【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0053】
以下の実施例及び比較例に用いたリチウム遷移金属複合酸化物LiNi
xMn
yCo
zO
2(x+y+z=1、x>0、y>0、z>0)、及び、カーボンコートされたLiFePO
4は、周知の方法により合成した。前記LiFePO
4には合成された時点において既にカーボンコートが施された状態となっている。前記カーボンコートの量は前記LiFePO
4全体の1.1質量%を占める。前記LiFePO
4の平均粒子径は10.0μmであり、窒素吸着法によるBET比表面積は10.5m
2/gであった。
【0054】
[実施例1]
(正極の作製)
第1の活物質であるLiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2と、第2の活物質である前記LiFePO
4とを、質量比90:10で混合した。なお、LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2の平均粒子径及び窒素吸着法によるBET比表面積は、それぞれ12.1μm及び1.1m
2/gであった。この活物質混合物を本実施例における正極活物質とした。前記正極活物質と、導電剤であるカーボン材料と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、活物質混合物:カーボン材料:PVdF=88:7:5の質量比で含有し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒とする正極ペーストを調整した。該正極ペーストを、厚み15μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、80℃で乾燥させてNMPを除去した。正極の塗布質量は13.16mg/cm
2とした。該正極を120℃に加熱したローラープレス機により加圧成型して正極活物質層を成型した後、150℃で12時間減圧乾燥して、極板中の水分を除去した。ローラープレス後のアルミニウム箔と正極活物質層の厚みの合計は119μmであった。このときの極板の空孔率は35%であった。このようにして作製した正極を正極aとする。
【0055】
(負極の作製)
負極活物質であるグラファイトと、結着剤であるPVdFとを、グラファイト:PVdF=94:6の質量比で含有し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒とする負極ペーストを調整した。該負極ペーストを、厚み10μmの銅箔の両面に塗布し、80℃で乾燥させてNMPを除去した。負極の塗布質量は、6.85mg/cm
2である。該負極を120℃に加熱したローラープレス機により加圧成型して負極活物質層を成型した後、150℃で12時間減圧乾燥して、極板中の水分を除去した。ローラープレス後の銅箔と正極活物質層の厚みの合計は106μmであった。このときの極板の空孔率は35%であった。このようにして作製した負極を負極aとする。
【0056】
(非水電解質の作製)
エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1:1の割合で混合した混合溶媒に、含フッ素系電解質塩であるLiPF
6を1.0mol/lの濃度で溶解させ、非水電解質を作製した。該非水電解質中の水分量は50ppm未満とした。
【0057】
(非水電解質二次電池の作製)
実施例の電池の模式図を
図1に示す。セパレータとして、厚み27μm、透気度95秒及び空孔率50%のポリエチレン製微多孔膜を用い、前記セパレータ(13)が正極a(11)と負極a(12)との間に位置するようにして、上記正極、負極及びセパレータを扁平形状に巻回して発電要素(14)を作製した。このときの正極と負極の対向する面積(対向面積)は、6825cm
2とした。ここで、正極及び負極は、巻回軸線に沿って互いに離れる方向にずらして巻回されている。即ち、発電要素(14)の軸線方向両端部のうちの一方はセパレータ(13)から正極を構成する金属箔がはみ出し、発電要素(14)の軸線方向両端部のうちの他方は負極を構成する金属箔がはみ出している。アルミニウム製の正極集電板を、正極を構成する金属箔の、セパレータからはみ出した部分に、発電要素に対して厚み方向にまたがるような位置(15)に配置した後、金属箔と溶接した。負極側も同様に、銅製の負極集電板を、負極を構成する金属箔の、セパレータからはみ出した部分に、発電要素に対して厚み方向にまたがるような位置(16)に配置した後、金属箔と溶接した。このとき、集電板から最も離れた活物質までの距離(17)は、発電要素の幅方向の長さとなり、この距離は10cm以内であった。このようにして作製した正極、負極、セパレータからなる発電要素(14)に正負極集電板を溶接したものをアルミニウム製の角型電槽缶(高さ81mm、幅111.6mm、厚み20.6mm)に収納し、正負極端子を取り付けた。この容器内部に非水電解質を76g注入したのちに封口して、設計容量11.5Ahの非水電解質二次電池を作製した。この電池を本発明電池Aとする。
【0058】
[実施例2]
(正極の作製)
第1の活物質であるLiNi
1/4Mn
1/4Co
1/2O
2と、第2の活物質である前記LiFePO
4とを質量比90:10で混合した活物質混合物を正極活物質として用いたこと、正極の塗布質量を13.23mg/cm
2としたこと、及び、加圧成型後のアルミニウム箔と正極活物質層の厚みの合計を118μmとしたことを除いては実施例1と同様にして、正極bを作製した。なお、前記LiNi
1/4Mn
1/4Co
1/2O
2の平均粒子径及び窒素吸着法によるBET比表面積は、それぞれ6.2μm及び0.62m
2/gであった。
【0059】
(負極の作製)
負極の塗布質量を6.89mg/cm
2としたことを除いては実施例1と同様にして、負極bを作製した。このときの極板の空孔率は35%であった。
【0060】
(非水電解質二次電池の作製)
正極bと負極bとを用いたことを除いては実施例1と同様にして、本発明電池Bを作製した。
【0061】
[実施例3]
【0062】
(非水電解質二次電池の作製)
正極と負極の対向面積を7037cm
2としたことを除いては実施例2と同様にして、本発明電池Cを作製した。
【0063】
[実施例4]
(正極の作製)
正極の塗布質量を14.20mg/cm
2としたこと、及び、加圧成型後のアルミニウム箔と正極活物質層の厚みの合計を125μmとしたことを除いては実施例2と同様にして、正極dを作製した。
【0064】
(負極の作製)
負極の塗布質量を7.40mg/cm
2としたこと、及び、加圧成型後の銅箔と負極活物質層の厚みの合計を113μmとしたことを除いては実施例2と同様にして、負極dを作製した。このときの極板の空孔率は35%であった。
【0065】
(非水電解質二次電池の作製)
正極dと負極dとを用い、正負極の対向面積を6675cm
2としたことを除いては実施例1と同様にして、本発明電池Dを作製した。
【0066】
[実施例5]
(正極の作製)
第1の活物質である前記LiNi
1/4Mn
1/4Co
1/2O
2と、第2の活物質である前記LiFePO
4とを質量比92:8で混合した活物質混合物を正極活物質として用いたこと、正極の塗布質量を13.52mg/cm
2としたこと、及び、加圧成型後のアルミニウム箔と正極活物質層の厚みの合計を120μmとしたことを除いては実施例1と同様にして、正極eを作製した。
【0067】
(負極の作製)
負極の塗布質量を7.05mg/cm
2としたこと、及び、加圧成型後の銅箔と負極活物質層の厚みの合計を108μmとしたことを除いては実施例1と同様にして、負極eを作製した。このときの極板の空孔率は35%であった。
【0068】
(非水電解質二次電池の作製)
正極eと負極eとを用い、正負極の対向面積を6989cm
2としたことを除いては実施例1と同様にして、本発明電池Eを作製した。
【0069】
[実施例6]
(非水電解質二次電池の作製)
正極と負極の対向面積を7289cm
2とし、セパレータの厚みが22μmであったことを除いては実施例5と同様にして、本発明電池Fを作製した。
【0070】
[実施例7](正極の作製)
正極ペーストが含有する質量比率を、活物質混合物:カーボン材料:PVdF=89:6:5の質量比としたこと、正極の塗布質量を13.37mg/cm
2としたこと、及び、加圧成型後のアルミニウム箔と正極活物質層の厚みの合計を117μmとしたことを除いては、実施例5と同様にして、正極gを作製した。
【0071】
(非水電解質二次電池の作製)
正極gと負極eとを用い、正負極の対向面積を7049cm
2としたことを除いては実施例1と同様にして、本発明電池Gを作製した。
【0072】
[実施例8]
(正極の作製)
正極の塗布質量を13.53mg/cm
2としたことを除いては実施例5と同様にして、正極hを作製した。
【0073】
(負極の作製)
加圧成型後の銅箔と負極活物質層の厚みの合計を117μmとしたことを除いては実施例5と同様にして、負極hを作製した。このときの極板の空孔率は40%であった。
【0074】
(非水電解質二次電池の作製)
正極hと負極hとを用い、正負極の対向面積を7043cm
2としたことを除いては実施例1と同様にして、本発明電池Hを作製した。
【0075】
[実施例9](正極の作製)
正極の塗布質量を12.57mg/cm
2としたこと、及び、加圧成型後のアルミニウム箔と正極活物質層の厚みの合計を113μmとしたことを除いては、実施例1と同様にして、正極iを作製した。
【0076】
(負極の作製)
負極活物質であるグラファイトと、結着剤であるスチレンブタジエンゴム(SRB)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、グラファイト:結着剤=97:3の質量比で含有し、水を溶媒とする負極ペーストを調整した。該負極ペーストを、厚み10μmの銅箔の両面に塗布し、80℃で乾燥させた。負極の塗布質量は、6.37mg/cm
2である。該負極を常温のローラープレス機により加圧成型して負極活物質層を成型した後、150℃で12時間減圧乾燥して、極板中の水分を除去した。ローラープレス後の銅箔と正極活物質層の厚みの合計は94μmであった。このときの極板の空孔率は30%であった。このようにして作製した負極を負極iとする。
【0077】
(非水電解質二次電池の作製)
正極iと負極iとを用い、正負極の対向面積を7293cm
2としたことを除いては実施例1と同様にして、本発明電池Hを作製した。
【0078】
[実施例10]
(正極の作製)
第1の活物質である前記LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2と、第2の活物質である前記LiFePO
4とを質量比80:20で混合した活物質混合物を正極活物質として用いたこと、正極の塗布質量を12.92mg/cm
2としたこと、及び、加圧成型後のアルミニウム箔と正極活物質層の厚みの合計を118μmとしたことを除いては実施例1と同様にして、正極jを作製した。
【0079】
(負極の作製)
負極の塗布質量を6.78mg/cm
2としたこと、及び、加圧成型後の銅箔と負極活物質層の厚みの合計を103μmとしたことを除いては実施例1と同様にして、負極eを作製した。このときの極板の空孔率は35%であった。
【0080】
(非水電解質二次電池の作製)
正極jと負極jとを用い、正負極の対向面積を7433cm
2としたことを除いては実施例1と同様にして、本発明電池Jを作製した。
【0081】
[比較例1]
(正極の作製)
正極の塗布質量を11.13mg/cm
2としたこと及び加圧成型後のアルミニウム箔と正極活物質層の厚みの合計を103μmとしたことを除いては、実施例1と同様にして正極kを作製した。
【0082】
(負極の作製)
負極の塗布質量を5.8mg/cm
2としたこと及び加圧成型後の銅箔と負極活物質層の厚みの合計を91μmとしたことを除いては、実施例1と同様にして負極kを作製した。このときの極板の空孔率は35%であった。
【0083】
(非水電解質二次電池の作製)
比較例1の電池の模式図を
図2に示す。セパレータとして、厚み27μm、透気度95秒及び空孔率50%のポリエチレン製微多孔膜を用い、セパレータ(23)が正極e(21)と負極e(22)との間に位置するようにして、上記正極、負極及びセパレータを扁平形状に巻回して発電要素(24)を作製した。このときの正負極の対向面積は415.1cm
2である。ここで、正極及び負極は、巻回軸線に沿って両端が一致するように巻回されているため、発電要素(24)の軸線方向両端部から金属箔ははみ出していない。アルミニウム製の正極集電板と銅製の負極集電板とを、発電要素の巻き終わりの端の位置(25)にそれぞれ配置し、正極及び負極と溶接した。このとき、集電板から最も離れた活物質までの距離は、正負極の巻き始めから巻き終わりまでの長さとなり、この距離は65cmであった。このようにして作製した正極、負極、セパレータからなる発電要素に正負極集電板を溶接したものをアルミニウム製の角型電槽缶(高さ49.3mm、幅33.7mm、厚み5.17mm)に収納し、正負極端子を取り付けた。この容器内部に非水電解質を3.2g注入したのちに封口して、設計容量0.65Ahの非水電解質二次電池を作製した。この電池を比較電池Kとする。
【0084】
[比較例2]
(正極の作製)
前記LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2を単独で正極活物質として用いた。前記正極活物質と、導電剤であるカーボン材料と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、正極活物質:カーボン材料:PVdF=90:5:5の質量比で含有し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒とする正極ペーストを調整した。該正極ペーストを、厚み15μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、80℃で乾燥させてNMPを除去した。正極の塗布質量は13.43mg/cm
2とした。該正極を120℃に加熱したローラープレス機により加圧成型して正極活物質層を成型した後、150℃で12時間減圧乾燥して、極板中の水分を除去した。ローラープレス後のアルミニウム箔と正極活物質層の厚みの合計は116μmであった。このようにして作製した正極を正極lとする。
【0085】
(負極の作製)
負極の塗布質量を7.37mg/cm
2としたこと、及び、加圧成型後の銅箔と負極活物質層の厚みの合計を113μmとしたことを除いては実施例1と同様にして、負極lを作製した。このときの極板の空孔率は35%であった。
【0086】
(非水電解質二次電池の作製)
正極lと負極lとを用い、正負極の対向面積を6681cm
2としたことを除いては実施例1と同様にして、比較電池Lを作製した。
【0087】
[比較例3]
(正極の作製)
正極の塗布質量を10.00mg/cm
2としたこと及び加圧成型後のアルミニウム箔と正極活物質層の厚みの合計を90μmとしたことを除いては、比較例2と同様にして正極mを作製した。
【0088】
(負極の作製)
負極の塗布質量を5.51mg/cm
2としたこと、及び、加圧成型後の銅箔と負極活物質層の厚みの合計を87μmとしたことを除いては実施例1と同様にして、負極mを作製した。このときの極板の空孔率は35%であった。
【0089】
(非水電解質二次電池の作製)
正極mと負極mとを用い、正負極の対向面積を471.9cm
2としたことを除いては比較例1と同様にして、比較電池Mを作製した。
【0090】
<容量確認試験>
設計どおりの充放電容量が得られることを確認するために、上記のようにして作製した本発明電池及び比較電池について、容量確認試験を行った。
全ての本発明電池及び比較電池Lについては、充電電流11.5A、充電電圧4.2V、総充電時間3時間の定電流定電圧充電、及び、放電電流11.5A、終止電圧2.0Vの定電流放電からなる3サイクルの充放電を行った。比較例K及び比較電池Mについては、充電電流0.65A、充電電圧4.2V、総充電時間3時間の定電流定電圧充電、及び、放電電流0.65A、終止電圧2.0Vの定電流放電からなる3サイクルの充放電を行った。それぞれの充放電における3サイクル目の放電容量を定格容量とし、定格容量が設計容量とほぼ等しいことを確認した。定格放電容量を1時間で放電する電流の値を1CAといい、本発明電池及び比較電池Lにおいて1CA=11.5A、比較例K及び比較電池Mにおいては1CA=0.65Aである。
【0091】
<1kHzのインピーダンス測定>
全ての本発明電池及び比較電池に対して、SOC0%の状態で、日置電機株式会社製のACミリオームハイテスタを用いて、1kHzのインピーダンスを測定した。その結果を表1に示す。
ここで、「充電状態(SOC:State of Charge)」とは、可逆的に充放電可能な電池
電圧の範囲において、電池がどれだけ充電された状態であるかを示し、本実施例においては、SOC100%とは充電電流1CA、充電電圧4.2V、総充電時間3時間の定電流定電圧充電を行った直後の満充電状態をいい、SOC0%とは放電電流1CA、終止電圧2.0Vの定電流放電を行った直後の充電状態をいう。
【0092】
【表1】
【0093】
表1からわかるように、正負極の対向面積を大きくし、集電板と活物質との間の最大距離を短くした本発明電池本発明電池及び比較電池Lは、比較例K及び比較電池Mに比べて1kHzのインピーダンスが顕著に低下した。第1の活物質であるLiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2と、第2の活物質であるLiFePO
4とを、質量比90:10で混合した正極活物質を用いた本発明電池Aと、第1の活物質であるLiNi
1/4Mn
1/4Co
1/2O
2と、第2の活物質であるLiFePO
4とを質量比90:10で混合した正極活物質を用いた本発明電池Bとを比較すると、本発明電池Aの方がわずかではあるがインピーダンスは低い値を示したことから、第1の活物質としてLiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2を用いることが好ましいことがわかる。また、本発明電池Bに比べて、本発明電池Dはインピーダンスが上昇していることから、電極面積を大きくするとともに、活物質層の厚みを小さくすることが、1kHzのインピーダンスの低減に好ましいことがわかった。以上のことから、正負極の対向面積、即ち電極面積を大きくし、集電板と活物質との間の最大距離を短くすることによって、1kHzのインピーダンス、即ち内部抵抗が低減されることがわかった。
【0094】
ここで、内部抵抗は、正負極活物質や非水電解質に用いられる物質の性質、即ち化学的処方によって変化する抵抗と、電極面積や集電板の取り付け位置といった物理的処方によって変化する集電抵抗との和として考えることができる。本実施例においては、電池の物理的処方を変化させることによって、集電抵抗を低減させ、内部抵抗を低下させる例を示したが、活物質や非水電解質の組成や形状などを変化させることによっても内部抵抗を低減させることができ、このような方法でも本発明を実施することができる。
【0095】
<出力試験>
上記本発明電池及び比較電池のいくつかについて、SOC10%、SOC20%及びSOC50%の充電状態における出力性能試験を実施した。SOC10%、SOC20%及びSOC50%の充電状態における電池電圧は、それぞれ、3.49V、3.53V及び3.68Vである。
【0096】
各SOCの充電状態における出力性能試験は次の手順で行った。まず、供試電池を、充電電流1CA、充電電圧3.49V、総充電時間2時間の定電流定電圧充電により、SOC10%の充電状態とした。その後、放電電流1CAにて30秒間放電したのち、直前の放電電流と同じ電流値で30秒間充電した。同様に、放電電流値を3、5及び10CAに変更したこと以外は同様にして、前記放電及び充電をおこなった。それぞれの放電電流における10秒後の電圧と、そのときの放電電流値とをプロットしてV−I特性を描画した。そのV−I特性において、最小二乗法で直線近似をおこなった後、放電終止電圧に対応する最大出力電流値を算出し、さらに、前記最大出力電流値と前記放電終止電圧とを乗算することによってSOC10%出力を求めた。なお、前記放電終止電圧は2.0Vとした。
【0097】
充電電圧を3.53Vとすることにより、SOC20%の充電状態としたことを除いては、前記出力試験と同様にしてSOC20%出力を求めた。
【0098】
充電電圧を3.68Vとし、SOC50%の充電状態としたことを除いては、前記出力試験と同様にしてSOC50%出力を求めた。
【0099】
SOC20%出力をSOC50%出力で除して100を乗ずることによって、出力比A(%)を算出した。SOC10%出力をSOC50%出力で除して100を乗ずることによって、出力比B(%)を算出した。
【0100】
以上の結果を表2に示す。なお、表2において数字を記していない欄は、試験を行っていない。
【0101】
【表2】
【0102】
表2に示されるように、1kHzのインピーダンスが37.6mΩと高い比較電池Kに比べて、1kHzのインピーダンスが1.27mΩ以下である本発明電池A〜Jは、高い出力比と高いSOC20%出力あるいはSOC10%出力とを示した。なかでも、第1の活物質としてLiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2を用いた本発明電池Aは、72.3%という高い出力比Aと、2.76W/ccという高いSOC20%出力、74.7%という高い出力比Bと、2.85W/ccという高いSOC10%出力、とを示した。
【0103】
また、比較例2との比較から分かるように、1kHzのインピーダンスが1.27mΩ以下であっても、一般式LiNi
xMn
yCo
zO
2(x+y+z=1、x>0、y>0、z>0)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を単独で用いた場合には、出力性能が優れたものとはならなかった。
【0104】
以上のことから、一般式LiNi
xMn
yCo
zO
2(x+y+z=1、x>0、y>0、z>0)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含む第1の活物質とLiFePO
4を含む第2の活物質とを含有する正極を備え、1kHzのインピーダンスが1.27mΩ以下である非水電解質二次電池とすることで、高SOCでの出力に対する低SOCでの出力の比が高く、かつ高いエネルギー密度を有する非水電解質二次電池を提供できることがわかった。