(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、本発明者は、現実には熱交換の不要なエリア又はあまり必要のないエリアの空調要素に省エネルギーの運転設定をする(例えば、サーモオフ設定にする又は設定温度を省エネルギー側にシフトさせる等)と、空調要素全体で見た時に反って増エネルギーになることがあるという知見を発見した。その主な原因は、省エネルギーの運転設定がされている空調要素の分まで隣接する他の空調要素が能力を代替して供給することにあると考えられる。例えば、熱交換の不要なエリアの一部の空調要素をサーモオフ設定にすると、サーモオン設定の空調要素が隣接するサーモオフ設定の空調要素の分まで能力を代替して供給することになる。つまり、通常、省エネルギーの運転設定がされている空調要素のエネルギー消費量が減少するものの、運転効率の悪い高回転域の他の空調要素のエネルギー消費量がそれ以上に増加するからである。
【0004】
図1は、従来の上記問題点を概念的に説明する図である。
図1(a)および(b)のように、1の空調対象空間Sが、3×3のマトリクス状の計9つの空調エリアS1〜S9に分割されている場合を考える。空調エリアS1〜S9には、それぞれ空調設備の室内機A1〜A9が配置されている。かかる環境下で、室内機A1〜A9が均一空調を行っている(言い換えると、室内機A1〜A9に同じ運転設定がされている、例えば、室内機A1〜A9に設定温度、風向および風量が同じで同時発停するような設定がされている)
図1(a)の状態の室内機A1〜A9全体でのエネルギー消費量は、
図1(c)のようになると考えられる。一方、
図1(a)の状態から中央の室内機A5が熱交換を停止し
図1(b)の状態になった時の室内機A1〜A9全体でのエネルギー消費量は、
図1(d)のようになると考えられる。つまり、
図1(b)の状態では、熱交換の停止中の室内機A5のエネルギー消費量がほぼゼロになっているにもかかわらず、全体でのエネルギー消費量が
図1(a)の状態よりも多くなってしまう。空調エリアS5の十分に空調されていない空気が周辺の空調エリアS2,S4,S6,S8へと拡散し、室内機A2,A4,A6,A8がそれぞれ空調エリアS2,S4,S6,S8のみならず空調エリアS5まで空調する結果となり、室内機A2,A4,A6,A8のエネルギー消費量が増加するからである。
【0005】
本発明の課題は、1の空調対象空間を複数の空調要素により空調する場合において、空調要素全体での省エネ性を向上させる空調コントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点に係る空調コントローラは、特定部と、判断部と、運転制御部とを備え、複数の空調要素の動作を制御する。複数の空調要素は、空調対象空間を協調して空調する。特定部は、複数の空調要素の運転設定のパターンを特定する。判断部は、特定部が特定した上記パターンに基づいて、複数の空調要素のうちの一部の空調要素の運転設定を変更した場合に空調要素全体でより省エネルギーになるか否か、或いは、より増エネルギーになるか否かを判断する。運転制御部は、判断部の判断に基づいて上記一部の空調要素を制御する。
判断部は、特定部が特定したパターンに基づいて、複数の空調要素のうちの一部の空調要素の運転設定を増エネルギー側に変更した場合に空調要素全体でより省エネルギーになるか否かを判断する。判断部は、特定部が特定したパターンに基づいて、空調要素全体でのエネルギー消費量を定量化することにより、空調要素全体でより省エネルギーになるか否かを判断する。判断部は、空調要素のエネルギー消費量を、当該空調要素に隣接し当該空調要素よりも省エネルギー側の所定の運転設定がされている空調要素の数に基づいて定量化することにより、空調要素全体でのエネルギー消費量を定量化する。運転制御部は、判断部が空調要素全体でより省エネルギーになると判断した場合に、一部の空調要素を変更後の運転設定に従って制御する。なお、空調要素とは、空調設備の室内機、又はその吹出口など、空調エリアを空調する任意の単位を意味する。また、複数の空調要素の運転設定のパターンとは、複数の空調要素の運転設定のマップ、又は特定の運転設定の空調要素の数など、複数の空調要素がどのように運転設定されているのかを示す任意の指標を意味する。
【0007】
ここでは、空調要素全体でより省エネルギーになるか或いはより増エネルギーになるかを判断し、当該判断に基づいて、一部の空調要素を制御する。従って、たとえ一部の空調要素について見ると省エネルギー或いは増エネルギーになる場合であっても、空調要素全体での省エネ性を向上させることができる。
【0008】
また、ここでは、空調要素全体でより省エネルギーになると判断される場合には、一部の空調要素の運転設定が増エネルギー側に変更される。従って、たとえ一部の空調要素について見ると増エネルギーになる場合であっても、空調要素全体での省エネ性を向上させることができる。
【0009】
また、ここでは、空調要素全体でのエネルギー消費量が定量化され、当該エネルギー消費量に基づいて、運転設定の変更の適否が判断される。従って、空調要素全体での省エネ性の観点から、一部の空調要素について見ると増エネルギーになるような運転設定の変更の適否をより適切に判断することができる。
【0010】
さらに、ここでは、運転設定の変更の適否の判断時に、空調要素全体でのエネルギー消費量が定量化され、考慮される。さらに、空調要素のエネルギー消費量を定量化する際には、当該空調要素に隣接し当該空調要素よりも省エネルギー側の所定の運転設定がされている空調要素(例えば、サーモオフ設定がされている空調要素、又は設定温度がより省エネルギー側に設定されている空調要素)の数が考慮される。これにより、空調要素のエネルギー消費量が簡易に定量化され、ひいては運転設定の変更の適否が簡易に判断される。
【0011】
第2の観点に係る空調コントローラは、
特定部と、判断部と、運転制御部とを備え、複数の空調要素の動作を制御する。複数の空調要素は、空調対象空間を協調して空調する。特定部は、複数の空調要素の運転設定のパターンを特定する。判断部は、特定部が特定した上記パターンに基づいて、複数の空調要素のうちの一部の空調要素の運転設定を変更した場合に空調要素全体でより省エネルギーになるか否か、或いは、より増エネルギーになるか否かを判断する。運転制御部は、判断部の判断に基づいて上記一部の空調要素を制御する。特定部は、パターンとして、所定の運転設定がされている空調要素の数を特定する。判断部は、特定部が特定した上記パターンに基づいて、複数の空調要素のうちの一部の空調要素の運転設定を増エネルギー側に変更した場合に空調要素全体でより省エネルギーになるか否かを判断する。運転制御部は、判断部が空調要素全体でより省エネルギーになると判断した場合に、上記一部の空調要素を上記変更後の運転設定に従って制御する。
【0012】
ここでは、空調要素全体でより省エネルギーになると判断される場合には、一部の空調要素の運転設定が増エネルギー側に変更される。従って、たとえ一部の空調要素について見ると増エネルギーになる場合であっても、空調要素全体での省エネ性を向上させることができる。
【0013】
また、ここでは、所定の運転設定がされている空調要素(例えば、サーモオフ設定がされている空調要素、又は設定温度がより省エネルギー側に設定されている空調要素)の数に基づいて、運転設定の変更の適否が判断される。例えば、所定の運転設定がされている空調要素の数が所定数より多ければ、特定した運転設定のパターンの変更が許容され、所定数以下であれば、特定した運転設定のパターンが維持される。より具体的には、サーモオフ要素の数が所定数以下であれば、全てのサーモオフ要素をサーモオン設定に変更し、均一空調に切り換える等の態様が考えられる。これにより、運転設定の変更の適否が簡易に判断される。
【0014】
第3の観点に係る空調コントローラは、
第1又は第2の観点に係る空調コントローラであって、特定部は、複数の空調要素のうちのサーモオフ要素のパターンを上記パターンとして特定する。サーモオフ要素とは、サーモオフ設定の空調要素である。判断部は、特定部が特定した上記パターンに基づいて、サーモオフ要素をサーモオン設定にした場合に空調要素全体でより省エネルギーになるか否かを判断する。運転制御部は、判断部が空調要素全体でより省エネルギーになると判断した場合に、サーモオフ要素をサーモオン設定にする。
【0015】
ここでは、空調要素全体でより省エネルギーになると判断される場合には、サーモオフ設定の空調要素がサーモオン設定となる。従って、たとえ一部の空調要素について見ると増エネルギーになる場合であっても、空調要素全体での省エネ性を向上させることができる。
【0016】
第4の観点に係る空調コントローラは、第
1の観点
から第3の観点
のいずれかに係る空調コントローラであって、特定部は、複数の空調要素の設定温度のパターンを上記パターンとして特定する。判断部は、特定部が特定した上記パターンに基づいて、上記一部の空調要素の設定温度を増エネルギー側にシフトした場合に空調要素全体でより省エネルギーになるか否かを判断する。運転制御部は、判断部が空調要素全体でより省エネルギーになると判断した場合に、上記一部の空調要素の設定温度を増エネルギー側へシフトする。
【0017】
ここでは、空調要素全体でより省エネルギーになると判断される場合には、一部の空調要素の設定温度が増エネルギー側へシフトされる。例えば、一部の空調要素の設定温度が、冷房中であればより低くなるように変更され、暖房中であればより高くなるように変更される。従って、たとえ一部の空調要素について見ると増エネルギーになる場合であっても、空調要素全体での省エネ性を向上させることができる。
【0018】
第5の観点に係る空調コントローラは、第2の観
点に係る空調コントローラであって、判断部は、特定部が特定した上記パターンに基づいて、空調要素全体でのエネルギー消費量を定量化することにより、空調要素全体でより省エネルギーになるか否かを判断する。
【0019】
ここでは、空調要素全体でのエネルギー消費量が定量化され、当該エネルギー消費量に基づいて、運転設定の変更の適否が判断される。従って、空調要素全体での省エネ性の観点から、一部の空調要素について見ると増エネルギーになるような運転設定の変更の適否をより適切に判断することができる。
【0020】
他の観点に係る空調コントローラ
では
、判断部は、予め設定されている、上記パターンと空調要素全体での省エネ性に関する情報との関係を示す情報にさらに基づいて、空調要素全体でより省エネルギーになるか否かを判断する。
【0021】
ここでは、複数の空調要素の運転設定のパターンと、空調要素全体での省エネ性に関する情報との関係を示す情報が予め定義されている。そして、当該情報と、複数の空調要素の現実の運転設定のパターンとに基づいて(例えば、後者を前者に照らし合わせることにより)、運転設定の変更の適否が判断される。従って、空調要素全体での省エネ性の観点から、一部の空調要素について見ると増エネルギーになるような運転設定の変更の適否をより適切に判断することができる。
【0022】
第
6の観点に係る空調コントローラは、第
1の観点から第
5の観点のいずれかに係る空調コントローラであって、判断部は、空調要素の負荷にさらに基づいて、空調要素全体でより省エネルギーになるか否かを判断する。
【0023】
一般に、空調要素のエネルギー消費量は、空調要素の負荷に応じて変動する。ここでは、運転設定の変更の適否の判断時に、空調要素の負荷が考慮される。従って、空調要素全体での省エネ性の観点から、一部の空調要素について見ると増エネルギーになるような運転設定の変更の適否をより適切に判断することができる。
【0024】
第
7の観点に係る空調コントローラは、
第1又は第5の観点に係る空調コントローラであって、判断部は、空調要素の負荷に応じて選定されるモデルに従って、空調要素全体でのエネルギー消費量を定量化する。
【0025】
一般に、空調要素のエネルギー消費量は、空調要素の負荷に応じて変動する。ここでは、運転設定の変更の適否の判断時に、空調要素全体でのエネルギー消費量が定量化され、考慮される。さらに、エネルギー消費量を定量化する際には、空調要素の負荷が考慮される。従って、空調要素全体での省エネ性の観点から、一部の空調要素について見ると増エネルギーになるような運転設定の変更の適否をより適切に判断することができる。
【0026】
第
8の観点に係る空調コントローラは、第
1の観点から第
7の観点のいずれかに係る空調コントローラであって、判断部は、空調要素の能力制限にさらに基づいて、空調要素全体でより省エネルギーになるか否かを判断する。
【0027】
一般に、空調要素のエネルギー消費量は、空調要素の能力制限に影響される。例えば、デマンド運転中に空調設備の圧縮機に上限周波数が設定され、空調要素のエネルギー消費量にも上限が定まるような場合である。ここでは、運転設定の変更の適否の判断時に、空調要素の能力制限が考慮される。従って、空調要素全体での省エネ性の観点から、一部の空調要素について見ると増エネルギーになるような運転設定の変更の適否をより適切に判断することができる。
【0028】
第
9の観点に係る空調コントローラは、
第1の観点、第5の観点又は第
7の観点に係る空調コントローラであって、判断部は、空調要素の能力制限に応じて選定されるモデルに従って、空調要素全体でのエネルギー消費量を定量化する。
【0029】
一般に、空調要素のエネルギー消費量は、空調要素の能力制限に影響される。例えば、デマンド運転中に空調設備の圧縮機に上限周波数が設定され、空調要素のエネルギー消費量にも上限が定まるような場合である。ここでは、運転設定の変更の適否の判断時に、空調要素全体でのエネルギー消費量が定量化され、考慮される。さらに、エネルギー消費量を定量化する際には、空調要素の能力制限が考慮される。従って、空調要素全体での省エネ性の観点から、一部の空調要素について見ると増エネルギーになるような運転設定の変更の適否をより適切に判断することができる。
【0030】
他の観点に係る空調コントローラ
では
、判断部は、空調要素のエネルギー消費量を、当該空調要素に隣接し当該空調要素よりも省エネルギー側の所定の運転設定がされている空調要素の数に基づいて定量化することにより、空調要素全体でのエネルギー消費量を定量化する。
【0031】
ここでは、運転設定の変更の適否の判断時に、空調要素全体でのエネルギー消費量が定量化され、考慮される。さらに、空調要素のエネルギー消費量を定量化する際には、当該空調要素に隣接し当該空調要素よりも省エネルギー側の所定の運転設定がされている空調要素(例えば、サーモオフ設定がされている空調要素、又は設定温度がより省エネルギー側に設定されている空調要素)の数が考慮される。これにより、空調要素のエネルギー消費量が簡易に定量化され、ひいては運転設定の変更の適否が簡易に判断される。
【0032】
他の観点に係る空調コントローラ
では
、特定部は、上記パターンとして、所定の運転設定がされている空調要素の数を特定する。
【0033】
ここでは、所定の運転設定がされている空調要素(例えば、サーモオフ設定がされている空調要素、又は設定温度がより省エネルギー側に設定されている空調要素)の数に基づいて、運転設定の変更の適否が判断される。例えば、所定の運転設定がされている空調要素の数が所定数より多ければ、特定した運転設定のパターンの変更が許容され、所定数以下であれば、特定した運転設定のパターンが維持される。より具体的には、サーモオフ要素の数が所定数以下であれば、全てのサーモオフ要素をサーモオン設定に変更し、均一空調に切り換える等の態様が考えられる。これにより、運転設定の変更の適否が簡易に判断される。
【0034】
他の観点に係る空調コントローラ
では
、判断部は、特定部が特定した上記パターンに基づいて、上記一部の空調要素の運転設定を省エネルギー側に変更した場合に空調要素全体でより増エネルギーになるか否かを判断する。運転制御部は、判断部が空調要素全体でより増エネルギーになると判断した場合に、上記一部の空調要素を上記変更をしない運転設定に従って制御する。
【0035】
ここでは、ユーザーの操作に従うと空調要素全体でより増エネルギーになると判断される場合には、一部の空調要素の運転設定が省エネルギー側へ変更されない。従って、たとえ一部の空調要素について見ると省エネルギーになる場合であっても、空調要素全体では増エネルギーにならないようにすることができる。
【0036】
他の観点に係る空調コントローラ
では
、特定部は、複数の空調要素の設定温度のパターンを上記パターンとして特定する。判断部は、特定部が特定した上記パターンに基づいて、上記一部の空調要素の設定温度を省エネルギー側にシフトした場合に空調要素全体でより増エネルギーになるか否かを判断する。運転制御部は、判断部が空調要素全体でより増エネルギーにならないと判断した場合に、上記一部の空調要素の設定温度を省エネルギー側へシフトする。
【0037】
ここでは、ユーザーの操作に従っても空調要素全体でより増エネルギーにならないと判断される場合には、一部の空調要素の設定温度がユーザーの操作に従って省エネルギー側へシフトされる。例えば、一部の空調要素の設定温度が、ユーザーの操作に従って冷房中であればより高くなるように変更され、暖房中であればより低くなるように変更される。従って、たとえ一部の空調要素について見ると省エネルギーになる場合であっても、空調要素全体での省エネ性を向上させることができる。
【0038】
他の観点に係る空調コントローラ
では
、判断部は、特定部が特定した上記パターンに基づいて、空調要素全体でのエネルギー消費量を定量化することにより、空調要素全体でより増エネルギーになるか否かを判断する。
【0039】
ここでは、空調要素全体でのエネルギー消費量が定量化され、当該エネルギー消費量に基づいて、運転設定の変更の適否が判断される。従って、空調要素全体での省エネ性の観点から、一部の空調要素について見ると省エネルギーになるような運転設定の変更の適否をより適切に判断することができる。
【0040】
他の観点に係る空調コントローラ
では
、判断部は、空調要素の負荷に応じて選定されるモデルに従って、空調要素全体でのエネルギー消費量を定量化する。
【0041】
一般に、空調要素のエネルギー消費量は、空調要素の負荷に応じて変動する。ここでは、運転設定の変更の適否の判断時に、空調要素全体でのエネルギー消費量が定量化され、考慮される。さらに、エネルギー消費量を定量化する際には、空調要素の負荷が考慮される。従って、空調要素全体での省エネ性の観点から、一部の空調要素について見ると省エネルギーになるような運転設定の変更の適否をより適切に判断することができる。
【発明の効果】
【0042】
第1の観点に係る空調コントローラでは、たとえ一部の空調要素について見ると省エネルギー或いは増エネルギーになる場合であっても、空調要素全体での省エネ性を向上させることができる。
また、第1の観点に係る空調コントローラでは、たとえ一部の空調要素について見ると増エネルギーになる場合であっても、空調要素全体での省エネ性を向上させることができる。また、第1の観点に係る空調コントローラでは、空調要素全体での省エネ性の観点から、一部の空調要素について見ると増エネルギーになるような運転設定の変更の適否をより適切に判断することができる。さらに、第1の観点に係る空調コントローラでは、空調要素のエネルギー消費量が簡易に定量化され、ひいては運転設定の変更の適否が簡易に判断される。
【0043】
第2の観点に係る空調コントローラでは、たとえ一部の空調要素について見ると増エネルギーになる場合であっても、空調要素全体での省エネ性を向上させることができる。また、第2の観点に係る空調コントローラでは、運転設定の変更の適否が簡易に判断される。
【0044】
第
3の観点
および第4の観点に係る空調コントローラでは、たとえ一部の空調要素について見ると増エネルギーになる場合であっても、空調要素全体での省エネ性を向上させることができる。
【0045】
第5の観点から第
9の観点に係る空調コントローラでは、空調要素全体での省エネ性の観点から、一部の空調要素について見ると増エネルギーになるような運転設定の変更の適否をより適切に判断することができる。
【0046】
他の観点に係る空調コントローラでは、たとえ一部の空調要素について見ると省エネルギーになる場合であっても、空調要素全体では増エネルギーにならないようにすることができる。
【0047】
他の観点に係る空調コントローラでは、たとえ一部の空調要素について見ると省エネルギーになる場合であっても、空調要素全体での省エネ性を向上させることができる。
【0048】
他の観点に係る空調コントローラでは、空調要素全体での省エネ性の観点から、一部の空調要素について見ると省エネルギーになるような運転設定の変更の適否をより適切に判断することができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面を参照しつつ、本発明者が本発明をするに至った実験について説明した後、本発明の第1実施形態から第3実施形態に係る集中管理コントローラ(空調コントローラ)1,101,201について説明する。
【0051】
(1)実験
本発明者は、以下の実験を行い、以下の知見を得た。
【0052】
(1−1)実験の概要および結果
実験の環境は、空調設備の2台の室内機B1,B2が配置される空調対象空間である。当該環境下で、室内機B1,B2をそれぞれ
図2(a)〜
図2(f)の左側に示す設定温度で冷房運転させる実験を行ったところ、室内機B1,B2のエネルギー消費量に関しそれぞれ
図2(a)〜
図2(f)の右側に示す結果を得た。
【0053】
(1−2)上記実験から得られる知見
図2(a)及び
図2(c)に示されるように、室内機B1,B2の両方を設定温度26℃で運転させた場合と、室内機B1を設定温度26℃で運転させつつ室内機B2の熱交換を停止させた場合とを比較すると、後者の方が省エネ性が高くなった。一方、
図2(b)及び
図2(d)に示されるように、室内機B1,B2の両方を設定温度20℃で運転させた場合と、室内機B1を設定温度20℃で運転させつつ室内機B2の熱交換を停止させた場合とを比較すると、前者の方が省エネ性が高くなった。
【0054】
以上の結果により、室内機B1,B2の一方の熱交換のみを停止させる場合、室内機B1,B2に均一空調をさせる場合と比較し、必ずしも室内機B1,B2全体で省エネルギーになるとは限らず、増エネルギーになることがあるという知見が得られた。さらには、増エネルギーになるか、省エネルギーになるかは、室内機B1,B2の負荷に影響するという知見、より具体的には室内機B1,B2の負荷が大きいほど増エネルギーになりやすいという知見が得られた。よって、空調対象空間全体の負荷が一様である場合には、空調対象空間全体の負荷が高ければ高いほど、一部の室内機の熱交換を停止させると、室内機全体では増エネルギーになり易くなると言える。
【0055】
また、
図2(a)及び
図2(e)に示されるように、室内機B1,B2の両方を設定温度26℃で運転させた場合と、室内機B1を設定温度26℃で運転させつつ室内機B2を設定温度27℃で運転させた場合とを比較すると、前者の方が省エネ性が高くなった。一方、
図2(a)及び
図2(f)に示されるように、室内機B1,B2の両方を設定温度26℃で運転させた場合と、室内機B1,B2の両方を設定温度27℃で運転させた場合とを比較すると、後者の方が省エネ性が高くなった。また、発明者は、他の温度条件でも同様の実験を行ったが、室内機B1,B2の両方の設定温度を同様に省エネルギー側にシフトさせた場合には、空調対象空間の負荷に関わらず、常に省エネルギーとなった。さらに、室内機B1,B2の両方の設定温度を省エネルギー側に同様に1℃ずつシフトさせた場合には、エネルギー消費量が10〜15%削減され、同様に2℃ずつシフトさせた場合には、エネルギー消費量が20%〜30%削減された。
【0056】
以上の結果により、室内機B1,B2の一方の設定温度のみを省エネルギー側にシフトさせる場合、室内機B1,B2に均一空調をさせる場合と比較し、必ずしも室内機B1,B2全体で省エネルギーになるとは限らず、増エネルギーになることがあるという知見が得られた。
【0057】
つまり、室内機B1,B2に均一空調をさせている状態から室内機B2の運転設定のみを省エネルギー側に変更すると、通常は室内機B2のエネルギー消費量が減少するものの、室内機B1,B2全体でのエネルギー消費量が増加してしまうことがある。本発明者は、その原因を、室内機B2で十分に空調されていない空気が室内機B1に対応する空調エリアに流れ込んでしまうことにあると考える。より詳しくは、室内機B1が室内機B1付近のエリアのみならず室内機B2付近のエリアまで空調する結果となり、状況によっては室内機B1のエネルギー消費量が室内機B2のエネルギー消費量の減少分以上に増加するからである。なお、
図1を参照しつつ「発明が解決しようとする課題」の欄で説明した知見は、本実験の結果により得られたものである。
【0058】
また、本発明者は、
図2(a)〜
図2(f)の実験の結果に基づく上記知見をより一般化し、以下の知見を得た。すなわち、1の空調対象空間を空調する複数の空調要素のうちの一部の空調要素の運転設定を省エネルギー側に変更した場合、当該変更をしない場合と比較し、必ずしも空調要素全体では省エネルギーになるとは限らず、増エネルギーになることがある。逆に言うと、1の空調対象空間を空調する複数の空調要素のうちの一部の空調要素の運転設定を増エネルギー側に変更した場合の方が、当該変更をしない場合よりも、空調要素全体では省エネルギーになることがある。さらには、空調要素全体で増エネルギーになるか、省エネルギーになるかは、空調要素の負荷に影響する(より詳しくは、空調要素の負荷が大きいほど、一部の空調要素の運転設定を省エネルギー側に変更した場合に空調要素全体では増エネルギーになりやすい)。なお、空調要素とは、空調設備の室内機、又はその吹出口など、空調エリアを空調する任意の単位を意味する。
【0059】
(2)第1実施形態
以下、第1実施形態に係る集中管理コントローラ1について説明する。
【0060】
(2−1)設置環境
図3および
図4を参照しつつ、集中管理コントローラ1の設置環境について説明する。
【0061】
集中管理コントローラ1は、空調設備2の動作を監視および制御するものである。空調設備2は、9台の室外機OU1〜OU9および9台の室内機IU1〜IU9を有する空調設備である。室内機IU1〜IU9は、それぞれ室外機OU1〜OU9に冷媒配管4を介して接続されており、全体として9つの冷媒回路が形成されている。なお、
図3中、簡単のため、室外機OU1,OU4,OU7以外に接続される冷媒配管4は省略している。室内機IU1〜IU9のケーシング内には、図示されない熱交換器、膨張弁、ファン等の部品が収納されており、室外機OU1〜OU9のケーシング内には、図示されない圧縮機、四路切換弁、熱交換器、アキュムレータ、ファン等の部品が収納されている。なお、本明細書において、室内機のエネルギー消費量とは、室内機に含まれる部品におけるエネルギー消費量のみならず、室外機に含まれる部品におけるエネルギー消費量をも含む、当該室内機が含まれる冷媒系統全体でのエネルギー消費量を言うものとする。また、他の実施形態として、マルチタイプの空調設備に本願発明が適用される場合には、室内機のエネルギー消費量とは、室内機に含まれる部品におけるエネルギー消費量のみならず、室外機に含まれる部品におけるエネルギー消費量を当該室内機に按分したものをも含むものとする。
【0062】
室外機OU1〜OU9は、屋外に配置されている。室内機IU1〜IU9は、室内空間S(空調対象空間)の天井に概ね等間隔に配置されている。室内空間Sは、オフィスフロアや飲食店などの開けた1つの広い空間であり、3×3のマトリクス状の計9つの空調エリアS1〜S9に仮想的に分割されている。なお、仮想的に分割されている状態とは、仕切り、壁等によって空気の流動が全くないように物理的に分割されている状態ではなく、空気の流動がある程度あるように連続している状態を意味する。室内機IU1〜IU9は、それぞれ空調エリアS1〜S9内に配置されており、空調エリアS1〜S9は、それぞれ室内機IU1〜IU9により主として空調される。
【0063】
室内機IU1〜IU9の制御部(以下、室内制御部)8bには、通信線3を介し、それぞれ室外機OU1〜OU9の制御部(以下、室外制御部)8a、および集中管理コントローラ1が接続されている。また、室内制御部8bには、通信線5を介し、1対1で手元リモコン(以下、単にリモコン)50が接続されている。リモコン50は、室内空間S内の利用者から室内機IU1〜IU9に対する運転指令(例えば、室内機IU1〜IU9の起動又は停止を命じたり、室内機IU1〜IU9の設定温度の変更を命じたり、室内機IU1〜IU9の運転モードの変更を命じたりするもの)の入力を受け付ける操作インタフェース機器である。リモコン50は、室内空間Sの壁面等に取り付けられている。
【0064】
同じ冷媒回路に属する室内制御部8bおよび室外制御部8aは、互いに協調しつつ、リモコン50又は集中管理コントローラ1からの運転指令に従って、各種部品の動作を制御し、室内を空調する。具体的には、室内制御部8bは、室内温度と設定温度との差分を監視するフィードバック制御を実行しつつ、ファンの回転数の調整(風量の調整)およびルーバーの調整(風向の調整)等を行い、室外制御部8aは、圧縮機の周波数、ファンの回転数および弁の開度の調整等を行う。
【0065】
また、室内制御部8bは、室内機IU1〜IU9の動作等に関する情報(以下、監視データという)を集中管理コントローラ1からの命令に応じて集中管理コントローラ1に送信する。室内機IU1〜IU9の監視データには、室内機IU1〜IU9の運転設定(起動/停止の起動状態、設定温度、冷房/暖房/送風等の運転モードなど)、室内温度、室内機IU1〜IU9に含まれる各種部品の状態値(例えば、室内ファンの回転数、冷媒回路の所定の位置における冷媒の温度および圧力を含む)、およびリモコン50の操作履歴を示す情報が含まれる。
【0066】
一方、室外制御部8aは、室外機OU1〜OU9の動作等に関する情報(以下、監視データという)を集中管理コントローラ1からの命令に応じて集中管理コントローラ1に送信する。室外機OU1〜OU9の監視データには、室外機OU1〜OU9の運転設定(無制限モード/能力制限モードの能力制御設定)、外気温度、および室外機OU1〜OU9に含まれる各種部品の状態値(例えば、圧縮機の周波数、室外ファンの回転数、冷媒回路の所定の位置における冷媒の温度および圧力を含む)を示す情報が含まれる。なお、能力制御設定には、能力が制限されない無制限モード(通常モード)と、エネルギー消費量が無制限モードで動作する場合の約70%又は40%となるように制御される能力制限モードとがある。能力制限モードは、主として室外機OU1〜OU9に含まれるインバータタイプの圧縮機の上限周波数を制限することにより実現される。
【0067】
なお、室内温度、外気温度、ならびに室内機IU1〜IU9および室外機OU1〜OU9に含まれる各種部品の状態値は、図示されないセンサ等により検知される。
【0068】
(2−2)集中管理コントローラ
集中管理コントローラ1は、空調設備2が設置されている建物の管理室の壁面等に取り付けられており、空調設備2の管理者から空調設備2に対する運転指令(例えば、室内機IU1〜IU9の起動又は停止を命じたり、室内機IU1〜IU9の設定温度の変更を命じたり、室内機IU1〜IU9の運転モードの変更を命じたり、室外機OU1〜OU9の能力制御設定の変更を命じたりするもの)の入力を受け付ける操作インタフェース機器である。
図4に示すように、集中管理コントローラ1は、通信線3を介して空調設備2の制御部8a,8bに接続されており、制御部8a,8b経由で空調設備2の動作を監視および制御する。集中管理コントローラ1は、通信部11、制御部12、出力部13、入力部14および記憶部15を有している。
【0069】
通信部11は、集中管理コントローラ1を通信線3に接続可能にするネットワークインターフェースである。
【0070】
制御部12は、主としてCPU、ROMおよびRAMから構成されており、記憶部15内の所定のプログラムを読み出して実行することにより、監視部12a、運転制御部12b、および省エネ性判断部12c等として動作する。
【0071】
監視部12aは、所定の時間間隔で(本実施形態では、1分毎に)、室内機IU1〜IU9の監視データを室内制御部8bから収集する。さらに、監視部12aは、所定の時間間隔で(本実施形態では、1分毎に)、室外機OU1〜OU9の監視データを室外制御部8aから収集する。監視データは、記憶部15内に保存される。監視部12aは、所定のタイミングで、記憶部15内の監視データが所定の条件を満たすか否かを判断することにより、空調設備2およびその設置環境の状態を監視する。例えば、所定の時間間隔で異常の有無が検出されたり、後述するサーモオフ設定マップ(室内機IU1〜IU9の運転設定のパターン)が作成されたりする。サーモオフ設定マップとは、9つの室内機IU1〜IU9のうちのサーモオフ設定の室内機(以下、サーモオフ室内機)の出現パターンをマップ的に示すものである。
【0072】
運転制御部12bは、空調設備2の管理者から入力部14を介し入力される運転指令(運転スケジュールの形式のものを含む)に従って、空調設備2の動作を制御する。また、集中管理コントローラ1が他の制御機器に接続されている場合、例えば、インターネットを介し遠隔管理サーバ(図示されない)に接続されている場合には、当該他の制御機器より送信され、記憶部15内に記憶されている運転指令に従って、空調設備2の動作を制御する。また、監視部12a等により空調設備2又はその設置環境の状態が所定の状態にあると判断される場合には、当該所定の状態に予め対応付けられている制御を実行する(例えば、監視部12aにより所定の異常が検出される場合には、空調設備2の運転を停止させる)。より具体的には、運転制御部12bは、適当な運転指令を適当なタイミングで適当な室内機IU1〜IU9又は室外機OU1〜OU9に送信する。例えば、「室内機IU1〜IU9に、毎日9時から18時まで、設定温度27℃で、冷房モードでの運転を行わせる」という運転スケジュールが組まれている場合には、運転制御部12bは、室内機IU1〜IU9に対し、毎日9時になると、起動指令とともに、設定温度を27℃に、運転モードを冷房モードに設定する指令を送信する。さらに、運転制御部12bは、18時までの間、監視部12a経由で室内機IU1〜IU9の運転設定を継続的に監視し、運転設定の変更が検出されると、その所定の時間後(本実施形態では、30分後)に、運転設定の変更が検出された室内機IU1〜IU9に対し、同様の指令を再度送信する。なお、室内機IU1〜IU9上では、集中管理コントローラ1からのものであるか、リモコン50からのものであるかに関わらず、室内機IU1〜IU9が受け取った最新の運転指令が優先的に実行される。
【0073】
省エネ性判断部12cは、所定の時間間隔で(本実施形態では、1分毎に)、現在の運転設定による室内機IU1〜IU9全体での省エネ性を判断する。
【0074】
なお、後述する運転設定見直し制御は、監視部12a、運転制御部12b及び省エネ性判断部12cにより協働で実行される。
【0075】
出力部13は、主としてディスプレイおよびスピーカから構成されている。入力部14は、主として各種操作ボタンおよび出力部13のディスプレイと一体的に構成されているタッチパネルから構成されている。記憶部15は、主としてフラッシュメモリから構成されている。
【0076】
(2−3)運転設定見直し制御の流れ
以下、
図5を参照しつつ、集中管理コントローラ1により実行される運転設定見直し制御の流れについて説明する。
【0077】
図5に示す運転設定見直し制御は、所定の時間間隔で(本実施形態では、1分毎に)実行される処理であり、省エネ性の観点からサーモオフ室内機をサーモオン設定に変更すべきか否かを判断し、当該変更により現在よりも省エネ性が高くなると判断される場合には当該変更を行い、高くならないと判断される場合には現在の運転設定を維持する処理である。なお、簡単のため、本実施形態では、サーモオン設定の室内機(以下、サーモオン室内機)については設定温度が全て同じに設定されている場合を前提とする処理について説明するが、本発明に係る運転設定見直し制御は、かかる前提を要するものに限定されない。
【0078】
図5に示す運転設定見直し制御の概略を説明すると、まず室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Qの予測モデルが選択され(ステップS101,S102)、続いて現在のサーモオフ設定マップが作成され(ステップS103)、続いて現在のサーモオフ設定マップに基づいて室内機IU1〜IU9の現在の能力マップが作成される(ステップS104)。続いて、予測モデルに現在のサーモオフ設定マップおよび現在の能力マップを適用することにより、現在の運転設定による室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Q1が予測される(ステップS105)。続いて、サーモオフ室内機をサーモオフ設定に維持した場合およびサーモオン設定に変更した場合のどちらの方が室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量が少なくなるのかが判断される(ステップS106)。続いて、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更した方がより省エネルギーになると判断される場合には、サーモオフ室内機がサーモオン設定に変更され(ステップS107)、より増エネルギーになると判断される場合には、処理が終了する。
【0079】
次に、
図5に示す運転設定見直し制御の詳細を説明する。
【0080】
まず、ステップS101では、省エネ性判断部12cは、室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Qの予測モデルとして、高負荷モデル又は低負荷モデルのいずれかを選択する。より具体的には、室内機IU1〜IU9の負荷が所定の値(本実施形態では、5℃)以上であれば高負荷モデルを選択し、当該所定の値より小さければ低負荷モデルを選択する。なお、本実施形態において、負荷とは、外気温度と設定温度との差の絶対値であり、記憶部15内の監視データを参照することにより算出される。
【0081】
続くステップS102では、省エネ性判断部12cは、能力制限モードの実行中であるか否かを判断し、実行中であると判断される場合には、ステップS102で選択された高負荷モデル又は低負荷モデルに対し能力制限を設定し、実行中でないと判断される場合には、能力制限を設定することなく、ステップS103に進む。なお、能力制限モードの実行中であるか否は、記憶部15内の監視データを参照することにより判断される。
【0082】
ステップS101,S102の終了時には、室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Qの予測モデルとして、
図6に示す4つのモデル(予測モデルI〜予測モデルIV)の中の1つが選択されている。予測モデルIは、高負荷時かつ能力制限なしの場合に選択されるモデルであり、予測モデルIIは、低負荷時かつ能力制限なしの場合に選択されるモデルであり、予測モデルIIIは、高負荷時かつ能力制限ありの場合に選択されるモデルであり、予測モデルIVは、低負荷時かつ能力制限ありの場合に選択されるモデルである。室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Qは、予測モデルI〜予測モデルIVによれば、それぞれ以下の式1〜式4により算出される。
Q=1.7α+2.2β+3.0γ+4.0δ+1.0ε・・・(式1)
Q=1.5α+2.0β+2.5γ+3.0δ+1.0ε・・・(式2)
Q=1.7α+2.0β+2.0γ+2.0δ+1.0ε・・・(式3)
Q=1.5α+2.0β+2.0γ+2.0δ+1.0ε・・・(式4)
【0083】
なお、αは、1台の隣接機がサーモオフ設定であるサーモオン室内機の台数であり、βは、2台の隣接機がサーモオフ設定であるサーモオン室内機の台数であり、γは、3台の隣接機がサーモオフ設定であるサーモオン室内機の台数であり、δは、4台の隣接機がサーモオフ設定であるサーモオン室内機の台数である。εは、標準運転機の台数である。標準運転機とは、全ての隣接機がサーモオン設定であるサーモオン室内機のことである。なお、サーモオフ状態とは、室内機の熱交換器内を冷媒が全く流れない又は殆ど流れず、実質的に熱交換が停止している状態を言い、サーモオン状態とは、室内機の熱交換器内を冷媒が適度に流れている状態を言う。
【0084】
図6の各予測モデルの5本の棒グラフおよびその下の数値は、左から順に、標準運転機、1台の隣接機がサーモオフ設定であるサーモオン室内機、2台の隣接機がサーモオフ設定であるサーモオン室内機、3台の隣接機がサーモオフ設定であるサーモオン室内機、4台の隣接機がサーモオフ設定であるサーモオン室内機1台分のエネルギー消費量を示している。なお、
図6に示されるエネルギー消費量は、標準運転機1台分のエネルギー消費量を1.0とした場合の相対量となっている。サーモオン室内機のエネルギー消費量がサーモオフ設定の隣接機の台数が多くなるほど多くなると評価されているのは、上記の実験から得られる知見のとおり、サーモオン室内機がサーモオフ設定の隣接機付近のエリアまで空調すると予測されるからである。
【0085】
また、
図6に示すとおり、少なくとも1台の隣接機がサーモオフ設定であるサーモオン室内機においては、高負荷モデルでは低負荷モデルよりもエネルギー消費量が多く評価されている。また、能力制限モードの実行中には、圧縮機の上限周波数が制限され、エネルギー消費量にも上限が生まれる。その結果、室内機1台分のエネルギー消費量の相対量は、サーモオフ設定の隣接機の台数に関わらず、2.0で頭打ちとなっている。
【0086】
さて、ステップS102が終了すると、運転設定見直し制御は、ステップS103に進む。ステップS103では、監視部12aは、サーモオフ設定マップを作成する。サーモオフ設定マップとは、9つの室内機IU1〜IU9のうちのサーモオフ室内機の出現パターンをマップ的に示すものであり、例えば、3×3の9つの室内機IU1〜IU9にそれぞれ対応付けられている3×3の2次元配列メモリの9つの要素に対し、それぞれサーモオフ設定を示す「0」又はサーモオン設定を示す「1」のいずれかの値を格納したものである。なお、室内機IU1〜IU9がサーモオフ設定であるかサーモオン設定であるかは、記憶部15内の監視データを参照することにより判断される。
【0087】
続くステップS104では、省エネ性判断部12cは、ステップS103で作成されたサーモオフ設定マップを参照し、能力マップを作成する。能力マップは、例えば、以下の手順で作成される。まず、プレ能力マップが作成される。プレ能力マップとは、3×3の9つの室内機IU1〜IU9にそれぞれ対応付けられている3×3の2次元配列メモリの9つの要素に対し、それぞれ4つの値を格納したものである。各要素の4つの値は、それぞれ4つの吹出口方向の隣接機の様子を示す値であり、各値は、サーモオフ設定であれば「0」、サーモオン設定であれば「1」、窓や壁が存在し隣接機が存在しない場合は「2」となる。なお、隣接機がサーモオフ設定であるかサーモオン設定であるかは、サーモオフ設定マップを参照することにより判断され、窓や壁が存在し隣接機が存在しないか否かは、予め記憶部15内に格納されている情報に従って判断される。次に、サーモオフ設定マップおよびプレ能力マップを参照し、能力マップが作成される。能力マップとは、9つの室内機IU1〜IU9のそれぞれに要求される能力をマップ的に示すものであり、3×3の9つの室内機IU1〜IU9にそれぞれ対応付けられている3×3の2次元配列メモリの9つの要素に対し、それぞれ隣接するサーモオフ室内機の数を示す値を格納したものである。従って、能力マップに含まれる3×3の9つの値は、それぞれ「0」〜「4」のいずれかの値となる。なお、室内機に隣接するサーモオフ室内機の数は、当該室内機に対応するプレ能力マップの4つの値の中の「0」の数を集計することにより得られる。
【0088】
続くステップS105では、省エネ性判断部12cは、ステップS101,S102で選択された予測モデルにステップS103で作成されたサーモオフ設定マップ及びステップS104で作成された能力マップを適用することにより、現在の運転設定による室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Q1を予測する。より具体的には、上記式1〜式4の4つのエネルギー消費量Qの算出式中から、ステップS101,S102で選択された予測モデルに対応する式を1つ選択し、当該式のα〜εに適当な値を代入する。変数α〜εの値は、サーモオフ設定マップおよび能力マップを参照することにより決定される。すなわち、省エネ性判断部12cは、サーモオフ設定マップの「1」に対応する能力マップの要素に格納されている値の中で、「0」〜「4」のそれぞれの数を集計する。そして、「1」の集計値をαとし、「2」の集計値をβとし、「3」の集計値をγとし、「4」の集計値をδとし、「0」の集計値をεとする。
【0089】
続くステップS106では、省エネ性判断部12cは、現在の運転設定による室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Q1と、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更した場合の室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Q2とを比較する。Q1>Q2であれば、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更した方が室内機IU1〜IU9全体ではより省エネルギーになると判断し、ステップS107に進む。Q1≦Q2であれば、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更した方が室内機IU1〜IU9全体ではより増エネルギーになると判断し、ステップS107をスキップし、処理を終了する。なお、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更した場合には、α〜δ=0、ε(標準運転機の台数)=9となるため、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更した場合の室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Q2は、以下の式5により算出される。
Q2=1.0ε・・・(式5)
【0090】
ステップS107では、運転制御部12bは、サーモオフ設定マップを参照し、サーモオフ室内機に対し運転設定をサーモオン設定にする運転指令を送信する。
【0091】
(2−4)特徴
(2−4−1)
第1実施形態では、室内機IU1〜IU9全体でより省エネルギーになると判断される場合には、室内機IU1〜IU9に含まれるサーモオフ室内機の運転設定が自動的にサーモオン設定となる。従って、室内機IU1〜IU9全体での省エネ性が向上するようになっている。
【0092】
(2−4−2)
また、室内機IU1〜IU9全体での省エネ性の判断時には、現在の運転設定による室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Q1およびサーモオフ室内機をサーモオン設定に変更した場合の室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Q2が定量化され、考慮されるようになっている。さらに、エネルギー消費量Q1,Q2の算出に用いられる予測モデルの選択時には、室内機IU1〜IU9の負荷および室内機IU1〜IU9の能力制限が考慮されるようになっている。従って、エネルギー消費量Q1,Q2が適切に予測されるようになっている。
【0093】
(2−4−3)
また、現在の運転設定による室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Q1を算出するに当たり、各室内機IU1〜IU9のエネルギー消費量が、当該室内機に隣接するサーモオフ室内機の数に応じて決定されるようになっている。従って、エネルギー消費量Q1が簡易に定量化されるようになっている。
【0094】
(3)第2実施形態
次に、第2実施形態に係る集中管理コントローラ101について説明する。
【0095】
第2実施形態に係る集中管理コントローラ101の設置環境は、第1実施形態に係る集中管理コントローラ1と同じである。また、
図7に示すように、第2実施形態に係る集中管理コントローラ101の構成は、監視部12aおよび省エネ性判断部12cがそれぞれ監視部112aおよび省エネ性判断部112cに置き換わる点以外は、第1実施形態に係る集中管理コントローラ1と同じである。従って、以下では、
図8を参照しつつ、集中管理コントローラ1との相違点となる、集中管理コントローラ101により実行される運転設定見直し制御の流れについて説明し、その他の点については第1実施形態と同様であるとして説明を省略する。
【0096】
(3−1)運転設定見直し制御の流れ
図8に示す運転設定見直し制御は、第1実施形態と同様に、所定の時間間隔で(本実施形態では、1分毎に)実行される処理であり、省エネ性の観点からサーモオフ室内機をサーモオン設定に変更すべきか否かを判断し、当該変更により現在よりも省エネ性が高くなると判断される場合には当該変更を行い、高くならないと判断される場合には現在の運転設定を維持する処理である。なお、簡単のため、本実施形態では、サーモオン室内機については設定温度が全て同じに設定されている場合を前提とする処理について説明するが、本発明に係る運転設定見直し制御は、かかる前提を要するものに限定されない。
【0097】
図8に示すように、第1実施形態および第2実施形態における運転設定見直し制御の主な相違点は、第2実施形態ではステップS101の前にステップS201が挿入される点にある。ステップS101〜S106では、監視部112aおよび省エネ性判断部112cがそれぞれ監視部12aおよび省エネ性判断部12cの処理を同様に行う。
【0098】
ステップS201では、監視部112aは、サーモオフ室内機の数(室内機IU1〜IU9の運転設定のパターン)を算出する。サーモオフ室内機の数は、記憶部15内の監視データを参照することにより算出される。続いて、省エネ性判断部112cは、サーモオフ室内機の数が2以下であると判断される場合には、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更した方が室内機IU1〜IU9全体ではより省エネルギーになると判断し、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更するステップS107に進む。サーモオフ室内機の数が7以上であると判断される場合には、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更した方が室内機IU1〜IU9全体ではより増エネルギーになると判断し、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更するステップS107をスキップし、処理を終了する。サーモオフ室内機の数が3以上、6以下であると判断される場合には、ステップS101に進む。
【0099】
つまり、第2実施形態に係る運転設定見直し制御では、まず、サーモオフ室内機の数に基づいて、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更すべきか否かを判断する。より具体的には、サーモオフ室内機が2台以下であれば、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更し、7台以上であれば、サーモオフ室内機をサーモオフ設定に維持する。前者の場合には、当該2台以下のサーモオフ室内機が室内空間S内のどこに配置されていようとも、高負荷時又は低負荷時のどちらであろうとも、能力制限があろうともなかろうとも、当該2台以下のサーモオフ室内機をサーモオン設定に変更することにより、室内機IU1〜IU9全体では確実に省エネルギーになると見込まれるからである。一方、後者の場合には、当該7台以上のサーモオフ室内機が室内空間S内のどこに配置されていようとも、高負荷時又は低負荷時のどちらであろうとも、能力制限があろうともなかろうとも、当該7台以上のサーモオフ室内機をサーモオン設定に変更すれば、室内機IU1〜IU9全体では確実に増エネルギーになると見込まれるからである。ところが、3台以上、6台以下のサーモオフ室内機をサーモオン設定に変更した場合の室内機IU1〜IU9全体で省エネ性は、サーモオフ室内機の配置、負荷の高低、能力制限の有無等の条件による。従って、サーモオフ室内機の数が3以上、6以下となる場合には、ステップS101〜S106を経ることにより、現在の運転設定による室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Q1を予測し、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更すべきか否かを判断する。
【0100】
(3−2)特徴
第2実施形態では、室内機IU1〜IU9全体での省エネ性の判断は、サーモオフ室内機の数、又はサーモオフ室内機の数だけでは判断できない場合にあっては、現在の運転設定による室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Q1およびサーモオフ室内機をサーモオン設定に変更した場合の室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Q2に基づいて行われるようになっている。
【0101】
(4)第3実施形態
次に、第3実施形態に係る集中管理コントローラ201について説明する。
【0102】
図9に示すように、第3実施形態に係る集中管理コントローラ201の設置環境は、第1実施形態とは異なり、室内空間Sは、4台の室内機IU1〜IU4がそれぞれ主として空調する4つの空調エリアS1〜S4から構成されている。一方、
図10に示すように、第3実施形態に係る集中管理コントローラ201の構成は、監視部12aおよび省エネ性判断部12cがそれぞれ監視部212aおよび省エネ性判断部212cに置き換わる点以外は、第1実施形態に係る集中管理コントローラ1と同じである。従って、以下では、
図11を参照しつつ、集中管理コントローラ1との相違点となる、集中管理コントローラ201により実行される運転設定見直し制御の流れについて説明し、その他の点については第1実施形態に係る集中管理コントローラ1と同様であるとして説明を省略する。
【0103】
(4−1)運転設定見直し制御の流れ
図11に示す運転設定見直し制御は、第1実施形態と同様に、所定の時間間隔で(本実施形態では、1分毎に)実行される処理であり、省エネ性の観点からサーモオフ室内機をサーモオン設定に変更すべきか否かを判断し、当該変更により現在よりも省エネ性が高くなると判断される場合には当該変更を行い、高くならないと判断される場合には現在の運転設定を維持する処理である。なお、簡単のため、本実施形態では、サーモオン室内機については設定温度が全て同じに設定されている場合を前提とする処理について説明するが、本発明に係る運転設定見直し制御は、かかる前提を要するものに限定されない。
【0104】
第1実施形態および第3実施形態における運転設定見直し制御の主な相違点は、第3実施形態ではサーモオフ室内機をサーモオン設定に変更すべきか否が
図12に示すパターンテーブルTに基づいて判断される点にある。パターンテーブルTは、サーモオフ設定マップと、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更した場合の室内機IU1〜IU4全体での省エネ性との関係を規定する情報を格納するものである。パターンテーブルTは、知見(経験知)、シミュレーション結果、試験結果等に基づき構築されたモデルにより導き出される情報であり、記憶部15内に予め記憶されている。
【0105】
まず、ステップS301では、監視部212aは、サーモオフ設定マップを作成する。サーモオフ設定マップとは、4つの室内機IU1〜IU4のうちのサーモオン室内機の出現パターンをマップ的に示すものであり、例えば、2×2の4つの室内機IU1〜IU4にそれぞれ対応付けられている2×2の2次元配列メモリの4つの要素に対し、それぞれサーモオフ設定を示す「0」又はサーモオン設定を示す「1」のいずれかの値を格納したものである。なお、室内機IU1〜IU4がサーモオフ設定であるかサーモオン設定であるかは、記憶部15内の監視データを参照することにより判断される。
【0106】
続くステップS302では、省エネ性判断部212cは、ステップS301で作成されたサーモオフ設定マップをパターンテーブルTに照合することにより、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更すべきか否かを判断する。より具体的には、パターンテーブルTにおいて、ステップS3で作成されたサーモオフ設定マップに対応する、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更した場合の室内機IU1〜IU4全体での省エネ性を示す情報が「高い」であれば、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更した方が室内機IU1〜IU4全体では省エネルギーになると判断し、ステップS303に進む。一方、「低い」であれば、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更した方が室内機IU1〜IU4全体ではより増エネルギーになると判断し、ステップS303をスキップし、運転設定見直し制御は終了する。
【0107】
ステップS303では、運転制御部12bは、サーモオフ設定マップを参照し、サーモオフ室内機に対し運転設定をサーモオン設定にする運転指令を送信する。
【0108】
(4−2)特徴
第3実施形態では、室内機IU1〜IU4全体での省エネ性の判断は、サーモオフ設定マップをパターンテーブルTに照合することにより行われるようになっている。
【0109】
(5)第4実施形態
次に、第4実施形態に係る集中管理コントローラ301について説明する。
【0110】
第4実施形態に係る集中管理コントローラ301の設置環境は、第1実施形態に係る集中管理コントローラ1と同じである。また、
図16に示すように、第4実施形態に係る集中管理コントローラ301の構成は、運転制御部12bおよび省エネ性判断部12cがそれぞれ運転制御部312bおよび省エネ性判断部312cに置き換わる点以外は、第1実施形態に係る集中管理コントローラ1と同じである。また、室内機IU1〜IU4の室内制御部8bは、室内制御部38bに置き換わる。室内制御部8bと室内制御部38bとの相違点は、室内制御部38bは、上述の室内制御部8bの構成及び機能に加えて後述するリモコン50からの指令を受信した場合に当該指令に従わずに指令を集中管理コントローラ301に転送する機能を持つ点である。従って、以下では、
図16及び
図17を参照しつつ、集中管理コントローラ1との相違点となる、集中管理コントローラ301により実行される運転設定見直し制御の流れについて説明し、その他の点については第1実施形態と同様であるとして説明を省略する。
【0111】
(5−1)運転設定見直し制御の流れ
図17に示す運転設定見直し制御は、第1実施形態と異なり、リモコン50から送信されてきた運転指令(特に、設定温度をシフトする指令など、運転設定を変更する指令)に従って室内機の運転設定を変更するタイミングに達する度に実行される。つまり、第4実施形態では、ユーザーによりリモコン50を用いて1つの室内機へ運転設定を変更する指令が送信された際、当該室内機の室内制御部38bは、リモコン50から送信された指令に従わずに当該指令を集中管理コントローラ301に転送する。運転設定見直し制御は、集中管理コントローラ301が当該室内機から送信されてきた当該指令を受信すると開始される。運転制御部312bは、省エネ性の観点から当該室内機を当該運転指令に従う運転設定に変更すべきか否かを判断し、当該運転設定により空調要素全体で増エネルギーにならないと判断される場合(省エネルギーにも増エネルギーにもならない場合を含む)には当該室内機を当該運転設定で制御し、空調要素全体で増エネルギーになると判断される場合には当該室内機を現在の運転設定に維持する処理となる。
【0112】
図17に示す運転設定見直し制御は、上述の運転設定見直し制御が開始するタイミングが異なることに加えて、ステップS101の前にステップS400が挿入されており、またステップS106の代わりにステップS406が、ステップS107の代わりにステップS407が実行される以外は、
図5に示す第1実施形態にかかる運転設定見直し制御と同じである。ステップS400では、運転指令が室内機の運転設定を省エネルギー側に変更する指令か否かを判断し、省エネルギー側に変更する指令であれば、次のステップS101へ進む。それ以外の場合は、ステップS407へ進む。なお、運転設定を省エネルギー側に変更する指令とは、例えば、冷房中に設定温度をより高くする、或いは、暖房中に設定温度をより低くする、等の指令である。ステップS406では、エネルギー消費量Q2の代わりに、室内機の運転設定を運転指令に従って変更した場合の室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Q3が省エネ性判断部312cにより算出(定量化)される。そして、エネルギー消費量Q1がエネルギー消費量Q3よりも小さいか否かが省エネ性判断部312cにより判定され、エネルギー消費量Q1がエネルギー消費量Q3よりも小さい場合は、当該運転設定見直し制御は終了する。それ以外の場合は、ステップS407が実行される。ステップS407では、運転制御部312bにより上記の運転指令送信の対象である室内機に運転設定を変更する上記運転指令が送信される。
【0113】
(5−2)特徴
第4実施形態の運転制御見直し制御では、判断部312cは、特定部12aが特定したパターンに基づいて、一部の室内機の運転設定を省エネルギー側に変更した場合に室内機IU1〜IU9全体でより増エネルギーになるか否かを判断し、運転制御部312bは、判断部が室内機IU1〜IU9全体でより増エネルギーになると判断した場合に、一部の室内機を変更をしない運転設定に従って制御する。第4の実施形態によれば、たとえ一部の室内機について見ると省エネルギーになるような設定変更をする運転指令であっても、室内機全体では増エネルギーになってしまうような場合には、運転指令を室内機に送信するのを控えることができる。
【0114】
(6)変形例
(6−1)
上記実施形態では、運転設定見直し制御を、適切であると判断される場合にはサーモオフ室内機をサーモオン設定に変更する制御とした。しかしながら、他の所定の運転設定がされている室内機を他の増エネルギー側の所定の運転設定に変更する制御としてもよい。
【0115】
例えば、設定温度が所定の範囲に設定されている室内機の設定温度を増エネルギー側にシフトする制御としてもよい。より具体的な例としては、冷房運転時に設定温度が26℃の室内機の中に設定温度が28℃の室内機が混在している状況下で、設定温度が28℃の室内機の設定温度を26℃にシフトする制御としてもよい。かかる場合、例えば、監視部12a,112a,212aは、サーモオン設定マップに代えて設定温度マップ(9つの室内機IU1〜IU9の設定温度のパターンをマップ的に示すもの)を作成すればよい。
【0116】
具体的には、第1および第2実施形態では、設定温度マップを参照し、設定温度が省エネルギー側にシフトしている室内機(以下、省エネシフト室内機)の設定温度を増エネルギー側にシフトした方が室内機IU1〜IU9全体でより省エネルギーになるか否かを判断し、より省エネルギーになると判断される場合には、省エネシフト室内機の設定温度を増エネルギー側にシフトすればよい。なお、室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Qの式は、設定温度が1℃増エネルギー側又は省エネルギー側にシフトすると、エネルギー消費量が10%〜15%増加又は低下し、2℃増エネルギー側又は省エネルギー側にシフトすると、エネルギー消費量は20%〜30%増加又は低下するというような知見に従って、適宜用意することができる。もちろん、本変形例においても、負荷の高低、能力制限の有無等の条件に応じて、室内機1台分のエネルギー消費量の相対量を異なる値にすることができる。
【0117】
また、第3実施形態では、パターンテーブルTを、設定温度マップと、省エネシフト室内機の設定温度を増エネルギー側にシフトした場合の室内機IU1〜IU4全体での省エネ性との関係を規定するものとすればよい。
【0118】
第4実施形態では、運転設定見直し制御は、1つの室内機の運転設定を省エネルギー側に変更した場合に室内機IU1〜IU9全体で増エネルギーにならないと判断した場合に、当該1つの室内機の運転設定を変更していたが、かかる制御も上記に習って次のように変更してもよい。例えば、監視部12aは、設定温度マップを参照し、1つの室内機の設定温度を省エネルギー側にシフトした場合に室内機IU1〜IU9全体でより増エネルギーになるか否かを判断し、より増エネルギーにならないと判断される場合には、当該室内機の設定温度を省エネルギー側にシフトすればよい。
【0119】
(6−2)
上記実施形態では、運転設定見直し制御を、全てのサーモオフ室内機をサーモオン設定に変更すべきか否かを判断する制御とした。しかしながら、サーモオフ室内機が複数存在する場合においては、全てのサーモオフ室内機の中から選択される少なくとも一部のサーモオフ室内機を、サーモオン設定に変更すべきか否かを判断する制御としてもよい。
【0120】
サーモオフ室内機が複数存在する場合には、一部のサーモオフ室内機についてはサーモオン設定に変更した方が省エネルギーに貢献するが、他のサーモオフ室内機についてはサーモオフ設定を維持した方が省エネルギーに貢献するというような場合が生じ得る。そのような場合には、サーモオン設定に変更すれば省エネルギーに貢献すると判断し得るサーモオフ室内機だけサーモオン設定に変更すればよい。
【0121】
例えば、第1および第2実施形態では、複数のサーモオフ室内機にサーモオン設定又は現状のままのサーモオフ設定を様々なパターンで割当て、各パターンに係る室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量を算出する。そして、室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量が現在よりも少なくなるパターンがあれば、当該パターン(複数あれば、最小のエネルギー消費量をもたらすパターン)のとおりに運転設定を変更し、なければ運転設定を変更しないようにすればよい。
【0122】
また、第3実施形態では、例えば、パターンテーブルTを、サーモオフ設定マップ毎に、最小のエネルギー消費量をもたらすサーモオフ設定マップ、又は「運転設定を変更しない方が省エネ性が高い」を格納するものとしておけばよい。
【0123】
(6−3)
上記実施形態では、室内機の運転設定は、室内機単位で行われるようになっている。しかしながら、起動、停止、および送風等の一部の運転設定を室内機の4つの吹出口毎に行えるような構造を持つ室内機に対しては、そのような運転設定が室内機の4つの吹出口単位で行われるようにしてもよい。かかる場合、運転設定見直し制御においては、吹出口単位のサーモオフ設定マップを作成することにより、サーモオフ設定がされている吹出口をサーモオン設定に変更するようにしてもよい。
【0124】
(6−4)
上記実施形態では、室内機の負荷を、外気温度および設定温度から算出している。しかしながら、外気温度、設定温度、室内温度、熱交換器の温度、人の付近の温度等の他のセンサの検出値、又はその加工値として算出してもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、室内機の負荷を集中管理コントローラ1,101,201側で算出しているが、空調設備2側で算出し、集中管理コントローラ1,101,201に送るようにしてもよい。
【0126】
(6−5)
第2実施形態の運転設定見直し制御において、ステップS101〜S106を省略してもよい。言い換えると、サーモオフ室内機の数のみを基準として、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更すべきか否を判断するようにしてもよい。例えば、室内機9台の場合、サーモオフ室内機が5台以上であれば現状の運転設定を維持し、4台以下であればサーモオフ室内機を全てサーモオン設定に変更するようにすればよい。
【0127】
(6−6)
第2実施形態の運転設定見直し制御において、ステップS101〜S106の代わりに、第3実施形態のパターンテーブルTのようなパターンテーブルに基づいてサーモオフ室内機をサーモオン設定に変更すべきか否かを判断するステップを実行してもよい。言い換えると、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更すべきか否かを、サーモオフ室内機の数、又はサーモオフ室内機の数だけでは判断できない場合にあってはパターンテーブルに基づいて判断するようにしてもよい。
【0128】
(6−7)
第2実施形態の運転設定見直し制御において、ステップS201の後の分岐先を決定するサーモオフ室内機の数の比較基準数を、負荷の高低、能力制限の有無等の条件に応じて選択するようにしてもよい。例えば、ステップS201の前にステップS101,S102を実行し、続くステップS201では、負荷の高低、能力制限の有無等に応じて予め設定されている比較基準数を利用するようにしてもよい。
【0129】
(6−8)
第3実施形態では、パターンテーブルTは、様々なサーモオフ設定マップに対応する、室内機IU1〜IU4全体での省エネ性を示す情報を格納するものとなっている。しかしながら、パターンテーブルTを、サーモオフ設定マップ、負荷の高低、能力制限の有無等の2以上の条件を組み合わせた様々なパターンに対応する、室内機IU1〜IU4全体での省エネ性を示す情報を格納するものとしてもよい。
【0130】
(6−9)
第1および第2実施形態において、ぺリメータ側の室内機およびインテリア側の室内機のエネルギー消費量の予測モデルとしては、異なるものが選択されるようになっていてもよい。かかる場合、例えば、室内機IU1〜IU9のそれぞれについて、ぺリメータ側又はインテリア側のいずれに配置されているのかを示す情報を予め記憶部15内に記憶しておく。そして、ぺリメータ側の室内機に対しては、室内機1台分のエネルギー消費量がより多くなる予測モデル(高負荷モデル)を適用し、インテリア側の室内機に対しては、室内機1台分のエネルギー消費量がより少なくなる予測モデル(低負荷モデル)を適用すればよい。さらには、エネルギー消費量の予測モデルとしては、早朝や夜間はぺリメータ側の方が低負荷になる可能性があるため、時間帯によって異なるものが選択されるようになっていてもよい。また、季節によって、例えば、夏であるか冬であるか中間期であるかによって異なるものが選択されるようになっていてもよい。
【0131】
(6−10)
第1および第2実施形態では、室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Qの予測モデルを4つの予測モデルの中から選択しているが、予測モデルの選択肢はこれらに限られない。例えば、中負荷モデルを追加してもよいし、予測モデルを外気温度と設定温度との差等のパラメータにより定まる関数モデルとしてもよい。
【0132】
(6−11)
第1および第2実施形態の室内機IU1〜IU9全体でのエネルギー消費量Qの式におけるα〜εの係数は、空調設備2の構成および設置環境等に固有のものとするのが好ましい。従って、α〜εの係数は、知見(経験知)、シミュレーション結果、試験結果等に基づき構築されたモデルにより決定されている値をデフォルトとして、適当な選択肢の中から現地で調整できるようになっているのが好ましい。
【0133】
(6−12)
第1および第2実施形態のステップS102では、空調設備2の能力制限の有無を、能力制限モードの実行中であるか否かに基づいて動的に判断している。しかしながら、空調設備2の能力制限を、静的な情報に基づいて判断するようにしてもよい。例えば、空調設備2に固有の能力制限(圧縮機の上限周波数、クラス最大出力限界等)を示す情報を初期設定時等に予め記憶部15等に設定しておき、当該情報に基づいて能力制限を設定するようにしてもよい。
【0134】
(6−13)
上記実施形態の集中管理コントローラ1,101,202において、電力量、電気代等の形式で省エネ量を定量化し、利用者に向けて出力する省エネ性評価部を設けてもよい。特に省エネ量を電力量(例えば、1日の積算消費電力量、期間消費電力量)、電気代(例えば、年間電気代)等へ換算すれば、消費者に訴求し易い省エネ性の表現が可能となる。
【0135】
(6−14)
上記実施形態では、室内空間Sを9つ又は4つの空調エリアに分割する場合について説明した。しかしながら、本発明は、室内空間Sを他の任意の数の空調エリアに分割する場合に適用可能である。
【0136】
また、上記実施形態では、概ね等間隔に配置された同容量の9台又は4台の室内機が配置された室内空間を前提に説明した。しかしながら、本発明は、かかる前提を要するものに限定されない。
【0137】
図13は、同容量の室内機2台の例を、
図14は、同容量の室内機3台の例を、
図15は、容量が違う機種が共存している場合の室内機3台の例を示している。
【0138】
図13の環境下では、サーモオフ室内機が1台の場合には、低負荷時であればサーモオフ室内機をサーモオフ設定に維持し、高負荷時であればサーモオフ室内機をサーモオン設定に変更する、或いは適当な方法でサーモオフ室内機にサーモオン設定又は現状のままのサーモオフ設定のいずれかを選択するのが好ましい。なお、適当な方法としては、第1,2実施形態のように室内機全体でのエネルギー消費量Qを予測するか、第3実施形態のようなパターンテーブルTに照合することが考えられる。また、標準運転機が1台で、シフト運転機(設定温度を省エネルギー側にシフトした室内機)が1台である場合には、シフト運転機の設定温度を標準運転機の設定温度に合わせ、シフト運転機が2台である場合には、両室内機の設定温度をシフトしたままにするが好ましい。
【0139】
図14の環境下では、サーモオフ室内機が2台の場合には、サーモオフ室内機をサーモオフ設定に維持し、サーモオフ室内機が1台の場合には、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更するのが好ましい。
【0140】
図15の環境下では、3台の室内機のうち、1台のみが大容量の室内機になっている。かかる環境下では、サーモオフ室内機が2台の場合、或いは大容量の室内機のみがサーモオフ室内機である場合には、サーモオフ室内機をサーモオフ設定に維持するのが好ましい。一方、標準容量の室内機1台のみがサーモオフ室内機である場合には、サーモオフ室内機をサーモオン設定に変更する、或いは適当な方法でサーモオフ室内機にサーモオン設定又は現状のままのサーモオフ設定のいずれかを選択するのが好ましい。なお、適当な方法としては、第1,2実施形態のように室内機全体でのエネルギー消費量Qを予測するか、第3実施形態のようなパターンテーブルTに照合することが考えられる。
【0141】
(6−15)
第1および第2実施形態におけるエネルギー消費量Qの4つの予測モデルでは、送風運転機(送風運転中のサーモオフ状態の室内機)におけるエネルギー消費量がゼロとみなされている。しかしながら、式1〜式4の右辺に0.1ζの項を足すことにより、送風運転機のエネルギー消費量を考慮するようにしてもよい。ζは、送風運転機の台数である。
【0142】
(6−16)
上記実施形態では、室内機と室外機とが1対1で対応するペアタイプの空調設備について言及したが、本発明は、本態様に限定されない。例えば、本発明は、1台の室外機に対し複数台の室内機が冷媒配管を介して接続されるマルチタイプの空調設備に対しても適用可能である。また、本発明は、マルチタイプの空調設備とペアタイプの空調設備の両方を集中管理する集中管理コントローラにも適用可能である。なお、室内温度を監視しつつ運転制御を行っているマルチタイプの空調設備については、隣接する室内機どうしが互いに影響を与え合い易いため、本発明は特に効果的である。
【0143】
(6−17)
ステップS201の後の分岐先を決定するサーモオフ室内機の数の比較基準数(2台以下、3台〜6台、7台以上)は、空調設備、および/またはその設置環境等に依存するものである。従って、他の実施形態では、空調設備、および/またはその設置環境等に合わせて他の数値が選択されることは言うまでもない。
【0144】
(6−18)
上記実施形態において、室内機のエネルギー消費量の予測モデルを、室内機の待機電力を考慮したものに変更してもよい。例えば、上記予測モデルの式において、サーモオフ状態の室内機の台数θの項を追加し、θの係数を、標準運転機1台分のエネルギー消費量を1.0とした場合の、サーモオフ状態の室内機の待機電力によるエネルギー消費量の相対量(例えば、0.01)とすることが考えられる。
【0145】
(6−19)
上記実施形態においては、4つの吹出口が存在するタイプの室内機を示したが、本発明は、シングルフロータイプ又はダブルフロータイプの室内機にも適用可能である。また、本発明は、同一の空調対象空間内に、4つの吹出口が存在するタイプの室内機、シングルフロータイプの室内機、ダブルフロータイプの室内機等の他種類の室内機が混在する場合にも適用可能である。かかる場合、室内機のレイアウトに応じた予測モデルの式やパターンテーブルを用意すればよい。
【0146】
(6−20)
第4実施形態では、1つの室内機に対して運転設定を変更する指令がユーザーからリモコン50を介して送信されると、室内制御部38bは当該指令に従わずに、当該指令を集中管理コントローラ301に転送していた。しかし、他の実施形態においては、室内制御部38bは、室内機の運転設定を指令通りに変更してから当該指令を集中管理コントローラ301に転送してもよい。この場合、例えば、運転設定見直し制御の実行の結果、当該運転設定変更が室内機IU1〜IU9全体ではより増エネルギーになると判断された場合は、運転制御部は、運転設定が変更された室内機の運転設定を変更前の設定に戻す指令を当該室内機に対して送信する。
図17のステップS400において運転指令が省エネルギー側へ運転設定を変更する指令ではないと判断された場合は、ステップS407へは進まずに運転設定見直し制御は、終了する。
【0147】
(6−21)
第4実施形態では、1つの室内機に対して運転設定を変更する指令がユーザーからリモコン50を介して送信されると、室内制御部38bは当該指令に従わずに、当該指令を集中管理コントローラ301に転送していた。しかし、他の実施形態においては、室内制御部38bは、省エネルギー側に運転設定を変更する指令にのみ従わずに、当該指令を集中管理コントローラ301に転送し、それ以外の指令には従ってもよい。この場合、例えば、
図17に示す運転設定見直し制御では、ステップS101の前にあるステップS400を省けばよい。
【0148】
(6−22)
第4実施形態では、運転設定見直し制御は、予測モデルを確定し、能力マップを完成し、エネルギー消費量Q1の算出を行った後、室内機の運転設定を変更するか否かを判断していた。しかし、他の実施形態においては、当該運転設定見直し制御と第2実施形態に係る運転設定見直し制御を組み合わせて、サーモオフ室内機の数によっては、予測モデルの確定、能力マップの完成、及びエネルギー消費量Q1の算出を行わずに、室内機の運転設定を変更するか否かを判断してもよい。
【0149】
例えば、
図17に示した運転設定見直し制御は、
図18に示した運転設定見直し制御のように変形される。具体的には、ステップS401では、監視部は、1つの室内機の運転設定がリモコン50から送信されてきた運転指令に従って変更された場合のサーモオフ室内機の数を算出する。サーモオフ室内機の数は、記憶部15内の監視データを参照することにより算出される。続いて、省エネ性判断部は、サーモオフ室内機の数が2以下であると判断される場合には、上記1つの室内機の運転設定を変更しても室内機IU1〜IU9全体ではより増エネルギーにならないと判断し、上記1つの室内機の運転設定を変更するステップS407に進む。サーモオフ室内機の数が7以上であると判断される場合には、上記1つの室内機の運転設定を変更した方が室内機IU1〜IU9全体ではより増エネルギーになると判断し、上記1つの室内機の運転設定を変更するステップS407をスキップし、処理を終了する。サーモオフ室内機の数が3以上、6以下であると判断される場合には、ステップS101に進む。
【0150】
(6−23)
第3実施形態では、運転設定見直し制御は、室内機IU1〜IU4全体での省エネ性の判断は、サーモオフ設定マップをパターンテーブルTに照合することにより行われるようになっていた。また、第4実施形態では、運転設定見直し制御は、1つの室内機に対して運転設定を変更する指令がユーザーからリモコン50を介して送信されると、当該1つの室内機の運転設定を省エネルギー側に変更した場合に室内機IU1〜IU9全体で増エネルギーになるか否かを判断していた。しかし、他の実施形態においては、第3の実施形態に係る運転設定見直し制御と第4実施形態に係る運転設定見直し制御とを組み合わせて、1つの室内機の運転設定を省エネルギー側に変更すべきか否かが
図12に示すパターンテーブルTに基づいて判断されてもよい。
【0151】
例えば、第3実施形態に係る運転設定見直し制御のステップS301において、現在のサーモオフ設定マップを作成する代わりに、室内機の運転設定、例えば設定温度、がリモコン50から送信されてきた運転指令に従って変更された場合のサーモオフ設定マップを作成すればよい。
【0152】
(6−24)
第4実施形態では、運転設定見直し制御は、1つの室内機の運転設定を省エネルギー側に変更した場合に室内機IU1〜IU9全体で増エネルギーにならないと判断した場合に、当該1つの室内機の運転設定を変更していた。しかし、他の実施形態においては、1つの室内機の運転設定を省エネルギー側に変更した場合に室内機IU1〜IU9全体で省エネルギーになる(省エネルギーにも増エネルギーにもならない場合を含まない)と判断した場合に、当該1つの室内機の運転設定を変更してもよい。また、他の実施形態においては、1つの室内機の運転設定を変更する前に、前回の運転設定の変更からの経過時間を算出し、前回の運転設定の変更から所定の時間が経過している場合にのみ当該1つの室内機の運転設定を変更してもよい。これによれば、頻繁に運転設定が変更されることを防止でき、省エネ性をより高めることが出来る。具体的には、運転設定直後の過渡状態での増エネ運転の頻度の増加を回避することができる。更には、機器への負担を軽減することで、機器の故障低減及び長寿命化ができる。
【0153】
(6−25)
上記実施形態では、運転設定見直し制御は、室内機の運転設定を変更した場合に、室内機IU1〜IU9全体で省エネルギー或いは増エネルギーになるか否かを判断していた。第1〜第3実施形態では、運転設定見直し制御は、室内機の運転設定を増エネルギー側に変更した場合に、室内機IU1〜IU9全体で省エネルギーになるか否かを判断していた。第4実施形態では、運転設定見直し制御は、室内機の運転設定を省エネルギー側に変更した場合に室内機IU1〜IU9全体で増エネルギーになるか否かを判断していた。しかし、他の実施形態においては、運転設定見直し制御で見直す対象に運転設定の変更のほかに、室内機の起動及び/又は停止を含めてもよい。例えば、第1〜第3実施形態の運転設定見直し制御を変形して、停止中の室内機を起動した場合に、室内機IU1〜IU9全体で省エネルギーになるか否かを判断してもよい。また、第4実施形態の運転設定見直し制御を変形して、1つの室内機に対して運転停止の指令がリモコン50から送信された場合に上記運転設定見直し制御を実行し、室内機IU1〜IU9全体で増エネルギーになるか否かを判断してもよい。この場合、例えば、当該1つの室内機の運転を停止した場合に増エネルギーになると判断した場合は、運転を停止せずに、「エコモードによる停止禁止中」等のメッセージをリモコン50の表示部に表示してもよい。
【0154】
(6−26)
第4実施形態では、運転設定見直し制御は、1つの室内機の室内制御部38bから、リモコン50から送信されてきた設定変更の運転指令が集中管理コントローラ301へ転送されると開始され、当該1つの室内機の運転設定を省エネルギー側に変更した場合に室内機IU1〜IU9全体で増エネルギーになるか否かを判断していた。しかし、他の実施形態においては、当該運転設定見直し制御に加えて、所定の時間間隔で行われる上記第1〜第3実施形態にかかる運転設定見直し制御を行ってもよい。
【0155】
(6−27)
上記変形例の要旨を任意に組み合わせてもよい。