(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配水量を、1日ないし1週間周期で繰り返す時刻成分、季節変動を表わす傾向成分、および、複数の外的要因成分に分解するための解析部と、解析対象期間の配水量実績値を時系列データとして蓄積する配水量実績値蓄積部とを具備し、前記解析部が前記配水量実績値蓄積部から配水量実績値を入力し、移動平均法によって1日ないし1週間周期の時刻成分を除去して時系列値である傾向成分を求める処理と、傾向成分を時間を変数とする季節変動近似式で表現することによって回帰分析により前記傾向成分の回帰係数を求める処理とを行うように構成するとともに、前記外的要因成分の実績値を蓄積する外的要因実績値蓄積部と、この外的要因成分の実績値と前記解析部で分解された外的要因成分とを入力し重回帰分析によって各外的要因成分の回帰係数を求める重回帰分析部と、前記解析部及び前記重回帰分析部が解析、分析した時刻成分、傾向成分および外的要因成分を備えた予測モデル式を取得しかつ外部から予測しようとする時刻に対応した各外的要因成分の予測値を入力して配水量予測値を算出する配水量算出部とを更に具備し、この配水量算出部が、前記時刻成分の周期を超えて設定された所定のモデル更新期間の間、同じ予測モデル式を用いて繰り返し配水量予測値を算出することを特徴とする水需要予測システム。
配水量を、1日ないし1週間周期で繰り返す時刻成分、および、季節変動を表わす傾向成分に少なくとも分解するための解析部と、解析対象期間の配水量実績値を時系列データとして蓄積する配水量実績値蓄積部とを具備し、前記解析部が前記配水量実績値蓄積部から配水量実績値を入力し、移動平均法によって1日ないし1週間周期の時刻成分を除去して時系列値である傾向成分を求める処理と、傾向成分を時間を変数とする季節変動近似式で表現することによって回帰分析により前記傾向成分の回帰係数を求める処理とを行うように構成するとともに、前記解析部が解析した時刻成分および傾向成分を備えた予測モデル式を取得し配水量予測値を算出する配水量算出部を更に具備し、この配水量算出部で、前記時刻成分の周期を超えて設定された所定のモデル更新期間の間、同じ季節変動近似式を傾向成分に用いて繰り返し配水量予測値を算出するものであり、前記解析部が、時間を変数としその次数の異なる複数の季節変動近似式によって複数の傾向成分を生成し得るように構成されるとともに、その結果から何れの傾向成分を用いた方が実績データにより近いかを評価する評価部をさらに備え、この評価部で評価した季節変動近似式を用いて前記配水量算出部が配水量算出を行なうように構成されている水需要予測システム。
配水量を、1日ないし1週間周期で繰り返す時刻成分、および、季節変動を表わす傾向成分に少なくとも分解するための解析部と、解析対象期間の配水量実績値を時系列データとして蓄積する配水量実績値蓄積部とを具備し、前記解析部が前記配水量実績値蓄積部から配水量実績値を入力し、移動平均法によって1日ないし1週間周期の時刻成分を除去して時系列値である傾向成分を求める処理と、傾向成分を時間を変数とする季節変動近似式で表現することによって回帰分析により前記傾向成分の回帰係数を求める処理とを行うように構成するとともに、前記解析部が解析した時刻成分および傾向成分を備えた予測モデル式を取得し配水量予測値を算出する配水量算出部を更に具備し、この配水量算出部で、前記時刻成分の周期を超えて設定された所定のモデル更新期間の間、同じ季節変動近似式を傾向成分に用いて繰り返し配水量予測値を算出するものであり、前記解析部及び前記配水量算出部は、解析対象期間及び/又はモデル更新期間が1年のどの位置にあるか、或いはモデル更新時期が1年のどの位置にあるかによって、時間を変数としその次数の異なる複数の季節変動近似式のうち予め用意した複数の季節変動近似式のうちの対応する季節変動近似式が選択され得るように構成されている水需要予測システム。
配水量を、1日ないし1週間周期で繰り返す時刻成分、および、季節変動を表わす傾向成分に少なくとも分解するための解析部と、解析対象期間の配水量実績値を時系列データとして蓄積する配水量実績値蓄積部とを具備し、前記解析部が前記配水量実績値蓄積部から配水量実績値を入力し、移動平均法によって1日ないし1週間周期の時刻成分を除去して時系列値である傾向成分を求める処理と、傾向成分を時間を変数とする季節変動近似式で表現することによって回帰分析により前記傾向成分の回帰係数を求める処理とを行うように構成するとともに、前記解析部が解析した時刻成分および傾向成分を備えた予測モデル式を取得し配水量予測値を算出する配水量算出部を更に具備し、この配水量算出部で、前記時刻成分の周期を超えて設定された所定のモデル更新期間の間、同じ季節変動近似式を傾向成分に用いて繰り返し配水量予測値を算出するものであり、モデル更新期間が、時刻成分の周期に対して2以上の整数倍の長さに設定されている水需要予測システム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
本実施形態の水需要予測システムは、例えば配水池からポンプで汲み上げた水を需要家に配水するにあたり、水需要を予測してポンプやバルブを制御し、的確な水の供給を可能にするためのものである。
【0022】
システムの概要は、
図1に示すように、実際の配水量の実績値X(t)を配水量実績値蓄積部1に蓄積し、この実績値X(t)をモデル生成部2に入力して、解析部21において1週間周期Tで繰り返す時刻成分s(t)、季節変動を表わす傾向成分m(t)、および、複数の外的要因成分の暫定値Y^(t)に分解する。一方、外部要因実績値蓄積部3には、天気、気温、湿度等の外的要因成分の実績値c(t)、r(t)、h(t)、…が外部より入力されて蓄積され、重回帰分析部22が前記外的要因成分の暫定値Y^(t)と前記外的要因成分の実績値c(t)、r(t)、h(t)、…とから外的要因成分Y(t)を決定する。そして、これらs(t)、m(t)およびY(t)が予測部4に入力される。この予測部4に接続されている予測値蓄積部5には、外部の予報システム等より天気、気温、湿度等の外的要因成分の予測値が蓄積されており、前記予測部4内の配水量算出部41は、時刻成分s(t)、傾向成分m(t)、外的要因成分Y(t)、および外的要因成分の予測値c(t)、r(t)、h(t)、…を入力して、配水量の予測値X^(t)を算出する。
【0023】
このシステムにおいて、
図2に示すように解析対象期間Toすなわち過去の実績値を用いる期間は、例えば13週間(91日)であり、予測しようとする期間すなわちモデル更新周期(モデル更新期間Ts)は例えば5週間(35日)である。すなわち、時刻成分s(t)の周期T(1週間)よりも長いモデル更新周期Tsで運用することを前提としている。また、モデル更新期間Ts(35日)は、時刻成分の周期T(7日)に対して整数倍の長さに設定されている。
【0024】
以下、順を追って説明する。なお、以下の説明において「^」は予測値(暫定値)を表わす。
【0025】
この実施形態では、配水量X(t)の数式モデルX^(t)を、数式1のようにモデル化する。本実施形態では、配水量計測周期、配水量予測周期を1とする。すなわち、予測しようとするある時刻tの次の予測時刻(この実施形態では1時間後)はt+1である。
【0026】
X^(t)=m(t)+s(t)+Y(t) …(数式1)
【0027】
m(t)は季節変動等により配水量の変動の傾向を表わす傾向成分であって、
【0028】
m(t)=m
0+m
1t+m
2t
2 …(数式2)
と仮定する。m
0は傾向成分の定数項、m
1は傾向成分の1次の回帰係数、m
2は傾向成分の2次の回帰係数である。
【0029】
s(t)は時刻に応じて周期的に変化する時刻成分であって、
【0031】
と表わす。S
kdはd曜日k時の時刻成分の値を表わす。すなわち、周期は1週間である。
【0032】
Y(t)は残りの成分であって、c(t)を気温、r(t)を降水量、h(t)を湿度、W
くもり(t)、W
雨(t)を天気を現すデータとして、
【0033】
Y(t)=A
0+A
cc(t)+A
rr(t)+A
hh(t)+A
wくもりW
くもり(t)+A
w雨W
雨(t) …(数式4)
【0034】
と表わす。A
0は残りの成分の定数項、A
cは残りの成分のうち気温の回帰係数、A
rは残りの成分のうち雨量の回帰係数、A
hは残りの成分のうち湿度の回帰係数、A
wくもりは残りの成分のうち天気(くもり)の回帰係数で、天気が晴れの場合とくもりの場合の差、A
w雨は残りの成分のうち雨の回帰係数で、天気が晴れの場合と雨の場合の差である。天気は質的データであるため、ダミー変換によって、W
くもり(t)=1、W
雨(t)=1、あるいはW
くもり(t)=W
雨(t)=0の何れかの値に変換する。
【0035】
図1における解析部21は、配水量の実績値X(t)(t=1、K,n)から、「時系列解析の成分分解」を応用した方法によって、1日ないし1週間周期で繰り返す時刻成分m(t)、季節変動を表わす傾向成分s(t)、および、複数の外的要因成分の暫定値Y^(t)に分解する。この解析部21の解析に供する配水量実績値X(t)は、外部の流量計等から時系列データとして配水量実績値蓄積部1に入力され、蓄積されている。
【0036】
ここで、解析対象である時系列X(t)が数式5の成分から構成されると仮定する。
【0037】
X(t)=m(t)+s(t)+Y(t)+e(t) …(数式5)
【0038】
e(t)は残差(成分で表現しきれない誤差)である。
【0039】
そして、残差e(t)=X^(t)−X(t)の平方和Σe(t)
2が最小となる処理を行い、モデルパラメータを決定する。
【0040】
具体的にこの解析部1は、
図3に示すように、傾向成分の暫定値m^(t)を算出する第1のステップS1と、時刻成分の暫定値s^(t)を算出する第2のステップS2と、傾向成分m(t)を算出する第3のステップS3と、時刻成分s(t)を算出する第4のステップS4と、残りの暫定値Y^(t)を算出する第5のステップS5とを実行する。
【0041】
第1のステップS1は、時系列X(t)(t=1、K,n)に、長さdの(単純)移動平均を適用した時系列<m(t)>(t)を算出する。この時系列はX(t)から周期dの周期変動分を除去し平滑化したものとなる。例えば、配水量計測周期が1時間で、24時間周期の時刻成分を除去したい場合には、X(t)に対してd=24(q=12)の移動平均<m(t)>を求めることになる。
【0042】
第2のステップS2は、X(t)−m^(t)(t=q+1、K,n−q)から時刻成分の暫定値s^(t)(t=1、K、n)を求める。ここで求める時刻成分の暫定値s^(t)は、以下の特徴を持つ時系列とする。
【0043】
・X(t)とX(t)−s^(t)で平均値が同じになるようにするため、平均値は0とする。
【0044】
・周期は24時間。s^(t+24時間)=s^(t)とする。
【0045】
第3のステップS3は、X(t)−s^(t)(t=1、K,n)から単回帰分析によって傾向成分m(t)(t=1、K、n)を求める。X(t)−s^(t)は、時刻変動がないため、元のX(t)と比較して、滑らかな時系列となっている。
【0046】
そして、m(t)=m
0+m
1t+m
2t
2とおいて、X(t)−s^(t)とm(t)の残差平方和が最小となるように自己回帰分析によってm
0、m
1、m
2を求め、数式2を決定する。
【0047】
第4のステップS4は、第2のステップS2において、m^(t)(t=q+1、K,n−q)、s^(t)をm(t)(t=1、K、n)、s(t)に置き換えて同様の処理を行い、数式3を決定する。曜日と時間を考慮する場合、時刻成分を曜日別に分類するので、時刻成分の暫定値s^(t)で使用したS
1^、S
2^、〜、S
24^に相当する値をS
時刻曜日の形で、S
1日、S
2日、〜、S
24日…のように表して、
【0049】
但しtはd曜日(d=日〜土)でk時(k=1〜24)…(数式6)
なる式を用いる必要がある。
【0050】
第5のステップは、上記で求めたm(t)、s(t)を用いて、残りの成分の暫定値Y^(t)を次の数式7で算出する。このY^(t)が解析部21の出力となり、
図1に示す重回帰分析部22の入力となる。
【0051】
Y^(t)=X(t)−m(t)−s(t) …(数式7)
【0052】
一方、重回帰分析部22は、
図3におけるステップS6として、
図1に示す外的要因実績値蓄積部3から個々の外的要因の実績値c(t)、r(t)、h(t)、…を入力し、また、前記解析部21で分解された解析対象期間(t=1、K、n)の残りの外的要因成分の暫定値Y^(t)を入力し、これら暫定値Y^(t)、気温c(t)、降水量r(t)、湿度h(t)、天気W
くもり(t)、W
雨(t)から、一般的な重回帰分析の手法によって、各項の回帰係数A
0、A
c、A
r、A
h、A
wくもり、A
w雨を求め、数式4を決定する。
【0053】
評価部6は、以上によって得られる数式モデルX^(t)(数式1)に過去の配水量X(t)、過去の実績値c(t)、r(t)、h(t)を入力し、これにより生成される配水量時系列を配水量実績値X(t)の時系列と比較し、残差平方和などでモデル評価を行う。具体的には、過去の実績データ90日分からその次の日(91日目)の配水量時系列を予測した予想結果に対して、実際にその日に配水された配水量実績値X(t)の時系列データを用い、残差平方和などで評価を行う。
【0054】
このようにして求まったモデル式を受けて、
図1に示す配水量算出部4は、前記解析部21及び前記重回帰分析部22が解析、分析した時刻成分s(t)、傾向成分m(t)および外的要因成分Y(t)からなる数式1の予測モデル式を取得し、かつ、今後予測しようとする時刻に対応した外的要因成分の各予測値c(t)、r(t)、h(t)を予測値蓄積部5から入力して、配水量予測値X^(t)を算出、出力する。この予測値蓄積部5には、例えば日本気象協会が提供しているデータベース等から取得した時間毎の気温c(t)、降水量r(t)、湿度h(t)の値が蓄積される。天気はダミー変換によって、時間毎にW
くもり(t)=1、W
雨(t)=1、あるいはW
くもり(t)=W
雨(t)=0の何れかの値に変換される。
【0055】
この予測システムは、制御部6が予め設定された
図2に示す解析対象期間Toとモデル更新時期Tsに応じて稼動させる。すなわち制御部6は、解析部21及び重回帰分析部22における処理をモデル更新時期が到来したときに実行させ、次のモデル更新時期が到来するまでの間、t→t+1としながら、1日1回、配水量算出部4での処理を実行させる。すなわち、例えば7月21日に、配水量算出部41が過去3ヶ月のデータから求められた数式モデルX(t)をモデル生成部2から受けて計算を行い、1時間毎に24時間後までの1日分の配水量を予測する。この予測は、5週間後である8月25日のモデル更新時期まで、同じ数式モデルX(t)を使って繰り返し行われる。そして、次のモデル更新時期である8月25が到来した時点で、
図1に示す制御部6は、解析部21及び重回帰分析部22に対し、その日前過去3ヶ月の過去のデータを用いて再度モデル生成を実行させることによって、予測モデルX(t)を更新し、その後の5週間後に次のモデル更新時期が到来するまでは、その新たな予測モデルX(t)を繰り返し使って配水量算出部41に繰り返し配水量の予測を行わえる。
【0056】
図4は、1日の実績データと予測データの推移を例示している。すなわち、ある曜日における時刻成分s(t)である。
【0057】
上記傾向成分m(t)を採用しないで同じ予想モデルを使って予測を続けた場合、
図5(a)に示すように配水量時系列に移動平均を適用し平滑化したm^(t)に対し、近似式m(t)が次第にずれてくる。このため、全体の配水量予測値X^(t)が徐々にかけ離れたものにならざるを得ない。これに対して、本実施形態のように傾向成分m(t)で季節変動の断片を表わすことで、モデル更新周期Tsを長くとっても同図(b)に示すようにm(t)を極力m^(t)に近似させることができようになる。
【0058】
図6は配水量の季節変動の概念図である。同図において、四角で示した範囲では傾向成分m(t)の1次の項m
1(t)がよい推定結果を出すが、楕円で示した範囲では傾向成分の1次の項よりも2次の項m
2(t)の方がよい推定結果を出す傾向にあるなど、季節に応じて好ましい近似式は一律ではない。
【0059】
そこで本実施形態は、制御部6からの指令によって
図1に示す解析部21が、
図7に示すように、季節変動近似式として時間を変数とする2次のモデル式m2^(t)(m
2が0以外の有効数字である場合)と、季節変動近似式として時間を変数とする1次のモデル式m1^(t)(m
2が0でm
1が0以外の予め定めた有効数字である場合)とでそれぞれ傾向成分を生成するように構成されていて、評価部7がその結果から何れの傾向成分を用いた方が実績データにより近いかを既に述べた手法等によって評価し、
図1に示す制御部6は好評価が得られた季節変動近似式(例えばm1^(t))を導出して前記配水量算出部41に配水量算出を行なわせるようにしてもよい。解析時期によっては式m1^(t)ではなくm2^(t)が評価されることも当然あり得る。
【0060】
以上のように、本実施形態の水需要予測システムは、配水量X(t)を、1週間周期(周期T)で繰り返す時刻成分s(t)、および、季節変動を表わす傾向成分m(t)に少なくとも分解するための解析部21と、解析対象期間の配水量実績値X(t)を時系列データとして蓄積する配水量実績値蓄積部1とを具備し、前記解析部21が前記配水量実績値蓄積部1から配水量実績値X(t)を入力し、移動平均法によって1週間周期(周期T)の時刻成分s(t)を除去して時系列値である傾向成分m(t)を求める処理と、傾向成分m(t)を時間tを変数とする季節変動近似式(数式2)で表現することによって回帰分析により前記傾向成分m(t)の回帰係数m
0、m
1、m
2を求める処理とを行うように構成するとともに、前記解析部21が解析した時刻成分s(t)および傾向成分m(t)を備えた予測モデル式(数式1)を取得し配水量予測値X^(t)を算出する配水量算出部41を更に具備し、この配水量算出部41で、前記時刻成分s(t)の周期Tを超えて設定された所定のモデル更新期間Tsの間、同じ季節変動近似式を傾向成分m(t)に用いて繰り返し配水量予測値X^(t)を算出するようにしたものである。
【0061】
このように構成すると、予測モデル式(数式1)に含まれる傾向成分(数式2)が季節変動の断片を時系列で表現するので、モデル更新期間Tsを時刻成分s(t)の周期Tを超えて設定し、その間、同じ季節変動近似式を傾向成分m(t)に用いても、予測値X^(t)を季節変動に沿って変化させて精度の良い予測を行うことができる。このため、傾向成分を頻繁に解析によって求める必要がなく、システムの計算負荷を有効に軽減することが可能となる。
【0062】
より具体的な構成として、この水需要予測システムは、配水量X(t)を、1週間周期(周期T)で繰り返す時刻成分s(t)、季節変動を表わす傾向成分m(t)、および、複数の外的要因成分Y(t)に分解するための解析部21と、解析対象期間の配水量実績値X(t)を時系列データとして蓄積する配水量実績値蓄積部1とを具備し、前記解析部21が前記配水量実績値蓄積部1から配水量実績値X(t)を入力し、移動平均法によって1週間周期(周期T)の時刻成分s(t)を除去して時系列値である傾向成分m(t)を求める処理と、傾向成分m(t)を時間tを変数とする季節変動近似式(数式2)で表現することによって回帰分析により前記傾向成分m(t)の回帰係数m
0、m
1、m
2を求める処理とを行うように構成するとともに、前記外的要因成分Y(t)の実績値c(t)、r(t)、h(t)…を蓄積する外的要因実績値蓄積部3と、この外的要因成分の実績値c(t)、r(t)、h(t)…と前記解析部21で分解された外的要因成分Y(t)とを入力し重回帰分析によって各外的要因成分Y(t)の回帰係数A
c、A
r、A
h…を求める重回帰分析部22と、前記解析部21及び前記重回帰分析部22が解析、分析した時刻成分s(t)、傾向成分m(t)および外的要因成分Y(t)を備えた予測モデル式(数式1)を取得しかつ外部から予測しようとする時刻に対応した各外的要因成分の予測値c(t)、r(t)、h(t)…を入力して配水量予測値X^(t)を算出する配水量算出部41とを更に具備し、この配水量算出部41が、前記時刻成分s(t)の周期Tを超えて設定された所定のモデル更新期間Tsの間、同じ予測モデル式(数式2)を用いて繰り返し配水量予測値を算出するようにしたものである。
【0063】
このように構成すると、予測モデル式(数式1)の全体が季節変動の断片を時系列で表現するので、モデル更新期間Tsを時刻成分s(t)の周期Tを超えて設定し、その間、同じ予測モデル式(数式1)を用いても、予測値X^(t)を季節変動に沿って時系列で変化させて精度の良い予測を行うことができる。このため、予測モデル式を頻繁に解析によって求める必要がなく、システムの計算負荷を有効に軽減することが可能となる。
【0064】
この場合、前記解析部21が、時間を変数としその次数の異なる複数の季節変動近似式によって複数の傾向成分m1^(t)、m2^(t)を生成し得るように構成されるとともに、その結果から何れの傾向成分を用いた方が実績データにより近いかを評価する評価部7をさらに備え、この評価部7で評価した季節変動近似式を用いて前記配水量算出部41が配水量算出を行なうようにしておけば、季節によっては高次の次数で季節変動を近似させる方がより季節変動をより的確に表現できる場合には高次の次数が選択され、低次の次数で季節変動を近似させる方が季節変動をより的確に表現できる場合には低次の次数が選択されて、その時々の解析対象期間Toやモデル更新期間Tsに適したモデル式による予測を行うことが可能になる。
【0065】
特に、次数の異なる複数の季節変動近似式として、2次の多項式と1次の多項式を用いれば、計算負荷を極力低く抑えた中での近似式の選択が可能となる。
【0066】
さらに、モデル更新期間Tsが、時刻成分の周期T(1週間)に対して2以上の整数倍の長さに設定されているので、十分な負荷軽減を図り、なおかつ適切な単位でモデル更新を行なうことが可能となる。
【0067】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0068】
例えば、解析対象期間及び/又はモデル更新期間Tsが1年のどの位置にあるか、或いはモデル更新時期が1年のどの位置にあるかを区分に類別して、時間を変数としその次数の異なる複数の季節変動近似式を構成するように回帰係数を
図8に示すように予めテーブル等にして用意しておき、前記解析部21及び前記配水量算出部41が、予測しようとする時期に対応する季節変動近似式がこのテーブル等から選択され得るように構成してもよい。1年のどの位置にあるかは、制御部6が有する時計機能を利用すれば簡単に情報を取得することができる。
【0069】
このようにすれば、予測値を逐一算出して評価せずとも近似式の切り替えを行うので、更なる計算負荷の軽減を図ることができる。
【0070】
勿論、次数の異なる複数の季節変動近似式は、3つ以上用意されていても構わないし、同じ次数であっても回帰係数の異なる季節変動近似式を複数用意することも有効である。
【0071】
また、上記実施形態では時刻成分の周期を1週間として取り扱ったが、周期を1日として取り扱う場合にも、同じ数式モデルを使い続ける点では上記実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0072】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。