(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
投光レンズと受光レンズとが同一の場合、投光した光がレンズで反射され、受光光学系に直接入る(以下、内部反射と呼ぶ)。これは、レンズを無反射コーティングしても反射率はゼロでないこと、サーキュレータなどの非相反分離デバイスでも分離比をゼロにできないことから、不可避の現象である。
【0006】
距離測定器などでは本来の信号光は大変微弱であり、投光パワーに対して10桁パワーダウンすることもあるため、不要な内部反射が本来の信号光を覆い隠すことになる。特に光検出器にはダイナミックレンジに現実的な限界があり、10桁をカバーすることはきわめて困難である。
【0007】
ここで、例えば、感度を高くすると、光検出器が飽和しやすくなり、本来の信号光が検出できなくなる、という問題がある。一方、感度を下げると、必要な信号光が検出できなくなる、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、本発明の目的は、入射光が著しく強い場合があっても、信号光を正しく検出することができる光調整装置、光検出装置、及び距離測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1に記載の光調整装置は、光を受光する光学系と、
前記光学系によって受光された光を分離する光分離部と、前記光分離部によって分離された一方の光を、前記光の強度を示す電気信号に変換する入射光検出部と、作動することにより、入射された光の強度を減衰し又は前記入射された光を遮断する光調整部と、前記入射光検出部により出力された電気信号に基づいて、前記光の強度が所定値以上である場合に、前記光調整部を作動させる制御部と、
前記光分離部によって分離された他方の光が、前記入射光検出部に入射してから前記光調整部を作動させるまでにかかる時間に応じた光路長より長い光路を伝播して前記光調整部へ出射される延滞機構と、を含んで構成されている。
【0010】
請求項2に記載の光調整装置は、請求項1に記載の光調整装置において、環境
温度を検出する環境検出部と、前記入射光検出部により出力された電気信号を、前記環境検出部によって検出された環境
温度が高いほど遅延量が長くなるように遅延させて前記制御部へ出力する遅延部と、を更に含んで構成されている。
【0011】
請求項3に記載の光調整装置は、請求項1又は2に記載の光調整装置において、延滞機構を、光ファイバ又はフォトニック結晶を用いて構成する。
【0012】
請求項4に記載の光調整装置は、請求項1〜請求項3の何れか記載の光調整装置において、光調整部を、半導体光増幅器、又はLN変調器としている。
【0014】
請求項
5に記載の光検出装置は、請求項1〜請求項
4の何れか1項記載の光調整装置と、前記光調整部により出射された光を電気信号に変換する光検出器と、を含んで構成されている。
【0015】
請求項
6に記載の距離測定装置は、請求項1〜請求項
4の何れか1項記載の光調整装置と、前記光調整部により出射された光を電気信号に変換する光検出器と、光パルスを射出する光源及び前記光源を駆動する光源駆動部を備え、前記光源駆動部により前記光源を駆動して、前記光学系を介して測定対象物に対し光パルスを射出する光源ユニットと、前記光源ユニット、前記光調整装置、及び前記光学系を光結合する結合点に設けられ、光パルスの射出時には、前記光源ユニットから射出された光パルスを前記光学系に入射させると共に、測定対象物で反射された反射光パルスの受光時には、前記光学系で受光した光を前記光調整装置に入射させるように、光路を変更する光路変更部と、光パルスが射出されたタイミング及び該光パルスに対応する反射光パルスが受光されたタイミングを取得し、前記光パルスが射出されてから前記反射光パルスを受光するまでに要した応答時間を計算して、計算された応答時間に基づいて測定対象物までの距離を演算する演算部と、を含んで構成されている。
【発明の効果】
【0016】
各請求項に係る発明によれば、以下に記載した効果を奏する。
【0017】
請求項1に係る発明によれば、入射光が著しく強い場合があっても、信号光を正しく検出することができる、という効果がある。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、環境の状態が変化しても、安定して、強い入射光を減衰又は遮断することができる、という効果がある。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、簡易な構成で、入射された光を延滞させることができる、という効果がある。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、簡易な構成で、入射された光を減衰又は遮断することができる、という効果がある。
【0021】
請求項
1に係る発明によれば、信号光に対する影響を与えずに、信号光の強度を検出することができる、という効果がある。
【0022】
請求項
5に係る発明によれば、入射光が著しく強い場合があっても、信号光を正しく検出することができる、という効果がある。
【0023】
請求項
6に係る発明によれば、測定対象物までの距離を安定して測定することができる、という効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る距離測定装置の概略構成図である。第1の実施の形態に係る距離測定装置は、レーザレーダ装置として構成されている。
図1に示すように、レーザレーダ装置10は、レーザ光パルスを出力する光出力部と、測定対象物で反射されたレーザ光パルスを検出する光検出部と、を備えている。また、レーザレーダ装置10は、これら光出力部及び光検出部の外に、装置全体を制御し且つ距離の演算などの各種処理を実行する制御回路24と、測定結果を表示するディスプレイ等の表示部26と、を備えている。表示部26は、制御回路24に接続されている。なお、制御回路24が、演算部の一例である。
【0027】
以下では、レーザ光パルスを単に「光パルス」と称し、測定対象物で反射されたレーザ光パルスを「反射光パルス」と称する。また、後述する「励起光」と区別する意味で、「反射光パルス」を「信号光」と称する場合がある。
【0028】
<光出力部>
まず、レーザ光パルスを出力する光出力部について説明する。
【0029】
光出力部は、光パルスを射出するレーザ光源(光源LD
s)12、光源LD
s12を駆動するLD
s駆動部14、光パルスを増幅する光ファイバ増幅器16、共用光学系としてのレンズ18、及びサーキュレータ20を備えている。LD
s駆動部14は、制御回路24に接続されている。光源LD
s12としては、半導体レーザを用いることができる。例えば、発振波長1.55μmの半導体レーザがアイセーフの観点から好適である。なお、サーキュレータ20が、光路変更部の一例である。
【0030】
サーキュレータ20は、所定方向の光は通すが逆方向の光は遮断する、非相反性を有する光回路素子である。本実施の形態では、A〜Cの3端子を有するサーキュレータ20が用いられる。サーキュレータ20の端子Aには、光ファイバ増幅器16から射出された光パルスを入力する入力用光ファイバ22Aが接続されている。サーキュレータ20の端子Bには、レンズ18に光を射出する入出力用光ファイバ22Bに接続されている。サーキュレータ20の端子Cには、後述する光ファイバ増幅器28に反射光パルスを射出する出力用光ファイバ22Cが接続されている。
【0031】
これらの端子A〜C間では、A→B、B→Cの方向の光は通し、B→A、C→Bの方向の光は遮断する。即ち、光ファイバ増幅器16で増幅された光パルスは、入力用光ファイバ22A及び入出力用ファイバ22Bを伝播してレンズ18に入力される。一方、レンズ18で受光した反射光パルスは、入出力用光ファイバ22B及び出力用ファイバ22Cを伝播して光ファイバ増幅器28に入力される。
【0032】
光ファイバ増幅器16は、入力された光パルスを増幅してレンズ18側に射出する光増幅器である。光ファイバ増幅器16は、増幅用光ファイバ30、励起光源LD
p32、励起光源LD
p32を駆動するLD
p駆動部34、光パルスに対し励起光を合波する光合波器36、光パルスを光合波器36に入力する入力用光ファイバ38A、及び励起光を光合波器36に入力する入力用光ファイバ38Bを備えている。LD
p駆動部34は、制御回路24に接続されている。
【0033】
増幅用光ファイバ30及び後述する増幅用光ファイバ50は、エルビウム(Er)やネオジウム(Nd)等の希土類元素がコアに添加された光ファイバであり、光増幅媒体として使用される。
【0034】
増幅用光ファイバ30の入射端は、光源LD
s12に結合されている。増幅用光ファイバ30の出射端は、入力用光ファイバ38Aを介して光合波器36に結合されている。
【0035】
増幅された光パルスが、レンズ18へ射出されるように、入力用光ファイバ22Aの入射端は光合波器36に結合され、入力用光ファイバ22Aの出射端が、サーキュレータ20の端子Aに接続されている。
【0036】
励起光源LD
p32及び後述する励起光源LD
p52としては、連続発振するCW型の半導体レーザを用いることができる。
【0037】
光合波器36及び後述する光合波器56としては、波長の異なる光パルスと励起光とを合波するために、波長多重化方式(WDM:Wavelength Domain Multiplexing)において光合波回路として使用される、WDMカプラー等を用いることができる。
【0038】
レンズ18は、測定対象物(図示せず)に対して光パルスを照射する照射光学系として機能すると共に、反射光パルスを受光する受光光学系として機能する、共用光学系として設けられている。このように投受光を同軸の構成で行うことにより、振動等の外乱が照射光学系(投光系)及び受光光学系(受光系)に対して同じように加わるため、外乱が相殺されてその影響が小さくなる。
【0039】
また、入出力用光ファイバ22Bから出射された光パルスが、レンズ18へ射出されると共に、レンズ18で受光した反射光パルスが、入出力用光ファイバ22Bに入射されるように、入出力用光ファイバ22Bの出射端は、レンズ18の集光位置に配置されている。
【0040】
ここで光出力部の動作を簡単に説明する。上記の光出力部では、制御回路24からLD
s駆動部14に制御信号が入力される。LD
s駆動部14は、入力された制御信号に基づいて光源LD
s12を駆動する。光源LD
s12からは光パルスが射出される。射出された光パルスは、増幅用光ファイバ30に入射する。また、光源LD
s12から射出された光パルスは、内蔵されたフォトダイオード(図示省略)で検出される。検出信号は、光パルスの出力信号として、制御回路24に入力される。
【0041】
一方、制御回路24からLD
p駆動部34に制御信号が入力される。LD
p駆動部34は、入力された制御信号に基づいて励起光源LD
p32を駆動する。励起光源LD
p32からは励起光が射出される。励起光源LD
p32から出力されたレーザ光は、内蔵されたフォトダイオード(図示省略)で検出される。検出信号は、励起光の出力信号として、制御回路24に入力される。
【0042】
励起光は、入力用光ファイバ38Bを介して光合波器36に入射する。光合波器36により、光パルスに対して励起光が合波される。増幅用光ファイバ30に入射した光パルスは、蓄積されたエネルギーに比例した光増幅率で増幅され、増幅された光パルスが増幅用光ファイバ30から射出される。増幅された光パルスは、光合波器36を通過し、入力用光ファイバ22Aを伝播して、サーキュレータ20を通過し、更に入出力用光ファイバ22Bを伝播して、入出力用光ファイバ22Bの出射端から射出される。射出された光パルスは、レンズ18により測定対象物に照射される。
【0043】
測定対象物に照射される光パルスの強度を大きくすると、光パルスの強度に比例して反射光パルスの強度も大きくなる。これにより、測定可能な距離が長くなり、測定範囲をより遠くまで拡げることができる。また、光パルスを射出する光源LD
s12として、高出力光源を用意する必要がなくなり、低出力光源を選択することも可能となる。一般に、レーザ光源は、高出力になるほど高価で制御が難しくなる。光源の選択肢が拡がることで、コストの低減を図ることが可能となり、装置設計の自由度が向上する。
【0044】
<光検出部>
次に、測定対象物で反射された反射光パルスを検出する光検出部について説明する。
【0045】
光検出部は、レンズ18で集光された反射光パルスを増幅する光ファイバ増幅器28、及び光ファイバ増幅器28で増幅された反射光パルスを検出(光電変換)する光検出器(フォトダイオード:PD)42を備えている。PD42は、制御回路24に接続されている。なお、PD42が、光検出器の一例である。
【0046】
光ファイバ増幅器28は、入力された反射光パルスを増幅して、増幅された反射光パルスを出力する光増幅器である。光ファイバ増幅器28は、増幅用光ファイバ50、励起光を発生させる励起光源(励起光源LD
p)52、励起光源LD
p52を駆動するLD
p駆動部54、励起光と反射光パルスとを合波する光合波器56、励起光を光合波器56に入力する入力用光ファイバ58、及び増幅された反射光パルスを調整する光調整部60を備えている。
【0047】
増幅用光ファイバ50の入射端は、光合波器56に結合されている。増幅用光ファイバ50の出射端は、光調整部60に結合されている。
【0048】
反射光パルスを光合波器56に入力するように、出力用光ファイバ22Cの出射端が、光合波器56に結合されている。また、入力用光ファイバ58の入射端は、励起光源LD
p52で生成された励起光を入射させるために、励起光源LD
p52に結合されている。入力用光ファイバ58の出射端は、光合波器56に結合されている。
【0049】
励起光源LD
p52から出力されたレーザ光は、内蔵されたフォトダイオードで検出(光電変換)される。検出信号は、励起光の出力信号として、制御回路24に入力される。
【0050】
光ファイバ増幅器28では、励起光源LD
p52で発生させた励起光が増幅用光ファイバ50に注入されると、注入された励起光に応じて増幅用光ファイバ50にエネルギーが蓄積される。出力用光ファイバ22Cに入射された反射光パルスは、光合波器56を介して増幅用光ファイバ50に入射する。入射された反射光パルスは、増幅用光ファイバ50を伝播する間に、増幅用光ファイバ50に蓄積されたエネルギーに比例した光増幅率で増幅される。増幅された反射光パルスは、増幅用光ファイバ50の出射端から射出される。
【0051】
ここで光検出部の動作を簡単に説明する。上記の光検出部では、測定対象物で反射された反射光パルスが、レンズ18により集光される。集光された反射光パルスは、入出力用光ファイバ22Bの出射端から入射し、サーキュレータ20を通過して、出力用光ファイバ22Cを伝播して、光ファイバ増幅器28に入射する。一方、制御回路24からLD
p駆動部54に制御信号が入力される。LD
p駆動部54は、入力された制御信号に基づいて励起光源LD
p52を駆動する。励起光源LD
p52からは励起光が射出される。励起光は、入力用光ファイバ58を介して光合波器56に入射する。
【0052】
光合波器56により、反射光パルスに対して励起光が合波される。上述した通り、増幅用光ファイバ50に入射した反射光パルスは、蓄積されたエネルギーに比例した光増幅率で増幅され、増幅された反射光パルスが増幅用光ファイバ50から射出される。射出された反射光パルスは、光調整部60に入射され、光調整部60から出力された反射光パルスが、PD42で検出(光電変換)される。検出信号は、反射光パルスの受光信号として、制御回路24に入力される。
【0053】
<光調整部>
次に、増幅された反射光パルスを調整する光調整部60について説明する。
【0054】
光調整部60は、増幅された反射光パルスを分離する光分離器62、分離された反射光パルスの一方を検出(光電変換)する光検出器(フォトダイオード:PD)64、分離された反射光パルスの他方を伝播させて延滞する延滞機構66、作動することにより延滞機構66を伝播した反射光パルスを遮断する光調整器68、PD64からの検出信号に応じて、光を遮断させるように光調整器68を作動させる作動制御回路70、分離された反射光の一方を延滞機構66に入力する延滞用光ファイバ72A、及び分離された反射光の他方をPD64に入力するモニタ用光ファイバ72Bを備えている。なお、PD64が、入射光検出部の一例であり、作動制御回路70が、制御部の一例である。
【0055】
光分離器62は、例えば1%:99%の割合で反射光パルスを分離するカプラを用いて、反射光を分離し、反射光パルスの1%をモニタ用信号としてモニタ用光ファイバ72Bの入射端に入射する。光分離器62は、反射光パルスの99%をメインの信号として延滞用光ファイバ72Aの入射端に入射する。
【0056】
PD64は、分離されたモニタ用信号の光強度を示す検出信号を出力する。
【0057】
光調整器68は、例えば、半導体光増幅器を用いて構成される。半導体光増幅器は、半導体レーザの両端面にARコート等の反射防止膜を設けて端面間での共振を抑制し、レーザ活性層の増幅作用を利用して伝播する光を増幅する光増幅器である。
【0058】
作動制御回路70は、
図2に示すように、閾値とPD64からの検出信号とを比較するコンパレータ70Aと、コンパレータ70Aからの出力信号に基づいて、半導体光増幅器を駆動するアンプ駆動部70Bとを備えている。コンパレータ70Aは、PD64からの検出信号が、閾値を超えた場合に、オン信号を出力する。なお、閾値は、PD42が飽和する反射光が入射されたときにPD64から出力される検出信号の強度に基づいて予め定めておけばよい。これによって、反射光パルスの強度が、PD42が飽和するほどの光の強度以上である場合に、コンパレータ70Aからオン信号が出力される。
【0059】
アンプ駆動部70Bは、スイッチング素子74と電源76とを備えており、スイッチング素子74がオンすることにより、電源76と半導体光増幅器とを接続し、半導体光増幅器に電流を供給する。これによって、半導体光増幅器は電流に応じて増幅率で反射光パルスを増幅して出射する。また、スイッチング素子74がオフすることにより、電源76と半導体光増幅器とを遮断し、半導体光増幅器への電流供給を停止する。これによって、半導体光増幅器は、反射光パルスを遮断する。
【0060】
このように、制御回路70は、PD64からの検出信号が閾値を超えたときに、半導体光増幅器が反射光パルスを遮断するように作動させる。
【0061】
コンパレータ70Aとして、光のパルス幅より動作時間がやや遅いものを用いることが好ましい。これによりタイミング合わせが容易になる。
【0062】
延滞機構66は、光ファイバで構成され、光ファイバの光路長が、光調整部60のPD64に検出信号が閾値を超える光が入射してから(光分離器62から当該光が出射されてから)、半導体光増幅器が光を遮断するように作動するまでにかかる時間に応じた光路長より長くなるように形成されている。なお、上記の半導体光増幅器が作動するまでにかかる時間は、実験等により求めることができる。
【0063】
光調整器68から出射された反射光パルスがPD42に入力されるように、光調整器68の出射端が、PD42に結合されている。
【0064】
ここで光調整部60の動作を簡単に説明する。上記の光調整部60では、増幅用光ファイバ50により増幅された反射パルスが、光分離器62に入力される。光分離器62は、入力された反射パルスを、1%のモニタ用信号と、99%のメイン信号とに分離して、1%のモニタ用信号を、PD64に入力すると共に、99%のメイン信号を延滞機構66の光ファイバに入射させる。メイン信号として入射された反射光パルスは、延滞機構66の光ファイバを伝播して、光調整器68に入力される。このとき、PD64が、1%のモニタ用信号として入力された反射光パルスを検出して、検出信号を作動制御回路70へ出力する。作動制御回路70は、検出信号が閾値を超えた場合に、反射光パルスを遮断するように光調整器68を作動させる。
【0065】
このように、分離された1%のモニタ用信号で、光の検出を行い、光の強度に応じて電気信号により光調整器68を作動させる。また、分離された99%のメイン信号は、延滞機構66を通過して時間遅れを発生し、光調整器68が作動したころに、光調整器68を通過する。これによって、内部反射等により強い反射光パルスは、光調整器68により遮断され、PD64へ入力されない。
【0066】
一方、作動制御回路70は、検出信号が閾値を超えなかった場合に、光調整器68が、所定の増幅率で反射光パルスを増幅するように制御する。これによって、反射光パルスが、光調整器68を通過して、PD64へ入力される。
【0067】
<制御回路及び表示部>
次に、制御回路及び表示部について説明する。
【0068】
図示はしていないが、制御回路24は、A/D変換器、ROM,RAM等の記憶部、CPU等の演算部を備えている。制御回路24には、光源LD
s12に内蔵されたフォトダイオードの検出信号(光パルスの出力信号)、励起光源LD
p32に内蔵されたフォトダイオードの検出信号(励起光の出力信号)、励起光源LD
p52に内蔵されたフォトダイオードの検出信号(励起光の出力信号)、及び光ファイバ増幅器28で増幅された反射光パルスのPD42による検出信号(反射光パルスの受光信号)が入力される。制御回路24に入力されたこれらのアナログ信号は、A/D変換器(図示せず)でデジタル信号に変換され、記憶部(図示せず)に保持される。
【0069】
制御回路24は、これらのデジタル信号に基づいて、光出力部から光パルスが出力されたタイミングと、光検出部で対応する反射光パルスが検出されたタイミングと、を取得する。光パルスの出力タイミングとは、光源LD
s12から光パルスが射出されたタイミングである。また、反射光パルスの検出タイミングとは、反射光パルスがレンズ18で受光されたタイミングである。
【0070】
制御回路24は、取得された光パルスの出力タイミングと、取得された反射光パルスの検出タイミングとに基づいて、光パルスが射出されてから反射光パルスを受光するまでに要した応答時間を計算する。また、制御回路24は、計算された応答時間に基づいて、測定対象物までの距離を演算する。そして、演算により得られた測定対象物までの距離を、測定結果として表示部26に表示する。
【0071】
<光調整部の光遮断動作>
次に、第1の実施の形態における光調整部60の光遮断動作について説明する。
【0072】
図3は第1の実施の形態で使用する光調整部60の光遮断動作を説明するためのタイミングチャートである。ここでは、「tpd」はPD64による延滞時間を表し、「tdrv」は作動制御回路70による延滞時間を表わす。また、「tfiber」は延滞機構66の光ファイバによる延滞時間を表わす。
【0073】
光ファイバ増幅器50からの増幅された反射光パルスが光分離器62に入力され、
図3(A)に示すように、分離された反射光パルスが光分離器62から出力される。PD64に、光分離器62によって分離された反射光パルスの一方が入力され、
図3(B)に示すように、時間tpdだけ遅れて、PD64からの検出信号が、作動制御回路70のコンパレータ70Aに入力される。PD64からの検出信号が閾値を超える場合には、
図3(C)に示すように、時間tdrvだけ遅れて、光調整器68の半導体光増幅器への電流供給が停止される。
【0074】
これに対して、延滞機構66の光ファイバを伝播した反射光パルスが延滞されて、時間tfiberだけ遅れて、光調整器68へ入力される。ここで、延滞機構66の光ファイバの光路長が、光調整部60のPD64に、検出信号が閾値を超える光が入射してから、半導体光増幅器が光を遮断するように作動するまでにかかる時間に応じた光路長より長くなるように形成されているため、PD64による延滞時間tpd、作動制御回路70による延滞時間tdrv、及び延滞機構66の光ファイバによる延滞時間tfiberとの関係は、以下の(1)式で表される。
【0075】
tpd + tdrv < tfiber ・・・(1)
【0076】
このように、閾値を超えるような強い光が入射された場合、タイミングが合わされて、光調整器68により光を遮断している期間(半導体光増幅器への電流供給を停止している期間)に、当該強い光が光調整器68へ入力される。従って、例えば内部反射により著しく強い光が光検出部に入力されても、光を遮断することができ、内部反射によりPD42が飽和してしまうことを防止することができる。
【0077】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る距離計測装置によれば、内部反射などにより入射光が著しく強い場合があっても、当該光を遮断することができるため、必要な信号光を正しく検出することができ、測定対象物までの距離を安定して測定することができる。
【0078】
また、入射光の強度をフォトダイオードによりモニターし、光強度を電気信号強度に変えて、電気信号強度に応じて、光調整器による光遮断動作を作動させることで、著しく強い光入力があったときに光を遮断することができる。
【0079】
一般的に電気回路は光の速度より遅いため、単純なフィードバックシステムでは光より速い制御ができない。また、電気回路の高速動作にも限界がある。そこで、本実施の形態では、本来の信号光を延滞させることで、電気回路による光調整動作が作動したころに、光調整器を通過させる。これによって、入射光が著しく強い場合があっても、当該光を遮断することができ、信号光を検出するための光検出器が飽和してしまうことを防ぐことができる。
【0080】
また、光調整器として半導体光増幅器を用いることにより、簡単な制御で、光を遮断することができる。
【0082】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0083】
第2の実施の形態では、光調整器を、LN変調器を用いて構成している点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0084】
第2の実施の形態では、
図4に示すように、作動制御回路270は、コンパレータ70Aと、コンパレータ70Aからの出力信号に基づいて、光調整器268のLN変調器へ印加する電圧を切り換える電圧印加部270Bとを備えている。電圧印加部270Bは、スイッチング素子74と電源76とコイル278とコンデンサ280を備えており、スイッチング素子74がオンすることにより、電源76とコイル278とコンデンサ280とを接続し、LN変調器にオン電圧(例えば、0V)を印加する。これによって、光調整器268のLN変調器は、入射された反射光パルスを通過させて出射する。また、電圧印加部270Bは、スイッチング素子74がオフすることにより、電源76と、コイル278及びコンデンサ280との接続を遮断したときの変動で、LN変調器にオン電圧(例えば、5V)を印加する。これによって、光調整器268のLN変調器は反射光パルスを遮断する。
【0085】
作動制御回路270は、PD64からの検出信号が閾値を超えたときに、LN変調器が反射光パルスを遮断するように光調整器268を作動させる。
【0086】
<光調整部の光遮断動作>
次に、第2の実施の形態における光調整部の光遮断動作について説明する。
【0087】
図5は第2の実施の形態で使用する光調整部の光遮断動作を説明するためのタイミングチャートである。ここでは、「tpd」はPD64による延滞時間を表し、「tdrv」は作動制御回路270による延滞時間を表わす。また、「tfiber」は延滞機構66の光ファイバによる延滞時間を表わす。
【0088】
光ファイバ増幅器50からの増幅された反射光パルスが光分離器62に入力され、
図4(A)に示すように、分離された反射光パルスが光分離器62から出力される。PD64に、光分離器62によって分離された反射光パルスの一方が入力され、
図4(B)に示すように、時間tpdだけ遅れて、PD64からの検出信号が、作動制御回路270のコンパレータ70Aに入力される。PD64からの検出信号が閾値を超える場合には、
図4(C)に示すように、時間tdrvだけ遅れて、光調整器268のLN変調器へオフ電圧が印加される。
【0089】
これに対して、延滞機構66の光ファイバを伝播した反射光パルスが延滞されて、時間tfiberだけ遅れて、光調整器268へ入力される。ここで、延滞機構66の光ファイバの光路長が、光調整部のPD64に、検出信号が閾値を超える光が入射してから、LN変調器が光を遮断するように作動するまでにかかる時間に応じた光路長より長くなるように形成されているため、PD64による延滞時間tpd、作動制御回路270による延滞時間tdrv、及び延滞機構66の光ファイバによる延滞時間tfiberとの関係は、上記(1)式で表される関係となる。
【0090】
閾値を超えるような強い光が入射された場合、タイミングが合わされて、光調整器268により光を遮断している期間(LN変調器へのオフ電圧を印加している期間)に、当該強い光が光調整器268へ入力される。従って、例えば内部反射により著しく強い光が光検出部に入力されても、光を遮断することができ、内部反射によりPD42が飽和してしまうことを防止することができる。
【0091】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る距離計測装置によれば、内部反射などにより入射光が著しく強い場合があっても、当該光を遮断することができるため、必要な信号光を正しく検出することができ、測定対象物までの距離を安定して測定することができる。
【0092】
また、光調整器としてLN変調器を用いることにより、ダイナミックレンジを広くすることができる。
【0093】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0094】
第3の実施の形態では、光調整部の構成が第1の実施の形態と異なっている。
【0095】
第3の実施の形態では、
図6に示すように、光調整部360は、光分離器62、PD64、延滞機構66、光調整器68、PD64からの検出信号を遅延させて出力する遅延回路370、作動制御回路70、延滞用光ファイバ72A、モニタ用光ファイバ72B、環境温度を検出する温度センサ372、温度センサ372からの検出信号をA/D変換するAD変換部374、及びA/D変換された温度センサ372からの検出信号に基づいて、遅延回路370による遅延量を制御する遅延制御回路376を備えている。なお、温度センサ372が、環境検出部の一例であり、遅延回路370が、遅延部の一例である。
【0096】
遅延回路370は、PD64と制御回路70とに接続されており、PD64から入力された検出信号を遅延させて制御回路70へ出力する。また、遅延回路370では、信号の遅延量が可変となっている。遅延回路370としては、従来既知のものを用いればよく、例えば、オンセミコンダクターのMC10EP195等や、プログラマブルディレイコントローラを用いればよい。
【0097】
ここで、環境温度に応じて、延滞機構66の光ファイバの光路長が変化する。環境温度が高いほど、光ファイバの光路長が長くなり、延滞機構66による延滞時間が長くなる。一方、環境温度が低いほど、光ファイバの光路長が短くなり、延滞機構66による延滞時間が短くなる。このように、環境温度に応じて延滞機構66による延滞時間が変化するため、延滞時間の変化分を補償する必要がある。
【0098】
そこで、本実施の形態では、遅延制御回路376によって、温度センサ372からの検出信号が高い温度が示しているほど、遅延回路370による遅延量が長くなるように制御し、温度センサ372からの検出信号が低い温度が示しているほど、遅延回路370による遅延量が短くなるように制御する。例えば、遅延制御回路376は、温度データと遅延量データとの関係を格納したテーブルを予め記憶しておき、温度センサ372からの検出信号に対応する遅延量データを、当該テーブルから読み出すようにすればよい。
【0099】
また、本実施の形態では、遅延回路370と遅延制御回路376とは、FPGA(フィールドプログラマブルロジックアレイ)によって実現されている。
【0100】
このように、環境温度が変化しても、PD64による延滞時間、遅延回路370による遅延時間、及び作動制御回路70による延滞時間の合計と、延滞機構による延滞時間とを対応させて、光調整器68へ強い光が入射されるタイミングと、光調整器68が光を遮断するように作動するタイミングとを合わせることができるため、内部反射等による著しく強い光を、安定して遮断することができる。
【0101】
(延滞機構の変形例)
上記の実施の形態では、延滞機構として光ファイバを用いる場合について説明したが、反射光パルスを延滞することができればよく、他の種類の延滞機構を用いることもできる。
【0102】
図7は、第1の変形例を示す概略構成図である。
図7に示すように、第1の変形例に係る光調整部460は、PD64、分離された反射光パルスの他方を伝播させて延滞する延滞機構466、光調整器68、作動制御回路70、延滞用光ファイバ72A、及びモニタ用光ファイバ72Bを備えている。
【0103】
延滞機構466は、
図8に示すように、誘電体多層膜で形成されたフォトニック結晶を用いて構成されている。入射された光が、延滞機構466の内部で繰り返し反射して出射されるため、光路長が長くなる。また、延滞機構466に入射された光が出射されるまでの光路長が、光調整部60のPD64に、検出信号が閾値を超える光が入射してから、半導体光増幅器が反射光パルスを遮断するように作動するまでにかかる時間に応じた光路長より長くなるように形成されている。
【0104】
図9は、内部の屈折率が変化する延滞機構を用いた第2の変形例を示す概略構成図である。
図9に示すように、第2の変形例に係る延滞機構566は、光の伝播方向に、屈折率が周期的に変化するように形成されている。入射された光が、屈折率が周期的に変化する延滞機構566を伝播するため、光路長が長くなる。また、延滞機構466に入射された光が出射されるまでの光路長が、光調整部60のPD64に、検出信号が閾値を超える光が入射してから、半導体光増幅器が反射光パルスを遮断するように作動するまでにかかる時間に応じた光路長より長くなるように形成されている。
【0105】
また、延滞機構の他の変形例として、スローライトを用いて構成された延滞機構を用いてもよい。
【0106】
また、上記の実施の形態では、強い光が入射したときに、当該光を遮断するように光調整器を制御する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、信号光を検出するための光検出器が飽和しない程度に、強い光の強度を減衰させるように光調整器を制御してもよい。例えば、半導体光増幅器及びLN変調器において、一部の光を通過させるように制御してもよい。また、入射された光の強度に応じて、光調整器による減衰量を調整するように制御してもよい。
【0107】
また、上記の実施の形態では、増幅用光ファイバ50の後段に光調整部を設けた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、増幅用光ファイバ50の後段に光調整部を設けてもよい。例えば、サーキュレータ20と光合波器56との間に、光調整部を設けても良い。この場合には、光調整部を通過した反射光パルスを、増幅用光ファイバ50によって増幅して、PD42へ出射する。