aに向けて送信される(ステップS16,S17)。管理装置4からのクライアント要求を受信すると、I/Oデバイス1aは、クライアント要求で指示されたパラメータの読み出しを行って、読み出したパラメータが含まれるクライアント応答(Client.Response)を管理装置4に送信する(ステップS23〜S25)。
【0049】
次に、
図5に示すタイミングチャートにおいて、I/Oデバイス1aのパラメータ読み出しを要求する旨を示すとともに、既に確保されている無線帯域の変更を指示するクライアント要求(Client.Request)が管理装置4からI/Oデバイス1aに向けて送出されたとする(ステップS30)。管理装置4からのクライアント要求がゲートウェイ3で受信されると、ゲートウェイ3に設けられたゲートウェイ部31は、管理装置4からI/Oデバイス1aに向かう下りの無線経路の無線帯域が確保されているか否かを判断する。また、管理装置4からのクライアント要求に含まれる転送レートパラメータが既に確保されている無線帯域を変更するものであるか否かを判断する。
【0050】
ここでは、上記の転送レートパラメータが既に確保されている無線帯域を変更するものであるため、ゲートウェイ部31は、システムマネージャ部32に対して無線帯域開放の実行要求(Execute.Request)を出力する(ステップS41)。これにより、システムマネージャ部32の無線帯域確保部32bは、管理装置4とI/Oデバイス1aとの間の上りの無線経路及び下りの無線経路の各々で確保されている無線帯域を開放する処理を行う。具体的に、無線帯域確保部32bは、ルーティングデバイス2a及びI/Oデバイス1aに対して無線帯域開放(DeleteContract)を順次行い(ステップS42,S43)、ゲートウェイ部31に対して実行応答(Execute.Response)を行う(ステップS44)。
【0051】
無線帯域確保部32bからの実行応答を受信すると、ゲートウェイ部31はシステムマネージャ部32に対して新たな無線帯域確保の実行要求(Execute.Request)を出力する(ステップS11)。そして、実行要求に含まれているアドレス、ポート番号、及び転送レートパラメータがメモリ32aのコントラクトテーブルに格納され(ステップS12)、以下順次、
図3に示したステップS13〜S25の処理が順次行われる。これにより、下りの無線経路及び上りの無線経路の双方について新たな転送レートパラメータで示される転送レートが得られるような無線帯域が確保された上で、管理装置4からのクライアント要求がI/Oデバイス1aに送信されるとともに、I/Oデバイス1aからのクライアント応答が管理装置4に送信される。
【0052】
以上、本発明の一実施形態による通信制御装置、通信制御方法、及び通信システムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、ゲートウェイ部31、システムマネージャ部32、及びセキュリティマネージャ部33がゲートウェイ3に設けられている態様について説明した。しかしながら、ゲートウェイ部31、システムマネージャ部32、及びセキュリティマネージャ部33の機能は、それぞれ別の装置として実現されていても良い。更には、I/Oデバイス1a〜1e及びルーティングデバイス2a,2bと無線通信を行う機能をゲートウェイ部31から切り離して無線アクセスポイント装置として実現しても良い。